JP2005218321A - 核酸単離方法及び核酸結合性担体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 単離される核酸の収率、純度及び品質を高めることが容易な核酸単離方法を提供する。さらに、核酸が酸化により損傷を受けるのを抑制することが容易な核酸結合性担体を提供する。
【解決手段】 核酸単離方法は、核酸を含有する試料と、核酸結合性担体と、カオトロピック塩を含む核酸結合用溶液とを混合することにより核酸を核酸結合性担体に結合させる結合工程と、核酸結合性担体に付着した核酸結合用溶液を洗浄する洗浄工程と、洗浄工程後の核酸結合性担体から核酸を溶出させる溶出工程とを備えている。結合工程は、核酸を核酸結合性担体に転写させる転写処理と、核酸結合性担体を核酸結合用溶液に浸漬させる浸漬処理とを行うのが好ましい。核酸結合性担体は抗酸化物質を含有している。抗酸化物質は亜硫酸塩が好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】 核酸単離方法は、核酸を含有する試料と、核酸結合性担体と、カオトロピック塩を含む核酸結合用溶液とを混合することにより核酸を核酸結合性担体に結合させる結合工程と、核酸結合性担体に付着した核酸結合用溶液を洗浄する洗浄工程と、洗浄工程後の核酸結合性担体から核酸を溶出させる溶出工程とを備えている。結合工程は、核酸を核酸結合性担体に転写させる転写処理と、核酸結合性担体を核酸結合用溶液に浸漬させる浸漬処理とを行うのが好ましい。核酸結合性担体は抗酸化物質を含有している。抗酸化物質は亜硫酸塩が好ましい。
【選択図】 なし
Description
本発明は、核酸を含有する試料から核酸を単離する核酸単離方法及びその方法に好適に用いられる核酸結合性担体に関するものである。
従来、この種の核酸単離方法としては、シリカ粒子等の核酸結合性担体とカオトロピック塩とを用いたものが挙げられる(例えば、特許文献1参照。)。この核酸単離方法は、カオトロピック塩を含む核酸結合用溶液を用いて核酸を核酸結合性担体に結合させる結合工程と、核酸結合性担体に付着した核酸結合用溶液を洗浄する洗浄工程と、洗浄工程後の核酸結合性担体から核酸を溶出させる溶出工程とを備えている。
特許第2680462号公報
ところが、従来の核酸単離方法における結合工程では、核酸結合性担体には核酸以外にもタンパク質、糖類、脂質、ポリフェノール等の夾雑物質が同時に付着する。核酸結合性担体に付着した夾雑物質は、結合工程後空気に曝されると、空気中の酸素により酸化されやすい。このとき、酸化された夾雑物質は核酸に対して共有結合等により結合され、引き続き実施される溶出工程でそれら核酸が核酸結合性担体から溶出されるのを阻害する。このため、従来の核酸単離方法では、核酸単離の効率、即ち核酸の収率が低いという問題があった。さらに、前記共有結合等により核酸と結合した夾雑物質は、溶出工程で核酸とともに溶出されることから、夾雑物質の混入による純度の低下が大きかった。加えて、核酸結合性担体に結合した核酸は、酸化によって分子構造の一部が変更され損傷を受けることから、品質の低下が大きかった。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、単離される核酸の収率、純度及び品質を高めることが容易な核酸単離方法を提供することにある。さらに、別の目的とするところは、核酸が酸化により損傷を受けるのを抑制することが容易な核酸結合性担体を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の核酸単離方法は、核酸を含有する試料から核酸を単離する方法であって、核酸を含有する試料と、核酸結合性担体と、カオトロピック塩を含む核酸結合用溶液とを混合することにより核酸を核酸結合性担体に結合させる結合工程と、前記核酸結合性担体に付着した核酸結合用溶液を洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程後の核酸結合性担体から核酸を溶出させる溶出工程とを備え、前記核酸結合性担体には抗酸化物質が含有されていることを要旨とする。
この方法によれば、核酸結合性担体は抗酸化物質により優れた抗酸化性を発揮するようになっていることから、核酸結合性担体に付着した夾雑物質の酸化が抑制される。よって、夾雑物質は、酸化反応を介した核酸との結合が起こりにくく、洗浄工程で核酸結合性担体から除去されやすいことから、核酸の溶出が阻害されず、核酸単離の収率が高められる。さらに、核酸単離方法は、結合工程で核酸と夾雑物質との反応が起こりくくなっており、夾雑物質が洗浄工程で効率的に除去されることから、溶出工程で夾雑物質が混入しにくく、単離される核酸の純度が高められる。加えて、核酸単離方法は、核酸結合性担体に結合した核酸の酸化を抑制することから、単離の過程で核酸の損傷が起こりにくい。よって、単離される核酸の品質が高められる。
請求項2に記載の発明の核酸単離方法は、請求項1に記載の発明において、前記抗酸化物質が亜硫酸塩であることを要旨とする。
この方法によれば、核酸結合性担体には、空気中で極めて安定な性質を持つ亜硫酸塩が含有されている。このため、核酸結合性担体は、核酸及び夾雑物質の酸化を長期間にわたって効果的に抑制する。特に、洗浄工程前の核酸結合性担体に保持されている試料の保存性に優れている。
