JP2005228580A - 燃料電池用電解質材及び燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】 燃料電池のカソード側酸化剤ガス流路よりも路内流速の遅いアノード側燃料ガス流路におけるフラッディングの防止を可能とする。
【解決手段】 燃料電池用電解質材の燃料ガス挿通方向下流側の厚みが上流側より薄くなっている。
【選択図】 図1
【解決手段】 燃料電池用電解質材の燃料ガス挿通方向下流側の厚みが上流側より薄くなっている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、固体高分子形燃料電池(PEFC)などの燃料電池を構成するのに好適な燃料電池用電解質材及びこれを備えた燃料電池に関する。
近年、水素と酸素の電気化学反応によって発電する燃料電池がエネルギー供給源として注目されている。イオン交換樹脂膜を含む燃料電池などでは一般に、高分子電解質であるイオン交換樹脂膜がアノード極とカソード極の両電極間に狭持され、さらに各電極との間に燃料ガスを挿通する燃料ガス流路(アノード側)と酸化剤ガスを挿通する酸化剤ガス流路(カソード側)とを形成するセパレータを設けて構成されている。
燃料電池を発電運転させた場合、カソード側の酸化剤ガス流路には発電に伴なって水が生成されるが、生成された生成水の一部は電解質膜を透過してアノード側の燃料ガス流路側へ移動する。そして、透過した生成水が燃料ガス流路において凝縮されると、カソード側よりも流路中の流速の遅いアノード側では燃料ガス流路内でフラッディング、すなわち水滴がガス流路に滞留することにより電解質膜へのガス供給が阻害されて発電性能が低下する現象を起こしやすい。
このようなフラッディングを防止するための技術として、これまでガス流路を形成するセパレータに加熱手段を設けて凝縮水を蒸発させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、加熱手段を設けると、コストが高くなる、あるいは体格が大きくなるといった不都合を来たすだけでなく、加熱によって電解質膜が劣化しやすくなるという問題があった。
特開2002−324563号公報
以上のように、フラッディングの発生を解消することが安定した発電性能を確保するうえで不可欠であるが、これまで提案されている技術では、電解質膜等の他の構成要素に悪影響を与えることなく効果的にフラッディングを回避し得る技術は未だ確立されていない。
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、燃料電池のカソード側酸化剤ガス流路よりも路内流速の遅いアノード側燃料ガス流路におけるフラッディングの防止が可能な燃料電池用電解質材、及びアノード側燃料ガス流路におけるフラッディングの発生を防止して安定した発電性能を発揮し得る燃料電池を提供することを目的とし、該目的を達成することを本発明の課題とする。
本発明は、カソード側から高分子電解質膜を通過してアノード側に透過する水分量(透過水分量)が高分子電解質膜の厚みに反比例する点に着目し、燃料ガス流路を通過する燃料ガスの通過方向に厚みを変えることが透過水分量の低減、つまりフラッディングの発生防止に有用であるとの知見に基づくものである。前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
上記目的を達成するために、第1の発明である燃料電池用電解質材は、供給された燃料ガスの挿通方向下流側の厚みがその上流側の厚みより薄くなるように構成したものである。すなわち例えば、電解質材及び電解質材を挟む電極対が設けられた膜電極接合体を狭持するようにセパレータを併設して燃料電池に構成した場合に、アノード側において膜電極接合体との間にできた燃料ガス流路の燃料供給口側から燃料ガスの挿通方向に設けられた排出口に向かって厚みが薄くなっている。
