JP2005213089A - SiOの精製方法及び得られたSiOを用いる高純度シリコンの製造方法 - Google Patents

SiOの精製方法及び得られたSiOを用いる高純度シリコンの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 P濃度の高いSiO原料からP濃度の低いSiOを精製する方法、かかる精製SiOを用いる高純度Siの製造方法を提供する。
【解決手段】 SiO発生器内で発生したSiOガス中に、リンと反応して低沸点化合物を形成させるガスを導入し、SiOガス中に含まれるリンと反応させて該低沸点化合物を形成させ、さらに、SiOガスの下流側に設けられた凝縮器で、主にSiOを凝縮させて回収し、該低沸点化合物を凝縮させることなく通過させるSiOの精製方法、及びかかる精製SiOを用いる高純度Siの製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、SiOの精製方法及び得られたSiOを用いる高純度シリコンの製造方法に関し、さらに詳細には太陽電池に使用可能な高純度シリコンの製造方法に関する。
太陽電池基板に使用されるSiは、99.9999%以上のレベルという極めて高純度のものが要求される(以下、このレベルの純度のSiを「高純度Si」と称し、これより低い純度のものを「低純度Si」と称する)。特に、電池性能に悪影響を与える、Si中の不純物元素は、太陽光による発電の起電力を大幅に減少させるn型不純物元素、またはp型不純物元素と呼ばれるリン、ヒ素、アンチモン、ボロン、ガリウム、インジウム、並びに、電気抵抗を低めて素子の絶縁性を阻害したり、電池内で発生した電荷の移動を阻害したりするその他の金属元素、例えば、鉄、アルミ、ニッケル、チタン等である。高純度Siは、従来、シーメンス法(特許文献1等)により製造されてきた。この方法は、純度97%程度の金属シリコン原料を一旦、塩化した後、精製・還元して99.9999999%以上の高純度シリコンを得るものであり、反応に多大のエネルギーを消費するため原理的に製造費は高価になることが避けられない。
そこで、金属Si等から一旦、一酸化珪素(SiO)を経由して高純度Siを製造する方法が提案されている。例えば、特許文献2では、高温下で次の反応によりSiOから高純度Siを得る方法が示されている。
SiO → Si + SiO (1)
また、特許文献3では、
SiO + H → Si + HO (2)
なる反応でSiOからSiの得られることを示している。
また、SiOを得る方法としては、例えば、特許文献4に示されるように、次の2つの反応による手法が知られている。
Si + SiO → 2SiO (3)
C + SiO → SiO + CO (4)
これは、高温低圧下で発生する大きな吸熱反応である。この方法は、SiO粉末と金属珪素粉末との混合物を減圧処理するための炉と、SiO粉末を回収するための回収装置と、炉と回収装置との間を接続する気密の搬送路からなる装置によって実施される。
また、SiOを得るための別の方法として、特許文献5では、プラズマジェットにより蒸気化されたSiを用いて、
2Si + O → 2SiO (5)
なる反応により、SiO微粉末を得ることが開示されている。
さらに、SiOを得るための別の方法として、特許文献6では、例えば、シラン(SiH)ガスを水素ガス雰囲気下で燃焼させることにより、
SiH + O → 2SiO + H (6)
なる反応により、SiO微粉末を得ることが開示されている。
これら、SiOを微粉末で得る製造方法においては、微粉のハンドリング、製造時の安全対策(SiO微粉は、常温空気と触れると爆発する)の点で、バルク状でSiOを得る製造方法に比べて製造費が上昇する。従って、高純度Si製造原料として、SiOを微粉で得る方法は、不利である。
