本発明者らは鋭意検討の結果、適度な粒度分布を有する無機微粉体を添加したトナーを用いることによって、画像流れを防止し、クリーニングブレードのすり抜けによる画像欠陥を生じさせず、且つどのような環境下においても良好な現像性が得られることを見出した。
本発明のトナーに添加される無機微粉体は、下記式(1)
〔M〕a〔Si〕bOc (1)
〔式中、MはSr,Mg,Zn,Ba,Mn及びCeからなるグループから選択される金属元素を示し、aは1〜9(好ましくは1〜3)の整数を示し、bは1〜9(好ましくは、1〜2)の整数を示し、cは3〜9(好ましくは、3〜7)の整数を示す。〕
で示される無機微粉体(A)、
または下記式(2)
〔M2〕d〔Ti〕eOf (2)
〔式中、M2はSr,Mg,Zn,Ba,Mn及びCeからなるグループから選択される金属元素を示し、dは1〜9の整数を示し、eは1〜9の整数を示し、fは3〜9の整数を示す。〕
で示される無機微粉体(B)から選ばれる無機微粉体であり、レーザー回折粒度測定機で測定された体積平均径が0.300μm以上1.500μm未満であり、体積最頻径が0.100μm以上1.000μm未満であり、体積粒度分布においてただ一つのピークを有し、該ピークよりも大きい粒度領域にショルダーを有していることにより、画像流れを防止し、且つ、トナーのクリーニングブレードのすり抜けによる画像欠陥を効果的に抑制することができる。先述したように、トナーに無機微粉体を添加することは従来より行われていた。しかしそれらの無機微粉体は適切な粒度分布を有していなかった。すなわち、粒度分布が微細なものに偏っていたり、分布が広すぎるために無機微粉体がその効能を適切には発揮できないといった状況であった。しかし本発明においては、まず、体積平均径が0.300μm以上1.500μm未満、好ましくは0.400μm以上1.300μm未満、より好ましくは0.500μm以上1.200μm未満であることにより、適切な粒度を有する無機微粉体が多く存在することによって、効果的に画像流れを防止することができる。体積平均径が0.300μm未満だと、微細な粒度を有する粒子比率が増え、クリーニングブレードを無機微粉体がすり抜けて帯電ローラー等の帯電部材を汚染し、画像濃度の低下を招く。体積平均径が1.500μmを超えると、画像流れに対して十分な効果が得られない。
また、前記粒度分布の効果を発揮するためには、体積最頻径が0.100μm以上1.000μm未満、好ましくは0.200μm以上0.900μm未満、より好ましくは0.250μm以上0.800μm未満であることが必要である。体積平均径と同時に体積最頻径が適切な範囲内にあることで、画像流れに対する効果がより優れたものとなると同時に、体積粒度分布がより好ましい分布になることでトナーに無機微粉体を添加したときのトナーの帯電分布も適正になり、現像性が向上する。体積最頻径が0.100μm未満だと、クリーニングブレードを無機微粉体がすり抜けて帯電ローラー等の帯電部材を汚染し、画像濃度の低下を招くとともに、微細な粒径側に無機微粉体の分布が偏ることでトナーに添加した時にトナーが過剰に帯電し、カブリが悪化する。体積最頻径が1.000μmを超えると、画像流れに対して十分な効果が得られない。
また、体積粒度分布においては各粒度の無機微粉体がバランスよく含まれていることが必要である。そこで本発明者らは無機微粉体の体積粒度分布において、ただ一つのピークを有し、該ピークよりも大きい粒度領域にショルダーを有していることが無機微粉体の効果をより向上させることができる形態であることを見出した。ピークが複数存在すると粒度分布がブロードになってしまう。その結果、たとえ体積平均径や体積最頻径が本発明の特徴とする範囲内にあったとしても、適切な粒径の無機微粉体に加えて、大粒径から小粒径まで粒径の異なる無機微粉体が混在することになる。それら粒径の異なる無機微粉体はトナーの帯電性にも影響を与え、個々のトナーの帯電量を不均一にし、結果的にトナーの帯電量分布も不均一な分布となり、現像スリーブ上のトナーの不均一な帯電分布に起因するスリーブネガゴーストが発生する。しかし本発明においては無機微粉体の体積粒度分布においてただ一つのピークを有することにより、ネガゴーストを発生することがない。
更に、該ピークよりも大きい粒度領域にショルダーを有していることによって、高温高湿環境下での長期の使用においても良好な現像性が得られることをも見出した。先述したとおり、本発明の無機微粉体はシャープな粒度分布を有しているため、トナーに添加した時に、トナー表面に付着している無機微粉体は均一な層を形成する。このような形態を無機微粉体がとる場合、トナー表面層が均一であるが故にトナー同士が接触する機会が多くなる。これは帯電性の向上をトナーにもたらし、トナーの現像性を良くする効果があるのだが、接触機会が増えることにより逆にトナーの劣化が進み、長期の使用において画像濃度の低下、カブリの増加などの現象を示す。特に高温高湿環境下のようなトナーの劣化に対して厳しい条件下でこのような現象は起こりやすい。しかし本発明においては、体積粒度分布のショルダー部分の粒子がトナー間に適度な空間をもたらしてスペーサー粒子として働き、トナー同士の過度の接触を抑え、トナーが劣化するのを防止する効果をもたらすのである。ここで、ショルダーではなく新たなピークを示すほどの割合で大粒径側の粒子が含まれている場合には、先述したようにトナーの帯電量が不均一になりスリーブゴーストが発生する。
また、本発明においては無機微粉体の体積粒度分布において75%粒径D75が0.500μm以上1.500μm未満、好ましくは0.600μm以上1.300μm未満、より好ましくは0.700μm以上1.200μm未満であることが好ましい。75%粒径が前記の値をとることによって無機微粉体の体積分布がより好ましい分布となり、トナーに良好な現像性をもたらすことができる。D75が0.500μm未満だと、粒径の小さい粒子の存在比率が大きくなりすぎることにより、低温低湿環境下でトナーの帯電量が高くなりすぎて現像性の低下をもたらす場合がある。D75が1.500μm以上だと、粒径の大きい粒子の存在比率が大きくなり、これら大きい粒子はトナーに添加されたときに過度にトナーの帯電量を低下させる場合があり、その結果いくつかのトナー粒子が不正に帯電してブロッチを発生する場合がある。
本発明において、無機微粉体の体積粒度分布は以下の方法で測定する。
・測定装置:LS230(ベックマン・コールター社製)
・小容量モジュール
・溶媒:イソプロピルアルコール
