JP2005214840A - 全身性炎症反応症候群患者における臓器障害の発症又は予後の予測方法及び予測用試薬 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 前記予測方法では、可溶性E−セレクチン(sES)を分析する。前記予測用試薬は、可溶性E−セレクチンに特異的に結合する抗体又はその断片を含む。
【選択図】 なし
Description
この血管内皮細胞上に発現した成熟型E−セレクチン(105kDa;レクチンドメイン、EGFドメイン、補体相同性ドメイン、細胞膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインを持つ)は細胞膜上に存在するプロテアーゼにより切断を受け、可溶性E−セレクチン(85kDa;レクチンドメイン、EGFドメイン、及び補体相同性ドメイン)[エヌ・ノイマン(N. Newman)ら,「ジャーナル・オブ・イムノロジー(Journal of Immunology)」,(米国),1993年,150巻,p.644−654]が生成される。
そして、可溶性E−セレクチンを測定するELISA法、ラテックス法、及びイムノクロマト法を確立し、血液中の可溶性E−セレクチン量がSOFAスコア、特に呼吸不全スコアの上昇と強く関連することを見出して、本発明を完成するに到った。
本発明の予測方法の好ましい態様によれば、可溶性E−セレクチンの分析を免疫化学的方法により実施する。
また、本発明は、可溶性E−セレクチンに特異的に結合する抗体又はその断片を含むことを特徴とする、全身性炎症反応症候群患者における臓器障害、特には急性呼吸不全の発症又は予後の予測用試薬に関する。
本発明の予測方法では、全身性炎症反応症候群(SIRS)患者における可溶性E−セレクチンの濃度を定量し、健常人の可溶性E−セレクチン濃度と比較することにより、臓器障害、特には呼吸不全の発症を予測することができ、また、SIRSの予後の状態を推定することができる。
例えば、実施例5に示すように、健常者から得られた可溶性E−セレクチン濃度の平均値及び標準偏差(SD)から、「平均値+2×SD」を判定用閾値として用いることができる。具体的な判定用閾値としては、例えば、30mg/mLの値を使用することができる。
免疫化学的方法による方法としては、例えば、ELISA法、ラテックス法、又はイムノクロマトグラフ法で検出する方法を挙げることができる。
電気泳動による方法としては、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行って可溶性E−セレクチンをバンドとして検出する方法、あるいは、キャピラリー電気泳動でピークとして検出する方法等を挙げることができる。
また、クロマトグラフィーによる方法としては、例えば、高速液体クロマトグラフィーでピークとして検出する方法等を挙げることができる。
可溶性E−セレクチンを分析可能である限り、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
本発明の試薬(キット)は、抗可溶性E−セレクチン抗体又はその断片を少なくとも含む限り、特に限定されるものではなく、異なる2種類以上の抗可溶性E−セレクチンモノクローナル抗体又はその断片を含むことが好ましい。本発明の試薬は、本発明方法を実施するのに用いることができる。
細胞膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを欠失させたリコンビナント・ヒトE−セレクチン(Cat. No. ADP1;R & D Systems, Inc.)2mg/mLをフロイント完全アジュバンド(体積比1:1)に充分に分散させた。なお、前記リコンビナント・ヒトE−セレクチンは、CHO細胞により産生した分子量86〜90kDa(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動による。アミノ酸残基数=535)のタンパク質である。この分散液100μLをBalb/cマウスに一回免疫し、4週間後から2週間毎に、生理食塩水で1mg/mLの濃度にしたリコンビナントE−セレクチン液100μLにより4回免疫した。この免疫マウスを屠殺した後、脾臓を摘出し、この脾臓より脾細胞をマウス一匹あたり0.5×108 個得た。この脾細胞1.5×108 個とマウスミエローマ細胞(SP 2/o)3.0×107 個とを、PEG4000(45%)存在下で、融合させ培養した。