JP2005251481A - 非水電解質二次電池の製造方法及び非水電解質二次電池用電極板乾燥装置 - Google Patents

非水電解質二次電池の製造方法及び非水電解質二次電池用電極板乾燥装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 極板と活物質との密着性が高く、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】 活物質と、水と、水に分散する結着剤と、を含む活物質スラリーを、帯状の集電体に塗布して集電体上に活物質層を形成する第一工程と、前記第一工程の後、前記活物質層の形成された帯状の集電体である帯状被乾燥体を水平に保持して走行させることのできる走行手段と、前記帯状被乾燥体に対して上方および下方からそれぞれ熱風を当てることのできる送風手段と、を備えた乾燥装置内を通過させて、前記活物質層に含まれる水を乾燥させる第二工程と、を備える非水電解質二次電池の製造方法において、前記第二工程が、前記帯状被乾燥体に対し上方から送風する熱風の温度を90℃以下とし、下方から送風する熱風の温度を110℃以上として、未乾燥状態の活物質層を乾燥する初期乾燥ステップを有することを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、サイクル特性の向上を目的とした、非水電解質二次電池の電極板作製工程の改良に関する。
近年、携帯電話やノートパソコン等の移動情報端末の小型・軽量化が急速に進展しており、その電源としての電池にはさらなる高容量化が要求されている。リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であるので、上記のような移動情報端末の駆動電源として広く利用されている。
中でも、帯状の集電体の両面に活物質層を形成した正・負極板を、セパレータを介して巻回することにより作製される巻回型電極体を備えた電池は、正・負極の対向面積が大きく、大電流を取り出しやすいことから、上記移動情報端末の駆動電源として広く利用されている。
このような巻回型電極体に用いる極板は、活物質と、水と、水に分散する結着剤と、を含む活物質スラリーを、帯状の集電体に塗布して集電体上に活物質層を形成した後、前記活物質層の形成された帯状の集電体である帯状被乾燥体を水平に保持して走行させることのできる走行手段と、前記帯状被乾燥体に対して上方および下方からそれぞれ熱風を当てることのできる送風手段とを備えた乾燥装置内を通過させて、前記活物質層に含まれる水を乾燥させることにより作製されている。
この乾燥工程において、乾燥装置内の温度は、対流の影響により上方が下方よりも温度が高くなる傾向があり、また熱風が直接当たる活物質層表面では、風と熱とが相乗的に作用する。そして、集電体に形成された活物質層の表層では、水が水蒸気となってその上方、すなわち活物質層の外に容易に揮発できるので、表層のみが優先的に乾燥してしまう。このようにして他に先駆けて乾燥した表層は、更なる乾燥を阻害する蓋の役割を果たすようになる。
また、熱は下方には伝達しにくいので、表層とその下の層との乾燥速度にますます差が生じるようになるが、表層とその下の層との間に乾燥程度に差が生じると、乾燥に伴う収縮程度にも差が生じるので、層間に機械的緊張(歪み)が生じる。
また、表層が先に乾燥すると、その下の層の水分は表層に形成された孔から活物質層外に飛散することになるが、この際、結着剤が水分に引っ張られて孔近傍に移動するため、結着剤の偏在化が生じる。
このようなことから、従来の製造方法にかかる電極板は、集電体と活物質との密着性及び活物質同士の密着性が悪くなるという問題がある。このような電極板を用いた電池は、充放電サイクルを行うと、内部抵抗が増大したり、活物質が集電体から脱離する等するため、サイクル劣化が大きい。
ところで、非水電解質二次電池の電極乾燥工程の改良に関する技術としては、下記特許文献1〜3等がある。
特開2003−272612号公報(第1−2頁) 特開平11−102696号公報(第1−5頁) 特開平11−329416号公報(第1−6頁)