燃料電池に構成された場合の、燃料ガスが通過する燃料ガス流路内のフラッディングを起こしやすい部分(例えば、燃料ガス流路の排出口付近など)での厚みを薄くすることで、この部分近傍におけるアノード側からカソード側への透過水分量を特に増加させることができるので、カソード側よりも流速の遅いアノード側の流路内で生ずるフラッディングの発生を効果的に防止することができる。
第1の発明の燃料電池用電解質材は、その厚みが燃料ガス流路内を挿通する燃料ガスの挿通方向上流側から下流側に向かって漸減するように構成することができる。厚みを燃料ガス流路の燃料供給口からガス挿通方向に向けて徐々に薄くなるようにし、燃料供給口から離れるにしたがい増加するフラッディングの程度に対応させて透過水分量を増加できるので、より効果的にフラッディングの発生を防止できる。
第1の発明においては、燃料電池用電解質材の厚みが燃料ガス流路内を挿通する燃料ガスの挿通方向上流側から下流側に向かって階段状に減少する構成とすることもできる。厚みが変わるように階段形状に作成すればよく、作製が簡易に行なえると共に、燃料ガス流路の燃料供給口から所望の段数を形成し任意の割合で薄くなるように構成できるので、燃料供給口から離れるにしたがい増加するフラッディングの程度に合わせて効果的に防止することができる。
このように階段状に減少するように構成する場合、複数の層状体が積層された積層構造に構成することができる。この場合は、所望の階段形状が形成できるように作製した層状体を積層すればよく、より簡易な作製が可能である。
第2の発明である燃料電池用電解質材は、供給された燃料ガスの挿通方向下流側の水分透過係数が上流側より高くなるように構成したものである。第1の発明のように厚みを変えるのではなく、例えば上記同様に膜電極接合体にセパレータを併設した燃料電池に構成した場合に、燃料ガス流路の燃料供給口側から燃料ガスの挿通方向にある排出口に向かって水分透過係数を高めるので、高分子電解質膜(電解質材)を均一厚に構成しつつ、燃料ガス流路の排出口付近などフラッディングを起こしやすい領域におけるアノード側からカソード側への透過水分量を増加させることができる。その結果、従来のように略均一な厚みの電解質材を用いて、カソード側よりも流速の遅いアノード側の流路内でのフラッディングを効果的に防止することが可能である。
第3の発明である燃料電池は、上記第1又は第2の発明である燃料電池用電解質材を設けて構成したものである。燃料電池を構成する燃料電池用電解質材は、フラッディングを起こしやすい部分(例えば燃料ガス流路の排出口付近など)でのアノード側からカソード側への水分透過性が高いので、燃料ガス流路内でのフラッディングが効果的に抑えられ、安定した発電性能を得ることができる。
第3の発明は、第1又は第2の発明である燃料電池用電解質材と共に該燃料電池用電解質材を挟む電極対を含む膜電極接合体と、膜電極接合体との間に燃料ガスが通過する燃料ガス流路及び酸化ガスが通過する酸化ガス流路を形成するセパレータ対と、を設けて構成することができる。第3の発明である燃料電池には、固体高分子形燃料電池(PEFC)などが含まれ、PEFCに構成する場合には例えば、アノード極、カソード極、及び前記アノード極と前記カソード極との間に狭持された燃料電池用電解質材(高分子電解質膜)を有する膜電極接合体、並びに前記膜電極接合体を狭持すると共に、前記アノード極との間に燃料ガスが通過する燃料ガス流路と前記カソード極との間に酸化ガスが通過する酸化ガス流路とを形成する一対のセパレータを備えた単セルを含み、所望によりこの単セルを複数積層したスタック構造に構成することができる。スタック構造は単一であるほか、スタック構造に構成された複数のサブスタックが接続されたものでもよい。上記のアノード極及びカソード極は、電気化学反応を担う触媒層と集電体として機能する拡散層とで構成できる。
本発明によれば、燃料電池のカソード側酸化剤ガス流路よりも路内流速の遅いアノード側燃料ガス流路におけるフラッディングの防止が可能な燃料電池用電解質材を提供することができる。また、アノード側燃料ガス流路におけるフラッディングの発生を防止して安定した発電性能を発揮し得る燃料電池を提供することができる。
