JP2005200256A - 金属フッ化物の精製方法、金属フッ化物多結晶および単結晶の製造方法および製造装置 - Google Patents

金属フッ化物の精製方法、金属フッ化物多結晶および単結晶の製造方法および製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 金属フッ化物多結晶または単結晶の製造工程において、原料が含有する不純物量に応じた最適量のフッ素化剤を供給し、フッ素化剤の供給過剰による炉構成材の侵食および供給過小による不純物の残留を抑制する。
【解決手段】 雰囲気炉内で気体状フッ素化剤を供給しながら金属フッ化物を加熱する際に、雰囲気ガス中の、前記雰囲気炉の構成部材と前記気体状フッ素化剤との反応生成物の分圧に応じて前記気体状フッ素化剤の供給量を制御する。
【選択図】 図1

Description

本発明は高純度でリソグラフィ装置用光学部材に好適な金属フッ化物単結晶の製造方法および製造装置、並びに該単結晶製造用原料としての金属フッ化物多結晶の製造方法および製造装置に関するものであって、特に金属フッ化物中の不純物濃度を低減する精製工程に関するものである。
近年におけるVLSIは、高集積化、高機能化が進行し、ウェハ上の微細加工技術が要求されている。その加工方法として、光リソグラフィーによる方法が一般に行われている。現在では露光波長も次第に短波長となり、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)を光源とする投影露光装置に続いて、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)を光源とする投影露光装置も市場に登場してきている。250nm以下の波長で光リソグラフィー用として使える光学材料は非常に少なく、主にフッ化物結晶と石英ガラスの二種類が用いられる。そして、さらに微細加工をするために光源の波長を短くする試みが行われており、F2レーザ光(波長157nm)を利用した光リソグラフィー技術への要望が近年高まりつつある。しかしF2レーザ光波長ではもはや石英ガラスは使用が困難であり、高純度で透過率の高いフッ化物単結晶だけが残された光学材料と考えられている。
ここで従来のフッ化物単結晶の製造方法を説明する。紫外から真空紫外域で光学部材として用いられるフッ化物単結晶は、高い光透過率を得るために、化学的に極めて高純度であることが要求される。そのため単結晶の原料として天然のフッ化物鉱石を用いることはなく、化学合成により製造された高純度原料を用いることが一般的である。単結晶の原料としてのフッ化物は粉末状で使用することも可能であるが、単結晶化の第一段階で融解した際の体積減少が著しいため、事前に一旦融解して嵩密度を高くした多結晶や、その粉砕品を用いるのが普通である。このような多結晶を前処理品または半溶融品と呼ぶ。
金属フッ化物の前処理品を製造する工程では、原料粉末にフッ化鉛(PbF2)や四フッ化炭素(CF4)などのフッ素化剤を添加して、原料粉末中の不純物を除去することが行われる。これらのフッ素化剤はスカベンジャーとも呼ばれ、原料粉末中に不純物として含まれる元素をフッ素に置換し、さらに置換された不純物元素を揮発性の化合物として除去する作用を持つ。たとえばフッ化カルシウム(CaF2)の半溶融品を製造する工程においては、原料粉末にフッ化鉛を添加してから加熱炉内で加熱融解し、原料粉末中に酸化カルシウム(CaO)として含まれていた酸素を揮発性の酸化鉛(PbO)として除去する。
CaO + PbF2 → CaF2 + PbO↑
原料の融解状態を一定時間保持した後に冷却すれば、嵩密度の向上し、かつ不純物濃度が低減された多結晶体すなわち前処理品が得られる。
フッ素化剤には固体状のものと気体状のものとがあり、前者としてはフッ化鉛の他、フッ化コバルト(CoF2)、フッ化マンガン(MnF2)、PTFE等のフッ素樹脂などが、後者としては各種フッ化炭素(CmFn)などが知られている。固体状のフッ素化剤は原料粉末に直接混合して用いるか、または加熱炉内で原料粉末とは別に加熱し分解ガスを原料粉末に供給して用いる。気体状のフッ素化剤はそのまま適当な手段によって加熱炉内に供給すれば良い。気体状フッ素化剤を用いる場合は、加熱炉として、内部にガス導入が可能な雰囲気炉を使用する。
次に金属フッ化物単結晶の製造方法を説明する。
最も一般的に用いられる金属フッ化物単結晶の製造方法は垂直ブリッジマン法である。垂直ブリッジマン法とは、独立に温度制御された高温部と低温部とを有する加熱炉内にルツボを配置し、ルツボ内で加熱融解した金属フッ化物を、ルツボごと高温部から低温部に徐々に下降させることで結晶成長させる方法である。このような構成を備えた単結晶製造装置を垂直ブリッジマン炉と呼ぶことがある。
ルツボに装填する金属フッ化物原料としては上記の前処理品を用いることが好ましいが、不純物濃度低減および嵩密度向上のなされていない原料粉末を直接ルツボに装填することもある。この場合は単結晶製造用の垂直ブリッジマン炉を利用して、原料粉末にフッ素化剤を混合するか、あるいは外部からフッ素化剤を供給することにより、ルツボ引き下げ前の原料加熱段階において、前処理品の製造時と同様の作用によって原料の精製を行うことができる。
特開平9−315893号公報