・試料の調整方法:100mlビーカーにイソプロピルアルコールを70ml入れ、そこにミクロスパチュラ2杯分(約60mg)のサンプルを投入し、超音波分散器(ULTRASONIC CLEANER VS−150:IUCHI社製)で2分間分散する。
・光学モデル
リキッドの屈折率:1.377(イソプロピルアルコール)
試料の実数部:1.5
試料の虚数部:0
超音波分散が終わった試料を濃度が8〜12%、PIDS濃度が45〜55%となるように投入し、90秒間の測定を行う。
本発明に用いられる無機微粉体(A)としては、M1として、マグネシウム、亜鉛、バリウム、マンガン、ストロンチウム、セリウムが挙げられる。特に本発明の効果をより発揮できることから珪酸ストロンチウム〔Sr〕a〔Si〕bOcが好ましい。より具体的には、SrSiO3,Sr3SiO5,Sr2SiO4,SrSiO5及びSr3Si2O7が挙げられ、中でもSrSiO3が好ましい。
無機微粉体(B)としては、M2として、マグネシウム、亜鉛、バリウム、マンガン、ストロンチウム、セリウムが挙げられる。特に本発明の効果をより発揮できることから無機微粉体(B)は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)が好ましい。
本発明で使用する無機微粉体は、例えば焼結法によって生成し、機械粉砕した後、湿式あるいは乾式で分級し、必要に応じて再度粉砕、分級を繰り返し、所望の粒度、及び粒度分布としたものを用いる。
本発明において無機微粉体は、着色粒子100質量部に対して0.01〜5質量部、好ましくは0.05〜4質量部、より好ましくは0.1〜3質量部添加されるのが好ましい。
本発明においては、トナーのフロー式粒子像測定装置で計測される円相当径3μm以上400μm以下のトナーにおける平均円形度が0.930以上0.970未満、好ましくは0.935以上0.965未満、より好ましくは0.940以上0.960未満であることが好ましい。円形度の高いトナーは、流動性に優れ、トナーの転写性を向上させることができる。しかし、従来のように、トナーに研磨効果を付与するために体積粒度分布が不均一、あるいはブロードな無機微粉体を添加すると、トナー表面において無機微粉体が凸凹の層を形成してしまい、円形度が高いことによるトナーの流動性向上効果を低減させてしまうことがある。しかし、本発明の無機微粉体は、粒度分布がシャープであるので、トナー表面層において均一で滑らかな層を形成し、トナーの流動性をより向上させることができると同時に十分な研磨効果をトナーに付与することができる。このときに、体積粒度分布に見られるショルダー部分の無機微粉体粒子が、感光体から紙などの被転写シートにトナーを転写する際にスペーサー粒子として働き、感光体とトナーとの接触面積を低減させる効果をも有するので、より良好な転写性をトナーにもたらすことができるのである。トナーの平均円形度が0.930未満だと、トナー自体の流動性が不十分であるばかりでなく、本発明の特徴とする無機微粉体を用いた場合においてもトナーの円形度が低すぎるために無機微粉体の効果が十分に発揮されず、良好な転写性が得らず中抜けが発生する場合がある。トナーの平均円形度が0.970以上だと、流動性が高くなりすぎることにより転写時にトナーの飛び散りが生じる場合がある。
本発明における平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明ではシスメックス社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2100を用いて23℃,60%RHの環境下で測定を行い、円相当径0.60μm〜400μmの範囲内の粒子を測定し、そこで測定された粒子の円形度を下式(1)により求め、更に円相当径3μm以上400μm以下の粒子において、円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義する。
円形度a=L0/L (1)
〔式中、L0は粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長を示し、Lは512×512の画像処理解像度(0.3μm×0.3μmの画素)で画像処理した時の粒子投影像の周囲長を示す。〕
具体的な測定方法としては、予め容器中の不純物を除去した水200〜300ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波発振器で2分間分散し、分散液濃度を0.2〜1.0万個/μlとして粒子の円形度分布を測定する。超音波発振器としては、例えば以下の装置を使用し、以下の分散条件を用いる。
UH−150(株式会社エス・エム・テー社製)
OUTPUT レベル:5
コンスタントモード
本発明において、トナーを所望の円形度とするためのトナーの製造方法は特には限定されないが、例えば、トナー粉砕方法として機械式粉砕機を用いて粉砕する方法、ジェット気流式粉砕機または機械式粉砕機で粉砕されたトナー粉砕物を図1に示すような表面改質装置で処理する方法等が挙げられる。いずれの方法においても適当な工程において適宜分級を行い、所望の粒度及び円形度を有するトナーを得る。中でも好ましいのは機械式粉砕機で粉砕した後に分級を行い、更に表面改質処理を行う方法である。
次に、表面改質工程で使用される表面改質装置及び表面改質装置を用いたトナーの製造方法について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、表面改質装置の一例を示し、図2は図1において高速回転する回転子の上面図の一例を示す。
図1に示す表面改質装置では、ケーシング、冷却水或いは不凍液を通水できるジャケット(図示しない)、表面改質手段である、ケーシング内にあって中心回転軸に取り付けられた、上面に角型のディスク或いは円筒型のピン40を複数個有し、高速で回転する円盤上の回転体である分散ローター36、分散ローター36の外周に一定間隔を保持して配置されている表面に多数の溝が設けられているライナー34(尚、ライナー表面上の溝はなくても構わない)、更に、表面改質された原料を所定粒径に分級するための手段である分級ローター31、更に、冷風を導入するための冷風導入口35、被処理原料を導入するための原料供給口33、更に、表面改質時間を自在に調整可能となるように、開閉可能なように設置された排出弁38、処理後の粉体を排出するための粉体排出口37、更に、分級手段である分級ローター31と表面改質手段である分散ローター36−ライナー34との間の空間を、分級手段へ導入される前の第一の空間41と、分級手段により微粉を分級除去された粒子を表面改質手段へ導入するための第二の空間42に仕切る案内手段である円筒形のガイドリング39とから構成されている。分散ローター36とライナー34との間隙部分が表面改質ゾーンであり、分級ローター31及びローター周辺部分が分級ゾーンである。
