JP2005240240A - 耐光性に優れた難燃パイル布帛 - Google Patents

耐光性に優れた難燃パイル布帛 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリフェニレンサルファイド繊維を内装用シート布帛に適応拡大を計る目的で、該繊維の最大の欠陥とされる難昜染性、耐光堅牢性を改善することによって、ソフト風合いと高級感の要求を満たす汎用性の高い内装用向けの難燃パイル布帛を得る。
【解決手段】パイル繊維が捲縮を有するポリフェニレンサルファイド繊維を含み、JIS L 0842法に規定の紫外線カーボンアーク灯光評価における耐光堅牢度が2級以上であることを特徴とするパイル布帛。
【選択図】なし

Description

本発明は、難燃性、耐熱性機能の優れたポリフェニレンサルファイド繊維をパイル繊維に用いたパイル布帛に関するものであり、さらに詳しくは、課題である商品化の妨げとなる難昜染性の技術改善に取り組み、困難とされた耐光堅牢度を向上させることによって、該繊維の適用範囲をシート布帛分野にまで広めることのできる難燃性効果の優れた汎用性の高いパイル布帛に関するものである。
ポリフェニレンサルファイド繊維は、耐熱性、耐蒸熱性、耐薬品性に優れ、強度などの物理的特性に優れた繊維として知られ、繊維資材用途としては保温性を必要とする衣料、寝具として単独あるいは他の天然繊維および合成繊維との複合化での展開、また、耐熱性、寸法安定性の特徴を生かし、家電製品の樹脂使いである成型品に広く用いられている。
しかしながら、素材固有の耐光性質の劣性、ガラス転移点温度が91℃と高温域の性質であるため、130℃以上あるいは仮撚加工などの高温域での捲縮の形態付与・保持性に不満があった。さらには、優れた特徴を保有しながら染色性が難しいとの問題が重なり、狭い範囲の衣料用途のみでインテリア分野の内装用シート布帛などへの展開がなされていない原因とされている。
機能性や取り扱い易さとファッション性に優れたポリエステル繊維が内装シート材全般に活用されているが、合成繊維およびその樹脂は、元来”燃えやすい”との欠点を持ち合わせているため、燃焼拡大、また、その時にガスが発生して過大な被害・災害の原因となるために該繊維の更なる改善課題とされている。
このような問題があるにも係わらずポリエステル繊維主体の合成繊維の活用は、益々重要視されている中、これまでの内装用シート材に関しては耐シガレット性を改善するためにアラミド繊維とポリエステル繊維との混用品を活用して、耐炎性効果を生かし穴あき防止を目的とした提案が知られている。しかしながら、該繊維に関しては耐光性、染色性、衣料・布帛としては硬風合いの問題、さらに、耐熱性アラミド繊維の蓄熱によって燃焼が拡大するとの問題等から単独使用はもちろん多量の混合や複合することができない。これら内装シート布帛の高度な要求に対してはポリエステル繊維との混率を低く設計して対応せざるを得ないことが必須である。よって、その難燃性能、さらには、車輌内装材向けの厳しい規格、風合いとファッション感覚に応えるにはまだまだ好適な繊維であるとはいえない。
しかるに、本発明は、上記の問題・課題に対してポリフェニレンサルファイド繊維を内装用パイル布帛に活用することを提案するものであるがポリフェニレンサルファイド繊維に関しては、従来、工業的な原糸の製造方法および仮撚加工糸の加工方法に関して提案されている(例えば、特許文献1参照)。 また、捲縮特性に優れ、薬品の雰囲気下での強度保持率に優れたタイミングベルトの補強用に最適なポリフェニレンサルファイド繊維を用いた仮撚加工糸とその製造方法に関して提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、上記の提案はいずれも、ポリフェニレンサルファイド繊維の生産性を改良し、またその仮撚加工糸の製造方法の改善についての提案であり、内装用シート材にまで用途展開するものではない。
また、難燃性や耐シガレット性を改善する提案としては、リン元素を含有させて難燃性を有するポリエステル繊維をパイル糸として用いる車輌用や家具の椅子、カーペットに用いる難燃性パイル布帛が多々提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、アラミド繊維を用いて耐熱性や耐摩耗性に優れるものとするために、合成繊維ステープルとパラアラミド型芳香族ポリアミドステープルの紡績糸からなる織編物が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
さらに、パイル糸にアラミド繊維を用いて、充分な引張強度を有し、耐シガレット性、耐摩耗性に優れ、さらに炭化促進型として難燃剤を含有させることなく良好な難燃性を得ることができる難燃性パイル布帛の提案もなされている(例えば、特許文献5参照)。