特許文献1に記載の技術は、集電体上側面及び下側面に向けて熱風を吹き出す多数個の熱風吹き出し孔から上流乾燥ゾーンにおいて3分以上の乾燥時間をかけて電極合剤塗料層(活物質層)における残存溶剤含有量が2重量%以下となるように電極合剤塗料層を乾燥し、続いて下流乾燥ゾーンにおいてさらに電極合剤塗料層を乾燥する技術である。この技術によると、適切な乾燥を行うことができるので、活物質と集電体との密着性及びハイレート放電特性が向上するとされる。
特許文献2に記載の技術は、活物質が塗布された金属箔(集電体)を乾燥手段内を通過させ、金属箔の進行方向に従って温度を上昇させるとともに、最終段階において温度を低下させるように温度設定すること技術である。この技術によると、乾燥炉出口における金属箔及び塗布膜が外気に急冷されることによる塗布膜表面に発生する皺を防止することができるので、塗布膜の皺による生産ラインの稼働率の低下を抑制できるとされる。
特許文献3に記載の技術は、乾燥工程を2段以上で行い、後段の乾燥工程に進むにつれ、乾燥温度を高く設定する技術であり、この技術によると、活物質ペースト(スラリー)の表面のみが優先的に固形化するのを防止できるので、厚く塗布された活物質ペーストであっても、従来と同じ長さの乾燥炉で同じ時間でもって乾燥することができるとされる。
これらの先行技術はいずれも、上側面及び下側面に向けて吹き出される熱風の温度が同一に設定されているので、集電体の上側面に形成された活物質層の表面が優先的に乾燥されやすい。このため、結着剤の分布状態が偏在化するという上述した問題が生じる。
本発明者らは、活物質スラリーが塗布され、活物質層が形成された集電体を、乾燥させる場合、その乾燥初期の集電体下部から送風される熱風の温度と、集電体上部から送風される熱風の温度とを特定の条件に設定することにより、集電体と活物質との密着強度を高めることができ、且つ効率的に乾燥できることを見出した。
本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、乾燥効率が高く、集電体と活物質層との接着強度が強く、かつサイクル特性に優れた非水電解質二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係る電池製造方法は、活物質と、水と、水に分散する結着剤と、を含む活物質スラリーを、帯状の集電体に塗布して集電体上に活物質層を形成する第一工程と、前記第一工程の後、前記活物質層の形成された帯状の集電体である帯状被乾燥体を水平に保持して走行させることのできる走行手段と、前記帯状被乾燥体に対して上方および下方からそれぞれ熱風を当てることのできる送風手段と、を備えた乾燥装置内を通過させて、前記活物質層に含まれる水を乾燥させる第二工程と、を備える非水電解質二次電池の製造方法において、前記第二工程が、前記帯状被乾燥体に対し上方から送風する熱風の温度を90℃以下とし、下方から送風する熱風の温度を110℃以上として、未乾燥状態の活物質層を乾燥する初期乾燥ステップを有することを特徴とする。
ここで、水に分散するとは、コロイド状態や、ディスパージョン状態で分散する等を意味する。このような性質を有する結着剤として、スチレン−ブタジエン共重合体・メチル(メタ)アクリレート・エチル(メタ)アクリレート・ブチル(メタ)アクリレート・(メタ)アクリロニトリル・ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル、アクリル酸・メタクリル酸・イタコン酸・フマル酸・マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸等を、一種または二種以上混合して用いることができる。また、結着剤の混合比は、活物質100質量部に対して0.5〜5質量部であることが好ましい。
また、前記初期乾燥ステップは、未乾燥状態の活物質層を活物質層の残存水分量が5質量%以下になるまで乾燥するステップである構成とすることができる。
ここで、活物質層の残存水分量とは、活物質層の全質量に占める、活物質層中の水の質量のことを意味する。
また、上記構成において、前記第二工程は、更に、前記初期乾燥ステップの後、前記帯状被乾燥体の上方及び下方から送風する熱風の温度をともに100℃以上とし、活物質層の残存水分量が1質量%以下となるまで乾燥する仕上乾燥ステップを有する構成とすることができる。
