JP2005239902A - 摺動性改良剤、摺動用樹脂組成物及び摺動部材 - Google Patents

摺動性改良剤、摺動用樹脂組成物及び摺動部材 Download PDF

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晴久 増田
Tsutomu Miyamori
強 宮森
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Abstract

【課題】 力学物性と摺動性とを両立した摺動部材を得ることができる摺動性改良剤を提供する。
【解決手段】 含フッ素エチレン性重合体からなる摺動性改良剤であって、上記含フッ素エチレン性重合体は、融点が120〜270℃であり反応性官能基を主鎖末端及び/又は側鎖末端に有するものである摺動性改良剤。
【選択図】 なし

Description

本発明は、摺動性改良剤、摺動用樹脂組成物及び摺動部材に関する。
近年、軽量化や低コスト化を目的に、金属部品の樹脂化検討が活発に行われ、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂等の熱可塑性樹脂を使用した自動車部品、工業部品又は電気電子部品が実用化されている。ギア、ベアリングリテーナ等の摺動用途においても、金属製摺動部材から樹脂製摺動部材への置換が進みつつあるが、高加重・高温・高速回転等の条件で使用される摺動部材には上記のような熱可塑性樹脂では摺動性が不充分であり、摩耗、溶融、割れ、欠け等の問題が発生することが多い。
一方、フッ素樹脂は、摺動性、耐熱性、耐品性、耐溶剤性、耐候性、柔軟性、電気的性質等の特性に優れ、自動車、産業機械、OA機器、電気電子機器等の幅広い分野で使用されており、とりわけ摺動性に優れており、その低い摩擦係数は樹脂の中でも突出している。しかしながら、結晶性の耐熱性熱可塑性樹脂に比べ、機械的特性や荷重たわみ温度で示されるような物理的な耐熱性に劣る場合が多く、また非晶性の耐熱性熱可塑性樹脂に比べて寸法安定性に劣っている場合があり、使用範囲が限定されているのが実情であった。
このような状況下、熱可塑性樹脂の摺動性を改良し、より広範な摺動部材への適用を図るべく、熱可塑性樹脂にフッ素樹脂を添加・配合する試みが盛んに行われている。その結果、熱可塑性樹脂に低分子量ポリテトラフルオロエチレン樹脂を添加することで、該熱可塑性樹脂の摺動性が向上することが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。また、このような摺動性改良剤としての低分子量ポリテトラフルオロエチレン樹脂の製造検討も実施され、既に市販・実用化されるに至っている。
しかしながら、一般に、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂をはじめとするフッ素樹脂は表面エネルギーが小さいので、他の熱可塑性樹脂との親和性に乏しく、また両者の界面接着力は実質上ないに等しい。従って、熱可塑性樹脂の摺動性を改良する目的で、フッ素樹脂を該熱可塑性樹脂に添加した場合、フッ素樹脂の分散不良に起因する外観悪化や力学性能の低下、並びに、層間剥離による割れや欠けの発生といった問題が発生していた。更に、表面の滑り性を改良する目的で、熱可塑性樹脂からなる繊維やフィルムにフッ素樹脂を添加、配合する場合、フッ素樹脂の分散粒子が粗大であるので、紡糸の際に糸切れを起こしたり、フィルムの透明性が悪化したりすることが多く、繊維、フィルム等への分散性に優れたフッ素樹脂の開発が望まれている。
フッ素樹脂と他の熱可塑性樹脂とが本質的に非相溶性であるという問題を解決するために、第3成分としていわゆる相溶化剤を添加しフッ素樹脂と他の熱可塑性樹脂との親和性を改良することがしばしば行われている(例えば、特許文献3、特許文献4及び特許文献5参照)。
しかしながら、これらの例では、実質上全て、PVdFとアクリルポリマーとの親和性が優れていることを利用して合成された非フッ素系相溶化剤を用いており、フッ素樹脂がPVdFに限定されている。また、このような相溶化剤を用いた親和性改良方法では、相溶化剤自身の摺動性、耐薬品性又は耐熱性が上記熱可塑性樹脂よりも劣るので、成形品の物性を低下させるという問題点があった。
反応性官能基含有フッ素樹脂を利用した組成物も知られている(例えば、特許文献6、特許文献7及び特許文献8参照)。しかしながら、これらの文献では、反応性官能基含有フッ素樹脂としてオイル状物質として得られるフルオロポリエーテルや、フッ素樹脂とは規定し難い低分子量成分のポリマーが例示されているのみであり、それら物質の添加による効果は、マトリックスポリマーの潤滑性改良程度の限定されたものと考えられる。
一方、熱可塑性樹脂に対するフッ素樹脂の分散性や接着性を改良すべく、特定の反応性官能基含有フッ素樹脂を利用した組成物が見出されている(例えば、特許文献9、特許文献10及び特許文献11参照)。これらの文献には、反応性官能基含有フッ素樹脂の分散性が改良され、機械的特性、成形性、耐熱性、耐薬品性に優れた組成物が得られることが記載されている。しかしながら、これらの文献には摺動性の改良効果について何も記載されていない。
熱可塑性非フッ素化ホストポリマーと、副次量のフルオロポリマーとを含む溶融加工可能なポリマー組成物が開示されている(例えば、特許文献12参照。)。しかしながら、この文献におけるフルオロポリマーはホストポリマーの溶融加工性を改良する加工助剤として用いられており、摺動性について記載されていない。
