JP2005216589A - 燃料電池およびその製造方法 - Google Patents

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Yuka Yamada
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Abstract

【課題】 従来の燃料電池では燃料ガスの電解質へのしみ込みによる出力電圧が劣化するという問題があった。電解質と電極の界面において、異種材料の接合による出力電圧降下が生じるという課題が問題であった。
【解決手段】 多孔質膜の孔の中に親水性材料を充填させて孔をふさいだ膜をバッファー層として電解質と電極の間に構成することによって、燃料ガスは通過できないが、水分は通過することができ、電解質へのガスの拡散を防ぎ出力電圧の低下を防ぐことができるとともに、電解質への水分の供給も行うことができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、燃料電池に関し、特に電解質への燃料ガスの拡散を防ぎ電池の出力特性を長時間維持できる燃料電池およびその製造方法に関する。
地球環境問題への関心の高まりから、省資源化、省エネルギー化が推進されている。エネルギー資源として、再生可能なクリーンエネルギーを利用するエネルギー源とそのシステム開発が進められている。特に、水素をエネルギー源とした化学反応によりエネルギーを生み出す燃料電池システムは、自動車のエンジンの代替技術や、分散型電源、コジェネレーション技術などの幅広い用途がある。また、携帯電話やノート型パソコンなどの移動体端末機器の普及によって、それらの電源としても期待されている。
燃料電池は、主に燃料から水素などの燃料を反応させて電子とプロトンを生成する燃料極と、生成したプロトンを伝達する電解質、さらにプロトンと酸素とを外部回路を通して到達した電子によって反応させる酸素極とから成っている。燃料極、酸素極ではそれぞれ、H2→2H++2e-、O2+4H++4e-→2H2Oの反応が進むことになるが、一般的にはカーボンブラックと呼ばれる孔径がミクロンオーダーのカーボン多孔質体に白金などの貴金属触媒を担持した多孔質電極が用いられている。
電解質はプロトン伝導性を有する材料から構成され、例えば、スルホン酸基を側鎖に有するフッ素系高分子膜、酸化タングステンや酸化モリブデンなどの水和酸化物、ポリリン酸やポリタングステン酸などの固体酸錯体などを用いることができる。一般的には、電解質への燃料等の拡散による電池効率低下の少ないものとしてSO4F基をプロトン伝達に使ったナフィオン膜が良く用いられている。また別の電解質材料として、H3+基をプロトン伝達に使ったヘテロポリ酸も着目されている(例えば特許文献1参照)。
一方、電池の出力特性において、構成および構成材料の最適化を図り特性を向上することができるが、燃料供給ガスが電極にとどまらず、電解質にも入り込み出力特性を劣化してしまう問題、電解質に必要な保湿が十分でなく出力特性が劣化してしまうなどの問題がある。そこで、電解質膜と触媒層とを圧着する前に高分子電解質を溶解した溶液を触媒層に塗布してから圧着するなどの改善策が考案されている。(例えば特許文献1、特許文献2、非特許文献1 参照)。
特開昭60−220502号公報 特許第3326254号公報 特開2002−100384号公報 特開2003−288915号公報(特に段落番号0022) J. Power Source 22、359(1998)
しかしながら、従来の方法では電解質への燃料ガスの拡散を防ぐことができても、バッファー層自体が出力電圧の低下を引き起こしてしまうことから、高い出力電圧を保持したままその性能を長時間維持することの問題解決には至っていない。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、電極と電解質の界面での電圧降下を抑制した電気化学素子を提供することを目的とする。
前記課題の解決のため、多孔質膜の孔に親水性材料を充填させた層をバッファー層として、電解質と電極の間に配置することにより、燃料ガスの拡散による出力電圧劣化を防ぐことができる。また、電解質と電極触媒に使用する材料とともにバッファー層中の親水性材料にも同じ種類の材料を利用することによって、異種物質接触界面による、電圧降下による出力電圧劣化も防ぐことができる。