また、上記構成において、前記初期乾燥ステップは、前記被乾燥体に対し上方から送風される熱風の温度を60℃以上90℃以下とし、下方から送風される熱風の温度を110℃以上150℃以下として行う構成とすることができる。
また、上記構成において、前記活物質スラリーは更に、前記活物質スラリーの粘度を高める増粘剤を含む構成とすることができる。
ここで、増粘剤とは、活物質スラリーの粘度を高めるために添加される物質のことを意味する。結着性を有するが、結着作用よりも増粘作用の方が強い物質は、結着剤ではなく増粘剤に含める。また、増粘剤は水に可溶であることが必要である。
このような性質を有する増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース・メチルセルロース・ヒドロキシメチルセルロース・エチルセルロース・ポリビニルアルコール・ポリアクリル酸(塩)・酸化スターチ・リン酸化スターチ・カゼイン等を、一種または二種以上混合して用いることができる。また、増粘剤の混合比は、活物質100質量部に対して0.5〜5質量部であることが好ましい。但し、増粘剤は本発明の必須の構成要素ではない。
また、上記電池製造方法を実現するための非水電解質二次電池用電極板乾燥装置は、活物質と水と結着剤とを含む活物質層が帯状集電体に塗布されてなる活物質層付き帯状集電体を乾燥する非水電解質二次電池用電極板乾燥装置であって、被乾燥体である前記活物質層付き帯状集電体を水平に保持して走行させる走行手段と、前記被乾燥体を乾燥させる1以上の乾燥ゾーンと、前記乾燥ゾーン内に設けられ、前記被乾燥体に対して上方および下方からその全幅に熱風が当たるように熱風を送風する送風手段と、を備え、更に前記1以上の乾燥ゾーンのうち最も上流側の乾燥ゾーンに熱風を送風する送風手段は、前記被乾燥体に対して上方から送風する熱風の温度を90℃以下に制御し、被乾燥体に対して下方から送風する熱風の温度を110℃以上に制御する温度制御手段を有することを特徴とする。
また、上記電極板乾燥装置において、前記乾燥ゾーンが2以上設けられ、前記2以上の乾燥ゾーンのうち最も下流側の乾燥ゾーンに熱風を送風する送風手段は、前記被乾燥体に対して上方及び下方から送風する熱風の温度をともに100℃以上に制御する第2の温度制御手段を有する構成とすることができる。
上記本発明の構成によると、帯状被乾燥体(活物質層付き集電体)の上方からの熱風が90℃以下と低く設定されている一方、その下方からの熱風が110℃以上と高く設定されている。この温度勾配によって、集電体に形成された活物質層の表面の乾燥速度が遅くなるが、活物質層の内部は、その下方にから送風される110℃以上の熱風による熱の伝導により、従来の技術と比較し、速やかに乾燥する。
このように内部の乾燥が速くなり、表面の乾燥が遅くなる結果、活物質層全体がほぼ同一の速度で乾燥するようになり、表面が他に先駆けて乾燥して表層を形成することがなくなる。
また、活物質層内での水蒸気の流れが制限されず、均一に対流が生じるので、結着剤が偏在化することなく均一に分布するようになる。
したがって、活物質と集電体との密着性が高まり、充放電サイクルによっても活物質が集電体から脱離することがない。よって、活物質の脱離による内部抵抗の上昇を抑制でき、サイクル特性に優れた電池を得ることができる。
また、電極板内の機械的緊張や水蒸気の対流による結着剤の分布の偏在化という問題は、未乾燥状態から活物質層中の残存水分量が約5質量%となるまで発生するおそれがある。このため、上方からの熱風温度を90℃以下、下方からの熱風温度を110℃以上という条件での初期乾燥ステップを、残存水分量が5質量%以下となるまで行うことが好ましい。
また、リチウムは水と急速に反応して電池を劣化させるため、極板内の水分をほぼ完全に(残存水分量が1質量%以下となるまで)除去することが必要であるが、上述したように活物質層中の残存水分量が5質量%以下となるまで乾燥すると、その後の乾燥条件は結着剤の分布等に影響を与えない。このため、初期乾燥ステップと同一の条件で完全に乾燥してもよいが、帯状被乾燥体に対して上方及び下方から送風される熱風温度を100℃以上とした仕上乾燥ステップを行うと、乾燥時間を短縮できるので、好ましい。
