JP2005220402A - 金属酸化物分散体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 低温での加熱処理によって、基材の上に低い体積抵抗値の金属薄膜の形成が可能な金属酸化物分散体、及び製造方法の提供。
【解決手段】 多価アルコールと、少なくとも一つの末端が非極性基である平均分子量が150〜600の直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物からなる混合物中に、一次粒径が100nm以下の金属酸化物微粒子が分散されている金属酸化物分散体を、基板上に塗布し加熱処理する。
【選択図】 選択図なし。

Description

本発明は、金属薄膜を形成するのに適した金属酸化物分散体及びこの分散体を用いる金属薄膜の製造方法に関する。本発明によって、電極、配線、回路等の導電性薄膜を容易に作成することが可能となる。
従来、基板上に金属薄膜を形成する方法には、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法、メッキ法、金属ペースト法等が知られている。真空蒸着法、スパッタ法、CVD法は、いずれも高価な真空装置を必要とし、いずれも成膜速度が遅いという問題がある。
メッキ法によると、導電性を有する基材の上に、比較的容易に金属膜を形成することが可能であるが、絶縁基材の上に形成する場合には、導電層をはじめに形成する必要があり、したがって、そのプロセスは煩雑なものになるという問題がある。また、メッキ法は溶液中での反応を利用するため、大量の廃液が副生し、この廃液処理に多大な手間とコストがかかるという問題がある。
金属ペースト法は、金属フィラーを分散させた溶液を基材上に塗布し、加熱処理して金属薄膜を得る方法であって、真空装置等の特別な装置を必要とせずプロセスが簡易であるという利点を有するが、金属フィラーを溶融するには、通常、1000℃以上の高温を必要とする。したがって、基材はセラミック基材等の耐熱性を有する基材に限られ、また、基材が熱で損傷したり、加熱により生じた残留応力により基材が損傷を受けやすいという問題もある。
一方、金属フィラーの粒径を低減することによって、金属ペーストの焼成温度を低減するという技術は公知であり、例えば、特許文献1には、粒径100nm以下の金属微粒子を分散した分散液を用いて金属薄膜を形成する方法が開示されている。しかしながら、ここで必要となる100nm以下の金属粒子の製造方法は、低圧雰囲気で揮発した金属蒸気を急速冷却する方法であるために、大量生産が難しく、したがって、金属フィラーのコストが非常に高くなるという問題を有している。
一方、金属酸化物フィラーを分散させた金属酸化物ペーストを用いて金属薄膜を形成するという方法も知られている。特許文献2には、結晶性高分子を含み、粒径300nm以下の金属酸化物を分散させた金属酸化物ペーストを加熱し、結晶性高分子を分解させて金属薄膜を得るという方法が開示されている。しかしながら、この方法では、300nm以下の金属酸化物を結晶性高分子中にあらかじめ分散させる必要があり、非常な手間を必要とするのに加えて、結晶性高分子を分解するのに400℃〜900℃の高温を必要とする。したがって、使用可能な基材は、その温度以上の耐熱性を必要とし、使用可能な基材に制限があるという問題がある。
すでに本発明者は、安価な金属酸化物フィラーを分散させた分散液を基材上に塗布し、さらに比較的低温での加熱処理によって金属薄膜を得るという方法を特許文献3によって開示している。この技術は、粒径が200nm未満の金属酸化物微粒子と、多価アルコール及び/またはポリエーテル化合物を含有する金属酸化物分散体を基板上に塗布し、50〜500℃で焼成することによって金属薄膜を得ることに特徴があるが、金属薄膜の抵抗値をさらに低下させることが望まれている。
特許第2561537号明細書 特開平5−98195号公報 国際公開第03/051562号パンフレット
本発明の課題は、安価な材料で、低温での加熱処理によって抵抗値の低い金属薄膜の形成が可能な金属酸化物分散体を提供することである。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の構成を有するものである。
(1)多価アルコールと、少なくとも一つの末端がアルキル基である平均分子量が150〜600の直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物からなる混合物中に、一次粒径が100nm以下の金属酸化物微粒子が分散されている金属酸化物分散体。
(2)直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物の、少なくとも一方の末端は炭素数1〜3のアルキル基であることを特徴とする(1)に記載の金属酸化物分散体。