この方法によれば、核酸結合性担体には、空気中で極めて安定な性質を持つ亜硫酸塩が含有されている。このため、核酸結合性担体は、核酸及び夾雑物質の酸化を長期間にわたって効果的に抑制する。特に、洗浄工程前の核酸結合性担体に保持されている試料の保存性に優れている。
請求項3に記載の発明の核酸単離方法は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記結合工程は、前記試料中の核酸を核酸結合性担体に転写させる転写処理と、核酸が転写された核酸結合性担体を前記核酸結合用溶液に浸漬させる浸漬処理とを行う工程であることを要旨とする。
この方法によれば、核酸を核酸結合性担体に転写させる作業と、核酸結合性担体に結合させる作業とを時間をずらして別々に行うことができることから、核酸単離の作業性が容易に高められる。
請求項4に記載の発明の核酸結合性担体は、核酸を結合させるための核酸結合性担体であって、抗酸化物質を含有することを要旨とする。
この核酸結合性担体は、抗酸化物質により優れた抗酸化性を発揮することから、結合されるべき核酸の酸化変性を抑制する。このため、核酸が酸化により損傷を受けるのが容易に抑制される。
この核酸結合性担体は、抗酸化物質により優れた抗酸化性を発揮することから、結合されるべき核酸の酸化変性を抑制する。このため、核酸が酸化により損傷を受けるのが容易に抑制される。
本発明の核酸単離方法によれば、単離される核酸の収率、純度及び品質を高めることが容易である。本発明の核酸結合性担体によれば、核酸が酸化により損傷を受けるのを抑制することが容易である。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
実施形態の核酸単離方法は、核酸を含有する試料(以下、核酸含有試料という。)から核酸を単離するものである。即ち、この核酸単離方法は、核酸含有試料中の核酸を核酸結合性担体に結合させる結合工程を行った後、該核酸結合性担体に付着している核酸以外の夾雑物質を洗浄する洗浄工程を行い、引き続き該核酸結合性担体から核酸を溶出させる溶出工程を行うことにより、核酸含有試料中の核酸を単離するようになっている。この核酸単離方法では、核酸結合性担体に高い抗酸化性を付与することにより、単離される核酸の収率、純度及び品質が容易に高められるようになっている。
実施形態の核酸単離方法は、核酸を含有する試料(以下、核酸含有試料という。)から核酸を単離するものである。即ち、この核酸単離方法は、核酸含有試料中の核酸を核酸結合性担体に結合させる結合工程を行った後、該核酸結合性担体に付着している核酸以外の夾雑物質を洗浄する洗浄工程を行い、引き続き該核酸結合性担体から核酸を溶出させる溶出工程を行うことにより、核酸含有試料中の核酸を単離するようになっている。この核酸単離方法では、核酸結合性担体に高い抗酸化性を付与することにより、単離される核酸の収率、純度及び品質が容易に高められるようになっている。
単離される核酸は、ウイルス病等の作物病害に対する遺伝子診断、RAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)解析によるDNA多型検出や連鎖解析、形質転換体における導入遺伝子の検出等に用いられる。核酸としてはデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)が挙げられる。さらに、核酸としてはDNA単独又はRNA単独からなるもの、又は1本鎖DNAにハイブリダイズした一本鎖RNA等のDNA及びRNA両方からなるものが挙げられる。DNAとしてはゲノムDNA、cDNA、プラスミドDNA等が挙げられ、RNAとしてはmRNA、rRNA又はtRNAが挙げられる。核酸の立体構造としては2本鎖状や1本鎖状の他に、線状、環状等が挙げられる。
前記核酸含有試料としては、植物体や動物体等の生体組織の一部、植物体の組織液、動物体の体液、細胞培養液、微生物、それらの培養液、ウイルスや細菌等に汚染された土壌、食品、汚水等が挙げられる。また、PCR反応の増幅産物のように酵素反応によって合成された核酸を含有するものであってもよい。この核酸含有試料は、通常、核酸以外にもタンパク質、糖類、脂質、ポリフェノール等の夾雑物質が含有されている。
前記核酸結合性担体は、シート状等の所定形状をなす担体本体と、その担体本体に担持される抗酸化物質とを備えてなり、核酸との結合性を有するとともに抗酸化性を発揮するようになっている。前記担体本体は、カオトロピック塩の存在下で核酸と疎水結合するようになっている。担体本体の形状としてはシート状、粉末状、粒子状等が挙げられるが、取扱いが容易なためにシート状であるのが好ましい。シート状をなす担体本体としては、ガラス繊維により形成されたガラス繊維濾紙等が挙げられる。
核酸との結合性は、担体本体の材質により発揮される。担体本体の材質としては、二酸化ケイ素(SiO2)、即ちシリカを主成分とするものの他に、セルロース、ニトロセルロース、ラテックス、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。これらの中でも、核酸との結合性が優れているために、シリカを主成分とするものが好ましい。シリカを主成分とするものとしてはガラス、珪藻土等が挙げられる。ここで、シリカを主成分とするとは、シリカを50質量%以上含有することをいう。
