JP2005206416A - 単結晶育成容器 - Google Patents

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承生 福田
Akira Yoshikawa
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Abstract

【課題】 ZnO単結晶等を育成するのに好適な単結晶育成容器を提供する。
【解決手段】 水熱合成法により単結晶を育成する単結晶育成容器であって、所要の温度と圧力に耐えられる第1の容器と、少なくとも蓋部と本体部とから成る、上記第1の容器内に収容可能な第2の容器とを有する単結晶育成容器において、上記第2の容器における上記蓋部と上記本体部は、その一方に形成された嵌合部が、他方の内壁部に密着して嵌合する構造とされていることを特徴とする単結晶育成容器、及び水熱合成法により単結晶を育成する単結晶育成容器であって、所要の温度と圧力に耐えられる第1の容器と、上記第1の容器内に収容可能な第2の容器とを有する単結晶育成容器において、上記第2の容器は、その内面に貴金属の箔が貼付されていることを特徴とする単結晶育成容器。
【選択図】 図3

Description

本発明は、水熱合成法により単結晶を育成するのに好適な単結晶育成容器に関し、特に酸化亜鉛の単結晶を育成する単結晶育成装置に用いるのに好適な単結晶育成容器に関する。
従来から単結晶の育成を行う際には、高温高圧の系において、物質を反応させて結晶の育成を行うようにしている。このような単結晶育成方法の1つに、高温高圧の系に温度差を設け、温度差により生じる育成溶液の結晶溶解度の差を利用した、いわゆる水熱合成法が知られている。
図12は、従来の単結晶育成装置において単結晶の育成を行う時の様子を模式的に示した図である。
図12に示すように、従来の単結晶育成装置100では、例えば鉄を主材とした高張力鋼からなり、高温高圧に耐えられる容器(オートクレーブ)110内で単結晶の育成が行われている。オートクレーブ110内は、バッフル板(対流制御板)104により、単結晶の育成に必要な育成溶液を生成する溶解領域と、単結晶を成長させる成長領域とに分けられている。
成長領域には、フレーム101に貴金属線102を取り付けた懸架ジグが設けられており、この懸架ジグの貴金属線102に種子結晶103が吊り下げられている。また溶解領域には、単結晶の原料105が配置されている。
このように種子結晶103と原料105をそれぞれの領域に配置した後、オートクレーブ110内に原料105を溶解させる溶解液(図示していない)を充填し、オートクレーブ110をヒーター106により加熱して、オートクレーブ110内が所定の高温高圧状態となるように温度制御を行うと、溶解領域では溶解液に原料105が溶解した育成溶液(飽和溶液)が発生する。
この時、オートクレーブ110の溶解領域(下部側)の温度を成長領域(上部側)の温度より高くなるように制御して、溶解領域と成長領域との間に温度差を与えることで、この温度差により生じる対流によって、溶解領域で発生した育成溶液が上昇して成長領域に流れ込むことになる。成長領域は溶解領域に比べて温度が低いため、成長領域に達した育成溶液は過飽和状態となる。
この結果、成長領域と溶解領域の温度差に相当する溶解度差分の原料105が種子結晶103に析出し、成長領域の種子結晶103が成長していくことになる。
例えば、図12に示した単結晶育成装置100により水晶の単結晶を育成する場合の育成条件は、溶解液として弱アルカリ性溶液を用いると共に、オートクレーブ110内の温度を約350℃、圧力を1000気庄〜1500気圧に設定することになる。
ところで、上記したような水熱合成法によって単結晶を育成する際には、育成する単結晶の種類にもよるが、通常、溶解液として、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸カルシウム(Na2C03)、水酸化カリウム(KOH)、リン酸(H3P04)などのアルカリ溶液または酸溶液を用いるため、この溶解液によって、オートクレーブ110の主材である鉄が腐食し、腐食した鉄成分が育成中の単結晶に不純物として混入するという不具合があった。
このため、上記したような単結晶育成装置100によって水晶の育成を行う際には、オートクレーブ110の内面に、ごく薄い保護膜を形成しておくことで、オートクレーブ110の主材である鉄の腐食を防止するようにしていた。
しかしながら、このように構成した場合は、溶解液が弱酸溶液又は弱アルカリ溶液の時は有効であるものの、溶解液が強酸又は強アルカリ溶液の時はオートクレーブ110の腐食を十分に防止することが困難であった。
このため、溶解液として強酸溶液又は強アルカリ溶液を用いる酸化亜鉛(ZnO)や方解石(炭酸カルシウム:CaC03)などの単結晶を育成する場合には、腐食した鉄成分が育成中の単結晶に混入するという不具合を解消することができなかった。
また、例えばオートクレーブ110の内面を貴金属によりコーティングして、オートクレーブ110の腐食を防止することも考えられるが、この場合はオートクレーブ110の主材である鉄と、貴金属との熱膨張係数が異なるなどの要因により、コーティングした貴金属が剥がれ易く、剥がれたところが腐食して育成中の単結晶に混入することがあり、問題の解決には至らないものであった。
そこで、このような問題を解決する技術が、特許文献1において提案された。
特許文献1に記載の単結晶育成容器は、図13に示すように、貴金属により形成した内筒容器200を、オートクレーブ110内に独立して設置し、この内筒容器の内部で単結晶の育成を行うようにしたものである。このようにすればオートクレーブ110の腐食はなくなり、従って、溶解液に強酸又は強アルカリ溶液を用いても、育成中の単結晶に不純物が混入するのを防止することができる。