尚、分級ローター31の設置方向は図1に示したように縦型でも構わないし、横型でも構わない。また、分級ローター31の個数は図1に示したように単体でも構わないし、複数でも構わない。
以上のように構成してなる表面改質装置では、排出弁38を閉とした状態で原料供給口33から原料トナー粒子を投入すると、投入された原料トナー粒子は、まずブロワー(図示しない)により吸引され、分級ローター31で分級される。その際、分級された所定粒径以下の微粉は装置外へ連続的に排出除去され、所定粒径以上の粗粉は遠心力によりガイドリング39の内周(第二の空間42)に沿いながら分散ローター36により発生する循環流にのり表面改質ゾーンへ導かれる。表面改質ゾーンに導かれた原料は分散ローター36とライナー34間で機械式衝撃力を受け、表面改質処理される。表面改質された表面改質粒子は、機内を通過する冷風にのって、ガイドリング39の外周(第一の空間41)に沿いながら分級ゾーンに導かれ、分級ローター31により、再度微粉は機外へ排出され、粗粉は、循環流にのり、再度表面改質ゾーンに戻され、繰り返し表面改質作用を受ける。一定時間経過後、排出弁38を開とし、排出口37より表面改質粒子を回収する。
本発明においては、表面改質装置における表面改質時間(=サイクルタイム、原料供給が終了してから排出弁が開くまでの時間)としては、5秒以上180秒以下、更に好ましくは、15秒以上120秒以下であることが好ましい。表面改質時間が5秒未満の場合、改質時間が短時間過ぎるため、表面改質トナーが十分に得られない場合がある。また、改質時間が180秒を超えると、改質時間が長時間過ぎるため、表面改質時に発生する熱による機内融着の発生、及び処理能力の低下を招く場合がある。
更に、本発明においては、該表面改質装置内に導入する冷風温度T1を5℃以下とすることが好ましい。該表面改質装置内に導入する冷風温度T1を5℃以下、より好ましくは、0℃以下、更に好ましくは、−5℃以下とすることにより、表面改質時に発生する熱による機内融着を防止することができる。該表面改質装置内に導入する冷風温度T1が5℃を超えると、表面改質時に発生する熱による機内融着を起こす場合がある。
尚、該表面改質装置内に導入する冷風は、装置内の結露防止という面から、除湿したものであることが好ましい。除湿装置としては公知のものが使用できる。給気露点温度としては、−15℃以下が好ましく、更には−20℃以下が好ましい。
更に、本発明のトナーの製造方法においては、該表面改質装置内は、機内冷却用のジャケットを具備しており、該ジャケットに冷媒(好ましくは冷却水、更に好ましくはエチレングリコール等の不凍液)を通しながら表面改質処理することが好ましい。該ジャケットによる機内冷却により、トナー表面改質時における熱による機内融着を防止することができる。
尚、表面改質装置の該ジャケット内に通す冷媒の温度は5℃以下とすることが好ましい。表面改質装置内の該ジャケット内に通す冷媒の温度を5℃以下、より好ましくは0℃以下、更に好ましくは−5℃以下とすることにより、表面改質時に発生する熱による機内融着を防止することができる。該ジャケット内に導入する冷媒の温度が5℃を超えると、表面改質時に発生する熱による機内融着を起こす場合がある。
更に、本発明においては、該表面改質装置内の分級ローター後方の温度T2を60℃以下とすることが好ましい。該表面改質装置内の分級ローター後方の温度T2を60℃以下、好ましくは50℃以下とすることにより、表面改質時に発生する熱による機内融着を防止することができる。該表面改質装置内の分級ローター後方の温度T2が60℃を超えると、表面改質ゾーンにおいては、それ以上の温度が影響するため、表面改質時に発生する熱による機内融着を起こす場合がある。
更に、本発明においては、表面改質装置内の該分散ローターとライナーとの間の最小間隔が0.5mm乃至15.0mmとすることが好ましく、更には、1.0mm乃至10.0mmとすることが好ましい。また、該分散ローターの回転周速は75m/sec乃至200m/secとすることが好ましく、更には、85m/sec乃至180m/secとすることが好ましい。更に、表面改質装置内の該分散ローター上面に設置されている角型のディスク或いは円筒形のピンの上部と、該円筒型のガイドリングの下部との間の最小間隔が2.0mm乃至50.0mmとすることが好ましく、更には、5.0mm乃至45.0mmとすることが好ましい。
本発明において、該表面改質装置内の分散ローター及びライナーの粉砕面は耐摩耗処理されていることがトナーの生産性上好ましい。尚、耐摩耗処理方法は何ら限定されるものではない。また、該表面改質装置内の分散ローター及びライナーの刃形状に関しても、何ら限定されるものではない。
本発明において、表面改質処理前にトナー粉砕物を分級する場合、気流式分級機によって分級されたトナーは、コールターカウンター法を用いて測定される粒度分布において、4μm未満のトナーの個数平均分布の累積値が10%以上50%未満、好ましくは15%以上45%未満、より好ましくは15%以上40%未満であることが所望の円形度のトナーを得る上で好ましい。本発明で用いられる気流式分級機としては、エルボージェット(日鉄工業社製)等があげられる。
更に本発明においては、該表面改質装置内の分散ローター及び分級ローターの回転数等を制御することにより、トナーの円形度をより適正な値に制御することができる。
本発明に使用される結着樹脂の種類としては、スチレン系樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニール、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂が挙げられる。中でも好ましく用いられる樹脂として、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。