しかしながら、これらいずれの提案によっても、パイル布帛に利用したポリフェニレンサルファイド繊維の提案は見られない。しかも最も難燃効果が高いとされるアラミド繊維を活用しポリエステルとを混紡させたものでは耐光性の問題でコンテントを低くせざるを得ない理由から難燃性、耐シガレット性の要求目標にはまだ遠いものである。また、切削し難い繊維であることから紡績工程を始め各製品化工程で作業性、コスト面での問題もネックで、さらに、高級感とファッション感覚も望まれるパイル布帛においては不染性欠点、かつ耐光堅牢性、ソフト風合いの要求が満たされるものではないため汎用性が高まらないという問題を有していた。
特開平1−239109号公報 特許第2737981号公報 特開平6−212534号公報 特開平6−220730号公報 特開平9−250052号公報
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決しようとするものであり、ポリフェニレンサルファイド繊維を内装用シート布帛に適応を広めるために、該繊維の最大の欠陥とされる難昜染性、耐光堅牢性を改善することによって、ソフト風合いと高級感の要求を満たす汎用性の高い内装用向けの難燃パイル布帛を提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
(1)パイル繊維が捲縮を有するポリフェニレンサルファイド繊維を含み、JIS L 0842法に基づいて測定される紫外線カーボンアーク灯光に対する耐光堅牢度が2級以上であることを特徴とするパイル布帛。
(2)上記耐光堅牢度が3級以上であることを特徴とする前記(1)に記載のパイル布帛。
(3)前記ポリフェニレンサルファイド繊維が下記一般式(I)で表される化合物の乳化物からなるカバリング剤を介して染色されていることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のパイル布帛。
Figure 2005240240
(4)前記パイル布帛におけるパイル繊維が仮撚加工捲縮を有し、その捲縮伸長率が1%以上および/または捲縮数が5個/2.54cm以上であるステープルファイバーからなることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のパイル布帛。
(5)前記パイル布帛が車輌用内装布帛であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のパイル布帛。
本発明により、パイル布帛とした性能が、<国土交通省航空局耐空性審査要領第III部 垂直試験法における「燃焼時間が15秒以下」および「燃焼長が20cm以下」であることの基準値に合格し、さらに、<国土交通省鉄道車輌用材料燃焼試験法>の難燃性基準に合格して「難燃性」であること。並びに、耐光堅牢度がJIS L 0842に基づいて測定される紫外線カーボンアーク灯光に対する耐光堅牢度が“2級以上”の高品位なものとすることができ、さらに、高温セット性の改善および細繊度化、異形断面形状の高度な紡糸−製糸技術の確立と仮撚加工捲縮やステープル用捲縮を有したパイル布帛に要求される耐毛倒れ性、耐白ボケ性、高級なソフト風合い品位を保有した難燃性、および耐熱性効果が高く、静電気抑制も持ち合わせたパイル布帛を得ることができるという効果を奏する。
以下、さらに本発明について詳述する。
本発明で用いられるポリフェニレンサルファイド繊維は、難燃性、耐熱性、耐蒸熱性、耐薬品性、制電性に優れ、強度などの物理的特性にも優れた繊維として知られている。しかしながら、一方において、該ポリフェニレンサルファイド繊維が持ち合わせる耐光性の劣性、およびガラス転移点温度が91℃と高温域の性質であるため、130℃以上あるいは仮撚加工などの高温域での捲縮の形態付与と保持性に不満があり、さらには、優れた特徴を保有しながら染色性が難しく、上記耐光堅牢性との問題が重なり、到底、内装用パイル布帛へ展開できるものではなかった。
しかしながら、本発明においては、パイル布帛のパイル繊維に難燃性機能の高いポリフェニレンサルファイド繊維を活用するに当たり、該繊維の欠陥である高温セット性を確保するための紡糸−製糸技術の改善、およびパイル布帛に要求される耐毛倒れ性、耐白ボケ性、高級な風合い品位を得るための異形断面形状および細繊度化、さらには仮撚加工捲縮を付与した捲縮伸長率が1%以上で捲縮保持性の優れたもの、並びにステープルでは紡績性を向上させるため5個/2.54cm以上の捲縮数を保有したステープルファイバーとした高品質な繊維束を製造し、これらポリフェニレンサルファイド繊維をパイル繊維として用いることにより、 さらには、これらポリフェニレンサルファイド繊維の難昜染性を前述のカバリング剤、後述する染料、分散剤、耐光剤を好適に配合する染色技術により解決させ、耐光堅牢度が2級以上、より好ましくは3級以上確保できるとの要求を満たすパイル布帛を得ることができたものである。
本発明で用いられるポリフェニレンサルファイド繊維とは、その構成単位の90%以上が、−(C64−S)−で構成されるフェニレンサルファイド構造単位を含有する重合体からなる繊維である。
上記の技術は、ポリフェニレンサルファイド繊維の重合度や添加剤の種類や量の研究、実験を試行錯誤してポリマーを得る。更に、紡糸−延伸時の温度、倍率、速度等種々検討を行った結果、高温度、高撚性に耐えられる技術を確立し、原糸、原綿を得ることができた。