この場合、内筒容器200は、それぞれ有底の円筒状とされた蓋部201と本体部202から形成される。蓋部201と本体部202は、その円筒周壁が略同径とされている。そして図示するように蓋部201と本体部202は、オートクレーブ110の内部空間に略密着状態で挿入されることで、蓋部201の円筒周壁203の端部と本体部202の円筒周壁204の端部が密着し(図では蓋部201と本体部202の境界を示すために、密着しないように示している)、内筒容器200の内部に密閉空間が形成されるようにしている。
ところがこのような単結晶育成容器には、次のような課題が残されている。
まず、内筒容器200は、上記のようにオートクレーブ110内で蓋部201と本体部202が密着することによって内部に密閉空間を形成するものであるが、上記構造では密閉度が低下する場合があり、単結晶育成に好ましくない。
また、単結晶育成容器100(オートクレーブ110)は、実際のサイズとしては高さが10〜20m程度とされる。従って内筒容器200としては、直径30cm程度で、高さが10〜20mの円筒状のものとされる。このような内筒容器200、特に本体部202は、長尺であるが故に、その製造の難易度が高く、また運搬/保管/取り扱いなどにおいて手間やコストがかかる。
更に、内筒容器を白金のような貴金属で形成する場合は、白金は極めて高価であるので、その作製に高い費用がかかる。例えば工業用途に利用可能なサイズ(例えば20mm以上)の単結晶を量産(育成)するために内筒容器の形状を大型化すると、その作製費用が極めて高くなる。また、内筒容器の形状の大型化するにあたっては、その機械的強度を確保するために、内筒容器を肉厚にする必要があるため、使用する白金の量が増加し、この点からも作製費用が大幅に増加する。
そこで、オートクレーブ内に第2の容器として内筒容器を収容する単結晶育成容器において、その内筒容器の内面に貴金属のメッキを施すこと、或いは内筒容器を貴金属を用いたクラッド材で形成する技術が提案された(特許文献2)。
この場合、内筒容器内で単結晶の育成を行う際に、メッキ或いはクラッド材による貴金属の被膜層により、第2の容器(内筒容器)は強酸溶液又は強アルカリ溶液によっても腐食することがなく、不純物のない酸化亜鉛等の単結晶を育成できる。また内筒容器は例えば鉄やステンレス鋼で肉厚の大部分を作成でき、つまり全てを貴金属で形成するものではないため、全て貴金属で内筒容器を作成することに比べて、コストダウンを図ることもできる。
しかしながら、内筒容器内面に貴金属のメッキを施す場合や、内筒容器にクラッド材を用いる場合には、次のような課題が残されている。
まず貴金属メッキの場合、そのメッキ部分のみの厚みは数μm程度の薄いものとなる。これは実際の作業時においては傷が付きやすいものとなり、傷が付いた場合、内筒容器の素材部分である鉄やステンレス鋼部分がわずかに容器内側に表出する。すると内筒容器内の強アルカリ溶液等が鉄やステンレス鋼部分をおかすことになる。このため溶解液に強酸又は強アルカリ溶液を用いても育成中の単結晶に不純物が混入するのを防止するという本来の貴金属メッキの効果が得られなくなる。つまり貴金属メッキでは、その膜厚が実用上、十分でない場合があった。
また貴金属とステンレス等によるクラッド材を用いて内筒容器を形成する場合は、貴金属部分の厚みは0.1mm程度となる。これはステンレス鋼等を内面側に表出させないという点では、その膜厚は実用上十分な厚みである。しかしながら、このようなクラッド材では、必要とする白金等の高価な貴金属の量が、上記メッキの場合に比べたら遥かに多くなり、コスト的な負担が大きくなる。
特開2003−165794号公報 特開2003−176197号公報
本発明の目的は、密閉度が高く、また製造や取り扱い時に好適な内側容器を有する単結晶育成容器を提供することである。
本発明の他の目的は、内側容器内で単結晶育成を行う単結晶育成容器において、溶解液による内側容器の主材の腐食を防止して、育成中の単結晶への不純物混入を防止すると共に、内側容器のコストを軽減した単結晶育成容器を提供することである。
本願第1発明は、水熱合成法により単結晶を育成する単結晶育成容器であって、所要の温度と圧力に耐えられる第1の容器と、少なくとも蓋部と本体部から成ると共に、上記第1の容器内に収容可能な第2の容器とを有する単結晶育成容器において、上記第2の容器における上記蓋部と上記本体部は、その一方に形成された嵌合部が、他方の内壁部に密着して嵌合する構造とされていることを特徴とする単結晶育成容器である。
本願第2発明は、水熱合成法により単結晶を育成する単結晶育成容器であって、所要の温度と圧力に耐えられる第1の容器と、上記第1の容器内に収容可能な第2の容器とを有する単結晶育成容器において、上記第2の容器は、その内面に貴金属の箔が貼付されていることを特徴とする単結晶育成容器である。
本願第1発明によれば、第2の容器における蓋部と本体部が、一方の嵌合部と他方の内壁部により密着して嵌合する嵌合構造とされていることで、第2の容器の内部空間の密閉度を高めることができ、これによって単結晶育成容器としての性能を安定させることができる。
本願第2発明によれば、内部で単結晶育成を行う第2の容器は、その内面に貴金属の箔が貼付されているため、強酸溶液又は強アルカリ溶液によっても腐食することがなく、従って不純物のない単結晶を育成することが可能になる。
本願第1発明において、第2の容器の本体部を複数の構成部品から構成し、或る構成部品に形成された嵌合部が、他の構成部品の内壁部に密着して嵌合されていくことで、上記本体部が形成されるようにすることができる。
