JP2005221328A - 糖鎖構造解析手法 - Google Patents

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Abstract

【課題】分枝構造などを有する糖鎖を構造異性体として識別することができる、糖鎖構造解析手法を提供する。
【解決手段】構造異性体を有し得る解析すべき糖鎖試料の一部の糖を同位体標識し、得られた同位体標識糖鎖の質量分析を行う、糖鎖構造解析手法。前記解析すべき糖鎖試料が分枝糖鎖を有し、前記分枝糖鎖が互いに同じ糖鎖配列を有することが好ましい。また、前記分枝糖鎖の末端糖残基を13Cを用いて同位体標識することが好ましい。
【選択図】図3

Description

本発明は、質量分析装置を用いた糖鎖構造解析に関する。
近年、質量分析計を用いた糖鎖構造解析が広まりつつある。これは、糖鎖のMS/MSスペクトルから分子イオンピークとグルコシド結合部位で開裂したプロダクトイオンピークとの質量数から、糖鎖を構成する糖の種類及び糖鎖配列を推定する簡便な方法である。
これに類似の方法が、以前からタンパク質・ペプチドのアミノ酸配列を推定するために用いられている。すなわち、分子イオンピークとペプチド結合部位で開裂したプロダクトイオンピークとの質量数から、ペプチドを構成するアミノ酸の種類及びアミノ酸配列を推定するDe Novoシーケンス法として広く知られている。
一方、核磁気共鳴分光法(NMR)を用いた糖鎖構造解析が進展している。例えば、蛋白質 核酸 酵素、vol. 48、No. 8、(2003)には、安定同位体を利用したNMRによる糖鎖構造解析について記載されている。また、Journal of Biomolecular NMR, vol. 12, pp. 385-394, 1998には、糖鎖の選択的13C標識を利用した核磁気共鳴分光法による免疫グロブリンGのFc結合糖鎖のダイナミクスの研究について記載されている。
山口芳樹及び加藤晃一著、安定同位体利用NMRによる糖鎖構造解析、「蛋白質 核酸 酵素」、共立出版、2003年、第48巻、第8号、p.1184−1189 山口芳樹(Yoshiki Yamaguchi)、加藤晃一(Koichi Kato)、新藤充(Mitsuru Shindo)、青木伸(Shin Aoki)、古荘久見子(Kumiko Furusho)、古賀憲司(Kenji Koga)、高橋禮子(Noriko Takahashi)、荒田洋治(Yoji Arata)、及び嶋田一夫(Ichio Shimada)著、糖鎖の選択的13C標識を利用した核磁気共鳴分光法による免疫グロブリンGのFc結合糖鎖のダイナミクスの研究(Dynamics of the carbohydrate chains attached to the Fc portion of immunoglobulin G as studied by NMR spectroscopy assisted by selective 13C labeling of the glycans)、「ジャーナル・オブ・バイオモレキュラー・エヌエムアール(Journal of Biomolecular NMR)」、(オランダ)、クルワー・アカデミック・パブリッシャー(Kluwer Academic Publishers)、1998年、第12巻p.385−394
タンパク質・ペプチドの基本構造が直鎖であるのに対し、糖鎖は分枝構造などを有する場合が多い。このような糖鎖は構造異性体として存在するが、従来の方法では構造異性体の識別を行うことはできなかった。
そこで本発明の目的は、分枝構造などを有する糖鎖を構造異性体として識別することができる、糖鎖構造解析手法を提供することにある。
本発明者らは、解析すべき糖鎖試料の一部の糖残基を同位体標識して質量分析を行うことによって上記本発明の目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の発明を含む。
(1)構造異性体を有し得る解析すべき糖鎖試料の一部の糖残基を同位体標識し、得られた同位体標識糖鎖の質量分析を行う、糖鎖構造解析手法。
(2)前記解析すべき糖鎖試料が分枝糖鎖を有する、(1)に記載の糖鎖構造解析手法。
