JP2005205817A - 液体吐出ヘッド - Google Patents

液体吐出ヘッド Download PDF

Info

Publication number
JP2005205817A
JP2005205817A JP2004016633A JP2004016633A JP2005205817A JP 2005205817 A JP2005205817 A JP 2005205817A JP 2004016633 A JP2004016633 A JP 2004016633A JP 2004016633 A JP2004016633 A JP 2004016633A JP 2005205817 A JP2005205817 A JP 2005205817A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
nozzle
ink
head
liquid chamber
ejection
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2004016633A
Other languages
English (en)
Inventor
Manabu Tomita
学 冨田
Takeo Eguchi
武夫 江口
Iwao Ushinohama
五輪男 牛ノ▲濱▼
Shogo Ono
章吾 小野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sony Corp filed Critical Sony Corp
Priority to JP2004016633A priority Critical patent/JP2005205817A/ja
Publication of JP2005205817A publication Critical patent/JP2005205817A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

【課題】ヘッドに製造上のバラツキ等があっても、インク液滴の吐出方向が曲がらないようにする。
【解決手段】発熱抵抗体13を配列したヘッドチップ19と、インク液滴を吐出するためのノズル18を形成したノズルシート17と、発熱抵抗体13の表面とノズル18との間にインク液室12を形成するためのバリア層15とを備え、発熱抵抗体13により、インク液室12内のインクをインク液滴としてノズル18から吐出するヘッド10であって、ノズル18の最大幅(直径)をDとし、発熱抵抗体13の表面と、ノズルシート17の表面との距離をHとしたとき、D/Hが0.45〜0.55の範囲内であるヘッド10とした。
【選択図】図1