金属フッ化物単結晶の製造にあたっては、前処理品の製造時または単結晶の製造時に、原料にフッ素化剤を混合するか、外部から気体状フッ素化剤を供給することによって不純物除去が行われる。しかしながら原料が含有する不純物量は製造ロットごとに異なることがあり、また大気中から酸素や水分を吸収することによって、環境に依存して経時的に変動する。したがって不純物を除去するのに必要なフッ素化剤の量が一定しないという問題があった。不純物量に比べてフッ素化剤の量が少ない場合には不純物を除去しきれず、一方不純物量に比べてフッ素化剤を過剰に加えた場合には、余剰のフッ素が製造装置を侵食し、製造装置の構成部材とフッ素との反応生成物が、精製すべき金属フッ化物に混入して、かえって純度が低下するという問題があった。
本発明はかかる課題を解決する金属フッ化物の精製方法として、
「雰囲気炉内で気体状フッ素化剤を供給しながら金属フッ化物を加熱するフッ素化工程を有し、該フッ素化工程における雰囲気ガス中の、前記雰囲気炉の構成部材と前記気体状フッ素化剤との反応生成物の分圧に応じて前記気体状フッ素化剤の供給量を制御する、金属フッ化物の精製方法(請求項1)」
および、
「前記フッ素化工程において、前記反応生成物の分圧が上昇した場合は前記気体状フッ素化剤の供給量を減じ、前記反応生成物の分圧が低下した場合は前記気体状フッ素化剤の供給量を増加する、請求項1に記載の金属フッ化物の精製方法(請求項2)」
および、
「ガス導入口を有する略密閉構造のルツボに前記金属フッ化物を収納し、前記雰囲気炉の外部から該ガス導入口を通して前記気体状フッ素化剤を供給する、請求項1または請求項2に記載の金属フッ化物の精製方法(請求項3)」
を提供する。
また本発明は前記雰囲気炉の構成部材の材質および反応生成物を特定した発明として、
「前記雰囲気炉の構成部材がステンレス鋼であり、前記反応生成物が五フッ化クロム(CrF5)または六フッ化クロム(CrF6)である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の金属フッ化物の精製方法(請求項4)」
をする。
また本発明は金属フッ化物の精製に好適な気体状フッ素化剤を特定した発明として、
「前記気体状フッ素化剤が、四フッ化メタン(CF4)、三フッ化メタン(CHF3)、二フッ化メタン(CH2F2)、六フッ化エタン(C2F6)、八フッ化プロパン(C3F8)、三フッ化窒素(NF3)から選ばれた少なくとも一種である、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の金属フッ化物の精製方法(請求項5)」
を提供する。
また本発明は前記反応生成物の分圧を測定する手段を特定した発明として、
「前記反応生成物の分圧が四重極質量分析計によって測定される、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の金属フッ化物の精製方法(請求項6)」
を提供する。
また本発明は上記の精製方法をリソグラフィ装置用光学部材として好適なフッ化カルシウムに適用した発明として、
「前記金属フッ化物がフッ化カルシウムである、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の金属フッ化物の精製方法(請求項7)」
を提供する。
また本発明は、上記の精製方法を金属フッ化単結晶の原料として好適な多結晶の製造方法に適用した発明として、
「請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の金属フッ化物の精製方法による精製工程を有し、該金属フッ化物を加熱融解および冷却固化することによって多結晶を製造する、金属フッ化物多結晶の製造方法(請求項8)」
を提供し、あわせて該多結晶を用いた単結晶製造方法として、
「請求項8に記載の方法によって製造された金属フッ化物多結晶を原料とし、該原料を加熱融解したのち冷却することによって単結晶を成長させる、金属フッ化物単結晶の製造方法(請求項9)」
を提供する。
また本発明は金属フッ化物単結晶製造方法として、
「請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の金属フッ化物の精製方法による精製工程を有し、該金属フッ化物を加熱融解したのち冷却することによって単結晶を成長させる、金属フッ化物単結晶の製造方法(請求項10)」
を提供する。
また本発明は上記金属フッ化物の製造方法の実施に好適な構造を有する製造装置として、
「雰囲気炉と、該雰囲気炉内に配置された略密閉構造を有するルツボと、該ルツボに気体状フッ素化剤を供給する手段と、前記雰囲気炉内の雰囲気ガスを構成する成分の分圧を測定する手段と、該雰囲気ガス中の特定成分の分圧に応じて前記気体状フッ素化剤の供給量を制御する手段と、を有する金属フッ化物の製造装置(請求項11)」
および、
「前記特定成分が、前記雰囲気炉の構成部材と前記気体状フッ素化剤との反応生成物である、請求項11に記載の金属フッ化物の製造装置(請求項12)」
および、
「前記雰囲気炉内の雰囲気ガスを構成する成分の分圧を測定する手段が四重極質量分析計である、請求項11または請求項12に記載の金属フッ化物の製造装置(請求項13)」
を提供する。
さらに本発明は前記雰囲気炉の構成部材および雰囲気ガス中の特定成分および気体状フッ素化剤を特定した発明として、
「前記雰囲気炉の構成部材がステンレス鋼であり、前記雰囲気ガス中の特定成分が五フッ化クロム(CrF5)または六フッ化クロム(CrF6)である、請求項11ないし請求項13のいずれか一項に記載の金属フッ化物の製造装置(請求項14)」
および、
「前記気体状フッ素化剤が、四フッ化メタン(CF4)、三フッ化メタン(CHF3)、二フッ化メタン(CH2F2)、六フッ化エタン(C2F6)、八フッ化プロパン(C3F8)、三フッ化窒素(NF3)から選ばれた少なくとも一種である、請求項11ないし請求項14のいずれか一項に記載の金属フッ化物の製造装置(請求項15)」
を提供する。