他方、太陽電池基板用以外のSiO製造、例えば、SiO蒸着膜の製造においては、SiOが最終製品であることもあり、最適なSiO成分が調査、開示されている。例えば、特許文献7においては、食品や医薬品の包装用SiO膜として、SiO中の不純物元素Fe、Al、Ca、Cu、Cr、Mn、Mg、Ti、Ni、P、As、Cd、Hg、Sb、Pbの合計量について範囲を規定している。しかしながら、この成分系のものを太陽電池基板用Si原料用SiOとして直接用いると電池性能を著しくばらつかせる結果となる。これは、当該技術においては電池特性に大きな影響を与えるボロン等のp型不純物の成分範囲に対して何らの規定もされておらず、また、電池性能に対して特に悪影響の高い特定の元素、例えば、Pが10ppmのオーダーという太陽電池基板用として許容できないレベルでSiO中に含まれていたとしても、他の元素成分値との合計量が基準値(50ppm)以下であれば特許文献7の基準を満たしてしまうからである。
特公昭35−2982号公報 WO99/33749号公報 米国特許3010797号明細書 特公平4−81524号公報 特開昭60−215514号公報 特開昭62−123009号公報 特開2002−194535号公報
SiOからSiを製造する従来技術においては最終的なSi純度は、原材料であるSiO純度に依存する。しかし、従来技術においては、最終的なSi製品中の不純物は多くの元素について良く調査されているにもかかわらず、SiO中の不純物への関心は低く、Fe、Al、P等の少数の成分のみしか調査、開示されてこなかった。この結果、成分ばらつきの大きなSiOを原材料として高純度Siを製造していたため、最終的なSi製品の電池特性が安定せずに製品歩留が低く、安価な製造が困難であった。ここで、極めて高純度の原料、例えば、半導体用ポリSiを用いて、(3)式の反応を行い、SiOを生成させればこの様な問題を回避できる可能性は存在するが、この様な製法で得られたSiOの成分ばらつきについて開示された知見は未だ存在しない。また、安価、大量に生産することの求められる太陽電池基板用Siに対して、高価な半導体用ポリSiを用いて製造されたSiOを使用することはそもそも本末転倒であり、現実的ではない。
高純度Si製造上、不純物元素の中で特に問題となるのはPである。これは、次の3つの理由によるものである。第1に、Pは微量でも電池特性に大きな悪影響を与える。第2に、安価、大量に入手可能な原料、例えば金属Si中には大量のPが含まれている。第3に、多くの不純物元素に有効と一般的にいわれる凝固精製がPに対してはほとんど効果がなく、Si中から容易に除去できないからである。
したがって、高濃度のPを含有するSiOを原料に(1)式の反応でSiを製造した場合、特段のP除去作用がないため、Si中にもPが高濃度で残留する。このため、製造されたSiそのままでは太陽電池基板用の材料として適用することはできない、という問題が存在した。
そこで、本発明の目的は、P濃度の高いSiO原料からP濃度の低いSiOを精製する方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、かかる精製SiOを用いる高純度Siの製造方法を提供することにある。
本発明は、SiO発生器内で発生したSiOガス中に、リンと反応して低沸点化合物を形成させるガスを導入し、SiOガス中に含まれるリンと反応させて該低沸点化合物を形成させ、さらに、SiOガスの下流側に設けられた凝縮器で、主にSiOを凝縮させて回収し、該低沸点化合物を凝縮させることなく通過させることを特徴とするSiOの精製方法、に関する。
前記リンと反応して低沸点化合物を形成させるガスは水素ガス、フッ素ガスまたは塩素ガスであることが好ましい。
前記リンと反応して低沸点化合物を形成させるガスの導入箇所は、SiO発生器、SiO凝縮器及びSiO発生器とSiO凝縮器の途中流路よりなる群から選ばれた少なくとも1つであることが好ましい。
また、本発明は、上記の方法で得られたSiOを原料とすることを特徴とする高純度Siの製造方法、に関する。
本発明方法によれば、不純物であるPと反応して低沸点化合物を形成させることによって、容易に得られたSiO中のP濃度を減少させることができる。
