上記特許文献1,2の技術では、情報の受け取り手は、どの範囲にその情報が掲示されているかを知ることができない。このため、電子掲示装置が設置された他所における人物に対するその情報を前提としたコミュニケーション等に不便をきたす。
本発明の目的は、電子掲示装置に掲示された掲示情報を閲覧するユーザがその掲示情報の掲示箇所を把握できるような技術を確立する点にある。
本発明の別の目的は、電子掲示装置に掲示された掲示情報に付与するアノテーションを、複数の電子掲示装置に掲示された掲示情報に反映させる技術を確立する点にある。
本発明の電子掲示システムは、電子掲示部を有する複数の電子掲示装置を備えたシステムであって、電子掲示部に掲示される掲示情報、及び、この掲示情報の掲示対象となる電子掲示装置群を特定する特定情報を取得する取得手段と、前記掲示情報を前記電子掲示装置群の電子掲示部に掲示する掲示手段と、前記掲示情報に対応づけて、前記特定情報を前記電子掲示装置群の電子掲示部に前記掲示情報の掲示と連動して表示する特定情報表示手段と、を備える。
電子掲示部は、ディスプレイによって構成され、このディスプレイに対し掲示に係る電子情報を表示する。特に望ましくは、ディスプレイ面に入力機構を備え、掲示された電子情報に対する書込を行うことができる。電子掲示装置は、この電子掲示部を備えた装置であり、一般に複数の人物が閲覧可能な箇所に設置される。このシステムは、ネットワーク等を介して接続された複数の電子掲示装置を備えている。そして、同一の制御部によって集中制御されたり、分散配置された制御部が相互に連携制御されたりすることで、同一の掲示情報を掲示することができる。制御部は、電子掲示装置と同じ筐体内に設けられてもよいし、別筐体として設けられてもよい。
取得手段は、掲示情報及び特定情報を取得する。これらの情報は、掲示を行ういずれかの電子掲示装置、あるいは、それに対するPC等の付属装置から入力されてもよいし、電子掲示装置とは別に設けられた制御部から入力されてもよい。また、ネットワーク経由で外部装置から取得することも可能である。掲示情報は、電子掲示部に掲示する主たる電子情報である。ニュースや連絡事項等を示す文書データ、静止画データ、動画データなどでこの掲示情報を構成することができる。また、特定情報は、掲示情報を掲示する電子掲示装置群(一般に複数であるが、一つの電子掲示装置にしか掲示されない場合もありえる)を特定する情報である。特定は、電子掲示装置の識別名称、設置場所、設置地域などで行うことができる。また、複数の電子掲示装置が同一地域などの関連する箇所に置かれている場合には、それらを総称する識別名称等で特定してもよい。
掲示手段は、掲示情報を電子掲示装置群の電子掲示部に掲示する。この掲示手段は、例えば、掲示情報を電子掲示装置群にのみ配信することで実現することができる。また、例えば、全ての電子掲示装置に掲示情報を特定情報とともに配信し、各電子掲示装置において特定情報を参照して掲示の実施不実施を判断することで実現することも可能である。特定情報表示手段は、特定情報をこの電子掲示装置群の電子掲示部に表示する。表示は掲示情報の掲示と連動して行われ、掲示情報と対応がつくように行われる。連動とは、一方の手段の処理が行われる場合に、その前、後、または同時に、他方の手段が自動的に行われることを意味する。予め掲示情報と特定情報を合成した電子情報を配信して電子情報群に掲示するような態様を取る場合も、連動の一形態であるといえる。また、対応づけた表示とは、特定情報が掲示情報に関連した情報であると認識可能に表示することを指す。
この電子掲示システムは、ネットワーク接続されたPC間で情報を共有するための個人向けの掲示板やチャットシステムとは異なる。個人向けのシステムにおいては、一般に、ユーザはキーボードやマウス等の入力装置を利用してそのソフトウエアを自ら実行する。したがって、実行後も容易に入力装置を通じた操作が行われることを前提としてソフトウエアが作られており、また、ユーザは操作を行って適宜必要な情報を取得することができる。これに対し、本発明の電子掲示システムは、掲示情報を常時表示し続けていることを想定している。そして、電子掲示装置の前を通りがかったユーザが、特に操作をしないあるいはディスプレイの該当部分を触るなどの極めて簡単な操作により情報を得られることを目指している。つまり、電子掲示システムにおいては、限られた電子掲示部の表示スペースの中に、ユーザが必要とする重要な情報を認識容易に表示する必要がある。そして、ユーザが必要とする重要な情報の一つが、掲示情報がどの電子掲示装置群に掲示されているかという情報なのである。