(3)前記解析すべき糖鎖試料が複数の分枝糖鎖を有し、前記分枝糖鎖が互いに同じ糖鎖配列を有する、(2)に記載の糖鎖構造解析手法。
(4)前記分枝糖鎖の末端糖残基を同位体標識する(2)又は(3)に記載の糖鎖構造解析手法。
(5)構造異性体を有しうる糖鎖試料の一部の糖残基が同位体標識された糖鎖を質量分析装置の較正試料として用いる、(1)〜(4)のいずれかに記載の糖鎖構造解析手法。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の糖鎖構造解析手法を用いて得られた情報を含むデータベース。
本発明によると、分枝構造などを有する糖鎖を構造異性体として識別することができる糖鎖構造解析手法を提供することができる。本発明によると、分枝構造を有する糖鎖の正確な配列を構造異性体レベルで簡便に推定することが可能となる。すなわち、構造異性体の同定が可能になる。また、構造異性体同定のためのデータベース構築が容易になる。さらに、質量分析装置の較正試料を提供することによって、解析結果の信頼性を向上させることが可能になる。
糖鎖には、一般的に直鎖型、分枝型及びトレハロ型に大別される基本構造がある。構成単位である各々の糖には少なくとも3つの水酸基があるため、糖鎖には結合位置すなわちグルコシド結合様式の違いによる構造異性体が生じ得る。本発明は、同位体標識を使用して、特に分枝構造の開裂しやすさを調べることにより、その情報を利用する方法である。すなわち、本発明においては、グルコシド結合位置に起因する開裂しやすさの違いを、標識糖残基を有するフラグメントイオンと、それに対応する非標識糖残基を有するフラグメントイオンとの、一定の質量差を有するイオンピークの強度の差としてマススペクトル上に反映させる。例えば開裂しやすい分枝由来のMS/MSフラグメントイオンは相対的にイオン強度が高く検出されるので、その強度情報を利用する。
本発明においては、構造異性体を有しうる糖鎖を解析すべき試料とする。特に本発明は、分枝構造を有する糖鎖の構造解析において有用である。すなわち2以上の分枝を有する糖鎖の構造解析において有用である。解析対象としての分枝構造を有する糖鎖は、少なくとも2つのグルコシド結合を有する糖残基を有しており、その非還元末端側に複数の分枝糖鎖を有していることが好ましい。また、複数の分枝糖鎖のうち少なくとも2本の分枝糖鎖が、互いに同じ配列を有するものであることが好ましい。
本発明においては、上記のような糖鎖を解析するために、その糖鎖の一部の糖残基が同位体標識された糖鎖(以下、標識糖鎖と表記する)を用いる。標識糖鎖は、質量分析に供することによって、一定の質量数の幅を有し且つ強度が異なるフラグメントイオンピークの組が得られるように適宜設計することができる。同位体としては安定同位体や放射性同位体が用いられ、好ましくは13Cや2Hなどの安定同位体が用いられる。例えば、均一13C標識糖残基などを有していることが好ましい。さらに、標識されている位置としては、分枝の末端であることが好ましい。
以下に、上記のような標識糖鎖の調製法の一例として、特定の分枝の末端が同位体標識された糖鎖の調製法について説明する。
本調製法においては、このような標識糖鎖を合成するための原料として、目的の糖鎖の特定の分枝における標識糖残基の位置に糖残基が存在しない構造を持つ前駆体糖鎖を用いる。なお、本明細書では、目的の標識糖鎖においては標識糖残基を有する分枝、原料の前駆体糖鎖においては標識糖残基が導入されるべき分枝を、特定の分枝と表記する。
上記の前駆体糖鎖に対し、同位体標識された糖を特定の分枝末端に導入する。このとき、同位体としては安定同位体や放射性同位体が用いられ、好ましくは13Cや2Hなどの安定同位体が用いられる。
また、導入すべき糖残基と、特定の分枝以外の他の分枝のうち少なくとも1本の分枝が末端に有する糖残基とが同じであっても良い。すなわち、標識された糖残基を導入することによって、標識か又は非標識かである以外は同じである糖残基を分枝末端に有するような目的の糖鎖が得られるように、原料となる前駆体糖鎖を設計することができる。
例えば、本発明において前駆体糖鎖として二分枝構造の糖鎖を用いる場合、上記前駆体糖鎖は、特定の一の分枝とそれ以外の他の分枝とを有し、他の分枝が末端に有する糖残基が、特定の一の分枝の末端において存在しない。さらに、特定の分枝末端に標識された糖残基を導入することによって、標識か非標識かである以外は互いに同じ糖配列の分枝を有するように、原料となる前駆体糖鎖を選択することが好ましい。