(3)直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物がポリエチレングリコール及び/またはポリプロピレングリコールである(1)または(2)に記載の金属酸化物分散体。
(4)金属酸化物微粒子の一次粒径が、50nm以下であることを特徴とする、(1)〜(3)いずれかに記載の金属酸化物分散体。
(5)金属酸化物が、酸化銅または酸化銀である(1)〜(4)のいずれか1項に記載の金属酸化物分散体。
(6)酸化銅が、酸化第一銅である(5)に記載の金属酸化物分散体。
(7)(1)〜(6)のいずれか一項に記載の金属酸化物分散体を基材上に塗布した後、加熱処理で金属酸化物微粒子を還元することからなる金属薄膜の製造方法。
(8)加熱処理温度が50℃以上400℃以下である(7)記載の金属薄膜の製造方法。
(9)加熱処理を不活性雰囲気中で行うことを特徴とする、(7)または(8)に記載の金属薄膜の製造方法。
本発明の金属酸化物分散体は、安価な金属酸化物を原料として、かつ低温において、基板上に非常に体積抵抗値の低い金属薄膜を形成することが可能である。得られた金属薄膜は従来品よりも体積抵抗値が低く、金属配線材料、導電材料等の用途に好適に用いられる。また、低粘度の金属酸化物分散体を調整することで、インクジェット法等を用いた配線直描用途に本発明の金属酸化物分散体を用いることも可能であり、必要な場所のみに本分散体を塗布・焼成することで省資源で低コストな配線形成が可能になる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の金属酸化物分散体は、多価アルコールと、少なくとも一つの末端が非極性基である平均分子量が150〜600の脂肪族ポリエーテル化合物からなる混合物中に、一次粒径が100nm以下の金属酸化物微粒子が分散されている分散体である。
本発明の金属酸化物微粒子分散体は、多価アルコールとポリエーテル化合物からなる混合物が液体状である、いわゆる分散液の状態と、ずり応力や熱を加えることによって流動可能な固体状態のものがある。固体状態のものには、金属酸化物微粒子と多価アルコール及び/またはポリエーテル化合物が相互作用によってネットワークを形成したゲル状態のものも含まれる。
本発明の分散体中に含まれる多価アルコールは、分子中に複数の水酸基を有する化合物である。多価アルコールの中で好ましいのは、炭素数が10以下の多価アルコ−ルであり、その中でも粘度の低い、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール等が特に好ましく用いられる。これらの多価アルコールは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
多価アルコールは、分散体中の金属酸化物微粒子の分散性を特に向上させる効果をもつ。多価アルコールが金属酸化物微粒子を良く分散させる効果については必ずしも明確ではないが、分子中に複数の水酸基をもつことで、金属酸化物微粒子表面に配位して、超微粒子間の凝集を抑制する効果があるものと推察される。
本発明の金属酸化物分散体に用いられるポリエーテル化合物は、平均分子量が150〜600の直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物であることを特徴とする。直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物は繰り返し単位が炭素数2〜6のアルキレン基であることが好ましい。直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物は、2元以上のポリエ−テルコポリマ−やポリエ−テルブロックコポリマ−であってもよい。具体的には、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリブチレングリコ−ルのようなポリエ−テルホモポリマ−のほかに、エチレングリコ−ル/プロピレングリコ−ル、エチレングリコ−ル/ブチレングリコ−ルの2元コポリマ−、エチレングリコ−ル/プロピレングリコ−ル/エチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル/エチレングリコ−ル/プロピレングリコ−ル、エチレングリコ−ル/ブチレングリコ−ル/エチレングリコ−ルなどの直鎖状の3元コポリマ−が挙げられるがこれらに限定されるものではない。ブロックコポリマ−としては、ポリエチレングリコ−ルポリプロピレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ルポリブチレングリコ−ルのような2元ブロックコポリマ−、さらにポリエチレングリコ−ルポリプロピレングリコ−ルポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ルポリエチレングリコ−ルポリプロピレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ルポリブチレングリコ−ルポリエチレングリコ−ルなどの直鎖状の3元ブロックコポリマ−のようなポリエ−テルブロックコポリマ−が挙げられる。