第2の容器の本体部は長尺なものが必要とされるが、これを複数の構成部品を繋げて形成されるようにすることで、各構成部品として比較的短尺の構成部品を製造すればよいものとなる。従って、製造の簡易化、取り扱いの容易化、及びこれらによるコストの削減も可能となる。
第1発明の上記第2の容器は、その内部に上記所要の圧力が加えられた時に、上記第1の容器と接し、その内部の圧力が上記第1の容器によって支持されるように形成することができる。これにより、第2の容器の内部圧力を第1の容器によって支持することが可能になり、上記嵌合構造部分は内部圧力によってより密着されることになるため、密閉度の向上に好適である。さらにこの場合、第1の容器内の圧力と、第2の容器内の圧力差を調整するための圧力調整機構を設けることなく、第1の容器内に第2の容器を配置することができるため、単結晶育成容器の構造を簡略化することが可能になる。
第1発明の上記第2の容器の蓋部及び本体部は、貴金属により形成することができる。第2の容器を貴金属により形成すれば、第2の容器は強酸溶液又は強アルカリ溶液によっても腐食しないので、本発明の容器を酸化亜鉛の単結晶を育成する単結晶育成装置に適用すれば、不純物のない単結晶を育成することが可能になる。またこの場合、強酸溶液又は強アルカリ溶液によって第1の容器が腐食することもないので、第1の容器の劣化を防止することができるという利点もある。
第1発明の単結晶育成容器は、特に酸化亜鉛の単結晶の育成に用いるのに適する。
本願第2の発明において、上記第2の容器の主材は、例えばステンレス鋼によって形成されるのが好ましい。そして上記貴金属の箔は、厚みが10〜50μm、特に20〜30μmであるのが好ましい。貴金属の箔により第2の容器の内面を覆うことで、溶解液による第2の容器の主材(ステンレス鋼等)の腐食を防止し、育成中の単結晶への不純物混入を防止できる。貴金属としては、金(Au)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、インジウム(Ir)などの白金族元素を用いることができるが、白金及びインジウムが特に好ましい。
貴金属の箔の厚みが10〜50μmであると、作業時に容易に傷が付かない実用上十分な厚みとなり、これにより装置の実用的性能を向上させることができる。さらに、貴金属を用いたクラッド材に比べては、貴金属の必要量は低減し、第2の容器の低コスト化を実現できる。特に工業用途に利用可能な大型サイズの単結晶を育成する単結晶育成容器を形成する際の作製費用を大幅に低減できる。
第2発明の上記第2の容器には、その内部の圧力と外部の圧力を調整する圧力調整手段を設けることができる。圧力調整手段を設けた場合は、第2の容器が内外圧力差によって変形することなく、第2の容器内で安定した単結晶の育成を行うことが可能になる。
第2発明の単結晶育成容器において、第1発明におけるように、第2の容器における蓋部と本体部を、一方の嵌合部と他方の内壁部により密着して嵌合する嵌合構造としてもよい。また、第2の容器の本体部を複数の構成部品から構成し、或る構成部品に形成された嵌合部が、他の構成部品の内壁部に密着して嵌合されていくことで、上記本体部が形成されるようにしてもよい。
第2発明の単結晶育成容器は、特に酸化亜鉛の単結晶の育成に用いるのに適する。
<第1発明の第1の実施の形態>
先ず、図1〜図4を用いて、本願第1発明の第1の実施の形態としての単結晶育成容器の構造を説明する。なお、本実施の形態では、酸化亜鉛(ZnO)の単結晶を育成するのに好適な単結晶育成容器の構造を例に挙げて説明する。
図1は第1の実施の形態としての単結晶育成容器の分解斜視図、図2はその断面図を示している。さらに図3(a)及び(b)は、単結晶育成容器の内部に配される内筒容器10の斜視図及びA−A断面図を示している。
図1に示すように、本実施の形態としての単結晶育成容器1は、少なくとも、水熱合成法により酸化亜鉛(ZnO)の単結晶を育成する際に与えられる所定の温度と圧力に耐えられる第1の容器(オートクレーブ)2と、オートクレーブ2の内部に収容可能な第2の容器(内筒容器)10とを有する。
オートクレーブ2は、例えば鉄を主材とした高張力鋼などにより形成された容器本体3と蓋体4とからなる。容器本体3と蓋体4は、パツキン6を挟んで容器本体3に蓋体4を被せて、固着部5,5により固着することで、その内部を気密状態に保つことができるようになっている。
また、容器本体3の外周には、その内部を加熱するためのヒーター7が取り付けられている。
オートクレーブ2内には、例えば金(Au)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、或いは白金(Pt)などの白金族元素からなる貴金属によって形成された内筒容器10が収容されている。
内筒容器10は、図3に示すように、例えばその内部が空洞になっている円筒状の容器であり、蓋部30と本体部40として、上下2つの部位に分離することが可能とされる。
内筒容器10の外径は、図2(a)、(b)からも分かるように、オートクレーブ2の内径より僅かに小さいサイズとされる。具体的には内筒容器10は、内筒容器10をオートクレーブ2に収容する際に支障がない範囲で、できるだけオートクレーブ2の内部空間の径に近い外径を有する円筒形状とされる。例えば、内筒容器10をオートクレーブ2に収容した時は、内筒容器10がオートクレーブ2の内面に接するぐらいの形状にすることが好ましい。例えば内筒容器10の外径は、オートクレーブ2の内径より0.1〜0.2mmだけ小さいサイズとするのが好ましい。
このように本実施の形態の単結晶育成容器1は、オートクレーブ2の内面に保護膜を形成したり、或いはオートクレーブ2の内面を貴金属によりコーティングするのではなく、オートクレーブ2内に、オートクレーブ2の内径より僅かに小さい外径で、しかも強酸溶液や強アルカリ溶液によっても腐食しない貴金属からなる内筒容器10を設けるようにしたものである。
