JP2005205422A - ダイカスト鋳造方法およびダイカスト鋳造装置 - Google Patents

ダイカスト鋳造方法およびダイカスト鋳造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】キャビティ内におけるガスの巻込みを大幅に抑制し、鋳巣発生の少ない品質良好なダイカスト鋳造品を得る。
【解決手段】金型1を構成する固定型3と可動型4に、透磁率の低い材料からなる取付板13を用いて電磁石11,12を埋設し、この電磁石11,12のコイル11b,12bに異なる磁極が対向するように電流を流し、ゲート部10の近傍のキャビティ5内に射出方向と直交する方向へ向けて静磁場Mを形成する。ゲート部10からキャビティ5内に射出された溶湯6がこの静磁場M内を通過すると、溶湯6内に電磁誘導により渦電流が発生し、この渦電流と磁場Mとの反発により、溶湯流が減勢され、結果としてキャビティ5内におけるガスの巻込みが抑制される。
【選択図】図1

Description

本発明は、ダイカスト鋳造方法と該方法の実施に用いるダイカスト鋳造装置とに関する。
金型のキャビティ内に金属溶湯を高速で射出するダイカスト鋳造では、溶湯内へのガス(主として空気)の巻込みによる鋳巣発生が大きな問題となっている。そして従来、この鋳巣発生を防止するため、一般には鋳造圧を大きく設定して鋳巣を押し潰す対策を採っているが、このような対策では、大型の射出機構に加えて大型の金型や型締機構が必要になり、設備コストの増大が避けられないようになる。
そこで、例えば、特許文献1には、プランジャスリーブに電磁誘導コイル装置を外装し、プランジャスリーブ内の溶湯を前記電磁誘導コイル装置の電磁力によりプランジャチップ側へ偏在させた状態でプランジャチップを前進させ、ガスを溶湯に先行してキャビティに射出する方法が提案されている。
特開平9−155533号公報
ところで、ダイカスト鋳造においては、金型内のゲート部からキャビティ内へ溶湯が噴出されるため、溶湯内への空気巻込みの多くはキャビティ内で起こり、したがって、上記特許文献1に記載されるようにプランジャスリーブ内での空気巻込みを抑制する対策では、鋳巣対策として不十分である、という問題があった。
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、キャビティ内におけるガスの巻込みを大幅に抑制し、もって鋳造品質の向上に大きく寄与するダイカスト鋳造方法および鋳造装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係るダイカスト鋳造方法は、ゲート部近傍のキャビティ内に射出方向と交差する方向に向けて静磁場を発生させ、該静磁場によって前記ゲート部からキャビティ内に射出される溶湯流を減勢することを特徴とする。このように行うダイカスト鋳造方法においては、ゲートからキャビティ内に射出された溶湯流が静磁場内を通過するとき、電磁誘導により溶湯内に渦電流が発生し、この渦電流と磁場との反発による抵抗を受けて溶湯流が減勢され、結果としてキャビティ内におけるガスの巻込みが抑制される。
本発明に係るダイカスト鋳造装置は、上記した鋳造方法の実施に用いられるもので、金型に、ゲート部近傍のキャビティ内に射出方向と交差する方向に向けて静磁場を発生させる配置で磁石を埋設したことを特徴とする。この場合、磁石の種類は永久磁石であっても、電磁石であってもよいが、一対の磁石を、キャビティを挟んで異磁極を対向させて配置する構成としてもよい。また、透磁率の低い材料からなる取付板を介して磁石を金型に固定し、前記取付板により磁石をキャビティから隔離した構成としてもよい。
本発明に係るダイカスト鋳造方法およびダイカスト鋳造装置によれば、ゲートからキャビティ内に射出される溶湯流が静磁場によって減勢されるので、キャビティ内におけるガスの巻込みが大幅に抑制され、鋳巣の少ない品質良好な鋳造品が得られるようになる。また、静磁場を印加する磁石を金型に埋設するだけであるので、設備コストが特別上昇することもない。
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るダイカスト鋳造装置の一つの実施形態を示したものである。同図において、1は金型、2は射出機構である。金型1は、固定型3と可動型4とからなっており、固定型3に対して可動型4を合せた状態すなわち型閉じ状態で、両者の間には鋳造空間としてのキャビティ5が区画形成されるようになっている。一方、射出機構2は、溶湯6を受ける給湯口7aを有する射出スリーブ7と、駆動手段により駆動され射出スリーブ7内を進退動するプランジャチップ8とを備えている。射出スリーブ7は、その先端部を固定型3に設けた嵌合穴3aに嵌入させることにより該固定型3に結合され、この状態で、射出スリーブ8の先端開口部が、固定型3と可動型4との相互間に形成された湯道部9およびゲート部10を通じて前記キャビティ5に連通されるようになっている。
本実施形態において、上記金型1には、キャビティ5を挟んで一対の電磁石11,12が埋設されている。より詳しくは、各電磁石11,12は磁心11a,12aとこの磁心11a,12aに巻かれたコイル11b,12bとからなっており、それぞれの磁心11a,12aの一端には、予め取付板13が接合されている。一方、金型1を構成する固定型3および可動型4のそれぞれには、ゲート部10の近接のキャビティ5内に臨んで段付きの貫通孔14が対向して穿設されている。各電磁石11,12は、前記取付板13を前記貫通孔14の、キャビティ5側の大径部に嵌着させることで固定型3、可動型4に対して位置固定されている。したがって、各電磁石11,12は、キャビティ5に対して取付板13により隔離されている。
