JP2005239488A - 水の熱化学的分解方法 - Google Patents

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賢三 長瀬
Noboru Morita
昇 森田
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Toyonobu Asao
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Abstract

【課題】 クリーンなエネルギー源として注目される水素を水の熱化学的分解で製造するにあたり、より低温の熱源を効率よく利用でき、それでいて環境に問題となる副生物の発生がないとか、腐食性の物質を使用することを避けることの可能な方法の開発。
【解決手段】 持続的な水の熱分解による水素と酸素の生成が、アルミン酸イオン供与体存在下にアルミン酸イオンを触媒としての水との反応並びにそれに伴う水素及び酸素(過酸化水素を包含する)の生成からなる水の分解による水素と酸素の生成サイクルを含むことにより行われる。反応系は、おおよそ190〜200 ℃程度で効率よく行うことが可能で、廃熱など比較的低温の熱源を用いても低コストで水より水素と酸素を製造できる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、水の熱化学的分解方法、該方法に適した水の熱化学的分解触媒、及び水の熱分解装置に関する。本発明は、原子炉、核融合炉、発電プラント、ゴミなどの廃棄物焼却炉、製鉄プラント、化学プラントなどで生ずる廃熱などの熱を高度利用して水素などの有用資源を製造する技術に関する。
近年、エネルギーの需要は急激に増加しており、それに伴う環境への影響と資源の涸渇が取り沙汰されるようになってきた。そのため、その両者の問題を解決できる新しいエネルギー源が求められている。そのなかでも、水素はクリーンエネルギー源の一つとして注目されている。
水素は非常に有用な資源物質であり、様々な用途に利用されている。さらに、水素は宇宙的には非常に豊富に存在する元素であり、また、近年、クリーンなエネルギー源として地球環境の保全の視点からも注目されている。水素は、燃焼により水を生成するのみであるし、水から水素を生成できれば涸渇の心配のないエネルギー源となる可能性がある。すなわち、水素は燃焼することで熱エネルギーに、また内燃機関に用いることで力学的エネルギーに、さらに燃料電池に用いることで電気エネルギーに変換でき、変換後に再び水に戻る再生可能なクリーンエネルギーシステムを構築できうるのである。水素は他のエネルギー源にはない利点が多く見られるが、その特徴は次のようにまとめられる。
(1) 化石燃料と異なり、燃料生成物は水のみで温室効果の心配もなく、クリーンなエネルギーシステムを形成できる。
(2) 水力、原子力、自然エネルギー、バイオマス、化石燃料などの一次エネルギーを利用して生産される二次エネルギーで、自然界には単独で存在しない。
(3) 液体水素や水素化物質により、遠距離輸送、大量輸送ができ、また、水素吸蔵合金により安全なエネルギー貯蔵ができる。
(4) 工業用燃料、自動車や航空機などの動力用燃料、電気事業用燃料電池や水素タービン、ニッケル水素電池などの用途がある。
(5) 気体となって漏洩しやすく、目に見えない。空気との混合比が4〜75%で爆発しやすくなる。
一方で、水素は化学工業用の原料としても利用されている。現在、利用されている水素は、メタノールなどの有機物合成(C1 化学) や、アンモニア合成、石油精製などの原料として用いられているものが大半である。いずれも、今日において重要な分野を占めており、今後、化学工業、半導体素子製造工業、食品加工等の各種の産業分野で工業原料としてもさらに大きな役割を果たしていくことが期待される。
以上のことから、水素は2つの方面、エネルギー源と化学工業などの原料としての期待が今後大きくなっていくことが考えられ、それに伴って、水素の製造も重要になっている。
しかしながら、水素は活性の非常に強い物質で必ず他の分子と結合して存在し、地球上にはそのままの形態、すなわち単独では存在せず、人工的に作り出さねばならない。つまり、効率よく安価に水素化合物の結合を切り、水素分子を抽出することが永年の課題であった。現在、水素はそのほとんどを天然ガス等の化石燃料を改質することにより製造されているが、この方法では炭酸ガスなどを副生するなど大きな環境上の問題がある。
こうしたなか、化石燃料の代替えエネルギーとしての水素の製造法としては、無尽蔵の資源である水の分解(反応(a))による他は考えられない。
(a) H2O→ H2 + 1/2 O2
この反応を起こすのに必要なエネルギー自体はどのような経路を用いても同じである。ただし、加えるエネルギーの形態によってエネルギーコストは異なる。
一般的には、電気エネルギーを利用した場合は、熱エネルギーの1/3 程度がその変換に利用されるに過ぎないと考えられ、したがって、電気分解法に要するエネルギーが最もコスト的に高いはずであり、一方、光(フォトン)エネルギーはエネルギー密度の問題から未だ開発段階に留まっている。一般に水を直接熱分解するにはギブス自由エネルギーの収支が0になる4100℃以上もの反応温度が必要である。このように、熱エネルギーを用いた水の分解については、熱力学的制約が深刻な問題であり、これを克服するために種々の化学反応サイクルが提案されてきたが、いずれのサイクルにおいても、運転温度が高温で、かつ、腐食性の強いガスを用いるために、容器の腐食や触媒の耐久性の問題が生じており基礎研究の段階にある。しかし、反応(a)に代表される大きな吸熱反応《熱エネルギーの化学的エネルギーへの変換》は、大きなΔSをもつ反応を媒体として使うことによって、変換効率 (ΔH/TΔS)を高めることが可能であることから、クリーンケミストリーの視点からも、化学者が取り組むべき最大の課題と考えられる。