そして、このように構成した場合は、オートクレーブ2内に内筒容器10を収容したうえで、オートクレーブ2を加熱して、内筒容器10の内部をZnO単結晶の育成条件にあった所要の高温高庄状態に設定すると、内筒容器10はその内圧によって膨張し、オートクレーブ2の内壁面に密着することになる。これにより、ZnO単結晶育成時において内筒容器10が受ける内部圧力をオートクレーブ2により支持することが可能になる。
なお、内筒容器10の肉厚は、内筒容器10とオートクレーブ2間の隙間、及び内側容器10が受ける内圧、内筒容器10の材質の弾性係数などを考慮して、少なくとも、内筒容器10に所要の圧力を加えた時に、内筒容器10が膨張してオートクレーブ2の内壁面に密着するような厚さに設定すれば良い。但し、内筒容器10の材料である白金(Pt)は高価であるため、その厚みを可能な限り薄くすることが好ましい。ZnO単結晶育成容器として使用する場合は、内筒容器10の厚さは0.3〜0.5mmであるのが好ましい。
本実施の形態では、内筒容器10を形成する蓋部30と本体部40は、互いに嵌合する構造とされている。
図3からわかるように蓋部30は有底の円筒形状とされるが、本体部40に対向することになる開口側には、円筒周壁が内部側に、その周壁の厚み分だけ段差が付けられて成る嵌合部31が形成されている。そしてこの嵌合部31が、同じく有底の円筒形状とされる本体部40の開口側に嵌め込まれることで、本体部40の周壁内面41に対して嵌合部31が密着して嵌合される状態となる。
嵌合された状態は図2のようになる。なお図2では説明の都合上、蓋部30と本体部40の各円筒周壁の端部の当接部分に間隙を設けているが、実際には各円筒周壁の端部も密着される状態にまで嵌め込まれる。
そしてこのように嵌合部31が周壁内面41に嵌合されることで、内筒容器10は密閉度の高い内部空間を得ることができる。即ち、嵌合部31が、蓋部30と本体部40の各円筒周壁の端部の当接部分を覆うこと、さらには嵌合部31が周壁内面41と密着することで、密閉度は向上される。
さらには、上述したように内筒容器10はZnO単結晶の育成条件にあった所要の高温高圧状態に設定すると、その内圧によって膨張し、オートクレーブ2の内壁面に密着することになるが、この際、嵌合部31と周壁内面41の密着性も高められ、より密閉性は良好となる。
従って本実施の形態によれば、内筒容器10の密閉度を良好に保つことができ、単結晶育成容器として安定した機能を得ることができる。
上記説明では、内筒容器10の内部をZnO単結晶の育成条件に設定した時に、内筒容器10が内圧によってオートクレーブ2の内壁面に密着すると述べたが、例えば事前に内筒容器10をオートクレーブ2に収容したうえで、内筒容器10内を高温高圧状態に保つことで、内筒容器10を塑性変形させて、内筒容器10とオートクレーブ2とを密着させておくようにしても良い。そのような場合でも、嵌合部31と周壁内面41の密着性も高められることは同様であり、密閉性を良好にすることができる。
図4は、図1〜図3で説明した単結晶育成容器を用いた単結晶育成装置20により、単結晶の育成を行った場合の様子を模式的に示した図である。ここでは酸化亜鉛(ZnO)の単結晶を育成する場合を例に挙げる。
図4に示す単結晶育成装置20では、オートクレーブ2に収容された内筒容器10の内部でZnO単結晶の育成が行われる。内筒容器10の内部は、バッフル板14により、単結晶の育成に必要な育成溶液21を生成する溶解領域と、単結晶を成長させる成長領域とに分けられている。内筒容器10の成長領域には、フレーム11に貴金属線(白金線)12を取り付けた懸架ジグが設けられており、この懸架ジグの白金線12に種子結晶13が吊り下げられている。また内筒容器10の溶解領域には、酸化亜鉛の原料16が配置されている。
このような内筒容器10の内部には、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸カルシウム(Na2C03)、水酸化カリウム(KOH)などの強アルカリ溶液が所定の充填率で注入されている。
オートクレーブ2の外周には、ヒーター7が取り付けられており、このヒーター7により、オートクレーブ2を加熟して、内筒容器10内を所定の高温高圧状態に保つようにしている。
なお、図示していないが、実際には、オートクレーブ2に圧力計と熱電対を取り付けて、オートクレーブ2内の温度及び圧力が、所定温度及び圧力となるように、温度制御装置によりヒーター7の温度を制御して、内筒容器10内を所定の高温高圧状態に保つようにしている。
バッフル板14には複数の孔(図では円孔)が形成されており、この孔の数、つまり開口面積により、溶解領域から成長領域への対流量を制御するようにしている。
従って、このような単結晶育成装置20では、オートクレーブ2をヒーター7により加熱して、内筒容器10内が所定の高温高圧状態となるように温度制御を行うと、溶解領域では溶解液に原料16が溶解した育成溶液(飽和溶液)が発生する。この時、内筒容器10の溶解領域(下部側)の温度を成長領域(上部側)の温度より高くなるように制御して、溶解領域と成長領域との間に温度差を与えることで、この温度差により生じる対流によって、溶解領域で発生した育成溶液が上昇して成長領域に流れることになる。
この場合、成長領域は溶解領域に比べて温度が低いため、成長領域に造した育成溶液は過飽和状態になる。従って、成長領域では、成長領域と溶解領域の温度差に相当する溶解度差分の原料が種子結晶13に析出し、種子結晶13が成長していくことになる。