特開平5−105804号公報 特開平8−151497号公報 特開昭62−218446号公報 特開平3−62853号公報 特開平1−165647号公報 特開昭63−105062号公報 特開昭63−254155号公報 特開昭63−264672号公報 国際公開第94/13738号パンフレット 国際公開第95/33782号パンフレット 特開2003−176394号公報 特表2002−544359号公報
本発明の目的は、上記現状に鑑み、力学物性と摺動性とを両立した摺動部材を得ることができる摺動性改良剤を提供することにある。
本発明は、含フッ素エチレン性重合体からなる摺動性改良剤であって、上記含フッ素エチレン性重合体は、融点が120〜270℃であり反応性官能基を主鎖末端及び/又は側鎖末端に有するものである摺動性改良剤である。
本発明は、摺動性改良剤(A)と、非フッ素ポリマー(b)からなる熱可塑性樹脂(B)とを配合してなる摺動用樹脂組成物であって、上記摺動性改良剤(A)は、上記摺動性改良剤であり、上記摺動性改良剤(A)を構成する含フッ素エチレン性重合体(a)は、融点が120〜270℃であり反応性官能基を主鎖末端及び/又は側鎖末端に有するものであり、上記非フッ素ポリマー(b)は、上記反応性官能基との結合形成性を有する結合形成性部位を有するものであり、上記含フッ素エチレン性重合体(a)は、上記含フッ素エチレン性重合体(a)と上記熱可塑性非フッ素樹脂(B)との合計の0.5〜30質量%であることを特徴とする摺動用樹脂組成物である。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の摺動性改良剤は、含フッ素エチレン性重合体(a)からなるものであって、上記含フッ素エチレン性重合体(a)は、融点が120〜270℃であり反応性官能基を主鎖末端及び/又は側鎖末端に有するものである。
上記含フッ素エチレン性重合体(a)は、フッ素含有エチレン性単量体から得られる重合体である。
上記フッ素含有エチレン性単量体としては特に限定されず、例えば、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、下記一般式(2)
CH=CX(CF(2)
(式中、Xは、水素原子又はフッ素原子を表し、Xは、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは、1〜10の整数を表す。)で表される単量体等が挙げられ、これらのなかから1種又は2種以上を用いることができる。
上記含フッ素エチレン性重合体(a)は、上記フッ素含有エチレン性単量体とフッ素非含有エチレン性単量体とから得られる共重合体であってもよい。
上記フッ素非含有エチレン性単量体は、フッ素原子を有さず、後述の反応性官能基を有しないビニル基含有単量体であって、例えば、エチレン〔Et〕、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられ、これらのなかから1種又は2種以上を用いることができる。
上記含フッ素エチレン性重合体(a)は、TFEとEtとを重合することにより得られたものであることが好ましい。
上記含フッ素エチレン性重合体(a)は、また、TFEと、下記一般式(1)
CF=CF−Rf (1)
(式中、Rfは、−CF又は−ORfを表す。Rfは、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物とを重合することにより得られたものであることが好ましい。
上記含フッ素エチレン性重合体(a)は、テトラフルオロエチレン単位19〜90モル%、エチレン単位9〜80モル%、及び、下記一般式(1)
CF=CF−Rf (1)
(式中、Rfは、−CF又は−ORfを表す。Rfは、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物に由来するパーフルオロエチレン性不飽和化合物単位1〜72モル%からなるものであることが好ましい。
上記テトラフルオロエチレン単位のより好ましい下限は、20モル%、より好ましい上限は、70モル%である。
上記エチレン単位のより好ましい下限は、20モル%、より好ましい上限は、60モル%である。
上記パーフルオロエチレン性不飽和化合物単位のより好ましい上限は、60モル%である。
本明細書において、上記「テトラフルオロエチレン単位」、「エチレン単位」及び「パーフルオロエチレン性不飽和化合物単位」は、含フッ素エチレン性重合体(a)の分子構造上の一部分であり、それぞれテトラフルオロエチレン、エチレン、パーフルオロエチレン性不飽和化合物に由来する部分である。例えば、上記「テトラフルオロエチレン単位」は、−(CF−CF)−で表される。
含フッ素エチレン性重合体(a)は、テトラフルオロエチレン単位19〜90モル%、エチレン単位9〜80モル%、ヘキサフルオロプロピレン単位0〜15モル%、及び、(1、1、5−トリハイドロ−1−ペンテン)単位0.1〜3モル%からなるものであることがより好ましい。
含フッ素エチレン性重合体(a)が有する反応性官能基としては特に限定されず、例えば、エポキシ基;イソシアネート基;水酸基;カルボニル基;カルボキシル基、塩を形成しているカルボキシル基、カルボニルジオキシ基〔−O−C(=O)−O−〕、アルコキシカルボニル基、ハロホルミル基〔−C(=O)−X;Xはハロゲン原子〕等のカルボニル基を有する基等が挙げられ、なかでも、カルボニル基、カルボニル基を有する基、水酸基及び/又はエポキシ基が好ましい。