また、本発明で使用される直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物は、少なくとも一つの末端がアルキル基であることを特徴とする。少なくとも一つの末端がアルキル基であることによって、焼成時におけるポリエーテル化合物の分解・焼失性が向上し、得られる金属薄膜の体積抵抗値が下がるので好ましい。アルキル基の長さが長くなると金属酸化物微粒子の分散性を阻害して分散体の粘度が増大する傾向があるので、アルキル基の炭素数は1〜3であることが好ましい。少なくとも一つの末端がアルキル基であることによって焼成時の分解・焼失性が向上する理由は定かではないが、金属酸化物微粒子とポリエーテル化合物の間、もしくは、ポリエーテル化合物とポリエーテル化合物間の水素結合等に基づく相互作用の力が弱まることが寄与しているものと推察される。
本発明で使用される直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物は、少なくとも一つの末端がアルキル基であることは必須であるが、もう一方の末端は、水酸基、グリシジル基、イミド基、アルキル基、アミド基、エステル基、フェニル基、カ−ボネ−ト基、イソシアネ−ト基、スルフォン基、ビニル基、ビニリデン基、ビニレン基、アリル基、アクリレ−ト基、メタクリレ−ト基等になっていてもよい。金属酸化物微粒子の分散性の観点から、もう一方の末端としてより好ましいのは、水酸基である。
本発明で用いられる直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物は、平均分子量が150〜600である。分子量がこの範囲にあると、金属薄膜の成膜性が極めて高く、一方、金属酸化物微粒子を酸化したのち容易に分解・焼失するので好ましい。分子量が150より小さいと、焼成して得られる金属薄膜の成膜性が低下する傾向があるので好ましくない。分子量が600を超えると、焼成して得られる金属薄膜の体積抵抗値が高くなる傾向があるので好ましくない。
直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物のうち、工業的な入手の容易性等も考慮すると、最も好ましいものは、ポリエチレングリコールの片末端が炭素数1〜3のアルキル置換されたもの、およびポリプロピレングリコールの片末端が炭素数1〜3のアルキル置換されたものであり、例えば、ポリエチレングリコールメチルエーテル、ポリプロピレングリコールメチルエーテル、等である。これらは混合して用いられてもよい。
本発明の金属酸化物分散体は、上記多価アルコールとポリエーテル化合物の混合物の他に、これら構成成分の分散性及び溶解性を阻害しない限りにおいて、1価アルコール、エーテル、エステル、アミド、スルホキシド等の有機溶媒を含有していてもよい。
本発明に用いられる金属酸化物微粒子の粒径は100nm以下であり、好ましくは50nm以下である。粒径が100nmより大きいと、得られる金属薄膜の緻密性が低下する。
金属酸化物微粒子は、加熱処理によって還元されるものであれば、いかなるものも使用可能である。例えば、酸化銅、酸化銀、酸化パラジウム、酸化ニッケル等を例示できる。中でも、容易に還元が可能な酸化銅及び酸化銀が好ましい。酸化銅としては、酸化第一銅、酸化第二銅、その他の酸化数をもった酸化銅いずれも使用可能である。酸化銀としては、酸化第一銀、酸化第二銀及び酸化第三銀等、いずれの酸化数をもっていても使用可能であるが、粒子の安定性から、酸化第一銀がより好ましい。
これらの金属酸化物微粒子は、市販品を用いてもよいし、公知の合成方法を用いて合成することも可能である。例えば、粒径が100nm以下の酸化第一銅の合成方法としては、アセチルアセトナト銅錯体をポリオール溶媒中で200℃程度で加熱して合成する方法が公知である(アンゲバンテ ケミ インターナショナル エディション、40号、2巻、p.359、2001年)。
次に、分散体中の各物質の量比について述べる。
