JP2005238737A - 平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法 - Google Patents

平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2005238737A
JP2005238737A JP2004053911A JP2004053911A JP2005238737A JP 2005238737 A JP2005238737 A JP 2005238737A JP 2004053911 A JP2004053911 A JP 2004053911A JP 2004053911 A JP2004053911 A JP 2004053911A JP 2005238737 A JP2005238737 A JP 2005238737A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
treatment
aluminum
mass
acid
plate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2004053911A
Other languages
English (en)
Inventor
Shinya Suzuki
信也 鈴木
Hirokazu Sawada
宏和 澤田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Photo Film Co Ltd filed Critical Fuji Photo Film Co Ltd
Priority to JP2004053911A priority Critical patent/JP2005238737A/ja
Publication of JP2005238737A publication Critical patent/JP2005238737A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Printing Plates And Materials Therefor (AREA)

Abstract

【課題】硝酸電解と塩酸電解とを含む特定の粗面化において良好な電解性を示し、粗面化によって得られるピットが均一かつ深い平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法を提供し、得られた支持体を用いて耐刷性、耐汚れ性に優れた平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】Cuを0.01〜0.25質量%,Mnを0.01〜2.00質量%、Znを0.1質量%未満含有し、96質量%以上の純度をもつアルミニウム板を、少なくとも、順に、
1)ブラシと研磨材とを用いて機械的に粗面化処理し、
2)硝酸水溶液中で、交流電源を用いて電気化学的に粗面化処理し、
3)塩酸水溶液中で、交流電源を用いて電気化学的に粗面化処理し、
4)陽極酸化処理する、
ことを特徴とする平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法に関し、本発明の製造方法により得られる平版印刷版用アルミニウム支持体を平版印刷版としたときに耐刷性および印刷性能(耐汚れ性能)を両立できる平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法に関する。
平版印刷版用アルミニウム支持体は、機械的粗面化、酸またはアルカリ水溶液中での化学的エッチング、酸性水溶液中でのデスマット処理、電気化学的粗面化処理、酸性水溶液中での陽極酸化処理、親水化処理、封孔処理などのうち1つ以上を組み合わせて粗面化処理するのが一般的である。特に電気化学的な粗面化処理は均一な凹凸を得やすいことから平版印刷版用アルミニウム支持体の粗面化方法として一般的に用いられてきた。特に塩酸または硝酸水溶液中での電気化学的な粗面化処理を主として用いるのが一般的である。
従来、均一な凹凸を得られるとして用いられてきた、硝酸を主体とする水溶液を用いた電解粗面化法においては、アルミニウム合金板の合金成分を所定の範囲とする調整を厳密に行う必要がある。合金成分の組成が所定範囲を外れて振れると粗面化形状が大きく変化するため、粗面化処理の条件を一定とした場合に、均一な凹凸の粗面化形状を形成することができず、外観上の故障(処理ムラ)または印刷性能(とくに耐汚れ性能)が劣るという問題点がある。
ダイレクト製版用の赤外線レーザ用感光性画像形成材料で形成された画像記録層を有する平版印刷版用のアルミニウム支持体として、印刷枚数(耐刷性)と耐汚れ性能の両立した性能を有する平版印刷版用アルミニウム支持体が望まれていた。しかし、アルミニウム合金板の合金成分を調整していないと、やはり電気化学的な粗面化処理が均一に行われず、耐刷性と耐汚れ性能の両立した性能を有する平版印刷版用アルミニウム支持体の製造は困難である。
硝酸電解および塩酸電解を組み合わせて用いることにより、種々のAlを均一に電解粗面化することができる製造方法が従来技術で示されている。しかしながら、アルミニウムの硝酸電解時の電解性は、アルミニウム材の組成、特にCu含有量によって大きく変化することが知られている。電解処理の液種が一つの場合は、その電解性を満たすアルミニウム組成を選択すればよいが、硝酸および塩酸の二つの電解反応を組み合わせる製造方法の場合には、二つの電解反応における電解性を共に満たすことが必要となってくるため、従来から考えられてきた優れた電解性をもつアルミニウム材質というものとは異なり、再検討が必要となった。
従来の支持体の耐汚れ性能と耐刷性を改善するために、硝酸電解ののちに塩酸電解を行う方法が検討されてきたが、これらの検討では種々のアルミニウム材において効果があることが示されている。
例えば特許文献1では、Siを0.02〜0.1%、Cuを0.005%以下、Feを0.1〜0.5%含有するアルミニウム材を用いて、機械的粗面化処理、硝酸を含有する電解液による電気化学的粗面化処理、塩酸を含有する電解液による電気化学的粗面化処理およびアルカリ水溶液による化学的溶解処理からなる群より選ばれる2種類以上の処理方法によって処理され、粗面化形状が大波構造と小波構造からなる大小二重以上の複合構造の砂目形状を有し、大波構造が0.5〜30μmの平均波長を有し、且つ小波構造が平均径0.01〜0.3μmのピット構造を有する支持体と平版印刷版を記載している。
例えば特許文献2、3、4では、硝酸電解と塩酸電解とを組合せ、それぞれの最適条件を検討し、さらにアルカリエッチング処理、酸性デスマット処理等の条件や、機械的粗面化処理、陽極酸化処理等の最適条件を組み合わせてアルミニウム板の粗面化を行っている。
アルミニウム板の組成として、Alが95−99.4重量%であり、次の元素のうち、5種類以上を以下の範囲で含むA1合金板(AL3)を記載している。
Fe:0.3〜1重量%Si:0.15〜1重量%Cu:0.1〜1重量%Mg:0.1〜1.5重量%Mn:0.1〜1.5重量%Zn:0.1〜0.5重量%Cr:0.01〜0.1重量%Ti:0.03〜0.5重量%、このアルミニウム合金は、スクラップ材を主原料として使用できるから、原料コストが安価である。また、前記アルミニウム合金(AL3)は、(1)必須成分として、Feを0.2〜1重量%、Siを0.05〜0.20重量%、Cuを0.006〜0.40重量%含有し、任意成分としてMgを0.001〜0.03重量%、Tiを0.001〜0.04重量%含み、残部がAlと不可避不純物とからなるアルミニウム合金(AL1)や、(2)必須成分としてFeを0.1〜0.5重量%、Siを0.02−0.10重量%含有し、任意成分として、Cuを0.005重量%以下、Mgを0.001〜0.03重量%、Tiを0.001−0.04重量%、Niを0.002〜0.005重量%、Vを0.01〜O、05重量%含有し、残部がAlと不可避不純物とからなるアルミニウム合金(AL2)に比ベて機械強度が優れる。したがって、アルミニウム合金AL3を使用することにより、原材料コストが安く、かつ機械強度の優れた高強度型の平版印刷版原版が製造できることが記載されている。
しかしながら、耐刷性能と耐汚れ性能の両方に優れるためのバランスを突き詰めていくと、前記処理方法によっては種々のアルミニウム材において十分な性能が得られていないことがわかった。これは、電解粗面化の特性を決定付ける要因の中でアルミニウム合金材質がきわめて重要な要因であることからも明らかである。
特開2003−039845号公報 特開2003−039846号公報 特開2003−103953号公報 特開2003−103954号公報
本発明は、アルミニウム合金が有する電気化学的な粗面化の特性を活かし、従来の支持体を用いる平版印刷版の問題点であった耐汚れ性を改善し、耐刷性をさらに改善する平版印刷版の基板として用いられる平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法を提供することを目的とするものである。
平版印刷版原版は、ピットが形成されているアルミニウム支持体とその上に感光層や感熱層等の記録層を有する積層体であり、その表面に画像を焼付け現像を行うと、記録層が除去された非画像部と、感光層が残った画像部ができることで画像が記録される。印刷時は、そのようにして画像を記録した平版印刷版に、インキと湿し水を供給することで画像部にはインキ、非画像部には湿し水が付着し、ブランケットを介して紙などに画像が印刷される。
ところで、支持体表面に生成させた電解粗面化処理によるピットを深くすることで、感光層と支持体の密着はより強固にでき、その結果、耐刷性は優れたものになる。しかし、過度に深い部分が生じると粗面のうねりの中に非常に急峻な部分ができやすくなり、その部分はインキがひっかかりやすく、汚れが生じる。
そこで、本発明者等は鋭意研究を進めた結果、Cu、Mn、Znの含有量を併せて制御されたアルミニウム材を用いて特定の工程により製造することで、硝酸電解および塩酸電解の両電解性を共に高い水準で満せることを発見した。
本発明者は、種々のAl合金成分の電解特性と印刷性能との対応を調査した結果、Cu含有量を0.01〜0.25質量%、Mn含有量を0.01〜2.00質量%、Zn含有量を0.1質量%未満に調整したAl材を用いて電解粗面化すれば、硝酸電解におけるピットを深く形成でき、耐刷性をさらに向上できるばかりでなく急峻なうねりが生じなくなり、汚れが発生しないことを見出した。Znを含有する場合、その量によってはCuやMnによる電解性の調整効果を低減してしまう場合がある。このため、Znを多く含有することは望ましくなく、Zn含有量の上限を規定する必要があることも合わせて見出した。
すなわち(1)本発明は、Cuを0.01〜0.25質量%,Mnを0.01〜2.00質量%、Znを0.1質量%未満含有し、96質量%以上の純度をもつアルミニウム板を、少なくとも、順に、
・ ブラシと研磨材とを用いて機械的に粗面化処理し、
・ 硝酸水溶液中で、交流電源を用いて電気化学的に粗面化処理し、
・ 塩酸水溶液中で、交流電源を用いて電気化学的に粗面化処理し、
・ 陽極酸化処理する、
ことを特徴とする平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法を提供する。
この製造方法には、Cuを0.01〜0.25質量%、Mnを0.01〜2.00質量%、Znを0.1質量%未満含有し、96質量%以上の純度をもつアルミニウム板を用いるが、より好ましくは、Cuを0.03〜0.15質量%、Mnを0.02〜1.2質量%、Znを0.05質量%以下含有するアルミニウム板を用いることが効果的である。さらには、Cuを0.03〜0.1質量%未満、Mnを0.02〜1.2質量%、Znを0.005質量%以下含有するアルミニウム板を用いることが効果的である。Znの下限量は限定されないが、極端に少なくするのはコストがかかるので、Zn含有量を0.1質量%未満、0.0001質量%以上とするのが好ましい。
電気化学的粗面化に用いられる、前記硝酸水溶液は、硝酸を1〜20g/L含有するのが好ましく、2〜15g/L含有するのが特に好ましい。また、前記塩酸水溶液は、塩酸を1〜20g/L含有するのが好ましく、2〜15g/L含有するのが特に好ましい。それぞれの溶液は通常、アルミニウムイオンを含み、アルミニウムイオン濃度は、1〜8g/Lであるのが好ましく、2〜6g/Lであるのがより好ましく、4〜5g/Lであるのが特に好ましい。
また、(2)本発明は、前記硝酸水溶液中および/または前記塩酸水溶液中での電気化学的な粗面化処理の前および/または後にアルカリ水溶液中での化学的なエッチング処理および酸性水溶液中でのデスマット処理を行うことを特徴とする(1)に記載の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法を提供する。
本発明においては、各電気化学的粗面化処理の前には、アルカリエッチング処理またはデスマット処理を施すのが好ましく、また、アルカリエッチング処理とデスマット処理とをこの順に施すのも好ましい。また、各電気化学的粗面化処理の後には、アルカリエッチング処理またはデスマット処理を施すのが好ましく、また、アルカリエッチング処理とデスマット処理とをこの順に施すのも好ましい。また、各電気化学的粗面化処理後のアルカリエッチング処理は、省略することもできる。
硝酸水溶液中での電気化学的粗面化処理、塩酸水溶液中での電気化学的粗面化処理は、各処理を2回以上行ってもよい。また、これらの後に、陽極酸化処理、封孔処理、親水化処理などを施すのも好ましい。
特に、表面処理が、ブラシと研磨材とを用いる機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、デスマット処理、硝酸水溶液の中での電気化学的粗面化処理、アルカリエッチング処理および/またはデスマット処理、塩酸水溶液の中での電気化学的粗面化処理、アルカリエッチング処理および/またはデスマット処理、陽極酸化処理をこの順に含むのは、本発明の好ましい態様の一つである。
ここで、Cu、Mn、Zn量を所定範囲としたアルミニウム板を順に、
1)ナイロンブラシと研磨材とを用いて機械的に粗面化処理し、
2)アルカリ水溶液中でエッチング処理し、(第1アルカリエッチング処理)
3)酸性水溶液中でデスマット処理し、(第1デスマット処理)
4)硝酸を主体とする水溶液中で電気化学的に粗面化処理し、(第1電気化学的粗面化処理)