一方、抗酸化性は、核酸結合性担体が抗酸化物質を含有することにより発揮される。抗酸化物質としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸(ビタミンC)、β−メルカプトエタノール、ジチオトレイトール(DTT)等が挙げられる。これらの中でも、空気中で極めて安定な性質を持つ亜硫酸塩が好ましい。亜硫酸塩を含有する核酸結合性担体は、核酸及び夾雑物質の酸化を長期間にわたって効果的に抑制する。亜硫酸塩としてはナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、トリエタノールアミン塩等のアミン塩等が挙げられる。
核酸結合性担体は、前記担体本体を好ましくは乾燥状態で、抗酸化物質を含有する抗酸化溶液に浸漬させた後に乾燥させることにより作製される。このとき、核酸結合性担体は、前記一連の作業によって担体本体の表面に抗酸化物質が担持される。抗酸化溶液は、好ましくは、抗酸化物質が水やトリス−塩酸緩衝液(pH6〜8)等の緩衝液に溶解されることにより調製される。抗酸化溶液中の抗酸化物質の含有量は1〜10質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましく、5〜10質量%が最も好ましい。抗酸化物質の含有量が1質量%未満では、核酸結合性担体は抗酸化物質の含有量が不十分となり、優れた抗酸化性を発揮するのが困難になるおそれが高い。逆に10質量%を超えると不経済である。
結合工程は、前記核酸含有試料と、核酸結合性担体と、カオトロピック塩を含む核酸結合用溶液とを混合することにより、核酸含有試料中の核酸を核酸結合性担体に結合させる工程である。この結合工程では、カオトロピック塩の存在により、核酸含有試料中の核酸が核酸結合性担体に強固に結合される。尚このとき、核酸含有試料中の夾雑物質は、カオトロピック塩の存在下では、前記核酸と核酸結合性担体との結合よりも弱い結合により核酸結合性担体に保持(付着)される。
カオトロピック塩は、ヨウ素イオン等のイオン半径が大きい1価の陰イオンを含む塩のことである。カオトロピック塩は、核酸を核酸結合性担体に疎水結合させる作用以外にも、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)等のタンパク質の高次構造を変更して変性させる作用を有しており、核酸結合性担体に結合された核酸の分解を抑える効果も発揮する。カオトロピック塩としては、グアニジン塩酸塩、グアニジンチオシアン酸塩、尿素、ヨウ化ナトリウム等が挙げられ、タンパク質の変性作用が強いことからグアニジン塩酸塩やグアニジンチオシアン酸塩が好適に用いられる。これらカオトロピック塩は単独で用いてもよいし、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。
核酸結合用溶液は、カオトロピック塩が水やトリス−塩酸緩衝液(pH6〜8)等の緩衝液に溶解されることにより調製される。核酸結合用溶液中のカオトロピック塩の含有量は5〜7mol/L(5〜7M)が好ましい。カオトロピック塩の含有量が5M未満では、核酸が核酸結合性担体に疎水結合しにくく、逆に7Mを超えると核酸結合用溶液中にカオトロピック塩が析出するおそれが高い。
この結合工程は、核酸含有試料と核酸結合性担体とを接触させることにより核酸含有試料中の核酸を核酸結合性担体に転写させる転写処理と、転写後の核酸結合性担体を核酸結合用溶液に浸漬させて核酸結合性担体に核酸を疎水結合させる浸漬処理とを行うのが好ましい。このとき、前記転写処理と浸漬処理とは、時間的に連続して実施される必要がなく、ずらして別々に実施できることから、例えば野外での核酸含有試料の採取を行った後、屋内でまとめて核酸の単離作業を行うことができるという利点を有している。
転写処理は、核酸を含有する試料液(以下、核酸含有試料液という。)を核酸結合性担体に付着させることにより行われる。核酸含有試料液は、核酸含有試料が液状をなすときには核酸含有試料そのものを用いるのが便利である。このとき、核酸含有試料は水や緩衝液等の溶媒により希釈されてもよいし、逆に濃縮されてもよい。一方、核酸含有試料が固体状をなすときには、核酸含有試料液は核酸含有試料の圧壊や圧搾(核酸結合性担体の表面に対して核酸含有試料を押し付ける)等により得られる液体から構成される。また、核酸含有試料液は、核酸含有試料を水等の溶媒に溶解又は懸濁させることにより得られる液体から構成されていてもよい。これらの核酸含有試料液は、通常、核酸以外にも夾雑物質を含有している。
転写処理では、核酸結合性担体上で核酸含有試料を押し潰す等の圧搾を行うことにより核酸含有試料液を核酸結合性担体に付着させるのが好ましい。このとき、転写処理は、載置作業と、圧搾作業とが行われる。載置作業は、例えば、ガラス繊維濾紙等のシート状をなす核酸結合性担体上に植物体の葉等の核酸含有試料を載置する作業である。圧搾作業は、前記核酸含有試料を核酸結合性担体上で押し潰す作業である。そして、この圧搾作業により、押し潰された核酸含有試料から核酸含有試料液が滲出してそのまま核酸結合性担体に付着(転写)させる。