上記カルボニル基を有する基としては、1種又は2種以上組み合わせて用いることができ、導入が容易であり、後述するポリアミド系樹脂との反応性が高い点で、カルボニルジオキシ基及び/又はハロホルミル基であることが好ましい。上記エポキシ基は、炭素数が3個以上のものであってもよいが、炭素数が2個のものであることが好ましい。
上記反応性官能基の数は、含フッ素エチレン性重合体(a)のカルボニルジオキシ基及び/又はハロホルミル基の合計数が主鎖炭素数1×10個あたり3〜1000個であるものが好ましい。カルボニルジオキシ基及び/又はハロホルミル基の合計数が3個未満であると、例えば後述する熱可塑性非フッ素樹脂(B)等のホスト樹脂との共有結合等が形成されにくい場合があり、1000個を超えると、例えば後述する熱可塑性非フッ素樹脂(B)等のホスト樹脂との溶融混練を行う場合、カルボニルジオキシ基及び/又はハロホルミル基の化学変化によって発生するガスが摺動用樹脂組成物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。耐熱性、耐薬品性の観点から、より好ましい下限は、10個、より好ましい上限は、500個である。
上記含フッ素エチレン性重合体(a)は、上記反応性官能基を有するものであるので、後述の熱可塑性非フッ素樹脂(B)等のホスト樹脂中での分散性を高め、含フッ素エチレン性重合体(a)からなる粒子が例えば粒子径5μmを超えるように粗大化することを回避し、得られる成形品等の摺動性や力学性能を向上することができる。
上記含フッ素エチレン性重合体(a)のカルボニルジオキシ基又はハロホルミル基の個数は、赤外吸収スペクトル分析により得られる値である。
上記含フッ素エチレン性重合体(a)の主鎖末端に上記反応性官能基を導入する方法としては特に限定されないが、例えば、重合開始剤として上記反応性官能基又は反応性官能基に変換し得る基を有するものを用いることによる。
上記反応性官能基に変換し得る基は、主鎖末端に重合開始剤由来の構造が形成されたのち、化学反応を経て形成されるものであってもよい。上記重合開始剤として、例えば、過硫酸アンモニウム〔APS〕等のパーオキシ化合物を用いる場合、上記反応性官能基として−COF、−COOH、−CHOH等を主鎖末端に導入することができる。
上記含フッ素エチレン性重合体(a)の側鎖末端に上記反応性官能基を導入する方法としては、反応性官能基を有する単量体を重合する方法、反応性官能基に変換し得る官能基を有する単量体を重合したのち、その官能基を反応性官能基に変換する方法等が挙げられる。
上記反応性官能基は、架橋による溶融粘度上昇を抑制して分散性向上を図ることができる点で、主鎖末端に有するものが好ましい。
上記含フッ素エチレン性重合体(a)は、溶融加工性等の観点から融点が120〜270℃であるものが好ましい。
上記含フッ素エチレン性重合体(a)の融点が上記範囲であると、溶融加工を容易に行うことができる。上記含フッ素エチレン性重合体(a)の融点は、成形条件や、熱可塑性非フッ素樹脂(B)の性質等をふまえて選択することができるが、例えば、上限は250℃、好ましくは230℃とすることが成形加工性に有利となる。
本発明の摺動性改良剤は、上述の熱可塑性非フッ素樹脂(B)を用いて得られる熱可塑性樹脂溶融加工体の摺動性を改良する摺動性改良方法に好適に用いることができる。上記摺動性改良方法は、(1)上記熱可塑性非フッ素樹脂(B)と上述の含フッ素エチレン性重合体(a)とを上記含フッ素エチレン性重合体(a)が上記含フッ素エチレン性重合体(a)と上記熱可塑性非フッ素樹脂(B)との合計の0.5〜30質量%となる量にて配合することにより熱可塑性樹脂配合物を得る工程、及び、(2)上記熱可塑性樹脂配合物を溶融混練することにより熱可塑性樹脂組成物を得る工程、(3)上記熱可塑性樹脂配合物又は熱可塑性樹脂組成物を成形加工することにより熱可塑性樹脂溶融加工体を形成する工程を含むことを特徴とするものである。
本発明の摺動用樹脂組成物は、上記摺動性改良剤(A)と、熱可塑性非フッ素樹脂(B)とを配合してなるものである。
本明細書において、上記「配合してなるもの」は、摺動性改良剤(A)と熱可塑性非フッ素樹脂(B)とを配合して得られるものであれば、上記摺動性改良剤(A)と上記熱可塑性非フッ素樹脂(B)とを配合してドライブレンド等により溶融させることなく混合したものであってもよいし、上記摺動性改良剤(A)と上記熱可塑性非フッ素樹脂(B)とを後述する溶融混練によって得られるものであってもよい。
上記摺動性改良剤(A)は、上述した本発明の摺動性改良剤である。従って、上記摺動性改良剤(A)は、上述の含フッ素エチレン性重合体(a)からなるものである。上記含フッ素エチレン性重合体(a)は、反応性官能基を主鎖末端及び/又は側鎖末端に有するものである。
上記熱可塑性非フッ素樹脂(B)は、非フッ素ポリマー(b)からなるものである。
上記非フッ素ポリマー(b)は、上記反応性官能基との結合形成性を有する結合形成性部位を有するものである。
上記結合形成性部位は、上記含フッ素エチレン性重合体(a)の反応性官能基と結合形成性を有するものであればよく、例えば後述するポリアミド系樹脂のように主鎖中に存在するアミド結合[−NHCO−]等の結合であってもよいし、主鎖及び/又は側鎖に有する官能基であってもよいし、上記主鎖中の結合と主鎖及び/又は側鎖に有する官能基との両方であってもよい。