ポリフェニレンサルファイド繊維は、P−ジクロルベンゼンと硫化ナトリュウムを有機系極性溶媒中で重合したポリマーでフェニル基と硫黄がパラに結合された構造のポリマーである。該ポリフェニレンサルファイド樹脂のペレットを120℃以上の真空式加熱機内で数時間乾燥させる。放冷後、紡糸機のエクストルーダー中に供給し、高温で溶融し、任意の孔数の異型口金から吐出させ、紡糸を行う。
得られた糸条を空気により冷却し、引き続き水系処理剤を微量に付着させ、数百m/分以上の速度にて巻き取る。次いで延伸工程にて、緻密な加熱と1次、さらに2次延伸を施し、トータル3倍以上の延伸糸条と成す品質の安定した衣料用、カーシートなどの産業資材用に汎用できうる繊度のマルチフィラメントドローヤーンを製造するものである。
該技術確立により、通常の仮撚技術による高温セット性能によって安定した捲縮性と保持性が確保されるようになる。同様にステープルファイバーにおける捲縮付与も容易なものとなるのである。
繊維製品で重要な原糸、原綿の構成と、さらには、風合い要求が高度なパイル布帛を提供するためにパイル繊維を構成するポリフェニレンサルファイド繊維の単繊維繊度は、0.33〜5.5デシテックス(dtex)であることがソフト風合い要求に対して好ましいものである。
単繊維繊度が0.33デシテックス未満である場合、マルチフィラメントまたはステープルファイバー製造工程の紡糸−製糸での単繊維切れが発生し易く、また、高次加工での仮撚加工、空気混繊加工においてタルミや糸切れを起こし易いこと、紡績工程ではカーディング時にも切断繊維やその廃棄風綿の問題も起こすこととなる。
反対に単繊維繊度が5.5デシテックスを超えると、繊維の剛性が強くなりすぎてパイル布帛の風合いには好ましいものではない。また、他の合成繊維との混紡、撚糸や空気混繊となす場合になじみが悪く、生産および品質上の欠点も発生してくる。なお、パイル布帛として好ましい単繊維繊度としては0.44〜3.3デシテックス(dtex)である。
また、パイル繊維を構成するポリフェニレンサルファイド繊維を異形断面化することにより、要求される耐毛倒れ性、耐白ボケ性、並びに高級なソフト風合いと品位を兼ね備えた難燃性効果の高いパイル布帛とすることができる。
前記した、ポリフェニレンサルファイドマルチフィラメント繊維を仮撚加工に供すると、高温域における耐熱セット性、および高撚性に耐えられる性能・物性を有するものとすることができる。すなわち、前記したポリフェニレンサルファイド繊維を用いることより、仮撚温度が220℃以上までの高温域まで向上し、加撚性も必然的に向上するため、捲縮保持性の高い品質のものが得られ、捲縮性能である捲縮伸長率は、1%以上が確保できるものである。
上記のポリフェニレンサルファイドマルチフィラメント繊維によれば、仮撚1次セット加工によるウーリ糸形態では、上記捲縮伸長率が40%程度までもの高捲縮化が可能である。しかも、2次セット効果も容易なため内装用パイル布帛の要求する低捲縮化も適宜に対応できて汎用面でのメリットも大きいものがある。
本発明においてパイル繊維は、フィラメント繊維だけではなく、ステープルファイバーで構成されたものであってもよい。ステープルファイバーに付与する捲縮数は5個/2.54cm以上であることが好ましいものである。通常の捲縮数は10〜15個/2.54cmが適当であり、該ステープルは充分に付与と保持性が確保できるものである。
繊維長は、紡績糸からモケットやダブルラッセル布帛とする場合には25〜76mm長の範囲内であれば紡績操業、商品展開上に問題は生じない。
さらには、パイル布帛に対し好ましいパイル繊維を構成するポリフェニレンサルファイド繊維の断面形状としては、三角形、楕円形、長方形、2〜5玉数珠連、楕円八葉形態、I型などの異形化断面繊維を用いることができる。また、これよりさらに高異形化断面のものでも何ら差し支えなく用いることができる。また、丸断面繊維であっても何ら差し支えない。また、パイル繊維としてポリフェニレンサルファイド繊維と他の繊維との混合(混繊)、混紡として用いることもできる。混合、混紡繊維としてパイル繊維に用いる場合は、相手繊維としては、性能、品質上からしてポリエステル系繊維が好ましい。
前述の技術からさらに発展させ、仮撚機上にてポリフェニレンサルファイドマルチフィラメント繊維と他の有効な特性を持つフィラメント、例えばポリエステル系マルチフィラメントとの混繊、混合などの複合仮撚り加工した糸であってもよい。
繊維形態は、原糸/原糸、加工糸/原糸、加工糸/加工糸の混繊複合など種々適用でき、紡績糸との混用、並びに紡績糸形態となす場合でも混紡形態はもちろんのこと、フィラメントとの芯/鞘、鞘/芯複合形態も可能である。この時、複合糸条の展開の中でポリエステル高収縮糸とを混繊させ、高収縮糸を沈ませポリフェニレンサルファイド繊維を構造的に布帛表面に際出させることも可能である。