分散体中の金属酸化物微粒子の割合には制限はないが、分散体総量に対して、質量%で、好ましくは5%以上90%未満、より好ましくは20%以上80%未満である。金属酸化物超微粒子の質量がこれらの範囲にある場合には、分散体中の金属酸化物超微粒子の分散状態が良好であり、例えば、1回の塗布・加熱処理によって適度な厚さの金属薄層が得られるので好ましい。
分散体中の多価アルコールの割合は、分散体総量に対して、質量%で、好ましくは5〜70%、より好ましくは10〜50%である。多価アルコールがこの範囲にある場合には、金属酸化物超微粒子の分散状態が良好になって、加熱処理時の金属薄層の形成能が一層向上する。
分散体中のポリエ−テル化合物の割合は、分散体総量に対して、質量%で、好ましくは0.1〜70%、より好ましくは1〜50%である。ポリエ−テル化合物の添加量が0.1%未満である場合には、金属酸化物からの還元によって得られる金属の、金属粒子間の緻密性が低くなり、また基材との密着性が低下する場合があり、一方、ポリエ−テル化合物の添加量が70%を越えると、分散体の粘度が増加する場合がある。
金属酸化物微粒子に対する多価アルコールの好ましい質量比は、用いる微粒子の種類と多価アルコールの種類により異なるが、通常は0.5〜10の範囲が好ましい。この範囲にあると金属酸化物微粒子の分散体中における分散性が良く、局所的な凝集に起因するピンホール等の発生がさらに抑制される。
金属酸化物微粒子に対するポリエーテル化合物の好ましい質量比は、用いる微粒子の種類とポリエーテル化合物の種類により異なるが、通常は0.01〜10の範囲が好ましい。この範囲にあると金属酸化物からの還元によって得られる金属粒子間の緻密性が向上し、また、得られる金属薄層の体積抵抗値がさらに低下する。
多価アルコールと少なくとも一方の末端がアルキル基である平均分子量が150〜600の直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を含む金属酸化物分散体を用いることによって、得られる金属薄膜の体積抵抗値が低減しバルクの金属薄膜に近づく理由は必ずしも明確ではないが、1)少なくとも一方の末端がアルキル基である平均分子量が150〜600の直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物の焼成時に容易に分解・焼失すること、及び、2)上記ポリエーテル化合物は金属酸化物微粒子の分散性を阻害する傾向があるが、多価アルコールの添加によって、分散体中の金属酸化物微粒子の分散性が向上し、焼成時に不均一な金属薄膜化が起こることが妨げられること等が寄与していると考えられる。
次に、分散体の製造方法について述べる。
金属酸化物微粒子と上記構成物を分散させる方法としては、粉体を液体に分散する一般的な方法を用いることができる。例えば、金属酸化物微粒子と多価アルコールとポリエーテル化合物からなる混合物の液体とを混合した後、超音波法、ミキサー法、3本ロール法、ボールミル法で分散を施せばよい。これらの分散手段のうち複数を組み合わせて分散を行うことも可能である。これらの分散処理は室温で行ってもよく、分散体の粘度を下げるために、加熱して行ってもよい。多価アルコール及び/またはポリエーテル化合物が室温で固体である場合には、液状になる温度に加熱しながら上記操作を行うことが好ましい。分散体が流動可能な固体となる場合には、ずり応力を加えながら分散を行うことが好ましく、3本ロール法、ミキサー法等が好ましい。
次に、本発明の金属酸化物分散体を用いて、基板上に金属薄膜を形成する方法を説明する。
液状の金属酸化物分散体を用いて、基板上に金属薄膜を形成するには、分散体を基板に塗布する場合に用いられる一般的な方法を用いることができる。例えばスクリーン印刷方法、ディップコーティング方法、スプレー塗布方法、スピンコーティング方法、インクジェット方法、コンタクトプリンティング方法等が挙げられる。分散体の粘度が高い場合には、スクリーン印刷法等が好ましく、また分散体の粘度が低い場合には、インクジェット法等が好ましい。
金属酸化物分散体が流動可能な固体である場合には、分散体を別のキャリアフィルム上に塗布し、これを基板上に転写するという方法も用いることができる。
基板としては、無機及び有機基板いずれも使用可能である。無機基板としては、金属板、ガラス板、ITO(インジウム錫オキサイド)等のセラミック基板等を例示できる。有機基板としては、金属酸化物分散体の加熱処理温度において熱的な損傷を受けない限りにおいて制限はなく、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アラミド、エポキシ、等の基板を使用可能である。