上記結合形成性部位としては、例えば、含フッ素エチレン性重合体(a)の反応性官能基がカルボニル基及び/又はカルボニル基を有する基である場合には、反応性の面から見て、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物基〔−C(=O)−O−C(=O)−〕、アミド結合、アミノ基、カルバモイル基〔−C(=O)−NH〕、スルホンアミド基〔−SONH〕等が挙げられ、なかでも、アミド結合又はアミノ基が好ましい。
上記非フッ素ポリマー(b)は、分子内にフッ素原子を有しないポリマーである。熱可塑性非フッ素樹脂(B)は、上記非フッ素ポリマー(b)からなる熱可塑性樹脂である。
上記熱可塑性非フッ素樹脂(B)としては、エチレン/ビニルアルコール共重合体からなる樹脂;ポリアクリロニトリル樹脂〔PAN〕等のアクリル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリグリコール酸樹脂〔PGA〕;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;変性ポリオレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのなかから1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及び/又は、エチレン/ビニルアルコール系共重合体からなる樹脂が好ましく、ポリアミド系樹脂がより好ましい。
上記ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂〔PET〕、ポリブチレンテレフタレート樹脂〔PBT〕、ポリエチレンナフタレート樹脂〔PEN〕、ポリブチレンナフタレート樹脂〔PBN〕、液晶ポリエステル〔LCP〕等の芳香環含有ポリエステル樹脂が好ましい。
上記変性ポリオレフィン系樹脂としては、無水マレイン酸等の酸無水物で変性することにより結合形成性部位を導入したものが好ましい。
本明細書において、上記「ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及び/又は、エチレン/ビニルアルコール系共重合体からなる樹脂」は、これらの樹脂1種又は2種以上の組み合わせであってもよいし、これらの樹脂1種あたり1つ又は2つ以上を用いてもよい。
上記熱可塑性非フッ素樹脂(B)として、上記ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂を用いる場合、得られる溶融加工体において、これらの樹脂が本来有する透明性を大きく損なわないものとすることができる。
上記ポリアミド系樹脂は、主鎖中にアミド結合を有する結晶性高分子からなるものである。このようなものとしては、例えば、アミド結合が脂肪族構造又は脂環族構造と結合している結晶性高分子からなる樹脂、いわゆるナイロン樹脂が挙げられる。ナイロン樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン66/12、ナイロン46、ナイロン6T、ナイロン9T、メタキシリレンジアミン/アジピン酸共重合体、及び、これらのうち少なくとも2種のブレンド物等が挙げられ、ナイロン6、ナイロン66又はナイロン46が好ましい。
上記熱可塑性非フッ素樹脂(B)としては、上記含フッ素エチレン性重合体(a)と溶融混練するものである場合、溶融混練時に熱分解しない程度の融点を有するものが選択される。
上記含フッ素エチレン性重合体(a)は、上記含フッ素エチレン性重合体(a)と上記熱可塑性非フッ素樹脂(B)との合計の0.5〜30質量%であるものである。0.5質量%未満であると、充分な摺動性能が得られない場合があり、30質量%を超えると、相分離が起きる場合がある。好ましくは1質量%を超え、より好ましくは、2.5質量%以上である。
本発明の摺動用樹脂組成物は、融点が上記範囲内であり反応性官能基を有する含フッ素エチレン性重合体(a)と、上記結合形成性部位を有する熱可塑性非フッ素樹脂(B)とを上記質量比で配合してなるものであるので、配合し好ましくは溶融混練する際、上記反応性官能基と上記結合形成性部位との反応により微分散が可能となり、また、成形性に優れることから、摺動性と外観と力学性能に優れた溶融加工体が得られるものである。
本発明の摺動用樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲でガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維、チタン酸カリウム繊維、アラミド繊維等の繊維状の強化材;炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレイ、カーボン粉末、グラファイト、ガラスビーズ等の無機充填材;着色剤;難燃剤等通常使用される無機又は有機の充填材を含むものであってもよい。
本発明の摺動用樹脂組成物は、上記摺動性改良剤(A)と熱可塑性非フッ素樹脂(B)とを例えば、配合ミル、バンバリーミキサー等の従来公知の非溶融混合方法により混合することによって得られた熱可塑性樹脂配合物であってもよいが、通常、上記熱可塑性樹脂配合物を更に溶融混練することにより得られるものが好ましい。