また、前記初期乾燥ステップにおいて、前記帯状被乾燥体に対して上方から送風される熱風の温度が60℃未満であると、温度が低すぎるために乾燥時間が長くなるので、生産性が低下する。また、前記帯状被乾燥体に対して下方から送風される熱風の温度が150℃より高くしてももはや乾燥効率が高まらず、コスト上昇を招くのみである。よって、上方からの熱風の温度を60〜90℃、下方からの熱風の温度を110〜150℃に規制することが好ましい。
また、活物質スラリーが増粘剤を含むと、活物質スラリーの集電体への塗布が容易となる。
また、上記構成を有する非水電解質二次電池用電極板乾燥装置を用いると、上記製造方法を容易に実施することができる。
本発明を実施するための最良の形態を、実施例を用いて以下に説明する。図1は、本発明に用いる乾燥炉を模式的に表す断面図である。
(実施例1)
〈正極の作製〉
正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO)と、導電剤としてのカーボンブラックと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンと、N−メチルピロリドン(NMP)とを混合し、正極活物質スラリーとなした。この後、この活物質スラリーを、ドクターブレードによりアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗布した後、加熱した乾燥機中を通過させて乾燥することにより、スラリー作製時に必要であった有機溶媒(NMP)を除去した。次いで、この極板をロールプレス機により圧延して正極を作製した。
〈負極の作製〉
鱗片状黒鉛(d002:0.3356nm、Lc値:100nm、平均粒径20μm)からなる負極活物質と、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)のディスパージョンを水に分散させ(合計固形分:48%)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)を添加して負極活物質スラリーを調製した。なお、この負極の乾燥後の固形分重量組成比が、黒鉛:SBR:CMC=100:3: 2となるように調製した。この後、この活物質スラリーを、乾燥後の固形分質量が100g/mとなるようにドクターブレードにより電解銅箔(厚み:10μm)からなる負極集電体に均一に塗布し、帯状被乾燥体となした。
この後、前記帯状被乾燥体を、乾燥装置内に投入し乾燥を行った。この乾燥装置は、図1に示すように、前記帯状被乾燥体を水平に保持して走行させることのできる走行手段と、前記被乾燥体を乾燥させる4つの乾燥ゾーンと、前記乾燥ゾーン内の上部及び下部にそれぞれ5つ設けられ、前記被乾燥体に対して上方および下方からその全幅に熱風が当たるように熱風を送風する送風手段と、を備えている。
また、この際、第一〜第三乾燥ゾーン(初期乾燥ゾーン)の温度条件を、前記帯状被乾燥体に対し下方から送風される熱風の温度を110℃、上方から送風される熱風の温度を80℃とした。また、第四乾燥ゾーン(仕上げ乾燥ゾーン)の温度条件は、下方、上方ともに140℃とした。また、風圧は0.2kPaとし、前記帯状被乾燥体の移動速度は6.0mm/minとした。
次いで、乾燥後の帯状被乾燥体(負極板)をロールプレス機により圧延して負極を作製した。
なお、乾燥装置の初期乾燥ゾーンの炉長は10mであり、仕上げ乾燥ゾーンの炉長は
2.5mである。また、後述する水分量測定法により測定した仕上げ乾燥後の極板に残存した水分量は、1質量%以下であった。
〈電解液の作製〉
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを23℃・1気圧で体積比1:1で混合した非水溶媒に、電解質塩としてのLiPFを1.0M(モル/リットル)の割合で溶解し、電解液を作製した。
〈電池の作製〉
上記で作製した正極と負極上とを、ポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータを間にし、かつ各極板の幅方向の中心線を一致させて重ね合わせた。この後、巻き取り機により巻回し、最外周をテープ止めすることにより巻回型電極体を作製した。この後、上記で作製した電極体を、円筒型外装缶に挿入し、上記電解液を注液し、外装缶の開口部分を封口することにより、設計容量が2000mAhである実施例1に係る電池を作製した。