パイル繊維はポリフェニレンサルファイド繊維100%で特徴と風合いを充分に発揮するものであるが、ポリフェニレンサルファイド繊維と他の繊維、例えば、ポリエステル系繊維とを混繊、混合など複合する場合、そのコンテントは、ポリフェニレンサルファイド繊維が好ましくは5重量%以上、より好ましくは20重量%以上含まれることが望ましい。理由は、更なる耐光性向上、静電性の抑制やパイル風合いをより良く改善するためであり、難燃性性能とコスト面も巧く考慮しながら含有比率を変更することが望ましい。なお、ファブリック形態はダブルジャージ、シンカーパイル、トリコット編成、モケット製織いずれも可能である。
本発明において、パイル布帛に展開可能とするためにポリフェニレンサルファイド繊維の染色技法確立が重要となるので、詳しく説明する。
該繊維は、染着座席がないという分子構造上の理由により、カチオン染料および酸性染料のような染料では染色されないという欠点がある。さらには、染着座席がない上に結晶化度が非常に高くなることから、濃色に染色することが非常に困難であり、衣料として用いた際に目標とする色相濃度が得られないなどの致命的な問題があった。
このような問題改善に対して、いく例かのポリフェニレンサルファイド繊維を染色する方法が提案されている。例えば、特開平1−272883公報では、該繊維を分散染料と、キャリアの存在下で、そのガラス転移点温度以上の染色温度で染色する方法が開示されている。同公報では、メチルナフタレン系、オルソフェニルフェノール系、およびエステル系の化合物がキャリアを用いて染色することが記載されているが、これらキャリアは染色性が十分ではない上に、環境への負荷が大きく、かつ染色加工を行う作業者に対して有害であることが近年問題となってきている。また、特開平4−289279公報においては、ポリフェニレンサルファイド繊維を昇温結晶化温度以上、すなわち160℃以上の温度でサーモゾル染色することが紹介されている。同公報ではまた、このような染色を行うために、該繊維を1,4−ジアミノアントラキノンおよび1−アミノアントラキノンのようなアントラキノン類が使用されることも開示している。
しかし、160℃以上の高温処理を必要とし、なおかつ、サーモゾル染色が必要なため生産性が悪く、通常の染色加工場で染色することが環境上困難である。
以上の技術に依っても難昜染性が改善されず、作業上の制約からもポリフェニレンサルファイド繊維の染色には無理があって、到底、汎用的な製品は生まれてこない現状であった。
さらに、本発明で適用する染色方法を以下で詳細に説明する。
ポリフェニレンサルファイド繊維を染色する方法は、下記一般式(I)で表される化合物の乳化物:
Figure 2005240240
(ここで、Aは、−O−または−C(O)O−であり、R9はフェニル基またはその誘導体の基、あるいは置換または未置換のフェニルアルキレン基である)および以下の一般式(II)で表される化合物の乳化物:
Figure 2005240240
(ここで、R10は、1個〜5個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基であり、そしてX1およびX2は、それぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子である)で表される化合物の乳化物からなる群より選択される少なくとも1種のカバリング剤を含有することである。
前記カバリング剤が、安息香酸フェニルおよびその誘導体、ベンジルベンゾエートおよびその誘導体、ジフェニルエーテル、フェニルベンジルエーテルおよびその誘導体
Figure 2005240240
(ここで、R2は、1個〜5個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基である)から選ばれた少なくとも一種の化合物の乳化物を選定することで染色が可能となる。
本発明に用いられるカバリング剤は、上記一般式(I)または(II)で表される少なくとも1種の化合物の乳化物である。具体的には、一般式(I)または(II)で表される化合物の少なくとも1種と、界面活性剤のような乳化物(乳化成分)とを含有する。カバリング剤は、上記一般式(I)または(II)で表される化合物を、カバリング剤の全重量に対して、好ましくは10重量%〜40重量%の割合で含有する。
なお、上記したカバリング剤はいずれも環境負荷が少なく、人体への影響も少ない化合物として知られており、これらのカバリング剤と染料との併用により、濃色に染色され、なおかつ比較的低温での処理が可能で、さらには環境や人体への影響の少ないポリフェニレンサルファイド繊維染色糸条や布帛を得ることができる。
これらカバリング剤を用いる際の手法については特に限定されるものではないが、好ましくは下記のとおりである。
処理液に含まれる上記カバリング剤は、繊維糸条や布帛のポリフェニレンサルファイド繊維重量に対し、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは2〜10重量%の割合で含有させる。カバリング剤の含有量が1重量%を下回ると後述するようなより低い浴温度で処理することが困難になる恐れがある。他方、カバリング剤の含有量が20重量%を上回ると、その処理液を用いて得られるポリフェニレンサルファイド繊維に、特にそれ以上の優位な差を得ることがなく、むしろコスト高で生産性に劣性となる。