上記溶融混練の温度としては、摺動性改良剤(A)と熱可塑性非フッ素樹脂(B)の種類及び融点にもよるが、通常、130〜330℃である。
本発明の摺動用樹脂組成物は、上記熱可塑性樹脂配合物を、二軸押出機等の押出機を用いて溶融混練して押出して得られたペレットであってもよいし、所望の微粒子サイズ又はサイズ分布に微粉砕して得られた粉末であってもよい。
本発明の摺動用樹脂組成物は、含フッ素エチレン性重合体(a)と非フッ素ポリマー(b)との間に共有結合、イオン結合及び/又は水素結合が形成されているものであることが好ましい。
上記共有結合としては、例えば、含フッ素エチレン性重合体(a)における反応性官能基と、非フッ素ポリマー(b)における結合形成性部位とが反応することにより形成される結合等が挙げられる。
本明細書において、上記「共有結合、イオン結合及び/又は水素結合」は、共有結合のみ、イオン結合のみ、水素結合のみであってもよいし、共有結合とイオン結合、イオン結合と水素結合、共有結合と水素結合、共有結合とイオン結合と水素結合、の何れであってもよい。共有結合、イオン結合、水素結合は、それぞれ1種又は2種以上であってもよい。本明細書において、上記「共有結合、イオン結合及び/又は水素結合」を以下、「分子間相互作用」ということがある。
本発明の摺動用樹脂組成物は、熱可塑性非フッ素樹脂(B)からなるマトリックス中に含フッ素エチレン性重合体(a)からなる粒子が粒子径5μm以下にて分散している構造であることが好ましい。なお、上記において、熱可塑性非フッ素樹脂(B)からなるマトリックス中に含フッ素エチレン性重合体(a)からなる粒子が粒子径5μm以下にて分散している構造とは、熱可塑性非フッ素樹脂(B)と含フッ素エチレン性重合体(a)とが多相形態構造を形成しない場合も含み得る。
上記反応性官能基を主鎖末端及び/又は側鎖末端に有しないフルオロポリマーを用いた場合、熱可塑性非フッ素樹脂(B)からなるマトリックス中におけるフルオロポリマーの粒子径は、5μmを上回るものとなりやすい。
上記摺動用樹脂組成物は、含フッ素エチレン性重合体(a)と非フッ素ポリマー(b)とを溶融混練等して得られるものである。
本明細書において、上記摺動用樹脂組成物における「マトリックス中に」は、マトリックスの内部に限らず、マトリックスの外表面も含む概念である。
上記摺動用樹脂組成物は、含フッ素エチレン性重合体(a)が反応性官能基を有するものであることにより、非フッ素ポリマー(b)と共有結合等の上記分子間相互作用を行わしめ相溶性を向上させた結果、粒子径5μm以下であるような含フッ素エチレン性重合体(a)の微細分散、または多相形態構造を有しない均一構造を実現することができたと考えられる。粒子径の好ましい上限は、3μm、より好ましい上限は、2μmである。上記摺動用樹脂組成物は、含フッ素エチレン性重合体(a)の反応性官能基と非フッ素ポリマー(b)の結合形成性部位とが、一部若しくは全部が反応したものであると考えられる。
本発明の摺動用樹脂組成物は、マトリックスを構成する熱可塑性非フッ素樹脂(B)中に含フッ素エチレン性重合体(a)からなる粒子が微細分散しているか、又は、均一構造を形成していることにより、得られる溶融加工体表面における樹脂凝集体を低減し、外観の美麗性をもたらすものである。本明細書において、上記「樹脂凝集体」は、未溶融樹脂そのもの、溶融し熱可塑性非フッ素樹脂(B)中に分散しているが相溶性が不足し粗大粒子となっている含フッ素エチレン性重合体(a)、若しくは、含フッ素エチレン性重合体(a)又は非フッ素ポリマー(b)の低分子量成分等が溶融加工体表面で凝集し析出したものである。
上記摺動用樹脂組成物を用いて得られる摺動部材もまた、本発明の一つである。
上記摺動部材としては特に限定されないが、例えば、ギア、ベアリングリテーナ、スイッチ、ベルト、軸受け、カム、ピストン、ローラー、パッキン、ソケット等が挙げられる。
本発明の摺動用樹脂組成物は、目的とする成形品の種類、用途、形状などに応じて、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形、流延成形等の一般に熱可塑性樹脂組成物に対して用いられている成形方法によって成形することにより、成形品を製造することができる。また上記成形方法を組み合わせた成形方法を採用することもできる。更に、本発明の摺動用樹脂組成物と他のポリマーとを複合成形することもできる。
上記摺動用樹脂組成物を用いて得られる繊維もまた、本発明の一つである。上記繊維は、溶融紡糸することにより得られるものである。
本発明の摺動用樹脂組成物を用いて得られる繊維は、繊維自体が摺動性に優れたものであるので、従来のように撥剤を塗布しなくともよいものである。
上記摺動用樹脂組成物を用いて得られる成形体であって、フィルム状又はシート状であるものもまた、本発明の一つである。
上記フィルム状又はシート状である成形体は、常法により成形加工し得ることができる。
上記摺動用樹脂組成物を用いて得られる成形体としてはほかにも、チューブ状の成形体が挙げられ、常法により成形加工することができる。
本発明の摺動性改良剤は、上述の構成よりなるので、力学物性と摺動性とを両立した摺動部材を得ることができる。
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、成形品の作製、限界PV値、動摩擦係数、摩耗量、引張強さ、引張伸び及び耐衝撃性の測定、並びに、分散粒子径の評価は下記の方法に従って行った。
