JP2005248998A - 等速ジョイント - Google Patents

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Shoichi Nakao
彰一 中尾
Tsutomu Kawakatsu
勉 川勝
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Abstract

【課題】保持部材がローラ部材から外れた場合であっても、回転駆動力伝達機能が阻害されることを防止することにある。
【解決手段】転動体28の脱落防止用のサークリップ46をトラニオン26a(26b、26c)の根本部43に近接する部位に配設し、フランジ部42を設けた側と比較して、前記サークリップ46を支持するために軸線方向の寸法ΔAだけ厚くなるように設定されている。また、前記ローラ部材30の中心線Cは、転動体28の軸線方向の長さを二等分する(B1=B2)ように設定されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、例えば、自動車の駆動力伝達部において、一方の伝達軸と他方の伝達軸とを連結させる等速ジョイントに関する。
従来より、自動車の駆動力伝達部では、一方の伝達軸と他方の伝達軸とを連結し回転駆動力を各車軸へと伝達する等速ジョイントが用いられている。
この種の従来技術に係る等速ジョイントとして、特許文献1には、図5に示されるように、ローラ1の円筒内周面2の軸線方向の一方の端部側に円周溝3を介して係止リング4が装着され、前記円筒内周面2の軸線方向の他方の端部に前記ローラ1と一体的に形成された係止鍔5が形成されたローラ機構6が開示されている。
前記円筒内周面2には複数のニードルローラ7が装着され、前記ニードルローラ7は、脚軸8の外周面に外嵌される支持リング9によって保持される。
この場合、特許文献1に開示されたローラ機構6では、前記脚軸8の先端部8a側に係止リング4が配設され、前記脚軸8の根本部8b側に係止鍔5が配設される構成が採用されている。
特開2001−208090号公報
しかしながら、前記特許文献1に開示されたローラ機構6では、例えば、何らかの原因によって係止リング4が円周溝3から外れた場合、ローラ1の円筒内周面2と支持リング9との間に装填されたニードルローラ7が等速ジョイントの回転運動によって発生する遠心力によりローラ1の内部から飛び出してしまい、前記等速ジョイントの回転駆動力伝達機能が阻害されるおそれがある。
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、保持部材がローラ部材から外れた場合であっても、回転駆動力伝達機能が阻害されることを防止することが可能な等速ジョイントを提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、所定間隔離間し軸線方向に沿って延在する複数の案内溝が内周面に設けられ一方の伝達軸に連結される筒状のアウタ部材と、前記アウタ部材の開口する内空部内に挿入されて他方の伝達軸に連結されるインナ部材とを有するトリポート型の等速ジョイントにおいて、
前記案内溝に向かって膨出する複数のトラニオンと、
前記案内溝に接触し、前記トラニオンに外嵌されるリング状のローラ部材と、
前記トラニオンと前記ローラ部材との間に転動自在に介装される複数の転動体と、
を備え、
前記ローラ部材の内径部の軸線方向に沿った一方の端部には、半径内方向に向かって突出するフランジ部が形成され、他方の端部には、環状溝を介して前記転動体を保持する保持部材が装着され、
前記保持部材は、トラニオンの軸線方向に沿った根本部側に配設されることを特徴とする。
この場合、前記ローラ部材の中心線Cを基準として、保持部材が装着されたローラ部材の軸線方向の厚さ(L+ΔA)を、フランジ部が形成されたローラ部材の軸線方向の厚さ(L)よりも大きく設定すると共に、前記中心線Cを、転動体の軸線方向の長さを二等分する中心と一致する(B1=B2)ように設定するとよい。
なお、前記保持部材には、少なくとも、サークリップが含まれるとよい。