下記式(I)及び(II)で表されるPA化糖鎖は、本調製法によって合成することができる標識糖鎖の例である。以下、糖鎖の構造式において、PAはピリジルアミノ基、Galはガラクトース残基、Manはマンノース残基、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基、及びFucはフコース残基を表す。また、下記式(I)及び(II)において、下線を付したGalは、[u−136]ガラクトース残基を示す。
Figure 2005221328
下記式(III)及び(IV)で表されるPA化糖鎖は、本調製法において原料として用いることができる前駆体糖鎖の例である。上記標識糖鎖(I)を得るためには前駆体糖鎖(III)、上記標識糖鎖(II)を得るためには前駆体糖鎖(IV)を用いる。
Figure 2005221328
本調製法においては、上述のような前駆体糖鎖を用い、in vitroにおいて反応を行うことが好ましい。本調製法においては、存在しうるあらゆる糖転移酵素が関与する反応系を選択することができる。そして、使用する糖転移酵素の受容体糖鎖を適切に設計することによって、原料となる前駆体糖鎖の構造を適宜決定することができる。上述のような前駆体糖鎖を原料に用いることにより、選択的に特定の分枝の末端が同位体標識された糖鎖を得ることができる。すなわち、従来の方法では不可能であった、分枝末端の糖残基の同位体標識を完全に枝を区別して行うことが可能となる。
本調製法においては、一般的に、ガラクトース転移酵素が関与する系で反応を行うと良い。これにより、原料の前駆体糖鎖に標識ガラクトース残基が導入される。図1に、ガラクトース転移酵素が導入された系における標識ガラクトースを用いた同位体標識糖鎖の調製について示す。図1中、ATPはアデノシン5´−三リン酸(adenosine 5’-triphosphate)、ADPはアデノシン5´−二リン酸(adenosine 5’-diphosphate)、UTPはウリジン5´−三リン酸(uridine 5’-triphosphate) 、UDPはウリジン5´−二リン酸(uridine 5’-diphosphate) 、PAはピリジルアミノ(pyridylamino)基、PEPはホスホエノールピルビン酸(phosphoenol pyruvate) 、PYRはピルビン酸(pyruvic acid)、PPiはピロリン酸(二リン酸)(pyrophosphate)、Piはリン酸 、PPaseはピロホスファターゼ(pyrophosphatase)、PKはピルビン酸キナーゼ(pyruvate kinase)、Glcはグルコース(glucose) である。以下、ガラクトース転移酵素(galactosyltransferase)が導入された系で反応を行う場合を例に挙げ、本調製法をさらに説明する。
図1の反応系においては、上記のPA化糖鎖(III)や(IV)を原料の前駆体糖鎖として用いると好適である。まず、ガラクトースの均一13C同位体標識体すなわち[u−136]ガラクトース( [u-13C6] galactose)(以下、標識ガラクトースと表記する。)をリン酸化反応に供することによって標識ガラクトース−1−リン酸([u−136]ガラクトース−1−リン酸([u-13C6] galactose-1-phosphate))を得る。得られた標識ガラクトース−1−リン酸をウリジン酸転移反応に供することによってUDP−標識ガラクトース(UDP−[u−136]ガラクトース(UDP-[u-13C6] galactose))を得る。さらに、得られたUDP−標識ガラクトースを糖転移反応に供することによって、前駆体糖鎖のPA化糖鎖(糖鎖−PA)に標識ガラクトース残基が導入された目的の標識糖鎖([u-13C6] galactose−糖鎖−PA)を得る。
上述の反応系によって、例えばPA化前駆体糖鎖(III)は標識PA化糖鎖(I)へ、PA化前駆体糖鎖(IV)は標識PA化糖鎖(II)へ、それぞれ変換される。