本発明の電子掲示版システムの構成によれば、掲示情報を閲覧するユーザは、その掲示情報が、他のどの電子掲示装置に掲示されたかを容易に把握することができる。すなわち、掲示情報が認識可能となった個人やグループを予測することができる。そのため、これらの個人やグループと円滑なコミュニケーションを果たすことが可能となる。なお、この掲示システムに係る発明は、システムが実施する方法の発明や、システムにおいて実施されるプログラムの発明としても記述可能である。
本発明の電子掲示装置は、電子掲示部を有する複数の電子掲示装置を備えたシステムを構成する電子掲示装置であって、当該電子掲示部に掲示される掲示情報、及び、この掲示情報の掲示対象となる電子掲示装置群を特定する特定情報を入力する入力手段と、前記掲示情報を当該電子掲示部に掲示する掲示手段と、前記掲示手段と連動して前記特定情報を前記掲示情報に対応づけて当該電子掲示部に表示する特定情報表示手段と、を備える。すなわち、この電子掲示装置は、電子掲示システムを構成する複数の電子掲示装置の一つである。
望ましくは、本発明の電子掲示装置において、前記特定情報表示手段は、掲示される前記掲示情報の近傍に、文字表示、シンボル表示、地図表示のいずれかの表示方式で前記特定情報を表示する。掲示される掲示情報の近傍とは、掲示情報と重なる位置、接する位置、あるいは、近距離位置を指す。近距離位置とは掲示情報との関連が視覚的に容易に認識できる距離をいう。文字表示とは文字を用いて特定情報を表示することであり、シンボル表示とは記号、色などのシンボルを用いて特定情報を表示することである。また、地図表示とは、電子掲示装置群の存在位置を地図上で指し示す表示をいう。これらの表示は、組み合わせて用いてもよい。
望ましくは、本発明の電子掲示装置において、前記特定情報表示手段は、掲示される前記掲示情報に対し前記特定情報に対応する枠表示を行う。枠とは、掲示される掲示情報を囲む枠を指す。枠は、必ずしも全辺を囲うものである必要はなく、例えば上辺等の一部の辺が欠けていてもよい。特定情報に対しては、枠の色(赤、青、緑など)や線種(実線、破線、点線など)を特定のものとすることで対応づけが行われる。色や線種は、電子掲示装置毎あるいはこのグループ毎に固有の色を設定しておくことが望ましい。また、閲覧するユーザに明示するために、恒常的、定期的、あるいはユーザの問い合わせ操作に対して色の意味を表示するなどの措置をとることができる。また、枠は、認識可能にずらして配置することで、複数表示することができる。
望ましくは、本発明の電子掲示装置において、前記特定情報は、複数の電子掲示装置からなるグループを少なくとも一つ特定する情報であって、前記電子掲示装置群に含まれる電子掲示装置の全部または一部を特定する情報を含む。システムに含まれる電子掲示装置が多数(例えば10個以上)あるような場合には、個々の電子掲示装置についての特定情報の表示を全て行うことは困難となる。そこで、グループ分けをしておくことで、表示が容易になるほか、閲覧するユーザの視認性も向上する。
望ましくは、本発明の電子掲示装置において、前記入力手段は、さらに、前記掲示情報の開示対象となる人物の識別情報を入力し、当該電子掲示装置は、その電子掲示部付近に存在する人物の識別情報を非接触方式で取得する手段と、取得した識別情報が開示対象人物となる人物の識別情報に含まれる場合に、前記掲示手段及び特定情報表示手段による処理を行わせる判定手段と、を備える。非接触方式での識別情報の取得は、例えば、人物を撮像して認識処理を行ったり、人物の識別情報が含まれるRFIDタグを感知したりすることで実施可能である。これにより、ユーザは特別な操作を行うことなく、そのユーザを含む特定範囲に開示限定された掲示情報を閲覧することができる。なお、この開示限定された特定範囲についての情報を、掲示情報とともに表示するようにしてもよい。
望ましくは、本発明の電子掲示装置において、前記入力手段は、複数の掲示情報及び対応する特定情報を入力し、当該電子掲示装置は、前記掲示手段による各掲示情報の掲示と前記特定情報表示手段による対応する特定情報の表示を時分割して実施させる時分割処理手段を備える。時分割とは、設定に従って、規則的(周期的を含む)にあるいはランダムに、掲示情報の掲示(特定情報の表示)の切替を行うことを指す。電子掲示装置においては、電子掲示部に同時に掲示可能な情報量が限られている。そこで、時分割して掲示(表示)することで、多くの情報を掲示可能とする。また、この時分割方式では、ユーザが特に操作を行うことなく容易に複数の掲示情報を閲覧できるという利点もある。時分割表示が行われる場合には、掲示情報の掲示と特定情報の表示を同時に実施することも有効であるが、掲示情報の時分割掲示の切り替えの際に対応する特定情報を表示することも効果的である。例えば特定情報を、対応する掲示情報から次の掲示情報に移り変わる時点で表示するといった態様をとることができる。