スチレン系共重合体のスチレンモノマーに対するコモノマーとしては、ビニルトルエンの如きスチレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチルの如きメタクリル酸エステル;マレイン酸;マレイン酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチルの如き二重結合を有するジカルボン酸エステル;アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン;塩化ビニル;酢酸ビニル、安息香酸ビニルの如きビニルエステル;エチレン、プロピレン、ブチレンの如きエチレン系オレフィン;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンの如きビニルケトン;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテルが挙げられる。これらのビニル系単量体が単独もしくは2つ以上用いられる。
本発明における結着樹脂は、酸価を有していてもよい。結着樹脂の酸価を調整するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸、ビニル酢酸、イソクロトン酸、アンゲリカ酸などのアクリル酸及びそのα−或いはβ−アルキル誘導体、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、イタコン酸、メサコン酸、ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘導体又は無水物などがあり、このようなモノマーを単独、或いは混合して、他のモノマーと共重合させることにより所望の重合体を作ることができる。この中でも、特に不飽和ジカルボン酸を用いることが酸価値をコントロールする上で好ましい。
以上のようなカルボキシル基含有モノマーは、結着樹脂を構成している全モノマー100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜15質量部添加すればよい。
本発明に係る樹脂組成物は、ガラス転移温度(Tg)が45〜80℃、好ましくは50〜70℃であることが好ましい。
本発明の結着樹脂の合成方法として本発明に用いることのできる重合法として、溶液重合法、乳化重合法や懸濁重合法が挙げられる。
本発明に用いられる結着樹脂は、以下に例示する様な多官能性重合開始剤単独あるいは単官能性重合開始剤と併用して生成することが好ましい。
多官能構造を有する多官能性重合開始剤の具体例としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−t−ブチルパーオキシオクタン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン及び各種ポリマーオキサイド等の1分子内に2つ以上のパーオキサイド基などの重合開始機能を有する官能基を有する多官能性重合開始剤、及びジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルフマレート等の1分子内に、パーオキサイド基などの重合開始機能を有する官能基と重合性不飽和基の両方を有する多官能性重合開始剤から選択される。
これらの開始剤は、効率の点からモノマー100質量部に対し0.05〜2質量部で用いるのが好ましい。
結着樹脂は架橋性モノマーで架橋されていることも好ましい。
架橋性モノマーとしては主として2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーが用いられる。具体例としては、芳香族ジビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等);アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び、以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);更には、ポリエステル型ジアクリレート化合物類(例えば、商品名MANDA(日本化薬))が挙げられる。多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート;等が挙げられる。
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.00001〜1質量部、好ましくは0.001〜0.05質量部の範囲で用いることが好ましい。
本発明に用いられるポリエステル樹脂の組成は以下の通りである。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また(A)式で表わされるビスフェノール及びその誘導体;
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0〜10である。)
また(B)式で示されるジオール類;
2価の酸成分としては、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸などのアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;等のジカルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
また架橋成分として働く3価以上のアルコール成分と3価以上の酸成分を併用することが好ましい。
3価以上の多価アルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等が挙げられる。
また、本発明における三価以上の多価カルボン酸成分としては、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル;次式
(式中、Xは炭素数3以上の側鎖を1個以上有する炭素数5〜30のアルキレン基又はアルケニレン基)
で表わされるテトラカルボン酸等、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル等の多価カルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
本発明に用いられるアルコール成分としては40〜60mol%、好ましくは45〜55mol%、酸成分としては60〜40mol%、好ましくは55〜45mol%であることが好ましい。また三価以上の多価の成分は、全成分中の5〜60mol%であることが好ましい。
該ポリエステル樹脂も通常一般に知られている縮重合によって得られる。
本発明のトナーは荷電制御剤を含有することが好ましい。
トナーを負荷電性に制御するものとして下記化合物が挙げられる。