本発明によれば、トラニオンの軸線方向に沿った根本部側に保持部材を配設することにより、仮に、何らかの原因で前記保持部材が環状溝から外れた場合であっても、前記保持部材がトラニオンの先端部側に装着されていないため、ローラ部材の内径部内に装填された転動体は、等速ジョイントの回転運動によって発生する遠心力によりローラ部材のフランジ部に保持されて該ローラ部材の内径部からの飛び出しが阻止される。
本発明によれば、以下の効果が得られる。
すなわち、仮に、何らかの原因で保持部材が環状溝から外れた場合であっても、ローラ部材の内径部内に装填された転動体は、等速ジョイントの回転運動によって発生する遠心力によりローラ部材のフランジ部に保持されて該ローラ部材の内径部からの飛び出しが阻止される。この結果、等速ジョイントの回転駆動力伝達機能が阻害されることを防止することができる。
本発明に係る等速ジョイントについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1において参照符号10は、本発明の実施の形態に係るトリポート型の等速ジョイントを示し、この等速ジョイント10は、図示しない第1軸の一端部に一体的に連結されて開口部を有する筒状のアウタカップ(アウタ部材)12と、第2軸14の一端部に固着されてアウタカップ12の孔部内に収納されるインナ部材16とから基本的に構成される。
前記アウタカップ12の内壁面には、図1に示されるように、軸線方向に沿って延在し、軸心の回りにそれぞれ120度の間隔をおいて3本の案内溝18a〜18cが形成される(但し、案内溝18b、18cは図示するのを省略している)。前記案内溝18a〜18cは、断面が曲線状に形成された天井部20と、前記天井部20の両側に相互に対向し断面円弧状に形成された摺動部22a、22bとから構成される。
第2軸14にはリング状のスパイダ24が外嵌され、前記スパイダ24の外周面には、それぞれ案内溝18a〜18cに向かって膨出し軸心の回りに120度の間隔をおいて3本のトラニオン26a〜26cが一体的に形成される(但し、トラニオン26b、26cは、図示するのを省略している)。
前記トラニオン26a(26b、26c)の外周部には、複数本の転動体28を介してリング状のローラ部材30が外嵌される。なお、転動体28は、例えば、ニードル、ころ等を含む転がり軸受けであればよい。
前記ローラ部材30の外周面は、図2に示されるように、摺動部22a、22bに面接触するように前記摺動部22a、22bの断面形状に対応して形成された円弧状面部32と、前記円弧状面部32から上部の第1面34に連続する第1環状傾斜面部36aと、前記円弧状面部32から下部の第2面38に連続する第2環状傾斜面部36bとから構成される。
また、ローラ部材30の内周には、一定の直径からなり、転動体28の転動面として機能する内径部40が形成され、前記内径部40の上部でトラニオン26a(26b、26c)の先端部41に近接する部位には、半径内方向に所定長だけ突出した環状のフランジ部42が一体的に設けられる。
前記フランジ部42と反対側の内径部40の下部でトラニオン26a(26b、26c)の根本部43に近接する部位には、環状溝44を介してサークリップ(保持部材)46が装着される。従って、ローラ部材30の内径部40内に装着された転動体28は、前記フランジ部42とサークリップ46とによって上下方向から保持される。
なお、前記サークリップ46に代替して、ローラ部材30の環状凹部内に圧入される図示しないワッシャを用いてもよい。この場合、前記保持部材としては、前記サークリップ46又は前記ワッシャに限定されるものではなく、例えば、クリップ、圧入部材、スプリングロックワッシャ、スプリングワッシャ、ワッシャ、止め輪、リテーニングリング、ばね座金、グリップ止め輪、リング等が含まれる。
例えば、トリポート型の等速ジョイント10では、トラニオン26a(26b、26c)とローラ部材30との間で、該トラニオン26a(26b、26c)の軸線方向に沿って相対的なスライド動作が発生するため、該ローラ部材30の内径部40の両端部に、転動体28の軸線方向に沿った変位を規制する、例えば、サークリップ46等の保持部材を設ける必要があるからである。
なお、前記相対的なスライド動作とは、ローラ部材30に対してトラニオン26a(26b、26c)がその軸線方向に沿ってスライド動作し、又はトラニオン26a(26b、26c)に対してローラ部材30がその軸線方向に沿ってスライド動作することをいう。
