JP2005240022A - 難燃性ポリアミド組成物およびその用途 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリアミド(A)10〜80質量%、難燃剤(B)5〜40質量%、ホウ酸亜鉛と少なくとも1種の他の亜鉛の塩(C)0.5〜10質量%、無機質強化材(D)0〜60質量%および、ドリップ防止剤(E)0〜5質量%からなることを特徴とする、難燃性ポリアミド組成物を提供する。
【選択図】なし
Description
ポリアミド樹脂は、本来自己消火性であるが、アンダーライターズ・ラボラトリーズ・スタンダードUL94で規定されているV−0といった高い難燃性や耐炎性が要求される表面実装部品の用途には、難燃剤を配合する必要がある。一般的には、ポリアミドに臭素化ポリスチレンを難燃剤として配合するとともに、難燃性を向上させることを目的とし、金属酸化物が難燃助剤として用いられており、難燃助剤にアンチモン化合物を用いることによって優れた難燃性を付与することができる。
本発明のポリアミド(A)はジカルボン酸成分単位(a−1)とジアミン成分単位(a−2)からなり、温度25℃、96.5%硫酸中で測定した極限粘度[η]が、0.5〜3dl/g、好ましくは0.5〜2dl/g、さらに好ましくは0.7〜1.3dl/gである。また、DSCで測定した融点は290〜350℃、特に300〜330℃が好ましい。このような範囲にあるポリアミド樹脂では、特に優れた耐熱性を有する。また本発明のポリアミド(A)は、ポリアミド(A)、難燃剤(B)、ホウ酸亜鉛と少なくとも1種の他の亜鉛の塩(C)、無機質強化材(D)、およびドリップ防止剤(E)の総量100質量%に対して、10〜80質量%、好ましくは20〜60質量%の割合が好ましい。
本発明で使用するポリアミド(A)を構成するジカルボン酸成分単位(a−1)は、テレフタル酸成分単位30〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位0〜70モル%、および/または炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位0〜70モル%であることが好ましい。このうちテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位としては、例えばイソフタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびこれらの組み合わせが好ましい。
本発明で使用するポリアミド(A)を構成するジアミン成分単位(a−2)は、直鎖および/または側鎖を有する炭素原子数4〜20、好ましくは6〜12の脂肪族ジアミン成分単位、および/または炭素原子数が6〜25、好ましくは6〜18であり、かつ少なくとも1個の脂環族炭化水素環を含むジアミンから誘導される脂環族ジアミン成分単位が好ましい。
直鎖脂肪族ジアミン成分単位の具体的な例としては、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカンが挙げられる。これらの中でも、1,6−ジアミノヘキサンが好ましい。
本発明で用いられる難燃剤(B)は、樹脂の燃焼性を低下させる目的で添加するものである。難燃剤としては公知のものが利用でき有機系難燃剤が好ましく挙げられるが、中でもハロゲン含有化合物、なかでも臭素を含有する化合物が好適に使用することができる。臭素を含有する難燃剤としては、特に臭素を50〜80質量%、好ましくは60〜70質量%含む臭素系難燃剤が好ましく、臭素化ポリスチレン、ポリ臭素化スチレン、臭素化ポリフェニレンエーテルなどが挙げられる。
本発明では、ホウ酸亜鉛と少なくとも1種の他の亜鉛の塩を用いることで、モールドデポジットの主原因となるハロゲンガスの発生による生産性の問題、難燃性、靭性、溶融流動性、リフローはんだ工程での耐熱性および色の安定性を向上させることができる。ここで、ホウ酸亜鉛としては、2ZnO・3B2O3、4ZnO・B2O3・H2O、2ZnO・3B2O3・3.5H2Oなどが挙げられる。また、他の亜鉛の塩としては、Zn3(PO4)2・ZnOといったリン酸亜鉛、ZnSn(OH)6、ZnSnO3といったスズ酸亜鉛、その他モリブデン酸カルシウム亜鉛などから選択することが可能である。ホウ酸亜鉛と少なくとも1種の他の亜鉛の塩(C)は、ポリアミド(A)、難燃剤(B)、ホウ酸亜鉛と少なくとも1種の他の亜鉛の塩(C)、無機質強化材(D)、およびドリップ防止剤(E)の総量100質量%に対して、0.5〜10質量%、好ましくは2〜6質量%の割合で添加するのが好ましい。良好な難燃性をえるためには、添加量は0.5質量%以上であることが好ましく、また良好な機械物性およびリフローはんだ工程での良好な耐熱性を得るためには10質量%以下であることが好ましい。