有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸の金属錯体が挙げられる。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールのフェノール誘導体類が挙げられる。
中でも、下記式(1)で表されるアゾ系金属錯体が好ましい。
〔式中、Mは配位中心金属を表し、Sc,Ti,V,Cr,Co,Ni,Mn又はFe等が挙げられる。Arはアリール基であり、フェニル基、ナフチル基の如きアリール基であり、置換基を有してもよい。この場合の置換基としては、ニトロ基、ハロゲン基、カルボキシル基、アニリド基及び炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基がある。X,X’,Y及びY’は−O−,−CO−,−NH−,−NR−(Rは炭素数1〜4のアルキル基)である。C
+はカウンターイオンを示し、水素、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、脂肪族アンモニウム或いはそれらの混合イオンを示す。〕
特に中心金属としてはFeが好ましく、置換基としてはハロゲン、アルキル基又はアニリド基が好ましく、カウンターイオンとしては水素、アルカリ金属、アンモニウム又は脂肪族アンモニウムが好ましい。カウンターイオンの異なる錯塩の混合物も好ましく用いられる。
下記式(2)に示した塩基性有機金属錯体も負帯電性を与える荷電制御剤として好ましい。
トナーを正荷電性に制御するものとして下記の化合物がある。
ニグロシン及び脂肪酸金属塩等によるニグロシン変成物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩の如きオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドの如きジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート類;グアニジン化合物;イミダゾール化合物が挙げられる。これらを単独で或いは2種類以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、トリフェニルメタン化合物、カウンターイオンがハロゲンでない四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。下記式(3)
〔式中、R
1はH又はCH
3を示し、R
2及びR
3は置換または未置換のアルキル基(好ましくは、C
1〜C
4)を示す。〕
で表されるモノマーの単重合体;前述したスチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの如き重合性モノマーとの共重合体を正荷電性制御剤として用いることができる。この場合、この単重合体及び共重合体は荷電制御剤としての機能と、結着樹脂(の全部または一部)としての機能を有する。
特に下記式(4)で表される化合物が本発明のトナー正荷電性制御剤として好ましい。
〔式中、R
1,R
2,R
3,R
4,R
5及びR
6は、各々互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基または、置換もしくは未置換のアリール基を表す。R
7,R
8及びR
9は、各々互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基を表す。A
-は、硫酸イオン、硝酸イオン、ほう酸イオン、りん酸イオン、水酸イオン、有機硫酸イオン、有機スルホン酸イオン、有機りん酸イオン、カルボン酸イオン、有機ほう酸イオン、テトラフルオロボレートの如き陰イオンを示す。〕
電荷制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法と外添する方法がある。これらの電荷制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で用いられる。
本発明のトナーはワックスを含有してもよい。本発明に用いることができるワックスとしては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、オレフィンの共重合物、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物または、それらのブロック共重合物;カルナバワックス、モンタン酸エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸類;ステアリンアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコール類の如き飽和アルコール類;ソルビトールの如き多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド類;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
好ましく用いられるワックスとしては、パラフィンワックス、アルキレンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒又はその他の触媒を用いて重合した低分子量のアルキレンポリマー;高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルキレンポリマー;アルキレンポリマーを重合する際に副生する低分子量アルキレンポリマーを分離精製したもの;一酸化炭素及び水素からなる合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から、あるいは、これらを水素添加して得られる合成炭化水素などから、特定の成分を抽出分別したワックスが挙げられる。これらワックスには酸化防止剤が添加されていてもよい。さらに、アルコール、脂肪酸、酸アミド、エステルあるいは、モンタン系誘導体で形成されるワックスが挙げられる。また、脂肪酸等の不純物を予め除去してあるものも好ましい。
中でも好ましいものは、パラフィンワックス、エチレンなどのオレフィンを重合したもの及びこの時の副生成物、フィッシャートロプシュワックスなどの炭素数が数千ぐらいまでの炭化水素を母体とするものが良い。
そして、これらのワックスから、プレス発汗法、溶剤法、真空蒸留、超臨界ガス抽出法、分別結晶化(例えば、融液晶析及び結晶ろ別)等を利用して、ワックスを分子量により分別し、分子量分布をシャープにしたワックスは、必要な融解挙動範囲の成分が占める割合が多くなるので更に好ましい。