〔試験片の作製〕
射出成形機を使用して、シリンダー温度275℃(実施例及び比較例)、及び金型温度80℃(実施例及び比較例)の条件下で、限界PV値、動摩擦係数及び摩耗量を測定するための測定用試験片(寸法:40mm×40mm×3mm)、引張強さ及び引張伸びを測定するための測定用試験片(JIS−1号ダンベル型試験片)、耐衝撃性を測定するための測定用試験片(寸法:64mm×12.7mm×3.2mm)をそれぞれ作製した。
〔限界PV値、動摩擦係数及び摩耗量の測定〕
上記の方法で作製した試験片(絶乾状態)を用いて、JIS K 7218に準拠して、摩擦摩耗試験機(エー・アンド・デイ社製)を使用して、面圧0.5MPa、すべり速度50〜200cm/秒の条件下、鋼材S45C(サンドペーパー仕上げ)を相手材に、限界PV値、動摩擦係数及び摩耗量を測定した。
〔引張強さ及び引張伸びの測定〕
上述した方法で作製した試験片(絶乾状態)を用いて、JIS K 7113に準拠して、オ−トグラフ(島津製作所社製)を使用して、23℃における引張強さ及び引張伸びを測定した。
〔耐衝撃性の測定〕
上述した方法で作製した試験片(絶乾状態)を用いて、JIS K 7110に準拠して、アイゾット衝撃試験機(東洋精機製作所社製)を使用して、23℃におけるノッチ付アイゾット衝撃値を測定した。
〔分散粒子径の評価〕
下記の実施例及び比較例で得られた組成物のペレットを用いて、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製)により、含フッ素エチレン性重合体(I)の分散粒子径を評価した。評価は、観察された分散粒子の中で最も大きい粒子を選び、その粒子径以下という判断で実施した。また、分散粒子径が0.1μm以下の微細なものであり、走査型電子顕微鏡によって分散粒子径が判断できない場合には、判別不可と記載した。
以下の実施例及び比較例では、後述する含フッ素エチレン性重合体(I−1)、含フッ素エチレン性重合体(I−2)、含フッ素エチレン性重合体(I−3)、熱可塑性非フッ素樹脂(II)、低分子量ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン〔TFE〕/ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕/エチレン〔Et〕共重合体を使用した。
合成例1 含フッ素エチレン性重合体(I−1)の合成
オートクレーブに蒸留水380Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、1−フルオロ−1,1−ジクロロエタン75kg、HFP 155kg及びパーフルオロ(1,1,5−トリハイドロ−1−ペンテン)〔HF−Pe〕0.5kgを仕込み、系内を35℃、撹拌速度200rpmに保った。その後、TFEを0.7MPaまで圧入し、更に引き続きEtを1.0MPaまで圧入した後、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート2.4kgを投入して重合を開始した。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、TFE:Et:HFP=40.5:44.5:15.0モル%の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を1.0MPaに保った。そして、HF−Peを合計量1.5kgとなるように連続して仕込み、20時間、撹拌を継続した。その後、放圧して大気圧に戻した後、反応生成物を水洗し、乾燥して含フッ素エチレン性重合体(I−1)の粉末205kgを得た。分析結果を表1に示す。
上記含フッ素エチレン性重合体の単量体組成は、19F−NMRにより得られる 値であり、融点は、示差走査型熱量計〔DSC〕を用いて得られる値である。
合成例2 含フッ素エチレン性重合体(I−2)の合成
各単量体が表1に示す単量体組成となるように各単量体を仕込み、含フッ素エチレン性重合体(I−1)と同様の合成方法にて、含フッ素エチレン性重合体(I−2)を得た。分析結果を表1に示す。
合成例3 含フッ素エチレン性重合体(I−3)の合成
オートクレーブに蒸留水380Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、1−フルオロ−1,1−ジクロロエタン325kg、HF−Pe0.9kgを仕込み、系内を35℃、撹拌速度200rpmに保った。その後、TFEを0.86MPaまで圧入し、更に引き続きエチレンを0.90MPaまで圧入した後、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート3.5kgを投入して重合を開始した。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、モル分率でTFE:Et=64.8:35.2の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を0.90MPaに保った。そして、HF−Peを合計量9.1kgとなるように連続して仕込み、24時間、撹拌を継続した。その後、放圧して大気圧に戻した後、反応生成物を水洗し、乾燥して含フッ素エチレン性重合体(I−3)の粉末200kgを得た。分析結果を表1に示す。