5)アルカリ水溶液中でエッチング処理し、(第2アルカリエッチング処理)
6)酸性水溶液中でデスマット処理し、(第2デスマット処理)
7)塩酸を主体とする水溶液中で電気化学的に粗面化処理し、(第2電気化学的粗面化処理)
8)アルカリ水溶液中でエッチング処理し、(第3アルカリエッチング処理)
9)酸性水溶液中でデスマット処理し、(第3デスマット処理)
10)陽極酸化処理、
するのが特に好ましい。
また、(3)本発明は、前記陽極酸化処理の後に、封孔処理または親水化処理、あるいは、封孔処理および/または親水化処理を行うことを特徴とする(1)、(2)のいずれかに記載の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法を提供する。
本発明のアルミニウム支持体の製造方法は、硝酸電解と塩酸電解とを含む特定の電気化学的粗面化処理にそれぞれ良好な電解性を示すため、粗面化によって得られるピットが均一かつ深く、平版印刷版原版として、耐刷性に優れ、しかも、局所的に大きな歪みスポットがないので、汚れの発生を防止でき耐汚れ性に優れる平版印刷版用支持体を得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[1]アルミニウム板
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法に用いられるアルミニウム板は、Cuを0.01〜0.25質量%、Mnを0.01〜2.00質量%、Znを0.1質量%未満含有し、96質量%以上の純度を持つ。アルミニウム板のCuとMnとの含有量が上記範囲であると、後述する硝酸交流電解と塩酸交流電解とを有する特定の粗面化処理を行った場合に、ピットを深く形成できるにもかかわらず、急峻なピットのない均一な凹部が形成される。その結果、本発明により得られる平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版は、耐刷性が優れかつ耐汚れ性にも優れる。
本発明に用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板を用いることもできる。
本明細書においては、上述したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる各種の基板をアルミニウム板と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含まれてもよい異元素には、ケイ素、鉄、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等があり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。
このように本発明に用いられるアルミニウム板は、必須の要件として限定された特定の元素の含有量以外は組成が特定されるものではなく、例えば、アルミニウムハンドブック第4版(1990年、軽金属協会発行)に記載されている従来公知の素材、例えば、JIS A1050、JIS A1100、JIS A1070、Mnを含むJIS A3004、国際登録合金 3103A等のAl−Mn系アルミニウム板を適宜利用することができる。また、引張強度を増す目的で、これらのアルミニウム合金に0.1質量%以上のマグネシウムを添加したAl−Mg系合金、Al−Mn−Mg系合金(JIS A3005)を用いることもできる。更に、ZrやSiを含むAl−Zr系合金やAl−Si系合金を用いることもできる。更に、Al−Mg−Si系合金を用いることもできる。
特に好ましいのは、Si:0.15質量%未満、さらには0.07〜0.09質量%、Fe:0.3質量%未満、さらには0.20〜0.29質量%、Cu:0.01〜0.25質量%、Mn:0.01〜2質量%、Mg:0.01質量%以下、Cr:0.01質量%以下、Zn:0.1質量%未満、Ti:0.02質量%以下、Al:96質量%以上、さらには98.5質量%以上であるアルミニウム板である。
アルミニウム合金を板材とするには、例えば、下記の方法を採用することができる。まず、所定の合金成分含有量に調整したアルミニウム合金溶湯に、常法に従い、清浄化処理を行い、鋳造する。清浄化処理には、溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を用いるフィルタリング処理、あるいは、脱ガス処理とフィルタリング処理を組み合わせた処理が行われる。
これらの清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが好ましい。溶湯のフィルタリング、脱ガス処理をさらに行ってもよい。
ついで、上述したように清浄化処理を施された溶湯を用いて鋳造を行う。鋳造方法に関しては、DC鋳造法に代表される固体鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる方法がある。
DC鋳造においては、冷却速度が0.5〜30℃/秒の範囲で凝固する。0.5℃/秒未満であると粗大な金属間化合物が多数形成されることがある。DC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊を製造することができる。その鋳塊を、常法に従い、必要に応じて面削を行い、通常、表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削する。その前後において、必要に応じて、均熱化処理を行う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。熱処理が1時間より短い場合には、均熱化処理の効果が不十分となることがある。なお、均熱化処理を行わない場合には、コストを低減させることができるという利点がある。
その後、熱間圧延、冷間圧延を行ってアルミニウム板の圧延板とする。熱間圧延の開始温度は350〜500℃が適当である。熱間圧延の前もしくは後、またはその途中において、中間焼鈍処理を行ってもよい。中間焼鈍処理の条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて280〜600℃で2〜20時間、好ましくは350〜500℃で2〜10時間加熱するか、連続焼鈍炉を用いて400〜600℃で6分以下、好ましくは450〜550℃で2分以下加熱するかである。連続焼鈍炉を用いて10〜200℃/秒の昇温速度で加熱して、結晶組織を細かくすることもできる。
以上の工程によって、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmに仕上げられたアルミニウム板は、更にローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって平面性を改善してもよい。平面性の改善は、アルミニウム板をシート状にカットした後に行ってもよいが、生産性を向上させるためには、連続したコイルの状態で行うことが好ましい。また、所定の板幅に加工するため、スリッタラインを通してもよい。また、アルミニウム板同士の摩擦による傷の発生を防止するために、アルミニウム板の表面に薄い油膜を設けてもよい。油膜には、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが適宜用いられる。
一方、連続鋳造法としては、双ロール法(ハンター法)、3C法に代表される冷却ロールを用いる方法、双ベルト法(ハズレー法)、アルスイスキャスターII型に代表される冷却ベルトや冷却ブロックを用いる方法が、工業的に行われている。連続鋳造法を用いる場合には、冷却速度が100〜1000℃/秒の範囲で凝固する。連続鋳造法は、一般的には、DC鋳造法に比べて冷却速度が速いため、アルミマトリックスに対する合金成分固溶度を高くすることができるという特徴を有する。
連続鋳造を行った場合において、例えば、ハンター法等の冷却ロールを用いる方法を用いると、板厚1〜10mmの鋳造板を直接、連続鋳造することができ、熱間圧延の工程を省略することができるというメリットが得られる。また、ハズレー法等の冷却ベルトを用いる方法を用いると、板厚10〜50mmの鋳造板を鋳造することができ、一般的に、鋳造直後に熱間圧延ロールを配置し連続的に圧延することで、板厚1〜10mmの連続鋳造圧延板が得られる。
これらの連続鋳造圧延板は、DC鋳造について説明したのと同様に、冷間圧延、中間焼鈍、平面性の改善、スリット等の工程を経て、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.6mmの板厚に仕上げられる。
本発明の平版印刷板用アルミニウム支持体の製造方法に用いるアルミニウム板は、DC鋳造法から中間焼鈍処理もしくは均熱処理、または、中間焼鈍処理および均熱処理を省略して製造されたアルミニウム板、あるいは、連続鋳造法から中間焼鈍処理を省略して製造されたアルミニウム板を用いてもよい。
本発明に用いられるアルミニウム板は、JISに規定されるH18の調質が行われているのが好ましい。
本発明で用いるアルミニウム板の厚みは0.05〜0.8mm、好ましくは0.1mm〜0.6mmである。
本発明の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法においては、上記アルミニウム合金板に、ブラシと研磨材とを用いる機械的粗面化処理、硝酸および塩酸酸性水溶液中での電気化学的粗面化処理、および陽極酸化処理を含む表面処理を施して平版印刷版用アルミニウム支持体を得るが、この表面処理には更に各種の処理が含まれていてもよい。なお、本発明に用いられる各種の工程においては、その工程に用いられる処理液の中に使用するアルミニウム合金板の合金成分が溶出するので、処理液はアルミニウム合金板の合金成分を含有していてもよく、特に、処理前にそれらの合金成分を添加して処理液を定常状態にして用いるのが好ましい。合金成分のうちCuは、処理液中に、1.0×10-5〜2.5×10-1g/L含有していてもよい。Mnは、処理液中に、1.0×10-5〜2.5×10-1g/L含有していてもよい。
[2]表面処理(機械的粗面化処理および化学的粗面化処理)
本明細書においては、硝酸水溶液中での電気化学的粗面化処理を第1電気化学的粗面化処理といい、塩酸水溶液中での電気化学的粗面化処理を第2電気化学的粗面化処理という場合がある。
また、機械的粗面化処理の後で第1電気化学的粗面化処理の前に行うアルカリエッチング処理を第1アルカリエッチング処理といい、第1電気化学的粗面化処理の後で第2電気化学的粗面化処理の前に行うアルカリエッチング処理を第2アルカリエッチング処理といい、第2電気化学的粗面化処理の後で陽極酸化処理の前に行うアルカリエッチング処理を第3アルカリエッチング処理という場合がある。
同様に、デスマット処理も上記の順に、第1デスマット処理、第2デスマット処理、第3デスマット処理という場合がある。なお、デスマット処理は、アルカリエッチング処理の後に行う。
<機械的粗面化処理>
本発明においては、機械的粗面化処理は電気化学的粗面化処理の前に行うのが好ましい。機械的粗面化処理によりアルミニウム板の表面積が増大する。
まず、アルミニウム板をブラシグレイニングするに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための脱脂処理、例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。但し、圧延油の付着が少い場合は脱脂処理を省略することができる。
引き続いて、1種類または毛径が異なる少なくとも2種類のブラシを用いて、研磨スラリー液をアルミニウム板表面に供給しながら、ブラシグレイニングを行う。機械的な粗面化処理については、特開平6−135175号公報、特公昭50−40047号公報に詳しく記載されている。ブラシローラは特開平6−135175号公報に記載のように毛径の異なるブラシローラを組み合わせてもよい。
ローラ状ブラシを用いる場合、曲げ弾性率が好ましくは10,000〜40,000kg/cm2、より好ましくは15,000〜35,000kg/cm2であり、かつ、毛腰の強さが好ましくは500g以下、より好ましくは400g以下であるブラシ毛を用いる。ブラシ毛の直径は、一般的には、0.2〜0.9mmである。ブラシ毛の長さは、ローラ状ブラシの外径および胴の直径に応じて適宜決定することができるが、一般的には、10〜100mmである。
ナイロンブラシは複数本用いるのが好ましく、具体的には、3本以上がより好ましく、4本以上が特に好ましい。ブラシの本数を調整することにより、アルミニウム板表面に形成される凹部の形状を調整できる。
また、ブラシを回転させる駆動モータの負荷は、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して1kWプラス以上が好ましく、2kWプラス以上がより好ましく、8kWプラス以上が特に好ましい。該負荷を調整することにより、アルミニウム板表面に形成される凹部の深さを調整することができる。ブラシの回転数は、100回転以上が好ましく、200回転以上が特に好ましい。
研磨材は公知の物を用いることができる。例えば、パミストン(パミスストーン)、ケイ砂、水酸化アルミニウム、アルミナ粉、炭化ケイ素、窒化ケイ素、火山灰、カーボランダム、金剛砂等の研磨材;これらの混合物を用いることができる。中でも、パミストン、ケイ砂が好ましい。ケイ砂は、パミストンに比べて硬く、壊れにくいので粗面化効率に優れる。また、水酸化アルミニウムは過度の荷重がかかると粒子が破損するため、局所的に深い凹部を生成させたくない場合に好適である。
研磨材のメジアン径は、粗面化効率に優れ、かつ、砂目立てピッチを狭くすることができる点で、2〜100μmであるのが好ましく、20〜60μmであるのがより好ましい。研磨材のメジアン径を調整することにより、アルミニウム板表面に形成される凹部の深さを調整することができる。
研磨材は、例えば、水中に懸濁させて、スラリー液として用いる。スラリー液には、研磨材のほかに、増粘剤、分散剤(例えば、界面活性剤)、防腐剤等を含有させることができる。スラリー液の比重は0.5〜2であるのが好ましい。
このようにアルミニウム板をブラシグレイニングした後、次いで、アルミニウム板の表面を化学的にエッチングしておくことが好ましい。この化学的エッチング処理は、ブラシグレイニング処理されたアルミニウム板の表面に食い込んだ研磨材、アルミニウム屑などを取り除く作用を有し、その後に施される電気化学的な粗面化をより均一に、しかも効果的に達成させることができる。