Description

本発明は、エネルギー発生素子により、液室内の液体を液滴としてノズルから吐出するインクジェットプリンタ等の液体吐出ヘッドに関する。詳しくは、エネルギー発生素子等に製造上の誤差等が生じていても、液滴の吐出方向が曲がらずに、真っ直ぐ吐出するようにした技術に係るものである。
エネルギー発生素子によって液体を吐出するようにした液体吐出ヘッドの一例として、従来より、インクジェットプリンタのプリンタヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)が知られている。すなわち、エネルギー発生素子によってインク液室内のインクに圧力を付与し、ノズルからインク液滴を吐出させるものである。
このようなヘッドによれば、着色したインクを吐出することにより、被記録媒体である印画紙に着弾したインク液滴の着色ドットと、印画紙の元々の色との間にコントラストの差を生じさせることができる。そのため、印画紙に画像や文字等を記録することが可能となる。
ここで、インク液室内で圧力を発生させるエネルギー発生素子として、発熱抵抗体等の発熱素子を用いた技術が知られている。すなわち、発熱素子によって電流を熱に変え、その熱をインクに伝達し、インクを急激に沸騰させることによって気泡を発生させ、その気泡発生の圧力により、ノズルからインク液滴を吐出させるものである。
このようなヘッドは、インク液滴を吐出させるための発熱素子、この発熱素子を配列したヘッドチップ、ノズルを配列したノズルシート、インクの供給流路とつながるインク液室の他、発熱素子を繰返し加熱する駆動素子、この駆動素子を制御する駆動回路、外部との信号や電力を受け取るための電極等を備えている。
このようなヘッドにおいて、インク液滴を継続的に安定して吐出させるためには、発熱素子等の耐久性が問題となる。そして、この耐久性の問題に関しては、発熱素子が配列されたヘッドチップの電気回路等に流れる電流量を減らせば、配線材料等の寿命が延び、耐久性が向上することが知られている。
したがって、同じ駆動電圧であるならば、電流量を減らすために、発熱素子の抵抗値を上げれば良い。この場合、発熱素子の厚みを薄くすれば抵抗値を上げることができるが、薄くし過ぎると耐久性が悪化する。そこで、発熱素子の厚みはそのままとし、発熱素子の寸法を長くすることにより、抵抗値を上げることが考えられる。
ところが、発熱素子の寸法をそのまま長くすると、インク液室が細長くなる結果、発熱素子の発生熱をインクに伝達する部分が長細くなり、インク液滴の吐出効率が悪化する。
そこで、幅よりも長さの方が大きい2つの発熱素子を用い、長辺同士を向かい合わせて配置するとともに、2つの発熱素子を短絡させて抵抗値を上げる技術が開示されている。すなわち、長い発熱素子を2分割して並設することにより、発熱素子の発生熱をノズルの下に近い領域に集中させ、インク液滴の吐出効率を向上させる技術である(例えば、特許文献1参照。)。
特開2001−80077号公報(図5)
しかしながら、特許文献1に記載の技術のように、2分割した発熱素子を並設して両者を短絡させた場合、左右の発熱素子の形状を全く同一にすることは、実際上極めて困難である。すなわち、発熱素子は、半導体のプロセス技術を用いて形成されるが、発熱素子を形成する際の加工プロセスのわずかな誤差や、形成された発熱素子の厚みのバラツキ等により、左右の発熱素子に寸法差が生ずる。
すると、左右の発熱素子で、抵抗値のバラツキがわずかながら発生し、左右の発熱素子から発生する熱の分布が変わってしまう。そのため、インク液滴の吐出方向が曲がることとなる。
したがって、ヘッド製造上のほんの少しのバラツキ等によってインク液滴の吐出方向が安定せず、吐出方向が曲がり、印画紙に記録した画像や文字等に、スジやムラ等の症状が表れてしまうことがある。
また、発熱素子によってインクを加熱するヘッドは、上述したように、気泡の膨張を利用した圧力によってインク液滴を吐出させている。
したがって、インク液室に寸法誤差等があれば、それがインク液滴の吐出方向に影響する。すなわち、インク液室の寸法上の誤差等により、インク液滴の吐出方向が安定しなくなる。
ここで、インク液滴の吐出方向の曲がりを低減する方法として、ノズルを印画紙の紙送り方向に配列し、紙送り方向と直交する方向にヘッドを走査して印画するスキャン型記録方式が知られている。この方法では、印画紙をノズルのピッチの半分程度送ってから再度スキャンすることにより、インク液滴の吐出方向の曲がりによる影響を低減することができる。
しかし、スキャン型記録方式では、印画速度が遅くなってしまうという新たな問題が生ずる。
また、発熱素子の厚みのバラツキ等による影響を無くすため、ノズルの厚みを厚くすることにより、インク液滴の吐出方向が曲がらないようにすることも考えられる。
しかし、むやみにノズルを厚くすると、インク液滴の吐出速度が落ち、吐出効率が悪化する。
この場合、インク液滴の吐出速度が落ちないように、発熱素子のサイズを大きくして、インクを加熱するエネルギー量を上げることも考えられる。
しかし、今度は消費電力が大きくなって、ヘッドチップの電気回路等に流れる電流量が増え、発熱素子等の耐久性の問題に逆戻りしてしまう。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、印画速度が低下したり、吐出効率が悪化したり、消費電力が大きくなったりすることなく、ヘッドに製造上のバラツキや、寸法上の誤差等があっても、インク液滴の吐出方向が曲がらないようにした液体吐出ヘッドを提供することである。
本発明は、以下の解決手段によって、上述の課題を解決する。
本発明の1つである請求項1に記載の発明は、エネルギー発生素子と、液体を貯蔵するための液室と、ノズルとを備え、前記エネルギー発生素子により、前記液室内の前記液体にエネルギーを付与し、前記ノズルから前記液体を吐出する液体吐出ヘッドであって、前記ノズルの最大幅をDとし、前記エネルギー発生素子の表面と前記ノズルの吐出面との距離をHとしたとき、D/Hが0.45〜0.55の範囲内であることを特徴とする。
また、本発明の他の1つである請求項2に記載の発明は、エネルギー発生素子を配列したヘッドチップと、液滴を吐出するためのノズルを形成したノズルシートと、前記ヘッドチップの前記エネルギー発生素子の配列面と前記ノズルシートの裏面との間に配置され、前記エネルギー発生素子の表面と前記ノズルとの間に液室を形成するための液室形成部材とを備え、前記エネルギー発生素子により、前記液室内の液体を液滴として前記ノズルから吐出する液体吐出ヘッドであって、前記ノズルの最大幅をDとし、前記エネルギー発生素子の表面と前記ノズルシートの表面との距離をHとしたとき、D/Hが0.45〜0.55の範囲内であることを特徴とする。
上記の発明においては、液体吐出ヘッドの液室構造を特定するパラメータとして、ノズルの最大幅Dと、エネルギー発生素子の表面とノズルの吐出面(ノズルシートの表面)との距離Hの2つを用いている。そして、最大幅Dと距離Hとの比であるD/Hを0.45〜0.55の範囲内として、上記の課題を解決している。
ここで、「ノズルの最大幅」とは、ノズルの吐出面(液滴が吐出される吐出孔側の面)、例えば、ノズルシートの液滴吐出面(ノズルシートの表面。いいかえれば、液室側の面と反対側の面。)、におけるノズルの最大開口径を意味する。例えば、ノズルの中空形状が円柱形状であれば、ノズルの最大開口径は、ノズルシートの液滴吐出面とその反対側の面とで同一となるが、ノズルの中空形状が例えば円錐台形状(台形を、上下方向の中心軸で回転させたときに得られる形状)のように、ノズルの開口径がノズルシートの液滴吐出面とその反対側の面とで異なる場合であっても、「ノズルの最大幅」とは、ノズルシートの液滴吐出面におけるノズルの最大開口径を意味する。なお、ノズルの中空形状は、上記円柱形状や円錐台形状のような中空側壁面が直線に限らず、円弧等の曲線であっても良い。
さらに、ノズルの吐出面、例えば、ノズルシートの液滴吐出面、におけるノズルの開口形状が円形の場合には、最大開口径(最大幅)は、直径となる。これに対し、ノズルの開口形状が長円の場合には、長い方の開口径(幅)となる。なお、本明細書における「長円」とは、楕円、及びいわゆる小判型(少なくとも一部に直線を含むもの)の双方、さらにはこれらに準ずる形状をも含む意味である。
このように、本発明は、ノズルの最大幅をDと、エネルギー発生素子の表面とノズルの吐出面(ノズルシートの表面)との距離Hの2つをパラメータとし、この2つのパラメータの比であるD/Hが0.45〜0.55の範囲内であれば、液体吐出ヘッドに関する他のパラメータの値にかかわらず、ノズルから吐出した液滴が実質的に曲がらないことを見出し、なされたものである。
いいかえると、液滴の吐出方向が偏向するように、種々のパラメータの値を設定したとしても、D/Hが0.45〜0.55の範囲内は、液滴が曲がって吐出されない特異点となっている。
本発明の液体吐出ヘッドによれば、液体吐出ヘッドに製造上のバラツキ等や寸法上の誤差等があっても、ノズルから吐出される液滴が曲がらないので、インク液滴の吐出方向が安定する。そのため、印画速度を低下させる必要がない。
また、本発明の液体吐出ヘッドは、吐出効率に優れる。さらに、本発明の液体吐出ヘッドは、消費電力を少なくして、耐久性を向上させることができるので、液滴を継続的に安定して吐出させることが可能となる。