熱エネルギーを用いて水を分解する場合でも、一般的には、分解反応が低い温度で起こすことができればできるほど熱エネルギーのコストを低下せしめることができる(例、廃熱利用、地熱の利用、太陽熱の利用)。しかし、分解温度の設定は、汎用エネルギー供給源にも依存する(例えば、高温工学試験研究炉(High Temperature Engineering Test Reactor: HTTR) や太陽集光炉を利用する場合は 600℃〜 800℃の温度領域が最適温度と言われている)。
これまで、原子力発電の核熱による高温ガス炉や太陽光による集光炉を用いれば、500 〜1000℃の温度範囲が比較的容易に得られることから、1000℃以下の温度で働くサイクルが考案されてきた。このようなものとして、ヨーロッパ共同体のイスプラ研究所から提出されたのが、マークIと称する熱化学分解法で、これは1000℃以下で進行する4つの熱化学反応を組み合わせて全体で水から水素と酸素を得るサイクル反応であったが、このマークIは反応式通りにいかないことからその開発は打ち切られた。しかしながら、こうした試みから、反応を数段組み合わせることで、より低温で水を熱分解する可能性が示唆されることとなった。かくして、以来、多くのサイクルが世界中で提出されてきた。日本では東京大学のUT-3サイクルと日本原子力研究所のISサイクル等が研究されている。
UT-3サイクルは、700 ℃以下の気体と固相の反応のみから成り立ち、カルシウムと鉄の化合物が反応式上、臭化物と酸化物の間を往復して、カルシウム側から酸素を、鉄側から水素を発生するというもので、固体反応物は全く移動させる必要がない、という特徴を有するものである。一方、ISサイクルは、沃素(I)と硫黄(S) の反応系、すなわちISの反応系である。しかし、これらの反応サイクルは反応系にハロゲンを含むものが多く、反応器や導管に用いられるステンレスの腐食が大きな問題となっている。
こうした中で、より低い温度の熱源を利用でき、さらにハロゲン化水素などの腐食性ガスの利用を避ける方法が求められている。より低温で水を熱分解する方法であれば、工場、ゴミ焼却場、火力発電所・原子力発電所などの廃熱を有効に利用できるばかりでなく、より小規模な熱源からも効果的に水素の製造をすることが可能となるし、さらに装置のコストを大幅に低減でき、ひいては安価な且つ効率良い水素製造にも結び付けることができる。また、腐食性の強いガスの利用やその発生を避けることができれば、容器の腐食や触媒の耐久性の問題も解決できるばかりでなく、安全且つ低いコストでの水素の安定製造に貢献できる。
本発明者は、上記課題を解決する目的で鋭意研究を進め、アルカリ金属などの水酸化物の熱分解反応に着目して、それを利用する水の熱化学的分解サイクルの構築について成功し、その結果、PCT/JP03/11000(特許文献1)をなすに至った。該先行発明(未だ公開されていない特許出願)では、アルカリ金属水酸化物あるいはアルカリ土類金属水酸化物をアルミノケイ酸またはアルミノケイ酸塩を含む多孔質担体に担持せしめて得られる触媒により、電圧印加条件下での水の低温熱分解を行うことを特徴とする水の熱化学的分解方法の提案を行っている。
PCT/JP03/11000
上記PCT/JP03/11000で開示した水の熱化学的分解サイクルを利用した水素並びに酸素の製造をより効率的に且つ有効に行うためには、該水の熱化学的分解に与る反応のメカニズムを詳細に解明することが必要である。また、該先行特許の技術では、電圧印加条件下での水の熱分解反応が、安定して起こるまで長時間を要し、反応の再現性に乏しいという問題点があった。この原因を解明することも求められている。
本発明者等は、上記水の熱化学的分解に与る反応のメカニズムを詳細に検討した結果、水の熱分解反応を触媒している物質を突き止めることに成功し、この知見を利用して新たな触媒を作成し、この新規な触媒を用いることにより、電圧印加条件下での水の熱分解をより低温で、より安定的且つ効率的に行うことに成功した。
本発明は、以下のものを包含する。
〔1〕 水の熱化学的分解法において、
式: M1(AlO2)n
(式中、M1は陽イオンであり、n+である)
で表されるアルミン酸塩及び式: M2(AlSiO4)n
(式中、M2は陽イオンであり、n+である)
で表されるアルミノケイ酸塩から選択されたものを触媒として使用することを特徴とする水の熱化学的分解法。
〔2〕 式: M1(AlO2)n
(式中、M1は陽イオンであり、n+である)
で表されるアルミン酸塩を触媒として使用することを特徴とする上記〔1〕記載の水の熱化学的分解法。
〔3〕 式: M1(AlO2)n
(式中、M1は陽イオンであり、n+である)
で表されるアルミン酸塩及び式: M2(AlSiO4)n
(式中、M2は陽イオンであり、n+である)
で表されるアルミノケイ酸塩を触媒として使用することを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕記載の水の熱化学的分解法。
〔4〕 アルミン酸カリウム又はアルミン酸カリウムとアルミノケイ酸カリウムを触媒として使用することを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一記載の水の熱化学的分解法。
〔5〕 触媒を含有する反応セルに電圧を印加することを特徴とする上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一記載の水の熱化学的分解法。
〔6〕 反応セルの電極がガスの拡散が容易である構造をしていることを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一記載の水の熱化学的分解法。
〔7〕 反応セルの電極間にイオン電流ブロック層を設けてあることを特徴とする上記〔1〕〜〔6〕のいずれか一記載の水の熱化学的分解法。
〔8〕 反応セルのアノード側のガス流路とカソード側のガス流路を分離することにより、水素と酸素を分離して回収するものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔7〕のいずれか一記載の水の熱化学的分解法。