増殖した細胞の上清を採取し、ELISA法[ヒトsE-Selectin ELISAキット;MedSystems Diagnostics GmbH (Austria)]により抗E−セレクチン抗体の有無を調べた。前記抗体が陽性の細胞を限界希釈法によりクローニングし、抗E−セレクチン抗体を産生している細胞14種(No.1-1, No.3-1, No.5-3, No.9-2, No.10-2, No.12-1, No.13-1, No15-1, No.16-3, No.17-3, No.19-1, No.22-2, No.24-2, No.25-2)を確立した。
単離した各モノクローナル抗体の培養上清を用いて、免疫グロブリンサブクラスをクローンタイピングシステム(Southern Biotechnology Associate Inc.)によって測定した。結果を表1に示す。
(1)モノクローナル抗体結合ラテックスの調製
ポリスチレンラテックス[10%,直径0.489μm;セラダイン社製(米国)]0.2mLを、実施例1で作製したモノクローナル抗ヒトE−セレクチン抗体それぞれを含む50mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH8.0)1.8mL(それぞれの抗体濃度0.9mg/mL)に混合し、マグネチックスターラーで攪拌した。混合液を遠心分離(20,000g×10分間)し、0.05%NaN3を含む蒸留水で4回洗浄し、1mg/mL−BSA(ウシ血清アルブミン)を含む0.1mol/Lトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に懸濁(1w/v%)させ、保存した。
各モノクローナル抗sES抗体感作ラテックスと種々の濃度のsESとを混合し、凝集の有無を確認したところ、No.13−1とNo.17−3との組み合わせで良好な凝集結果が得られた。
(1)sES抗体感作プレートの調製
抗sESマウスモノクローナル抗体No.13−1を5ng/mLとなるように炭酸緩衝液に溶解し、96穴平底マイクロプレートに100μLを加え、4℃で24時間インキュベーションした。プレートの中の液をアスピレーションした後、リン酸緩衝液200μLを加え、室温で2分間インキュベーションした。この洗浄操作を3回繰り返した。次に1%BSA−リン酸緩衝液200μLを加え、37℃で2時間インキュベーションした。プレートの中の液をアスピレーションした後、0.05%Tween−20を含むリン酸緩衝液(以下、PBSTと称する)200μLを加え、室温で2分間インキュベーションした。この洗浄操作を3回繰り返し、可溶性E−セレクチンモノクローナル抗体(A)感作プレートを調製した。
Nakane,P.Kらの方法[ピー・ケイ・ナカネ(P.K.,Nakane)ら,「ジャーナル・オブ・ヒストケミストリー・アンド・サイトケミストリー(Journal of Histochemistry & Cytochemistry),(米国),1974年,22巻,1084]により、抗可溶性E−セレクチンマウスモノクローナル抗体No.17−3とペルオキシターゼ(HRP)とのコンジュゲートを調製した。
抗原のリコンビナント・ヒトE−セレクチン(R&D Systems, Inc.)を可溶性E−セレクチン(sES)の標準品に用いるため、2%BSA、0.01mol/L−EDTA2Na、0.1%NaN3、0.01%Tween20、及び0.15mol/L−NaClを含む0.05mol/Lトリス緩衝液(pH7.5)で、75ng/mL、150ng/mL、及び300ng/mLの希釈液を作製した。
前記調製法により得られた感作プレートに、0.5%BSAを含むPBSTで10倍希釈した検体100μLを加え、室温で1時間インキュベーションした後、PBSTによる洗浄操作を3回行なった。0.5%BSAを含むPBSTを用いて、0.5μg/mLとなるよう希釈した抗sES抗体−HRP100μLを加え、室温で1時間インキュベーションした後、PBSTによる洗浄操作を3回行なった。0.0003%過酸化水素を含む0.4mg/mL o−フェニレンジアミンジヒドロクロライド100μLを加え、室温で30分間インキュベーションした後、2N硫酸100μLを加え、反応を停止させた。マイクロプレートリーダーを用いて、主波長490nm/副波長620nmのOD値を測定した。