<アルカリ水溶液中での化学的なエッチング処理(第1アルカリエッチング処理)>
第1アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム合金板をアルカリ溶液に接触させることにより、エッチングを行う。第1アルカリエッチング処理は、機械的粗面化処理を行っていない場合には、前記アルミニウム合金板(圧延アルミ)の表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜を除去することを目的として、また、機械的粗面化処理を行った場合には、機械的粗面化処理によって生成した凹凸のエッジ部分を溶解させ、滑らかなうねりを持つ表面を得ることを目的として行われる。
アルミニウム合金板をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム合金板をアルカリ溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム合金板をアルカリ溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、アルカリ溶液をアルミニウム合金板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
かかる化学的エッチング方法の詳細は、米国特許第3,834,398号明細書に記載されている。
第1アルカリエッチング処理においては、エッチング量は、0.1g/m2以上であるのが好ましく、0.5g/m2以上であるのがより好ましく、1g/m2以上であるのが更に好ましく、また、15g/m2以下であるのが好ましく、8g/m2以下であるのがより好ましく、5g/m2以下であるのが更に好ましい。エッチング量の下限が上記範囲にあると、第1電解処理において均一なピットを生成でき、更に処理ムラの発生を防止できる。エッチング量の上限が上記範囲にあると、アルカリ水溶液の使用量が少なくなり、経済的に有利となる。
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、カセイアルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、カセイアルカリとしては、例えば、カセイソーダ、カセイカリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、メタケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第1リン酸ソーダ、第1リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチング速度が速い点および安価である点から、カセイアルカリの溶液、および、カセイアルカリとアルカリ金属アルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、カセイソーダの水溶液が好ましい。
第1アルカリエッチング処理においては、アルカリ溶液の濃度は、30g/L以上であるのが好ましく、300g/L以上であるのがより好ましく、また、500g/L以下であるのが好ましく、450g/L以下であるのがより好ましい。
また、アルカリ溶液は、アルミニウムイオンを含有しているのが好ましい。アルミニウムイオン濃度は、1g/L以上であるのが好ましく、50g/L以上であるのがより好ましく、また、200g/L以下であるのが好ましく、150g/L以下であるのがより好ましい。このようなアルカリ溶液は、例えば、水と48質量%カセイソーダ水溶液とアルミン酸ソーダとを用いて調製することができる。
第1アルカリエッチング処理においては、アルカリ溶液の温度は、30℃以上であるのが好ましく、50℃以上であるのがより好ましく、また、80℃以下であるのが好ましく、75℃以下であるのがより好ましい。
第1アルカリエッチング処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また、30秒以下であるのが好ましく、15秒以下であるのがより好ましい。
アルミニウム板を連続的にエッチング処理していくと、アルカリ溶液中のアルミニウムイオン濃度が上昇していき、アルミニウム板のエッチング量が変動する。そこで、エッチング液の組成管理を、電導度と比重と温度、または、電導度と超音波伝搬速度と温度によって液組成を測定し、液組成の制御目標値になるようにカセイソーダと水とを添加して行うのが好ましい。アルカリエッチング以外の化学的粗面化処理においても特に記載しないが、これに順ずる液組成の制御が行われるのが好ましい。
アルカリエッチング処理が終了した後は、ニップローラで液切りし、更に、1〜10秒間水洗処理を行った後、ニップローラで液切りするのが好ましい。
水洗処理は、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置を用いて水洗し、更に、スプレー管を用いて水洗するのが好ましい。
図1は、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置の模式的な断面図である。図1に示されているように、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置100は、水102を貯留する貯水タンク104と、貯水タンク104に水を供給する給水筒106と、貯水タンク104から自由落下カーテン状の液膜をアルミニウム板1に供給する整流部108とを有する。
装置100においては、給水タンク104に給水筒106から水102が供給され、水102が給水タンク104からオーバーフローする際に、整流部108により整流され、自由落下カーテン状の液膜がアルミニウム板1に供給される。装置100を用いる場合、液量は10〜100L/minであるのが好ましい。また、装置100とアルミニウム1との間の水102が自由落下カーテン状の液膜として存在する距離Lは、20〜50mmであるのが好ましい。また、アルミニウム板の角度αは、水平方向に対して30〜80°であるのが好ましい。
図1に示されるような自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置を用いると、アルミニウム板に均一に水洗処理を施すことができるので、水洗処理の前に行われた処理の均一性を向上させることができる。
自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する具体的な装置としては、例えば、特開2003−96584号公報に記載されている装置が好適に挙げられる。
また、水洗処理に用いられるスプレー管としては、例えば、扇状に噴射水が広がるスプレーチップをアルミニウム板の幅方向に複数個有するスプレー管を用いることができる。スプレーチップの間隔は20〜100mmであるのが好ましく、また、スプレーチップ1本あたりの液量は0.5〜20L/minであるのが好ましい。スプレー管は複数本用いるのが好ましい。
<酸性水溶液中でのデスマット処理(第1デスマット処理)>
化学的なエッチングをアルカリ水溶液を用いて行うと、一般にアルミニウムの表面にはスマットが生成するので、この場合にはリン酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、またはこれらの2以上の酸を含む混酸でデスマット処理する。酸性水溶液の濃度は0.5〜60質量%が好ましい。更に酸性水溶液中にはアルミニウムはもちろんアルミニウム合金中に含有する合金成分が0〜5質量%が溶解していても良い。
また、デスマット処理液として、電気化学的な粗面化処理で発生した廃液、陽極酸化処理で発生した廃液を用いることが特に好ましい。
液温は常温から95℃で実施され、30〜70℃が特に好ましい。処理時間は1〜120秒が好ましく、特に1〜5秒が好ましい。デスマット処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないためにニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗を行うことが好ましい。ニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗は、デスマット処理液が、次の工程で用いる液と同じ種類の液、または同じ組成の液を用いるときは省略することができる。
また、電気化学的な粗面化処理に用いる装置で、電極の溶解防止と粗面化形状のコントロールのために補助陽極槽を使用するとき、補助陽極槽をアルミニウム板に交流が流れて電気化学的粗面化処理を行う槽の前に持ってくる場合は、電気化学的な粗面化処理の前の酸性水溶液中でのデスマット工程を省略することもできる。
<電気化学的な粗面化処理>
本発明における電気化学的な粗面化処理は、特定組成のアルミニウム合金板に、硝酸を主体とする水溶液中で交流電源を用いる電気化学的な粗面化処理(第1電気化学的粗面化処理)と、塩酸を主体とする水溶液中で交流電源を用いる電気化学的な粗面化処理(第2電気化学的粗面化処理)とを組合わせることに特徴がある。
これらの電気化学的な粗面化処理および陽極酸化処理、必要により本明細書で説明する各表面処理を行うことにより、本発明の目的を達成することができる。
以下、電気化学的な粗面化処理について説明する。
(1)硝酸を主体とする水溶液(第1電気化学的粗面化処理)
本発明でいう硝酸を主体とする水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用でき、1〜100g/Lの硝酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウムなどの硝酸イオン、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウムなどの塩酸イオンを有する塩酸または硝酸化合物の1つ以上を1g/L〜飽和まで添加して使用することができる。また、銅と錯体を形成する化合物を1〜200g/Lの割合で添加することもできる。硝酸を主体とする水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカなどのアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。次亜塩素酸や過酸化水素を1〜100g/L添加してもよい。
液温15〜90℃、硝酸を1〜20g/L含有する水溶液にアルミニウム塩(硝酸アルミニウム)を添加してアルミニウムイオンが1〜8g/Lにした水溶液であることが好ましい。硝酸を主体とする水溶液中への添加物、装置、電源、電流密度、流速、温度としては公知の電気化学的な粗面化に使用するものを用いることができる。電気化学的な粗面化に用いる電源は交流が用いられる。硝酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化でアルミニウム板が陽極反応にあずかる電気量は、電気化学的な粗面化処理が終了した時点で、10〜1000C/dm2 の範囲から好ましく選択でき、30C/dm2以上がより好ましく、45C/dm2以上がさらに好ましく、500C/dm2 以下が好ましく、300C/dm2 以下が特に好ましい。
硝酸電解の前に、下記プレ電解を行ってもよい。プレ電解を行うと、硝酸電解において、より均一な凹部が形成される。
プレ電解は、硝酸電解時のピット形成の起点を形成させる工程である。アルミニウム板の材質の影響を受けにくく、非常に腐食性の高い塩酸を用いてわずかに電解を行うことにより、表面に均一に起点となるピットを形成させることができる。
プレ電解において、塩酸濃度は1〜15g/Lであるのが好ましく、また、陽極時の電気量は30〜70C/m2であるのが好ましい。
プレ電解の後は、スマット除去のためにアルカリエッチングを行うのが好ましい。アルカリエッチングにおけるアルミニウム溶解量は、0.2〜0.6g/m2であるのが好ましい。
(2)塩酸を主体とする水溶液(第2電気化学的粗面化処理)
本発明でいう塩酸を主体とする水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用でき、1〜20g/Lの塩酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウムなどの硝酸イオン、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウムなどの塩酸イオンを有する塩酸または硝酸化合物の1つ以上を1g/L〜飽和まで添加して使用することができる。また、銅と錯体を形成する化合物を1〜200g/Lの割合で添加することもできる。塩酸を主体とする水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカなどのアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。次亜塩素酸や過酸化水素を1〜100g/L添加してもよい。
塩酸水溶液は、液温15〜50℃、塩酸を1〜20g/L含有する水溶液に、アルミニウムイオン濃度が1〜8g/Lにした水溶液であることが好ましい。このような塩酸水溶液を用いて電気化学的粗面化処理を行うと、該粗面化処理による表面形状が均一になり、該粗面化処理による処理ムラが発生せず、平版印刷版としたときに優れた耐刷性および印刷性能(耐汚れ性能)を両立できる。
ここで、塩酸水溶液は、塩酸を2〜15g/L含有するのが特に好ましい。塩酸水溶液のアルミニウムイオン濃度は、1〜8g/Lであるのが好ましく、2〜6g/Lであるのがより好ましく、4〜5g/Lであるのが特に好ましい。
塩酸を主体とする水溶液中への添加物、装置、電源、電流密度、流速、温度としては公知の電気化学的な粗面化に使用するものを用いることができる。電気化学的な粗面化に用いる電源は交流が用いられる。塩酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化でアルミニウム板が陽極反応にあずかる電気量は、電気化学的な粗面化処理が終了した時点で、10〜1000C/dm2 の範囲から好ましく選択でき、20C/dm2 以上がより好ましく、25C/dm2以上がさらに好ましく、60C/dm2 以下がより好ましく、80C/dm2 以下がさらに好ましい。