また本発明は上記の特徴を有する製造装置であって、金属フッ化物単結晶の製造に好適な製造装置として、
「請求項11ないし請求項15のいずれか一項に記載の金属フッ化物の製造装置であって、前記雰囲気炉が、それぞれ独立に温度制御可能な高温部と低温部とに区分され、該雰囲気炉内において前記ルツボを高温部から低温部へ引き下げるためのルツボ引き下げ機構を有する、垂直ブリッジマン法による金属フッ化物単結晶の製造装置(請求項16)」
を提供する。
なお本発明において雰囲気炉とは、密閉可能で好ましくは真空排気可能な容器と、該容器内部に配置されるヒーターおよび断熱部材等からなる、外部からのガス供給により内部をガス置換可能な構造を有する加熱炉をいう。
本発明によれば、金属フッ化物の精製工程において過剰なスカベンジャと雰囲気炉構成部材との反応生成物が該金属フッ化物に混入することが抑制され、高純度な金属フッ化物の多結晶または単結晶を製造することが可能になる。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態である金属フッ化物多結晶の製造装置の一例である。
ベルジャー1とベースプレート2とは真空容器を構成し、これらに存在する貫通孔はOリング等のシール部材によって気密が保たれている。また真空容器内部は、図示しない真空ポンプによって排気口3から真空排気することができる。ベルジャー1の内部にはルツボ5を取り囲むようにヒーター7が配置され、真空容器と合わせて雰囲気炉が構成される。
真空容器を構成するベルジャー1およびベースプレート2には、真空排気時に加わる大気圧に耐えるだけの十分な機械的強度を持つことが求められる。また真空容器内部に導入され、または真空容器内部で発生する可能性がある反応性ガスに対し、ある程度の耐食性を有することも必要である。したがってベルジャー1とベースプレート2とは、これらの性質を備えた材質であるステンレス鋼で構成されることが望ましい。
ヒーター7は、図示しない制御系によって所定の温度に制御される。ヒーターの制御系は温度センサ、温度調節器、電力制御器等からなる一般的なシステムで良いが、ルツボ5を金属フッ化物の融点以上の温度に制御できることが必要である。
ルツボ5にはガス導入口15を有する上蓋6が取り付けられ、ガス導入口15には、ルツボ5内の金属フッ化物14に気体状フッ素化剤を供給する手段としての導入管9が通される。ルツボ5と上蓋6の間およびガス導入口15と導入管9の間にはそれぞれ若干の間隙が与えられ、全体として略密閉構造を構成する。この間隙は、それぞれの部材の熱膨張や振動による破損を防止するほか、過剰な気体状フッ素化剤または不純物との反応生成物の放出口としての機能がある。略密閉構造を実現するには、上述したように部材間に間隙を与える他、ルツボ5の上部や上蓋6等に小孔を設けても良いが、孔径が大きすぎると外部からルツボ内へのガス拡散が著しくなり、金属フッ化物に不純物が混入しやすくなるため、適度な孔径を選択する必要がある。
ルツボ5は支持部材4によってヒーター7の内側に支えられるが、ルツボ5と支持部材4の上部は金属フッ化物の融点以上の温度に加熱されるので、高温に耐える材質で構成されなければならない。またルツボ5については精製対象となる金属フッ化物に直接接触するものであるため、不純物として金属フッ化物に取り込まれ悪影響を及ぼすことのない材質であることが要求される。以上の条件を満たす材質として、ルツボ5および支持部材4の上部はカーボン材で構成されることが望ましい。
導入管9の一端はベルジャー1外に設けられた流量制御手段としてのマスフローコントローラ10に接続され、ルツボ5に充填された金属フッ化物14への気体状フッ素化剤の供給量を制御する。マスフローコントローラ10へは図示しないガスボンベ等の供給源から気体状フッ素化剤が供給される。導入管9の材質はルツボ5と同様にカーボン材が好ましい。第1の実施形態では流量制御手段としてマスフローコントローラを例示したが、流量計とバリアブルコンダクタンスバルブとの組み合わせ等でも良く、気体状フッ素化剤の供給量を所望の値に制御可能な手段であれば特に制限なく使用することができる。
以上の構成を有する雰囲気炉内の雰囲気ガスは、分圧測定手段としての四重極質量分析計12によって分析され、特定成分の分圧が測定される。このとき分圧測定の対象となる特定成分が蒸気圧の低い気体種である場合には、質量分析管への導入経路で凝縮して誤差を生じることを防止するため、導入経路上の低温部分を適当な温度に加熱する等の対策を講じることが望ましい。また雰囲気ガスの圧力が質量分析計の運転可能圧力の上限を超えている場合には、オリフィスを介して差動排気系を付加し、低圧側において質量分析を行えばよい。この場合にも必要に応じてオリフィス等を加熱し、低蒸気圧成分の凝縮を防止することが望ましい。
本実施形態において用いられる分圧測定手段としては、小型・低コストで管理が容易な四重極質量分析計が好適であるが、TOF(Time Of Flight)型質量分析計やAPI(Atmospheric Pressure Ionization)質量分析計など各種の質量分析計を同様に用いることができる。
上記のマスフローコントローラ10と四重極質量分析計12は制御手段13に接続される。制御手段13は予め設定されたプログラムにより、四重極質量分析計12によって測定される特定成分の分圧に従ってマスフローコントローラ10を制御し、気体状フッ素化剤の供給量を増減する。本実施形態において四重極質量分析計12によって分圧を測定すべき特定成分は、雰囲気炉の構成部材と気体状フッ素化剤との反応生成物であり、雰囲気炉の構成部材がステンレス鋼である場合には、五フッ化クロム(CrF5)または六フッ化クロム(CrF6)である。ステンレス鋼はフッ素化剤と反応することによって各種のフッ化ニッケルおよびフッ化クロムを生成するが、五フッ化クロムおよび六フッ化クロム以外の化合物は除いて蒸気圧が低いため分圧測定が困難である。したがって蒸気圧の高い五フッ化クロムまたは六フッ化クロムの分圧を測定することが望ましい。