また、標準抗原曲線の特性各濃度のsES及び検体の吸光度値からブランクの吸光度値を引き、横軸に標準抗原濃度、縦軸に標準抗原の吸光度をプロットし、標準曲線を描いた(図1)。その標準抗原曲線を基に、検体中に含まれるsES量を計算することができる。
(1)sES抗体感作ラテックス試薬(第二試薬)の調製
抗sESマウスモノクローナル抗体No.13−1(3mg)をリン酸ナトリウム緩衝液9.5mLに溶解し、0.3μmのポリスチレンラテックス(固形分10重量%緩衝液)0.5mLを加え、37℃で2時間インキュベーションした後、これに1%BSA−リン酸緩衝液2mLを加え、37℃で90分間インキュベーションすることによりコーティングを行なった。次に遠心分離(15,000rpmにて15分間遠心)を行ない、上清を捨て、沈澱をBSA溶液(20mmol/Lリン酸ナトリウム緩衝液、0.05mol/L塩化ナトリウム、0.05%アジ化ナトリウム、及び0.2%BSA)に懸濁させ、sES抗体感作ラテックス(A)を調製した。同様に、抗sESマウスモノクローナル抗体No.17−3を用いて、sES抗体感作ラテックス(B)を調製した。(A)及び(B)を1:1で混合して、sES抗体感作ラテックス試薬を調製した。
1%BSA−リン酸−クエン酸緩衝液(pH6.0)(0.1mol/Lクエン酸、0.2mol/Lリン酸2ナトリウム、150mmol/L塩化ナトリウム、0.1%アジ化ナトリウム、及び0.14%EDTA−2Naを含む)を調製した。
実施例3で使用したリコンビナントヒトE−セレクチン(R&D Systems, Inc.)を用い、同様に320.57ng/mL〜33.4ng/mLの希釈液を調製した。
自動分析装置LPIA−S500(三菱化学社製)を用いて行なった。前記調製法によって得られたsES抗体感作ラテックス試薬の第一試薬及び第二試薬を用いて以下の条件で測定した。
検体量:10μL、第一試薬:180μL、第二試薬:40μL
測定波長:800nm、測光ポイント:2−50(Vall)
また、標準抗原曲線の特性各濃度のsES及び検体の吸光度変化量(Vall)を求めた。横軸に標準抗原濃度、縦軸に標準抗原の吸光度をプロットし、標準曲線を描いた(図2)。その標準抗原曲線を基に、検体中に含まれるsES量を計算することができる。
作成したラテックス法とELISA法で血漿検体47例を測定して両測定法の相関を算出した。結果を図3に示す。
健常者及び救命センターに搬送された入院時に採血したSIRS患者(基礎疾患として糖尿病性ケトアシドーシス、敗血症、重症肺炎、肺挫傷、脳挫傷、脊髄損傷、骨折等)の血漿中に存在するsES濃度をLPIA−S500で測定した。
一方、SIRS患者39例の血漿sESは8.47〜188.44ng/mLであった(図5)。この39例の内、濃度正常者は22例(56.4%)であり(図6)、健常者よりもsESが高値となる患者は、39例中17例(43.6%)であり、30.7〜188.44ng/mLであった(図7)。
SIRS患者39例の入院後8日間の臓器不全SOFAスコアをVincent,JLらの報告[ジェイ・エル・ビンセント(J.L., Vincent)ら,「クリティカル・ケア・メディシン(Critical Care Medicine)」,(米国),1998年,26巻,p.1793−1800]に従って算定し、入院初日の血漿中のsES濃度との関連性を調べた。
表5に示すように、SIRS患者でsESが正常で重症呼吸不全を発症しなかった22例中には死亡例は無く(0%)、また、sES正常者では重症呼吸不全の発症は少なく、22例中3例(13.6%)であった。
一方、表6に示すように、血漿中sES濃度が29.74ng/mL以上の異常値を示したSIRS患者17例で、重症呼吸不全の発症は、SOFA3の17例中9例(52.9%)及びSOFA4の17例中3例(17.6%)を合わせた12例(70.6%)であった。
なお、入院初日のsESが高値となったSIRS患者17例の基礎疾患として外傷性よりも内因性の疾患患者が多く、SOFA3の9例及びSOFA4の3例を合わせた12例(70.6%)であった。
表6に示すとおり、sES濃度はSOFA呼吸不全スコアと深く関連し、sES濃度が呼吸器不全発症予測の客観的な指標として有用であることが示された。
本実施例では、sES捕捉用抗体として薄片状のクロマトグラフィー基材(ニトロセルロース膜)の片方に金コロイド標識したマウスモノクローナル抗体No.13−1を塗布し、他方に第2の抗マウスモノクローナル抗体No.17−3を固定し、sESのイムノクロマトグラフ法を実施した。