カバリング剤を含有させた際の処理液の好ましい処理温度は、100℃から130℃である。処理温度が100℃未満ではポリフェニレンサルファイド繊維に染料を十分含有させることができず、特に、濃色に染色する場合は、該繊維糸条及び布帛を提供することができない恐れもある。
本発明においては、上記したカバリング剤を含有する処理液に、分散染料を含有させることでポリフェニレンサルファイド繊維を効率的に高品位に染色することが可能となる。
使用可能な分散染料は、通常、ポリエステル繊維の染色に用いられる分散染料である。このような分散染料の例としては、ダイアニックスイエローSE−G(ダイスター社製)、ダイアニックスイエローAM−42(ダイスター社製)、ダイアニックスイエローブラウンSE−R(ダイスター社製)、ダイアニックスレッドSE−CB(ダイスター社製)、ダイアニックスレッドS−2B(ダイスター社製)、ダイアニックスルビンSE−B(ダイスター社製)、ダイアニックスブルーS−BG(ダイスター社製)、ダイアニックスネイビーSE−RN300%(ダイスター社製)、ダイアニックスブラックSE−RN300%(ダイスター社製)、ダイアニックスイエローAC−E(ダイスター社製)、ダイアニックスレッドAC−E01(ダイスター社製)、ダイアニックスブルーAC−E(ダイスター社製)、ダイアニックスブルーE−R150%(ダイスター社製)、スミカロンブルーE−FBL(住友化学(株)製)、スミカロンネイビーブルーS−2GL(住友化学(株)製)、およびスミカロンブルーS−BG(住友化学(株)製)が挙げられる。本発明に使用され得る分散染料の種類は上記に限定されない。
処理液に含まれる上記分散染料は、ポリフェニレンサルファイド繊維重量に対し、好ましくは0.001〜20重量%、より好ましくは0.01〜10重量%の割合で含有される。分散染料の含有量が0.001重量%を下回ると該繊維を充分に染色することができない恐れや色ムラ等を生じる。他方、分散染料の含有量が20重量%を上回ると、その処理液を用いて得られる該繊維の染着濃度に、特にそれ以上の優位な差を得ることがなく、むしろコスト面で無駄が生じる。
なお、前記方法においては、処理液中に分散剤を含有せしめることが極めて好適に採用される。分散剤との併用により、溶液中の染料やカバリング剤の分散性が向上し、ポリフェニレンサルファイド繊維内に極めて均一に染料を含有させることができ、該繊維の染着濃度は飛躍的に向上する。このような分散剤の例としては、ポリオキシアルキレン・スチレンオキサイド付加物の硫酸化物、スチレン化フェノール・エチレンオキサイド付加物の脂肪酸エステル、およびポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルの脂肪酸エステルが挙げられる。上記染料やカバリング剤の水に対する分散性を向上させるものであれば、特に上記に限定されない。処理液に含まれる上記分散剤は、ポリフェニレンサルファイド繊維重量に対し、好ましくは0.1〜2重量%、より好ましくは0.2〜1重量%の割合で含有される。分散剤の含有量が0.1重量%を下回ると、処理液中に染料やカバリング剤を完全に分散させることが困難になる恐れがある。他方、分散剤の含有量が2重量%を超えても、その処理液を用いて得られる該繊維に特に優位な差を得ることがなく、生産面に悪い影響を与える。
本発明では、上記カバリング剤、染料、さらには分散剤を含有する処理液にポリフェニレンサルファイド繊維糸条又は布帛を投入する場合、特別な手法は必要がなく、浸漬法、プリント法など任意の手段が適応できる。
本発明で用いる浸漬法につき具体的に述べれば、高圧高温容器(例えば、高圧染色機)を用いて、上記布帛を、好ましくは10倍〜80倍、より好ましくは30倍〜50倍の浴比で、この処理液を装置浴に投入する。処理温度は特に限定されないが、好ましくは100℃〜135℃の温度に調節することにより、得られるポリフェニレンサルファイド繊維材の染色性がさらに向上する。処理温度が100℃未満であると、染料を該繊維に十分含有させることができず、目標とする濃色レベルが得られず好ましくない。温度が135℃を越えると、通常の高圧染色機では温度コントロールの限界を超えるため、処理できない可能性があるなどの問題が起こることもある。
本発明はカバリング剤を含有させることにより、前記特開平4−289279公報で提案された160℃サーモゾル染色法よりも低温度の100℃〜135℃にて一般染色工場の設備で染色できるものである。さらに、上記浸漬法(すなわち 染色加工)に要する時間は、通常染色法の45分〜90分程度の設定で充分である。
該繊維糸条又は布帛は、上記のような条件で加工液に浸漬されられた後、装置浴から取り出し、水洗等の通常の処理が施される。
また、本発明は好適に染色されたポリフェニレンサルファイド繊維布帛を提供するものであるが、これら該繊維糸条又は布帛に紫外線吸収剤を少量含有させることにより、大幅に耐光堅牢度を向上させることも可能である。これにより、濃色に染色され、なおかつ屋外の使用においても日光による変色が少ない該繊維や布帛を得ることができる。
好ましい紫外線吸収剤としては、例えば以下の一般式(III):
Figure 2005240240