〔9〕 反応セルを収容する反応容器の全圧を高くし、水素と過酸化水素を製造するものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔8〕のいずれか一記載の水の熱化学的分解法。
〔10〕 水素を選択的に製造するものであることを特徴とする上記〔9〕記載の水の熱化学的分解法。
〔11〕 該水の熱化学的分解法が、
(A) AlO2 - と水との反応及びそれに伴うAlO(OH)2 - の生成反応、及び
(B) AlO(OH)2 - と水との反応及びそれに伴うAlO2 - の生成反応
を含んでおり、水の分解による水素と酸素の生成サイクルを含み且つ持続的な水の熱分解による水素と酸素の生成を達成するものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔10〕のいずれか一記載の水の熱化学的分解法。
〔12〕 水の熱化学的分解触媒であって、
式: M1(AlO2)n
(式中、M1は陽イオンであり、n+である)
で表されるアルミン酸塩及び式: M2(AlSiO4)n
(式中、M2は陽イオンであり、n+である)
で表されるアルミノケイ酸塩から選択されたものからなる触媒であることを特徴とする水の熱化学的分解触媒。
〔13〕 上記〔12〕記載の水の熱化学的分解触媒を有していることを特徴とする水の熱化学的分解反応セル。
〔14〕 上記〔13〕記載の水の熱化学的分解反応セルを備えていることを特徴とする水の熱化学的分解装置。
〔15〕 上記〔1〕〜〔11〕のいずれか一記載の水の熱化学的分解法、上記〔13〕記載の水の熱化学的分解反応セルの使用、又は上記〔14〕記載の水の熱化学的分解装置により製造されていることを特徴とする水素、酸素及び/又は過酸化水素。
本発明では、反応系の反応中心に積極的にアルミン酸イオンを存在せしめることにより、水の熱分解をより低温で、より安定的且つ効率的に行っている。よって、本発明の水の熱化学的分解技術では、電圧印加をすることで、より低温で、より安定的且つ効率的に水の熱分解を行うことができ、低コストで、クリーンエネルギーとして期待される水素を無尽蔵に製造する可能性を有するばかりでなく、酸素や過酸化水素などを同時に製造することもできるので、熱エネルギーを使用して工業的に水を分解して水素などを製造する技術として優れている。
本発明で、各種の熱源、それも比較的低い温度のものを利用して水素や酸素を効率良く製造することができる。例えば、各種のエネルギーを消費して熱を発生するプラントからの廃熱、廃棄物あるいはゴミなどを焼却して生ずる熱などを有効に利用して、クリーンなエネルギー燃料として期待される水素を製造可能であり、しかも低い温度で水の熱分解を利用できるので、広範な分野での利用が見込める。本発明では、サイクルシステムで水の熱分解による水素や酸素・過酸化水素の製造系を構築でき、原料は水だけであり、炭酸ガス排出などといった環境汚染の問題がなく、またハロゲン化水素を利用するといったことによる装置の腐食の問題も少なく優れている。本発明の水の熱化学的分解法は、大幅な水素製造コストの低減化を期待でき、小規模な設備での製造の可能性も有している。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
本発明の水の熱化学的分解技術における水の熱分解反応を触媒している物質は、アルミン酸塩と考えるのが妥当であることを見いだした。該アルミン酸塩は、アルカリ金属水酸化物あるいはアルカリ土類金属水酸化物をアルミノケイ酸またはアルミノケイ酸塩を含む多孔質担体に200℃程度の温度で担持させただけのものではそれが生成しにくいものと考えられる。
アルミン酸塩による水の分解反応は、次の反応式(1) 及び(2) で表すことができる。
(AlO2)- + H2O → [AlO(OH)2]- (1)
[AlO(OH)2]- + H2O → O2 + 2H2 +(AlO2)- (2)
上記式(1) 及び(2) を水の熱分解サイクルの形式で表現すると、次のような反応スキームになる。
Figure 2005239488
以上の考察に基づき、本発明では、水の熱分解反応触媒としてアルミン酸塩を固体電解質に担持させたところに最大の技術的特徴を有している。すなわち、固体電解質触媒を用いることにより、反応セルに電圧を印加して、生成した水素と酸素が再結合するのを防ぐことができること、並びに触媒の分極を誘発し、結果的に水の分解反応の速度を速めることができるというメリットが得られる。
本発明の水の熱化学的分解技術では、アルミン酸イオン(AlO2 -)及び/又は[AlO(OH)2]-が反応触媒として利用せしめられており、ハロゲン化水素などのステンレスなどに対して腐食性の化学物質の生成などに考慮を払う必要のないサイクルである。
本発明の技術では、(AlO2)-あるいは[AlO(OH)2]-は当該サイクルの反応センターにおいて、金属塩、例えば、代表的にはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などの形態で存在し、当該アルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩などの当該イオン供与体は、水の存在下に熱により反応を起こして、AlO2 -並びにAlO(OH)2 -の形成と分解を繰り返し、結果として、系に存在する水と反応して、酸素と水素を生成することになり、該金属のアルミン酸イオンは当該サイクルにおいて循環することとなる。かくして、水の熱化学的分解サイクルが成立する。生成する水素及び酸素は、分離膜などを用いて系外に取り除かれることが可能である。