例えば上記した単結晶育成装置20によって品質の良いZnO単結晶を育成する場合の育成条件としては、例えば内筒容器10内の成長領域の温度を330〜360℃、その圧力を600〜800 kg/cm2、成長領域と溶解領域との温度差を10〜30℃の温度範囲内となるように設定すれば良い。
そして、このような本実施の形態の単結晶育成容器1を用いて単結晶育成装置20を構成した場合は、内筒容器10の外形がオートクレーブ2の内面に接した状態で収容されているので、内筒容器10の内圧が高くなるにしたがって内筒容器10がオートクレーブ2の内壁面に密着し、内筒容器10が受ける内圧はオートクレーブ2の内壁面によって支持されることになる。
従って、本実施の形態のような単結晶育成容器1によれば、オートクレーブ2内の圧力と、内筒容器10内の圧力との圧力差を調整するための圧力調整装置を設けることなく、オートクレーブ2内に内筒容器10を配置することができるため、単結晶育成容器の構造を簡略化することができる。さらに上述のとおり、内筒容器10は良好な密閉性を保てるものとなる。
また、このように構成した場合は、ZnO単結晶の育成は、円筒容器10内で行われるので、つまり、白金(Pt)などの貴金属容器内で行われるので、育成するZnOの単結晶に不純物が混入することもない。
また、逆に溶解液(強アルカリ溶液)によってオートクレーブ2の内壁(鉄)が腐食することもないので、オートクレーブ2の劣化も防止することができるという利点もある。
<第1発明の第2の実施の形態>
第2の実施の形態を図5及び図6で説明する。
図5は単結晶育成容器1の断面図を示し、図6(a)及び(b)は単結晶育成容器の内部に配される内筒容器10の斜視図及びB−B断面図を示している。
なお、単結晶育成容器1は上記第1の実施の形態と同様にオートクレーブ2内に内筒容器10が収容されて構成され、またオートクレーブ2の構造は図1及び図2と同様である。
また、オートクレーブ2と内筒容器10のサイズ関係や形状、さらには図4で説明した単結晶育成動作も第1の実施の形態と同様である。
第2の実施の形態の場合、内筒容器10の構造が第1の実施の形態と異なるため、内筒容器10の構造についてのみ述べる。
第2の実施の形態では、内筒容器10の本体部40が、複数(3つの例で示す)の構成部品としての本体部品40A、40B、40Cが互いに嵌合することで接合されている。
図6で説明すると、内筒容器10の蓋部30の構造は図3と同様である。本体部40の一部を構成する本体部品40Aは、無底の円筒形状とされ、本体部品40Bに対向することになる開口側には、円筒周壁が内部側に、その周壁の厚み分だけ段差が付けられて成る嵌合部42Aが形成されている。そしてこの嵌合部42Aが、同じく無底の円筒形状とされる本体部品40Bの上部開口に嵌め込まれることで、本体部品40Bの周壁内面41Bに対して嵌合部42Aが密着して嵌合される。
また本体部品40Bは、本体部品40Cに対向することになる開口側には、円筒周壁が内部側に、その周壁の厚み分だけ段差が付けられて成る嵌合部42Bが形成されている。そしてこの嵌合部42Bが、有底の円筒形状とされる本体部品40Cの開口側に嵌め込まれることで、本体部品40Cの周壁内面41Cに対して嵌合部42Bが密着して嵌合される。
このようにして本体部品40A、40B、40Cが互いに嵌合して接合されることで、例えば10〜20m程度の高さとなる本体部40が形成される。
このような本体部40に対しては、蓋部30が嵌合される。即ち、蓋部30における嵌合部31が、本体部40の開口側端となる本体部品40Aに嵌め込まれることで、本体部品40Aの周壁内面41Aに対して嵌合部31が密着して嵌合される状態となる。
以上のように本体部品40A、40B、40Cが互いに嵌合され、かつ蓋部30が嵌合された状態は図5のようになる。なお図5では説明の都合上、蓋部30と本体部40の各円筒周壁の端部の当接部分、さらに各本体部品40A、40B、40Cの間の円筒周壁の端部の当接部分に間隙を設けているが、実際には各円筒周壁の端部も密着される状態にまで嵌め込まれる。
そしてこのように嵌合部31と周壁内面41A、嵌合部42Aと周壁内面41B、嵌合部42Bと周壁内面41Cが、それぞれ嵌合されて内筒容器10が形成されることで、密閉性の良好な内筒容器10が得られることは、上記第1の実施の形態と同様である。
図6では各本体部品40A、40Bの下端部に嵌合部42A、42Bが設けられているが、嵌合部は各本体部品の上端部に設けてもよい。或は両端部に嵌合部を設けた本体部品と、嵌合部を持たない本体部品とを交互に配置してもよい。
この第2の実施の形態の場合、10〜20m程度となる長尺の本体部40を複数の本体部品40A、40B、40C....に分けて製造し、また取り扱うことができる。このため製造の簡易化、取り扱いの容易化、及びこれらによるコストの削減が可能となる。
なお、この例では本体部40を3つの本体部品(40A、40B、40C)に分けるものとしたが、もちろん2つの部品に分けたり、或いは4つ以上の部品に分けることも当然可能である。それらの複数の本体部品が嵌合構造により接合されて長尺の本体部40が形成されればよい。
<第1発明の第3の実施の形態>
第1発明の第3の実施の形態としての内筒容器10の構造を図7に示す。
上記第1の実施の形態(図3参照)では、内筒容器10の蓋部30側に嵌合部31を設けたが、図7の内筒容器10は、本体部40側に嵌合部43を形成した例である。この場合、本体部40側に嵌合部43が、蓋部30の周壁内面33に対して密着して嵌合される。
このように、本体部40側に嵌合部43を形成する構造としても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