浸漬処理は、核酸が転写された核酸結合性担体を核酸結合用溶液に浸漬させる処理であり、核酸結合性担体上に転写された核酸を、カオトロピック塩の存在下で核酸結合性担体に疎水結合させる。さらに、この浸漬工程では、核酸を核酸結合性担体に疎水結合させた後、核酸結合性担体と核酸結合用溶液とを分離する固液分離処理が行われる。固液分離処理では、核酸結合用溶液を効率的に取り除くために遠心分離等が行われる。尚、固液分離処理後の核酸結合性担体には、分離しきれなかった極微量の核酸結合用溶液が付着している。
洗浄工程は、前記分離しきれなかった極微量の核酸結合用溶液を核酸結合性担体から除去するために該核酸結合性担体を洗浄する工程である。洗浄液としては、核酸と核酸結合性担体との間の疎水結合を阻害しない溶液により構成されており、カオトロピック塩は含まれていない。この洗浄液としては、水性アルコールと水とを含むアルコール系緩衝液が好適に用いられ、水性アルコール、水及び塩(カオトロピック塩は除く)を含むアルコール系緩衝液が特に好適に用いられる。
水性アルコールとは、水に対する溶解性が高いアルコールのことをいう。水性アルコールとしてはメタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールが挙げられ、エタノールが好ましい。洗浄液中の水性アルコールの含有量は60〜80体積%が好ましい。水性アルコールの含有量が60体積%未満では、核酸と核酸結合性担体との疎水結合が切断されやすくなり、核酸結合性担体から核酸が除去されるおそれが高い。逆に80体積%を超えると、洗浄液中の塩が析出するおそれが高い。
前記塩としては、通常の核酸の洗浄に用いられるような塩が用いられ、塩化ナトリウムが代表例として挙げられる。洗浄液中の塩の含有量は100〜300mMが好ましく、150〜250mMがより好ましい。塩の含有量が100mM未満では、核酸と核酸結合性担体との疎水結合が切断されやすくなる。逆に300mMを超えると、洗浄工程後の溶出工程において、核酸とともに多量の塩が回収されることから好ましくない。
この洗浄工程の最終段階では、前記塩を含まない70体積%エタノール水溶液により最終洗浄するのが好ましい。また、この洗浄工程では、必要に応じて、核酸結合性担体を風乾等により乾燥するとよい。ここで、風乾は、遮光雰囲気下で核酸結合性担体を空気中に放置することにより行われるとよい。
溶出工程は、洗浄工程後の核酸結合性担体から核酸を溶出させる工程である。この溶出工程は、洗浄後の核酸結合性担体を核酸溶出液に浸漬させることにより、該核酸溶出液中に核酸を溶出させて回収する処理である。核酸溶出液としては、核酸と核酸結合性担体との間の疎水結合を切断する溶液により構成されており、水やTE緩衝液(10mM トリス−塩酸[pH8.0]、1mM EDTA−Na2)等の水系緩衝液が挙げられる。この水系緩衝液には、前記水性アルコールは含まれていない。
実施形態の核酸単離用キットは前記核酸単離方法等の核酸含有試料から核酸を単離する方法に用いられ、抗酸化物質を含有する核酸結合性担体と、カオトロピック塩を含む核酸結合用溶液とを備えている。この核酸単離用キットは、前記核酸単離方法に用いられるときには、さらに前記洗浄液や前記核酸溶出液を備えてもよい。
次に、前記核酸単離方法の作用について説明する。
さて、例えばウイルス病が発症している植物体の遺伝子診断を行うときには、図1に示すように、植物体から核酸含有試料としての葉20を採取する。次いで、採取された葉20に対し結合工程を実施する。具体的には、葉20に転写処理及び浸漬処理を施す。転写処理では、野外での葉20採取現場において、載置作業として採取した葉20を、抗酸化物質を含有する核酸結合性担体としてのガラス繊維濾紙21上に載置した後、葉20上に保護部材としてのポリエチレンフィルム22を載置する。
さて、例えばウイルス病が発症している植物体の遺伝子診断を行うときには、図1に示すように、植物体から核酸含有試料としての葉20を採取する。次いで、採取された葉20に対し結合工程を実施する。具体的には、葉20に転写処理及び浸漬処理を施す。転写処理では、野外での葉20採取現場において、載置作業として採取した葉20を、抗酸化物質を含有する核酸結合性担体としてのガラス繊維濾紙21上に載置した後、葉20上に保護部材としてのポリエチレンフィルム22を載置する。
次いで、ポリエチレンフィルム22に対し葉20を押し潰す方向に荷重を加え、ガラス繊維濾紙21上で葉20を押し潰す。押し潰された葉20からは、葉20の組織を構成する細胞の細胞壁等が圧壊されることにより、核酸含有試料液としての細胞液23が滲出する。この細胞液23は、核酸とタンパク質等の夾雑物質とを含有している。そして、葉20から滲出した細胞液23がガラス繊維濾紙21に付着することにより、細胞液23中の核酸がガラス繊維濾紙21に転写される。このとき、ガラス繊維濾紙21には、核酸以外にも細胞液23中の夾雑物質が同時に転写される。
細胞液23をガラス繊維濾紙21に付着させた後、ポリエチレンフィルム22及び細胞液23が滲出した後の葉20の残さをガラス繊維濾紙21から除去する。このとき、ガラス繊維濾紙21に転写された核酸及び夾雑物質は、ガラス繊維濾紙21に付着した状態でガラス繊維濾紙21に保持されている。さらに、核酸単離は通常空気中で行われるために、核酸及び夾雑物質は空気に曝されている。ここで、ガラス繊維濾紙21は抗酸化物質により優れた抗酸化性を発揮するようになっているために、空気に曝された核酸及び夾雑物質の酸化を抑制する。