望ましくは、本発明の制御装置は、電子掲示部を有する複数の電子掲示装置を備えたシステムを制御する装置であって、電子掲示部に掲示される掲示情報、及び、この掲示情報の掲示対象となる電子掲示装置群を特定する特定情報を取得する取得手段と、前記掲示情報を前記電子掲示装置群の電子掲示部に掲示させる掲示指示手段と、前記掲示情報に対応づけて、前記特定情報を前記電子掲示装置群の電子掲示部に前記掲示情報の掲示と連動して表示させる特定情報表示指示手段と、を備える。
望ましくは、本発明の制御装置において、前記取得手段は、原情報及びこの原情報を各電子掲示装置に公開する範囲の情報を入力し、これらに基づいて各電子掲示装置の電子掲示部に掲示される掲示情報を取得する。すなわち、掲示情報は、原情報に対し公開範囲の情報でマスク処理することで得られる。これにより、電子掲示装置間で掲示したい内容を変えたいような場合にも容易に対応可能となる。なお、この場合における特定情報の取得は、公開する範囲の情報に基づいて算出することも可能である。その際には、別途入力された原情報自体の掲示対象となる電子掲示装置を特定する情報を利用することもできる。
望ましくは、本発明の制御装置は、前記掲示情報に対してユーザにより付与されたアノテーションを取得するアノテーション取得手段と、前記電子掲示装置群の電子掲示部に掲示された前記掲示情報とともに前記アノテーションを表示させる特定情報表示指示手段と、を備える。アノテーションは、栞、付箋、メモ、音声、映像などの形態で表示され、掲示情報に対する補助情報を与えるものであり、個々の掲示情報の部分あるいは全体に対して付与される。アノテーションは、特に望ましくは、電子掲示部のディスプレイ面に設けられた入力機構を通じて入力される。もちろん、キーボードやマウスはもとより、カメラ、マイク、スキャナといった電子掲示装置の付属装置等から入力されるなど、他の入力方式が用いられてもよい。掲示情報に付されたアノテーションを、掲示情報の掲示対象となる電子掲示装置群の電子掲示部に、電子情報とともに表示することで、掲示情報を閲覧するユーザ間での情報共有が容易となる。なお、アノテーションの掲示対象となる電子掲示装置を別途定めたり、閲覧可能なユーザを特定するなどの措置をとることも可能である。
本発明の電子掲示プログラムは、電子掲示部を有する複数の電子掲示装置を備えたシステムを構成する電子掲示装置において実行されるプログラムであって、当該電子掲示部に掲示される掲示情報、及び、この掲示情報の掲示対象となる電子掲示装置群を特定する特定情報を入力する入力手順と、前記掲示情報を当該電子掲示部に掲示する掲示手順と、前記掲示手順と連動して前記特定情報を前記掲示情報に対応づけて当該電子掲示部に表示する特定情報表示手順と、を含む。掲示手順と特定情報表示手順の実施順番の実行は、どちらが前であってもよく、また、同時あるいは並列的に実施されてもよい。なお、プログラムが実施される電子掲示装置の演算機能を備えたハードウエアは、電子掲示装置とは別筐体で構成されていてもよい。
本発明の電子掲示方法は、電子掲示部を有する複数の電子掲示装置を備えたシステムを構成する電子掲示装置が実行する方法であって、当該電子掲示部に掲示される掲示情報、及び、この掲示情報の掲示対象となる電子掲示装置群を特定する特定情報を入力する入力ステップと、前記掲示情報を当該電子掲示部に掲示する掲示ステップと、前記掲示ステップと連動して前記特定情報を前記掲示情報に対応づけて当該電子掲示部に表示する特定情報表示ステップと、を含む。
本発明の制御プログラムは、電子掲示部を有する複数の電子掲示装置を備えたシステムの制御に用いられるプログラムであって、電子掲示部に掲示される掲示情報、及び、この掲示情報の掲示対象となる電子掲示装置群を特定する特定情報を取得する手順と、前記掲示情報を前記電子掲示装置群の電子掲示部に掲示させる手順と、前記掲示情報に対応づけて、前記特定情報を前記電子掲示装置群の電子掲示部に前記掲示情報の掲示と連動して表示させる手順と、を含む。掲示情報を掲示させる手順と特定情報を表示させる手順の実行は、どちらが前であってもよく、また、同時あるいは並列的に実施されてもよい。なお、プログラムが実施される電子掲示システムの演算機能を備えたハードウエアは、必ずしも電子掲示装置と同じ筐体内に納められている必要はなく、PC等の別筐体として設けられていてもよい。
本発明の制御方法は、電子掲示部を有する複数の電子掲示装置を備えたシステムを、コンピュータが制御する方法であって、電子掲示部に掲示される掲示情報、及び、この掲示情報の掲示対象となる電子掲示装置群を特定する特定情報を取得するステップと、前記掲示情報を前記電子掲示装置群の電子掲示部に掲示させるステップと、前記掲示情報に対応づけて、前記特定情報を前記電子掲示装置群の電子掲示部に前記掲示情報の掲示と連動して表示させるステップと、を含む。