(実施例2〜5、比較例1〜4)
下記表1に示すように、負極作製時の乾燥温度条件(初期乾燥ゾーン、仕上げ乾燥ゾーン)及び速度条件を変化したこと以外は、上記実施例1と同様にして電池を作製した。
(極板残存水分量測定)
仕上げ乾燥ゾーンを停止し、下記表1に示す実施例1〜5、比較例1〜4の乾燥温度条件で、前記帯状被乾燥体の走行速度条件を変化させて乾燥を行い、極板残存水分量が5%になる走行速度を測定し、その走行速度と乾燥炉長(10m)から、極板残存水分量が5%となる時間(残存5%到達時間)を算出した。また、極板中の残存水分量については、三菱化学製の「微量水分測定装置」CA−100型を用いて、カールフィッシャー法により測定した。
(密着強度の測定)
図2に示す装置を用いて、以下の手順により密着強度を測定した。
1.1.6g/mlに圧縮した実施例1〜比較例4に係る負極板を作製する。
2.アクリル板(3.0×12cm)・ 両面テープ (2×9mm・ニチバン(株)製ナイスタックNW−20)・測定する極板(2.5×16cm)を用意する。
3.アクリル板に両面テープを端から長手方向に8.5cm貼り付ける(0.5cm余らせる)。
4.アクリル・両面テープに測定極板を貼り付け、テープの貼り付きのない極板部分を引張試験機にて100mm/分で引っ張りながら、テープ・極板の剥離強度(密着強度)を測定する。
(サイクル特性の測定)
室温において1It(2000mA)の定電流で電池電圧が4.2Vまで充電
室温において1It(2000mA)の定電流で電池電圧が2.75Vまで放電
サイクル特性(%)=500サイクル放電容量÷1サイクル放電容量×100
(内部抵抗の測定)
500サイクル後の電池の内部抵抗を測定した(交流1kHz)。
Figure 2005251481
上記表1から、初期乾燥における上方からの熱風(乾燥)温度が90℃以下且つ下方からの乾燥温度が110℃以上である実施例1〜5の残存5%到達時間が86〜100秒、密着強度が110〜120N/cm、サイクル特性が85%、内部抵抗が70mΩであり、初期乾燥における下方からの熱風温度が100℃以下である比較例1〜3の残存5%到達時間である120〜171秒、密着強度が45〜60N/cm、サイクル特性が70〜75%、内部抵抗が110〜120mΩに比べて、それぞれ優れていることがわかった。
また、上方からの熱風温度が100℃である比較例4は、実施例1〜5と比較して、残存5%到達時間は50秒と短いものの、密着強度が20N/cm、サイクル特性が40%、内部抵抗が1000mΩと顕著に性能が劣化していることがわかった。
このことは、次のように考えられる。初期乾燥条件での下方からの熱風温度が、水の沸点である100℃以下であると、集電体の下方からの加熱が不十分である一方、活物質層の表層では、水が水蒸気となってその上方、すなわち活物質層の外に容易に揮発できるので、表層のみが優先的に乾燥してしまう。このようにして他に先駆けて乾燥した表層は、更なる乾燥を阻害する蓋の役割を果たすようになる。
また、熱は下方には伝達しにくいので、表層とその下の層との乾燥速度にますます差が生じるようになるが、表層とその下の層との間に乾燥程度に差が生じると、乾燥に伴う収縮程度にも差が生じるので、層間に機械的緊張(歪み)が生じる。
また、表層が先に乾燥すると、その下の層の水分は表層に形成された孔から活物質層外に飛散することになるが、この際、結着剤が水分に引っ張られて孔近傍に移動するため、結着剤の偏在化が生じる。
このようなことから、集電体と活物質との密着性及び活物質同士の密着性が悪くなり、この電極板を用いた電池(比較例1〜3)は、充放電サイクルを行うと、内部抵抗が増大したり、活物質が集電体から脱離する等するため、サイクル劣化が大きい。
また、熱風の温度が低いので(100℃以下)、乾燥時間が長くなる。
また、初期乾燥条件での上方からの熱風温度が水の沸点である100℃以上であると、下側面から130℃の熱風によっても、活物質層内部の乾燥速度よりも、活物質層表面の乾燥速度の方が速くなるので、活物質層の表層のみが優先的に乾燥してしまう。