上記転写処理を複数の葉20に対して行った後に各ガラス繊維濾紙21をまとめ、それらに対し屋内において浸漬処理を施す。具体的には、浸漬処理として、ガラス繊維濾紙21において細胞液23が付着した部分の一部を切出し、切出されたガラス繊維濾紙21の切片21aをマイクロチューブ24に入れる。次いで、核酸結合用溶液25をマイクロチューブ24内に加え、切片21aを核酸結合用溶液25に浸漬させる。このとき、核酸は、カオトロピック塩の存在下でガラス繊維濾紙21に疎水結合して保持される。一方、夾雑物質は、核酸とガラス繊維濾紙21との結合よりも弱い結合によりガラス繊維濾紙21に保持される。切片21aを核酸結合用溶液25に浸漬させた後、遠心分離により切片21aと核酸結合用溶液25とを分離しマイクロチューブ24内から核酸結合用溶液25を除去する。このとき、ガラス繊維濾紙21には、固液分離処理によって分離しきれなかった核酸結合用溶液25が付着している。
続いて、結合工程後のガラス繊維濾紙21に洗浄工程を施す。具体的には、切片21aが入っているマイクロチューブ24内に洗浄液を加え、切片21aを洗浄液に浸漬させる。このとき、ガラス繊維濾紙21からは、核酸結合用溶液25が除去される。さらにガラス繊維濾紙21からは、夾雑物質が洗浄液によって遊離して除去される。ここで、ガラス繊維濾紙21に結合した核酸は、洗浄液によって除去されることなくガラス繊維濾紙21に結合したままである。切片21aを洗浄液に浸漬させた後、遠心分離により切片21aと洗浄液とを分離しマイクロチューブ24内から洗浄液を除去する。次いで、洗浄液が水性アルコールを含有しているときには、切片21aに付着した洗浄液中の水性アルコールを蒸発させるために、マイクロチューブ24内で切片21aを風乾する。
続いて、洗浄工程後のガラス繊維濾紙21に溶出工程を施す。具体的には、切片21aが入っているマイクロチューブ24内に核酸溶出液を加え、切片21aを核酸溶出液に浸漬させる。このとき、ガラス繊維濾紙21に保持されている核酸は、ガラス繊維濾紙21との疎水結合が切断され核酸溶出液中に溶出する。切片21aを核酸溶出液に浸漬させた後、遠心分離により切片21aと核酸溶出液とを分離しマイクロチューブ24内から核酸溶出液を取出して別のマイクロチューブ24内に移す。この固液分離により、核酸26を含有する核酸溶出液からなる核酸溶液27を得る。そして、核酸溶液27を用いたPCR法等の遺伝子増幅法によりウイルス由来の遺伝子の存在を確認し、植物体の遺伝子診断を行う。
前記の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 実施形態の核酸結合性担体は、抗酸化物質により優れた抗酸化性を発揮することから、結合工程により保持した夾雑物質の酸化を抑制することができる。このため、夾雑物質は、酸化を介した核酸との結合が起こりにくく、洗浄工程で核酸結合性担体から効率的に除去される。よって、核酸単離方法は、溶出工程において核酸の溶出が夾雑物質により阻害されず、単離される核酸の収率が高められる。
・ 実施形態の核酸結合性担体は、抗酸化物質により優れた抗酸化性を発揮することから、結合工程により保持した夾雑物質の酸化を抑制することができる。このため、夾雑物質は、酸化を介した核酸との結合が起こりにくく、洗浄工程で核酸結合性担体から効率的に除去される。よって、核酸単離方法は、溶出工程において核酸の溶出が夾雑物質により阻害されず、単離される核酸の収率が高められる。
さらに、夾雑物質は、核酸と核酸結合性担体との結合よりも弱い結合により核酸結合性担体に保持され、洗浄液により核酸結合性担体から容易に除去される。このため、核酸単離方法は、夾雑物質が洗浄工程で効率的に除去されるために、溶出工程で溶出される核酸に夾雑物質が混入しにくく、単離される核酸の純度が高められる。加えて、核酸単離方法は、核酸結合性担体に保持される核酸の酸化が核酸結合性担体により抑制されているために、単離の過程で核酸の損傷が起こりにくい。特に、長い核酸を単離する際には、全長にわたって損傷がほとんど起きていない核酸を単離するのが容易である。このため、核酸単離方法は、単離される核酸の品質が高められる。
・ 抗酸化物質として亜硫酸塩を用いる場合には、核酸結合性担体は、核酸及び夾雑物質の酸化を長期間にわたって効果的に抑制することができる。特に、洗浄工程前における核酸及び夾雑物質の酸化を抑制することができる。このため、核酸結合性担体は、核酸及び夾雑物質を保持した状態で30日等の長期間にわたって保存することができ、保存性に優れている。
・ 結合工程では、転写処理と浸漬処理とが行われるのが好ましい。ここで、核酸結合性担体は抗酸化物質により優れた抗酸化性を発揮することから、転写処理後及び浸漬処理後の各処理後において核酸及び夾雑物質の酸化を効果的に抑制する。このため、核酸単離方法は、転写処理及び浸漬処理を時間をずらして別々に行うことができる。よって、核酸単離方法は、結合工程での作業の利便性が高められ、核酸単離の作業性が容易に高められる。ここで、転写処理及び浸漬処理を別々に行うときには、転写処理後の核酸結合性担体を風乾等により乾燥させるのが好ましい。このとき、DNaseは乾燥により失活しやすいことから、核酸結合性担体に転写される核酸の分解が容易に抑制される。