電気化学的粗面化処理に用いられる交流電源波は、特に限定されず、サイン波、矩形波、台形波、三角波等が用いられるが、矩形波または台形波が好ましく、台形波が特に好ましい。台形波とは、図2に示したものをいう。この台形波において電流がゼロからピークに達するまでの時間(TP)は0.5〜3msecであるのが好ましい。TPが3msecを超えると、特に硝酸を含有する水溶液を用いると、電解処理で自然発生的に増加するアンモニウムイオン等に代表される電解液中の微量成分の影響を受けやすくなり、均一な砂目立てが行われにくくなる。その結果、平版印刷版としたときの耐汚れ性が低下する傾向にある。
交流のduty比(ta/T、1サイクルに占めるアノード反応時間の割合)は1:2〜2:1のものが使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているように、アルミニウムにコンダクタロールを用いない間接給電方式においてはduty比が1:1のものが好ましい。
交流の周波数は0.1〜120Hzのものを用いることが可能であるが、50〜70Hzが設備上好ましい。50Hzよりも低いと、主極のカーボン電極が溶解しやすくなり、また、70Hzよりも高いと、電源回路上のインダクタンス成分の影響を受けやすくなり、電源コストが高くなる。
電解槽には1個以上の交流電源を接続することができる。主極に対向するアルミニウム板に加わる交流の陽極と陰極との電流比をコントロールし、均一な砂目立てを行うことと、主極のカーボンを溶解することとを目的として、図3に示したように、補助陽極を設置し、交流電流の一部を分流させることが好ましい。図3において、11はアルミニウム板であり、12はラジアルドラムローラであり、13aおよび13bは主極であり、14は電解処理液であり、15は電解液供給口であり、16はスリットであり、17は電解液通路であり、18は補助陽極であり、19aおよび19bはサイリスタであり、20は交流電源であり、40は主電解槽であり、50は補助陽極槽である。整流素子またはスイッチング素子を介して電流値の一部を二つの主電極とは別の槽に設けた補助陽極に直流電流として分流させることにより、主極に対向するアルミニウム板上で作用するアノード反応にあずかる電流値と、カソード反応にあずかる電流値との比を制御することができる。主極に対向するアルミニウム板上で、陽極反応と陰極反応とにあずかる電気量の比(陰極時電気量/陽極時電気量)は、0.3〜0.95であるのが好ましい。
電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型等の公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているようなラジアル型電解槽が特に好ましい。電解槽内を通過する電解液は、アルミニウムウェブの進行方向に対してパラレルであってもカウンターであってもよい。
(3)粗面化に用いる廃液のリサイクル
各粗面化処理に用いた液(廃液)は可能な限りリサイクルすることが好ましい。
アルミニウムイオンが溶けた苛性ソーダ水溶液では晶析法によるアルミニウムと苛性ソーダの分離を行うことができる。アルミニウムイオンが溶けた硫酸水溶液、硝酸水溶液または塩酸水溶液では電気透析法やイオン交換樹脂による硫酸または硝酸の回収を行うことができる。
アルミニウムイオンが溶けた塩酸水溶液では特開2000−282272号公報に記載されているような蒸発による回収を行うこともできる。
本発明では、電気化学的粗面化処理で用いた電解液の廃液をデスマット処理(第1、第2および第3デスマット処理)に用いるのが好ましい。
また、電気化学的な粗面化処理、または、陽極酸化処理の前に行うデスマット処理は、デスマット処理の後に行う粗面化処理または陽極酸化処理と同じ種類の液を用いることが好ましく、同じ組成の液を用いることが特に好ましい。そうすることで、デスマット処理とその次の工程の間に設ける水洗工程を省略することができ、設備の簡素化と廃液量の低減が可能となる。
<アルカリ水溶液中での化学的なエッチング処理(第2および第3アルカリエッチング処理)>
第1電気化学的粗面化処理の後で第2電気化学的粗面化処理の前に第2アルカリエッチング処理を行うのが好ましい。この処理により第2電気化学的粗面化処理を均一に行うことができ、かつ、アルミニウム板の表面形状が均一で耐刷性および印刷性能に優れた平版印刷版が得られる。
また、第2電気化学的粗面化処理の後で陽極酸化処理の前に第3アルカリエッチング処理を行うのが好ましい。この処理により第2電気化学的粗面化処理で生成したスマット成分(水酸化アルミニウムが主成分)を除去でき、かつ、アルミニウム板の表面形状が均一で耐刷性および印刷性能に優れた平版印刷版が得られる。
第2アルカリエッチング処理および第3アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム合金板をアルカリ溶液に接触させることにより、エッチングを行う。アルカリの種類、アルミニウム合金板をアルカリ溶液に接触させる方法およびそれに用いる装置は、第1アルカリエッチング処理の場合と同様のものが挙げられる。
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、第1アルカリエッチング処理の場合と同様のものが挙げられる。
アルカリ溶液の濃度は、エッチング量に応じて決定することができるが、0.01〜80質量%であるのが好ましい。アルカリ溶液の温度は20〜90℃であるのが好ましい。処理時間は1〜60秒であるのが好ましい。
第2アルカリエッチング処理においては、アルミニウム板(電解粗面化処理を施した面)の溶解量は、好ましくは、0.001〜30g/m2 であり、より好ましくは、0.1〜4g/m2 であり、特に好ましくは、0.2〜1.5g/m2 である。
第3アルカリエッチング処理においては、アルミニウム板(電解粗面化処理を施した面)の溶解量は、好ましくは、0.001〜30g/m2 であり、より好ましくは、0.1〜2g/m2 であり、特に好ましくは、0.1〜0.6g/m2 である。
第2アルカリエッチング処理の後に第2デスマット処理を行うのが好ましい。第2電気化学的粗面化処理をより均一に行うことができる。
また、第3アルカリエッチング処理の後に第3デスマット処理を行うのが好ましい。第3アルカリエッチング処理で発生した水酸化物を除去でき、かつ、印刷時に支持体と感光層の密着性が高い平版印刷版が得られる。
<第2デスマット処理および第3デスマット処理>
第2デスマット処理および第3デスマット処理は、例えば、上記アルミニウム合金板をリン酸、塩酸、硝酸、硫酸などの濃度0.5〜30質量%の酸性溶液(アルミニウムイオン0.01〜5質量%を含有する。)に接触させることにより行う。アルミニウム合金板を酸性溶液に接触させる方法は、第1デスマット処理の場合と同様のものが挙げられる。
第2デスマット処理および第3デスマット処理においては、酸性溶液として、後述する陽極酸化処理において排出される硫酸溶液の廃液を用いるのが好ましい。また、該廃液の代わりに、硫酸濃度が100〜600g/L、アルミニウムイオン濃度が1〜10g/Lであり、液温が60〜90℃である硫酸溶液を用いることもできる。
第2デスマット処理および第3デスマット処理の液温は、25〜90℃であるのが好ましい。また、第2デスマット処理および第3デスマット処理の処理時間は、1〜180秒であるのが好ましい。第2デスマット処理および第3デスマット処理に用いられる酸性溶液には、アルミニウムおよびアルミニウム合金成分が溶け込んでいてもよい。
<陽極酸化処理>
アルミニウム板の表面の耐磨耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては多孔質酸化皮膜を形成するものならば、いかなるものでも使用することができる。一般には硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸、またはそれらの混合液が用いられる。
それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化の処理条件は用いる電解質によって変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%、液温は5〜70℃、電流密度1〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜300秒の範囲にあれば適当である。硫酸法は通常直流電流で処理が行われるが、交流を用いることも可能である。陽極酸化皮膜の量は1〜5g/m2 の範囲が好ましい。1g/m2 よりも少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付きやすくなって、同時にきずの部分にインキが付着する、いわゆるきず汚れが生じやすくなる。また、陽極酸化皮膜量が多くなると、アルミニウム板のエッジ部分へ酸化皮膜が集中しやすくなるので、アルミニウム板のエッジの部分と中心部分の酸化皮膜量の差は、1g/m2 以下であることが好ましい。
硫酸水溶液中での陽極酸化については、特開昭54−128453号、特開昭48−45303号各公報に詳しく記載されている。硫酸濃度10〜300g/L、アルミニウムイオン濃度1〜25g/Lとすることが好ましく、50〜200g/Lの硫酸水溶液中に硫酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を2〜10g/Lとすることが特に好ましい。液温は30〜60℃が好ましい。直流法を用いるとき、電流密度1〜60A/dm2 、特に5〜40A/dm2 が好ましい。連続的にアルミニウムシートを陽極酸化する場合は、アルミニウム板の焼けと呼ばれる電流集中を防ぐために最初5〜10A/dm2 の低電流密度で陽極酸化処理を行い、後半に行くに従い徐々に電流密度を上げて30〜50A/dm2 になるまで、あるいはそれ以上に電流密度を設定することが特に好ましい。電流密度は5〜15ステップで徐々に上げることが好ましい。各ステップごとには独立した電源装置を持ち、この電源装置の電流値で電流密度をコントロールする。給電方法はコンダクタローラを用いない液給電方式が好ましい。特開2001−11698号公報にはその一例が示されている。
硫酸水溶液中にはアルミニウム板に含まれる微量成分元素が少量溶解していても良いのはもちろんである。陽極酸化処理中の硫酸水溶液にはアルミニウムが溶出するため、工程の管理のためには硫酸濃度とアルミニウムイオン濃度を管理する必要がある。アルミニウムイオン濃度を低く設定すると陽極酸化を行う硫酸水溶液の更新を頻繁に行わなければならず、廃液量が増えて経済的でないばかりでなく環境面でも問題である。また、アルミニウムイオン濃度を高く設定すると電解電圧が高くなり電力コストがかさみ経済的でない。好ましい陽極酸化の硫酸濃度、アルミニウムイオン濃度、液温としては、
(その1)
硫酸濃度 100〜200g/L(更に好ましくは130〜180g/L)
アルミニウムイオン濃度 2〜10g/L(更に好ましくは3〜7g/L)
液温30〜40℃(更に好ましくは33〜38℃)
(その2)
硫酸濃度 50〜125g/L(更に好ましくは80〜120g/L)
アルミニウムイオン濃度 2〜10g/L(更に好ましくは3〜7g/L)
液温40〜70(更に好ましくは50〜60℃)
である。
陽極酸化処理でのアルミニウム板への給電方式は、コンダクタロールを用いて直接アルミニウム板に給電する直接給電方式と、電解液を通じてアルミニウム板に給電する液給電方式がある。
直接給電方式はライン速度30m/min以下の比較的低速・低電流密度の陽極酸化装置で、間接給電方式はライン速度30m/minを越える高速・高電流密度の陽極酸化装置で用いられることが多い。
間接給電方式は、連続表面処理技術(総合技術センター、昭和61年9月30日発行)の289頁にあるように、山越型またはストレート型の槽レイアウトを用いることができる。高速・高電流密度になるとコンダクタロールとアルミニウムウェブ間のスパーク発生の問題が発生するため、直接給電ロール方式は不利である。
直接給電方式、間接給電方式ともに、アルミニウムウェブ内の電圧ドロップによるエネルギーロスを少なくする目的で、陽極酸化処理工程は2つ以上に分離し、それぞれの電解装置の給電槽と酸化槽、またはコンダクタロールと酸化槽の間に直流電源を接続して用いることが特に好ましい。
直接給電方式を用いる場合は、コンダクタロールはアルミロールを用いるのが一般的である。ロールの寿命を長くするために、特公昭61−50138号公報に記載されているような、工業用純アルミニウムを用いて鋳造したのち、高温均質化処理を施してAl−Fe系晶出物をAl3 Feの単一層として耐食性を向上させたものを用いることが特に好ましい。
陽極酸化処理工程においては大電流を流すため、ブスバーに流れる電流により発生する磁界により、アルミニウム板にローレンツ力が働く。その結果ウェブが蛇行する問題が生じるため、特開昭57−51290号公報に記載されているような方法を用いることが特に好ましい。
また、アルミニウム板には大電流が流れるため、アルミニウム板自身を流れる電流による磁界により、アルミニウム板の幅方向において中央に向かってローレンツ力が働く。その結果アルミニウム板に折れが発生しやすくなるため、陽極酸化処理槽内に直径100〜200mmのパスローラーを100〜3000mmピッチで複数設け、1〜15度の角度でラップさせてローレンツ力による折れを防止する方法をとることが特に好ましい。
また、陽極酸化皮膜はアルミニウム板の幅方向で生成量が異なり、エッジに近づくほど生成量が多くなり厚さが厚くなる。その結果巻き取り装置にてアルミニウム板をうまく巻きとれない問題が生じる。これを解決するには、特公昭62−30275号公報または特公昭55−21840号公報に記載の方法で液流を撹拌することにより解決できる。その方法においても不十分な場合は、アルミニウム板の巻き取り装置を0.1〜10Hzの周期で5〜50mmの振幅でアルミニウムウェブの幅方向にオシレートさせて巻き取る方法を併用して用いることが特に好ましい。