ローラ部材30の内径部40とフランジ部42との境界部分には、図2に示されるように、前記内径部40の壁面に対して潤滑材(グリース)が塗布されたときに、油溜まり部として機能する環状溝部52が形成される。
前記ローラ部材30の内径部40には、複数本の転動体28が周方向に沿って略平行に並設され、前記転動体28は、内径部40の両端部に設けられたフランジ部42とサークリップ46とによって該内径部40から分離・脱落しないように保持される。なお、ローラ部材30の内径部40に沿って装填される複数の転動体28は、それぞれ略同一の直径を有し、略同一形状に形成されているものとする。トラニオン26a(26b、26c)は、外径が一定の円柱状に形成される。
図2に示されるように、アウタカップ12の案内溝18a(18b、18c)に接触する円弧状面部32を上下に二等分するローラ部材30の中心線Cを引いた場合、前記中心線Cから上部の第1面34までの長さはLとなり、前記中心線Cから下部の第2面38までの長さは、(L+ΔA)となり、前記ローラ部材30の軸線方向の全体寸法は、(2L+ΔA)となる。
すなわち、転動体28の脱落防止用のサークリップ46を設けた側は、フランジ部42を設けた側と比較して、前記サークリップ46を支持するために軸線方向の寸法ΔAだけ厚くなるように設定されている。従って、ローラ部材30の中心線Cを基準として、フランジ部42側とサークリップ46側とが軸線方向に沿って異なる厚さに形成されている。
また、前記ローラ部材30の中心線Cは、転動体28の軸線方向の長さを二等分するものであり(B1=B2)、軸線方向の長さを二等分する転動体28の中心とローラ部材30の中心線Cとが一致するように設定されている。
本実施の形態に係る等速ジョイント10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その動作並びに作用効果について説明する。
先ず、等速ジョイント10の動作について説明する。
図示しない第1軸が回転すると、その回転力はアウタカップ12を介してインナ部材16に伝達され、トラニオン26a〜26cを通じて第2軸14が所定方向に回転する。
すなわち、アウタカップ12の回転力は、案内溝18a(18b、18c)の摺動部22a、22bに面接触するローラ部材30及び該ローラ部材30の内径部40内に保持された複数本の転動体28を介して、トラニオン26a(26b、26c)に伝達されることにより前記トラニオン26a(26b、26c)に係合する第2軸14が回転する。
本実施の形態では、ローラ部材30の中心線Cを基準としてサークリップ46が装着された厚肉側をトラニオン26a(26b、26c)の根本部43に近接した側に配設し、前記ローラ部材30がアウタカップ12の案内溝18a(18b、18c)に沿って摺動自在に組み付けられる。
従って、本実施の形態では、仮に、何らかの原因でサークリップ46が環状溝44から外れた場合であっても、前記サークリップ46がトラニオン26a(26b、26c)の先端部41側ではなく根本部43側に装着されているため、ローラ部材30の内径部40内に装填された転動体28は、等速ジョイント10の回転運動によって発生する遠心力によりローラ部材30のフランジ部42に保持されて該ローラ部材30の内径部40からの飛び出しが阻止され、前記等速ジョイント10の回転駆動力伝達機能が阻害されることを防止することができる。
また、図3に示されるように、トラニオン26aの先端部41側にサークリップ46が位置しトラニオン26aの根本部43側にフランジ部42が位置するように、トラニオン26aに対してフランジ部42とサークリップ46との配置を前記と天地を逆転するようにローラ部材30が組み付けられた第1比較例では、ローラ部材30と案内溝18aの天井部20とが接触して第1軸と第2軸14とが交差する角度によって形成される作動角が小さくなる。
これに対して、本実施の形態では、ローラ部材30の中心線Cを基準としてフランジ部42側が薄肉に形成され、ローラ部材30の上部の第1面34と案内溝18a(18b、18c)の天井部20との離間距離を十分にとることができるため、前記第1比較例と比較して作動角を大きく設定することができる。