以下、図面等を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
なお、本発明の実施形態は、下記に限定されるものではない。すなわち、下記実施形態では、ノズルをノズルシートにより構成し、液室を形成するために、液室形成部材(バリア層)を用いて説明をしているが、これに限定されるものではなく、ノズル及び液室を一体的に形成したものであっても、無論、本発明の目的は達成される。
また、本発明における液体吐出ヘッドは、下記実施形態では、インクジェットプリンタのヘッド10に相当する。また、下記実施形態において、吐出する液体はインクであり、インクを収容する液室がインク液室12で、ノズル18から吐出される微少量(例えば数ピコリットル)のインクがインク液滴である。さらに、下記実施形態では、エネルギー発生素子として発熱抵抗体13を使用しており、この発熱抵抗体13は、インク液室12の一面(底壁部分)をも構成している。さらにまた、下記実施形態において、液室形成部材は、インク液室12の側壁を構成しているバリア層15に相当する。
図1は、本実施形態のヘッド10を示す部分斜視図である。
図1に示すように、ノズルシート17には複数のノズル18が形成されており、各ノズル18は、ヘッドチップ19の基板上に一定間隔で一方向に配列された複数の発熱抵抗体13と対向している。また、ノズルシート17とヘッドチップ19との間には、バリア層15が配置され、インク液室12を形成している。
ここで、ヘッドチップ19を構成する基板は、シリコン、ガラス、セラミックス等からなる半導体基板である。そして、発熱抵抗体13は、この基板の一方の面(図1では上面)に、半導体や電子デバイス製造技術用の微細加工技術を用いて析出形成(例えば、発熱抵抗体となる材料をプラズマによるスパッタリング法によって成膜)したものである。
この発熱抵抗体13は、幅よりも長さの方が大きい2つの部分(13a,13b)からなり、長辺同士が向かい合うように並設されている。なお、発熱抵抗体13の2つの部分(13a,13b)は、ヘッドチップ19に形成された導体部を介して、外部回路と電気的に接続されている。
また、バリア層15は、ヘッドチップ19を構成する基板の発熱抵抗体13側に形成されたものであり、発熱抵抗体13の周辺を除く基板上に、感光性樹脂でパターニング形成されている。さらに、ノズルシート17は、円形のノズル18が配列されるように、例えばNi(ニッケル)による電鋳技術によって形成されたものである。
そして、バリア層15を積層したヘッドチップ19は、ノズルシート17における各ノズル18の位置と、各発熱抵抗体13の位置(13a,13bの中心位置)とが合うように、すなわち、各ノズル18が各発熱抵抗体13と対向するように、精密に位置決めがなされ、バリア層15を介して、ノズルシート17と一体化されている。
したがって、各インク液室12は、発熱抵抗体13の2つの部分(13a,13b)を囲むようにして、ヘッドチップ19の基板とバリア層15とノズルシート17とで構成される。すなわち、ヘッドチップ19の基板及び発熱抵抗体13は、インク液室12の天壁を構成し、バリア層15は、インク液室12の3つの側壁を構成し、ノズルシート17は、インク液室12の底壁を構成する。なお、図1では、説明の便宜のため、ノズル18と発熱抵抗体13との位置関係が明らかとなるように、ヘッド10の上下関係を逆転させてある。
また、各インク液室12は、図1中、右下方向に開口領域を有しており、この開口領域は、共通のインク流路によって連通している。そのため、インクタンク(図示せず)内のインクは、共通のインク流路を通り、図1の矢印のように、それぞれの開口領域から各インク液室12内に供給されることとなる。
そして、インク液室12にインクが満たされた状態で、印画データに基づいて、発熱抵抗体13の2つの部分(13a,13b)に、例えば1〜3μsecの間、パルス電流が流されると、発熱抵抗体13(13a,13b)が急速に加熱される。その結果、発熱抵抗体13(13a,13b)と接する部分に気相のインク気泡が発生し、そのインク気泡の膨張によってある体積のインクが押しのけられる(インクが沸騰する)。すると、これが吐出圧力となり、押しのけられたインクと同等の体積のインクがインク液滴としてノズル18から吐出され、印画紙上に着弾して文字や画像等が印画されることとなる。
このように、発熱抵抗体13は、円形のノズル18からインク液滴を吐出させるためのものであり、印画紙に記録した画像や文字等に、スジやムラ等が生じないように、インク液滴をノズル18の中心軸方向に吐出させることが求められる。
特に、図1に示す発熱抵抗体13のように、発熱抵抗体13が2つの部分(13a,13b)からなる場合には、2つの部分(13a,13b)上で同時にインクが沸騰しなければ、インク液滴の吐出方向がノズル18の中心軸方向からずれ、ノズル18の配列方向に偏向して吐出されてしまう。そのため、発熱抵抗体13は、2つの部分(13a,13b)が均一でなければならない。
ところが、例えばスパッタリング法によって発熱抵抗体13を形成すると、スパッタリング装置の特性上、中心部のプラズマ密度が濃いために、中心部の膜厚が厚くなる。すなわち、円形状のウエハーでは、外周部から中心部に向かって膜厚が厚くなる分布となり、中心部と外周部とでは、一般的に、膜厚の10〜20%程度の差が生じる。
そして、このウエハーをダイシングし、適当な大きさに切り分けて、発熱抵抗体13を形成したヘッドチップ19を得ると、ウエハーの中心部から切り出されたヘッドチップ19における発熱抵抗体13の抵抗値が110Ωに近いとすれば、外周部から切り出されたヘッドチップ19の発熱抵抗体13の抵抗値は130Ωに近くなる。
したがって、発熱抵抗体13には、製造上のバラツキが存在する。
このバラツキは、ウエハーの中心部と外周部との差よりは随分と小さいが、発熱抵抗体13の2つの部分(13a,13b)同士の間でも存在する。しかも、スパッタリングの膜厚以外に、ある程度の寸法誤差等が発生することは避けられない。
したがって、発熱抵抗体13の2つの部分(13a,13b)を完全に均一なものとすることは困難であり、そのため、吐出方向に悪影響を及ぼすこととなる。
そこで、本実施形態のヘッド10は、図1に示すように、ノズル18の最大幅(直径)をDとし、発熱抵抗体13の表面とノズルシート17の表面との距離をH(=H1+H2)としたとき、D/Hが0.45〜0.55の範囲内となるようにしている。すなわち、本実施形態のヘッド10は、D/Hをこの範囲内とすることで、発熱抵抗体13の2つの部分(13a,13b)が均一でなかったり、その他の製造上のバラツキ等や寸法上の誤差等があったとしても、ノズル18から吐出されるインク液滴が曲がらないようにしている。なお、ノズル18の最大幅(直径)Dとは、ノズル18が円形であるために、最大幅が直径になることを意味している。
次に、D/Hが0.45〜0.55の範囲内であると、インク液滴が曲がって吐出されない点について詳述する。
本件出願人は、既に、未開示の先願技術である特願2003−37343、特願2002−360408、及び特願2003−55236等により、1つのインク液室12内に2つに分割された発熱抵抗体13を設け、各々の発熱抵抗体13がインクを沸騰させる温度に到達するまでの時間(気泡発生時間)に時間差を与えることにより、2つの発熱抵抗体13上で同時にインクが沸騰しないようにすることで、ノズル18から吐出するインク液滴の吐出方向を複数の方向に可変とする技術を提案している。
そこで、液室構造を特定する種々のパラメータを変化させたヘッドを作製し、強制的に吐出方向を曲げる上記の技術を用いて、インク液滴の吐出実験を行った。このような吐出実験を行うことにより、インク液滴の吐出方向を曲げるように作用させても、吐出方向が曲がらないヘッドの液室構造が検討できるからである。
したがって、以下、インク液滴の吐出方向を複数の方向に可変とする技術を用いてインク液滴の吐出実験を行い、最も少ない消費電力で、インク液滴の吐出方向が曲がらない条件を特定する。
インク液滴の吐出実験に際し、最初に、ヘッドの液室構造を決定する種々のパラメータの中で、インク液滴の吐出方向が曲がらない安定吐出に関係するパラメータを選定することとした。
このパラメータの候補は、図1に示すように、インク液室の幅W、インク液室の長さL、インク液室の高さH1、ノズルの最大幅(直径)D、ノズルの厚みH2である。なお、ノズルの最大幅Dは、ノズル18が円形であることから、直径となっている。
また、図2は、ノズル18の位置と、各発熱抵抗体13の位置(13a,13bの中心位置)との関係を示す説明図である。
図2に示すように、ノズル18と発熱抵抗体13とが正確に対向することなく、ずれている場合、インク液滴の吐出方向が曲がることも考えられるので、インク液滴の安定吐出に関係するパラメータの選定に際し、図2に示すようなノズル位置の左右ずれN1と、ノズル位置の前後ずれN2も候補とした。
ここで、上記の7つのパラメータ候補中、図1に示すインク液室の高さH1と、ノズルの厚みH2については、それらを厚くすると、インク液滴の吐出方向が曲がらず、安定することが経験的に知られている。