なお、マスフローコントローラ10で制御されルツボ5に供給される気体状フッ素化剤は、分解後に金属元素が残留しない物質が望ましく、人体や環境に対する危険性が低いことが望ましい。四フッ化メタン(CF4)、三フッ化メタン(CHF3)、二フッ化メタン(CH2F2)、六フッ化エタン(C2F6)、八フッ化プロパン(C3F8)、三フッ化窒素(NF3)のいずれか、またはこれらの混合物は以上の条件を満たし、本発明に好適に用いることができる。これらの気体状フッ素化剤を実際にルツボに供給する際には、必要に応じてアルゴン(Ar)などの不活性ガスで希釈して用いることも可能である。
本実施形態の金属フッ化物多結晶の製造装置は、雰囲気ガス中の特定成分の分圧に従って気体状フッ素化剤の供給量を制御できるという特徴を有する。このため、雰囲気炉の構成部材と気体状フッ素化剤との反応生成物を上記特定成分とし、同成分の分圧が上昇した際は気体状フッ素化剤の供給量を減じる制御を行えば、上記反応生成物の生成量を最低限に抑えることができる。上記反応生成物は、雰囲気ガス中からルツボ5内の金属フッ化物14に混入して不純物となるものであるから、上記の制御によれば金属フッ化物14への不純物混入による純度低下を抑制することができる。
また本実施形態において金属フッ化物を14を収容するルツボ5は略密閉構造を有するため、ルツボ外で発生した上記反応生成物のルツボ内への混入量をより低減することができる。
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態として、第1の実施形態で示した装置を用いた金属フッ化物多結晶の製造方法を説明する。
始めに金属フッ化物の原料粉末を用意する。原料粉末はできるだけ高純度なものが望ましく、化学合成品を用いるのが良い。
次に、用意した原料粉末を雰囲気炉内のルツボ5に充填する。本発明においては気体状フッ素化剤により不純物除去を行うので、予め原料粉末に固体状フッ素化剤を添加しておく必要はないが、より効率的に不純物除去を行うためには、少量の固体状フッ素化剤、例えばフッ化鉛やフッ化マンガン等を添加・混合しても良い。ただし固体状フッ素化剤の添加量は原料粉末中の不純物量に対して過剰であってはならない。固体状フッ素化剤は一旦原料粉末に添加・混合されてしまうと反応量を制御することができず、不純物量に対して過剰に添加された場合は雰囲気炉の構成部材を侵食することが避けられないためである。
原料粉末をルツボ5に充填したらベルジャー1をベースプレート2に固定して内部を真空排気する。内部が十分に真空排気された後、ヒーター7に通電し、加熱を開始する。昇温中は真空排気を継続して、水分や酸素などの吸着ガスをできるだけ除去することが望ましい。
ルツボ5が所定の温度(充填されている金属フッ化物の融点よりも200℃〜400℃程度低い温度が適当である)に達したら一定温度を保持し、そのまま真空排気を継続しながら、吸着ガスが十分脱離して真空度が安定するのを待つ。真空度が安定したら導入管9から気体状フッ素化剤を供給し、フッ素化工程を開始する。このとき気体状フッ素化剤の供給量はマスフローコントローラ10を用いて一定に制御する。
ルツボ5内に供給された気体状フッ素化剤は金属フッ化物14中の不純物と反応し、その反応生成物はルツボ5と上蓋6との間隙や上蓋6と導入管9との間隙等から雰囲気炉内に流出して、最終的に排気口3から排気される。従来の雰囲気炉全体に気体状フッ素化剤を導入する方法では雰囲気炉構成部材と気体状フッ素化剤とが接触することが避けられないが、本発明では略密閉構造のルツボ内に直接気体状フッ素化剤を導入するので、供給量が過剰にならない限り、雰囲気炉構成部材と気体状フッ素化剤とはほとんど接触することがない。
フッ素化工程は雰囲気炉内の雰囲気ガスの分圧を測定しながら行う。フッ素化工程の初期においては、供給された気体状フッ素化剤の大部分は金属フッ化物14中の不純物と反応して消費されるため、ルツボ5から雰囲気炉内に流出してくるガスの主成分は、気体状フッ素化剤と金属フッ化物中の不純物との反応生成物である。金属フッ化物中の不純物は主として酸素であるから、気体状フッ素化剤としてフッ化炭素を用いた場合の反応生成物は、主として一酸化炭素または二酸化炭素である。
フッ素化工程が進行すると金属フッ化物中の不純物は徐々に減少していくが、気体状フッ素化剤の供給量はマスフローコントローラ10によって一定に制御されているので、ルツボ5から雰囲気炉内に流出するガス中には、未反応の気体状フッ素化剤が徐々に増加する。
本発明者が明らかにしたところによれば、フッ素化工程の進行によって不純物が減少した結果、過剰となって雰囲気炉内に流出した未反応の気体状フッ素化剤は、その一部が雰囲気炉の構成部材を侵食し、生成した昇華性の反応生成物がルツボ5内の金属フッ化物14を再汚染してしまう。そこで本発明に係る金属フッ化物の精製方法では、フッ素化工程中に雰囲気炉内の雰囲気ガスの組成を監視し、金属フッ化物の純度に影響を与える特定成分の分圧に応じて気体状フッ素化剤の供給量を制御する。
金属フッ化物の純度に影響を与える特定成分として最も影響の大きいものは雰囲気炉の構成部材と気体状フッ素化剤との反応生成物であり、具体的な反応生成物は、雰囲気炉の構成部材がステンレス鋼である場合は五フッ化クロムまたは六フッ化クロムである。