以下、図面を参照して、本発明の燃料電池用電解質材の実施形態を説明し、該説明を通じて本発明の燃料電池の実施形態についても詳述する。なお、下記の実施形態において、固体高分子形に構成された燃料電池に燃料ガス及び酸化剤ガスとして水素ガス及び空気(エア)を用いた場合を中心に説明する。但し、本発明においてはこれら実施形態に制限されるものではない。
(第1実施形態)
本発明の燃料電池及び燃料電池用電解質材の第1実施形態を図1〜図3を参照して説明する。本実施形態は、燃料電池を単セルに構成し、単セルを構成する高分子電解質膜(燃料電池用電解質材)の厚みが水素ガスのガス挿通方向上流側から下流側に向かって漸減するようにしたものである。
本発明の燃料電池及び燃料電池用電解質材の第1実施形態を図1〜図3を参照して説明する。本実施形態は、燃料電池を単セルに構成し、単セルを構成する高分子電解質膜(燃料電池用電解質材)の厚みが水素ガスのガス挿通方向上流側から下流側に向かって漸減するようにしたものである。
図1に示すように、本実施形態における燃料電池100は、フッ素系イオン交換樹脂膜(電解質材)1がアノード拡散電極4とカソード拡散電極5との間に狭持されてなる膜電極接合体6と、膜電極接合体6を更に狭持すると共に、アノード拡散電極4との間に水素ガスが通過する、即ち給排される水素ガス流路(燃料ガス流路)11と、カソード拡散電極5との間に空気(エア)が通過する、即ち給排されるエア流路(酸化ガス流路)21とを形成する一対のセパレータ10,20とで構成されている。また、アノード拡散電極4及びカソード拡散電極5は各々、フッ素系イオン交換樹脂膜1側から順次、電気化学反応を担う触媒層2と集電体として機能する拡散層3とを積層してなるものである。
水素ガス流路11及びエア流路21は、膜電極接合体6を介して設けられており、この膜電極接合体6を介在させて、エア流路の酸素量の少ない空気及び生成水を排出するエア排出口23の反対側には水素ガス流路の水素ガス供給用の水素供給口12が、エア流路の空気供給用のエア供給口22の反対側には水素ガス流路の電池反応寄与しなかった水素ガスを排出する水素排出口13が形成されている。そして、燃料電池100に水素ガス及び空気(エア)が供給されたときには、水素ガス流路11を流れる水素ガスの流れの向きとエア流路を流れる空気の流れの向きとは逆向きとなり、各々の流路内を互いに対向して挿通するようになっている。
フッ素系イオン交換樹脂膜(電解質材)1は、水素ガス流路11の水素ガスが挿通する挿通方向上流側にある水素供給口12(エア排出口23)側から、ガス挿通方向下流側となる水素排出口13(エア供給口22)側に向かって厚みが漸減するように構成されており、水素供給口12付近の厚みに対し水素排出口13付近の厚みが略半分(1/2)の薄膜になるように徐々に減少する構成となっている。
上記の電解質材1は、イオン導電性を有する電解質で構成することができ、一般にパーフルオロスルホン酸膜などが用いられる。本実施形態では、ナフィオン膜(デュポン社製)で構成してある。この膜は、通常イオン導電性を高める点から湿潤状態とされ、水素ガスが供給されて得たアノード側の水素イオンは該膜を良好にイオン伝導してカソード側に移動することができる。この湿潤状態は、燃料である水素ガス及び/又はカソード側の酸素を含む空気に加水(加湿)することによって形成できる。
触媒層2は、フッ素系イオン交換樹脂膜(電解質材)1の表面に、触媒としての白金又は白金と他の金属とからなる合金を塗布してなるものである。塗布は、白金又は白金と他の金属とからなる合金を担持したカーボン粉を作製し、このカーボン粉を適当な有機溶剤に分散させ、これに電解質溶液(例えば、Aldrich Chemical社、Nafion Solution)を適量添加してペースト化し、フッ素系イオン交換樹脂膜上にスクリーン印刷する方法などによって行なえる。また、前記カーボン粉を含有するペーストを膜成形したシートをフッ素系イオン交換樹脂膜上にプレスしたり、白金等をフッ素系イオン交換樹脂膜と対向する側の拡散層の表面に塗布するようにしてもよい。