(ここで、R1は水素原子または水酸基であり、R2は水酸基、あるいは1個〜12個の炭素原子を有する直鎖状のまたは分岐鎖状のアルキルオキシ基であり、R3は水素原子または−SO3Hであり、R4は水素原子または−OCH3であり、そしてR5は水素原子または水酸基である)で表される化合物、および以下の一般式(IV):
Figure 2005240240
(ここで、R6は水素原子であるか、あるいは1個〜5個の炭素原子を有する直鎖状のまたは分岐鎖状のアルキル基であり、R7は1個〜5個の炭素原子を有する直鎖状のまたは分岐鎖状のアルキルであり、そしてR8は水素原子または塩素原子である)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。
上記した紫外線吸収剤のうち、一般式(III)で表される化合物の例としては、2,4−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、および2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンが挙げられる。
好ましい紫外線吸収剤のうち、一般式(IV)で表される化合物の例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、および2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールが挙げられる。
本発明においては、上記一般式(III)および(IV)で表される化合物でなる紫外線吸収剤を単独または組み合わせて使用してもよい。本発明においては、ポリフェニレンサルファイド繊維材に対し、より優れた耐光性を提供し得る点から、上記紫外線吸収剤として、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを用いることがより好ましい。
なお、本発明で適用する染色法において、染色する際のポリフェニレンサルファイド繊維体の形態は特に限定されるものではない。ポリフェニレンサルファイド繊維100%からなるフィラメント糸条や紡績糸、該繊維とその他の汎用繊維とを混紡、混繊した状態で染色することも可能であるがこの場合、ポリフェニレンサルファイド繊維側を主にレサイプを選定する。
糸形態による先染め手法とするモケットは当然本技術が優先する。
また、布帛形態とするジャージ、シンカーパイル、トリコット類、ダブルラッセル生地等での反染めすることでもかまわず、単浴、2浴法等生産性に有利な手法で行えば良いのである。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はそれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明に記述する諸特性の測定法、官能評価法を次に示す。
[燃焼性試験法1;国土交通省航空局耐空性審査要領第III部]
4−10−2−2付録F・垂直試験法により、燃焼(残炎)時間;15秒以下、燃焼長;20cm以下の基準に合格、または不合格の判定を行う。
[燃焼性試験法2;国土交通省鉄道車輌用材料燃焼性試験法]
該試験法概要は、182mm×257mmの試供材を45度傾斜に保持し、試供材垂直下と燃焼容器下面中心とが25.4mmの間隔となるよう設置し、燃焼容器にエチルアルコール5ccを入れて着火し、燃え尽きるまで放置する。
燃焼性判定は、アルコール燃焼中の着火、着炎、煙、火勢の状況、及び燃焼後の残炎、残じん、炭化、変形の状態を観察し、不燃性、極難燃性、難燃性、緩燃性、可燃性の5段階判定を行う。
[耐シガレット性試験法]
水平面に配したシート布帛等表面に火の着いたタバコを横倒しに置く。2分間放置してタバコを取り除き、炎があれば消す。その後の燃焼跡を目視により観察する。
炭化層の形成により穴あきが生じなかったものを“OK”、溶融により穴あきが形成されたものを“NG”とする。
[捲縮伸長率]
糸条を引出し、10回巻きのカセ5本を採集して、98℃×20分の熱水処理を施して、充分に乾燥させる。
0.1g/1.1dtexの定荷重下で30秒後の長さを測定・L1とする。次に30秒間放置した後、2mg/1.1dtexの荷重下で30秒後の捲縮の戻った長さを測定・L2とする。
捲縮伸長率=[L1−L2/L2]×100(%)の式で計算し、カセ5本の平均値で示す。
[捲縮数]
糸条に98℃×20分の熱水処理を施して、乾燥後にマルチフィラメント繊維束から単糸を分解する。0.1g/1.1dtexの定荷重下で30秒間捲縮を伸長した後、2mg/1.1dtexの荷重下で30秒後にリーダープリンターの型枠に張り付ける。
10倍に投影して、2.54cm(1インチ)間のクリンプ数を数え、10本の平均を値とする。
[耐光堅牢度]
シート布帛にJIS L 0842 10(2)に規定する紫外線カーボンアーク灯光に対する染色堅ろう度試験方法に基づいて63℃×40時間の連続照射処理を施し、表面の変退色を5段階(5級;目立たない、4級;わずかに目立、3級;明らかに認められるが目立たない、2級;やや目立、1級;非常に目立)の目視判定を行う。
[平面摩耗]