フッ素化工程において雰囲気炉の構成部材と気体状フッ素化剤との反応生成物分圧が上昇した場合は、金属フッ化物中の不純物量と比較して気体状フッ素化剤の供給量が過剰であるか、または反応速度と比較して供給速度が速いかのどちらかである。したがってこの様な場合は気体状フッ素化剤の供給量を減じれば、未反応気体状フッ素化剤がルツボ外に流出することを抑制し、雰囲気炉構成部材との反応を最低限に止めることができる。また反応生成物の分圧が減少した場合は再び気体状フッ素化剤の供給量を増加させれば、金属フッ化物中に残存する不純物をさらに除去することができる。
以上の制御は、制御手段13に予め設定されたプログラムにより、四重極質量分析計12の出力を随時監視し、得られた分圧データに従ってマスフローコントローラ10に適正な制御信号を送ることによって行われる。
上記の工程では気体状フッ素化剤の供給量を連続的に制御する例を示したが、制御系を簡単にするため供給/停止の二値制御としても良く、どのような制御を行うかは各制御要素の制御特性等によって決定すればよい。
フッ素化工程の進行は、前述の一酸化炭素あるいは二酸化炭素等の分圧を測定することによって把握できる。炉外からのリークやステンレス鋼自体からの脱ガスによるベース圧を考慮したうえで、ルツボ5内からの発生がほぼ検出できなくなった時点をもってフッ素化工程終了と判断すれば良い。フッ素化工程が終了したら気体状フッ素化剤の供給を止め、必要に応じて真空排気や希ガス置換などを行って精製工程を終了する。
精製工程が終了した後は従来の工程により多結晶を製造すれば良い。例として、特許文献1の記載に従えば、上記の精製工程が終了した後、真空排気を続けながらヒーター7の温度を徐々に上げ、金属フッ化物14を融点以上で一定時間保持した後、徐々に温度を降下させて金属フッ化物を固化すれば、純度及び嵩密度の向上した多結晶が完成する。
本実施形態の方法によれば、原料となる金属フッ化物に含有される不純物量が、その保管状況等に依存して変動したとしても、過不足なくフッ素化剤を供給することができる。したがってフッ素化剤によって不純物を十分に除去できるだけでなく、フッ素化剤を過剰に添加してしまうことによる雰囲気炉構成部材の侵食を抑制し、高純度な金属フッ化物多結晶を製造することができる。
本実施形態に方法により製造される金属フッ化物多結晶は純度および嵩密度が高く、リソグラフィ装置用光学部材として用いる単結晶の原料として使用すれば、レーザ照射時における透過率低下の少ない金属フッ化物単結晶を効率的に製造することができる。
(第3の実施形態)
図2は、本発明の第3の実施形態である金属フッ化物単結晶の製造装置である。図1に示した多結晶の製造装置とは、ヒーターの構造、ルツボおよび導入管の上下機構およびこれらの制御手段において相違し、その他の構成要素は同様である。
図2の単結晶製造装置においてヒーターは上部と下部とに区分される。ベルジャー36およびベースプレート35とは真空容器を構成し、該真空容器とその内部構造物とが雰囲気炉を構成する。該雰囲気炉において、上部ヒーター21と下部ヒーター22は独立に温度制御され、上部ヒーター21は高温部を、下部ヒーター22は低温部を構成する。ヒーターの制御系は温度センサ、温度調節器、電力制御器等からなる一般的なシステムで良いが、少なくとも金属フッ化物31を融点以上の一定温度に制御できることが必要である。
ヒーターの内側には金属フッ化物を収容するルツボ25が配置される。ルツボ25の形状は公知技術に従って単結晶成長に適した形状とすればよい。ルツボ25にはガス導入口38を有する上蓋30が取り付けられ、ガス導入口38には、ルツボ25内の金属フッ化物31に気体状フッ素化剤を供給する手段としての導入管29が通される。ルツボ25と上蓋30の間およびガス導入口38と導入管29の間にはそれぞれ若干の間隙が与えられ、全体として略密閉構造を構成する。この間隙は、それぞれの部材の熱膨張や振動、内外の圧力差による破損を防止するほか、過剰に供給された気体状フッ素化剤、または不純物との反応生成物のガス放出口としての機能がある。略密閉構造を実現するには部材間に間隙を与える他、ルツボ25の上部や上蓋30等に小孔を設けても良いが、孔径が大きすぎるとルツボ外部からルツボ内部へのガス流入が著しくなり、金属フッ化物に不純物が混入しやすくなるため、適度な孔径を選択する必要がある。
ルツボ25はルツボ支持部材24を介して引き下げ機構26により駆動されるが、このときルツボ25の上蓋30を貫通している気体状フッ素化剤の導入管29も、駆動機構28によってルツボ25と同期して駆動することができる。
導入管29には気体状フッ素化剤の供給量制御手段としてのマスフローコントローラ32が接続されており、制御手段27からの制御信号によって気体状フッ素化剤の供給量が制御される。マスフローコントローラ10へは図示しないガスボンベ等の供給源から気体状フッ素化剤が供給される。供給量制御手段がマスフローコントローラに限られないことは第1の実施形態で説明したとおりである。
ルツボ25と支持部材24の上部および導入管29の下部は、金属フッ化物の融点以上の温度に加熱される可能性があり、高温に耐える材質で構成されなければならない。またルツボ25については精製対象となる金属フッ化物31に直接接触するものであるため、不純物として金属フッ化物に取り込まれ悪影響を及ぼすことのない材質であることが要求される。以上の条件を満たす材質として、ルツボ25と支持部材24の上部および導入管29の下部はカーボン材で構成されることが望ましい。
制御手段27は予め設定されたプログラムに従って、気体状フッ素化剤の供給量制御手段としてのマスフローコントローラ32および分圧測定手段としての四重極質量分析計33を制御する。また制御手段27はルツボの引き下げ機構26および導入管の駆動機構28を介して、導入管29とルツボ25とが相対位置を保ちながら同期して上下するように制御することができる。