硫酸法では通常、直流電流で処理が行われるが、交流を用いることも可能である。陽極酸化皮膜の量は1〜10g/m2 の範囲が適当である。一般的平版印刷版材料の場合、陽極酸化皮膜量は1〜5g/m2 で、1g/m2 よりも少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付きやすくなって、同時に傷の部分にインキが付着する、いわゆる傷汚れが生じやすくなる。また、陽極酸化皮膜量が多くなると、アルミニウム板のエッジ部分へ酸化皮膜が集中しやすくなるので、アルミニウム板のエッジの部分と中心部分の酸化皮膜量の差は、1g/m2 以下であることが好ましい。連続的な陽極酸化処理は液給電方式を用いるのが一般的である。アルミニウム板に電流を通電するための陽極としては、鉛、酸化イリジウム、白金、フェライトなどを用いることができるが、酸化イリジウムを主体とするものが特に好ましい。酸化イリジウムは熱処理により基材に被覆される。基材としてはチタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウムなどの所謂バルブ金属が用いられるが、チタンまたはニオブが特に好ましい。前記バルブ金属は比較的電気抵抗が大きいため、芯材に銅を用い、その周囲にバルブ金属をクラッドすることが特に好ましい。銅の芯材にバルブ金属をクラッドする場合は、あまり複雑な形状のものは作れないので、各パーツに分割して作成した電極部品を、酸化イリジウムを被覆した後にボルト・ナットなどで希望の構造となるように組み立てるのが一般的である。
本発明では、デスマット処理液の送液設備、濃度調整設備を簡素化し、設備コストを低減できる点で、陽極酸化処理で生じる酸廃液は、デスマット処理(第1、第2および第3デスマット処理)に用いるのが好ましい。
陽極酸化処理に用いられる電解装置としては、特開昭48−26638号、特開昭47−18739号、特公昭58−24517号、特開2001−11698号の各公報等に記載されているものを用いることができる。
中でも、図4に示す装置が好適に用いられる。図4は、アルミニウム板の表面を陽極酸化処理する装置の一例を示す概略図である。
図4に示される陽極酸化処理装置410では、アルミニウム板416に電解液を経由して通電するために、アルミニウム板416の進行方向の上流側に給電槽412、下流側に陽極酸化処理槽414を設置してある。アルミニウム板416は、パスローラ422および428により、図4中矢印で示すように搬送される。アルミニウム板416が最初に導入される給電槽412においては、直流電源434の正極に接続された陽極420が設置されており、アルミニウム板416は陰極となる。したがって、アルミニウム板416においてはカソード反応が起こる。
アルミニウム板416が引き続き導入される陽極酸化処理槽414においては、直流電源434の負極に接続された陰極430が設置されており、アルミニウム板416は陽極となる。したがって、アルミニウム板416においてはアノード反応が起こり、アルミニウム板416の表面に陽極酸化皮膜が形成される。
アルミニウム板416と陰極430の間隔は50〜200mmであるのが好ましい。陰極430としてはアルミニウムが用いられる。陰極430としては、アノード反応により発生する水素ガスが系から抜けやすくなるようにするために、広い面積を有する電極でなく、アルミニウム板416の進行方向に複数個に分割した電極であるのが好ましい。
給電槽412と陽極酸化処理槽414との間には、図4に示されるように、中間槽413と呼ばれる電解液が溜まらない槽を設けるのが好ましい。中間槽413を設けることにより、電流がアルミニウム板416を経由せず陽極420から陰極430にバイパスすることを抑止することができる。中間槽413にはニップローラ424を設置して液切りを行うことにより、バイパス電流を極力少なくするようにするのが好ましい。液切りにより出た電解液は、排液口442から陽極酸化処理装置410の外に排出される。
給電槽412に貯留される電解液418は、電圧ロスを少なくするために、陽極酸化処理槽414に貯留される電解液426よりも高温および/または高濃度とする。また、電解液418および426は、陽極酸化皮膜の形成効率、陽極酸化皮膜のマイクロポアの形状、陽極酸化皮膜の硬さ、電圧、電解液のコスト等から、組成、温度等が決定される。
給電槽412および陽極酸化処理槽414には、給液ノズル436および438から電解液を噴出させて給液する。電解液の分布を一定にし、陽極酸化処理槽414でのアルミニウム板416の局所的な電流集中を防ぐ目的で、給液ノズル436および438にはスリットが設けられ、噴出する液流を幅方向で一定にする構造となっている。
陽極酸化処理槽414においては、陽極430からみてアルミニウム板416を挟んだ反対側にはしゃへい板440が設けられ、電流がアルミニウム板416の陽極酸化皮膜を形成させたい面の反対側に流れるのを抑止する。アルミニウム板416としゃへい板440の間隔は5〜30mmであるのが好ましい。直流電源434は複数個用いて、正極側を共通に接続して用いるのが好ましい。これによって、陽極酸化処理槽414中の電流分布を制御することができる。
また、図5に示される陽極酸化処理装置は、上述した図4に示される陽極酸化処理装置を2槽直列に連結させたものである。
<親水化処理>
親水化処理は、平版印刷版用アルミニウム支持体の製造に一般的に用いられる公知の親水化処理を用いることができるが、アルカリ金属ケイ酸塩で処理するのが好ましく、以下に詳細に説明する。
陽極酸化処理された支持体は、水洗処理された後、現像液への陽極酸化皮膜の溶解抑制、感光層成分の残膜抑制、陽極酸化皮膜強度向上、陽極酸化皮膜の親水性向上、感光層との密着性向上などを目的に、以下のような処理を行うことができる。そのひとつとしては陽極酸化皮膜をアルカリ金属のケイ酸塩水溶液と接触させて処理するシリケート処理が挙げられる。この場合、アルカリ金属ケイ酸塩の濃度は0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜15質量%であり、25℃でのpHが10〜13.5である水溶液に5〜80℃、好ましくは10〜70℃、より好ましくは15〜50℃で0.5〜120秒間接触させる。接触させる方法は、浸せきでもスプレーによる吹き付けでも、いかなる方法によってもかまわない。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液はpHが10より低いと液はゲル化し、13.5より高いと陽極酸化皮膜が溶解されてしまう場合がある。
本発明に用いられるアルカリ金属ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどが使用される。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液のpH調整に使用される水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがある。なお、上記処理液にはアルカリ土類金属塩もしくは第IVA族(4族)金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩などの水溶性塩が挙げられる。第IVA(4族)族金属塩としては、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属もしくは第IVA族(4族)金属塩は単独または2種以上組み合わせて使用する事ができる。これらの金属塩の好ましい範囲は、0.01〜10質量%であり、更に好ましくは0.05〜5.0質量%である。
<封孔処理>
他には、各種封孔処理も挙げられ、一般的に陽極酸化皮膜の封孔処理方法として知られている、水蒸気封孔、沸騰水(熱水)封孔、金属塩封孔(クロム酸塩/重クロム酸塩封孔、酢酸ニッケル封孔など)、油脂含浸封孔、合成樹脂封孔、低温封孔(赤血塩やアルカリ土類塩などによる)などを用いる事ができるが、印刷版用支持体としての性能(感光層との密着性や親水性)、高速処理、低コスト、低公害性などの面から水蒸気封孔が比較的好ましい。その方法としては、例えば特開平4−176690号公報にも記載されている加圧または常圧の水蒸気を連続または非連続的に、相対湿度70%以上・蒸気温度95℃以上で2秒〜180秒程度陽極酸化皮膜に接触させる方法などが挙げられる。他の封孔処理法としては、支持体を80〜100℃程度の熱水またはアルカリ水溶液に浸漬または吹き付け処理する方法や、これに代えるか、あるいは引き続き、亜硝酸溶液で浸漬または吹き付け処理することができる。亜硝酸溶液に含有する亜硝酸塩などの例としては、例えばLiO2 、NaNO2 、KNO2 、Mg(NO2 2 、Ca(NO2 2 、Zn(NO3 2 、Al(NO2 3 、Zr(NO2 4 、Sn(NO2 3 、Cr(NO2 3 、Co(NO2 2 、Mn(NO2 2 、Ni(NO2 2 などが好ましく挙げられ、特にアルカリ金属硝酸塩が好ましい。亜硝酸塩などは2種以上併用することもできる。
また、アルカリ金属珪酸塩を用いた処理を行ってもよく、その場合は、米国特許3,181,461号などに開示されている方法を用いることができる。
アルカリ金属珪酸塩処理では、液のゲル化および陽極酸化皮膜の溶解を起こすことのない25℃でのpHが10〜13であるアルカリ金属珪酸酸塩水溶液を用いて、アルカリ金属珪酸塩濃度、処理温度、処理時間などの処理条件を適宜選択して封孔処理を行うことができる。好適なアルカリ金属珪酸塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムなどを挙げることができる。また、アルカリ金属珪酸塩水溶液のpHを高く調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどを配合することができる。
さらに必要に応じて、アルカリ金属珪酸塩水溶液にアルカリ土類金属塩もしくは第IVB族金属塩を配合してもよい。このアルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、これらのアルカリ土類金属の硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、硼酸塩などの水溶性の塩が挙げられる。第IVB族金属塩としては、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、蓚酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。アルカリ土類金属塩もしくは第IVB族金属塩は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。これらの金属塩の好ましい使用量範囲は0.01〜10質量%であり、さらに好ましい範囲は0.05〜5.0質量%である。
好適な封孔処理の別の一例として、フッ化ジルコン酸処理が挙げられる。フッ化ジルコン酸処理は、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウムなどのフッ化ジルコン酸塩を用いて行われる。フッ化ジルコン酸ナトリウムを含む水溶液を用いることが特に好ましい。これにより、平版印刷版原版の露光・現像時の現像性(感度)が優れたものとなる。そのときの好ましいフッ化ジルコン酸塩溶液の濃度は0.01〜2質量%であるのが好ましく、0.1〜0.3質量%であるのがより好ましい。
前記フッ化ジルコン酸塩の水溶液には、リン酸二水素ナトリウムを添加することがさらに好ましい。そのときの好ましい濃度は0.01〜3質量%であり、0.1〜0.3質量%が特に好ましい。
処理条件は、支持体の状態およびアルカリ金属の種類により異なるので一義的には決定できないが、例えば亜硝酸ナトリウムを用いた場合には、濃度は一般的には0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜2質量%、浴温度は一般的には室温から約100℃前後、より好ましくは60〜90℃、処理時間は一般的には15〜300秒、より好ましくは10〜180秒のそれぞれの範囲から選択すればよい。亜硝酸水溶液のpHは8.0〜11.0に調製されていることが好ましく、8.5〜9.5に調製されていることが特に好ましい。亜硝酸水溶液のpHを上記の範囲に調製するには、例えばアルカリ緩衝液などを用いて好適に調製することができる。該アルカリ緩衝液としては、限定はされないが例えば炭酸水素ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合水溶液、炭酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合水溶液、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合水溶液、塩化ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合水溶液、塩酸と炭酸ナトリウムの混合水溶液、四ホウ酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合水溶液などを好適に用いることができる。また、上記アルカリ緩衝液はナトリウム以外のアルカリ金属塩、例えばカリウム塩なども用いることができる。以上のような、シリケート処理または封孔処理を施した後、感光層との密着性をアップさせるために特開平5−278362号公報に記載されている酸性水溶液処理と親水性下塗りを行うことや、特開平4−282637号公報や特開平07−314937号公報に記載されている有機層を設けてもよい。
<下塗り層>
本発明においては、このようにして得られた本発明の平版印刷版用アルミニウム支持体上に、感光層を設ける前に、必要に応じて、例えば、ホウ酸亜鉛などの水溶性金属塩のような無機下塗層や、有機下塗層を設けてもよい。
有機下塗層に用いられる有機化合物としては、例えば、カルボキシメチルセルロース;デキストリン;アラビアガム;スルホン酸基を側鎖に有する重合体および共重合体;ポリアクリル酸;2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類;置換基を有していてもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸、エチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸;置換基を有していてもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸、グリセロリン酸などの有機リン酸;置換基を有していてもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸、グリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸;グリシン、β−アラニンなどのアミノ酸類;トリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシル基を有するアミンの塩酸塩;黄色染料が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