本発明では必要に応じて無機質強化材を用いてもよく、無機質強化材としては 繊維状、粉状、粒状、板状、針状、クロス状、マット状等の形状を有する種々の無機充填材を使用することができる。さらに詳述すると、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、ワラストナイト、ケイソウ土、クレー、カオリン、球状ガラス、マイカ、セッコウ、ベンガラ、酸化マグネシウムおよび酸化亜鉛などの粉状あるいは板状の無機化合物、チタン酸カリウムなどの針状の無機化合物、ガラス繊維(グラスファイバー)、チタン酸カリウム繊維、金属被覆ガラス繊維、セラミックス繊維、ワラストナイト、炭素繊維、金属炭化物繊維、金属硬化物繊維、アスベスト繊維およびホウ素繊維などの無機繊維が挙げられる。このような繊維状の充填剤としては、特にガラス繊維が好ましい。ガラス繊維を使用することにより、組成物の成形性が向上すると共に、熱可塑性樹脂組成物から形成される成形体の引張り強度、曲げ強度、曲げ弾性率等の機械的特性および熱変形温度などの耐熱特性が向上する。上記のようなガラス繊維の平均長さは、通常は、0.1〜20mm、好ましくは0.3〜6mmの範囲にあり、アスペクト比(L(繊維の平均長さ)/D(繊維の平均外径))が、通常は10〜5000、好ましくは2000〜3000の範囲にある。平均長さおよびアスペクト比がこのような範囲内にあるガラス繊維を使用することが好ましい。
本発明では必要に応じてドリップ防止剤を用いても良い。ドリップ防止剤は、燃焼時における溶融樹脂のドリップ(燃焼に際して樹脂が溶融することで液状化して垂れ落ちること)を防止する目的で添加するものである。ドリップ防止剤としては公知のものが利用でき、ポリオレフィン、テフロン(登録商標)、およびそれらの変成体等が挙げられるが、特に分子内にカルボキシル基、酸無水物基、アミノ基等を有する変性ポリオレフィンが好ましい。変性ポリオレフィンとしては、変性ポリエチレン、変性SEBSなどの変性芳香族ビニル化合物・共役ジエン共重合体またはその水素化物、変性エチレン・プロピレン共重合体などの変性ポリオレフィンエラストマーなどが挙げられる。
本発明に係る難燃性ポリアミド組成物は、上記のような各成分に加えて本発明の目的を損なわない範囲で、上記以外の耐熱安定剤、耐候安定剤、可塑剤、増粘剤、帯電防止剤、離型剤、顔料、染料、無機あるいは有機充填剤、核剤、繊維補強剤、カーボンブラック、タルク、クレー、マイカなどの無機化合物などの種々公知の配合剤を含有していてもよい。なお、本発明では、通常用いられるハロゲン捕捉剤などの添加剤を用いることもできる。ハロゲン捕捉剤としては、例えばハイドロタルサイトが知られている。特に本発明に係る難燃性ポリアミド組成物は、上記のうち繊維補強剤を含有していることにより、より一層耐熱性、難燃性、剛性、引張強度、曲げ強度、衝撃強度が向上される。
本発明で用いるポリアミド(A) は公知の方法で製造可能であり、ジカルボン酸成分単位とジアミン成分単位との重縮合により製造することができる。例えば、上記のジカルボン酸成分単位とジアミン成分単位とを 特開2003−128913号公報に記載されているように、触媒の存在下に加熱することにより低次縮合物を得、次いでこの低次縮合物の溶融物に剪断応力を付与することにより重縮合することで製造することができる。
上記のような各成分から本発明に係る難燃性ポリアミド組成物を製造するには、公知の樹脂混練方法を採用すれば良く、例えば各成分を、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダーなどで混合する方法、あるいは混合後さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用すればよい。
上記のような成分からなる本発明のポリアミド組成物は、UL94規格に準じた燃焼性評価がV−0であり、成形時の発生臭素ガス量が0.1ppm以下であり、色の安定性(リフローはんだ工程での耐熱性)が良好である。また、リフロー耐熱温度は260℃以上、好ましくは260〜270℃、靭性は40mJ以上、好ましくは40〜50mJであり、流動長は60mm以上、好ましくは60〜70mmである極めて優れた特徴を有しており、SMTに要求される、優れた難燃性、高い靭性、溶融流動性および耐熱性を有する材料であって、電気・電子部品用途に好適である。