本発明の水の熱化学的分解技術で使用されるAlO2 -並びにAlO(OH)2 -などのアルミン酸イオンあるいは関連イオンは、適切なイオン供与物質により与えられる。当該供与物質は、公知の物質を使用することもできるが、当該分野で知られた方法あるいはその改変法により調製でき、適当量の当該イオンを供与できるものであればよい。代表的なアルミン酸イオン供与物質としては、例えば、金属の異常酸化数酸化物とアルミナなどの酸化アルミニウムと酸化ケイ素の混合物を高温で加熱処理して調製されたものなどが挙げられる。
該供与物質としては、式: M1(AlO2)n (式中、M1は陽イオンであり、n+である)で表されるアルミン酸塩、式: M2(AlSiO4)n (式中、M2は陽イオンであり、n+である)で表されるアルミノケイ酸塩などが挙げられる。当該陽イオンは、例えば、金属元素から誘導さっれたもの、アンモニウムなどの無機の陽イオン、有機アンモニウムなどの有機の陽イオンが含まれていてよい。金属元素としては、塩を形成しているものが所要のアルミン酸イオンなどを適切に反応系に供与して水の熱化学的分解を生起せしめるものであれば特に限定されず、当業者に知られたものから選択して使用できる。代表的な金属としては、長周期型周期表で第IIIB族のホウ素(B)-第IVB族のケイ素(Si)-第VB族のヒ素(As)-第VIB 族のテルル(Te)の線を境界としてその線上にある元素並びにその境界より、長周期型周期表において左側ないし下側にあるものが挙げられ、例えば、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素などが挙げられる。アルカリ金属元素としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)などから成る群から選ばれたものが挙げられる。
好ましくは、Na, K, Rb などが挙げられる。アルカリ土類金属元素としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)などから成る群から選ばれたものが挙げられる。本明細書中、用語「金属の異常酸化数酸化物」は、金属の過酸化物、金属の超酸化物、もしくはそれらの混合物などを指していてよい。金属の異常酸化数酸化物としては、アルカリ金属の異常酸化数酸化物、アルカリ土類金属の異常酸化数酸化物を包含しており、アルカリ金属の異常酸化数酸化物としては、例えばアルカリ金属過酸化物、アルカリ金属超酸化物などが挙げられ、アルカリ土類金属の異常酸化数酸化物としては、例えばアルカリ土類金属過酸化物、アルカリ土類金属超酸化物などが挙げられる。具体的には、例えばLi2O2,Na2O2, K2O2, LiO2, NaO2,KO2, MgO2, CaO2, MgO4, CaO4 などが挙げられる。
本発明の水の熱熱化学的分解法では、(A) アルミン酸イオン供与物質を担持せしめた触媒、代表的にはアルミン酸カリウムなどを触媒として使用し、電圧印加条件下で水と反応せしめ、水素及び酸素の生成反応を伴う、水の分解による水素と酸素の生成サイクルを含み且つ相対的に低い温度での持続的な水の熱分解による水素と酸素の生成をファラディー則から計算される以上の効率で達成するものであることを特徴としている。
当該触媒を担持せしめる担体としては、当該アルミン酸イオンなどの供与物質を保持して継続的な水の熱化学的分解を維持するのに役立つものであれば特に限定されず、当業者に知られたものから選択して使用できるし、当該分野で知られた方法あるいはその改変法により調製したものもそれを使用できる。担体としては、アスベスト、アルミナ、シリカ−アルミナ、アルミノケイ酸塩などを使用することもできる。「アルミノケイ酸」とは、ポリケイ酸のケイ素の一部がアルミニウムに置換されたものを指す。工業的には、アルミナとケイ酸を主成分とする原料をいったん溶融し、繊維状または綿状に加工したセラミックウールなどであってもよい。該セラミックウールとしては、市販のものを利用することも可能である。セラミックウールなどの原料である当該アルミナとケイ酸の混合物には、適宜、酸化第2鉄、チタニア(TiO2)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)、無水ホウ酸、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物などの金属酸化物などの様々な元素を配合してあるものでもよい。本発明で利用できる担体は、様々な市販の製品として入手し、それを利用できるが、特別に本発明に適したものを調製することも好ましい。
本明細書中、「アルミノケイ酸塩」とは、ポリケイ酸イオンのケイ素の一部がアルミニウムに置換されたものを指してよく、ケイ酸単位が縮合してポリケイ酸を構成しているものにおいて、その中の構成Si4+が、Al3+に置き代わることによる1個の陽イオン部に様々な金属イオンが位置を占めるに至ったものが挙げられる。代表的な多孔質アルミノケイ酸塩にはゼオライトがある。
本発明の水の熱化学的分解サイクルにおいては、持続的に水の熱分解による水素の生成がなされるものであり、一般的には反応系へは水蒸気として水が導入される。該水の熱化学的分解サイクルでは、好適には、触媒を多孔質担体に担持せしめて得られた反応触媒を使用して実施できる。また、反応触媒は、適当なアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、それらの過酸化物などを使用し、シリカ−アルミナと混合するなどし、適宜加熱処理などして調製できる。本水の熱化学的分解サイクル系では、電圧印加条件下に、アルミン酸イオン供与物質を担持せしめたアルミノケイ酸、その他を担体とする触媒の存在下に持続的な水の熱分解を行うことを特徴としている。
本水の熱化学的分解サイクル系の反応温度は、130 ℃以上であり、また、水蒸気圧が、0.2 気圧以上の条件下に水の熱分解を行うことを特徴とする。系内の反応温度は、効率よく水の熱分解が生起して水素と酸素とを生成せしめるものであればよいが、あまり高温では経済的観点から有利でないので、効率よく反応を進めることのできる条件を適宜選択することが好ましい。系内の反応温度は、なんらその上限が有るわけでなく適宜利用できる熱源を有効に利用できるが、例えばおおよそ130〜1,000℃、ある場合には130〜500 ℃などを挙げることができる。