有機下塗層は、水もしくはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶媒、またはそれらの混合溶剤に、上記有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布し乾燥することにより設けられる。上記有機化合物を溶解させた溶液の濃度は、0.005〜10質量%であるのが好ましい。塗布の方法は、特に限定されず、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布などのいずれの方法も用いることができる。
有機下塗層の乾燥後の被覆量は、2〜200mg/m2 であるのが好ましく、5〜100mg/m2 であるのがより好ましい。上記範囲であると、耐刷性がより良好になる。
[3]平版印刷版原版
<記録層(感光層)>
本発明により得られる平版印刷版用アルミニウム支持体に、感光層や感熱層等の画像や情報を記録できる画像形成層(記録層)を設けて、平版印刷版原版が得られる。
記録層は、特に限定されないが、例えば、通常の可視光で露光する可視光露光型画像形成層、赤外線レーザ光などのレーザ光で露光するレーザ露光型画像形成層が挙げられる。
なかでも、<1>レーザで直接描画し、光熱変換により発生する熱によりアルカリ現像液に対する可溶性が変化するポジ型レーザ画像形成層、
<2>レーザで直接描画し、光熱変換により発生する熱によりアルカリ現像液に対する可溶性が変化する画像形成層が、後述するA層とB層を順次積層し、B層に、光を吸収して発熱する化合物を含有する画像形成層、
<3>レーザで直接描画し、光熱変換により発生する熱によりアルカリ現像液に対する可溶性が変化するネガ型レーザ画像形成層、
<4>ラジカル付加重合反応を利用したレーザで直接描画可能でレーザ光を照射すると光重合する光重合型レーザ画像形成層、
<5>ポジ型感光性画像形成層、
<6>ネガ型感光性画像形成層、
が好ましい。
以下、記録層について説明する。
(1)可視光露光型画像形成層
可視光露光型画像形成層は、感光性樹脂および必要に応じて着色剤などを含有する組成物により形成することができる。
感光性樹脂としては、光が当たると現像液に溶けるようになるボジ型感光性樹脂、光が当たると現像液に溶解しなくなるネガ型感光性樹脂が挙げられる。
ポジ型感光性樹脂としては、例えば、キノンジアジド化合物、ナフトキノンジアジド化合物などのジアジド化合物と、フェノールノボラック樹脂、クレゾール−ノボラック樹脂などのフェノール樹脂との組み合わせが挙げられる。
ネガ型感光性樹脂としては、例えば、ジアゾ樹脂(例えば、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒドなどのアルデヒド類との縮合物)、前記ジアゾ樹脂の無機酸塩、前記ジアゾ樹脂の有機酸塩などのジアゾ化合物と、(メタ)アクリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂などの結合剤との組み合わせ、(メタ)アクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂などのビニルポリマーと、(メタ)アクリル酸エステル、スチレンなどのビニル重合性化合物と、ベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体などの光重合開始剤との組み合わせが挙げられる。
着色剤としては、通常の色素のほか、露光により発色する露光発色色素、露光によりほとんどまたは完全に無色になる露光消色色素などを用いることができる。露光発色色素としては、例えば、ロイコ色素が挙げられる。露光消色色素としては、例えば、トリフェニルメタン系色素、ジフェニルメタン系色素、オキザジン系色素、キサンテン系色素、イミノナフトキノン系色素、アゾメチン系色素、アントラキノン系色素が挙げられる。
可視光露光型画像形成層は、例えば、上記感光性樹脂と上記着色剤とを溶剤に配合した感光性樹脂溶液を塗布し、その後、乾燥させることにより形成することができる。
感光性樹脂溶液に用いられる溶剤としては、上記感光性樹脂を溶解することができ、かつ、室温である程度の揮発性を有する溶剤が挙げられる。具体的には、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アミド系溶剤、炭酸エステル系溶剤が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノールが挙げられる。ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトンが挙げられる。エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸メチル、ギ酸エチルが挙げられる。エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンが挙げられる。グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブが挙げられる。アミド系溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドが挙げられる。炭酸エステル系溶剤としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、炭酸ジブチルが挙げられる。
感光性樹脂溶液の塗布方法は、特に限定されず、回転塗布法、ワイヤーバー塗布法、ディップ塗布法、エアーナイフ塗布法、ロール塗布法、ブレード塗布法などの従来公知の方法を用いることができる。
(2)レーザ露光型画像形成層
レーザ露光型画像形成層としては、例えば、レーザ光を照射した部分が残存するネガ型レーザ画像形成層、レーザ光を照射した部分が除去されるポジ型レーザ画像形成層、レーザ光を照射すると光重合する光重合型レーザ画像形成層が主なものとして挙げられる。
ネガ型レーザ画像形成層は、(A)熱または光により分解して酸を発生させる酸前駆体、(B)酸前駆体(A)が分解して発生した酸により架橋する酸架橋性化合物、(C)アルカリ可溶性樹脂、(D)赤外線吸収剤、および(E)フェノール性水酸基含有化合物を適当な溶剤に溶解させ、または懸濁させたネガ型レーザ画像形成層形成液を用いて形成することができる。
酸前駆体(A)としては、例えば、イミノフォスフェート化合物のように、紫外光、可視光または熱により分解してスルホン酸を発生させる化合物が挙げられる。ほかには、光カチオン重合開始剤、光ラジカル重合開始剤、光変色剤などとして一般に使用されている化合物も、酸前駆体(A)として用いることができる。
酸架橋性化合物(B)としては、例えば、アルコキシメチル基およびヒドロキシル基のうち少なくとも一方を有する芳香族化合物、N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物、エポキシ化合物が挙げられる。
アルカリ可溶性樹脂(C)としては、例えば、ノボラック樹脂、ポリ(ヒドロシスチレン)などの側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーが挙げられる。
赤外線吸収剤(D)としては、例えば、波長760〜1200nmの赤外線を吸収する染料および顔料が挙げられる。具体的には、例えば、黒色顔料、赤色顔料、金属粉顔料、フタロシアニン系顔料;前記波長の赤外線を吸収するアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、シアニン色素が挙げられる。
フェノール性水酸基含有化合物(E)としては、例えば、一般式
(R1 −X)n −Ar−(OH)m
(式中、R1 は、炭素数6〜32のアルキル基またはアルケニル基であり、Xは、単結合、O、S、COOまたはCONHであり、Arは、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基または複素環基であり、nおよびmは、それぞれ1〜8の自然数である。)
で表される化合物が挙げられる。そのような化合物としては、例えば、ノニルフェノールなどのアルキルフェノール類が挙げられる。
ネガ型レーザ画像形成層形成液には、上記各成分のほかに、可塑剤などを配合することもできる。
ボジ型レーザ画像形成層は、(F)アルカリ可溶性高分子、(G)アルカリ溶解阻害剤、および(H)赤外線吸収剤を適当な溶剤に溶解させ、または懸濁させたポジ型レーザ画像形成層形成液を用いて形成することができる。
アルカリ可溶性高分子(F)としては、例えば、フェノール樹脂、クレゾール樹脂、ノボラック樹脂、ピロガロール樹脂、ポリ(ヒドロキシスチレン)などのフェノール性水酸基を有するフェノール系ポリマー;少なくとも一部のモノマー単位がスルホンアミド基を有するポリマーであるスルホンアミド基含有ポリマー;N−(p−トルエンスルホニル)(メタ)アクリルアミド基などの活性イミド基を有するモノマーの単独重合または共重合により得られる活性イミド基含有ポリマーが挙げられる。
アルカリ溶解阻害剤(G)としては、例えば、加熱などによりアルカリ可溶性高分子(F)と反応してアルカリ可溶性高分子(F)のアルカリ溶解性を低下させる化合物が挙げられる。具体的には、例えば、スルホン化合物、アンモニウム塩、スルホニウム塩、アミド化合物が挙げられる。アルカリ可溶性高分子(F)とアルカリ溶解阻害剤(G)の組み合わせとしては、アルカリ可溶性高分子(F)としてノボラック樹脂、アルカリ溶解阻害剤(G)としてスルホン化合物の一種であるシアニン色素の組み合わせが好適に挙げられる。
赤外線吸収剤(H)としては、例えば、スクワリリウム色素、ピリリウム色素、カーボンブラック、不溶性アゾ染料、アントラキノン系染料などの波長750〜1200nmの赤外域に吸収領域があり、光/熱変換能を有する色素、染料および顔料が挙げられる。
光重合型レーザ画像形成層は、(I)分子末端にエチレン性不飽和結合を有するビニル重合性化合物を含有する光重合型レーザ画像形成層形成液を用いて形成することができる。光重合型レーザ画像形成層形成液には、必要に応じて、(J)光重合開始剤、(K)増感剤などを配合することができる。
ビニル重合性化合物(I)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステルであるエチレン性不飽和カルボン酸多価エステル;前記エチレン性不飽和カルボン酸と多価アミンとからなるメチレンビス(メタ)アクリルアミド;キシリレン(メタ)アクリルアミドなどのエチレン性不飽和カルボン酸多価アミドが挙げられる。ビニル重合性化合物(I)としては、ほかに、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどのエチレン性不飽和カルボン酸モノエステルが挙げられる。
光重合開始剤(J)としては、ビニル系モノマーの光重合に通常使用される光重合開始剤を用いることができる。
増感剤(K)としては、例えば、チタノセン化合物、トリアジン化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、シアニン色素、メロシアニン色素、キサンテン色素、クマリン色素が挙げられる。
上述したネガ型レーザ画像形成層形成液、ポジ型レーザ画像形成層形成液および光重合型レーザ画像形成層形成液に使用される溶剤、ならびに、ネガ型レーザ画像形成層形成液、ポジ型レーザ画像形成層形成液および光重合型レーザ画像形成層形成液の塗布方法については、上記感光性樹脂溶液について挙げた溶剤および塗布方法を用いることができる。
なお、光重合型レーザ画像形成層を形成させる場合においては、シラン化合物を水、アルコールまたはカルボン酸で部分分解して得られる部分分解型シラン化合物などの反応性官能基を有するシリコーン化合物を用いて、平版印刷版用アルミニウム支持体の粗面化処理面をあらかじめ処理しておくと、支持体と光重合型レーザ画像形成層との接着性が向上するため好ましい。
(3)レーザで直接描画し、光熱変換により発生する熱によりアルカリ現像液に対する可溶性が変化する画像形成層が、下記A層とB層を順次積層し、B層に、光を吸収して発熱する化合物を含有する層を、以下に簡単に説明する。
A層:モノマー(a−1)〜(a−3)の少なくとも1つを共重合成分として10モル%以上含む共重合体を50質量%以上含有する層
B層:フェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂を50質量%以上含有する層
A層は、以下のモノマー(a−1)1分子中に、窒素原子上に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基を有するモノマー、(a−2)1分子中に、下記式で表される活性イミノ基を有するモノマー、(a−3)フェノール性水酸基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、およびヒドロキシスチレンから選択されるモノマー、のうち少なくとも1つを共重合成分として10モル%以上含む共重合体を50質量%以上含有する層である。
Figure 2005238737
B層は、フェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂を50質量%以上含有する層である。
上記画像形成層は、A層とB層とが順次積層され、かつ、少なくとも該B層のフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂を50質量%以上含有するB層に、光を吸収して発熱する化合物を含有する画像形成層である。詳細は、特開平11−218914号公報に記載されている。
<バックコート>
現像時のアルミ溶解をなくし、記録層とアルミニウム板のこすれによるキズをなくす目的で、特開平6−32115号公報に記載の有機高分子化合物ならびに界面活性剤を含む、厚さ0.01〜8μmのバックコート層を設けることが知られている。