本発明者は、SiOから高純度Siを製造する際に、Pが凝縮したSiO表面に吸着するという現象を見出した。この知見をもとに、気相反応の高速性、均一性に着目し、凝縮SiOとの吸着性の高いP蒸気を、反応の有利なSiOガス中でSiOへの吸着性の低い低沸点化合物に化学変化させることにより、凝縮SiOから分離する方法を見出し、簡便にP濃度が減少できる方法を案出した。
以下、SiOの精製とSiの製造方法に分けて説明する。なお、本明細書において、SiOガスが凝縮器において固化する現象を凝縮と称する。
(SiOの精製)
図1は、SiOを精製するために用いた装置の一例を示す概略断面図である。図1において、反応容器1内のるつぼ3内に予め設置されたSi粒−SiO粒混合原料2は、るつぼ3周囲に配置された加熱装置4によって加熱される。反応容器1には、さらに吹込みガスボンベ11、キャリアーガスボンベ13を具備するガス混合器15が取付けられている。ガス混合器15は、第1流量調整弁19を介して吹き込みガスボンベ11と接続され、第2流量調整弁21を介してキャリアーガスボンベ13と接続され、さらに第3流量調整弁23を介して反応容器1と接続されている。ガス混合器15には、予熱器17が取り付けられており、必要により、ガスの予熱ができる。また、真空ポンプ8により反応容器1及び凝縮器6内は低圧に維持され、圧力計9によって監視される。原料温度が充分に上昇すると(3)式反応によってSiOガス5が生成し、凝縮器6に流入する。凝縮器6の外壁は冷却され、その結果、SiOが板面に凝固付着してSiO固体7を形成する。凝縮器内の流路は充分長く設定され、大部分のSiOを凝縮物として回収する。併せて、SiOの原料中に大量に含まれていたP等の低沸点物質の不純物蒸気10が低沸点化合物を形成させるガスと反応し、凝縮器6に付着することなく系外に排気される。
ここで、SiO発生器または反応容器は、SiとSiOとの混合物からSiOガスを発生させる装置であれば、特に制限されることなく用いることができる。この様な装置として、例えば、るつぼ、るつぼの周りに設けられたるつぼの加熱装置を内部に備える反応容器が挙げられる。該るつぼ、加熱装置は、従来公知の装置を用いる。該反応容器は、発生したSiOガスを外部に漏洩させることなく、次の凝縮器に導く。したがって、その形状は、正面図において、通常、180度回転したL字状である。該反応容器は、Si粒とSiO粒との混合物を加熱することによってSiOガスを発生させ、次の凝縮器に導くことから、SiOガスを内壁に凝縮させない温度、例えば1100℃を超える温度、好ましくは1100℃を超えて2000℃以下の範囲に維持することが好ましい。
凝縮器は、SiOガスを凝縮付着させてSiO固体として回収できれば何ら制限はない。通常、中が空の容器、またはSiOガスの流路に複数の板または邪魔板を、板面をガス流方向に向けて、流路を形成する対面から交互に所定間隔で設け、ガス流がジグザグとなるように構成された、ガスの通過可能な容器が挙げられる。該間隔は、通常、一定であり、また、回収効率を上げるため、SiO密度の高いSiOガス上流側を短く、下流側を長くしてもよい。該凝縮器は、SiOガスを凝縮できればその温度は特に制限はされないが、冷却器を備えることによって効果的にSiOガスを凝縮させることができる。SiOガスを回収することを目的とすることから、SiOガスを凝縮させることができ、かつ、低沸点化合部を凝縮させない温度、例えば、1100℃以下、好ましくは1100℃〜110℃の範囲であることが望ましい。
次に、SiOの精製方法について説明する。SiとSiOとの混合物を原料として、SiOガスを発生させる。SiとSiOとは、従来から用いられているSi金属粒とけい砂を用いることができる。例えば、Si金属としては、Pが40ppm、Bが9ppm、Feが1500ppm、その他の金属成分が500ppmであり、高純度けい砂中の不純物は、Pが0.3ppm、Bが0.5ppm、Feが400ppm、その他の金属が100ppm程度のものが挙げられる。
SiとSiOとの混合物を原料としてるつぼに投入し、反応容器内をAr,He,COガスなどの不活性ガスで置換する。