さらに、図4に示されるように、ローラ部材30の中心線Cを基準として前記中心線Cからローラ部材30の上面である第1面34と下面である第2面38までの軸線方向の長さMをそれぞれ同一とし、且つ、前記中心線Cから転動体60の軸線方向の一端部及び他端部までの長さがそれぞれ異なる(D1≠D2)ように設定された第2比較例では、円弧状面部32を二等分するローラ部材30の中心線Cと、転動体60の軸線方向の長さを二等分する中心とが一致しておらず、例えば、負荷トルクがアウタカップ12からローラ部材30及び転動体60を介してトラニオン26a(26b、26c)に対して伝達される場合、前記転動体60の軸線方向の長さがローラ部材30の中心線Cに対して均等に振り分けられていないとトラニオン26a(26b、26c)と転動体60との間で偏荷重が発生し、前記トラニオン26a(26b、26c)の耐久性に悪影響を及ぼすおそれがある。
また、第2比較例において、例えば、転動体60の軸線方向の長さを短縮して該転動体60の軸線方向長さを二等分する中心をローラ部材30の中心線Cと一致させた場合、トラニオン26a(26b、26c)の外周面に対する転動体60の接触長さが低減することにより接触面圧が増大する。この結果、トラニオン26a(26b、26c)の根本部43に対して過大な負荷がかかり、前記トラニオン26a(26b、26c)の耐久性を劣化させるおそれがある。
これに対し、本実施の形態では、ローラ部材30の中心線Cを基準としてフランジ部42側とサークリップ46側とでローラ部材30の厚さが異なる上下非対称の形状に形成されているが、前記ローラ部材30の中心線Cと転動体28の軸線方向の長さを二等分(B1=B2)する中心とが一致するように設定されているため、トラニオン26a(26b、26c)の外周面と接触する転動体28の十分な軸線方向の長さが確保され、トラニオン26a(26b、26c)の耐久性が劣化することを阻止することができる。
本発明の実施の形態に係る等速ジョイントの軸線と直交する方向に沿った部分縦断面図である。 図1に示す等速ジョイントを構成するローラ部材の部分拡大縦断面図である。 第1比較例に係る等速ジョイントの一部断面斜視図である。 第2比較例に係る等速ジョイントを構成するローラ部材の部分拡大縦断面図である。 従来技術に係る等速ジョイントの軸線と直交する方向に沿った一部省略縦断面図である。
符号の説明
10…等速ジョイント 12…アウタカップ
16…インナ部材 18a〜18c…案内溝
26a〜26c…トラニオン 28…転動体
30…ローラ部材 40…内径部
41…先端部 42…フランジ部
43…根本部 44…環状溝
46…サークリップ

Claims (3)

  1. 所定間隔離間し軸線方向に沿って延在する複数の案内溝が内周面に設けられ一方の伝達軸に連結される筒状のアウタ部材と、前記アウタ部材の開口する内空部内に挿入されて他方の伝達軸に連結されるインナ部材とを有するトリポート型の等速ジョイントにおいて、
    前記案内溝に向かって膨出する複数のトラニオンと、
    前記案内溝に接触し、前記トラニオンに外嵌されるリング状のローラ部材と、
    前記トラニオンと前記ローラ部材との間に転動自在に介装される複数の転動体と、
    を備え、
    前記ローラ部材の内径部の軸線方向に沿った一方の端部には、半径内方向に向かって突出するフランジ部が形成され、他方の端部には、環状溝を介して前記転動体を保持する保持部材が装着され、
    前記保持部材は、トラニオンの軸線方向に沿った根本部側に配設されることを特徴とする等速ジョイント。
  2. 請求項1記載の等速ジョイントにおいて、
    前記ローラ部材の中心線Cを基準として、保持部材が装着されたローラ部材の軸線方向の厚さは、フランジ部が形成されたローラ部材の軸線方向の厚さよりも大きく設定されると共に、前記中心線Cは転動体の軸線方向の長さを二等分する中心と一致するように設定されることを特徴とする等速ジョイント。
  3. 請求項1又は2記載の等速ジョイントにおいて、
    前記保持部材には、少なくとも、サークリップが含まれることを特徴とする等速ジョイント。

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