また、この厚さを積極的にコントロールすることで印刷版用原版の厚さを補正することが可能となる。
このバックコート層の主成分としては、ガラス転移点20℃以上の、飽和共重合ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂および塩化ビニリデン共重合樹脂の群から選ばれる少なくとも一種の樹脂が用いられる。飽和共重合ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸ユニットとジオールユニットからなる。本発明に用いられるポリエステルのジカルボン酸ユニットとしてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラブロムフタル酸、テトラクロルフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、シュウ酸、スベリン酸、セバチン酸、マロン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。バックコート層には更に、着色のための染料や顔料、アルミニウム支持体との密着性向上のためのシランカップリング剤、ジアゾニウム塩からなるジアゾ樹脂、有機ホスホン酸、有機リン酸およびカチオン性ポリマーなど、更には滑り剤として通常用いられるワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、ジメチルシロキサンよりなるシリコーン化合物、変性ジメチルシロキサン、ポリエチレン粉末などが適宜加えられる。
バックコート層をアルミニウム支持体の裏面に被覆するには種々の方法が適用できる。例えば適当な溶媒の溶液にして、または乳化分散液にして塗布、乾燥する方法、例えば予めフィルム状に成形したものを接着剤や熱でアルミニウム支持体に貼り合わせる方法および溶融押し出し機で溶融皮膜を形成し、支持体に貼り合わせる方法などが挙げられるが、上記の塗布量を確保する上で最も好ましいのは溶液にして塗布、乾燥する方法である。ここで使用される溶媒としては、特開昭62−251739号公報に記載されているような有機溶剤が単独あるいは混合して用いられる。
<マット層>
上記のようにして設けられた記録層の表面には、必要に応じて、真空焼き枠を用いた密着露光の際の真空引きの時間を短縮し、かつ、焼きボケを防ぐため、マット層が設けられる。具体的には、特開昭50−125805号、特公昭57−6582号、同61−28986号の各公報に記載されているようなマット層を設ける方法、特公昭62−62337号公報に記載されているような固体粉末を熱融着させる方法などが挙げられる。
連続的に走行する長尺アルミニウム板にマット層を塗布する場合、事前に温度調整装置において所定の温度に調整し、次に湿潤装置において表面を湿潤した後、静電塗装装置により微細な液滴をアルミニウム板の表面の塗布する。次いで、再度設けられた湿潤装置にて表面を再湿潤した後、乾燥装置により乾燥する。本発明に用いられるマット層の平均径は100μm以下が好ましく、これよりも平均径が大きくなるとPS版を重ねて保存する場合、記録層とバックコート層との接触面積が増大し、滑り性が低下、記録層およびバックコート層双方の表面に擦れ傷を生じ易い。マット層の平均高さは10μm以下が好ましく、より好ましくは2〜8μmである。この範囲より平均高さが高いと細線が付き難く、ハイライトドットも点減りし、調子再現上好ましくない。平均高さが2μm未満では真空密着性が不十分で焼きボケを生じる。マット層の塗布量は5〜200mg/m2 が好ましく、更に好ましくは20〜150mg/m2 である。塗布量がこの範囲よりも大きいと記録層とバックコート層との接触面積が増大し擦れ傷の原因となり、これよりも小さいと真空密着性が不十分となる。
<塗布>
また記録層およびバックコート層を塗布する方式条件としては、公知の記録層を塗布する方式、条件の多くを利用できる。即ち、コーティングロッドを用いる方法、エクストルージョン型コーターを用いる方法、スライドビードコーターを用いる方法が利用できる。また塗布する条件も公知特許に記載した条件を利用できる。
感光性組成物の塗布方法としては特公昭58−4589号公報、特開昭59−123568号公報などに記載されているコーティングロッドを用いる方法や特開平4−244265号公報などに記載されているエクストルージョン型コーターを用いる方法、あるいは特公平1−57629号公報、特願平8−288656号公報などに記載されているスライドビードコーターを用いる方法などを用いることができる。
<乾燥>
粗面化処理後または記録層、マット層およびバックコート層の塗布後のアルミニウム板の乾燥方式条件について記載する。乾燥方式としては、特開平6−63487号公報に記載がある乾燥装置内にパスロールを配置し、ロールにウェブをラップさせて搬送するアーチ型ドライヤー、ウェブの上下面からノズルによりエアーを供給しウェブを浮上させながら乾燥する方式、あるいは熱風を用いず、高温に種々の媒体を用いて加熱し、その副射熱により乾燥する方式、あるいはロールを種々媒体を用いて加熱しそのロールとウェブの接触による伝導伝熱により乾燥する方式などがある。
このようにして得られた平版印刷版原版を、必要に応じて、適当な大きさに裁断して、露光し現像して製版することにより、平版印刷版が得られる。
可視光露光型製版層(感光性製版層)を設けた平版印刷版原版の場合には、印刷画像が形成された透明フィルムを重ねて通常の可視光を照射することにより露光し、その後、現像を行うことにより製版することができる。レーザ露光型製版層を設けた平版印刷版原版の場合には、各種レーザ光を照射して印刷画像を直接書き込むことにより露光し、その後、現像することにより製版することができる。
<露光>
露光方法は、特開平9−68810号公報、特開平11−218914号公報、特開2002−182400号公報および特開2002−362046号公報に記載されたものをはじめ、公知の方法を使用できる。
<現像液>
本発明で用いる現像液、補充液などは、特開平9−68810号公報、特開平11−218914号公報、特開2002−182400号公報および特開2002−362046号公報に記載されたものをはじめ、公知のものを使用できる。またケイ酸を含むアルカリ性水溶液、および、ケイ酸を含まず、糖類を含むアルカリ性水溶液を用いることができる。また、現像方法および現像後の処理も、特開平9−68810号公報、特開平11−218914号公報、特開2002−182400号公報および特開2002−362046号公報に記載されたものをはじめ、公知のものを使用できる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
・ 平版印刷版用アルミニウム支持体の製造
(実施例1〜16および比較例1〜5)
第2表に示すように、第1表に示す組成の各アルミニウム合金板に、各表面処理を施し、各平版印刷版用アルミニウム支持体を得た。第2表に示す表面処理は、機械的粗面化処理、第1アルカリエッチング処理、第1デスマット処理、第1電気化学的粗面化処理(硝酸水溶液)、第2アルカリエッチング処理、第2デスマット処理、第2電気化学的粗面化処理(塩酸水溶液)、第3アルカリエッチング処理、第3デスマット処理、陽極酸化処理、封孔処理および親水化処理を、この順に組み合わせて行ったものである。
各処理の詳細は、以下のとおりである。
なお、各工程の粗面化処理の後には自由落下カーテン状の液膜により水洗処理を行った。粗面化処理および水洗処理の後にはニップローラによる液切りを行った。また、同じ種類の液を使った処理が連続して行われるケースでは、その工程の間での水洗は省略した。
Figure 2005238737
(1)機械的粗面化処理
研磨材(ケイ砂を用い、その中に含まれる粒子の平均粒径が20μmとなるように分級した研磨材)と水との懸濁液(比重1.12)を研磨スラリー液として、スプレー管にてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラー状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。
ナイロンブラシの材質は6・10ナイロンを使用し、毛長50mmの3号ブラシを用いた。ナイロンブラシはΦ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(Φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して管理し、粗面化後のアルミニウム板の平均表面粗さが0.45〜0.55μmになるように押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。
(2)第1アルカリエッチング処理
アルミニウム板を、NaOH27質量%、アルミニウムイオン6.5質量%含有する水溶液、70℃をスプレー管より吹き付けてアルミニウム板のエッチング処理を行った。後の工程で電気化学的に粗面化処理する面のアルミニウム板の溶解量は第2表に示したとおりであった。
(3)第1デスマット処理
デスマット処理に用いる酸性水溶液は以下の処理液のいずれかであった。
処理液A:次工程の電気化学的な粗面化工程に用いた硝酸の廃液を用いた。その液温は35℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて2秒間デスマット処理を行った。
処理液B:後述する陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸100g/L水溶液中にアルミニウムイオン5g/L溶解)を用い、液温35℃で2秒間デスマット処理を行った。
(4)第1電気化学的粗面化処理(硝酸水溶液)
液温50℃、硝酸濃度10g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を5g/Lに調整した電解液を用いた。
台形波交流電流を発生する電源を用いて電気化学的な粗面化処理を行った。その交流電流の周波数は60Hz、電流のゼロからピークに達するまでの時間TPは0.8msecであった。交流のduty(ta/T)は0.5であった。
電流密度は交流のピーク時でアルミニウム板のアノード反応時60A/dm2 であり、アルミニウム板がアノード反応時の電気量の総和とカソード反応時の電気量の総和の比は0.95であった。アルミニウム板に加わる電気量は、アルミニウム板のアノード反応時の電気量の総和で第2表に示した。
電解処理槽は図3に示すラジアル型のものを2槽用いた。
(5)第2アルカリエッチング処理
アルミニウム板を、NaOH27質量%、アルミニウムイオン6.5質量%含有する水溶液、45℃をスプレー管より吹き付けてアルミニウム板のエッチング処理を行った。後の工程で電気化学的に粗面化処理する面のアルミニウム板の溶解量は第2表に示したとおりであった。
(6)第2デスマット処理
第2デスマット処理に用いる酸性水溶液は、全ての実施例、比較例で以下の処理液A〜Cを用いたデスマット処理を行ったが、電解性や印刷性能に大きな影響はなかった。本発明は第2デスマット処理の液種を問わない。
処理液A:次工程の電気化学的な粗面化工程に用いた塩酸の廃液を用いた。その液温は30℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて2秒間デスマット処理を行った。
処理液B:前記、電気化学的な粗面化工程に用いた硝酸の廃液を用いた。その液温は30℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて2秒間デスマット処理を行った。
処理液C:後述する陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸100g/L水溶液中にアルミニウムイオン5g/L溶解)を用い、液温30℃で2秒間デスマット処理を行った。
(7)第2電気化学的粗面化処理(塩酸水溶液)
液温35℃、塩酸濃度10g/L、アルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。
台形波交流電流を発生する電源を用いて電気化学的な粗面化処理を行った。その交流電流の周波数は50Hz、電流のゼロからピークに達するまでの時間TPは0.8msecであった。交流のduty(ta/T)は0.5であった。
電流密度は交流のピーク時でアルミニウム板のアノード反応時50A/dm2 であり、アルミニウム板がアノード反応時の電気量の総和とカソード反応時の電気量総和の比は0.95であった。アルミニウム板に加わる電気量は、アルミニウム板のアノード反応時の電気量の総和で第2表に示した。
電解処理槽は図3に示すラジアル型のものを1槽用いた。補助陽極槽50の入口(液面)から主電解槽40の入口(液面)までのアルミニウム板の通過する時間は2秒であった。
(8)第3アルカリエッチング処理
アルミニウム板を、NaOH27質量%、アルミニウムイオン6.5質量%含有する水溶液、45℃をスプレー管より吹き付けてアルミニウム板のエッチング処理を行った。後の工程で陽極酸化処理するアルミニウム板の溶解量は、全ての実施例、比較例について、0.2g/m2とした。
(9)第3デスマット処理
第3デスマット処理に用いる酸性水溶液は、全ての実施例、比較例で以下の処理液A〜Cを用いたデスマット処理を行ったが、電解性や印刷性能に大きな影響はなかった。本発明は第3デスマット処理の液種を問わない。
処理液A:次工程の陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン5g/L溶解)を用い、液温35℃で4秒間デスマット処理を行った。
処理液B:次工程の陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン5g/L溶解)を用い、液温70℃で4秒間デスマット処理を行った。
処理液C:次工程の陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸100g/L水溶液中にアルミニウムイオン5g/L溶解)を用い、液温35℃で4秒間デスマット処理を行った。
(10)陽極酸化処理
次に、この板を以下の条件で陽極酸化処理した。
硫酸170g/Lに硫酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を5g/Lとした電解液を用いて、液温33℃、電流密度10A/dm2 で2.4g/m2 の直流陽極酸化皮膜を設けた。