シート布帛に押し圧荷重1kgで1万回摩耗後の折り返し部の摩耗状態を5段階(5級;目立たない、4級;わずかに目立、3級;認められるが目立たない、2級;やや目立、1級;非常に目立)の目視判定を行う。
[ソフト感覚]
シート布帛の表面感触について”ソフト感優〜粗硬”の4段階評価(◎;ソフト感優、〇;良、△;サラサラ感強、×;粗硬)で官能判定を行い、熟練者5名の平均結果で示す。
〔実施例1〕
ポリフェニレンサルファイド繊維として、フィラメント167デシテックス−72フィラメント糸を用いた。
該糸条は、ポリフェニレンサルファイド樹脂のペレットを−760mmHgの真空式加熱内で150℃、16時間以上放置した。放冷後、紡糸機のエクストルーダー中に供給し、−700mmHgの真空下、温度320℃で溶融し、孔数72のY型口金から吐出させ、紡糸を行った。
得られた未延伸糸を製糸工程に移し、緻密な加熱と2段延伸によるトータル4倍の延伸糸条と成し、品質の安定したマルチフィラメントドローヤーンを製造した。
該ドローヤーンを既存のピン式仮撚加工機により、ヒートセット1次/2次温度210/200℃、仮撚数2300t/mにて捲縮加工を施し、強度4.cN/dtex、伸度34%、捲縮伸長率8.4%の特性を保有する捲縮加工糸を得ることができた。
該捲縮加工糸をパイル糸、地糸はポリエステル84デシテックス−24フィラメント糸を用いて、22ゲージのトリコット機でパイル長2.5mmのカットパイル布帛を編成した。
布帛後、分散染料である(ダイアニックスレッドAC−E(ダイスター社製))3.3重量%、カバリング剤であるベンイルベンゾエート乳化物4重量%、分散剤である(サンソルトRM340(日華化学(株)製:ポリオキシアルキシン・スチレンオキサイド付加物の脂肪酸エステル))1重量%、および浴比1:40の割合で混合して処理液を調整した。この処理液を含む浴液に、上記カットパイル布帛を130℃の温度で45分条件により反染加工を施しパイル製品として完成させた。
得られたパイル布帛の性能は、<国土交通省航空局耐空性審査要領第III部 垂直試験法>の燃焼時間が15秒以下および燃焼長が20cm以下であることの基準値に合格、さらに<国土交通省鉄道車輌用材料燃焼試験法>の難燃性基準に合格:難燃性であった。並びに、耐シガレット性にも優れたものであった。耐光性はJIS L 0842に規定の紫外線カーボンアーク灯光に対する耐光堅牢度が3級;合格レベルである。
更に、染色加工された布帛は、色合いも良く、立毛性、摩耗耐久性、耐毛倒れ性にも優れたソフトな風合いで高級感のあるパイル布帛を得ることができた。
〔実施例2〕
ポリフェニレンサルファイド繊維として、フィラメント110デシテックス−48フィラメント糸を用いた。紡糸−製糸条件は、実施例1の手法と同様である。
該ドローヤーンを実施例1同様に、仮撚数のみ2600t/mに変更して捲縮加工糸を得る
耐光性向上を計るため、ポリエステルマルチフィラメントとの混繊形態とするため57デシテックス−24フィラメントの2次セット加工糸を空気交絡加工機により軽交絡させ(交絡数2個/2.54cm程度)複合糸とした。
該複合加工糸を同じく実施例1の条件でカットパイル布帛を編成、 布帛後も実施例1同様の処法と条件により反染加工を施しパイル製品として完成させた。
ただ、本染法においてはポリエステル側の染色は行わず、汚染技法を用いた。
得られたパイル布帛の性能は、燃焼試験法1,2ともに合格。並びに、耐シガレット性にも優れたものであった。耐光性は、耐光堅牢度が3−4級、更に、色合いも良い品位で風合い面でもソフトで高級感のあるパイル布帛をであった。
〔実施例3〕
ポリフェニレンサルファイド繊維として、フィラメント57デシテックス−24フィラメント糸を用いる。紡糸−製糸条件は、実施例1の手法と同様である。
該ドローヤーンを実施例1同様に、仮撚数のみ3000t/mに変更して捲縮加工糸を得る
更なる耐光性向上を確認するため、110デシテックス−72フィラメントのポリエステルマルチフィラメント糸2次セット加工糸とを空気交絡加工機により軽交絡させ、複合糸とした。
該複合加工糸を同じく実施例1の条件でカットパイル布帛を編成、 布帛後も実施例1同様の処法と条件により反染加工を施しパイル製品として完成させた。
得られたパイル布帛の性能は、燃焼試験法1,2ともに合格。並びに、耐シガレット性も優れ、耐光堅牢度が4級と優れたものであった。品位・風合い、色合い、ポリエステル繊維の細繊度効果もあり、ソフトで高級感のあるパイル布帛を得ることができた。
〔実施例4〕
ポリフェニレンサルファイド繊維として、“楕円8葉断面“で繊度2.2デシテックス、カット長51mm、捲縮数13個/2.54cm原綿を用いた。該原綿は、ポリフェニレンサルファイド樹脂のペレットを−760mmHgの真空式加熱内で150℃にて20時間放置する。放冷後、紡糸機のエクストルーダー中に供給し、−700mmHgの真空下、温度320℃で溶融し、500千孔の口金から吐出させる紡糸工程を経て3500千デシテックスの未延伸トウを得る。得られた未延伸トウを製糸工程に移し、緻密な加熱と2段延伸によるトータル4倍の延伸糸条と成し、繊度2.2デシテックスの延伸トウにし、捲縮付与、カットして原綿となした。