このため、比較例4に係る電池は、乾燥温度が比較例1〜3よりも高い分、乾燥時間が短くなるものの、比較例1〜3と同様に、電池性能が劣化する。
これに対し、活物質層に当たる熱風が90℃以下と低く設定されている一方、下方からの熱風が110℃以上と高く設定されている。この温度勾配によって、活物質層の表面の乾燥速度が遅くなるが、活物質層の内部は、その下方にから送風される110℃以上の熱風による熱の伝導により、比較例1〜3と比較し、速やかに乾燥する。
このように内部の乾燥が速くなり、表面の乾燥が遅くなる結果、活物質層全体がほぼ同一の速度で乾燥するようになり、表面が他に先駆けて乾燥して表層を形成することがなくなる。
また、活物質層内での水蒸気の流れが制限されず、均一に対流が生じるので、結着剤が偏在化することなく均一に分布するようになる。
よって、集電体に形成された活物質層ともに、機械的緊張や結着剤の分布の偏在化がない均質な電極板が得られるので、活物質と集電体との密着性が高まり、充放電サイクルによっても活物質が集電体から脱離することがない。したがって、活物質の脱離による内部抵抗の上昇を抑制でき、サイクル特性に優れた電池を得ることができる。
また、下方から送風される熱風の温度が110℃以上と高く設定されているので、比較例1〜3に比べ乾燥時間を短縮することができる。
〔その他の事項〕
尚、上記実施の形態では円筒型外装缶を使用したが、角型、ラミネート外装体等種々の形状にすることができることは当然のことである。また、電池内重合により形成される固体高分子電解質電池にも適用することができる。
また、上記の実施の形態ではドクターブレードによりスラリーを塗布したが、ダイコーターやローラコーティング法により塗布することもできる。また、アルミニウム箔のかわりにアルミニウムメッシュ、発泡ニッケル等を用いても同様に作製することができる。
また、正極活物質としては、リチウム含有遷移金属複合酸化物から選択される一種の化合物、あるいは二種以上の化合物を混合して用いることができ、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、鉄酸リチウム、またはこれらの酸化物に含まれる遷移金属の一部を他の元素で置換した酸化物等が用いることができる。
また、負極活物質としては、天然黒鉛、カーボンブラック、コークス、ガラス状炭素、炭素繊維、あるいはこれらの焼成体等の炭素質物や、リチウムを吸蔵脱離可能な金属酸化物等を、一種または二種以上混合して用いることができる。
また、電解質に使用する非水溶媒としては、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、アミド類、スルホン系化合物、エステル類、芳香族炭化水素等から選択される化合物の一種、あるいは二種以上混合して用いることができる。これらの内でも、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、ケトン類、ニトリル類が好ましく、特にカーボネート類がさらに好ましい。これらの具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アニソール、1,4−ジオキサン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルホルムアミド、スルホラン、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸エチルなどがあげられる。
また、電解質塩としては、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCFSO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO等のリチウム塩から選択される化合物の一種単独で、あるいは二種以上混合して使用することができる。また、前記非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は0.5〜2.0モル/リットルとすることが好ましい。
また、上記実施例では、風圧を0.2kPaとしたが、この値に限定されることはなく、0.1〜0.5kPaの範囲内であれば、本発明の効果が十分に得られる。