分散体を基板上に塗布あるいは張り合わせした後に、基板を、金属酸化物微粒子を金属に還元するに充分な温度で加熱処理することによって基板上に金属薄膜を形成させる。得られる金属被膜が酸化されやすい場合には、非酸化性雰囲気中において加熱処理することが好ましい。非酸化性雰囲気とは酸素等の酸化性ガスを含まない雰囲気であり、不活性雰囲気と還元性雰囲気がある。不活性雰囲気とは、例えばアルゴン、ヘリウム、ネオンや窒素等の不活性ガスで満たされた雰囲気であり、また、還元性雰囲気とは、水素、一酸化炭素等の還元性ガスが存在する雰囲気を指す。これらのガス中には金属酸化物微粒子金属微粒子の酸化に寄与しない程度ならば酸素を含んでいてもかまわない。その際の酸素濃度は好ましくは2000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下である。これらのガスは焼成炉中に充填して密閉系として焼成してもよいし、あるいは焼成炉を流通系にしてこれらのガスを流しながらしてもよい。非酸化性雰囲気で焼成する場合には、焼成炉中を一旦真空に引いて焼成炉中の酸素を除去し、非酸化性ガスで置換するすることが好ましい。
これらの加熱処理における、好ましい加熱処理温度は50℃以上400℃以下、より好ましくは100℃以上300℃以下である。本発明の金属酸化物微粒子分散体はこの温度範囲で焼成して還元可能であるため、基板の耐熱性が比較的低くても、その上に金属薄膜や回路を形成することが可能である。
加熱処理に必要な時間は、金属酸化物微粒子の種類等によって影響を受ける。酸化第一銅を金属酸化物として用いた場合、塗膜がミクロンメートルオーダーの薄膜である場合であって、市販の窒素リフロー装置を用いて350℃程度の加熱処理温度を設定した場合には、10〜60分程度で充分である。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例中で用いている測定方法については次のとおりである。
(1)金属酸化物微粒子の一次粒径
カーボン蒸着された銅メッシュ上に、溶解・希釈した分散液を1滴たらし、減圧乾燥したサンプルを作成する。このサンプルを(株)日立製作所製透過型電子顕微鏡(JEM−4000FX)を用いて観察し、視野の中から、一次粒径が比較的そろっている個所を3ヶ所選択し、被測定物の粒径測定に最も適した倍率で撮影する。おのおのの写真から、一番多数存在すると思われる一次粒子を3点選択し、その直径をものさしで測り、粒倍率をかけて一次粒径を算出する。これらの値の平均値を一次粒径とする。
(2)金属薄膜の体積抵抗率
低抵抗率計「ロレスタ−(登録商標)」GP(三菱化学株式会社製)を用いて測定した。
[実施例1]
精製水60mlに無水酢酸銅(和光純薬工業(株)製)8gを加え、25℃で攪拌しながらヒドラジン1水和物(和光純薬工業(株)製)を加えてさらに10分間攪拌し、一次粒径が20nmである酸化第一銅微粒子を得た。この粒子は15〜25nmに分布をもつものであった。この酸化第一銅微粒子0.44gにジエチレングリコール0.4gとポリエチレングリコールメチルエーテル(平均分子量350、アルドリッチ社製)0.25gを加え、超音波分散を施して、酸化第一銅分散体を調整した。同分散体を、スライドガラス上に、長さ5cm、幅1cm、厚み20μmになるように塗布した。焼成炉に上記スライドガラスを入れ、炉内を真空ポンプで脱気した後、アルゴンガスを0.1リットル/分の流量で流した。焼成炉の温度を室温から350℃まで1時間かけて昇温し、350℃に到達後、この温度でさらに1時間加熱処理した。冷却後、厚み6μm、体積抵抗率が2.9×10−6Ωcmの銅被膜を得た。
[実施例2]
実施例1と同様の方法によって作成した酸化第一銅微粒子0.30gにジエチレングリコール0.30gとポリエチレングリコールメチルエーテル(平均分子量550、日本油脂(株)製)0.10gを加え、超音波分散を施して、酸化第一銅分散体を調整した。実施例1と同様の手法で焼成し、厚み6μm、体積抵抗率は、3.4×10−6Ωcmの銅被膜を得た。
[実施例3]
実施例1と同様の方法によって作成した酸化第一銅微粒子0.30gにジエチレングリコール0.30gとポリエチレングリコールメチルエーテル(平均分子量200、日本油脂(株)製)0.35gを加え、超音波分散を施して、酸化第一銅分散体を調整した。実施例1と同様の手法で焼成し、厚み6μm、体積抵抗率は、3.2×10−6Ωcmの銅被膜を得た。
[比較例1]
実施例1と同様の酸化第一銅微粒子0.46gにジエチレングリコール0.12gとポリエチレングリコール(平均分子量200、和光純薬工業(株)製)0.43gを加え、超音波分散を施して、酸化第一銅分散体を調整した。実施例1と同様の方法で、焼成して得た銅薄膜の厚みはは6μm、体積抵抗率は、5.0×10−6Ωcmであった。
[比較例2]