原料の前駆体糖鎖には、塩化カリウム及び塩化マグネシウムを含む、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)緩衝液を溶媒として用いることができる。これら溶質の量は、当業者が適宜決定することができる。この溶媒のpHは7.3〜7.5に調整されていることが好ましく、例えば、pH7.4程度に調整して用いられる。前駆体糖鎖はこのような溶媒に溶解して適切な濃度で使用される。
標識ガラクトースのリン酸化反応においては、ATP及びガラクトキナーゼ(galactokinase)を用いると良い。これら試薬の量は、当業者が適宜決定することができる。この反応は、例えば36〜38℃、0.5〜1時間の条件で行うことができる。
標識ガラクトース−1−リン酸のウリジン酸転移反応においては、UDP−グルコース・Na及びガラクトース−1−ホスフェートウリジルトランスフェラーゼ(galactose-1-phosphate uridyl transferase)を用いると良い。これら試薬の量は当業者が適宜決定することができる。この反応は、例えば36〜38℃、4〜6時間の条件で行うことができる。
UDP−標識ガラクトースの糖転移反応においては、この糖転移反応によって生じるUDPの加リン酸化反応、前記ウリジン酸転移反応によって生じるグルコース−1−リン酸(glucose-1-P)への加リン酸化と前記UDPの加リン酸化反応によって生じるUTPの脱リン酸化とを行うための加リン酸化、及び前記加リン酸化分解反応によって生じた二リン酸の脱リン酸化反応とともに行うと良い。例えば、糖転移反応においてはMnCl2及びガラクトシルトランスフェラーゼ(galactosyltransferase)を、UDPの加リン酸化反応においてはホスホエノールピルビン酸カリウム(potassium phosphoenol pyruvate)及びpyruvate kinaseを、加リン酸化分解反応においてはUDP−グルコースピロホスホリラーゼ(UDP-Glc pyrophosphorylase)を、二リン酸の脱リン酸化反応においては無機ピロホスファターゼ(inorganic pyrophosphatase)をそれぞれ用いることができるが、これらの試薬を同時に加えて用いると良い。これら試薬の量は、当業者が適宜決定することができる。この反応は、例えば36〜38℃、3〜4日の条件で行うことができる。
上述のようにして、特定の分枝の末端が同位体標識された糖鎖を得ることができる。また、このように末端に同位体標識された糖残基を有する糖鎖を得た後、さらに分枝の末端に糖を付加していくことで、前記同位体標識された糖残基が枝の内部に位置する糖鎖を得ることも可能である。この場合、さらなる糖の付加は、公知の方法によって行うことができる。
標識糖鎖は、質量分析に供される。質量分析においては、MALDI法を用いることが好ましい。また、四重極型イオントラップ(QIT)によってMSn分析を行うことも好ましい。本発明においては、具体的には、AXIMA-CFR plus(島津製作所製)、AXIMA-QIT(島津製作所製)、LCQITを用いることができる。
以下に、2分枝構造を持つN結合型複合型糖鎖を解析すべき糖鎖とし、その構造を標識糖鎖(I)及び(II)を用いて解析した例を挙げて本発明を詳細に説明する。
糖鎖(I)は以下のようにして合成した。
PA化糖鎖(III)を、20mM KCl及び5mM MgCl2を含む100mM HEPES緩衝液(pH7.4)に溶解して2pmol/μlとした溶液50μlをチューブに入れ、15mM ATP、22mM [u-13C6]Gal、及び2mU/μlのガラクトキナーゼを加え、37℃で30分反応を行った。その後、13mM UDP-Glc・Na2、0.3mU/μlガラクトース−1−ホスフェートウリジルトランスフェラーゼを加え、37℃、4時間反応を行った。その後、5mM MnCl2、1mU/μlガラクトシルトランスフェラーゼ、30mMホスホエノールピルビン酸カリウム、20mU/μlピルビン酸キナーゼ、3mU/μl無機ピロホスファターゼ、及び1.5mU/μl UDP-Glcホスホリラーゼを加え、さらに、37℃で3日間反応を行った。