本水の熱化学的分解サイクル系内の水蒸気圧は、効率よく水の熱化学的分解が生起して水素と酸素とを生成せしめるものであればよいが、あまり低い水蒸気圧では水の熱分解の上では得策ではなく、一方、反応点への水の供給量を増加せしめる点ではより高い水蒸気圧とすることは好ましいが、これも経済性を考慮したりして効率よく反応を進めることのできる条件を適宜選択することが好ましい。系内へ導入する供給体が気体の場合、その圧力は、好適に反応を行えるかぎり特に限定されるものではないが、例えばおおよそ1〜100 気圧、ある場合には1 〜50気圧、別の場合にはおおよそ2 〜10気圧を挙げることができる。系内に導入される水は、適当なキャリアーガスで希釈された水蒸気として系内に導入されてよく、キャリアーガスとしては好適には不活性気体であるものが挙げられる。好ましいキャリアーガスとしてはアルゴン(Ar)が挙げられる。例えばアルゴン(Ar)などをキャリアーガスとして水蒸気を導入する場合、その供給体の全圧は、好適に反応を行えるかぎり特に限定されるものではないが、例えばおおよそ1〜50気圧、ある場合には2 〜20気圧、また別のある場合にはおおよそ 2〜10気圧、さらに他のある場合にはおおよそ 3〜7 気圧を挙げることができる。こうした場合での水蒸気の分圧としては、好適に反応を行えるかぎり特に限定されるものではないが、例えばおおよそ0.01〜50気圧、ある場合には0.05〜20気圧、別のある場合にはおおよそ0.1〜10気圧、さらに他のある場合にはおおよそ0.1 〜3 気圧を挙げることができる。
本分解サイクルをスムーズに行うには、十分な吸着水量を確保するのが有利である。本発明に従えば、アルミン酸イオンなどの供与物質、例えば、アルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩などを多孔質担体に担持せしめて得られた触媒の存在下に、水蒸気を導入し、持続的な水の熱分解による水素と酸素の生成を達成でき、水素の生成量が担体容積当たり2μmol/分/ccを得ることができた。またある場合には水素の生成量が担体容積当たり4μmol/分/cc を得ることも可能であった。
本明細書中、多孔質担体としては、アルミン酸アルカリ金属塩、アルミン酸アルカリ土類金属塩などの触媒を強固に捕捉して、同様に捕捉した水との反応を効果的に行うことを可能ならしめる機能を有するものであれば特に限定されないが、好ましくは酸点及び塩基点を有している多孔質担体から選択することができる。担体の酸点は、強塩基物質、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属を捕捉してその散逸を防ぐ働きのあるもの、さらにはその働きの強いものが好ましく、そうしたものを適宜選択することができる。担体の塩基点と細孔は、水蒸気を捕捉する働きのあるもの、さらにはその働きの強いものが好ましく、そうしたものを適宜選択することができる。
反応媒体の担体には、アスベストなどの無機鉱物繊維、アルミナとシリカを主成分とするアルミノケイ酸繊維(セラミックウール)などを使用することができる。
触媒作成方法としては、活性アルミナとシリカ(無水ケイ酸)とアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩の粉末を、あるいはそれらにアルミニウムあるいは酸化マグネシウムの粉末を適当量加えたものを所定の形状のアルミナの型に詰めて約950℃で24〜300時間焼結・成型する方法を挙げることができる。
水の熱分解反応は、好ましくは加圧された水蒸気を含有する気体を導入することのできる入口ポートと、反応を終えた気体であって水素及び/又は酸素を含有していてよい気体を排出する出口ポートとを備え、該導入された水蒸気を含有する気体と反応媒体とが接触する場を提供する触媒からなる反応セルを収容する反応装置を使用して行うことができる。反応セルは、触媒を挟んで電極が配置せしめてあって、通電可能にされているといった水の熱分解反応用反応装置であってよい。また、アノード側のガス流路とカソード側のガス流路を分離することにより、水素と酸素を分離して回収する構造を持つものが好ましく、これにより、水の熱分解法であって電圧印加条件下の水蒸気存在下持続的な水の熱分解による水素と酸素の生成を達成する水の熱分解法において、アノード側のガス流路とカソード側のガス流路を分離することにより、水素と酸素を分離して回収することを特徴とする生成ガスの回収法も提供される。また該反応セルにイオン電流ブロック層が配置されていることも好ましい。イオン電流ブロック層としては、それに限定されるわけではないが、例えば金箔層などの耐蝕性材料層が挙げられる。代表的な反応装置は、図4に示されるように円筒形状の内壁面に円筒状反応セルを収容しており、入口ポートから導入された水蒸気を含有する気体がその反応セルを通過することによって反応媒体と水とが前記反応サイクル(上記反応式(1)及び(2))をなすことを可能ならしめているものである。該円筒状反応セルの代表的なものは、例えば図2や図3に示されるような構造を有するものである。円筒状セル内周部及び円筒状セル外周部には電極が形成せしめてあって、通電可能にされているものが挙げられる。また、反応セルの電極としては、ガスの拡散が容易な構造及び/又は形状のものが好ましく、それは様々なものを設計できるが、例えば、メッシュ状の構造をしているものは好ましい。
電極材料は、腐食しない材料あるいは腐食に対して抵抗性の高い材料を使用して構成されることがこのましく、そうした機能を有するものであれば特に限定されることなく様々な公知の材料を使用してよいが、例えば白金メッシュ層などが挙げられる。円筒状セルの内周部と外周部にある電極は、通常、直流電源に接続される。