本実施形態の金属フッ化物単結晶の製造装置によれば、気体状フッ素化剤の導入手段を備えているので、単結晶成長工程の前に精製工程を行うことができる。また該精製工程においてルツボ内に気体状フッ素化剤を直接供給することができるので、フッ素化剤と雰囲気炉の構成部材とが反応しにくく、生成物による金属フッ化物の再汚染が抑制される。
また該精製工程において反応生成物の分圧を測定しながら行うことができ、金属フッ化物が含有する不純物量に応じて気体状フッ素化剤を供給できるので、原料の保管雰囲気からの吸着等による不純物量変化に応じて最適量のフッ素化剤を供給でき、過小な場合の不純物残留と、過剰な場合の雰囲気炉構成部材の侵食による再汚染を抑制することができる。
(第4の実施形態)
次に本発明の第4の実施形態として、図2に示した装置を用いた金属フッ化物単結晶の製造方法を説明する。
はじめに単結晶の原料となる金属フッ化物多結晶を用意する。原料は嵩密度が高いほど融解時の体積減少が小さく、同一充填量で大きな単結晶を得ることができる。また原料の純度が高いほど製造される単結晶の純度も高くすることができるので、本発明に係る製造方法により製造された金属フッ化物多結晶を原料として用いることが望ましい。もっとも従来の方法によって製造された金属フッ化物多結晶(半溶融品または前処理品)あるいは粉末状の金属フッ化物多結晶を用いることも可能である。その場合であっても本実施形態で説明する精製工程を含む単結晶製造方法によれば、極めて高純度な単結晶を製造することができる。
用意した金属フッ化物をルツボ25に充填し、精製工程を開始する。精製工程では始めにベルジャー36をベースプレート35に固定して内部を真空排気し、原料に付着している水分等を除去する。内部が十分に真空排気された後、上部ヒーター21および下部ヒーター22に通電し、加熱を開始する。加熱中も真空排気を継続して、水分や酸素などの吸着ガスをできるだけ除去することが望ましい。ルツボ25が所定の温度(充填されている金属フッ化物の融点よりも200℃〜400℃程度低い温度が適当である)に達したら一定温度を保持し、そのまま真空排気を継続しながら、吸着ガスが十分脱離して真空度が安定するのを待つ。真空度が安定したらフッ素化工程を開始する。
本発明に係る多結晶の製造方法により製造された多結晶を原料として用いる場合は、このフッ素化工程は必ずしも必要ではない。なぜなら原料とする多結晶の製造工程において既に十分不純物が除去されているからである。しかしながら該多結晶の製造後、保管中に大気等から不純物を吸収する可能性もあるので、可能な限りフッ素化工程をおくことが望ましい。また本発明に係る多結晶以外の原料を用いる場合はフッ素化工程をおくことが必要である。
フッ素化工程では、ルツボ25の温度を維持したまま、導入管29から気体状フッ素化剤を供給する。このときルツボ25の位置は最上部に、また導入管29の位置は先端が上蓋30を貫通し、かつ先端が金属フッ化物31に接触しない位置に維持する。また気体状フッ素化剤の供給量はマスフローコントローラ32により一定量に制御しておく。ルツボ25内に供給された気体状フッ素化剤は金属フッ化物31中の不純物と反応し、その反応生成物はルツボ25と上蓋30との間隙や上蓋30と導入管29との間隙等から雰囲気炉内に流出して、最終的に排気口3から排気される。
フッ素化工程は雰囲気炉内の雰囲気ガスの分圧を測定しながら行い、第2の実施形態で説明した手順と同様の制御を行う。すなわち、フッ素化工程において雰囲気炉の構成部材と気体状フッ素化剤との反応生成物分圧が上昇した場合は、金属フッ化物中の不純物量と比較して気体状フッ素化剤の供給量が過剰であるか、または反応速度と比較して供給速度が速いかのどちらかである。したがってこの様な場合は気体状フッ素化剤の供給量を減じて未反応気体状フッ素化剤がルツボ外に流出することを抑制し、雰囲気炉構成部材との反応を最低限に止める。また反応生成物の分圧が減少した場合は再び気体状フッ素化剤の供給量を増加させ、金属フッ化物中に残存する不純物をさらに除去する。上記反応生成物として分圧を測定すべき化合物は、第2の実施形態と同様、雰囲気炉の構成部材がステンレス鋼である場合は五フッ化クロムまたは六フッ化クロムである。
以上の制御は、制御手段27に予め設定されたプログラムにより、四重極質量分析計33の出力を随時監視し、得られた分圧データに従ってマスフローコントローラ32に適正な制御信号を送ることによって行われる。
フッ素化工程の終了は、第2の実施形態と同様、炉外からのリークやステンレス鋼自体からの脱ガスによるベース圧を考慮したうえで、ルツボ25内からの一酸化炭素または二酸化炭素の発生がほぼ検出できなくなった時点をもって判断すれば良い。
フッ素化工程が終了したら必要に応じて真空排気・希ガス置換等を行って精製工程を完了する。
次にルツボ25の位置を維持したまま、上部ヒーター21および下部ヒーター22の温度を徐々に上げ、ルツボ25を金属フッ化物の融点以上に加熱して充填された金属フッ化物31を融解する。
金属フッ化物が完全に融解したら、上部ヒーター21および下部ヒーター22を所定の温度に調整し、炉内に温度勾配を形成する。温度勾配は上部ヒーター21側が高温に、下部ヒーター22側が低温になるようにし、両者の中間点において金属フッ化物31の融点が得られるようにする。