拡散層3は、炭素繊維からなる糸で織成したカーボンクロスにより形成されている。なお、拡散層は、カーボンクロスのほか、炭素繊維からなるカーボンペーパーやカーボンフェルトなどで構成した形態も好適である。
セパレータ10,20は、膜電極接合体6を更に狭持するように設けられると共に、膜電極接合体6を構成するアノード拡散電極4との間に水素ガス流路11が形成され、カソード拡散電極5との間にエア流路21が形成されている。各セパレータは、ガス不透過の導電性部材、例えばカーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボンによって構成することができる。このセパレータは、単セルを複数積層してスタック構造をなすときには一つのセパレータが二つの膜電極接合体の間で共有され、セパレータの両側の面において流路が形成されるようになっている。
燃料電池100は、水素ガス流路11に水素(H2)密度の高い水素ガスが供給され、エア流路21に酸素(O2)を含む空気が供給され、下記式(1)〜(3)で表される電気化学反応(電池反応)によって外部に電力を供給することができる。なお、式(1) 、式(2)は各々アノード側、カソード側での反応を示し、式(3)は燃料電池での全反応である。
H2 → 2H++2e- …(1)
(1/2)O2+2H++2e- → H2O …(2)
H2+(1/2)O2 → H2O …(3)
H2 → 2H++2e- …(1)
(1/2)O2+2H++2e- → H2O …(2)
H2+(1/2)O2 → H2O …(3)
次に、燃料電池内において高分子電解質膜(フッ素系イオン交換樹脂膜)を介して透過移動する水分について図2及び図3を参照して説明する。
燃料電池を構成する高分子電解質膜(フッ素系イオン交換樹脂膜)の厚みが従来のように一定厚である場合は(図2参照)、カソード側では、上記式(2)のように発電により空気(エア)が消費されるため、一般にエア流量はエア供給口22側からエア排出口23へ向かって減少する傾向にあるが、空気を酸化剤ガスとして供給する場合は、図2−(A)に示すようにエア流量の減少量は少ない。また、図2−(A)に示すように、カソード側は発電に伴なう生成水の生成により、エア流路中の水分量はエア排出口23に向かって上昇し、飽和(相対湿度100%;図2−(A)〜(B)中の点P)に達したときにはエア流路内に水滴が現れる。
燃料電池を構成する高分子電解質膜(フッ素系イオン交換樹脂膜)の厚みが従来のように一定厚である場合は(図2参照)、カソード側では、上記式(2)のように発電により空気(エア)が消費されるため、一般にエア流量はエア供給口22側からエア排出口23へ向かって減少する傾向にあるが、空気を酸化剤ガスとして供給する場合は、図2−(A)に示すようにエア流量の減少量は少ない。また、図2−(A)に示すように、カソード側は発電に伴なう生成水の生成により、エア流路中の水分量はエア排出口23に向かって上昇し、飽和(相対湿度100%;図2−(A)〜(B)中の点P)に達したときにはエア流路内に水滴が現れる。
一方、アノード側では、カソード側と同様、上記式(1)のように発電により水素ガスが消費され、その消費量はカソード側より多いため、図2−(C)に示すように、水素供給口12側から水素排出口13に向かって水素ガスのガス流量は大きく減少する。アノード側はカソード側と異なり発電に伴なう生成水は存在しないが、上記のようにアノード側流路内のガス流量が少なくなる結果、水分がカソード側からフッ素系イオン交換樹脂膜(電解質材)1を移動して透過し易く、透過した水分の影響によってアノード側の水分量は変動する。
特に水素ガス流路の水素供給口12付近(エア排出口23付近)では、カソード側のエア流路21内の相対湿度が非常に高いため(図1−(A)参照)、カソード側からアノード側に透過する水分が存在し、これにより水素ガス中の水分量及び相対湿度は次第に上昇する(図2−(C)〜(D)参照)。したがって、カソード側(エア流路21)の場合と同様、アノード側の水素ガス流路11内の相対湿度もいずれ100%(図2−(B)〜(C)中の点Q)に達し、流路内に水滴が現れる。そして、この場合には発電性能の低下を招来する。