本発明のワックスは、示差走査熱量計(DSC)により測定される昇温時のDSC曲線に少なくとも一つの吸熱ピークを有し、該吸熱ピークが60〜160℃、好ましくは60〜150℃、より好ましくは65〜140℃に存在することが好ましい。
本発明においては、トナー及びワックスのDSC曲線は、示差走査熱量計(DSC測定装置)、例えばDSC Q−1000(TAインスツルメンツジャパン社製)を用い、ASTM D3418−82に準じて測定を行う。DSC曲線は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、昇温速度10℃/minで昇温させた時に測定されるDSC曲線を用いる。
ワックスの分子量分布はMw/Mnが3.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.5以下であり、更に好ましくは、2.0以下である。
本発明に使用されるワックスは、結着樹脂100質量部に対して0.1〜15質量部、好ましくは0.5〜12質量部添加されるのが効果的である。
本発明のトナーは磁性材料をトナー中に含有させ磁性トナーとしても使用しうる。この場合、磁性材料は着色剤の役割をかねることもできる。トナーに使用される磁性材料としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトの如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金及びその混合物が挙げられる。
これらの磁性体は個数平均粒径が0.05〜1.0μmが好ましく、更には0.1〜0.5μmのものが好ましい。磁性体はBET比表面積は2〜40m2/g(より好ましくは、4〜20m2/g)のものが好ましく用いられる。形状には特に制限はなく、任意の形状のものが用いられる。磁気特性としては、磁場795.8kA/m下で飽和磁化が10〜200Am2/kg(より好ましくは、70〜100Am2/kg)、残留磁化が1〜100Am2/kg(より好ましくは、2〜20Am2/kg)、抗磁力が1〜30kA/m(より好ましくは、2〜15kA/m)であるものが好ましく用いられる。これらの磁性体は結着樹脂100質量部に対し、20〜200質量部で用いられる。好ましくは40〜150質量部で用いられる。
また、個数平均径は、透過電子顕微鏡等により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。磁性体の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業社製)を用いて外部磁場795.8kA/mの下で測定することができる。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置オートソープ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することができる。
本発明のトナーで用いられる着色剤としては任意の適当な顔料又は染料が挙げられる。顔料としてカーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等が挙げられる。これらは定着画像の光学濃度を維持するのに必要充分な量が用いられ、結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部の添加量が良い。染料としては、アゾ系染料、アントラキノン染料、キサンテン系染料、メチン系染料等が挙げられる。染料は結着樹脂100質量部に対し、0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部の添加量が良い。
本発明のトナーは、流動性向上剤として他の無機微粉体を含有してもよい。流動性向上剤は疎水性無機微粉体であることが好ましく、例としては、シリカ微粉体、酸化チタン微粉体、アルミナ微粉体又はそれらの疎水化物が挙げられる。それらは、単独あるいは併用して用いることが好ましい。
シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式法またはヒュームドシリカと称される乾式シリカ及び水ガラス等から製造される湿式シリカの両方が挙げられるが、表面及び内部にあるシラノール基が少なく、製造残渣のない乾式シリカの方が好ましい。
さらにシリカ微粉体は疎水化処理されているものが好ましい。疎水化処理するには、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体をシラン化合物で処理した後、あるいはシラン化合物で処理すると同時にシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
疎水化処理に使用されるシラン化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシランメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられる。好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度がおよそ30〜1,000mm2/sのものが用いられる。例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが好ましい。
シリコーンオイル処理の方法は、シラン化合物で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合しても良いし、ベースとなるシリカヘシリコーンオイルを噴射する方法によっても良い。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、ベースのシリカ微粉体とを混合し、溶剤を除去して作製しても良い。
上記シリカ微粉体における疎水化処理、更には、オイル処理を酸化チタン微粉体、アルミナ微粉体に施したものも、シリカ系同様に好ましい。
本発明のトナーには、必要に応じて他の添加剤を外添してもよい。例えば帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ロール定着時の離型剤、滑剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子である。