又、図示しないが、図7の構造における本体部40を上記第2の実施の形態のように複数の本体部品の嵌合によって形成してもよい。そのようにすれば第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
<第1発明の適用例>
以上、実施の形態を説明してきたが、本願第1発明の適用例は各種考えられる。
上記実施の形態では、単結晶育成容器1を用いた単結晶育成装置20によって、ZnO単結晶を育成する場合を例に挙げて説明したが、これはあくまでも一例であり、ZnO単結晶以外の各種単結晶を水熱合成法により育成する単結晶育成装置にも適用することが可能である。
また、本発明の単結晶育成容器1は、溶解液として強酸又は強アルカリ溶液を用いて単結晶を育成する場合に好適なものとされるが、例えばリン酸(H3P04)などの弱酸又は弱アルカリ溶液を用いて単結晶を育成する場合に適用できることは言うまでもない。
さらに上記実施の形態では、内筒容器10を貴金属により形成するものとして説明したが、強酸又は強アルカリ溶液によって腐食しなければ、貴金属以外の材料によって形成することも可能である。
<第2発明の実施の形態>
次に、図8及び図9を用いて、本願第2発明の実施の形態としての単結晶育成容器の構造を説明する。なお、本実施の形態では、酸化亜鉛(ZnO)の単結晶を育成するのに好適な単結晶育成容器の構造を例に挙げて説明する。
図8には、本実施の形態としての単結晶育成容器の分解斜視図が示されている。
図8に示すように、本実施の形態の単結晶育成容器1は、少なくとも、水熱合成法により酸化亜鉛(ZnO)の単結晶を育成する際に与えられる温度と圧力に耐えられる第1の容器(オートクレーブ)2と、このオートクレーブ2の内部に収容可能な第2の容器(内筒容器)10とからなる。
オートクレーブ2は、例えば鉄を主材とした高張力鋼などにより形成された容器本体3と蓋体4とからなり、パツキン6を挟んで容器本体3に蓋体4を被せて、固着部5により固着することで、その内部を気密状態に保つことができるようになっている。また、容器本体3の外周には、その内部を加熱するためのヒーター7が取り付けられている。
内筒容器10は、その内部が空洞になっている例えば円柱状の容器であり、支柱24によって支持された底台23の上に載置されている。
また、内筒容器10には、その内部と外部と圧力差の均衡を図るための圧力調整部22が設けられていると共に、その外周囲に複数の開口孔(図では円孔)が形成されたリング状の外部バッフル板15が取り付けられている。
なお、圧力調整部22と外部バッフル板15については後述する。
図9は、図8に示した内筒容器10の構造を説明するための断面図である。
図9に示すように、内筒容器10もまた本体部40と蓋部30からなり、その内部を気密状態に保つことができるようになっている。
そして、本実施の形態では、拡大して示すように、内筒容器10を、主材34としてステンレス鋼を用いて形成することで、その強度を確保したうえで、主材34(ステンレス鋼)によって形成されている内筒容器10の内面全体を白金などの貴金属で形成した箔35によって覆うようにしている。箔35の厚みは10μm〜50μmとする。
なお、箔35は、白金(Pt)以外にも、例えば金(Au)、銀(Ag)、タンタル(Ta)などの白金族元素からなる貴金属を用いることが可能である。また、内筒容器10の主材34は、必ずしもステンレス鋼に限定されるものではなく、鉄材その他であってもよく、特に各種単結晶の育成する際の所要の高温高圧条件の下で、その表面に形成した白金等の箔35が剥がれることのない金属材料であれば他の金属によって形成することも可能である。しかし、主材34をステンレス綱とすれば、例えば鉄を主材34とした高張力鋼に対して白金による箔35を貼付する場合に比べて、貼付性が良好となる。
箔35については、例えば内筒容器10の内面全体に箔を配置し、内筒容器10の内部に内圧をかけることで貼付することができる。また単結晶育成の際には内筒容器10内に内圧がかかっているため、箔35がはがれることもほとんどない。
そして、内筒容器10の内面全体に箔35が貼付されることによっては、内筒容器10は強酸溶液又は強アルカリ溶液によっても腐食することがなくなり、このため不純物のない酸化亜鉛の単結晶を育成することが可能になる。特には、箔であることや、その厚みが10〜50μmであることなどにより、白金部分の厚みは、作業時に容易に傷が付かない実用上十分な厚みとなる。従って傷によってステンレス綱34の部分が内面側に表出して溶液におかされることが無くなり、上記のように不純物のない酸化亜鉛の単結晶育成の効果を、より確実なものとすることができる。
さらに前述したように、内筒容器10として貴金属を用いたクラッド材を用いれば不純物のない酸化亜鉛の単結晶育成効果は高いが、内筒容器10のコスト的な負担が大きくなる。これに対して本実施の形態のように10〜50μm程度の厚みの箔を用いる場合、内筒容器10の作成に必要とされる白金等の貴金属の量を削減でき、従ってコスト負担を軽減できることにもなる。
図10は、図8に示した単結晶育成容器を用いて構成した単結晶育成装置20においてZnO単結晶の育成を行った場合の様子を模式的に示した図である。
図10に示す単結晶育成装置20では、オートクレーブ2に収容された内筒容器10の内部でZnO単結晶の育成が行われる。この図面上では特に示していないが、内筒容器10の内面全体は箔35が貼付されている。内筒容器10の内部は、内部バッフル板14により、単結晶の育成に必要な育成溶液21を生成する溶解領域と単結晶を成長させる成長領域とに分けられている。内筒容器10の成長領域(上部側)には、フレーム11に貴金属線(白金線)12を取り付けた懸架ジグが設けられており、この懸架ジグの貴金属線12に種子結晶13が吊り下げられている。