したがって、インク液室の高さH1と、ノズルの厚みH2の2つは、インク液滴の安定吐出に関係するパラメータとして予め選定した。
そして、残り5つのパラメータ候補の中から、インク液滴の安定吐出に関係するパラメータを選定するため、吐出実験用ヘッドを作製して、実際にインク液滴を吐出する吐出実験を行った。
この際、全ての組合せについて吐出実験を行うと、膨大な数の吐出実験用ヘッドを作製する必要があり、コスト面や時間的な面で問題が生ずる。そのため、実験計画法を用いて吐出実験用ヘッドの種類を減らしている。
図3は、パラメータを選定するために使用する吐出実験用ヘッド11の断面図である。
図3に示すように、吐出実験用ヘッド11は、ヘッドチップ19、インク液室12、発熱抵抗体13、ノズルシート17、及び円形のノズル18を備えており、ヘッドチップ19がヘッドフレーム21にシリコーン接着剤で固定されている。
また、ヘッドチップ19とプリント基板22とが配線され、その接続部が封止剤で覆われている。さらに、PI(ポリイミド)のシート23がヘッドチップ19及びヘッドフレーム21とシリコーン接着剤で固定され、インク供給経路24が形成されている。そのため、チューブ25から供給されたインクは、ヘッドチップ19の端部の開口領域20からインク液室12内に導かれる。なお、インク供給経路24は、例えばシリコン基板等に穴を開けることによって形成しても良い。
ここで、図3に示す吐出実験用ヘッド11は、図1に示す実施形態のヘッド10のように、感光性樹脂のバリア層15に対してNi(ニッケル)製のノズルシート17を貼り合わせた別体型のものではなく、感光性樹脂のみで、バリア層と一体のノズルシート17を形成した一体型のものとなっている。
このように、吐出実験用ヘッド11について、バリア層とノズルシート17とを一体化し、実施形態のヘッド10と違う構造にした理由は、寸法の異なる複数の液室構造を短期間に作製するためである。
バリア層と一体のノズルシート17の形成には、本件出願人の先願技術である特開2000−144584号公報等に記載の技術を用いた。
この技術では、まず最初に、ヘッドチップ19を構成する基板上に、ポジ型感光性レジスト(東京応化工業株式会社製 商品名「PMER−LA900」)の犠牲層をスピンコート法により塗布する。この犠牲層の塗布は、インク液室12や開口領域20となる部分について行い、その後、露光・現像を行って、インク液室12、開口領域20、及びノズル18となる部分のレジストを残す。
続いて、上記の基板上に、ネガ型感光性樹脂(キシレンに溶解させたエポキシ樹脂で、レベリング剤、光効果剤、シランカップリング剤等を調合したもの)の被覆層をスピンコート法により塗布し、露光を行って被覆層を硬化させる。この際、ノズル18部分となる犠牲層の柱が飛び出るように注意する。なお、ノズル18部分については、ノズルパターンのマスクを使って露光する方法を用いても良い。
そして、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)/PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)の混合溶剤(東京応化工業株式会社製 商品名「OK−73」)を満たした超音波洗浄機に上記の基板を入れ、約1時間かけて犠牲層を溶出させることにより、バリア層と一体のノズルシート17を備える吐出実験用ヘッド11を得る。
このような製造方法であれば、スピンコート法による塗布工程時に、所望の回転数を適宜選択することで、回転数と膜厚との関係から、犠牲層と被覆層の膜厚を容易に変更することができる。そのため、多くの種類の吐出実験用ヘッドを比較的簡単に作製することができる。なお、この製造方法は、吐出実験用ヘッドを作製するための1つの方法であり、この製造方法や材料に限定されるものではなく、他の製造方法や材料を用いることもできる。
また、ヘッドチップ19を構成する半導体の基体上には、2つに分割された発熱抵抗体13等が作り込まれている。すなわち、発熱抵抗体13として、幅9.6μm、長さ20μmのサイズのものを2つ、0.8μmの間隔で並べて配置している。さらに、この2つの発熱抵抗体13は、電気的には直列に接続されており、接続の中点部分に制御電流を流す配線が接続されている。なお、各発熱抵抗体13の抵抗値は、約110Ωである。
したがって、図3に示す吐出実験用ヘッド11によれば、制御電流を流すことによって2分割された各々の発熱抵抗体13の気泡発生時間に時間差を与えることができ、ノズル18から吐出するインク液滴の吐出方向を複数の方向に偏向させることができる(以下、このような制御電流を「偏向電流」という。)。
図4は、図3に示す吐出実験用ヘッド11を用いた記録装置を示す概要図である。
図4に示す記録装置は、吐出実験用ヘッド11のノズル18(図3参照)からインク液滴を吐出させ、記録用紙30上に着弾させて偏向幅を測定するものである。図4に示す記録装置によれば、吐出実験用ヘッド11を固定し、記録用紙30を動かすことによって高精度に記録を行うことができる。
図4に示す記録装置において、記録用紙30を載せるステージ31は、平坦度が良いもので、表面に細かい穴が開いており、その穴から吸気することによってステージ31に記録用紙30を吸着固定することができる。
また、ステージ31は、高精度のボールネジ32によって移動し、このボールネジ32は、サーボモーター33によって回転する。そのため、ゴムベルト等の駆動と比較して摩擦等のロスがなく、紙送りの精度が非常に良いものとなっている。
そして、吐出実験用ヘッド11のインク液滴の吐出面と記録用紙30との距離hは、ダイヤルゲージ(図示せず)等によって簡単に、高精度に測定することができる。なお、図4に示す記録装置では、インク液滴の吐出方向が曲がり、記録用紙30上にインク液滴が偏向して着弾した場合の偏向幅の測定に際し、記録用紙30までの距離hを1.5mmとしている。ただし、この距離hは1.5mmに限定されるものではないし、記録用紙30までの距離hが既知であれば、図4に示す記録装置を用いずに、記録用紙30をローラーによって搬送する一般的な装置で実験することもできる。
図5は、図4に示す記録装置を用いて測定されるべき「本来的」な偏向幅を示すグラフである。
すなわち、図3に示す吐出実験用ヘッド11によってインク液滴を偏向吐出させ、図4に示す記録装置を用いることにより、インク液滴の着弾位置の偏向幅を測定した場合の「本来的」なグラフである。
ここで、「本来的」としたのは、「実際」には、図5に示す偏向幅のグラフに反する場合があるからである。
この点に関し詳述すると、上述したように、偏向電流を流すことにより、吐出実験用ヘッド11は、インク液滴の吐出方向を複数の方向に可変とすることができる。そこで、インク液滴を偏向吐出させるため、吐出実験用ヘッド11における2分割した発熱抵抗体13(図2参照)の気泡発生時間に差が生じるように、片方の発熱抵抗体13(13a又は13b)に対し、偏向電流を流すこととする。具体的には、発熱抵抗体13の主電流を80mAとして、片方の発熱抵抗体13(13a又は13b)に偏向電流(−7mA〜+7mA)を重畳する。
そして、偏向電流を横軸とし、偏向幅を縦軸としてグラフ化すると、偏向電流に応じて偏向幅が変化し、「本来的」には、図5に示すようなグラフが得られる。なお、偏向幅は、吐出実験用ヘッド11のインク液滴の吐出面と記録用紙30との距離h(図4参照)によっても変わるので、図5においては、偏向幅の値を表示していない。
図5に示すグラフによれば、ノズルの並び方向に2分割した発熱抵抗体13の気泡発生に時間差が生じると、インク液滴の吐出角が垂直でなくなり、ノズルの並び方向におけるインク液滴の偏向角(垂直からのずれ角)が偏向電流(気泡発生時間差)とともに増え、偏向幅が大きくなる。
したがって、図5に示すグラフに基づいて、片方の発熱抵抗体13(13a又は13b)に適当な偏向電流を重畳すれば、気泡発生時間の時間差を制御でき、この時間差に応じて、インク液滴の吐出方向を所望の通り偏向させることができる。
図6及び図7は、図4に示す記録装置を用いてインク液滴を着弾させた場合の着弾パターンを示す説明図である。
ここで、図6は、図5に示すグラフに基づく「本来的」な着弾パターンを示し、図7は、図3に示す吐出実験用ヘッド11を用いて「実際」に着弾させた場合の着弾パターンの例を示している。
図6及び図7では、偏向電流による偏向方向を−側と+側とでそれぞれ4パターンずつとし、スタート時は偏向なしとして、図5に示すグラフの−7mA〜+7mAまでの間の適当な偏向電流を流してインク液滴を着弾させている。すると、「本来的」には、図5に示すグラフに基づいて、図6(a)、(b)に示すように、偏向幅が徐々に増加する着弾パターンが形成される。
事実、図7(a)では、図6(a)に示すような着弾パターンが実現されている。
ところが、「実際」の着弾パターンでは、図7(a)に対する図7(b)のように、同じ偏向電流を与えているにもかかわらず、着弾方向が逆になる場合もある。
したがって、「実際」には、吐出実験用ヘッド11の液室構造の相違により、図5に示す偏向幅のグラフに反する場合がある。そのため、図5に示すグラフの説明においては、「本来的」という文言を用いた。