上述のようにして反応させたチューブ内の反応液を99℃にて10分間加熱し、反応に使用した酵素を沈殿させた。沈殿物を12,000rpmで5分間遠心して取り除き、上澄みを遠心エバポレータにより乾固した。Shim-pack HRC-ODSカラム(島津製作所製)を用い、流速1ml/minにおけるPA−グルコースオリゴマー(グルコースの重合度が4−20)の溶出プロファイルに基づいて、糖鎖の重合度と溶出時間との関係を求めた。目的の標識糖鎖(I)は、10mMリン酸ナトリウム緩衝液中で、n−ブタノール濃度を60分で0.1%から0.25%まで直線グラジエントをかけ14.1グルコースオリゴマーに相当するピークとして溶出させた。
このとき得られた標識PA化糖鎖(I)の模式的な構造とMSスペクトルとを図2に示す。構造の詳細については、図3-a.を参照して後述する。MSスペクトルにおいては、横軸に質量/電荷(Mass/Charge)、縦軸にイオンの相対強度(%Int.)を表す。糖鎖(I)の理論質量(Na+付加体(Na+adducted))はm/z=1893であり、図2のMSスペクトルが示す測定結果と一致した。
図3-a.に、標識糖鎖(I)の模式的な構造を再び示す。この標識糖鎖は、ガラクトース(galactose)、マンノース(mannose)、フコース(fucose)及びN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)の各々の糖残基から構成されており、還元末端がピリジルアミノ(PA)化されている。またこの標識糖鎖は、マンノースのα1−6結合及びα1−3結合をそれぞれ介して枝分かれした2つの分枝糖鎖を有し、これら分岐糖鎖は互いに同じ配列を有する。2つの非還元末端にガラクトースが結合しているが、α1−6結合を介して枝分かれした分枝糖鎖(以下、上の枝と記載する。)の非還元末端は非標識ガラクトース(galactose (12C))が結合しており、α1−3結合を介して枝分かれした分枝糖鎖(以下、下の枝と記載する。)の非還元末端は均一13C標識ガラクトース(galactose (13C))で標識されている。
標識糖鎖(I)のような標識がされていない糖鎖であれば、上の枝において開裂が起こり糖鎖の一部が脱落して生成したフラグメントイオンも、下の枝において上の枝と同じ箇所で開裂が起こり糖鎖の一部が脱落して生成したフラグメントイオンも、両フラグメントイオンはMS/MS分析で同じ質量数として観測される。しかし(I)は下の枝の末端ガラクトース残基が均一13C標識されているため、両フラグメントイオンの質量数に6Daの差が生じることがある。
図3-b.に、標識糖鎖試料(I)のm/z=1894におけるMS/MSスペクトル(MS/MS spectrum of m/z=1894 in Sample I)を示す。図3-b.は、横軸に 質量/電荷(Mass/Charge)、縦軸にイオンの相対強度を表す。また、すべてのシグナルがナトリウム付加体イオンとして検出されたものである。(All signals are Na+ adducted)図3-b.において検出されたフラグメントイオンのうち、例えばAとA’は、互いに構造異性の関係にある2つの構造異性フラグメントである。フラグメントイオンBとB’、及びCとC’も、それぞれ同様の関係にある。さらに、構造異性フラグメントの片方が均一13C標識ガラクトース、他方が非標識ガラクトースを有することによって、6Daの質量差を有するペアピークとして観測された。均一13C標識ガラクトースを有するフラグメントイオン、すなわちペアピークのうち質量数が大きいほうは上の枝の一部が脱落して生成したフラグメントイオンに相当する。同様に、非標識ガラクトースを有するフラグメントイオン、すなわちペアピークのうち質量数が小さいほうは下の枝の一部が脱落して生成したフラグメントイオンに相当することがわかる。このように、6Daの質量数差をもってペアピークとして検出することができるため、上下どちらの枝が脱落したフラグメントイオンかを区別することができる。
さらに、図3-b.において、ペアピークのイオン強度に注目すると、いずれのペアピークにおいても質量数が大きい方すなわち上の枝(α1−6結合側糖鎖)の一部が脱落して生成したフラグメントイオンの方がイオン強度が大きい。これは、この糖鎖においてα1−6結合側の糖鎖がα1−3結合側の糖鎖よりも相対的に脱落しやすいことを示している。