ここで、上記一対の電磁石11,12は、異なる磁極が相互に対向するようにコイル11b,12bに対する電流の向きが設定されている。図示例では、一方の電磁石11はキャビティ5側がN極となるように、他方の電磁石12はキャビティ5側がS極となるようにそれぞれ電流向きが設定されており、したがって、ゲート部10の近傍のキャビティ5内には、ゲート部10からの射出方向と直交する方向へ向けて磁場(静磁場)Mが形成される。一方、取付板13は、透磁率ができるだけ低い耐熱材料から形成されている。透磁率の低い材料を選択するのは、キャビティ5内における磁場形成を妨げないようにするためであり、溶湯6がアルミニウム系材料からなる場合、このような材料としては、銅、セラミックス等が選択される。
以下、上記のように構成したダイカスト鋳造装置によるダイカスト鋳造方法について説明する。
鋳造に際しては、予め固定型3に対して可動型4を型閉じすると共に、プランジャチップ8を後退位置(図1に二点鎖線で示す)に位置決めし、給湯口7aを通して射出スリーブ7内に所定量の溶湯6を給湯する。この給湯完了により、射出機構2内の駆動手段が作動してプランジャチップ8が前進し、この前進に応じて射出スリーブ7内の溶湯6が湯道部9を経てゲート部10からキャビティ5内に射出される。
一方、一対の電磁石11,12のコイル11b,12bには、上記射出スリーブ7内への給湯完了と前後して電流が供給されており、これにより、ゲート部10の近傍のキャビティ5内には、ゲート部10からの射出方向と交差する方向に磁場Mが形成されている。したがって、プランジャチップ8の前進によりゲート部10からキャビティ5内に射出された溶湯6は、この磁場M中を通過するようになる。しかして、溶湯6がこの磁場M中を通過すると、図2に示されるように電磁誘導により溶湯6中に渦電流Sが発生し、この渦電流Sと磁場Mとの反発により溶湯流は抵抗力を受ける。すなわち、溶湯6は、あたかも粘性が増大したかのようになり、これにより溶湯流が減勢され、層流となってキャビティ5内に充填される。この結果、溶湯6内へのガスの巻込みが抑制され、鋳巣の少ない品質良好な鋳造品が得られるようになる。
本実施形態においては特に、一対の電磁石11,12をキャビティ5を挟んで対向して配置しているので、ゲート部10からの射出方向と交差する方向へ効率よく磁場Mが形成され、磁場Mによる溶湯流の減勢はより一層促進される。本実施形態においてはまた、電磁石11,12が取付板13によりキャビティ5から隔離され、溶湯6と接触することがないので、電磁石11,12が溶損する危険がなく、その寿命が延長する。
なお、上記した電磁石11,12は永久磁石に代えてもよいことはもちろんである。また、これら磁石の数も任意であり、二対以上設置しても、あるいは二対のうちの片側だけ(1つだけ)を設置してもよい。また、これら磁石は、適宜の冷却手段により冷却するようにしてもよく、特に永久磁石を使用する場合は、この冷却によって磁石性能が維持される。さらに、上記実施形態においては、電磁石11,12を取付板13によりキャビティ5から隔離するようにしたが、電磁石を用いる場合は、温度上昇による磁石性能の低下を心配する必要がないので、前記取付板13を省略してコア11a,12aをキャビティ5に露出させるようにしてもよい。
上記実施形態のダイカスト鋳造装置(図1)において、その構成要素のサイズを下記のとおりに設定し、さらに下記の条件で鋳造試験を行った。
金型のキャビティ:縦5mm×横45mm×長さ105mm
金型のゲート部 :縦2mm×横40mm
射出スリーブ :内径10mm
電磁石の磁心断面:40mm方形
鋳造試験は、Al−Si−Cu系(ADC12)の700℃の溶湯6を射出スリーブ7に給湯し、プランジャチップ8を0.2m/秒の速度で前進させ、電磁石11によりゲート部10の近傍のキャビティ5内に0.1T(テスラ)の静磁場Mを形成した場合と静磁場Mを形成しない場合との双方の条件で鋳造を行い、得られた鋳造品について含有するガス量を測定した。ガス量の測定は、鋳造品から切出したブロックを再溶解して、このとき発生するガス量を測定する方法によった。
図4は、上記したガス量の測定結果を示したものである。同図に示す結果より、キャビティ5内に静磁場Mを形成しない場合のガス量が、100g中約10mlであるのに対し、キャビティ5内に静磁場Mを形成した場合のガス量は、100g中約2mlと著しく減少しており、静磁場の印加によりガスの巻込みが著しく抑制されたことが明きらかとなった。
本発明に係るダイカスト鋳造装置の一つの実施形態を示す断面図である。 図1に示した鋳造装置による射出時の溶湯流の減勢原理を模式的に示す説明図である。 本発明の実施例で得られた試験結果を示すグラフである。
符号の説明
1 金型
5 キャビティ
6 溶湯
7 射出スリーブ
8 プランジャチップ
10 ゲート部
11,12 電磁石
11a,12a 磁心
11b,12b コイル
13 取付板
M 静磁場

Claims (4)

  1. ゲート部近傍のキャビティ内に射出方向と交差する方向に向けて静磁場を発生させ、該静磁場によって前記ゲート部からキャビティ内に射出される溶湯流を減勢することを特徴とするダイカスト鋳造方法。
  2. 金型に、ゲート部近傍のキャビティ内に射出方向と交差する方向に向けて静磁場を発生させる配置で磁石を埋設したことを特徴とするダイカスト鋳造装置。
  3. 一対の磁石を、キャビティを挟んで異磁極を対向させて配置したことを特徴とする請求項2に記載のダイカスト鋳造装置。
  4. 透磁率の低い材料からなる取付板を介して磁石を金型に固定し、前記取付板により磁石をキャビティから隔離したことを特徴とする請求項2または3に記載のダイカスト鋳造装置。

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