本発明の難燃性ポリアミド組成物は、圧縮成形法、射出成形法、押出成形法などの公知の成形法を利用することにより、各種成形体に成形することができる。
本発明の難燃性のポリアミド組成物は、耐熱性、靭性および流動性の面に優れており、これらの特性が要求される分野、あるいは精密成形分野の用途に用いることができる。具体的には、自動車用電装部品、電流遮断器、コネクターなどの電気・電子部品、コイルボビン、ハウジング等の各種成形体が挙げられる。
本発明の難燃性ポリアミド組成物は、薄肉流動長試験で示される溶融物の流動性が良好であり、薄肉部を多数有するコネクターなどの電子部品を効率よく製造することができる。
しかも該組成物から製造されたコネクターのような電子部品は靭性が高く、コネクター接合の際(雄型コネクターの端子を雌型コネクターに挿入する際)などに割れなどが発生しにくい。また、本発明の電子・電気部品は優れた耐熱性を有し、リフローはんだ工程においても熱変形することが少ない。
ポリアミド樹脂0.5gを96.5%硫酸溶液50mlに溶解し、ウベローデ粘度計を使用し、25±0.05℃の条件下で試料溶液の流下秒数を測定し、以下の式に基づき算出した。
[η]=ηSP/[C(1+0.205ηSP)、ηSP=(t−t0)/t0
[η]:極限粘度(dl/g)、ηSP:比粘度、C:試料濃度(g/dl)、t:試料溶液の流下秒数(秒)、t0:ブランク硫酸の流下秒数(秒)
PerkinElemer社製DSC7を用いて、一旦330℃で5分間保持し、次いで10℃/分の速度で23℃まで降温せしめた後、10℃/分で昇温して行った。このときの融解に基づく吸熱ピークを融点とした。
射出成形で調製した1/32インチ×1/2 ×5インチの試験片を用いて、UL94規格(1991年6月18日付のUL Test No.UL94)に準拠して、垂直燃焼試験を行い、難燃性を評価した。
さらに、UL94 V−0の評価基準の一つである、5本の試験片に対する各2回(合計10回)の接炎終了後の有炎燃焼時間の合計がより短いものが、難燃性に優れるとして評価した。尚、UL94でV−0の評価を得るためには、上記の有炎燃焼時間の合計の基準は50秒以下である。
成形機:(株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A、シリンダー温度:NT/C1/C2/C3=330℃/330℃/330℃/325℃、金型温度:120℃。
射出成形で調製した長さ64mm、幅6mm、厚さ0.8mmの試験片を、温度40℃、相対湿度95%で96時間調湿した。赤外線、および熱風併用型リフローはんだ装置(日本アントム工業(株)製SOLSIS−2011R)を用いて、図1に示す温度プロファイルのリフロー工程を行った。
試験片を厚み1mmのガラスエポキシ基板上に載置すると共に、この基板上に温度センサーを設置して、プロファイルを測定した。図1中、所定の設定温度(aは270℃、bは265℃、cは260℃、dは255℃)まで加熱し、20秒間過熱保持した、試験片が溶融せず、且つ表面にブリスターが発生しない設定温度の最大値を求め、この設定温度の最大値をリフロー耐熱性を有する温度とした。
ここで、上記設定温度とは、リフローはんだを充分に溶融させるために、試験片を20秒間以上加熱保持する温度を意味する。用いるリフローはんだ装置によって異なるが、試験片はリフロー工程においては図1に示すように、上記設定温度よりも10℃程度高い温度にまで加熱されている。
射出成形で調製した長さ64mm、幅6mm、厚さ0.8mmの試験片を用いて、曲げ試験機:NTESCO社製 AB5、スパン26mm、曲げ速度5mm/分で曲げ試験を行い、その試験片を破壊するのに要するエネルギー(靭性)を測定した。
成形機:(株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A、シリンダー温度:NT/C1/C2/C3=330℃/330℃/330℃/325℃、金型温度:100℃。
幅10mm、厚み0.5mmのバーフロー金型に以下の条件で射出した。最初の20ショットは捨て、その後10ショットの流動長(mm)を測定し、平均を求めた。
射出成形機:(株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A