以下に本発明の代表的な実施の形態を説明する。
図1は、本実施の形態に係る電子掲示システム10の概略構成を示す模式図である。電子掲示システム10は、主たる構成として、サーバ20、電子掲示装置40a,40b,40c及び、クライアントマシン80を含んでいる。これらは、インターネット90に接続され、通信を行うことができる。
サーバ20は、電子掲示システム10の全体を管理する制御装置である。サーバ20は、PC(パーソナルコンピュータ)等の演算機能や記憶機能を備えたハードウエアと、その動作を規定するソフトウエア(プログラム)によって構成することができる。扱うデータ量によっては、大容量の外部記憶装置を備えていてもよい。
サーバ20には、入出力部22、ユーザ入力部24、制御部26、記憶部30が含まれている。入出力部22は、インターネット90を通じて、電子掲示システム10を構成する他の装置を含む各装置との間でデータ及び指令信号の送受信を行う。ユーザ入力部24は、キーボード等の入力装置を備え、サーバ20を操作するユーザからの指令信号を受け付ける。制御部26は、サーバ20の各部の動作を制御するための構成であり、これにより電子掲示システム10全体の制御も行っている。記憶部30は、ハードディスク等の記憶装置を備え、各種の情報を記憶する。記憶部30において特徴的な点は、電子掲示装置40a,40b,40cに掲示させる掲示情報をデータベース(DB)化した掲示情報DB32と、掲示情報に付与されたアノテーションの情報をデータベース化したアノテーション情報DB34とを備えている点である。
電子掲示装置40a,40b,40cは、掲示情報を掲示するために一つまたは複数設けられる装置である。その構成は基本的にどれも類似しており、ここでは、電子掲示装置40aを例に挙げて詳しく説明する。電子掲示装置40b,40cの構成は、特に断らない限り、電子掲示装置40aの説明における文字aをそれぞれb,cとして読み替えたものに対応する。
電子掲示装置40aは、演算装置50aと電子掲示部60aとからなる。演算装置50aは、PC等やASIC等の演算機能を備えたハードウエアと、その動作を規定するソフトウエアとによって構成されており、この電子掲示装置40aの制御装置としての役割を担っている。また、電子掲示部60aは、タッチパネルとしての機能を備えたディスプレイによって構成される演算装置50aと電子掲示部60aは、同一の筐体内に格納されてもよいし、別筐体として設けられていてもよい。なお、次に説明する演算装置50aの機能の一部または全部はサーバ20に設けることも可能であるし、逆にサーバ20の機能の一部または全部を演算装置50aに設けることも可能である。
演算装置50aは、主たる構成として、入出力部52a、ユーザ入力部54a、制御部56a、記憶部58aを備えている。入出力部52aは、インターネット90を介して、電子掲示システム10を構成する各装置とデータや指令信号の送受信を行う。また、インターネット90上の他の装置からデータを取得する等の通信も行うことができる。ユーザ入力部54aは、電子掲示部60aに設けられたタッチパネルやキーボード等の入力装置を備え、ユーザ入力を受け付ける。ユーザは、掲示された掲示情報に対しアノテーションを付与することができる。また、設定により、電子掲示装置40aあるいは電子掲示システム10に対して指示を行ったり、電子掲示システム10を利用する他のユーザに対してメールを送信したりすることも可能である。制御部56aは、電子掲示装置40aの制御を行う。制御は、プログラムやユーザ指示に従って行われる他、サーバ20の指示にも基づいて行われる。また、逆に電子掲示システム10の他の装置を制御するように構成することも可能である。記憶部58aは、半導体ディスプレイやハードディスク等の記憶装置を備え、サーバ20から送られる掲示情報などの記憶を行う。
電子掲示部60aは、ディスプレイによって構成されており、制御部56aの指示に従って掲示情報などの表示を行う。電子掲示部60aは多くの人物によって閲覧可能に設置されることが多いため、大型(例えば、30インチ以上や40インチ以上)のディスプレイにより構成されることが多い。しかし、ディスプレイの大きさは特に限定されるものではなく、利用者の閲覧位置や格納スペース次第では小型(例えば10インチ以下)のものが採用されてもよい。また、ディスプレイは複数設けられていてもよく、その中には、掲示情報が掲示された電子掲示装置を示す特定情報を専用に表示するディスプレイがあってもよい。