該るつぼ周囲に設けられた加熱装置、例えば抵抗ヒータによって、原料を加熱するとともに、真空ポンプを作動させて反応容器内を所定の減圧度に維持する。その際、SiO中に含まれるリンと反応して低沸点化合物を形成させるガスを、反応容器内に導入する。なお、反応容器内は通常減圧に維持されているので、低沸点化合物形成ガスはその差圧を利用して導入することができるが、該ガスを吹き込めば効果的に分散させることができる。該低沸点物形成ガスとしては、SiO中に含まれるリンと気相で反応して低沸点化合物を形成できるガスであれば特に制限されることはなく、例えば、水素ガス、フッ素ガスまたは塩素ガスが挙げられる。
反応容器内に水素ガスを吹込んだ場合、水素とPは次の如く反応する、と考えられる。
P(気体)+nH(気体)→水素化リン[PHm](気体) (7)
ただし、式中、mは1〜4の整数である。
生成した水素化リンは、沸点が約60℃以下の低沸点化合物であり、かつ、SiOへの吸着が少ない、という特性を有する。例えば、PHの沸点:−87℃、Pの沸点:51.7℃(改定3版、化学便覧、基礎編I,日本化学会編、丸善株式会社)。例えば、1000℃において、主原料であるSi,SiO及び生成物であるSiOがいずれも固体で存在し得る。
しかし、水素ガスはSiOガスとも反応し、SiH,Siなどの水素化珪素ガスも同時に発生する。かかる水素化珪素はSiOの品質に及ぼす影響は考慮しなくてよい。というのは、水素化珪素を形成する反応は、(7)式に比べて遅く、さらに、発生する水素化珪素の量そのものが少ないからである。また、水素化珪素は低沸点を示し、かつ、凝縮したSiOへの吸着が少ないという特性を有するので、大部分は水素化リンとともに、系外に排気される。例えば、SiHの沸点:−111.8℃、Siの沸点:−14.5℃(改定3版、化学便覧)。さらに、SiO中に残留した水素は、後工程(Si抽出工程)で除去されるものが多い。
反応容器内にフッ素ガスを吹込んだ場合、フッ素とPは次の如く反応する、と考えられる。
P(気体)+nF(気体)→フッ化リン[PFm](気体) (8)
ただし、式中、mは1〜5の整数である。
生成したフッ化リンは、沸点が0℃以下の低沸点化合物であり、かつ、凝縮SiOへの吸着が少ない、という特性を有する。例えば、PFの沸点:−101.5℃、PFの沸点:−75℃(改定3版、化学便覧)。
しかし、フッ素ガスはSiOガスとも反応し、SiFなどのフッ化珪素ガスも同時に発生する。かかるフッ化珪素ガスはSiOの品質に及ぼす影響は考慮しなくてよい。というのは、フッ化珪素を形成する反応は、(8)式に比べて遅く、さらに、発生するフッ化珪素の量そのものが少ないからである。
反応容器内に塩素ガスを吹込んだ場合、塩素とPは次の如く反応する、と考えられる。
P(気体)+nCl(気体)→塩化リン[PClm](気体) (9)
ただし、式中、mは1〜5の整数である。
生成した塩化リンは、沸点が約100℃以下の低沸点化合物であり、かつ、SiOへの吸着が少ない、という特性を有する。例えば、PClの沸点:75.5℃、PClの沸点:昇華100℃(改定3版、化学便覧)。
しかし、塩素ガスはSiOガスとも反応し、SiClなどの塩化珪素ガスも同時に発生する。かかる塩化珪素はSiOの品質に及ぼす影響は考慮しなくてよい。というのは、塩化珪素を形成する反応は、(9)式に比べて遅く、さらに、発生する塩化珪素の量そのものが少ないからである。
該低沸点物形成ガスの代表例として、水素ガス、フッ素ガス、塩素ガスが挙げられるが、これらのガスを混合して反応容器内に導入すると、これらのガス同士が反応する恐れがあることから、これらのガスは混合することなく、単独で用いることが望ましい。なかでも、反応容器の耐腐食性の点から、水素ガスが好ましい。
該低沸点物形成ガスの吹込み量は、原料であるSiとSiOに含まれる不純物、例えばPを完全に低沸点化合物に転化できればなんら限定はされない。通常、該低沸点物形成ガスの導入量は、SiO中に存在する不純物Pと反応する理論量〜発生するSiOの50モル%以下の範囲である。ここで、理論量とは一番簡単な化合物を生成する反応、例えば水素ガスの場合PHが、フッ素ガスの場合PFが、塩素ガスの場合PClが生成する反応に基づくものが該当する。理論量未満であると、低沸点化合物の形成が十分でなく、一方、該低沸点物形成ガスがSiOと反応することから、発生するSiOの50モル%を超えることは好ましくない。