(11)封孔処理
100℃1気圧において飽和した蒸気チャンバーの中で10秒間蒸気封孔処理した。
(12)親水化処理
ケイ酸ナトリウム1質量%水溶液で25℃、7秒間浸漬処理し、その後、乾燥した。
なお、(3)(6)(9)の処理は、その方法によって支持体表面の均一性や印刷性能を左右するものではないため、実施例表2では記載を省略した。
2.平版印刷版用アルミニウム支持体の表面形状の評価(均一性)
各実施例および比較例で得られた各平版印刷版用アルミニウム支持体の表面形状を走査型電子顕微鏡を用いて倍率2000倍で観察し、表面に生成したハニカムピットの均一性を評価した。結果を第2表に示す。なお、評価は、表面の凹凸の均一性を比較例1を8点、比較例3を6点とし、他の水準についてはこれを基準に採点した。均一性に優れているものが点数が高い。
3.平版印刷版原版の作成
上記で得られた各平版印刷版用支持体に、以下のようにしてサーマルポジタイプの画像記録層を設けて平版印刷版原版を得た。なお、画像記録層を設ける前には、後述するように下塗層を設けた。
平版印刷版用支持体上に、下記組成の下塗液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、下塗層の塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/m2 であった。
<下塗液組成>
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
Figure 2005238737
更に、下記組成の感熱層塗布液を調製し、下塗層を設けた平版印刷版用支持体に、この感熱層塗布液を乾燥後の塗布量(感熱層塗布量)が1.8g/m2 になるよう塗布し、乾燥させて感熱層(サーマルポジタイプの画像記録層)を形成させ、平版印刷版原版を得た。
<感熱層塗布液組成>
・ノボラック樹脂(m−クレゾール/p−クレゾール=60/40、重量平均分子量7,000、未反応クレゾール0.5質量%含有) 0.90g
・メタクリル酸エチル/メタクリル酸イソブチル/メタクリル酸共重合体(モル比35/35/30) 0.10g
・下記構造式で表されるシアニン染料A 0.1g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.05g
・p−トルエンスルホン酸 0.002g
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン酸にしたもの 0.02g
・フッ素系界面活性剤(ディフェンサF−780F、大日本インキ化学工業社製、固形分30質量%) 0.0045g(固形分換算)
・フッ素系界面活性剤(ディフェンサF−781F、大日本インキ化学工業社製、固形分100質量%) 0.035g
・メチルエチルケトン 12g
Figure 2005238737
4.平版印刷版原版の評価
平版印刷版の耐刷性および耐汚れ性を下記の方法で評価した。
(1)耐刷性
得られた平版印刷版原版をCreo社製TrendSetterを用いてドラム回転速度150rpm、ビーム強度10Wで画像状に描き込みを行った。
その後、下記組成のアルカリ現像液を仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー940Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間20秒で現像し、平版印刷版を得た。なお、いずれの平版印刷版原版も感度は良好であった。
<アルカリ現像液組成>
・D−ソルビット 2.5質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル(重量平均分子量1,000)
0.5 質量%
・水 96.15質量%
得られた平版印刷版を、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。
結果を第2表に示す。第2表中の点数の意味は以下のとおりである。
9点:30,000枚以上
8点:20,000枚以上30,000枚未満
7点:10,000枚以上20,000枚未満
6点:5,000枚以上10,000枚未満
(2)耐汚れ性
耐刷性の評価の場合と同様にして得られた平版印刷版を用い、三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後におけるブランケットの汚れを目視で評価した。印刷評価の結果を第2表に示す。第2表中の点数は、実施例15を9点、比較例3を4点とし、それぞれを基準として採点した。
(3)印刷性能の合計
耐刷性と耐汚れ性との数字の合計を第2表で印刷性能合計として示す。
第2表から明らかなように、本発明の平版印刷版用支持体の製造方法(実施例1〜16)により得られた平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版は、いずれも耐刷性および耐汚れ性のバランスがよい。これに対して、Mnの含有量が少なすぎる場合(比較例1〜3)、また、Znが多い場合(比較例4、5)、Alの純度が低い場合(比較例5)の性能は十分ではない。
各性能については6点以上を合格点とし、また、耐刷性と耐汚れ性はバランスが優れているものが望ましいため、合計点が高いものほど優れた印刷版であると考えることができる。Mnの添加が効果的であることは明らかである。
Figure 2005238737
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法における水洗処理に用いられる自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置の模式的な断面図である。 本発明の平版印刷版用支持体の製造方法における電気化学的粗面化処理に用いられる台形波形図の一例を示すグラフである。 本発明の平版印刷版用支持体の製造方法における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。 本発明の平版印刷版用支持体の製造方法における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。 本発明の平版印刷版用支持体の製造方法における陽極酸化処理に用いられる他の陽極酸化処理装置の概略図である。
符号の説明
1 アルミニウム板
11 アルミニウム板
12 ラジアルドラムローラ
13a、13b 主極
14 電解処理液
15 電解液供給口
16 スリット
17 電解液通路
18 補助陽極
19a、19b サイリスタ
20 交流電源
40 主電解槽
50 補助陽極槽
100 自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置
102 水
104 貯水タンク
106 給水筒
108 整流部
410 陽極酸化処理装置
412 給電槽
413 中間槽
414 陽極酸化処理槽
416 アルミニウム板
418、426 電解液
420 陽極
422、428 パスローラ
424 ニップローラ
430 陰極
434 直流電源
436、438 給液ノズル
440 しゃへい板
442 排液口

Claims (2)

  1. Cuを0.01〜0.25質量%,Mnを0.01〜2.00質量%、Znを0.1質量%未満含有し、96質量%以上の純度をもつアルミニウム板を、少なくとも、順に、
    1)ブラシと研磨材とを用いて機械的に粗面化処理し、
    2)硝酸水溶液中で、交流電源を用いて電気化学的に粗面化処理し、
    3)塩酸水溶液中で、交流電源を用いて電気化学的に粗面化処理し、
    4)陽極酸化処理する、
    ことを特徴とする平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法により得られたアルミニウム支持体上に記録層を有する平版印刷版原版。
JP2004053911A 2004-02-27 2004-02-27 平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法 Withdrawn JP2005238737A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004053911A JP2005238737A (ja) 2004-02-27 2004-02-27 平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004053911A JP2005238737A (ja) 2004-02-27 2004-02-27 平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005238737A true JP2005238737A (ja) 2005-09-08

Family

ID=35020982

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004053911A Withdrawn JP2005238737A (ja) 2004-02-27 2004-02-27 平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005238737A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018535317A (ja) * 2015-10-15 2018-11-29 ノベリス・インコーポレイテッドNovelis Inc. 高形成複層アルミニウム合金パッケージ
US11788178B2 (en) 2018-07-23 2023-10-17 Novelis Inc. Methods of making highly-formable aluminum alloys and aluminum alloy products thereof

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018535317A (ja) * 2015-10-15 2018-11-29 ノベリス・インコーポレイテッドNovelis Inc. 高形成複層アルミニウム合金パッケージ
US10689041B2 (en) 2015-10-15 2020-06-23 Novelis Inc. High-forming multi-layer aluminum alloy package
US11788178B2 (en) 2018-07-23 2023-10-17 Novelis Inc. Methods of making highly-formable aluminum alloys and aluminum alloy products thereof

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2008111142A (ja) 平版印刷版用アルミニウム合金板および平版印刷版用支持体
JP4410714B2 (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP2005254638A (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP2006272745A (ja) 平版印刷版用支持体および平版印刷版原版
JP4250490B2 (ja) 平版印刷版用アルミニウム合金素板および平版印刷版用支持体
JP2008201038A (ja) 平版印刷版用支持体の粗面化方法および平版印刷版用支持体の製造方法
JP2005238737A (ja) 平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法
JP2007062216A (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP2006076104A (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP2006082387A (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP2005035034A (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP4648057B2 (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP2007055231A (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP2005212283A (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP2006240116A (ja) 平版印刷版用支持体およびその製造方法
JP2004074538A (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP4510570B2 (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP2005088224A (ja) 平版印刷版用アルミニウム板および平版印刷版用支持体
JP2004243633A (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP2005001356A (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP2004114324A (ja) 平版印刷版用支持体および平版印刷版原版
JP2005047070A (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP4616128B2 (ja) 平版印刷版用支持体
JP2005047084A (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP2008114404A (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20070501