逆に、水素排出口13付近(エア供給口22付近)では水素ガス中の相対湿度が高いため、アノード側からカソード側に透過する水分が存在し、これにより水素ガス中の水分量は減少傾向となる。しかし、アノード(水素ガス流路11)側の飽和水分量は水素排出口13に向かって減少するため、水分量と飽和水分量とのバランスで相対湿度が低下しないことが充分にあり得る。したがって、水素ガス流路においては水滴が現れるタイミングを解消することはできない(図2−(E)参照)。
上記現象に対し、高分子電解質膜を透過する透過水分量はその厚みに反比例して変化することを利用し、本実施形態ではフッ素系イオン交換樹脂膜1の厚みを水素供給口12(エア排出口23)から水素排出口13(エア供給口22)に向かって漸減するように構成されている。この構成によって透過水分量が変化した場合には、カソード側の水分量も変化することになるがその量は反応生成される生成水の量に比し少なく無視できる程度である。ところが、元々水分量の少ないアノード側においては、上記構成とすることによる透過水分量の変化の影響を大きく受ける。以下、本実施形態で透過移動する水分について図3を参照して説明する。
燃料電池を構成する高分子電解質膜(フッ素系イオン交換樹脂膜)1の厚みが水素供給口12側から水素排出口13側に向かって徐々に減少(漸減)するようにした本実施形態の場合は、水素供給口12付近(エア排出口23付近)では膜厚が厚いため、図1のようにカソード側からアノード側に矢印Bの方向に透過する透過水分量は減少する。これにより、図3に示すように、水素ガスの相対湿度が100%に達する水素ガス流路11内の位置、すなわち図2−(D)中の点Qの位置は、さらに水素排出口13側に移動する。
そして、逆に水素排出口13付近(エア供給口22付近)では膜厚が薄いため、図1のようにアノード側からカソード側に矢印Aの方向に透過する透過水分量は増加する。つまり、図3中の点Rより水素排出口13側において、水素ガス流路11内の相対湿度が100%未満に徐々に低下する。これにより、水素ガス流路11の水素ガス挿通方向、特に水分が多く滞留しやすい流路後部(例えば水素排出口13近傍)での水素ガス中の相対湿度が低減され、カソード側よりガス流速の遅いアノード側におけるフラッディングの発生が防止される。
以上のように、電解質材の膜厚と膜透過する水分量とが反比例の関係にあることを利用し、高分子電解質膜である電解質材1を水素排出口13(エア供給口22)に向かって膜厚が漸減するように構成し、水素ガス流路の水素排出口側(特に水素排出口近傍)におけるカソード側への水分透過を向上させることにより、水素ガス流路内に滞留する水分を低減でき、滞留水分に起因するフラッディングの発生を効果的に防止することが可能である。
(第2実施形態)
本発明の燃料電池及び燃料電池用電解質材の第2実施形態を図4〜図5を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態のフッ素系イオン交換樹脂膜(電解質材)を水素ガスの挿通方向下流側を上流側に対し一段薄くした階段形状に構成したものである。なお、発電のための燃料ガス及び酸化剤ガスは第1実施形態で使用したものを用いることができ、第1実施形態と同様の構成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
本発明の燃料電池及び燃料電池用電解質材の第2実施形態を図4〜図5を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態のフッ素系イオン交換樹脂膜(電解質材)を水素ガスの挿通方向下流側を上流側に対し一段薄くした階段形状に構成したものである。なお、発電のための燃料ガス及び酸化剤ガスは第1実施形態で使用したものを用いることができ、第1実施形態と同様の構成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