合成例4 反応性官能基を検出しないフルオロポリマーの合成
合成例1で得られた含フッ素エチレン性重合体(I−1)95kg、純水100Lをオートクレーブに入れ、28%アンモニア水7kgを加え、攪拌を行いながら、80℃で5時間加熱した。内容物を取り出し、水洗、乾燥を行ったところ、反応性官能基を検出しないフルオロポリマーを得ることができた。
熱可塑性非フッ素樹脂(II):
ナイロン66(商品名:レオナ1300S、旭化成社製)を用いた。
低分子量ポリテトラフルオロエチレンの合成:
オートクレーブに蒸留水2960L及びパーフルオロオクタン酸アンモニウム1.9gを仕込み、70℃に加温しながら充分に窒素置換を行った後、メチルクロライド30g、及び、ヘキサフルオロプロピレン2.0gを仕込んだ。その後、テトラフルオロエチレン(TFE)で内圧を0.70MPaに加圧し、撹拌した。次に、過硫酸アンモニウム2.25gの水溶液を投入し、オートクレーブの内圧を0.80MPaにして重合を行った。TFEは、オートクレーブの内圧を0.80MPaに保つように連続して供給した。TFEの消費量が450gに達した時点で、TFEの供給と撹拌を停止し、直ちにオートクレーブ内を常圧に戻し、重合を終了させた。得られたポリテトラフルオロエチレン水性分散液を凝析し、その後、乾燥を行い、低分子量ポリテトラフルオロエチレン(融点322℃)を得た。
TFE/HFP/Et共重合体:
特表2002−544359号公報の実施例に記載のTFE:HFP:Et共重合体〔TFE:HFP:Et(質量%)=20:63:17、融点=205℃〕を使用した。
実施例1
上記の含フッ素エチレン性重合体(I−1)5質量部及び熱可塑性非フッ素樹脂(II)95質量部とを予備混合した後、二軸押出機(商品名:BT−40、プラスチックス工業試験所社製)に供給してシリンダー温度275℃の条件下に溶融混練して押し出し、冷却、切断してペレットを製造した。得られた樹脂組成物のペレットを用いて上記した方法で試験片を作製し、限界PV値、動摩擦係数、摩耗量、引張強さ、引張伸び及び耐衝撃性の測定、並びに、分散粒子径の評価を実施した結果を表2に示す。
実施例2
含フッ素エチレン性重合体(I−1)を10質量部、熱可塑性非フッ素樹脂(II)を90質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
実施例3
含フッ素エチレン性重合体(I−2)5質量部及び熱可塑性非フッ素樹脂(II)95質量部とを予備混合した後、二軸押出機に供給してシリンダー温度275℃の条件下に溶融混練して押し出し、冷却、切断してペレットを製造した。得られた樹脂組成物のペレットを用いて上記した方法で試験片を作製し、限界PV値、動摩擦係数、摩耗量、引張強さ、引張伸び及び耐衝撃性の測定、並びに、分散粒子径の評価を実施した結果を表2に示す。
実施例4
含フッ素エチレン性重合体(I−2)を10質量部、熱可塑性非フッ素樹脂(II)を90質量部に変更した以外は、実施例3と同様に行った。結果を表2に示す。
実施例5
含フッ素エチレン性重合体(I−3)を5質量部、熱可塑性非フッ素樹脂(II)95質量部とを予備混合した後、二軸押出機に供給してシリンダー温度275℃の条件下に溶融混練して押し出し、冷却、切断してペレットを製造した。得られた樹脂組成物のペレットを用いて上記した方法で試験片を作製し、限界PV値、動摩擦係数、摩耗量、引張強さ、引張伸び及び耐衝撃性の測定、並びに、分散粒子径の評価を実施した結果を表2に示す。
実施例6
含フッ素エチレン性重合体(I−3)を10質量部、熱可塑性非フッ素樹脂(II)を90質量部に変更した以外は、実施例5と同様に行った。結果を表2に示す。
実施例7
含フッ素エチレン性重合体(I−2)を0.1質量部、熱可塑性非フッ素樹脂(II)99.9質量部に変更した以外は、実施例3と同様に行った。結果を表2に示す。
比較例1
熱可塑性非フッ素樹脂(II)のペレットを単独で用い、上述した方法で試験片を作製し、限界PV値、動摩擦係数、摩耗量、引張強さ、引張伸び及び耐衝撃性の測定、並びに、分散粒子径の評価を実施した結果を表2に示す。
比較例2
上記の低分子量ポリテトラフルオロエチレン5質量部及び熱可塑性非フッ素樹脂(II)95質量部とを予備混合した後、二軸押出機に供給してシリンダー温度275℃の条件下に溶融混練して押し出し、冷却、切断してペレットを製造した。得られた樹脂組成物のペレットを用いて上記した方法で試験片を作製し、限界PV値、動摩擦係数、摩耗量、引張強さ、引張伸び及び耐衝撃性の測定、並びに、分散粒子径の評価を実施した結果を表2に示す。
比較例3
低分子量ポリテトラフルオロエチレンを10質量部、熱可塑性非フッ素樹脂(II)を90質量部に変更した以外は、比較例2と同様に行った。結果を表2に示す。
比較例4
TFE/HFP/Et共重合体 0.1質量部及び熱可塑性非フッ素樹脂(II)99.9質量部とを予備混合した後、二軸押出機に供給してシリンダー温度275℃の条件下に溶融混練して押し出し、冷却、切断してペレットを製造した。得られた樹脂組成物のペレットを用いて上記した方法で試験片を作製し、限界PV値、動摩擦係数、摩耗量、引張強さ、引張伸び及び耐衝撃性の測定、並びに、分散粒子径の評価を実施した結果を表2に示す。