ポスター62aは、この電子掲示部60aの一部に掲示された掲示情報であり、一つの掲示情報に基づいて表示された画像である。また、領域64aは、電子掲示部60aの近傍に同時に表示される領域を示している。この領域64aには、長円の中に「1」と描かれたシンボル66aが表示されている。これは、ポスター62aの掲示が、「1」という文字を用いたシンボルで特定される電子掲示装置(ここではそれを当該電子掲示装置40aであるとする、ただし、当該電子掲示装置40aに掲示されていることは自明のこととして、それ以外の電子掲示装置の情報だけを記してもよい)によってなされていることを表している。したがって、この電子掲示部60aを見た人物は、このポスター62aがどの電子掲示装置に掲示されているかを容易に把握することができる。
各シンボルと当該電子掲示装置との関連は、データベースとして記憶しておくことができる。このデータベースには、例えば、電子掲示装置40aを表すシンボルはシンボル66aであるといった情報が記録されており、表示の際に参照される。データベースは、サーバ20の記憶部30に設けてもよいし、各電子掲示装置40a,40b,40cの記憶部58a、58b、58cに設けてもよい。後者の場合、電子掲示装置毎に電子掲示装置を表現するシンボルを異ならせることも可能である。また、ユーザがシンボルを自由に設定する機能を設けてもよい。なお、このデータベースを適宜設定することで、シンボルの代わりに文字、地図、枠などを用いることが可能となる。また、後述するように複数の電子掲示装置からなるグループに対しシンボルを割り当てる場合には、そのグループとシンボルの関係をデータベースとして記憶させておけばよい。
電子掲示装置40b,40cの基本的な構成は、電子掲示装置40aと同じである。ただし、図1においては、それぞれの電子掲示部60b,60cに掲示されている掲示情報であるポスター62b,62cは互いに同じ内容であるが、ポスター62aとは異なったものであることを示している。このため、電子掲示部60bにおける領域64bには、ポスター62bで表現される掲示情報が、「2」というシンボル68bで特定される電子掲示装置(ここではそれを電子掲示装置40bであるとする)と、「3」というシンボル70bで特定される電子掲示装置(ここではそれを電子掲示装置40cであるとする)とに掲示されていることを示す表示がなされている。これにより、電子掲示装置40bを利用するユーザは、ポスター62bの内容が、電子掲示装置40cにも掲示されていることを把握できる。同様にして、電子掲示部60cにおける領域64cには、ポスター62cで表現される掲示情報が、「2」というシンボル68cで特定される電子掲示装置40bと、「3」というシンボル70cで特定される電子掲示装置40cとに掲示されていることを示す表示がなされている。これにより、電子掲示部60cを利用するユーザは、ポスター62cの内容が、電子掲示装置40bにも掲示されていることを把握できる。
クライアントマシン80は、インターネット90に接続されたPCや形態電話等の一般の端末装置であり、電子掲示システム10を補助的に構成している。クライアントマシン80を利用するユーザは、サーバ20あるいは電子掲示装置40a,40b,40cに対してアクセスをし、掲示情報を送信したり、掲示された掲示情報に対しアノテーションを付与したりする操作を行うことができる。また、電子掲示装置40a,40b,40cに掲示される情報を取得したり、電子掲示システム10を遠隔管理したりするようにしてもよい。
次に、図2のフローチャートを用いて、図1に説明した電子掲示システム10の利用時の流れを説明する。まず、クライアントマシン80を利用するユーザが、投稿者名あるいは投稿者の識別情報、掲示したい掲示情報、及び、掲示情報の掲示対象となる電子掲示装置についてのデータを、サーバ20に送信する(S10)。送信は、例えばWebブラウザやメールを用いて行うことができる。また、送信するユーザは、その掲示情報の掲示開始期限や掲示終了期限などの掲示期間に関する情報や、掲示情報の重要度に関する情報などの補助情報を送信してもよい。
サーバ20は、送信されたデータに対し、掲示情報IDを付して記憶部30に記憶する。これにより、記憶部30には、掲示情報ID、投稿者名、掲示情報、掲示対象となる電子掲示装置を特定する特定情報とを含む掲示情報DB(データベース)32が構築される(S12)。データベースには、先に述べた補助情報の他、投稿時間や、投稿が行われたクライアントマシン80などの付加的な情報を含めてもよい。サーバ20は、掲示情報DB32に含まれる情報を、掲示対象となる電子掲示装置に送信する。すなわち、掲示情報ID、掲示情報、投稿者名、特定情報等を送信される(S14)。送信のタイミングはユーザ設定可能であり、定期的に行ってもよいし、掲示情報の掲示開始時刻に会わせて行うなどしてもよい。