また内筒容器10の溶解領域(下部側)には、酸化亜鉛の原料16が配置されている。
また、このような内筒容器10の内部には、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸カルシウム(Na2C03)、水酸化カリウム(KOH)などの強アルカリ溶液が所定の充填率で注入されていると共に、オートクレーブ2と内筒容器10との間には伝熱のために、例えば純水などの伝熱溶液42が所定の充填率で注入されている。
オートクレーブ2の外周には、ヒーター7が取り付けられており、このヒーター7により、オートクレーブ2を加熱して、内筒容器10内を所定の高温高圧状態に保つようにしている。
なお、図示していないが、実際にはオートクレーブ2に圧力計や熱電対を取り付けるなどして、オートクレーブ2内の温度及び圧力が、所定温度及び圧力となるように、温度制御装置によりヒーター7の温度を制御して、内筒容器10内を所定の高温高圧状態に保つようにしている。
内部バッフル板14には複数の孔(図では円孔)が形成されており、この孔の数、つまり開口面積により、溶解領域から成長領域への対流量を制御するようにしている。
従って、このような単結晶育成装置20では、オートクレーブ2をヒーター7により加熱して、内筒容器10内が所定の高温高圧状態となるように温度制御を行うと、溶解領域では溶解液に原料16が溶解した育成溶液(飽和溶液)21が発生する。
この時、内筒容器10の下部(溶解領域)側の温度を上部(成長領域)の温度より高くなるように制御して、溶解領域と成長領域との間に温度差を与えることで、この温度差により生じる対流によって、溶解領域で発生した育成溶液21が上昇して成長領域に流れることになる。
成長領域は溶解領域に比べて温度が低いため、成長領域に達した育成溶液21は過飽和状態になる。よって、成長領域では、溶解領域との温度差に相当する溶解度差分の原料16が種子結晶13に析出し、種子結晶13が成長していくことになる。
例えば上記した単結晶育成装置20によってZnO単結晶を育成する場合は、内筒容器10内の成長領域の温度を330〜360℃、その圧力を600〜800 kg/cm2、成長領域と溶解領域との温度差を10〜30℃の温度範囲内となるように制御すると、品質の良いZnO単結晶を育成することができる。
また本実施の形態の単結晶育成装置20では、図8に示したように、内筒容器10の外側に外部バッフル板15が設けられている。仮に外部バッフル板15が無いものとすると、オートクレーブ2と内筒容器10間の熱対流が内筒容器10の外側全領域にわたって発生し、内部バッフル板14により内筒容器10内の熱対流を制御して、成長領域と溶解領域間に温度差を得るようにしても、内筒容器10の外側の熱対流により、内筒容器10内の領域間で所定の温度差が得られなくなり、結果的に結晶育成が効果的に行われないという不都合が生じる。
そこで、本実施の形態では、内筒容器10に外部バッフル板15を設け、この外部バッフル板15により内筒容器10の外側の対流も制限することで、内筒容器10内の領域間において、種子結晶13の成長に必要な温度差が確実に得られるようにしている。このとき、外部バッフル板15は、内部バッフル板14と同じ高さ位置に設けると、内筒容器10内の領域間の温度差が確実に得ることができる。
また、1枚の外部バッフル板15により確実な温度差が得られない場合には、複数の外部バッフル板15を取り付けるようにしてもよい。
さらに本実施の形態の単結晶育成装置20では、内筒容器10の一部を、圧力調整部22として機能させるために、内筒容器10の一部をじゃばら状に構成して、内筒容器10の内外圧差に応じて、内筒容器10を上下方向に伸縮可能に構成している。このようにすれば、庄力調整部22の上下方向の伸縮によって、内筒容器10の内部圧力と外部圧力の均衡を図ることができるので、内筒容器10の内外圧力差によって内筒容器10が変形するのを防止することができる。
図11は、圧力調整部22による圧力調整の様子を複式的に示した図である。
例えば内筒容器10の内部圧力が外部圧力より高い場合は、図11(a)に示されているように、内筒容器10の内圧によって圧力調整部22のじゃばら状の部分が伸びることで、内筒容器10内の圧力は低く、オートクレーブ2内の圧力が高くなり、内筒容器10の内部圧力と外部圧力との均衡を図ることができる。
これに対して、内筒容器10の外部圧力がその内部圧力より高い場合は、図11(b)に示されているように、内筒容器10にかかる外圧によって圧力調整部22のじゃばら状の部分が縮むことで、内筒容器10内の圧力は高く、オートクレーブ2内の圧力が低くなり、内筒容器10の内部圧力と外部圧力との均衡を図ることができる。
従って、このような本実施の形態の単結晶育成容器1を用いて単結晶育成装置20を構成すれば、内筒容器10内に充填した溶解液(強アルカリ溶液)の充填率と、オートクレーブ2内に充填した伝熱溶液42の充填率との違いや、伝熱溶液42の動的変化によって発生する内筒容器10の内外圧力差を吸収することが可能になる。これにより、内筒容器10は内外圧力差によって変形することがなく、安定した単結晶の育成を行うことができるようになる。
また、本実施の形態の単結晶育成装置20では、白金などの貴金属による箔35を貼付した内筒容器10内で単結晶の育成を行うようにしているため、育成する酸化亜鉛(ZnO)の単結晶に不純物が混入するといったこともない。
さらに、この場合は、溶解液である強アルカリ溶液を内筒容器10内に密閉封入することができるので、この溶解液によってオートクレーブ2の内壁(鉄)がほとんど腐食することなく、オートクレーブ2が劣化するのも防止することができる。
<第2発明の応用例>