・ 核酸結合性担体はガラス繊維濾紙等のシート状が好ましい。この場合には、例えば葉をガラス繊維濾紙上で押し潰すだけで、核酸含有試料中の核酸を核酸結合性担体に転写することができる。このため、核酸結合性担体に核酸を転写するために核酸含有試料を予め破砕する等の必要がなく、転写処理の作業性が高められる。
<核酸結合性担体の長期保存に関する試験>
(試験例1〜3及び比較例1)
試験例1では、まず結合工程の転写処理を行った。即ち、載置作業として、核酸含有試料としてのトマト葉(縦5mm、横5mm)を核酸結合性担体としてのガラス繊維濾紙(ADVANTEC社製のGA-55)上に載置した後、トマト葉上にポリエチレンフィルムを載置した。ここで、ガラス繊維濾紙は、抗酸化溶液としての亜硫酸ナトリウム含有緩衝液(20mM トリス−塩酸 [pH8.0]、2mM EDTA-Na2、亜硫酸ナトリウムの含有量:1質量%)中に浸漬した後に風乾させたものを用いた。次いで、載置作業の後、圧搾作業として、ポリエチレンフィルムを介してトマト葉をガラス繊維濾紙上で押し潰し、トマト葉から滲出した核酸含有試料液としての細胞液をガラス繊維濾紙に付着させた。
(試験例1〜3及び比較例1)
試験例1では、まず結合工程の転写処理を行った。即ち、載置作業として、核酸含有試料としてのトマト葉(縦5mm、横5mm)を核酸結合性担体としてのガラス繊維濾紙(ADVANTEC社製のGA-55)上に載置した後、トマト葉上にポリエチレンフィルムを載置した。ここで、ガラス繊維濾紙は、抗酸化溶液としての亜硫酸ナトリウム含有緩衝液(20mM トリス−塩酸 [pH8.0]、2mM EDTA-Na2、亜硫酸ナトリウムの含有量:1質量%)中に浸漬した後に風乾させたものを用いた。次いで、載置作業の後、圧搾作業として、ポリエチレンフィルムを介してトマト葉をガラス繊維濾紙上で押し潰し、トマト葉から滲出した核酸含有試料液としての細胞液をガラス繊維濾紙に付着させた。
前記細胞液を付着させた直後のガラス繊維濾紙、又は付着後5、15又は30日間空気中で風乾したガラス繊維濾紙の一部(縦2.5mm、横2.5mm)を切出し、切出されたガラス繊維濾紙の切片を1.5mlマイクロチューブ内に入れた。次に、浸漬処理として、マイクロチューブ内に核酸結合用溶液(100mM トリス−塩酸 [pH8.0]、10mM EDTA-Na2、7M グアニジン塩酸塩)200μlを加え5分間静置した後、遠心分離により切片と核酸結合用溶液とを分離し、核酸結合用溶液をマイクロチューブ内から除去した。
続いて、結合工程後の洗浄工程として、マイクロチューブ内に洗浄液(50mM トリス−塩酸 [pH8.0]、5mM EDTA-Na2、200mM NaCl、60体積%エタノール)200μlを加え5分間静置し、遠心分離により切片と洗浄液とを分離して洗浄液をマイクロチューブ内から除去した。この除去処理を2回繰返した後、マイクロチューブ内に70体積%エタノール水溶液200μlを加え5分間静置し、遠心分離により切片と70体積%エタノール水溶液とを分離して70体積%エタノール水溶液をマイクロチューブ内から除去した。次いで、切片を10分間風乾し、切片に付着した70体積%エタノール水溶液を蒸発させた。
続いて、洗浄工程後の溶出工程として、核酸溶出液(TE緩衝液)100μlをマイクロチューブ内に加え5分間静置した。次いで、遠心分離により切片と核酸溶出液とを分離し、核酸溶出液をマイクロチューブ内から取出し別のマイクロチューブ内に移して核酸溶液を得た。
試験例2では亜硫酸ナトリウム含有緩衝液中の亜硫酸ナトリウムの含有量を5質量%に変更し、試験例3では亜硫酸ナトリウム含有緩衝液中の亜硫酸ナトリウムの含有量を10質量%に変更した以外は試験例1と同様にして核酸溶液を得た。一方、比較例1では、ガラス繊維濾紙を亜硫酸ナトリウム含有緩衝液中に浸漬させない以外は、試験例1と同様にして核酸溶液を得た。
次いで、各例の核酸溶液2μlを用いてPCR反応を行うことにより、各例で単離された核酸の確認をそれぞれ行った。ここで、PCR反応には、配列番号1及び2で表される塩基配列からなり、リブロースビスリン酸カルボキシラーゼの大サブユニット遺伝子(rbcL)を増幅する一対のPCRプライマーを用いた。このrbcLを増幅する一対のPCRプライマーによるPCR増幅産物は、トマト由来のDNAの存在を示す。PCR増幅産物の電気泳動パターンを図2に示す。
図2に示すように、各試験例は、核酸結合性担体が付着後5日間、15日間又は30日間空気中で風乾されたときにもPCR増幅産物を検出することができた。このため、本実施形態の核酸単離方法は、転写後核酸結合性担体が30日間の長期間にわたって空気雰囲気下で乾燥されたときにも、PCR反応の鋳型として用いることができるだけの量の核酸をトマト葉から単離することができた。
<各植物体からの核酸単離に関する試験>
実施例2では、核酸含有試料としてシロイヌナズナ、ソラマメ、タバコ、イネ又はバラの葉(縦5mm、横5mm)を用いた以外は、実施例1の試験例3と同様にして核酸溶液を得た。ここで、核酸結合性担体は付着後5日間空気中で風乾した。一方、コントロールとして、シロイヌナズナ、ソラマメ、タバコ、イネ又はバラの葉(縦5mm、横5mm)から植物DNA抽出用試薬キット(ニッポンジーン社製のISOPLANT)を用い、該キットのプロトコールに従って核酸溶液を得た。