本発明の電気化学素子によれば、従来の燃料ガスが電極から電解質へ入り込むことによるによる出力電圧の経時劣化を減らし、電極、電解質の構成材料を安価な材料で構成できるとともに、異種物質の界面を減らすことによって、より大きな出力電圧を得ることができる。
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における燃料電池の構成図である。図2は図1中に○で示した酸素極2と電解質3の間の拡大図である。燃料極1は水素などの燃料を反応させて電子とプロトンを生成する電極である。本発明の燃料電池は、この燃料極1と生成したプロトンを伝達する電解質3と、さらにプロトンと酸素とを外部回路を通して到達した電子によって反応させる酸素極2と、バッファー層4とからなっている。
バッファー層4は、多孔質膜の孔の中に親水性の材料を充填させた層である。電解質3と酸素極2の間にバッファー層4が構成されているので、電解質3と酸素極2の界面を介しての供給ガスの透過をふせぐことができる。さらに、電解質3と酸素極2の界面において高効率なプロトン伝導や加湿を担う生成水が酸素極2から電解質3へ伝導することを起こすことができる。
燃料極1、酸素極2各々における触媒は、反応活性点を増やすために反応が起こる表面の量、触媒の比表面積を増やすほど高効率になると考えられる。このため、触媒粒子を小さくすること例えばナノ粒子程度の大きさに制御することと、反応表面積を広くするため担持体に多孔体を用いること、特にナノメートルレベルの大きさの空隙を持ったナノ多孔体を用いることが望ましい。
また、一般的にはナノ多孔体は、電極での反応に用いられる電子を反応活性点に供給するため、金属や炭素や導電性酸化物のような電子を容易に伝える導電体からなることが特性的に優れていると考えられる。
ただし、触媒粒子がナノサイズの大きさで連なって伝導パスを形成していれば電子はトンネル伝導することが考えられるため、触媒粒子が担持される多孔体がシリカのような絶縁体であってもかまわない。
さらに酸素極2では、燃料極1とは異なり、電極反応に伴うプロトン、電子、酸素とこれらによる生成物である水の伝達経路が確保されている必要がある。さらに、反応活性点を増やすため、多孔体は低密度なナノ多孔体で構成され、その中に微細化した触媒粒子を効率よく分散することが望ましい。
バッファー層4は、水蒸気を通し燃料ガスを通さない働きをする。バッファー層4の構成は、疎水性の多孔質膜の孔に親水性材料を充填したバッファー層からなる。
本発明において、親水性材料として充填されている物質は水和物であるヘテロポリ酸を用いることが望ましいが、水溶性高分子を架橋剤で架橋した物質の他、水溶性架橋位置等の空間に水を含んだゲルであってもよい。充填は、例えば浸漬の過程で超音波による振動を与えるあるいは溶液に圧力をかけて充填を促すことにより行う。以上の構成により、水蒸気を通しガスを通さない働きをする。
ここでヘテロポリ酸とは、代表的な分子式H3MaMb1240(Ma、Mbはそれぞれ第1の元素、第2の元素)で表される金属原子と酸素原子が規則正しい配列をした金属クラスターを構成単位としている物質群であって、酸素及び2種以上の元素を含む縮合酸の総称で、イソポリ酸に対する化合物である。
前記Maは、リン、珪素、及びゲルマニウムからなる群から選ばれて、特に第1の元素はリンであるのがよい。
また、Mbは、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、及びタンタル(Ta)を挙げることができる。
さらに、ヘテロポリ酸の水素の一部が第3の元素で置換されていてもよい。第3の元素は、1種であっても2種であってもそれ以上であってもよい。また、第3の元素は、セシウム(Cs)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、イッテルビウム(Yb)、鉄(Fe)、銅(Cu)からなる群から選ばれるのが良い。