本実施形態におけるフッ素系イオン交換樹脂膜(電解質材)41は、図5に示すように、第1電解質膜42と第2電解質膜43とが積層された積層構造からなるものであり、第1電解質膜(下膜)42上の水素供給口側から水素ガス流路の中間位置(中央部)に至る領域に第2電解質膜(上膜)43を設けて階段状に構成されている。これにより、水素ガス流路11の水素供給口12(エア排出口23)とガス挿通方向下流側の水素排出口13(エア供給口22)との中央部で段階的に厚みが薄くなっており、この中央部を基点に上流側(水素供給口12側)に対し下流側(水素排出口13側)の厚みが略半分になる構成となっている。
第1電解質膜42と第2電解質膜43とは、いずれも同一のフッ素系イオン交換樹脂からなるものであり、フッ素系イオン交換樹脂(電解質材)については既述の通りである。本実施形態のように、上膜及び下膜を同一素材で構成する以外に、水分の膜透過性などの諸性能に応じ異なる素材からなる積層構造を構成するようにしてもよい。
このように、水素ガス流路の中央部を境に水素ガス挿通方向上流側よりも下流側を薄膜にしたことで、水素供給口12付近(エア排出口23付近)では膜厚が厚いため、カソード側からアノード側に透過する透過水分量は減少し、これにより水素ガスの相対湿度が100%に達する点Q(図2−(D)参照)はさらに水素排出口13側に移動し、水滴が生じ難くなる。そして逆に、水素排出口13付近(エア供給口22付近)は膜厚が薄いため、アノード側からカソード側への透過水分量は増加し、これにより相対湿度が100%未満に徐々に低下して、結果的に水素ガス流路11の水素ガス挿通方向、特に水分が多く滞留しやすい流路後部(例えば水素排出口13近傍)での水素ガス中の相対湿度が低減され、カソード側よりガス流速の遅いアノード側におけるフラッディングの発生が防止される。
上記のように、水素ガス流路11の水素供給口と水素排出口との中間に位置するフッ素系イオン交換樹脂膜1の部分において一段差厚を設ける構成以外に、二段以上の複数段を設けた構成とすることも可能である。また、差厚が一段の場合は必ずしも中間位置に設ける必要はなく、透過水分量など場合に応じ適宜選択した位置に差厚を設けるようにすればよい。
また、積層構造は、同一厚の複数膜を積層した形態のほか、厚みの異なる任意の複数膜を積層した形態であってもよい。厚みを任意に変えることで、所望の膜厚、すなわち所望の水分透過量に容易に調整することが可能である。
また、本実施形態のような積層構造に構成するのではなく、図4に示すような一体構造に成形して階段状に構成することもでき(フッ素系イオン交換樹脂膜31)、一体的に構成した場合も本実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
(第3実施形態)
本発明の燃料電池及び燃料電池用電解質材の第3実施形態を図6を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態のフッ素系イオン交換樹脂膜(電解質材)を、内部組成(密度)を不均一にし、その厚みによらず水素排出口側の水分透過係数が高くなるように構成したものである。なお、発電のための燃料ガス及び酸化剤ガスは第1実施形態で使用したものを用いることができ、第1実施形態と同様の構成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
本発明の燃料電池及び燃料電池用電解質材の第3実施形態を図6を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態のフッ素系イオン交換樹脂膜(電解質材)を、内部組成(密度)を不均一にし、その厚みによらず水素排出口側の水分透過係数が高くなるように構成したものである。なお、発電のための燃料ガス及び酸化剤ガスは第1実施形態で使用したものを用いることができ、第1実施形態と同様の構成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