ナイロン66製メンブレン(Immunodyne ABC,孔径3.0μm;Pall Corporation製)を5mm×20mmのサイズに裁断した.メンブレンの上流側の一端から8mmの位置に可用性E−セレクチンの検出ゾーンとしてモノクローナル抗可溶性E−セレクチン抗体No.17−3(0.5mg/mL;5mmol/Lホウ酸緩衝液,pH8.5で希釈)を幅1mmの線状に塗布した。
マウスモノクローナル抗体No.13−1(濃度1mg/mL)1mLを2mmol/L−Na2B4O7緩衝液(pH6.5)(以下、Borax緩衝液と称する)3,000mL中で4℃下で一夜透析した。モノクローナル抗体溶液は、4℃下、100,000×gで1時間遠心分離した後、その上清を100,000×gで1時間遠心分離したBorax緩衝液で100μg/mLとなるように希釈した。金コロイド液(GOLD COLLOID 20nm;British BioCell International製)100mLを0.2mol/L−K2CO3溶液及び0.2mol/L−H3PO4溶液でpH6.5に調整した。金コロイド液20mLを撹拌しながら、希釈したモノクローナル抗体溶液2mLを徐々に滴下し、室温下で30分間撹拌した。更に、撹拌しながら10%BSA溶液(pH9.0;4℃下、100,000×gで1時間遠心分離した上清)2.5mLを滴下した後、室温下で30分間撹拌した。10℃下にて16,000×gで30分間遠心分離し、上清を除去した。沈殿した金コロイド標識モノクローナル抗体を0.5%ショ糖を含むホウ酸塩緩衝液(pH8.0)(0.45μmフィルター濾過)20mLに再懸濁させ、10℃下にて16,000×gで30分間遠心分離し、上清を除去した。更に、沈殿した金コロイド標識マウスモノクローナル抗体No.13−1を0.5%ショ糖を含むホウ酸塩緩衝液(pH8.0)(0.45μmフィルター濾過)20mLに再懸濁させ、10℃下にて16,000×gで30分間遠心分離し、上清を除去した。最後に、沈殿した金コロイド標識モノクローナル抗体を0.5%ショ糖を含むホウ酸塩緩衝液(pH8,0)(0.45μmフィルター濾過)に再懸濁させた後、波長520nmにおける吸光度が約10になるように濃度調整し、表面をシリコン処理したガラス試験管に移し密栓し、4℃下に保存し、イムノクロマトグラフ法用金コロイド標識モノクローナル抗体懸濁液とした。
グラスファイバーパッド(タイプA/B;Pall Corporation製)を5mm×18mmのサイズに裁断したものをsESイムノクロマトグラフ法用試料添加パッドとした。グラスファイバーパッド(タイプA/E;Pall Corporation製)を5mm×25mmのサイズに裁断したものを,イムノクロマトグラフ法用吸収パッドとした。
5mm×60mmのサイズに裁断したプラスティック粘着シート(BioDot製)に、上流側より、試料添加パッド、金コロイド標識モノクローナル抗体パッド、抗体固相化メンブレン、吸収パッドの順に、各々その両端を隣接する部材と1mm重ね合わせて貼付し、可用性E−セレクチン測定用イムノクロマトグラフ小片とした。
SIRS患者の血漿検体50μLと20mmol/Lリン酸塩緩衝液50μLとを混合した溶液、及び20mmol/Lリン酸塩緩衝液(ブランク試験)100μLを水平に静置したイムノクロマトグラフ小片の試料添加パッドに滴下し、室温下で10分間展開した。
メンブレンのモノクローナル抗sES抗体を固相化した部分、及び陰性コントロール抗体を固相化した部分の金コロイドの捕捉に基づく赤紫〜紫色の着色の有無を目視観察し、可溶性E−セレクチン生成物の有無を判定した。結果を表7及び表8に示す。表中、−は陰性、+は弱陽性、++は中陽性、+++は強陽性であることを示す。
Claims (3)
- 可溶性E−セレクチンを分析することを特徴とする、全身性炎症反応症候群患者における臓器障害の発症又は予後を予測する方法。
- 可溶性E−セレクチンの分析を免疫化学的方法により実施する、請求項1に記載の方法。
- 可溶性E−セレクチンに特異的に結合する抗体又はその断片を含むことを特徴とする、全身性炎症反応症候群患者における臓器障害発症又は予後の予測用試薬。
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