以上のヘテロポリ酸は、一つの製法として溶液成長法を用いる。目的物の構成金属元素からなるナトリウム水和物塩を溶液中で反応温度、攪拌の程度と反応時間の制御のもと反応させる。このときできる塩化ナトリウムなどの副産物との分離は、有機溶剤に対する物質の溶解度差を利用する再結晶により行い、その結果粉末状の目的物質を得ることができる。
多孔質膜としては、ポリプロピレン膜、ポリエチレン膜に代表されるポリオレフィン膜を利用することができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、説明の都合上、まず比較例から説明する。
(比較例1)
市販の白金担持カーボン触媒をカーボンペーパーに塗布することにより燃料極1および酸素極2を形成し、ナフィオン電解質フィルムからなる電解質3の両面に圧着し、電池特性を評価した。得られた出力電圧値は0.58Vであった。
また、この出力電圧の時間変化を測定した。出力電圧が初期電圧の95%を下回る時間をもって、出力電圧保持時間とした。本比較例の出力電圧保持時間は150時間であった。
(実施例1)
(多孔質膜の孔にヘテロポリ酸を充填したバッファー層の作製)
ヘテロポリ酸であるポリタングステンリン酸をエタノールに溶かした溶液中に疎水性のポリプロピレン多孔質膜を浸漬し、超音波による振動を付加してから引き上げて乾燥させる工程を繰り返してポリタングステンリン酸がポリプロピレン多孔膜の孔に効率よく充填された膜を得た。充填の度合いはBET法による比表面積の測定において比表面積量の減少量で評価した。この膜を図1および図2に示すバッファー層4として用いた。
(バッファー層4の気体透過性の評価)
得られた膜(バッファー層4)の性能(水蒸気透過性と水蒸気以外の気体の非透過性)を調べた。図3にバッファー層の膜の気体透過能評価を行った装置の概念図を示す。図3は、ガス導入口付きアクリル板101とバッファー層の膜102と空間の103と加湿空気吸気口104と加湿空気排気口105と乾燥窒素吸気口106と乾燥窒素排気口107とから構成されている。加湿空気吸気口104から入った加湿空気中の水蒸気と酸素が、バッファー層の膜102を介して、どれだけ乾燥窒素排気口107から出てくる乾燥窒素に混在するかを調べることにより、水蒸気及び酸素の透過能を評価した。
バッファー層の膜102の両面はゴムパッキンを用いてアクリル板101と固定されていて、アクリル板101とバッファー層の膜102の間に2mmの間隔からなる空間103が配置されている。アクリル板101には各々2箇所のガス出入口、加湿空気吸気口104、加湿空気排気口105、乾燥窒素吸気口106、乾燥窒素排気口107が開けられていて、加湿空気吸気口104から湿度75%で温度80℃の加湿空気を、流量2000リットル/分で供給するとともに加湿空気排気口105から排出し、同時に裏面の乾燥窒素吸気口106から湿度0.5%で温度80℃の乾燥窒素を流量2000リットル/分で供給し、同じ面の乾燥窒素排気口107から排出させた。
これらの加湿空気および乾燥窒素の供給を30分間行った後に、107から出てくる乾燥窒素の湿度と酸素濃度を測定したところ、湿度は60%であり、酸素濃度は0%であった。これにより、水蒸気を通して、ガスを透過しない層を構成することができ、バッファー層4として用いた。
(電池特性評価)
比較例1と同様に、市販の白金担持カーボン触媒をカーボンペーパーに塗布することにより白金を担持したカーボンブラック電極の燃料極1および酸素極2を形成し、ナフィオン電解質フィルムからなる電解質3に燃料極1を圧着し、圧着した電解質3の裏面に前記バッファー層4を挿入して酸素極2を圧着して、電池特性を評価した。得られた出力電圧値は0.61Vであり、比較例1と比べて出力電圧値は変わらなかったが、出力電圧保持時間が300時間と比較例1と比べて長くなった。
(実施例2)
(多孔質膜の孔にヘテロポリ酸を充填したバッファー層の作製)
ヘテロポリ酸であるポリタングステンリン酸をエタノールに溶かした溶液中に疎水性の化1に示すポリプロピレン多孔膜を浸漬し、静水圧以上の圧力を溶液に付加してから引き上げて乾燥させる工程を繰り返してポリタングステンリン酸がポリプロピレン多孔膜の孔に効率よく充填された膜を得た。充填の度合いはBET法による比表面積の測定において比表面積量の減少量で評価した。ポリタングステンリン酸がポリプロピレン多孔膜の孔に効率よく充填された膜を図1および図2に示すバッファー層4として用いた。