掲示情報を受信した各電子掲示装置は、電子掲示部にその掲示情報を掲示する。そして、電子掲示部内の掲示情報と対応づけが可能な領域に、投稿者名と特定情報を表示する(S16)。電子掲示装置に掲示された掲示情報を閲覧するユーザは、これにより、誰がどの電子掲示装置を対象としてその掲示情報を掲示したか把握することができる。
掲示情報を閲覧するユーザは、その掲示情報に対して、アノテーションを投稿することができる(S18)。アノテーションは、典型的には、電子掲示部に備えられたタッチパネル機能を用いて付与される。例えば、専用のペンを用いて掲示情報を選択し、メモを書き込むことで、メモ付きのアノテーションが付与される。通常は、アノテーションの投稿にあたっては、情報共有の便宜やセキュリティ対策のために、投稿者名の明示が要求される。
アノテーションを受け付けた電子掲示装置は、サーバ20に対し、アノテーション情報、すなわち、アノテーションの内容、投稿者名、アノテーションが付与された掲示情報の掲示情報IDを送信する(S20)。サーバ20は、送信されたアノテーション情報に識別のためのアノテーションIDを付与してデータベース化し、記憶部30にアノテーション情報DB34を構築する(S22)。サーバ20は、対応する掲示情報IDに基づいて掲示情報DB32を検索し、そのアノテーションが付与された掲示情報が掲示されている電子掲示装置を特定する。そして、特定した電子掲示装置に対し、アノテーション情報のデータを送付する(S24)。各電子掲示装置は、送信されたデータに基づいて、対応する掲示情報を掲示する際に、アノテーションの内容と投稿者名も表示する(S26)。これにより、ユーザ付与されたアノテーションは、対応する掲示情報に対して付与され、掲示情報の閲覧者と情報共有を円滑に進めることが可能となる。
ここで、図3を用いてアノテーション表示例を説明する。図3(a),図3(b),図3(c)の各図は、図1に示した電子掲示部60a,60b,60cの別の表示態様を示す図である。ここでは、図1と同様に、各電子掲示部60a,60b,60cには、それぞれポスター62a,62b,62cが掲示されている。図1との違いは、領域64a,64b,64cが、シンボルの表示ではなく、アノテーションの表示に用いられている点である。すなわち、電子掲示部60b,60cには、同一のポスターであるポスター62b,62cに対し付与されたアノテーション100b,100cがそれぞれ表示されている。図示はしていないが、アノテーション100b,100cには、同一のメモ102b,102cがそれぞれ記されている。このアノテーション100b,100cは、例えば、電子掲示部60bのポスター62bに対し、ユーザがタッチパネル入力をして投稿されたことを受け、表示されたものである。これに対し、別のポスターであるポスター62aに対しては、アノテーションは付与されていない。このように、共通のポスターにのみアノテーションを自動配布されるように設定しておくことで、ユーザによる特別な操作を行うことなく的確にアノテーションを配布することが可能となる。なお、アノテーションを表示する領域は、図1でシンボルを表示した領域64a,64b,64cと異ならせてもよい。例えば、ポスター内にアノテーションの一部または全部が表示されていてもよい。また、時分割表示を採用し、シンボルとアノテーションとを同一領域に交互に表示するようにしてもよい。また、アノテーションには、メモがなくてもそして、アノテーションの形態も、様々に可能であり、例えば、ポスター内に下線や文字を書き込む書込型アノテーションであってもよいし、クリック等をすることで別の情報へリンクするリンク型アノテーションであってもよい。
図4乃至図6は、図1あるいは図3に示した電子掲示部60a,60b,60cと同様の電子掲示部においてなされる表示態様の変形例を説明する図である。
図4に示した電子掲示部110には、掲示情報としてのポスター112が掲示されている。また、電子掲示部110には、ポスター112のすぐ下に領域114が確保されている。この領域114には、このポスター112の掲示情報を掲示する電子掲示装置を特定するシンボルとしてのアイコン116,118,120が表示されている。アイコン116,118,120は、それぞれ、長円、長方形、ハート形の形状をしており、これにより対応する三つの電子掲示装置を特定している。アイコンの形状選択は様々に行うことができ、例えば、複数のグループ企業からなる会社において本実施の形態が適用される場合には、各会社のロゴや社章などを採用することも有効である。ユーザは、アイコン116,118,120をタッチパネル機能等を利用して選択することにより、対応する電子掲示装置を特定するための属性(設置場所や連絡先など)を表示させることができる。