炉内に所定の温度分布が得られたら単結晶成長工程を開始する。単結晶成長工程ではルツボ引き下げ機構26によりルツボ25を徐々に引き下げる。ルツボ内の金属フッ化物融液は引き下げに伴って融点を通過し、ルツボ底部から単結晶が成長する。図2に示した構造の装置の場合、結晶成長工程において導入管29の位置を固定しておくと、ルツボ25の引き下げにともなってガス導入口38から導入管29が外れ、ガス導入口38が露出することになる。このガス導入口38の存在はルツボ内の融液の温度分布に影響を及ぼし、場合によっては単結晶の成長が妨げられる恐れがある。そこでルツボ25を引き下げる場合には、これと同期して導入管29も引き下げ、ルツボ25、上蓋30および導入管29の相対位置を維持することで、ガス導入口38が開放されることを防止し、単結晶成長に与える影響を最低限に止めることが望ましい。このような制御は両者の引き下げ速度を制御手段27により制御することで可能となる。制御手段27は分圧制御手段や気体状フッ素化剤の供給量制御手段を同時に制御するものであっても良いが、導入管の駆動機構28とルツボの引き下げ機構26のみを制御するものでも良い。
以上の制御を行いながらルツボ25を最下部まで引き下げ、ルツボ内容物が完全に固化したら室温まで冷却し、ルツボ25内に生成した単結晶を取り出す。
本実施の形態による金属フッ化物の単結晶製造方法によれば、原料が含有する不純物量の大小によらず、十分に不純物が除去された単結晶を製造することができる。またフッ素化剤の過剰供給による雰囲気炉の侵食と、その結果生じる生成物による単結晶の汚染が抑制され、レーザー照射時において透過率低下の少ない、リソグラフィ装置用光学部材に好適な金属フッ化物単結晶を製造することができる。
以上、本発明の実施形態を4つの例に基づいて説明したが、これらはあくまで実施形態の例示であって、本発明の範囲はこれらの例に限定されるものではない。
次に実施例として本発明によるフッ化カルシウム単結晶の製造方法を説明する。
実施例1では単結晶製造用の原料として、フッ化カルシウム多結晶を製造する。多決勝の製造には図1に示した製造装置を用いた。
原料として化学合成フッ化カルシウム粉末を用い、固体フッ素化剤は添加せずに、ルツボ5に充填して雰囲気炉内に置いた。雰囲気炉内を一旦1×10-3Pa以下に排気してからヒーターを加熱し、1100℃に到達したら温度を維持しながら24時間排気を続け、原料に付着した水分等を除去した。次に温度を1100℃に維持しながら、マスフローコントローラ10を用いて四フッ化炭素ガスを流量500sccmで導入し、排気速度の調整により雰囲気炉内の圧力を10Paとしてフッ素化工程を開始した。
フッ素化工程中の炉内の雰囲気ガス分析は四重極質量分析計12により行い、五フッ化クロムおよび一酸化炭素の分圧を常時モニターした。フッ素化工程開始直後は五フッ化クロムは検出されなかったが、開始後1時間経過時点で五フッ化クロムの分圧が上昇しピークとして検出された。これは過剰に供給された四フッ化炭素がステンレス鋼製のベルジャー1またはベースプレート2とと反応し始めたことを示すものである。そこで四フッ化炭素ガスの供給量を100sccmに減じたところ分圧は減少し、同ピークは数分後に消失した。ピーク消失を確認して四フッ化炭素ガスの供給量を500sccmに増加させると、15分後に五フッ化クロムが再び検出された。このときフッ化カルシウム中の不純物と四フッ化炭素との反応生成物である一酸化炭素は検出されなかったので、不純物除去は完了したものと判断し、、四フッ化炭素ガスの供給を完全に停止してフッ素化工程を終了した。以上の制御は、制御手段13としてのプログラマブルコントローラに予め設定したプログラムにより行った。フッ素化工程終了後は排気速度を最大として雰囲気炉内の残留ガスを排出し、精製工程を終了した。
以上の精製工程を終了した後は従来法により多結晶を製造した。すなわちヒーター7を更に加熱してフッ化カルシウムの融点以上である1450℃まで昇温し、ルツボ5内のフッ化カルシウム14を完全に融解して8時間保持した。次に徐々に温度を降下させて融解したフッ化カルシウム14を固化し、単結晶製造用原料としてのフッ化カルシウム多結晶を得た。
このようにして得られたフッ化カルシウム多結晶を原料として従来の垂直ブリッジマン法によりフッ化カルシウム単結晶を製造し、最終的に得られた単結晶のリソグラフィ装置用光学部材としての性能を評価した。性能は波長193nmにおける内部透過率およびArFレーザー照射後の透過率低下量により評価した。その結果、内部透過率が99.9%以上であること及びArFレーザー照射後の透過率低下が0.1%以下であることを良品基準とすると、製造した単結晶のうち70%が良品であった。
実施例2では、実施例1で製造したフッ化カルシウム多結晶を原料とし、続く単結晶製造工程においても本発明に係る方法により気体状フッ素化剤の供給を行って、単結晶を製造した。以下その手順を説明する。
本実施例では図2に示す単結晶製造装置を用いた。実施例1で製造したフッ化カルシウム多結晶を原料とし、固体フッ素化剤は添加せずに、ルツボ25に充填して雰囲気炉内に置いた。このときルツボ25の位置は最上部とした。雰囲気炉内を一旦1×10-3Pa以下に排気してから上部ヒーター21および下部ヒーター22を加熱し、1100℃に到達したら温度を維持しながら24時間排気を続け、原料に付着した水分等を除去した。次に温度を1100℃に維持しながらマスフローコントローラ32により四フッ化炭素ガスを流量300sccmで導入し、排気速度を調整して雰囲気炉内の圧力を10Paとしてフッ素化工程を開始した。