以上、実施の形態を説明してきたが、本願第2発明の応用例は各種考えられる。
上記実施の形態では、内筒容器10の一部をじゃばら状に構成した圧力調整部22を内筒本体部40に設け、内筒容器10の内外圧差に応じて、内筒容器10を上下方向に伸縮させることで、内筒容器10の内外圧力差の均衡を図るようにしているが、これはあくまでも一例であり、圧力調整部22の構成は各種考えられるものである。例えば内筒容器10を径方向に伸縮させるような圧力調整部22を内筒本体部40に設けるようにしてもよい。また例えば内筒容器10の蓋部30に、圧力調整部22として、ベローズや庄力調整室などを設けることも可能である。
図8及び図9の構造における内筒容器10の蓋部30及び本体部40を、図3又は図7に示すように、嵌合部によって嵌合するような構造にしてもよい。また、図8及び図9の構造における内筒容器10の本体部40を図6に示すように複数の本体部品の嵌合によって形成してもよい。そのようにすれば第1発明の第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、上記実施の形態では、単結晶育成容器1を用いた単結晶育成装置20によって、ZnO単結晶を育成する場合を例に挙げて説明したが、これはあくまでも一例であり、例えばリン酸(H3P04)などの弱酸又は弱アルカリ溶液を用いてZnO単結晶以外の各種単結晶、例えば水晶の単結晶を水熱合成法により育成する単結晶育成装置にも適用することが可能である。
本願第1発明の実施の形態としての単結晶育成容器の分解斜視図である。 本願第1発明の第1の実施の形態の単結晶育成容器の断面図である。 本願第1発明の第1の実施の形態の内筒容器の斜視図及び断面図である。 本願第1発明の実施の形態の単結晶育成装置による単結晶育成の説明図である。 本願第1発明の第2の実施の形態の単結晶育成容器の断面図である。 本願第1発明の第2の実施の形態の内筒容器の斜視図及び断面図である。 本願第1発明の第3の実施の形態の内筒容器の斜視図及び断面図である。 本願第2発明の実施の形態の単結晶育成容器の分解斜視図である。 本願第2発明の実施の形態の単結晶育成容器の内側容器の断面図である。 本願第2発明の実施の形態の単結晶育成容器により構成した単結晶育成装置での単結晶育成の説明図である。 本願第2発明の実施の形態の圧力調整機構の動作の説明図である。 従来の単結晶育成装置による単結晶育成の説明図である。 従来の単結晶育成容器の構造の説明図である。
符号の説明
1,100 単結晶育成容器、
2,110 オートクレーブ、
3 容器本体、
4 蓋体、
5 固着部、
6 パツキン、
7,106 ヒーター、
10,200 内筒容器、
11,101 フレーム、
12,102 貴金属線、
13,103 種子結晶、
14 内部バッフル板、
15 外部バッフル板、
16,105 原料、
20 単結晶育成装置、
21 育成溶液、
22 圧力調整部、
23 底台、
24 支柱、
30 蓋部、
31,42A,42B,43 嵌合部、
34 主材
35 箔
40,202 本体部、
40A、40B、40C 本体部品、
33,41,41A,41B,41C 周壁内面
42 伝熱溶液

Claims (10)

  1. 水熱合成法により単結晶を育成する単結晶育成容器であって、所要の温度と圧力に耐えられる第1の容器と、少なくとも蓋部と本体部から成る、上記第1の容器内に収容可能とされる第2の容器とを有する単結晶育成容器において、上記第2の容器における上記蓋部と上記本体部は、その一方に形成された嵌合部が、他方の内壁部に密着して嵌合する構造とされていることを特徴とする単結晶育成容器。
  2. 上記本体部が複数の構成部品から成り、或る構成部品に形成された嵌合部が、他の構成部品の内壁部に密着して嵌合されることで、上記本体部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の単結晶育成容器。
  3. 上記第2の容器は、その内部に上記所要の圧力が加えられた時に、上記第1の容器と接し、その内部の圧力が上記第1の容器によって支持されるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の単結晶育成容器。
  4. 上記第2の容器の蓋部及び本体部が貴金属により形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の単結晶育成容器。
  5. 酸化亜鉛の単結晶の育成に用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の単結晶育成容器。
  6. 水熱合成法により単結晶を育成する単結晶育成容器であって、所要の温度と圧力に耐えられる第1の容器と、上記第1の容器内に収容可能な第2の容器とを有する単結晶育成容器において、上記第2の容器は、その内面に貴金属の箔が貼付されていることを特徴とする単結晶育成容器。
  7. 上記第2の容器がステンレス鋼によって形成されていることを特徴とする請求項6に記載の単結晶育成容器。
  8. 上記貴金属の箔の厚みが10〜50μmであることを特徴とする請求項6又は7に記載の単結晶育成容器。
  9. 上記第2の容器には、その内部の圧力と外部の圧力を調整する圧力調整手段が設けられていることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の単結晶育成容器。
  10. 酸化亜鉛の単結晶の育成に用いることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の単結晶育成容器。
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