該低沸点物形成ガスの吹込み箇所としては、図1に示されるように、反応容器が挙げられる。この場合には、反応が高温で行われるため、反応速度が速く、さらに、排気までの時間が長いため、反応率が高い、という利点がある。ところが、高温部にガスを吹きこむため、吹込み設備が大規模となるとともに、炉材の消耗が激しい、という欠点がある。
また、吹込み箇所としては、凝縮器が挙げられる。この場合には、低温での反応となることから、吹込み設備が単純となり、かつ、炉材の損傷がすくない、という利点がある。その一方で、排気までの時間が短いため、反応率が低い、すなわち未反応ガスが多く、さらに、未反応吹込みガスが凝縮SiOを汚染する、という欠点がある。
さらに、吹込み箇所としては、反応容器と凝縮器との途中流路が挙げられる。この場合の利点及び欠点は、上記の反応容器、凝縮器の利点及び欠点の中間的なものとなる。実施に際しては、これらの利点及び欠点を踏まえた上で、使用する装置の大きさ、処理量などによって選択できる。
該低沸点物形成ガスの吹込み方法としては、1)ガスボンベから流量調整弁を介する方法、2)該低沸点物形成ガスを一旦、炉内での反応性に乏しいAr,COガス,Heなどのキャリアーガスと混合する方法、を挙げることができる。1)の場合、SiOガス局所での反応率、反応速度が高いという利点を有する反面、吹込みガス量が少ないため、SiOガスとの混合が局所的になりがちで未反応部位が発生しやすい、という欠点を有する。2)の場合、吹込みガス量が多く、SiOガスとの混合、反応が均一化できるという利点を有する反面、SiOガス局所での反応率、反応速度が低い、という欠点を有する。両者は利点及び欠点をそれぞれ有するが、SiOガスとの混合、反応が均一化できる点から2)が好ましい。
原料を、例えば1700℃まで加熱するとともに、凝縮器後部または後方に設けられた真空ポンプ(図示せず)を作動させて反応容器内を所定圧力、例えば10Paとする。原料温度が所定温度、例えば1410℃を超えた時点でSiOガスの発生量が急激に増大するとともに、反応容器内圧力も急激に増大する点に注意が必要である。
発生したSiOガスは、外部を水、空気などの冷媒で冷却した凝縮器の邪魔板で凝縮させ、固体SiO膜を形成させる。凝縮効率を上げるために、邪魔板内に冷媒を通過させてもよい。凝縮器の温度は、SiOガスを回収することを目的とすることから、SiOガスを邪魔板に凝縮させることができ、かつ、低沸点化合部を凝縮させない温度、例えば、1100℃以下、好ましくは1100℃〜110℃の範囲であることが望ましい。水素ガスを用いた場合には、さらに低温で凝縮させることも可能である。このときの凝縮器内の圧力を所定値、例えば400Paに維持する。SiOガスの凝縮器内の滞留時間は、SiOが十分に邪魔板に付着する時間であれば特に制限はされない。
次に、凝縮器に付着したSiOを回収する。回収方法は従来から用いられていた方法を採用できる。例えば、凝縮器全体を冷却し、固体SiOを剥離して回収する。
該低沸点物形成ガスによって、SiOガス中に含まれるリンと反応させて低沸点化合物を形成させたので、リンは実質的に凝縮器では付着することはない。また、該低沸点物形成ガス、SiOと該低沸点物形成ガスとの反応物、キャリアーガスなどの非凝縮性ガスは、凝縮することなく、凝縮器を通過する。
このように、不純物であるPを大幅に減少させることができる。したがって、次の工程では、得られた精製SiOを用いて容易にSiを製造することができる。
(Siの製造)
SiOからSiの抽出は従来公知の方法を採用することができる。例えば、上記で得られたSiOをるつぼ、例えば高純度黒鉛製のるつぼに投入し、るつぼごと加熱炉に装入する。このSiOを大気圧、不活性ガス雰囲気下、例えばAr,COガス、He、所定温度、例えば、1550℃で所定時間、例えば1時間加熱した後、冷却、固化させる。その後、炉外に取り出す。処理時間は、加熱炉の大きさ、処理すべきSiOの量によって変化するので、適宜変更することが可能である。