実施例2では、核酸含有試料としてシロイヌナズナ、ソラマメ、タバコ、イネ又はバラの葉(縦5mm、横5mm)を用いた以外は、実施例1の試験例3と同様にして核酸溶液を得た。ここで、核酸結合性担体は付着後5日間空気中で風乾した。一方、コントロールとして、シロイヌナズナ、ソラマメ、タバコ、イネ又はバラの葉(縦5mm、横5mm)から植物DNA抽出用試薬キット(ニッポンジーン社製のISOPLANT)を用い、該キットのプロトコールに従って核酸溶液を得た。
次いで、実施例2及びコントロールの核酸溶液2μlを用いたRAPD-PCR反応により、単離された核酸の確認をそれぞれ行った。ここで、RAPD-PCR反応には、配列番号3で表される塩基配列からなるRAPDプライマー(BEX社製のA02)、配列番号4で表される塩基配列からなるRAPDプライマー(BEX社製のA06)又は配列番号5で表される塩基配列からなるRAPDプライマー(BEX社製のA87)を用いた。各RAPDプライマーによるRAPD-PCR増幅産物は、各植物体由来のDNAの存在を示す。実施例2のRAPD-PCR増幅産物の電気泳動パターンを図3に示し、コントロールのRAPD-PCR増幅産物の電気泳動パターンを図4に示す。尚、図3及び図4において、レーン1〜15の凡例の括弧内の記載は、RAPDプライマーの種類を示す。
図3及び図4に示すように、実施例2は、各植物体に対して、植物DNA抽出用試薬キットを用いたときと同様にRAPD-PCR反応の鋳型として用いることができるだけの量の核酸を単離することができた。このため、本実施形態の核酸単離方法は、核酸含有試料を限定することなく各種植物体から核酸を単離することができた。
<ウイルスの核酸単離に関する試験>
実施例3では、トマト黄化葉巻ウイルス(Tomato Yellow Leaf Curl Virus;TYLCV)に感染されたトマト葉(縦5mm、横5mm)を核酸含有試料として用いた以外は、実施例1の試験例3と同様にして核酸溶液を得た。一方、コントロールとして、TYLCVに感染されていないトマト葉(縦5mm、横5mm)を核酸含有試料として用いた以外は、実施例3と同様にして核酸溶液を得た。ここで、核酸結合性担体は付着後5日間空気中で風乾した。尚、試験体数は4個で行った。
実施例3では、トマト黄化葉巻ウイルス(Tomato Yellow Leaf Curl Virus;TYLCV)に感染されたトマト葉(縦5mm、横5mm)を核酸含有試料として用いた以外は、実施例1の試験例3と同様にして核酸溶液を得た。一方、コントロールとして、TYLCVに感染されていないトマト葉(縦5mm、横5mm)を核酸含有試料として用いた以外は、実施例3と同様にして核酸溶液を得た。ここで、核酸結合性担体は付着後5日間空気中で風乾した。尚、試験体数は4個で行った。
次いで、実施例3及びコントロールの核酸溶液2μlを用いたPCR反応により、単離された核酸の確認をそれぞれ行った。ここで、PCR反応には、配列番号1及び2で表される塩基配列からなる一対のPCRプライマーと、配列番号6及び7で表される塩基配列からなり、TYLCVのコートタンパク質遺伝子を増幅する一対のPCRプライマーとを混合して用いた。TYLCVのコートタンパク質遺伝子を増幅する一対のPCRプライマーによるPCR増幅産物は、TYLCV由来のDNAの存在を示す。PCR増幅産物の電気泳動パターンを図5に示す。尚、図5において、レーン1〜8の凡例の括弧内の記載は、試験体の番号を示す。
図5に示すように、実施例3は、rbcLを増幅する一対のPCRプライマーによる増幅産物(図5の高分子量側)と、TYLCVのコートタンパク質遺伝子を増幅する一対のPCRプライマーによる増幅産物(図5の低分子量側)との2つの増幅産物を検出することができた。このため、本実施形態の核酸単離方法は、被感染株に含有される極微量のウイルス遺伝子を、PCR反応の鋳型として用いることができる量まで単離することができた。
<単離された核酸の損傷に関する試験>
(試験例4〜6)
試験例4では、核酸含有試料としてタバコの葉(縦5mm、横5mm)を用いた以外は、実施例1の試験例3と同様にして核酸溶液を得た。ここで、核酸結合性担体は付着後5日間空気中で風乾した。一方、コントロールとして、タバコの葉(縦5mm、横5mm)から植物DNA抽出用試薬キット(ニッポンジーン社製のISOPLANT)を用い、該キットのプロトコールに従って核酸溶液を得た。次いで、試験例4及びコントロールの核酸溶液2μlを用いたLong PCR反応により、単離された核酸の確認をそれぞれ行った。
(試験例4〜6)
試験例4では、核酸含有試料としてタバコの葉(縦5mm、横5mm)を用いた以外は、実施例1の試験例3と同様にして核酸溶液を得た。ここで、核酸結合性担体は付着後5日間空気中で風乾した。一方、コントロールとして、タバコの葉(縦5mm、横5mm)から植物DNA抽出用試薬キット(ニッポンジーン社製のISOPLANT)を用い、該キットのプロトコールに従って核酸溶液を得た。次いで、試験例4及びコントロールの核酸溶液2μlを用いたLong PCR反応により、単離された核酸の確認をそれぞれ行った。
