JP2005239775A - 蛍光体およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 半導体ナノ粒子をはじめとする蛍光微粒子を安定かつ均一に分散させた蛍光体を提供する。
【解決手段】 硝酸亜鉛水溶液にスメクタイト等の粘土微粒子の分散液を加える。その後、この溶液に、硫化ナトリウム水溶液を添加し、ナノメートルサイズの硫化亜鉛粒子を合成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、蛍光体およびその製造法に関するものである。
II−VI族の半導体ナノ粒子は、バルク体の結晶構造に比べ、良好な光吸収特性および発光特性を得られることから、近年その研究報告が活発になされている。この半導体ナノ粒子の優れた光学特性は、結晶粒の粒径がナノメートルサイズと小さいため、バンドギャップが増大し、量子サイズ効果が発現すること等に起因すると考えられている。
II−VI族の半導体ナノ粒子の製造方法の一例として、特開2000−104058号公報に記載された発明がある。この発明は、共沈を利用した液相反応にて不活剤がドープされたII−VI族の半導体を形成し、この液相反応中にアクリル酸等の有機酸を添加することによりナノクリスタル蛍光体を合成し、さらに紫外線照射処理を施すものである。
特開2000−104058号公報
上記に例示した特許公報記載の発明もそうであるように、半導体ナノ粒子の合成方法としては、現在のところ溶液中で半導体ナノ結晶を合成する溶液法が一般的である。しかしながら、溶液中で合成した半導体ナノ粒子は一般に不安定であり、外気にさらすと短時間で凝集・沈殿し、蛍光性を失う傾向にある点が問題となる。
特に半導体ナノ粒子をディスプレイや照明装置等のデバイスに適用する場合、その製造工程では、半導体ナノ粒子を分散させたゾルをゲル化させてマトリックスに固定した形態を経由することが予想される。この際、半導体ナノ粒子を固相に均一に分散させる必要があるが、これを実現するためには、ゲル化する前のゾルの段階で蛍光微粒子の凝集を防止する必要がある。以上の例示に限らず、溶液中でいかにして半導体ナノ粒子を長期間安定して分散状態に保持するかは今後ますます重要課題となることが予想される。
そこで、本発明は、半導体ナノ粒子をはじめとする蛍光微粒子を安定かつ均一に分散させることのできる蛍光体およびその製造法の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明にかかる蛍光体は、粘土微粒子と蛍光微粒子とを含有するものである。
この粘土微粒子としては、イオン交換能を有する層状化合物、その中でも特に溶液中で表面電荷を持つ層状化合物を使用するのが望ましい。この種の層状化合物は板状微粒子とも呼ばれ、Si四面体やAl八面体等の多面体が平面上に連なったシート構造を層状に重ねた結晶構造を備えると共に、層間にイオン吸着サイトを有する化合物である。一例としてスメクタイトやハイドロタルサイト等の粘土鉱物を挙げることができる。これら粘土微粒子の粒径は、分散性が十分高ければよく、特に限定されないが、ナノメートル単位、例えば光散乱法で測定した平均粒径で、20〜80nmのものが好ましい。
本発明においては、粘土微粒子として特にスメクタイト(その合成品も含む)が望ましい。スメクタイトは、4面体構造をもつ4価のシリコンイオンからなる層(4面体層)と8面体構造をもつ2価と3価のカチオンからなる層(8面体層)とをもち、4面体層−8面体層−4面体層という3層を基本結晶構造とする板状鉱物の総称である。スメクタイトの種類としては、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライトなどが知られている。スメクタイトの層間にはイオン吸着サイトが存在し、溶液中で種々の化合物を吸着する特徴を持つ。また、スメクタイトの層間に水が入り込むことにより、自分の体積の十数倍に膨れあがる特徴(膨潤性)を持つ。合成モンモリロナイトの例として、クニミネ工業社のクニピアFなどがあり、合成ヘクトライトの例として、例えばラポート社のラポナイトXLG、ラポナイトRD、コープケミカル社のルーセンタイトSWNなどがあり、合成サポナイトの例として、クニミネ工業社のスメクトンSAなどがある。