上記の反応装置内に収容される反応セルは、代表的な場合、円筒形状の反応装置の内壁面にピッタリと装着されるのに適した円筒状の形態に構成でき、例えば図2及び3に示されるような構造を有するものである。円筒状セル内周部及び円筒状セル外周部との間には、イオン電流ブロック層が配置されていることも好ましい。該イオン電流ブロック層は、例えば金箔層などの耐蝕性材料層であることが好ましい。該構造の反応セルにおいては、水素の反応セル内での拡散が制限され、水素と酸素の再結合反応が防止せしめられ、分解効率が高められていると考えられることから、こうした機能を有する材料であれば本発明の水分解系で使用可能である。一具体的な態様では、反応セルは、セラミックウール又はアスベストにアルミン酸イオン供与材料を分散させて円筒状に焼結成型し、この触媒セルを、アルミナ製のスノコ板で囲み、更に全体をセラミックウールで被せるようにして石英反応管(反応装置)もしくはステンレス反応管(反応装置)もしくはアルミナ反応管(反応装置)の内部に固定することができる。
加熱されたセルを水蒸気とアルゴンガスとの混合ガスが通過するときに、水蒸気の分解反応が生起する。
上述のようにして、水から得られる水素と酸素を含んでいる混合ガスが簡単に得られるが、この水素及び酸素を実際に利用可能とするために当該分野で知られた手法あるいはそれらを改変したり、新たに考案した手法を適用して、ガス単体あるいは利用しやすい形態のものに分離などすることができる。該方法としては、例えば水素だけを選択的に吸蔵する水素吸蔵合金を利用するなどの手法が挙げられる。分離あるいは単離回収法においては、互いの化学的あるいは物理的性質の差を利用して行うことが可能である。
本発明の水の熱化学的分解技術並びに該技術による水素、酸素、過酸化水素などの製造・分離技術を適用するにあたっては、適宜、特別の条件、操作等の設定を行うことは可能であり、それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、本発明の当該対象物質あるいはそれと実質的に同等な物質に関連した製造系や装置をを構築すればよいし、その操作も行うことができよう。
これらの一般的な技術手段の詳細については、水素製造、酸素製造、さらには過酸化水素製造など当該製造・分離分野で知られた、総説、成書などを参照することができる。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
(実験方法)
1.反応セルの作成
L. P. Cook et al., American Minelalogist, 62, 1180-1190 (1977)に記載されたアルミン酸カリウムの合成方法、すなわち、
Figure 2005239488
に準じて、以下の方法で、アルミン酸カリウムとアルミノケイ酸カリウムとが共存した状態でアスベストに担持された円筒セルを作成した。
(1) 6.90g(0.05mol)の炭酸カリウム(K2CO3)、5.10g(0.05mol)の活性アルミナ(Al2O3)と3.0g(0.05mol)の無水ケイ酸(SiO2)を混合し、乳鉢でよく粉砕し、微粉末にする。
(2) 21.52gのアスベスト(Mg6Si4O10(OH)8)を950℃に12時間加熱する。加熱により、アスベストは脱水のため18.27gに減量した。これを数回繰り返して、加熱脱水したアスベストを準備した。
(3) 加熱したアスベストを乳鉢でよく粉砕し、微粉末にする。
(4) 上記(1)の混合粉末1.3gと上記(3)のアスベスト粉末 20g(モル比で約1:8)を乳鉢で十分混合・粉砕し、微粉末とする。
(5) 外径 9mmのアルミナ製チューブに、電極となる50mm×30mmの白金メッシュ(1.69g) を巻き付ける。白金メッシュには白金線をつないで、リード線として200mm程度の長さに引き出しておく。
(6) 内径26mm、長さ100mm の石英ガラス管の中央に上記(5)をセットし、アルミノケイ酸繊維(セラミックウール) 3〜4gを石英ガラス管下部に固く詰め込むことによって該(5)の反応セルを固定する。その上に上記(4)で調製した粉末の全量を充填し、約50mmの長さに固く詰め込む。さらにその上にセラミックウールを(3〜4g)充填し、固く詰める。この状態を図1に示した。
(7) 上記(6) を加熱炉で 950℃に12時間加熱焼結する。すると、上記(4) のものは固化して褐色になる。
(8) 白金電極と一体となって円筒状に固化した上記(7) の工程で得られたものを、石英ガラス管から引き抜く。
(9) 上記(8)で得られたものの外周部に電極となる50mm×100mm の白金メッシュ(4.95g) を巻き付ける。白金メッシュには白金線をつないで、リード線として200mm程度の長さに引き出して、完成反応セルとした。
(10) 反応セルを保護するため、短冊状のアルミナ板で周囲を覆い、金線を巻いて固定し、円筒型の反応セルを完成せしめた。
図2には、完成した反応セルにアルミナ管を挿入したものを示してある。アルミナ管を挿入することにより、それぞれの電極で発生したガスの流路を分離し、水素と酸素を分離回収することができる。
2.イオン電流ブロック層が挿入された反応セルの作成
図2に示した反応セルにさらにイオン電流ブロック層として金箔を挿入したタイプの反応セルを作成し、それを図3に示してある。電極と電極の間にイオン電流ブロック層を挿入することにより、熱分解効率がさらに向上する。
3.水の分解反応
金箔を挿入していないタイプの反応セルを、図4に示した反応装置のアルミナ製反応管に挿入し、反応セルの上下をアスベストで反応管に固定する。上部をさらにセラミックウールで覆う。
図4の反応装置の下部から高速液クロポンプで供給された水は、ヒーターブロック上で気化し、水蒸気となって、反応セルに導入される。水の分解反応による生成物は、キャリアーガスのアルゴンとともに、自動分取装置を経てガスクロマトグラフに導かれる。
4.水の分解反応の結果
図5には、反応管内の温度と水の供給量を示した。
図6には、水蒸気/アルゴンのガス流量と反応管内の水蒸気圧と全圧を示した。
図7には、反応セルに印加する電圧と反応セルに流れる電流値を示した。電流値が100mA を超えないように、印加電圧をコントロールした。