SiOは不均化反応により、大半がSiとSiOの2相に分離した状態となっており、Si塊からSiO粒を剥離させてSiを得る。本発明によってSiO原料中の不純物を除くことによって、高濃度のPを含む安価なSiを原料に用いても、太陽電池基板用Siの成分仕様を満たすことができる。
ここで、太陽電池基板用Siの成分仕様とは次の組成をいう。太陽電池基板用Siは、一般に、純度のより高いものを用いる程、性能が向上するといわれるが、高純度化するに従い性能向上率は逓減していく。一方で、Siが高純度になる程、純度を上昇させるための費用は急激に増大するので、ある特定のSi純度が費用−効果の最適点となる。この最適点は、成分毎に異なり、現在の太陽電池として市場価値を有する性能を満足するためには、次の範囲のSiを用いることが望ましい。即ち、質量割合でリン(P)0.1ppm以下、ヒ素(As)0.1ppm、アンチモン(Sb)0.1ppm以下、ボロン(B)0.3ppm以下、ガリウム(Ga)0.1ppm以下、インジウム(In)0.1ppm以下、その他の金属成分0.1ppm以下である。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は実施例によって限定されるものではない。
(実施例1:水素ガス)
1.SiOの精製
図1に記載の装置に準じてSiOの製造、精製を行った。吹き込みガスとして水素ガスを、キャリアーガスとしてArガスを用い、SiO発生器の頂部から吹き込んだ。
SiOの精製方法について説明する。直径1mの反応容器内に直径0.5mのるつぼを設置し、その中に40kgの金属Siと150kgの高純度けい砂を混合したものを投入した。このとき、粒の平均径は、金属Siが0.4mm、けい砂が7mmであった。また、金属Siの不純物は、Pが40ppm、Bが9ppm、Feが1500ppm、その他の金属成分が500ppmであり、高純度けい砂中の不純物は、いずれもPが0.3ppm、Bが0.5ppm、Feが400ppm、その他金属が100ppmであった。
次に、反応炉内をアルゴン(Ar)ガスで満たし、るつぼ周囲に設置された抵抗ヒータにより原料を1700℃まで加熱するとともに、真空ポンプを作動させて反応容器内を10Paの圧力とした。SiOの精製中は、常に、水素ガス1mg/sとArガス10mg/sを混合し、1200℃に予熱した後に、反応炉内部に吹込み続けた。原料温度が1410℃を超えた時点でSiOガスの発生が急激に増大し、反応容器内圧力は最終的に1300Paに達した。
発生したSiOガスは、外部を水冷した凝縮器内壁で凝固し、固体SiO膜を形成した。このときの凝縮器内部圧力は平均400Paであった。1700℃での加熱操業を1.5時間継続した後、装置を冷却し、解体した凝縮器内壁から固体SiOを剥ぎ取って回収した。るつぼ内に残留した金属Siは、0.06kgであり、凝縮器から剥離、回収された固体SiOは、約160kgであった。尚、SiO原料温度測定は、るつぼ内壁に取り付けられた熱電対により実施し、圧力測定は容器外部に引き出した保温管内圧力を非接触式圧力計によって計測した。得られた固体SiO中の成分分析結果は、質量割合で、Pが0.05ppm、Bが0.3ppm、Feが0.07ppm、その他の金属成分が合計1ppmであった。
この場合のPの除去率は、99.88%であった。
2.SiOからSiの製造
次に、Si抽出工程においてSiOからSiを抽出した。上記で得たSiOを高純度黒鉛製のるつぼに投入し、るつぼごと加熱炉に装入した。このSiOを大気圧アルゴン雰囲気下の1550℃で1時間加熱した後、冷却、固化させ、炉外に取り出した。この段階で装入されたSiOは不均化反応により大半がSiとSiOの2相に分離した状態となっており、手作業でSi塊からSiO粒を剥離させて25kgのSiを得た。このSiの一部を成分分析した結果、Pが0.05ppm、Bが0.23ppm、Feが0.08ppm、Hが0.1ppm、その他の金属成分が0.01ppmであった。得られたSiは、太陽電池基板用Siの成分仕様を満たした。