このように、「実際」には、図5に示す「本来的」な偏向幅のグラフに反する場合がある。
そこで次に、吐出実験用ヘッド11における種々の液室構造について、「実際」の偏向幅を測定し、偏向電流を流しても、図5に示す「本来的」な偏向幅のグラフに反することとなる液室構造を検討した。これにより、インク液滴の吐出方向を曲げるように作用させても、吐出方向が曲がらない液室構造を特定し、安定吐出に関係するパラメータを選定することができる。
図8は、吐出実験用ヘッド11の液室構造を決定する各パラメータ候補と、「実際」に測定した偏向幅との関係を示す表である。
図8の表におけるパラメータ候補は、図1に示すノズルの最大幅(直径)D、インク液室の幅W、インク液室の長さLと、図2に示すノズル位置の左右ずれN1及びノズル位置の前後ずれN2の5つである。すなわち、上述したように、7つのパラメータ候補中、安定吐出に関係するパラメータとして経験的に知られているインク液室の高さH1及びノズルの厚みH2(図1参照)は省いている。なお、5つのパラメータ候補はそれぞれ3水準とし、インク液室の高さH1は9.9mm、ノズルの厚みH2は14.7mmで固定している。
そして、偏向幅の測定には、顕微鏡に取り付けたデジタルカメラを使用した。すなわち、デジタルカメラで撮影したインク液滴の着弾位置の画像データを用いて計算し、いくつかの画像データから偏向幅の平均値を求めた。
この際、デジタルカメラのレンズの校正を行うため、既知の寸法部分を撮影しておいた。例えば発熱抵抗体13(図2参照)等は、電子線顕微鏡等によって正確に寸法が測定されているので、このような場所を撮影しておき、偏向幅の測定精度を高くした。なお、撮影時に記録用紙が回転していると、偏向幅に誤差が生じるため、取り込んだ画像の回転を補正し、着弾位置の中心間を測定した。この着弾位置の中心は、画像処理によって重心を割り出す方法を用いている。
このように、デジタルカメラによって偏向幅を測定することができるが、デジタルカメラを使用せず、測長機能付きの顕微鏡を用いて直接的に偏向幅を測定することもできる。
この測長機能付きの顕微鏡は、顕微鏡にステージの移動量を表示する機構を取り付けたものであり、光学機器製造会社(株式会社ニコン、オリンパス株式会社等)から市販されている。なお、測長機能付きの顕微鏡を用いる場合、記録用紙が回転していると測定誤差になる。そのため、着弾パターンの一部に一直線状のパターンも含めて記録しておき、測定時には、その一直線状のパターンを用いることで、回転誤差の影響をなくす等することが好ましい。
ところで、上述したように、「実際」の着弾パターンでは、同じ偏向電流を与えているにもかかわらず、着弾方向が逆になる場合もある(図7参照)。そのため、着弾方向が逆になる場合には、図8に示す表の偏向幅に、−の記号を付けている(偏向幅は絶対量であるが、逆の特性を示すという意味を込めて、マイナスの数値にしている)。
ここで、インク液滴の吐出実験は、吐出方向が曲がらない条件を特定するための実験であり、偏向幅は、記録用紙30までの距離(図4参照)によっても変わる値である。
したがって、吐出実験用ヘッド11(図3参照)同士の性能を比較するために、偏向幅ではなく、偏向角等を用いることもできる。なお、偏向角を用いる場合には、測定した偏向幅と記録用紙30までの距離(図4参照)との関係から換算しても良い。
図9は、図8に示す5つのパラメータ候補と、測定した偏向幅との関係を示すグラフである。
図9に示すグラフは、重回帰分析によって主効果を確認したものであり、縦軸は偏向幅を示し、横軸は5つのパラメータ候補を示している。図9に示すグラフによれば、5つのパラメータ候補であるノズルの最大幅(直径)D、インク液室の幅W、インク液室の長さL、ノズル位置の左右ずれN1、及びノズル位置の前後ずれN2の各パラメータ候補の変化に対し、偏向幅の変化がプロットされることとなる。
図9に示すグラフから明らかなように、ノズルの最大幅(直径)Dを変化させると、偏向幅が大きく変わる。一方、インク液室の幅W、インク液室の長さL、ノズル位置の左右ずれN1、及びノズル位置の前後ずれN2の変化に対する偏向幅の変化は著しく小さい。
したがって、インク液室の幅Wやインク液室の長さLは、そのサイズを変えてもインク液滴の吐出方向は変わらず、偏向幅に変化がないことが判明した。また、ノズル位置の左右ずれN1やノズル位置の前後ずれN2は、位置ずれに伴って絶対的なインク液滴の着弾位置がずれてしまうが、偏向幅については大きな変化がないことが判明した。
この結果から、安定吐出に関係するパラメータとして、新たにノズルの最大幅(直径)Dが抽出できる。そのため、安定吐出に関係するパラメータは、ノズルの最大幅(直径)D、インク液室の高さH1、及びノズルの厚みH2の3つとなった。
そこで次に、この3つのパラメータに絞り込んで、インク液滴の吐出方向が曲がらない条件を特定する。
図10は、吐出実験用ヘッド11における3つのパラメータと、測定した偏向幅との関係を示す表である。
この偏向幅の測定に際し、今度は、インク液室の幅Wが29μm、インク液室の長さLが50μmで、ノズル位置のずれがない(図2に示す発熱抵抗体13のセンター位置にノズル18が固定されており、左右ずれN1、前後ずれN2がない)吐出実験用ヘッド11を用いた。そして、インク液室の高さH1、ノズルの厚みH2及びノズルの最大幅(直径)Dを変化させた。なお、図10に示す表では、H1+H2を距離Hとし、距離Hが同じ3つをグループ化しているが、その理由については、後述する。
図11は、図10に示す表の3つパラメータ中、インク液室の高さH1を一定とし、ノズルの最大幅(直径)Dとノズルの厚みH2との比(D/H2)と、測定した偏向幅との関係を求めたグラフである。
図11に示すように、横軸をD/H2、縦軸を偏向幅としたこのグラフは線形となり、その近似式の傾きは54.453となっている。なお、偏向幅がゼロになる条件が重要なので、図11においては、偏向幅の値を表示していない。
また、図12は、図10に示す表の3つパラメータ中、ノズルの厚みH2を一定とし、ノズルの最大幅(直径)Dとインク液室の高さH1との比(D/H1)と、測定した偏向幅との関係を求めたグラフである。
図12に示すように、横軸をD/H1、縦軸を偏向幅としたこのグラフは線形となり、その近似式の傾きは54.932となっている。なお、上記と同様の理由により、図12においては、偏向幅の値を表示していない。
図11に示すグラフと、図12に示すグラフとを比較すれば明らかなように、両グラフの近似式の傾きは、実質的に同じである。そのため、グラフの傾向は、インク液室の高さH1と、ノズルの厚みH2とを加算しても変わらず、新たに、H(=H1+H2)をパラメータとできることが判明した。すなわち、図1における発熱抵抗体13の表面とノズルシート17の表面との距離H(=H1+H2)がパラメータとして選定できる。
したがって、安定吐出に関係するパラメータは、この距離Hと、ノズルの最大幅(直径)Dとの2つに特定できる。そのため、図10に示す表においては、距離Hを加え、ノズルの最大幅(直径)Dとこの距離Hとの比(D/H)を算出してある。
図13は、ノズルの最大幅(直径)Dと距離H(発熱抵抗体の表面とノズルシートの表面との距離)との比(D/H)と、測定した偏向幅との関係を示すグラフである。
図13に示すように、図10に示す表の距離Hにかかわらず、全てのD/Hについて、横軸をD/H、縦軸を偏向幅としたこのグラフは線形となり、D/Hが0.47で偏向幅がゼロとなる。そのため、D/Hが0.47の場合には、インク液滴の吐出方向を曲げるように作用させても、吐出方向が曲がらない。
ところで、上記の実験は全て、ノズル18(図3参照)の形状が円形であることから、ノズル18の最大幅を直径としていた。
しかし、ノズル18の形状が変われば、インク液滴の吐出方向に影響する可能性もあるので、他のノズル形状についても検討した。
図14は、吐出実験用ヘッド11のノズル18の形状と、測定した偏向幅との関係を示すグラフである。
図14に示すグラフにおいて、ノズル18(図3参照)の形状は、円形と長円形の2つである。すなわち、発熱抵抗体の表面とノズルシートの表面との距離Hを一定とし、ノズル18の形状が円形の場合には直径を変化させ、長円形の場合には長径及び短径を変化させた。なお、長円形の場合、ノズルの最大幅Dは長径となる。
図14に示すように、ノズル18の形状が長円形であっても、円形の場合とほぼ同様のグラフとなり、ノズルの最大幅(長径)D/Hが0.53で偏向幅がゼロとなる。すなわち、ノズル18の形状が長円形であっても、D/Hが0.53の場合には、インク液滴の吐出方向が曲がらない。
したがって、ノズル18の形状は問題とならず、長円形であれば、長径がノズルの最大幅Dとなる。
また、上記の実験は全て、ヘッドの液室構造を特定するパラメータについて、インク液滴の吐出方向との関連性を検討したものである。
しかし、上記のパラメータ以外の要因を変化させると、インク液滴の吐出方向に影響する可能性もあるので、他の要因についても検討した。
図15は、吐出実験用ヘッド11の発熱抵抗体13を駆動するための直流電圧と、測定した偏向幅との関係を示すグラフである。
図15に示すグラフにおいて、発熱抵抗体13(図3参照)を駆動するための直流電圧は、1.497V、1.995V、2.613Vの3水準であり、D/Hは、0.604、0.831、1.033の3種類である。