図8には、水素及び酸素の発生速度を示した。
図9には、発生する水素と酸素のモル比(β)と、水素発生速度と電流値からファラディー則に基づいて計算される理論水素発生速度の比(γ)を示してある。反応開始直後の詳細なデータを図10〜図14に示した。反応開始から80時間前後の詳細なデータを図15〜図19に示した。また、反応開始から150時間前後の詳細なデータを図20〜図24に示した。
全圧が4気圧の場合、βは2で一定であり、水素と酸素が化学量論組成で発生していることを示している。一方、γは4〜8倍の数字を示しており、単なる電気分解をはるかに上回る効率で水の分解が起きていることを示している。
また、80時間付近の電圧2.5V、電流47mA、水素発生速度50μmol/min から水素製造の動力源単位を計算すると、1.75kWh/Nm3 となる。この数字は、これまでの水の電気分解効率のチャンピオンデータであるNorsk Hydro 社の4.3kWh/Nm3の実に 2.5倍以上の効率に達しており、水の電気分解の動力源単位の理論値に対しても 2.3倍の効率になる。
このことは、電気分解とは別に熱化学的分解サイクルが成立していることを裏付けるものである。
本実験で発生した全水素量は、約0.86モルであり、電気分解の寄与分25% を除いた約0 .64 モルがこの間に水の熱化学的分解によって発生した水素量になる。
反応セル中の触媒であるアルミン酸カリウム量は0.008 モルなので、反応スキームに従えば、0.640/0.008=80となり、この間触媒は80回程度ターンオーバーした計算になり、200℃の低温で水の熱分解サイクルが成立していることを十分に示している。
なお、反応管の全圧が、4気圧以下である場合は、水素の発生量の1/2 の割合で発生した全圧を6気圧以上にすると、酸素の発生が認められなくなることがわかった。再び圧力を4気圧以下にすると、酸素は再び観測されることが判明した(図23)ので、圧力を調整することによって、水素と酸素を分離することが可能でる。
高圧下においては、酸素は触媒と共存しているKAlSiO4 と酸素の不定比化合物(K1-XAl1+X O4+X)を形成している場合と過酸化水素として存在している場合の二つのケースが考えられるが、図23に見られるように、水素の発生量が時間の経過と共に著しく減少するという現象が観測されないことから、酸素が蓄積する反応機構は考えにくいので、過酸化水素(沸点150℃)として系外に排出されていると考えるのが妥当である。
すなわち、この実験事実は、水素と酸素の新規な分離方法の確率に寄与するのみではなく、水の印加電圧下における熱分解の反応機構として、不均化分解を示唆するものであるとも言える。
2H2O → H2 + H2O2
上記の実施例においては、触媒の担体としてアスベストを用いたが、無論アスベストに限定されるものではない。アスベストの代わりにアルミノケイ酸やゼオライトなどのアルミノケイ酸塩を用いてもよい。また、炭酸カリウムに対しアルミナ、無水ケイ酸を過剰に配合すれば、アスベストを用いなくても良い。
本発明では、反応系の反応中心に積極的にアルミン酸イオンを存在せしめることにより、電圧印加条件下での水の熱分解をより低温で、より安定的且つ効率的に行うことができる。よって、本発明で、各種の熱源、それも比較的低い温度のものを利用して水素や酸素を効率良く製造することができる。例えば、各種のエネルギーを消費して熱を発生するプラントからの廃熱、廃棄物あるいはゴミなどを焼却して生ずる熱などを有効に利用して、クリーンなエネルギー燃料として期待される水素を製造可能であり、しかもおおよそ190〜200 ℃という低い温度で水の熱分解を利用できるので、広範な分野での利用が見込める。本発明では、サイクルシステムで水の熱分解による水素や酸素の製造系を構築でき、原料は水だけであり、炭酸ガス排出などといった環境汚染の問題がなく、またハロゲン化水素を利用するといったことによる装置の腐食の問題も少なく優れている。本発明の水の熱化学的分解法は、大幅な水素製造コストの低減化を期待でき、小規模な設備での製造の可能性も有している。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
本発明で作成・使用された水の熱化学的分解用の代表的な反応セルの作成方法を模式的に説明する。 本発明の水の熱化学的分解用反応セルの代表例の構造を示す。 本発明の水の熱化学的分解用反応セルの代表例の構造を示す。 本発明の水の熱化学的分解に使用する反応装置の代表例の構造を模式的に示す。 本発明の水の熱化学的分解における、反応管内の温度と水の供給量を示す。 本発明の水の熱化学的分解における、水蒸気/アルゴンのガス流量と反応管内の水蒸気圧と全圧を示す。 本発明の水の熱化学的分解における、反応セルに印加する電圧と反応セルに流れる電流値を示す。 本発明の水の熱化学的分解における、水素及び酸素の発生速度を示す。 本発明の水の熱化学的分解における、発生する水素と酸素のモル比(点線)、そして水素発生速度(実測値)と理論水素発生速度(電流値からファラディー則に基づいて計算されるもの)の比(太い実線)を示してある。 本発明の水の熱化学的分解における、反応開始直後の反応温度と水の供給量との詳細なデータを示してある。 本発明の水の熱化学的分解における、反応開始直後の全圧、水蒸気圧、水蒸気/アルゴンのガス流量の詳細なデータを示してある。 本発明の水の熱化学的分解における、反応開始直後の印可電圧と電流値の詳細なデータを示してある。 本発明の水の熱化学的分解における、反応開始直後の水素と酸素の発生速度の実測値と理論水素発生速度(電流値からファラディー則に基づいて計算されるもの)を詳細なデータとして示してある。 本発明の水の熱化学的分解における、反応開始直後の発生する水素と酸素のモル比(黒塗り三角印)、そして水素発生速度(実測値)と理論水素発生速度(電流値からファラディー則に基づいて計算されるもの)の比(黒塗り四角印)を、詳細なデータとして示してある。 