実施例1と同様の酸化第一銅微粒子0.42gにジエチレングリコール0.27gのみを加え、ポリエーテル化合物を加えずに超音波分散を施して、酸化第一銅分散体を調整した。これを実施例1と同じ条件で焼成した銅被膜は、厚み6μm、体積抵抗率は、2.0×10−5Ωcmであった。
[比較例3]
実施例1と同じ酸化第一銅微粒子0.47gにジエチレングリコール0.30gとポリエチレングリコールメチルエーテル(平均分子量800)0.23gを加え、超音波分散を施して、酸化第一銅分散体を調整した。実施例1と同様の方法で得た銅被膜は、厚み6μm、体積抵抗率は、1.0×10−4Ωcmであった。
[比較例4]
平均粒径2.8μmをもつ酸化第二銅粉末(和光純薬(株)製)0.5gとジエチレングリコール0.5g、及び、ポリエチレングリコ−ルメチルエーテル(平均分子量200)0.25gを、(株)キーエンス製攪拌脱泡機(HM−500)を用いて、攪拌モード10分、脱泡モード3分の条件で分散処理を行い、酸化第二銅分散体を得た。実施例1と同様の方法で加熱処理を行なったが、銅への還元が十分でない上、スライドガラス上に得られた被膜表面には微細な亀裂が多数発生した。
本発明により、安価な金属酸化物を原料に用い、かつ比較的低温での処理で、基板上に抵抗値の低い金属薄膜を形成することが可能である。金属酸化物分散体を基板上に塗布・積層する金属酸化物分散体の厚みを制御することによって、得られる金属層の膜厚を任意に制御することが可能であり、特に微細回路を形成する際に必要となる極薄の金属層を容易に形成できるという利点を有する。得られた基板−金属薄膜積層体は、実装分野における樹脂付き金属箔等の用途に好適に用いられる。
本発明の金属酸化物分散体が、特に好適に用いられるのは配線直描用途である。これはあらかじめ電気回路の形態に金属酸化物分散体を印刷・塗布し焼成することで、基板上に電気配線を直描することが可能であり、微細配線基板を安価に作れるという利点がある。配線直描の例としては、プラズマディスプレイパネルや液晶パネル等のフラットパネルディスプレイ製造におけるガラス基板上へのバス電極、アドレス電極の形成や、ポリイミド基板等の樹脂基板への配線回路形成等が挙げられる。

Claims (9)

  1. 多価アルコールと、少なくとも一つの末端がアルキル基である平均分子量が150〜600の直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物からなる混合物中に、一次粒径が100nm以下の金属酸化物微粒子が分散されている金属酸化物分散体。
  2. 直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物の、少なくとも一方の末端は炭素数1〜3のアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物分散体。
  3. 直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物がポリエチレングリコール及び/またはポリプロピレングリコールである請求項1または2に記載の金属酸化物分散体。
  4. 金属酸化物微粒子の一次粒径が、50nm以下であることを特徴とする、請求項1〜3いずれかに記載の金属酸化物分散体。
  5. 金属酸化物が、酸化銅または酸化銀である請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属酸化物分散体。
  6. 酸化銅が、酸化第一銅である請求項5に記載の金属酸化物分散体。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属酸化物分散体を基材上に塗布した後、加熱処理で金属酸化物微粒子を還元することからなる金属薄膜の製造方法。
  8. 加熱処理温度が50℃以上400℃以下である請求項7記載の金属薄膜の製造方法。
  9. 加熱処理を不活性雰囲気中で行うことを特徴とする、請求項67または8に記載の金属薄膜の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007087735A (ja) * 2005-09-21 2007-04-05 Asahi Kasei Corp 金属酸化物分散体
JP2012527759A (ja) * 2009-05-19 2012-11-08 クロメック リミテッド 半導体素子接点
WO2014017288A1 (ja) * 2012-07-24 2014-01-30 富士フイルム株式会社 導電膜形成用組成物および導電膜の製造方法
CN105551955A (zh) * 2016-02-23 2016-05-04 华南理工大学 氧化物薄膜的制备方法及其薄膜晶体管

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