蛍光微粒子としては、粒径1〜20nm程度の半導体ナノ粒子を母体とするものが望ましい。半導体ナノ粒子は、VI族(Si等)、III−V族(InP、GaN等)、II−VI族(ZnS、ZnTe、CdTe、CdS、ZnSe等)などに大別されるが、これらの中では、イオン性が強く、光学的に直接遷移でバンドギャップが他よりも広いという特徴を有するII−VI族が好ましく、特にZnSが好ましい。
半導体ナノ粒子には、付活剤をドープすることもできる。付活剤としては、要求される蛍光の波長域(発光色)に応じ、蛍光体に付活剤として通常使用されるもの、例えば銅、マンガン、銀、金、希土類元素等の金属イオンの単独あるいはこれらの組合せが選択使用される。もちろん必要に応じ、塩素、臭素、ヨウ素、アルミニウム等の共付活剤をドープすることもできる。
以上に説明した蛍光微粒子と粘土微粒子とを含む蛍光体の製造手順としては、A)粘土微粒子の分散液中で蛍光微粒子を合成する方法、および、B)蛍光微粒子を合成した後、これを粘土微粒子の分散液とを混合する方法、の二種類が考えられる。本発明者が検証したところ、方法Aおよび方法Bの何れにおいても蛍光微粒子の凝集を防止し、溶液中で安定的に分散させ得ることが確認された。その一方で、両方法で調製した溶液の蛍光強度を測定したところ、方法Aの蛍光体が方法Bの蛍光体よりも高い蛍光強度を発揮した(図1参照)。従って、特に蛍光強度を重視する場合、蛍光体の製造方法としては、方法A(粘土微粒子の分散液中で蛍光微粒子を合成する)が好ましい。
方法Aによる半導体ナノ粒子の合成は、具体的には粘土微粒子の分散液にZn、Cd等の金属イオンを加え、その後、S、Se、Teなど上記金属イオンと対をなす元素(カルコゲンとも呼ばれる)のイオンを加えることによって行うことができる。この場合、金属イオンが粘土微粒子の吸着サイトに吸着された後、溶液に供給されたカルコゲンのイオンが金属イオンと反応するが、その際、金属イオンとカルコゲンイオンが通常の溶液法における反応とは異なる反応を行う結果、粘土微粒子と蛍光微粒子の複合体(その反応形式や詳細構造は現時点で不明である)が生成され、この複合体が蛍光強度の増加に寄与すると考えられる。カルコゲンイオンの供給方法は特に限定されず、カルコゲン化合物の溶液を使用する他、カルコゲン化合物のガスを使用してもよい。
溶液法で調製した蛍光体は、水や有機溶媒に粘土微粒子と蛍光微粒子とを分散させたゾルの形態をとるのが一般的であるが、これをゲル状にして使用することもできる。ゲル化の方法は、風乾、凍結乾燥、加熱乾燥などの乾燥、架橋、その他の既知の手段を用いることができる。また、ゾルを支持体に塗工、点着するなどしてからゲル化させてもよい。支持体の材質として樹脂やガラスなどが考えられ、支持体の形態としてプレート状等の密な組織の他、多孔質組織も含まれる。ゾルとして水溶液を使用する場合、支持体に既知の方法で親水化処理を行うのが望ましい。
以上に述べた蛍光体は、成膜したりあるいは他の任意形状に成形することにより、多種多様のデバイスに組み込むことができる。デバイスの代表例として、蛍光管等の照明装置、陰極線管やプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置が考えられる。デバイスに組み込むのみならず、例えばトレーサーとしての使用など、医学分野やバイオ分野における活用も期待できる。
以上に述べたように、粘土微粒子と蛍光微粒子を含む蛍光体は、従来困難であった蛍光微粒子、特に半導体ナノ粒子の安定かつ均一な分散を実現することができる。粘土微粒子の分散液中で蛍光微粒子を合成すれば、予め合成した蛍光微粒子を粘土微粒子の分散液に供給する場合に比べ、より高い蛍光強度が得られ、蛍光体の工業的利用価値が高まる。
以下、本発明の一実施形態を実験結果に基いて説明する。
上記のとおり、本発明の蛍光体は、粘土微粒子と蛍光微粒子とを含有する複合ゾルとして構成される。この蛍光体の分散安定性を検証するため、以下の二通りの方法(方法A、方法B)で調製した蛍光体について、それぞれ蛍光強度の経時変化を測定した。測定結果を図1に示す。