表2から、含フッ素エチレン性重合体を用いた実施例は何れも、低分子量PTFEを用いた比較例2や比較例3と匹敵する摺動性能を有し、かつ比較例2や比較例3に比べて優れた力学物性を有することがわかった。また実施例は何れも、摺動性改良剤を含まない比較例1や反応性官能基を有さない比較例4に比べて、力学物性を損なうことなく摺動性を向上することができることがわかった。
また、添加剤を0.5質量%以上添加した実施例3及び実施例4は、実施例7よりも限界PV値、動摩擦係数及び摩耗量に関し特に優れたものであることがわかった。
〔分散性の評価〕
実施例4、比較例3でそれぞれ得られた試験片の表面を1万倍の走査型電子顕微鏡を用いて観察した。図1に示すように実施例4で得られた試験片の表面は平滑であり、樹脂凝集体の析出は観察されなかったのに対し、図2に示すように比較例3で得られた試験片の表面には直径50〜60μm程度の樹脂凝集体の粗大粒子が観察された。
実施例8
合成例4で得られた反応性官能基を検出しないフルオロポリマー10質量部と上記熱可塑性非フッ素樹脂(II)90質量部とを予備混合した後、実施例1で用いたものと同じ二軸押出機に供給してシリンダー温度275℃の条件下に溶融混練して押し出し、冷却、切断してペレットを得た。得られたペレットから実施例1と同様の方法により試験片を得、表面観察を行ったところ、反応性官能基を検出しないフルオロポリマーの分散粒子径は平均9μmであった。
本発明の摺動用樹脂組成物は、優れた摺動性を示すとともに、力学性能に優れるので、ギア、ベアリングリテーナ、スイッチ、ベルト、軸受け、カム、ピストン、ローラー、パッキン、ソケット等の摺動部材のほか、繊維、フィルム、シート等にも好適に用いることができる。
図1は、実施例4で得られた試験片の表面の走査型電子顕微鏡写真である。 図2は、比較例3で得られた試験片の表面の走査型電子顕微鏡写真である。

Claims (13)

  1. 含フッ素エチレン性重合体(a)からなる摺動性改良剤であって、
    前記含フッ素エチレン性重合体(a)は、融点が120〜270℃であり反応性官能基を主鎖末端及び/又は側鎖末端に有するものである
    ことを特徴とする摺動性改良剤。
  2. 反応性官能基は、カルボニル基、カルボニル基を有する基、水酸基及び/又はエポキシ基である請求項1記載の摺動性改良剤。
  3. カルボニル基を有する基は、カルボニルジオキシ基及び/又はハロホルミル基である請求項2記載の摺動性改良剤。
  4. 含フッ素エチレン性重合体(a)は、テトラフルオロエチレンとエチレンとを重合することにより得られたものである請求項1、2又は3記載の摺動性改良剤。
  5. 含フッ素エチレン性重合体(a)は、テトラフルオロエチレンと、下記一般式(1)
    CF=CF−Rf (1)
    (式中、Rfは、−CF又は−ORfを表す。Rfは、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物とを重合することにより得られたものである請求項1、2又は3記載の摺動性改良剤。
  6. 含フッ素エチレン性重合体(a)は、テトラフルオロエチレン単位19〜90モル%、エチレン単位9〜80モル%、及び、下記一般式(1)
    CF=CF−Rf (1)
    (式中、Rfは、−CF又は−ORfを表す。Rfは、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物に由来するパーフルオロエチレン性不飽和化合物単位1〜72モル%からなるものである請求項1、2又は3記載の摺動性改良剤。
  7. 摺動性改良剤(A)と、非フッ素ポリマー(b)からなる熱可塑性非フッ素樹脂(B)とを配合してなる摺動性樹脂組成物であって、
    前記摺動性改良剤(A)は、請求項1、2、3、4、5又は6記載の摺動性改良剤であり、
    前記摺動性改良剤(A)を構成する含フッ素エチレン性重合体(a)は、融点が120〜270℃であり反応性官能基を主鎖末端及び/又は側鎖末端に有するものであり、
    前記非フッ素ポリマー(b)は、前記反応性官能基との結合形成性を有する結合形成性部位を有するものであり、
    前記含フッ素エチレン性重合体(a)は、前記含フッ素エチレン性重合体(a)と前記熱可塑性非フッ素樹脂(B)との合計の0.5〜30質量%である
    ことを特徴とする摺動用樹脂組成物。
  8. 含フッ素エチレン性重合体(a)と非フッ素ポリマー(b)との間に共有結合、イオン結合及び/又は水素結合が形成されている請求項7記載の摺動用樹脂組成物。
  9. 熱可塑性非フッ素樹脂(B)からなるマトリックス中に含フッ素エチレン性重合体(a)からなる粒子が粒子径5μm以下にて分散している請求項8記載の摺動用樹脂組成物。
  10. 熱可塑性非フッ素樹脂(B)は、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及び/又は、エチレン/ビニルアルコール系共重合体からなる樹脂である請求項7、8又は9記載の摺動用樹脂組成物。
  11. 請求項7、8、9又は10記載の摺動用樹脂組成物を用いて得られる
    ことを特徴とする摺動部材。
  12. 請求項7、8、9又は10記載の摺動用樹脂組成物を用いて得られる
    ことを特徴とする繊維。
  13. 請求項7、8、9又は10記載の摺動用樹脂組成物を用いて得られる成形体であって、
    フィルム状又はシート状である
    ことを特徴とする成形体。
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