図15に示すように、発熱抵抗体13を駆動する直流電圧が高ければ、偏向幅が全体的に増え、直流電圧が低ければ、偏向幅が全体的に減る。直流電圧の高低は、インク液滴の吐出エネルギーの増減に関係するので、これは当然の結果である。
しかし、図15に示すグラフで注目すべきは、いずれの直流電圧にしても、D/Hが約0.5で偏向幅がゼロとなる点である。具体的には、直流電圧が1.497Vの場合のD/Hは0.535、1.995VのD/Hは0.528、2.613VのD/Hは0.502である。なお、このD/Hは、最小自乗法による近似式から外挿して求めたものである。
このように、発熱抵抗体13を駆動するための直流電圧を高くして、吐出エネルギーを増やすと、偏向幅が大きくなるが、それでも、D/Hが約0.5で偏向しなくなる点に変わりはない。すなわち、D/Hが0.502〜0.535の範囲内では、インク液滴の吐出方向を曲げるように作用させても、吐出方向が曲がらない。
したがって、偏向幅がゼロとなるD/Hの範囲は、吐出エネルギーに対する依存性がなく、どのような吐出エネルギーを与えても成立する関係である。
また、吐出実験用ヘッド11の構成材料の影響についても検討した。すなわち、吐出実験用ヘッド11は、上述したように、バリア層と一体のノズルシート17(図3参照)を備える一体型のものであるから、ノズルシート17の構成材料は、感光性樹脂である。一方、図1に示す実施形態のヘッド10は、感光性樹脂からなるバリア層15と、Ni(ニッケル)製のノズルシート17とで構成されている。そのため、ノズルシート17の形成材料の相違と、偏向幅との関係が問題となる。
さらに、カラー対応のヘッド10であれば、各色でインクの組成が異なる。すると、吐出実験用ヘッド11の構成材料が同じであっても、インクの色の相違がインク液滴の吐出方向に影響する可能性もある。そのため、インクの色と、偏向幅との関係についても検討した。
図16は、ノズルシート17の形成材料やインクの色と、測定した偏向幅との関係を示すグラフである。
図16に示すグラフにおいて、ノズルシート17(図3参照)の形成材料は、Ni(ニッケル)とOCN(エポキシ樹脂)の2つである。また、インクの色は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、及びK(ブラック)の4色である。なお、OCN(エポキシ樹脂)のノズルシート17については、C(シアン)とK(ブラック)の2色のみとした。
図16に示すように、ノズルシート17の材質がNi(ニッケル)製であると、OCN(エポキシ樹脂)でノズルシート17を作製した場合に比べ、同じD/Hに対して、偏向幅が大きくなる傾向がある。ただし、偏向幅がゼロで、インク液滴の吐出方向が曲がらなくなるD/Hの値は、約0.5付近になっている。
一方、ノズルシート17の材質が同じであれば、インクの色による相違は、ほとんどない。
すなわち、ノズルシート17の材質と、インクの色との組合せとして、Ni(ニッケル)−Y(イエロー)、Ni(ニッケル)−M(マゼンタ)、Ni(ニッケル)−C(シアン)、Ni(ニッケル)−K(ブラック)、OCN(エポキシ樹脂)−C(シアン)、OCN(エポキシ樹脂)−K(ブラック)の6種類についてグラフ化すると、ノズルシート17の材質がNi(ニッケル)のグループと、OCN(エポキシ樹脂)のグループとに分かれた。なお、ノズルシート17の材質による偏向幅の絶対量の差は、ノズルシート17の材質により、インクとの接触角が変化することに起因するものと思われる。
また、偏向幅がゼロとなるD/Hの値は、Ni(ニッケル)−Y(イエロー)が0.452、Ni(ニッケル)−M(マゼンタ)が0.544、Ni(ニッケル)−C(シアン)が0.546、Ni(ニッケル)−K(ブラック)が0.513、OCN(エポキシ樹脂)−C(シアン)が0.554、OCN(エポキシ樹脂)−K(ブラック)が0.548となっている。なお、このD/Hは、最小自乗法による近似式から外挿して求めたものである。
このように、D/Hが0.452〜0.554の範囲内では、インク液滴の吐出方向を曲げるように作用させても、吐出方向が曲がらない。また、これまでの吐出実験によって求められたD/Hの値は、全て上記の範囲内である。
したがって、インク液滴の吐出方向が曲がらないD/Hの範囲は、0.45〜0.55である。
ここで、D/Hが0.45未満でも、偏向幅がほぼゼロになる。
しかし、D/Hが小さくなるということは、インク液室の高さH1やノズルの厚みH2(図1参照)が厚くなることを意味する。すると、インクとの接触面積が大きくなり、インク液滴を吐出する際の摩擦によってエネルギーロスが生じ、吐出速度が低下する。そのため、インク液滴の吐出方向が曲がらず、エネルギーのロスもなく、最小のエネルギーで吐出方向が安定するD/Hの最適範囲は、0.45〜0.55である。
以上、説明したように、D/Hが0.45〜0.55の範囲内であれば、ヘッド10(図1参照)の構成材料や吐出エネルギーに依存することなく、偏向幅がほぼゼロに近い値に収束し、種々のヘッド10において、インク液滴の吐出方向を曲げるように作用させても、吐出方向が曲がらなくなる。
したがって、D/Hを0.45〜0.55の範囲内とする限り、ヘッド10に、製造上のバラツキ等や寸法上の誤差等があったり、吐出エネルギーが変化したりしても、インク液滴の吐出方向が曲がることはない。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、例えば以下のような種々の変形等が可能である。すなわち、
(1)本実施形態は、発熱抵抗体を用いたサーマル方式としたが、発熱抵抗体以外の発熱素子であっても良い。また、振動板と、この振動板の下側に空気層を介した2つの電極を設け、両電極間に電圧を印加して振動板をたわませた後、静電気力を開放して振動板を元に戻し、その際の弾性力を利用してインク液滴を吐出させる静電吐出方式にも適用可能である。さらに、両面に電極を有するピエゾ素子と振動板との積層体を用い、圧電効果によって振動板を変形させてインク液滴を吐出させるピエゾ方式にも適用可能である。
(2)本発明は、カラー対応のインクジェットプリンタであっても、モノクロ用のインクジェットプリンタであっても適用可能である。また、カラー対応の場合、4色一体型にも、一色一色独立した構成のものにも適用できる。
(3)本発明は、多数のヘッドを被記録媒体の幅方向に並べて配置し、印画幅分のラインヘッドを形成したライン方式のインクジェットプリンタであっても、ヘッドを被記録媒体の幅方向に移動させて印画を行うシリアル方式のインクジェットプリンタであっても適用可能である。
(4)本発明では、D/Hの範囲を特定しているが、DとHとの間でどちらを分母にするかは、本質的な問題ではない。すなわち、分子と分母を逆にしてH/Dを求めれば、各グラフの傾きが逆になるが、インク液滴の吐出方向が曲がらなくなる点に変わりはなく、表示形式の問題に過ぎない。
本発明の液体吐出ヘッドは、インクジェットプリンタに適用して特に好適なものであるが、被記録媒体は印画紙に限ることなく、例えば染め物に対して染料を吐出する液体吐出ヘッド等に適用することもできる。
また、生体試料を検出するためのDNA含有溶液を吐出する液体吐出ヘッド等に適用することも可能である。
実施形態のヘッドを示す部分斜視図である。 ノズルの位置と、各発熱抵抗体の位置との関係を示す説明図である。 パラメータを選定するために使用する吐出実験用ヘッドの断面図である。 図3に示す吐出実験用ヘッドを用いた記録装置を示す概要図である。 図4に示す記録装置を用いて測定されるべき「本来的」な偏向幅を示すグラフである。 図5に示すグラフに基づく「本来的」な着弾パターンを示す説明図である。 図3に示す吐出実験用ヘッドを用いて「実際」に着弾させた場合の着弾パターンの例を示す説明図である。 吐出実験用ヘッドの液室構造を決定する各パラメータ候補と、「実際」に測定した偏向幅との関係を示す表である。 図8に示す5つのパラメータ候補と、測定した偏向幅との関係を示すグラフである。 吐出実験用ヘッドにおける3つのパラメータと、測定した偏向幅との関係を示す表である。 図10に示す表の3つパラメータ中、インク液室の高さH1を一定とし、ノズルの最大幅(直径)Dとノズルの厚みH2との比(D/H2)と、測定した偏向幅との関係を求めたグラフである。 図10に示す表の3つパラメータ中、ノズルの厚みH2を一定とし、ノズルの最大幅(直径)Dとインク液室の高さH1との比(D/H1)と、測定した偏向幅との関係を求めたグラフである。 ノズルの最大幅(直径)Dと距離H(発熱抵抗体の表面とノズルシートの表面との距離)との比(D/H)と、測定した偏向幅との関係を示すグラフである。 吐出実験用ヘッドのノズルの形状と、測定した偏向幅との関係を示すグラフである。 吐出実験用ヘッドの発熱抵抗体を駆動するための直流電圧と、測定した偏向幅との関係を示すグラフである。 ノズルシートの形成材料やインクの色と、測定した偏向幅との関係を示すグラフである。
符号の説明
10 ヘッド
11 吐出実験用ヘッド
12 インク液室
13 発熱抵抗体(エネルギー発生素子)
15 バリア層(液室形成部材)
17 ノズルシート
18 ノズル
19 ヘッドチップ