なお、この測定試験では、粘土微粒子として合成スメクタイト(ラポナイトXLG:粒子経20〜30nm、厚さ1〜2nm)を使用し、蛍光微粒子として硫化亜鉛(ZnS)のナノサイズ粒子を合成した。硫化亜鉛粒子の合成に使用する化合物は、既知の組合せの中から選択することができるが、ここでは一例として硝酸亜鉛(Zn(NO3)2)と硫化ナトリウム(Na2S)を使用する場合を例示している。蛍光強度は蛍光分光光度計(島津製作所:RF−540)で測定し、その測定値を縦軸にとっている。横軸は硝酸亜鉛と硫化ナトリウムの反応直後からの経過時間(日)を表す。
[方法A]
硝酸亜鉛水溶液にラポナイトXLGの分散液(以下、粘土分散液と称する)を加えた後、硫化ナトリウム水溶液を添加した。硝酸亜鉛および硫化ナトリウムの各水溶液の最終濃度は0.25mMに調整し、粘土分散液は0.5wt%とした。
[方法B]
硝酸亜鉛水溶液を硫化ナトリウム水溶液に加えた後、粘土分散液を加えた。各水溶液の最終濃度および粘土分散液の配合割合は、方法Aの場合と同じである。
なお、方法Aでは硝酸亜鉛水溶液を粘土分散液に混合後、硫化ナトリウム水溶液を添加するまでの時間(放置時間)を異ならせている(5分と15分)。
図1に示すように、方法Aおよび方法Bの何れの蛍光体でも長期にわたり高い蛍光強度を得られることが判明した。これは、従来の一般的な溶液法(硝酸亜鉛水溶液と硫化ナトリウム水溶液の混合)で調製した硫化亜鉛粒子の発光強度が同じ光度計の測定値で100〜200程度にすぎず、しかも調製後、数日で凝集・沈殿して蛍光作用を喪失していた点と顕著に相違する。従って、かかる実験結果から、溶液中の粘土微粒子が硫化亜鉛粒子の均一かつ安定な分散状態の維持に大きく関与していることが明らかになった。
また、図1の実験結果から、方法Aの蛍光体が方法Bの蛍光体に比べてより高い蛍光強度を発現することも判明した。このような差を生じる理由は、上記のとおり、溶液中に粘土微粒子と硫化亜鉛粒子の複合体が形成されたためと考えられる。以上の試験結果から、蛍光強度を重視する場合には、方法Bよりも方法Aの手順が望ましい。
次に方法Aにおける放置時間の長短が蛍光作用に与える影響を検証するため、異なる放置時間(5分〜2日)で調製した蛍光体の吸光度を測定した。図2にその測定結果を示す。なお、吸光度は紫外可視分光光度計(島津製作所:UV−2400)で測定した。蛍光体の製造方法は、上記蛍光強度測定試験での製造方法に準じている。
図2の測定結果からも明らかなように、放置時間が長くなるほどそれに応じて吸光度が低下しているが、これは放置時間が長いほど亜鉛イオンとスメクタイト粒子との結合が強くなり、硫化亜鉛粒子の生成に支障を来すためと考えられる。従って、方法Aにおける放置時間はできるだけ短く、具体的には3時間以内とするのが望ましい。
以上の説明では、半導体ナノ粒子の一例としてZnSを挙げたが、ZnTe、CdTe等の他の半導体ナノ粒子についても本発明を適用することもできる。また、半導体ナノ粒子には、既存の付活剤や共付活剤をドープすることもできる。
本発明方法で製造した蛍光体の蛍光強度の測定結果を示す図である。 放置時間を異ならせた蛍光体の吸光度の測定結果を示す図である。

Claims (11)

  1. 粘土微粒子と蛍光微粒子とを含有する蛍光体。
  2. ゲル状をなす請求項1記載の蛍光体。
  3. 蛍光微粒子が半導体ナノ粒子を母体とするものである請求項1または2記載の蛍光体。
  4. 半導体ナノ粒子がZnSである請求項3記載の蛍光体。
  5. さらに付活剤をドープした請求項3または4記載の蛍光体。
  6. 請求項1〜5の何れかに記載した蛍光体を具備するデバイス。
  7. 粘土微粒子の分散液中で蛍光微粒子を合成することを特徴とする蛍光体の製造方法。
  8. 蛍光微粒子が半導体ナノ粒子を母体とするものである請求項7記載の蛍光体の製造方法。
  9. 半導体ナノ粒子がZnSである請求項8記載の蛍光体の製造方法。
  10. 請求項1〜5何れか記載の蛍光体、または請求項7〜9何れか記載の蛍光体の製造方法において、粘土微粒子がイオン交換能を有する層状化合物であるもの。
  11. 請求項10記載の層状化合物がスメクタイト又はその合成品であるもの。
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