樹脂微粒子としては、その平均粒径が0.03〜1.0μmのものが好ましい。その樹脂を構成する重合性単量体としては、スチレン;o−メチルスチレン,m−メチルスチレン,p−メチルスチレン,p−メトキシスチレン,p−エチルスチレン誘導体;アクリル酸;メタクリル酸;アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸n−ブチル,アクリル酸イソブチル,アクリル酸n−プロピル,アクリル酸n−オクチル,アクリル酸ドデシル,アクリル酸2−エチルヘキシル,アクリル酸ステアリル,アクリル酸2−クロルエチル,アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸n−プロピル,メタクリル酸n−ブチル,メタクリル酸イソブチル,メタクリル酸n−オクチル,メタクリル酸ドデシル,メタクリル酸2−エチルヘキシル,メタクリル酸ステアリル,メタクリル酸フェニル,メタクリル酸ジメチルアミノエチル,メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル;アクリロニトリル,メタクリロニトリル,アクリルアミド等の単量体が挙げられる。
重合法としては、懸濁重合、乳化重合、ソープフリー重合が挙げられる。より好ましくは、ソープフリー重合によって得られる粒子が良い。
その他の微粒子としては、ポリ弗化エチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリ弗化ビニリデンの如き滑剤(中でもポリ弗化ビニリデンが好ましい);ケーキング防止剤;カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズの如き導電性付与剤が挙げられる。さらに、トナーと逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いても良い。
トナーと混合される流動性向上剤や樹脂微粒子は、トナー100質量部に対して0.1〜5質量部(好ましくは、0.1〜3質量部)使用するのが良い。
トナーの重量平均粒径及び粒度分布はコールターカウンター法を用いて行うが、例えばコールターマルチサイザー(コールター社製)を用いることが可能である。電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えばISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2.00μm以上のトナーの体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。それから本発明に係る体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)を算出する。
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを用いる。
本発明に係るトナーを作製するには、上述したようなトナー構成材料をボールミルその他の混合機により十分混合した後、熱ロール,ニーダー,エクストルーダーの如き熱混練機を用いてよく混練し、冷却固化後粗粉砕を行った後に微粉砕、分級を行った後に表面改質装置を用いてトナーの表面改質を行う方法が好ましい。さらに必要に応じ所望の添加剤をヘンシェルミキサーの如き混合機により十分混合し、本発明に係るトナーを製造することができる。
例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられ、粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)が挙げられ、分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラッシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられ、造粒機としては、ローラーコンパクター(ターボ工業社製)が挙げられ、粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社製);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
以下、具体的実施例によって本発明を説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
用いられる結着樹脂を表1に、磁性体を表2に、ワックスを表3に示す。
(無機微粉体の合成)
炭酸ストロンチウムと酸化チタンを湿式で混合し、脱水、乾燥を行った後に成型してか焼する。その後粉砕、分級を行い、所望の粒度分布を有する無機微粉体1〜5を得た。また、酸化チタンを酸化ケイ素に変えることで無機微粉体6を得た。また、炭酸ストロンチウムを炭酸バリウムに変更することで無機微粉体7〜11を得た。無機微粉体の物性を表4に示す。また、無機微粉体1、8、11の粒径−体積%のグラフを図3〜5に示す。
[トナー1の調製]
結着樹脂1 100質量部
磁性体1 95質量部
モノアゾ鉄錯体(商品名:T−77、保土谷化学工業社製) 2質量部
ワックス1 2質量部
上記混合物をヘンシェルミキサーで前混合した後、110℃に加熱された2軸エクストルーダで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕してトナー粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を、機械式粉砕機ターボミル(ターボ工業社製;回転子および固定子の表面に炭化クロムを含有したクロム合金めっきでコーティング(めっき厚150μm、表面硬さHV1050))を用いて、表5の条件表に基づき、エアー温度を調整して機械式粉砕させて微粉砕し、得られた微粉砕物をコアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で微粉及び粗粉を同時に分級除去した。そこで得られた原料トナー粒子のコールターカウンター法で測定される重量平均粒径(D4)は6.6μm、4μm未満のトナー粒子の個数平均分布の累積値は25.3%であった。
その原料トナー粒子を、図1に示す表面改質装置で表面改質及び微粉除去を行った。その際、本実施例においては、分散ローター上部に角型のディスクを16個設置し、ガイドリングと分散ローター上角型ディスクの間隔を60mm、分散ローターとライナーとの間隔を3mmとした。また分散ローターの回転周速を141m/secとし、ブロワー風量を25m3/minとした。また微粉砕品の投入量を1サイクルあたり9kgとし、サイクルタイムを30secとした。またジャケットに通す冷媒の温度を−15℃、冷風温度T1を−25℃とした。更に、分級ローターの回転数を制御することにより、0.6μm以上3μm未満の粒子比率を所望の値とした。以上の工程を経て、コールターカウンター法で測定される重量平均粒径(D4)6.8μm、4μm未満のトナー粒子の個数平均分布の累積値が18.1%の負帯電性トナー粒子1を得た。