(バッファー層4の気体透過性の評価)
実施例1と同様に、ポリタングステンリン酸がポリプロピレン多孔膜の孔に効率よく充填された膜の性能(水蒸気透過性と水蒸気以外の気体の非透過性)を調べた。これらの加湿空気および乾燥窒素の供給を30分間行った後に、107から出てくる乾燥窒素の湿度と酸素濃度を測定したところ、湿度は60%であり、酸素濃度は0%であった。これにより、水蒸気を通して、ガスを透過しない層を構成することができ、バッファー層4として用いた。
(電池特性評価)
比較例1と同様に、市販の白金担持カーボン触媒をカーボンペーパーに塗布することにより白金を担持したカーボンブラック電極の燃料極1および酸素極2を形成し、ヘテロポリ酸であるポリタングステンリン酸からなる電解質3に燃料極1を圧着し、圧着した電解質3の裏面に前記バッファー層4を挿入して酸素極2を圧着して、電池特性を評価した。得られた出力電圧値は0.60Vであり、比較例1と比べて出力電圧値が向上した。また、出力電圧保持時間が300時間と比較例1と比べて長くなった。
代替電力として普及が見込まれる燃料電池において、高出力化が見込まれることから大きな利用価値が見出される。
本発明の実施の形態1における燃料電池の構成図 本発明の実施の形態1における燃料電池構成図の拡大図 本発明の実施の形態1におけるバッファー層の酸素および水蒸気の透過能評価装置の構成図
符号の説明
1 燃料極
2 酸素極
3 電解質
4 バッファー層
101 ガス導入口付きアクリル板
102 バッファー層の膜
103 空間
104 加湿空気吸気口
105 加湿空気排気口
106 乾燥窒素吸気口
107 乾燥窒素排気口

Claims (6)

  1. 多孔体に触媒が担持されてなる一対の電極と、前記一対の電極との間でプロトンを伝導する固体電解質から構成される燃料電池であって、電極と固体電解質の間に、多孔質膜の孔に親水性材料を充填させた層が配置されていることを特徴とする燃料電池。
  2. 多孔体に触媒が担持されてなる一対の電極と、前記一対の電極との間でプロトンを伝導する固体電解質から構成される燃料電池であって、電極と固体電解質の間に、多孔質膜の孔に親水性材料を充填させた層が配置されていて、親水性材料としてヘテロポリ酸を充填させた層が配置されていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
  3. 多孔体に触媒が担持されてなる一対の電極と、前記一対の電極との間でプロトンを伝導する固体電解質から構成される燃料電池であって、電極と固体電解質の間に、多孔質膜の孔に親水性材料を充填させた層が配置されていて、親水性材料としてイソブチレン部とマレイン酸ナトリウム部とからなる共重合体(水溶性高分子)をエチレングリコールジグリシンエーテルで架橋された物質を充填させてなることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
  4. 電極と固体電解質から構成される燃料電池の製造方法であって、多孔体に触媒粒子を担持させて電極を形成する工程と、固体電解質を形成する工程と、多孔質膜の孔に親水性材料を充填させて多孔質層を形成する工程と、電極と多孔質層と固体電解質とを接合する工程とを含むことを特徴とする燃料電池の製造方法。
  5. 多孔質層を形成する工程が、多孔質膜をその多孔に充填する材料を溶かした溶液に浸漬し超音波付加した後、乾燥させる工程からなることを特徴とする請求項4記載の燃料電池の製造方法。
  6. 多孔質層を形成する工程が、多孔質膜をその多孔に充填する材料を溶かした溶液中に浸漬し圧力を付加した後、乾燥させる工程からなることを特徴とする請求項4記載の燃料電池の製造方法。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008269902A (ja) * 2007-04-19 2008-11-06 Hitachi Ltd 膜/電極接合体及び直接メタノール型燃料電池

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