図5に示した電子掲示部130には、掲示情報としてのポスター132が掲示されている。また、電子掲示部130には、ポスター132のすぐ下に世界地図134が表示されている。世界地図134には、このポスター132の掲示情報を掲示する電子掲示装置が設置された箇所がマーク136,138,140によって表示されている。このように、地図を用いて地点を指し示したり、国や県などの領域を指し示すことで、ユーザに対しその電子掲示装置の特定を直感的に行わしめることができる。
図6に示した電子掲示部150には、掲示情報としてのポスター152が掲示されている。このポスター152の外周は、破線枠154で囲まれており、さらにその外側には実線枠156が設けられている。破線枠154と、実線枠156は、それぞれ特定の電子掲示装置と結びつけられており、その電子掲示装置にポスター152の電子情報が掲示されていることを表現している。また、ポスター152の下側には、アノテーション158が表示され、ここにはメモ160が記されている。このアノテーション158に対しても、実線枠162が表示されている。これは、ポスター152の実線枠156で特定される電子掲示装置と同じ電子掲示装置に対してアノテーション158が表示されていることを表しており、また、ポスター152の破線枠154で特定される電子掲示装置に対してはアノテーション158が表示されていないことを示している。典型的にはアノテーションはそれが付された掲示情報を掲示する電子掲示装置に、掲示情報とともに表示されるが、ユーザが指定することで、表示する電子掲示装置を変更することができる。
図6に示したように、ポスターやアノテーションの掲示・表示対象となる電子掲示装置を、それらに対する枠で表現することができる。枠による表現は、表示スペースがあまりいらないため、電子掲示部の表示可能範囲を有効利用することができる。なお、枠は、ここで示したような実線、破線等の線種を変えることで識別可能としてもよいし、赤、青、緑などの色を変えることで識別可能としてもよい。
続いて、図7を用いて、同じ原情報に基づいて生成した異なる掲示情報を別々の電子掲示装置に掲示する例を示す。図7(a),図7(b),図7(c)は、異なる三つの電子掲示部170,180,190を示している。図7(a)の電子掲示部170には、ポスター172が掲示されている。これに対し、図7(b)の電子掲示部180には、ポスター172の上部部分に対応するポスター182が掲示されているが、ポスター172の下側部分は表示されず、その対応領域184には空白の表示がなされている。また、図7(c)の電子掲示部190においては、ポスター172の上部部分は表示されず、その対応領域192には空白の表示がなされている。そして、ポスター172の下側部分に対応するポスター194が表示されている。
この三つの電子掲示部170,180,190に掲示されたポスターは、同一の掲示情報に基づいて生成されたものである。このような処理は、掲示情報の投稿者が、ある原情報とその原情報のどの部分をどの電子掲示装置に掲示させるかの情報を与えることで容易に実施可能となる。そして、図示してはいないが、各電子掲示装置には、同一の原情報に基づいて生成された掲示情報を掲示する電子掲示装置を特定するための表示を行うことができる。その表示は、掲示情報の違いを区別せずに行ってもよいし、掲示情報の違いを区別して行ってもよい。
図8は、一つの電子掲示部200に異なる掲示情報が時分割されて順次掲示される様子を説明する一連の図である。ここでは、電子掲示部200に掲示すべき情報が複数ある場合を想定している。このような場合、閲覧するユーザに負荷をかけることなくその掲示情報を掲示するためには、掲示情報を適当な時間間隔で次々に掲示していくことが望ましい。以下にその掲示態様の例を説明する。
図8(a)は、ある時刻において電子掲示部200に、ポスター202の掲示情報が掲示された様子を示している。そして、ポスター202の下側には、掲示対象となった電子掲示装置を表示する領域204が設けられており、シンボル206が表示されている。つまり、シンボル206で特定される電子掲示装置(ここでは電子掲示部200の電子掲示装置であるとする)にのみポスター202の掲示情報が掲示されていることを示している。
設定された時間N1秒が経過すると、図8(b)に示すように、電子掲示部200には、別のポスター208が掲示される。そして、領域204には、ポスター208の掲示情報を掲示する電子掲示装置を示すシンボル206,210,212が表示されている。さらに、時間N2秒が経過すると、図8(c)に示すように、電子掲示部200には、別のポスター214が掲示され、領域204には、対応するシンボル206,212が表示される。そして、時間N3秒経過後には、図8(d)に示すように、別のポスター216の掲示と対応するシンボル206,210の表示が行われる。