図6に示すように、本実施形態におけるフッ素系イオン交換樹脂膜(電解質材)51は、膜を構成するイオン交換樹脂の膜中密度が水素供給口12から水素排出口13に向かって徐々に減少するように構成されており、水素供給口12側から水素排出口13側に向かって水分透過係数が高くなるようになっている。
水分透過係数は、膜中での水分の移動しやすさを示すものであり、水分が素材中を移動しやすいものほど高くなり、高いほど水分は膜透過しやすい。この水分透過係数は、水分の素材への溶け込み易さを示す溶解度係数〔ml(H2O)/ml×mmHg〕と水分の素材中での移動のし易さを示す拡散係数〔cm2/sec〕との積で求めることができ、素材中で水分移動し易い構成にすることで水分透過係数は高められる。
フッ素系イオン交換樹脂膜51は、成膜するに際し沈降法を利用して一方から他方に向けてイオン交換樹脂粒子の分散が疎になるように成形したものである。本実施形態では、水素ガス流路の水素供給口12からガス挿通方向下流側の水素排出口13に向かうにつれてイオン交換樹脂が疎となっている。したがって、水素供給口12付近(エア排出口23付近)では密(水分透過係数が低い)なため、カソード側からアノード側に透過する透過水分量は減少し、これにより水素ガスの相対湿度が100%に達する点Q(図2−(D)参照)はさらに水素排出口13側に移動して水滴が生じ難くなると共に、逆に水素排出口13付近(エア供給口22付近)では疎(水分透過係数が高い)なため、アノード側からカソード側への透過水分量は増加し、これにより相対湿度が100%未満に徐々に低下して、結果的に水素ガス流路11のガス挿通方向、特に水分が多く滞留しやすい流路後部(例えば水素排出口13近傍)での水素ガス中の相対湿度が低減され、カソード側よりガス流速の遅いアノード側におけるフラッディングの発生が防止される。
上記のように密度を変化させる以外に、例えば、電解質膜中の分子間隙を大きくしたり、スルホン酸基等の親水性基濃度の異なるフッ素系イオン交換樹脂や水親和性の高い成分を用いる等の方法によって水分透過係数を所望にコントロールすることが可能である。
また、本発明の燃料電池用電解質材及び燃料電池は、電気自動車等の車両や船舶、航空機等への電力供給源として好適に適用することができる。
1,31,41,51…フッ素系イオン交換樹脂膜(燃料電池用電解質材)
2…触媒層
3…拡散層
4…アノード拡散電極
5…カソード拡散電極
6…膜電極接合体
10,20…セパレータ
11…水素ガス流路(燃料ガス流路)
21…エア流路(酸化剤ガス流路)
100…燃料電池
2…触媒層
3…拡散層
4…アノード拡散電極
5…カソード拡散電極
6…膜電極接合体
10,20…セパレータ
11…水素ガス流路(燃料ガス流路)
21…エア流路(酸化剤ガス流路)
100…燃料電池
Claims (7)
- 供給された燃料ガスの挿通方向下流側の厚みが上流側より薄い燃料電池用電解質材。
- 前記厚みは、前記挿通方向上流側から下流側に向かって漸減する請求項1に記載の燃料電池用電解質材。
- 前記厚みは、前記挿通方向上流側から下流側に向かって階段状に減少する請求項1に記載の燃料電池用電解質材。
- 複数の層状体が積層された積層構造を有する請求項3に記載の燃料電池用電解質材。
- 供給された燃料ガスの挿通方向下流側の水分透過係数が上流側より高い燃料電池用電解質材。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池用電解質材を備えた燃料電池。
- 前記燃料電池用電解質材と共に該燃料電池用電解質材を挟む電極対を含む膜電極接合体と、前記膜電極接合体との間に燃料ガスが通過する燃料ガス流路及び酸化ガスが通過する酸化ガス流路を形成するセパレータ対とを備えた請求項6に記載の燃料電池。
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