(実施例2:フッ素ガス)
1.SiOの精製
水素ガスの代わりにフッ素ガスを用いることを除いては、実施例1と同様に実施した。
るつぼ内に残留した金属Siは、0.06kgであり、凝縮器から剥離、回収された固体SiOは、約160kgであった。得られた固体SiO中の成分分析結果は、質量割合で、Pが0.07ppm、Bが0.3ppm、Feが0.07ppm、その他の金属成分が合計1ppmであった。
この場合のPの除去率は、99.83%であった。
2.SiOからSiの製造
次に、実施例1と同様にSi抽出工程においてSiOからSiを抽出した。
その結果、25kgのSiを得た。このSiの一部を成分分析した結果、Pが0.07ppm、Bが0.23ppm、Feが0.08ppm、Hが0.1ppm、その他の金属成分が0.01ppmであった。
抽出したSiを融解し、1500℃、1Paで10分間の真空脱ガスによって、フッ素の蒸発除去を行った。真空脱ガス後のSi成分を分析したところ、Pが0.065ppm、Fが0.001ppmであった。得られたSiは、太陽電池基板用Siの成分仕様を満たした。
真空脱ガスによってFはほぼ完全に除去された。なお、真空脱ガスによるSi中のP濃度が殆ど変化しなかった理由は、処理時間が極めて短かったためである。
(実施例3:塩素ガス)
1.SiOの精製
水素ガスの代わりに塩素ガスを用いることを除いては、実施例1と同様に実施した。
るつぼ内に残留した金属Siは、0.06kgであり、凝縮器から剥離、回収された固体SiOは、約160kgであった。得られた固体SiO中の成分分析結果は、質量割合で、Pが0.09ppm、Bが0.3ppm、Feが0.07ppm、その他の金属成分が合計1ppmであった。
この場合のPの除去率は、99.78%であった。
2.SiOからSiの製造
次に、実施例1と同様にSi抽出工程においてSiOからSiを抽出した。
その結果、25kgのSiを得た。このSiの一部を成分分析した結果、Pが0.09ppm、Bが0.23ppm、Feが0.08ppm、Hが0.1ppm、その他の金属成分が0.01ppmであった。
抽出したSiを融解し、1500℃、1Paで10分間の真空脱ガスによって、塩素の蒸発除去を行った。真空脱ガス後のSi成分を分析したところ、Pが0.08ppm、Clが0.002ppmであった。得られたSiは、太陽電池基板用Siの成分仕様を満たした。
本発明のSiO製造用の装置の一例を示す概略図である。
符号の説明
1 反応容器、
2 Si粒−SiO粒混合原料、
3 るつぼ、
4 加熱装置、
5 SiOガス、
6 凝縮器、
7 固体SiO、
8 真空ポンプ、
9 圧力計、
10 不純物蒸気、
11 吹込みガスボンベ、
13 キャリアーガスボンベ、
15 ガス混合器、
17 予熱器、
19,21,23 流量調整弁。

Claims (4)

  1. SiO発生器内で発生したSiOガス中に、リンと反応して低沸点化合物を形成させるガスを導入し、SiOガス中に含まれるリンと反応させて該低沸点化合物を形成させ、さらに、SiOガスの下流側に設けられた凝縮器で、主にSiOを凝縮させて回収し、該低沸点化合物を凝縮させることなく通過させることを特徴とするSiOの精製方法。
  2. 前記リンと反応して低沸点化合物を形成させるガスは水素ガス、フッ素ガスまたは塩素ガスである請求項1記載の方法。
  3. 前記リンと反応して低沸点化合物を形成させるガスの導入箇所は、SiO発生器、SiO凝縮器及びSiO発生器とSiO凝縮器の途中流路よりなる群から選ばれた少なくとも1つである請求項1又は2記載の方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法で得られたSiOを原料とすることを特徴とする高純度Siの製造方法。
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