ここで、Long PCR反応には、配列番号8及び9で表される塩基配列からなり、rbcLからチトクロームb/f複合体サブユニットV遺伝子の領域(10,945bp)を増幅する一対のPCRプライマー(rbcL-petG)を用いた。また、配列番号10及び11で表される塩基配列からなり、リボソームタンパクS4遺伝子(rps4)からrbcLの領域(11,428bp)を増幅する一対のPCRプライマー(rps4-rbcL)を用いた。各PCRプライマーによるLong PCR増幅産物は、タバコ由来のDNAの存在を示す。Long PCR増幅産物の電気泳動パターンを図6(a)に示す。
試験例5では核酸結合性担体を付着後15日間空気中で風乾させ、試験例6では核酸結合性担体を付着後30日間空気中で風乾させた以外は、試験例4と同様にして核酸溶液を得た。そして、実施例4〜6の核酸溶液2μlを用いたLong PCR反応により、単離された核酸の確認をそれぞれ行った。ここで、Long PCR反応には、前記配列番号10及び11で表される塩基配列からなる一対のPCRプライマー(rps4-rbcL)を用いた。Long PCR増幅産物の電気泳動パターンを図6(b)に示す。尚、図6(a)及び(b)において、レーン1〜7の凡例の括弧内の記載は、PCRプライマーの種類を示す。
図6(a)に示すように、試験例4は、植物DNA抽出用試薬キットを用いたときと同様に長鎖のPCR増幅産物を検出することができた。さらに、図6(b)に示すように、転写処理後核酸結合性担体が5日間、15日間又は30日間空気中で風乾されたときにも、長鎖のPCR増幅産物を検出することができた。ここで、Long PCR反応は、鋳型となる核酸が酸化等により損傷を受けているときには長鎖の増幅産物を得るのが困難である。このため、本実施形態の核酸単離方法は、転写後核酸結合性担体が30日間の長期間にわたって空気雰囲気下で乾燥されたときにも、核酸を単離する過程で核酸が損傷を受けるのを抑制し、Long PCR反応の鋳型として用いることができるほどの高品質の核酸を単離することができた。
尚、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 核酸結合性担体の表面に磁性金属酸化物等を担持させてもよい。核酸結合性担体の表面に磁性金属酸化物を担持させたときには、固液分離処理において、極性を利用することにより、遠心分離を用いなくても核酸結合性担体及び核酸結合用溶液の分離等の固液分離を容易に行うことができる。
・ 核酸結合性担体の表面に磁性金属酸化物等を担持させてもよい。核酸結合性担体の表面に磁性金属酸化物を担持させたときには、固液分離処理において、極性を利用することにより、遠心分離を用いなくても核酸結合性担体及び核酸結合用溶液の分離等の固液分離を容易に行うことができる。
・ 核酸結合性担体を、前記核酸単離方法以外にもDNAチップやRNAチップ等の担体として用いてもよい。この場合にも、核酸結合性担体に結合された核酸の酸化による損傷を抑制することができる。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記転写処理は、シート状をなす核酸結合性担体上に前記試料を載置する載置作業と、核酸結合性担体上で試料を押し潰す圧搾作業とを行う処理である請求項3に記載の核酸単離方法。この構成によれば、試料中の核酸を核酸結合性担体に容易に転写させることができる。
・ 前記転写処理は、シート状をなす核酸結合性担体上に前記試料を載置する載置作業と、核酸結合性担体上で試料を押し潰す圧搾作業とを行う処理である請求項3に記載の核酸単離方法。この構成によれば、試料中の核酸を核酸結合性担体に容易に転写させることができる。
・ 核酸を含有する試料から核酸を単離するための核酸単離用キットであって、抗酸化物質を含有する核酸結合性担体と、カオトロピック塩を含む核酸結合用溶液とを備えることを特徴とする核酸単離用キット。この構成によれば、単離される核酸の収率、純度及び品質を高めることが容易である。
20…核酸を含有する試料としての葉、21…核酸結合性担体としてのガラス繊維濾紙、25…核酸結合用溶液、26…核酸。
Claims (4)
- 核酸を含有する試料から核酸を単離する方法であって、
核酸を含有する試料と、核酸結合性担体と、カオトロピック塩を含む核酸結合用溶液とを混合することにより核酸を核酸結合性担体に結合させる結合工程と、
前記核酸結合性担体に付着した核酸結合用溶液を洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程後の核酸結合性担体から核酸を溶出させる溶出工程とを備え、
前記核酸結合性担体には抗酸化物質が含有されていることを特徴とする核酸単離方法。 - 前記抗酸化物質が亜硫酸塩である請求項1に記載の核酸単離方法。
- 前記結合工程は、前記試料中の核酸を核酸結合性担体に転写させる転写処理と、核酸が転写された核酸結合性担体を前記核酸結合用溶液に浸漬させる浸漬処理とを行う工程であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の核酸単離方法。
- 核酸を結合させるための核酸結合性担体であって、
抗酸化物質を含有することを特徴とする核酸結合性担体。
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