本発明の水の熱化学的分解における、反応開始から80時間前後の反応温度と水の供給量を詳細なデータとして示してある。 本発明の水の熱化学的分解における、反応開始から80時間前後の全圧、水蒸気圧、水蒸気/アルゴンのガス流量を詳細なデータとして示してある。 本発明の水の熱化学的分解における、反応開始から80時間前後の印可電圧と電流値を詳細なデータとして示してある。 本発明の水の熱化学的分解における、反応開始から80時間前後の水素と酸素の発生速度の実測値と理論水素発生速度(電流値からファラディー則に基づいて計算されるもの)を詳細なデータとして示してある。 本発明の水の熱化学的分解における、反応開始から80時間前後の発生する水素と酸素のモル比(黒塗り丸印)、そして水素発生速度(実測値)と理論水素発生速度(電流値からファラディー則に基づいて計算されるもの)の比(黒塗り四角印)を詳細なデータとして示してある。 本発明の水の熱化学的分解における、反応温度と水の供給量を反応開始から 150時間前後の詳細なデータとして示してある。 本発明の水の熱化学的分解における、反応開始から 150時間前後の全圧、水蒸気圧、水蒸気/アルゴンのガス流量を詳細なデータとして示してある。 本発明の水の熱化学的分解における、反応開始から 150時間前後の印可電圧と電流値を詳細なデータとして示してある。 本発明の水の熱化学的分解における、水素と酸素の発生速度の実測値と理論水素発生速度(電流値からファラディー則に基づいて計算されるもの)を、反応開始から150時間前後の詳細なデータとして示してある。 本発明の水の熱化学的分解における、反応開始から 150時間前後の発生する水素と酸素のモル比(黒塗り丸印)、そして水素発生速度(実測値)と理論水素発生速度(電流値からファラディー則に基づいて計算されるもの)の比(黒塗り四角印)を詳細なデータとして示してある。

Claims (15)

  1. 水の熱化学的分解法において、
    式: M1(AlO2)n
    (式中、M1は陽イオンであり、n+である)
    で表されるアルミン酸塩及び式: M2(AlSiO4)n
    (式中、M2は陽イオンであり、n+である)
    で表されるアルミノケイ酸塩から選択されたものを触媒として使用することを特徴とする水の熱化学的分解法。
  2. 式: M1(AlO2)n
    (式中、M1は陽イオンであり、n+である)
    で表されるアルミン酸塩を触媒として使用することを特徴とする請求項1記載の水の熱化学的分解法。
  3. 式: M1(AlO2)n
    (式中、M1は陽イオンであり、n+である)
    で表されるアルミン酸塩及び式: M2(AlSiO4)n
    (式中、M2は陽イオンであり、n+である)
    で表されるアルミノケイ酸塩を触媒として使用することを特徴とする請求項1又は2記載の水の熱化学的分解法。
  4. アルミン酸カリウム又はアルミン酸カリウムとアルミノケイ酸カリウムを触媒として使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一記載の水の熱化学的分解法。
  5. 触媒を含有する反応セルに電圧を印加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一記載の水の熱化学的分解法。
  6. 反応セルの電極がガスの拡散が容易である構造をしていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一記載の水の熱化学的分解法。
  7. 反応セルの電極間にイオン電流ブロック層を設けてあることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一記載の水の熱化学的分解法。
  8. 反応セルのアノード側のガス流路とカソード側のガス流路を分離することにより、水素と酸素を分離して回収するものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一記載の水の熱化学的分解法。
  9. 反応セルを収容する反応容器の全圧を高くし、水素と過酸化水素を製造するものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一記載の水の熱化学的分解法。
  10. 水素を選択的に製造するものであることを特徴とする請求項9記載の水の熱化学的分解法。
  11. 該水の熱化学的分解法が、
    (A) AlO2 - と水との反応及びそれに伴うAlO(OH)2 - の生成反応、及び
    (B) AlO(OH)2 - と水との反応及びそれに伴うAlO2 - の生成反応
    を含んでおり、水の分解による水素と酸素の生成サイクルを含み且つ持続的な水の熱分解による水素と酸素の生成を達成するものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一記載の水の熱化学的分解法。
  12. 水の熱化学的分解触媒であって、
    式: M1(AlO2)n
    (式中、M1は陽イオンであり、n+である)
    で表されるアルミン酸塩及び式: M2(AlSiO4)n
    (式中、M2は陽イオンであり、n+である)
    で表されるアルミノケイ酸塩から選択されたものからなる触媒であることを特徴とする水の熱化学的分解触媒。
  13. 請求項12記載の水の熱化学的分解触媒を有していることを特徴とする水の熱化学的分解反応セル。
  14. 請求項13記載の水の熱化学的分解反応セルを備えていることを特徴とする水の熱化学的分解装置。
  15. 請求項1〜11のいずれか一記載の水の熱化学的分解法、請求項13記載の水の熱化学的分解反応セルの使用、又は請求項14記載の水の熱化学的分解装置により製造されていることを特徴とする水素、酸素及び/又は過酸化水素。
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