以上説明したように、本発明によると、非水電解質二次電池の極板作製工程に要する時間を短縮できるとともに、活物質と集電体との密着性を高めることができるので、サイクル特性を向上させることができる。よって産業上の利用可能性は大きい。
本発明に係る電極板乾燥装置を模式的に表す断面概念図である。 電極板の密着強度の測定方法を模式的に示す斜視図である。

Claims (7)

  1. 活物質と、水と、水に分散する結着剤と、を含む活物質スラリーを、帯状の集電体に塗布して集電体上に活物質層を形成する第一工程と、
    前記第一工程の後、前記活物質層の形成された帯状の集電体である帯状被乾燥体を水平に保持して走行させることのできる走行手段と、前記帯状被乾燥体に対して上方および下方からそれぞれ熱風を当てることのできる送風手段と、を備えた乾燥装置内を通過させて、前記活物質層に含まれる水を乾燥させる第二工程と、
    を備える非水電解質二次電池の製造方法において、
    前記第二工程が、前記帯状被乾燥体に対し上方から送風する熱風の温度を90℃以下とし、下方から送風する熱風の温度を110℃以上として、未乾燥状態の活物質層を乾燥する初期乾燥ステップを有する、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
  2. 請求項1に記載の非水電解質二次電池の製造方法において、
    前記初期乾燥ステップは、未乾燥状態の活物質層を活物質層の残存水分量が5質量%以下になるまで乾燥するステップである、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
  3. 請求項2に記載の非水電解質二次電池の製造方法において、
    前記第二工程は、更に、前記初期乾燥ステップの後、前記帯状被乾燥体の上方及び下方から送風する熱風の温度をともに100℃以上とし、活物質層の残存水分量が1質量%以下となるまで乾燥する仕上乾燥ステップを有する、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
  4. 請求項1、2または3に記載の非水電解質二次電池の製造方法において、
    前記初期乾燥ステップは、前記被乾燥体に対し上方から送風する熱風の温度を60℃以上90℃以下とし、下方から送風する熱風の温度を110℃以上150℃以下として行う、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
  5. 請求項1、2、3または4に記載の非水電解質二次電池の製造方法において、
    前記活物質スラリーは、更に、前記活物質スラリーの粘度を高める増粘剤を含む、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
  6. 活物質と水と結着剤とを含む活物質層が帯状集電体に塗布されてなる活物質層付き帯状集電体を乾燥する非水電解質二次電池用電極板乾燥装置であって、
    被乾燥体である前記活物質層付き帯状集電体を水平に保持して走行させる走行手段と、
    前記被乾燥体を乾燥させる1以上の乾燥ゾーンと、
    前記乾燥ゾーン内に設けられ、前記被乾燥体に対して上方および下方からその全幅に熱風が当たるように熱風を送風する送風手段と、
    を備え、
    更に、前記1以上の乾燥ゾーンのうち最も上流側の乾燥ゾーンに熱風を送風する送風手段は、前記被乾燥体に対して上方から送風する熱風の温度を90℃以下に制御し、被乾燥体に対して下方から送風する熱風の温度を110℃以上に制御する温度制御手段を有する、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池用電極板乾燥装置。
  7. 請求項6に記載の非水電解質二次電池用電極板乾燥装置において、
    前記乾燥ゾーンが2以上設けられ、
    前記2以上の乾燥ゾーンのうち最も下流側の乾燥ゾーンに熱風を送風する送風手段は、前記被乾燥体に対して上方及び下方から送風する熱風の温度をともに100℃以上に制御する第2の温度制御手段を有する、
    ことを特徴とする非水電解質二次電池用電極板乾燥装置。
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