射出圧力:1000kg/cm2、射出速度:99%、シリンダー設定温度:NT/C1/C2/C3=330℃/330℃/330℃/325℃、金型温度:120℃。
試料量1.0gをアルゴンガス雰囲気下において、加熱発生ガス装置を使用して密閉石英管内で温度330℃、30分加熱して発生したガスをヒドラジン水溶液に捕集し、イオンクロマトグラフ法により臭素ガス量を測定した。
リフロー耐熱性試験を行った際の、試験片のリフロー耐熱性試験前後の色の変化を目視により評価した。ここで、試験結果は、○:変色を生じない、△:変色を若干生じる、×:著しく変色を生じるとした。
組成:ジカルボン酸酸成単位(テレフタル酸:62.5モル%、アジピン酸:37.5モル%)、ジアミン成分単位(1,6−ジアミノヘキサン:100モル%)
極限粘度[η]:1.0dl/g
融点:320℃
ポリ臭素化スチレン:GLC(株)製PBS64−HW
臭素含有量:64質量%
ホウ酸亜鉛:2ZnO・3B2O3
リン酸亜鉛:Zn3(PO4)2ZnO
スズ酸亜鉛:ZnSnO3
モリブデン酸カルシウム亜鉛:ZnCaMO4
ガラス繊維/セントラル硝子(株)製ECS03−615
マレイン化SEBS:旭化成(株)製タフテックM1913
上記のような各成分を、表1に示すような量比で混合し、温度320℃に設定した二軸ベント付押出機に装入し、溶融混練してペレット状組成物を得た。次いで、得られたポリアミド組成物について性状を評価した結果を表1に示す。
ホウ酸亜鉛と少なくとも1種の他の亜鉛の塩(C)をアンチモン酸ソーダ(日本精鉱(株)製SA−A)に代えて表1の量比とした以外は実施例1同様に行いペレット状組成物を得た。次いで、得られたポリアミド組成物について性状を評価した結果を表1に示す。
ホウ酸亜鉛と少なくとも1種の他の亜鉛の塩(C)を表1に示す亜鉛の塩に代えて表1の量比とした以外は実施例1同様に行いペレット状組成物を得た。次いで、得られたポリアミド組成物について性状を評価した結果を表1に示す。
Claims (8)
- ポリアミド(A)10〜80質量%、難燃剤(B)5〜40質量%、ホウ酸亜鉛と少なくとも1種の他の亜鉛の塩(C)0.5〜10質量%、無機質強化材(D)0〜60質量%および、ドリップ防止剤(E)0〜5質量%からなる難燃性ポリアミド組成物。
- 他の亜鉛の塩が、リン酸亜鉛、スズ酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の難燃性ポリアミド組成物。
- ホウ酸亜鉛と他の亜鉛の塩が、ホウ酸亜鉛とリン酸亜鉛であり、ホウ酸亜鉛とリン酸亜鉛の質量基準の比が1:0.1〜1:5である請求項1乃至請求項2に記載の難燃性ポリアミド組成物。
- ポリアミド(A)が、(a−1)テレフタル酸成分単位30〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位0〜70モル%および/または炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位0〜70モル%とからなるジカルボン酸成分単位(但し、これらジカルボン酸成分単位の合計量は100モル%)と、(a−2)脂肪族ジアミン成分単位および/または脂環族ジアミン成分単位からなるジアミン成分単位とからなる繰返し単位100モル%から構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の難燃性ポリアミド組成物。
- ポリアミド(A)が、1,6−ジアミノヘキサンをジアミン成分単位の50〜100モル%含んでなり、融点が290〜350℃、25℃濃硫酸中で測定した極限粘度[η]が0.5〜3dl/gの範囲内にあることを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の難燃性ポリアミド組成物。
- 請求項1乃至請求項2の何れかに記載の難燃性ポリアミド組成物からなる成形体。
- 請求項1乃至請求項2の何れかに記載の難燃性ポリアミド組成物からなるコネクター。
- UL94に準じた燃焼性評価がV−0であり、成形時の発生臭素ガス量が0.1ppm以下であり、リフロー耐熱温度が260℃以上であり、靭性が40mJ以上であり、流動長が60mm以上である、請求項1乃至請求項2に記載の難燃性ポリアミド組成物。
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