このトナー粒子100質量部と、無機微粉体1を0.6質量部、及びヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体1.2質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合してトナー1を調製した。トナー1の、FPIA2100で測定された物性を表5に示す。
[トナー2〜7、9、11、12の調製]
用いる結着樹脂、磁性体、ワックス、無機微粉体を表5のようにして、更にターボミルの微粉砕条件を表5に示すように変更し、多分割分級装置での分級条件を変更し、更に表面改質装置の条件を表5に示すようにした以外はトナー1と同様にしてトナー2〜7、9〜11を得た。トナー2〜7、9〜11の、FPIA2100で測定された物性を表5に示す。
[トナー8の調製]
用いる結着樹脂、磁性体、ワックス、無機微粉体を表5のようにして、機械式粉砕機を用いずにジェット気流式粉砕機を用い、多分割分級装置での分級条件を変更し、更に表面改質装置の条件を表5に示すようにした以外はトナー1と同様にしてトナー8を得た。トナー8の、FPIA2100で測定された物性を表5に示す。
[トナー10の調製]
用いる結着樹脂、磁性体、ワックス、無機微粉体を表5のようにして、更にターボミルの微粉砕条件を表5に示すように変更し、多分割分級装置での分級条件を変更し、更に表面改質装置による表面改質を行わなかった以外はトナー1と同様にしてトナー10を得た。トナー10の、FPIA2100で測定された物性を表5に示す。
[トナー13の調製]
用いる無機微粉体を表5のようにして、機械式粉砕機を用いずにジェット気流式粉砕機を用い、多分割分級装置での分級条件を変更し、更に表面改質装置による表面改質を行わなかった以外はトナー1と同様にしてトナー13を得た。トナー13の、FPIA2100で測定された物性を表5に示す。
[トナー14の調製]
用いる無機微粉体を表5のようにして、更にターボミルの微粉砕条件を表5に示すように変更し、多分割分級装置での分級条件を変更し、得られたトナー粒子を300℃の熱風中を瞬間的に通過させる処理を行った以外はトナー1と同様にしてトナー14を得た。トナー14の、FPIA2100で測定された物性を表5に示す。
<実施例1〜10、比較例1〜4>
次に、調製されたトナーを用いて、以下に示すような方法によって評価を行った。評価結果を表6に示す。
Hewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaser Jet4300nを用いて以下の評価を行った。
(1)画像濃度、カブリ
常温常湿環境下(23℃,60%RH)、低温低湿環境下(15℃,10%RH)、高温高湿環境下(32.5℃,80%RH)の各環境下で、2枚/10秒のプリント速度、印字比率5%で複写機用普通紙(A4サイズ:75g/m2)に9000枚の画出し試験を行い、一日放置して再び9000枚、計18000枚の画出し試験を行った。結果を表3に示す。
画像濃度は「マクベス反射濃度計」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
リフレクトメーター(東京電色(株)製)により測定した転写紙の白色度と、ベタ白をプリント後の転写紙の白色度との比較からカブリを算出した。
(2)スリーブネガゴースト
通常の複写機用普通紙(A4サイズ:75g/m2)に、低温低湿環境下(15℃,10%RH)で18000枚プリントアウトし、4500枚ごとにスリーブネガゴーストの評価を行った。ゴーストに関する画像評価には、スリーブ一周分だけベタ黒の帯を出力した後ハーフトーンの画像を出力した。パターンの概略図を図6に示す。評価方法は、一枚のプリント画像のうち、スリーブ2周目で、1周目で黒画像が形成された場所(黒印字部)と、されない場所(非画像部)での、マクベス濃度反射計により測定された反射濃度の差を下記のごとく算出した。ネガゴーストは、一般的にスリーブ2周目で出る画像において、スリーブ1周目に黒印字部だった部分の画像濃度が、スリーブ1周目に非画像部だった部分の画像濃度よりも低く、1周目で出したパターンの形がそのまま現れるゴースト現象である。ここの濃度差を、反射濃度差を測定することにより評価を行った。
反射濃度差=反射濃度(像形成されない場所)−反射濃度(像形成された場所)
反射濃度差が小さいほどゴーストの発生はなくレベルは良い。ゴーストの総合評価としてA、B、C、Dの4段階で評価し、4500枚ごとの評価の中での最悪の評価結果を表6に示す。
反射濃度差 0.00以上0.02未満:A
0.02以上0.04未満:B
0.04以上0.06未満:C
0.06以上:D
(3)飛び散り
常温常湿環境下での耐久において、初期と18000枚時に100μm(潜像)ラインでの格子パターン(1cm間隔)をプリントし、その飛び散りを光学顕微鏡を用いて目視で評価した。
A:ラインが非常にシャープで飛び散りはほとんどない
B:わずかに飛び散っている程度でラインは比較的シャープ
C:飛び散りがやや多くラインがぼんやりした感じになる
D:Cのレベルに満たない
(4)ブロッチ
低温低湿環境下での耐久において、画出し中の現像スリーブ上のトナーコート状態及びプリント画像から、ブロッチの評価を行った。
A 現像スリーブ上にブロッチが全く見られない。
B 現像スリーブ上にわずかに見られるが、画像上にはその影響は現れない。
C 現像スリーブ上に見られ、画像上にもその影響がかすかに現れる。
D 現像スリーブ上にブロッチが見られ、画像上に著しくその影響が現れる。
(5)画像流れ
高温高湿環境下での18000枚の画出し試験後の画像において、画像流れの程度を評価した。
A 非常に良好
B 良好(ほとんど発生せず)
C 実用可
D 実用不可
(6)中抜け
常温常湿環境下での18000枚の画出し試験後にOHTシートに文字画像、ライン画像を印字し、中抜けの評価を行った。
A 発生せず
B わずかに中抜けが見られる
C かなりの部分で中抜けが見られるが、実用上問題ない
D 文字画像、ライン画像ともにほとんどの部分で中抜けが発生している