該原綿から番手30sの紡績糸を得る。
モケットのパイル糸展開とするため、実施例1同様の染色法と条件によりパッケージ染色加工を施す。杢調表現のため濃淡色にそれぞれ染色、さらに濃淡2糸条を合撚してパイル糸とする。
該パイル糸を地糸ポリエステル/レーヨン混紡糸30s経横使い、打込み密度170本/10cm、カット長2.7mmのモケット布帛に製織した。
得られたパイル布帛は、これまでの実施例同様に難燃性、耐シガレット性に合格。耐光堅牢度:3級、摩擦耐久性、立毛性、さらに、断面効果によりポリエステル繊維品に劣らないソフトな感触と風合いを有した高品質なパイル布帛を得ることができた。
〔実施例5〕
実施例4のポリフェニレンサルファイド紡績糸、および東レ(株)製ポリエステル楕円8葉断面2.2デシテックス×51mm原綿の紡績糸30sを別途に濃淡差がでる様にパッケージ染色を行った。この2糸条を合撚してパイル糸とし、該パイル糸を実施例4と同様の条件、規格でモケット布帛を製造した。
パイル部にポリエステル繊維を50重量%使用して得られたパイル布帛は、実施例4同様に難燃性、耐光堅牢度:5級、摩擦耐久性、立毛性に優れた性能を示し、その上に、楕円8葉断面原綿によるソフト風合いが発揮されて高級感漂う、感触の良いパイル布帛である。
〔比較例1〕
実施例1のポリフェニレンサルファイド捲縮加工糸と性能比較するためY型断面ポリエステルマルチフィラメント167デシテックス−72フィラメントで実施例1と同等な構成とし、本加工糸を同じく実施例1の条件でトリコットカットパイル布帛を編成した。布帛は、ポリエステルマルチフィラメントの処方と同じく130℃の高温染色法により反染加工を施しパイル製品として製品に仕上げた。
得られたパイル布帛の性能は、燃焼試験法1,2ともに合格するものの、耐シガレット性においては“NG”である。耐光性は、ポリエステル繊維の優れた性能により合格である。
〔比較例2〕
実施例4のポリフェニレンサルファイド紡績パイル糸と性能比較するため現行市場流通品である東レ(株)製“ペンタス”原綿(繊度3.3デシテックス、カット長51mm、捲縮数13、5個/2.54cm)の番手30sの紡績糸を用いた。モケット展開のためポリエステル糸の130℃の高温染色法によりパッケージ染色加工を施す。杢調表現で高級感をだすため濃淡色にそれぞれ染色、2条を合撚してパイル糸とする。該パイル糸を実施例4と同様の条件、規格により2.7mmカット長のモケット布帛に製織・製品とした。
得られたパイル布帛は、難燃性には合格、しかし、耐シガレット性はポリエステルの劣性からNGである。耐光堅牢度:4−5級、摩擦耐久性、立毛性、さらに、断面効果によりポリエステル繊維の性能が生かされた高品質なパイル布帛である。
〔比較例3〕
丸断面で単繊維繊度2.2デシテックス、繊維長51mmのパラ系アラミド原綿(東レデユポン(株)製“ケブラー”(登録商標))を重量比20%、Y型断面で同規格のポリエステル原綿80%使用して30s混紡糸とした。実施例5のポリエステル紡績糸の染色方法および実施例4と同一方法、同一条件により、カット長2.7mmのモケット布帛に製織した。
得られたパイル布帛は、耐シガレット性良好であり、<国土交通省航空局耐空性審査要領第III部 垂直試験法>の燃焼時間が18秒および燃焼長が17cmで評価基準には合格であった。
更に<国土交通省鉄道車輌用材料燃焼試験法>の難燃性基準にはアラミド繊維の蓄熱による緩やかに燃焼拡大するが合格であった。
しかし、耐光堅牢度においては1級レベルで、パラ系アラミド繊維の欠陥が現れて、特に厳しい自動車用内装布帛にまで適応させるには問題となる状況にある。更に、風合い面でもアラミド繊維の剛性感覚が現れ、タッチが嫌われて商品展開には妨げとなるものであった。
以上、実施例;表1、比較例;表2と区分してパイル糸・布帛構成と布帛評価をまとめた。
Figure 2005240240
Figure 2005240240

Claims (5)

  1. パイル繊維が捲縮を有するポリフェニレンサルファイド繊維を含み、JIS L 0842法に基づいて測定される紫外線カーボンアーク灯光に対する耐光堅牢度が2級以上であることを特徴とするパイル布帛。
  2. 上記耐光堅牢度が3級以上であることを特徴とする請求項1に記載のパイル布帛。
  3. 前記ポリフェニレンサルファイド繊維が下記一般式(I)で表される化合物の乳化物からなるカバリング剤を介して染色されていることを特徴とする請求項1または2に記載のパイル布帛。
    Figure 2005240240
  4. 前記パイル布帛におけるパイル繊維が仮撚加工捲縮を有し、その捲縮伸長率が1%以上および/または捲縮数が5個/2.54cm以上であるステープルファイバーからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパイル布帛。
  5. 前記パイル布帛が車輌用内装布帛であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパイル布帛。
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