Claims (5)

  1. エネルギー発生素子と、
    液体を貯蔵するための液室と、
    ノズルと
    を備え、
    前記エネルギー発生素子により、前記液室内の前記液体にエネルギーを付与し、前記ノズルから前記液体を吐出する液体吐出ヘッドであって、
    前記ノズルの最大幅をDとし、
    前記エネルギー発生素子の表面と前記ノズルの吐出面との距離をHとしたとき、
    D/Hが0.45〜0.55の範囲内である
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  2. エネルギー発生素子を配列したヘッドチップと、
    液滴を吐出するためのノズルを形成したノズルシートと、
    前記ヘッドチップの前記エネルギー発生素子の配列面と前記ノズルシートの裏面との間に配置され、前記エネルギー発生素子の表面と前記ノズルとの間に液室を形成するための液室形成部材と
    を備え、
    前記エネルギー発生素子により、前記液室内の液体を液滴として前記ノズルから吐出する液体吐出ヘッドであって、
    前記ノズルの最大幅をDとし、
    前記エネルギー発生素子の表面と前記ノズルシートの表面との距離をHとしたとき、
    D/Hが0.45〜0.55の範囲内である
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
    前記ノズルは、円形であり、前記ノズルの最大幅Dは、前記ノズルの直径である
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
    前記エネルギー発生素子は、発熱抵抗体である
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  5. 請求項1又は請求項2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
    前記エネルギー発生素子は、並設された2つの発熱抵抗体である
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
JP2004016633A 2004-01-26 2004-01-26 液体吐出ヘッド Pending JP2005205817A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004016633A JP2005205817A (ja) 2004-01-26 2004-01-26 液体吐出ヘッド