一方、標識糖鎖(II)については、糖鎖(III)のかわりに糖鎖(IV)を用いた以外は上述した標識糖鎖(I)の合成法と全く同じ方法を行うことにより合成した。これにより得られた標識PA化糖鎖(II)の模式的な構造とMSスペクトルとを図4に示す。構造の詳細については、図5-a.を参照して後述する。MSスペクトルにおいては、横軸に質量/電荷(Mass/Charge)、縦軸にイオンの相対強度(%Int.)を表す。標識糖鎖(II)の理論質量(Na+付加体(Na+ adducted))はm/z=1893であり、図4のMSスペクトルが示す測定結果と一致した。
図5-a.に、標識糖鎖(II)の模式的な構造を再び示す。この標識糖鎖は、標識糖鎖(I)と構造異性体の関係にある。すなわち、(II)は、(I)とは反対に、上の枝(α1−6結合側糖鎖)が均一13C標識ガラクトースで標識されている。図5-b.に(II)のm/z=1894におけるMS/MSスペクトル(MS/MS spectrum of m/z=1894 in Sample II)を示す。図5-b.は、横軸に 質量/電荷(Mass/Charge)、縦軸にイオンの相対強度を表す。また、すべてのシグナルがナトリウム付加体イオンとして検出されたものである。(All signals are Na+ adducted)図5-b.が示すように、下の枝の一部が脱落して生成したフラグメントイオン、すなわち均一13C標識ガラクトースを有するフラグメントイオンの方が、上の枝の一部が脱落して生成したフラグメントイオン、すなわち非標識ガラクトースを有するフラグメントイオンよりも質量数が6Da大きいということ以外は図3-b.と同じように、ペアピークが検出された。
さらに、ペアピークのイオン強度に注目すると、いずれのペアピークにおいても質量数が小さい方すなわち上の枝(α1−6結合側糖鎖)の一部が脱落して生成したフラグメントイオンの方がイオン強度が大きい。ここでも、この糖鎖においてα1−6結合側の糖鎖がα1−3結合側の糖鎖よりも相対的に脱落しやすいことが示されている。
図3-b.及び図5-b.の結果から、同位体標識をすることによって分枝構造を有する糖鎖の構造異性体を質量分析で識別できることが示された。従って、本発明によって分枝構造を有する複雑な糖鎖の構造解析をより簡便に行うことができる。また、他の様々な糖鎖についても上述のように分枝構造の開裂パターン(質量数、フラグメントイオンの強度)を調べてデータベース化することが可能になる。さらに、同位体標識した糖鎖試料を較正試料として用いることにより、質量分析装置が正常に機能しているか確認することができ、解析結果の信頼性を向上させることが可能になる。
ガラクトース転移酵素が導入された系における、標識ガラクトースを用いた同位体標識糖鎖の調製について示した図である。 本発明における標識糖鎖の一例の模式的な構造及びその糖鎖試料のMSスペクトルである。 本発明における標識糖鎖の一例の模式的な構造(a.)及びその糖鎖試料のMS/MS解析結果(b.)である。 本発明における標識糖鎖の他の一例の模式的な構造及びその糖鎖試料のMSスペクトルである。 本発明における標識糖鎖の他の一例の模式的な構造(a.)及びその糖鎖試料のMS/MS解析結果(b.)である。

Claims (6)

  1. 構造異性体を有し得る解析すべき糖鎖試料の一部の糖残基を同位体標識し、得られた同位体標識糖鎖の質量分析を行う、糖鎖構造解析手法。
  2. 前記解析すべき糖鎖試料が分枝糖鎖を有する、請求項1に記載の糖鎖構造解析手法。
  3. 前記解析すべき糖鎖試料が複数の分枝糖鎖を有し、前記分枝糖鎖が互いに同じ糖鎖配列を有する、請求項2に記載の糖鎖構造解析手法。
  4. 前記分枝糖鎖の末端糖残基を同位体標識する、請求項2又は3に記載の糖鎖構造解析手法。
  5. 構造異性体を有しうる糖鎖試料の一部の糖残基が同位体標識された糖鎖を質量分析装置の較正試料として用いる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の糖鎖構造解析手法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の糖鎖構造解析手法を用いて得られた情報を含むデータベース。
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