時間N4秒経過後には、図8(a)に示した状態に戻る。すなわち、電子掲示部200は、図8(a)乃至図8(d)の4つの状態を設定された時間毎に順次繰り返して遷移していく。各状態の掲示時間は、一様でもよいが、重要度や情報量に応じて非一様に決めることも有効である。なお、ユーザは、例えばタッチパネル機能を利用して所望の掲示情報に固定したうえで、その情報を時間をかけて閲覧するなどの操作をすることができる。
図9と図10は、電子掲示装置の前にいる個人を識別することにより、その個人向けの掲示情報を掲示する態様を説明する図である。
図9は、ある会社内に設置された電子掲示装置であり、電子掲示部220付近にはRFIDタグを検知するためのセンサ222が取り付けられている。すなわち、センサ222は電波224によってセンサ222の近くにおかれたRFIDタグと通信を行うことができる。この電子掲示部220の前には、人物226が立っている。アウトドア派のこの人物226は、ラフな服を着て通勤してきたところであり、RFIDタグが内蔵された社員証を保持している。社員証のRFIDタグには、この人物226の個人を識別する情報が格納されている。
センサ222は、人物226の社員証のRFIDタグと交信することにより、人物226が電子掲示部220の前にいることを感知する。電子掲示装置には、予めサーバから掲示情報が送られて、あるいは、この段階でサーバに問い合わせた結果サーバから掲示情報が送られて、この人物226又はこの人物226を含むグループ向けのポスター228を掲示する。ポスター228には、アノテーション230が付与され、メモ232が記されている。人物226は、このポスター228及びアノテーション230を見ることにより、必要な情報を取得することができる。
図9に示したような、特定の個人やグループを対象とした掲示情報やアノテーション情報に対しては、セキュリティ属性を付与することができる。すなわち、電子掲示装置に掲示した掲示情報は第三者が比較的容易に閲覧可能であるため、その閲覧を許す対象を限定しておくことができる。具体的には、その個人あるいはグループ以外には閲覧を許さないとの属性、社員等の一定の範囲の人物であれば見られても構わないとの属性、他の全ての人物に見られても構わないとの属性などを付与することができる。
図10は、このセキュリティ属性を利用した例を示しており、図9の状態から若干経過した時点での様子を示している。ここでは、センサ222が、電波240によって探知を行った結果、前を通りかかった人物242のもつRFIDタグを感知している。この人物242は、この会社に健康診断を行いに訪れた医師であり、ゲスト用の身分属性を格納したRFIDタグを内蔵する身分証明書を保持している。これに対し、図9に示したポスター228には社員以外には閲覧させないとのセキュリティ属性が付与されていたため、掲示される掲示情報が変えられて、一般向けのポスター244が掲示されている。
図9と図10の説明においては、RFIDタグを用いる構成を例に挙げたが、個人識別の態様はこの例に限られない。例えば、画像撮影を行って顔パターンを認識することで個人を識別してもよいし、例えば、赤外線センサによってRFIDタグを持たない人物の存在を感知してもよい。
最後に図11を用いて、掲示情報が掲示される対象となる電子掲示装置をグループ化する態様について説明する。図11には、三つの電子掲示装置250,252,254が示されている。そして、電子掲示装置250,252はグループA256に分類されており、電子掲示装置252,254はグループB258に分類されている。このように複数の電子掲示装置をグループとして扱うことで、掲示情報の投稿者は掲示対象とする電子掲示装置を容易に選択することが可能となる。また、その掲示情報が掲示される電子掲示装置を特定する情報の表示も簡潔に行うことができる。グループ分けは排他的に行う必要はなく、図11の電子掲示装置252のように複数のグループに含まれる電子掲示装置があってもよい。例えば、複数の支店をもつ会社の場合には、設置された国別に電子掲示装置グループを構成可能である他、その国内の支店別にグループを構成することができる。
10 電子掲示システム、20 サーバ、22 入出力部、24 ユーザ入力部、26 制御部、30 記憶部、32 掲示情報データベース、40a 電子掲示装置、50a 演算装置、52a 入出力部、54a ユーザ入力部、56a 制御部、58a 記憶部、60a 電子掲示部、62a ポスター、64a 領域、66a シンボル、80 クライアントマシン、90 インターネット、100b,100c アノテーション、102b,102c メモ。