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004016633A JP2005205817A (ja) 2004-01-26 2004-01-26 液体吐出ヘッド

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005205817A true JP2005205817A (ja) 2005-08-04

Family

ID=34901724

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004016633A Pending JP2005205817A (ja) 2004-01-26 2004-01-26 液体吐出ヘッド

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005205817A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6354698B1 (en) Liquid ejection method
JP2010069890A (ja) インクジェット記録ヘッド
JP2008119955A (ja) インクジェット記録ヘッド及び該ヘッドの製造方法
JP4222592B2 (ja) 積層型圧電素子及びその製造方法、圧電型アクチュエータ、液滴吐出ヘッド並びにインクジェット記録装置
US6582060B1 (en) Liquid ejecting method, liquid ejecting head and liquid ejecting apparatus
JP2004188956A (ja) 液体吐出装置及び液体吐出方法
JP2009226661A (ja) 液滴噴射装置
JP2008018603A (ja) インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法
JP4725114B2 (ja) パターン形成装置及び方法
US6938988B2 (en) Counter-bore of a fluid ejection device
JP3972363B2 (ja) 液体吐出装置及び液体吐出方法
JP2008094012A (ja) インクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法
JP2004216816A (ja) 液体吐出記録キャレッジおよび液体吐出記録装置
JP2005205817A (ja) 液体吐出ヘッド
JPH11300944A (ja) インクジェット記録装置
JP2007098701A (ja) 液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
JP2012143956A (ja) ラインヘッド、ラインヘッドの製造方法、及び記録装置
JP2005132084A (ja) 液体吐出装置
JP4326772B2 (ja) 液滴吐出ヘッド、インクカートリッジ並びにインクジェット記録装置
JP4856827B2 (ja) インクジェット記録ヘッドの製造方法、インクジェット記録ヘッド、およびインクジェット記録方法
JP2004167951A (ja) 液滴吐出ヘッド及びその製造方法、インクカートリッジ並びにインクジェット記録装置
JP3753047B2 (ja) インクジェットヘッドの駆動方法
JP4353290B2 (ja) 液体噴射装置
JP2004345193A (ja) 液滴吐出ヘッド及びその製造方法、液体カートリッジ並びに画像形成装置
JP4036071B2 (ja) 液体噴射装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Effective date: 20060718

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090625

A131 Notification of reasons for refusal

Effective date: 20090630

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20091027