フッ素化工程中の炉内の雰囲気ガス分析は四重極質量分析計33により行い、六フッ化クロムおよび一酸化炭素の分圧を常時モニターした。フッ素化工程開始直後は六フッ化クロムは検出されなかったが、開始後0.6時間経過時点で六フッ化クロムの分圧が上昇し、ピークとして検出された。これは過剰に供給された四フッ化炭素がステンレス鋼製のベルジャー36またはベースプレート35と反応し始めたことを示すものである。そこで四フッ化炭素ガスの供給量を100sccmに減じたところ分圧は減少し、同ピークは数分後に消失した。ピーク消失を確認して四フッ化炭素ガスの供給量を300sccmに増加させると、15分後に六フッ化クロムが再び検出された。このときフッ化カルシウム中の不純物と四フッ化炭素との反応生成物である一酸化炭素は検出されなかったので、不純物除去は完了したものと判断し、、四フッ化炭素ガスの供給を完全に停止してフッ素化工程を終了した。以上の制御は、制御手段27としてのプログラマブルコントローラに予め設定したプログラムにより行った。フッ素化工程終了後は排気速度を最大として雰囲気炉内の残留ガスを排出し、精製工程を終了した。
以上の精製工程を終了した後は、垂直ブリッジマン法により単結晶を製造した。その手順は以下のとおりである。
まずルツボ25の位置を維持したまま、上部ヒーター21および下部ヒーター22の温度を徐々に上げ、フッ化カルシウム31を融点以上に加熱して融解した。フッ化カルシウム31が完全に融解したら、上部ヒーター21および下部ヒーター22を所定の温度に調整し、炉内に温度勾配を形成した。炉内に所定の温度分布が得られた後、ルツボ引き下げ機構26によりルツボ25を毎時1.0mmの一定速度で徐々に引き下げた。ルツボ内のフッ化カルシウム融液は引き下げに伴って融点を通過し、ルツボ底部からフッ化カルシウム単結晶が成長した。ルツボ引き下げ時には導入管29も駆動機構28により下降させ、ガス導入口38が露出しないように、上蓋30と導入管29との相対位置を制御した。以上の制御は、制御手段27としてのプログラマブルコントローラに予め設定したプログラムにより行った。
ルツボ25を最下部まで引き下げ、ルツボ内容物が完全に固化したら室温まで冷却し、生成した単結晶を取り出した。
このようにして得られたフッ化カルシウム単結晶のリソグラフィ装置用光学部材としての性能を評価した。性能は波長193nmにおける内部透過率およびArFレーザー照射後の透過率低下量により評価した。その結果、内部透過率が99.9%以上であること及びArFレーザー照射後の透過率低下が0.1%以下であることを良品基準とすると、製造した単結晶のうち80%が良品であった。
(比較例1)
従来の多結晶製造方法により製造された多結晶を原料に用い、従来の垂直ブリッジマン法で成長させたフッ化カルシウム単結晶について、リソグラフィ装置用光学部材としての性能を評価した。性能は波長193nmにおける内部透過率およびArFレーザー照射後の透過率低下量により評価した。その結果、内部透過率が99.9%以上であること及びArFレーザー照射後の透過率低下が0.1%以下であることを良品基準とすると、製造した単結晶のうち50%が良品であった。
図1は本発明に係るフッ化物多結晶製造装置の一例を示す概略図である。 図2は本発明に係るフッ化物単結晶製造装置の一例を示す概略図である。
符号の説明
1:ベルジャー、2:ベースプレート、3:排気口、4:支持部材、5:ルツボ、6:上蓋、7:ヒーター、8:断熱部材、9:導入管、10:マスフローコントローラ、12:四重極質量分析計、13:制御手段、14:金属フッ化物、15:ガス導入口、21:上部ヒーター、22:下部ヒーター、24:支持部材、25:ルツボ、26:引き下げ機構、27:制御手段、28:駆動機構、29:導入管、30:上蓋、31:金属フッ化物、33:四重極質量分析計、35:ベースプレート、36:ベルジャー、37:断熱部材、38:ガス導入口

Claims (16)

  1. 雰囲気炉内で気体状フッ素化剤を供給しながら金属フッ化物を加熱するフッ素化工程を有し、該フッ素化工程における雰囲気ガス中の、前記雰囲気炉の構成部材と前記気体状フッ素化剤との反応生成物の分圧に応じて前記気体状フッ素化剤の供給量を制御する、金属フッ化物の精製方法。
  2. 前記フッ素化工程において、前記反応生成物の分圧が上昇した場合は前記気体状フッ素化剤の供給量を減じ、前記反応生成物の分圧が低下した場合は前記気体状フッ素化剤の供給量を増加する、請求項1に記載の金属フッ化物の精製方法。
  3. ガス導入口を有する略密閉構造のルツボに前記金属フッ化物を収納し、前記雰囲気炉の外部から該ガス導入口を通して前記気体状フッ素化剤を供給する、請求項1または請求項2に記載の金属フッ化物の精製方法。
  4. 前記雰囲気炉の構成部材がステンレス鋼であり、前記反応生成物が五フッ化クロム(CrF5)または六フッ化クロム(CrF6)である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の金属フッ化物の精製方法。
  5. 前記気体状フッ素化剤が、四フッ化メタン(CF4)、三フッ化メタン(CHF3)、二フッ化メタン(CH2F2)、六フッ化エタン(C2F6)、八フッ化プロパン(C3F8)、三フッ化窒素(NF3)から選ばれた少なくとも一種である、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の金属フッ化物の精製方法。
  6. 前記反応生成物の分圧が四重極質量分析計によって測定される、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の金属フッ化物の精製方法。
  7. 前記金属フッ化物がフッ化カルシウムである、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の金属フッ化物の精製方法。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の金属フッ化物の精製方法による精製工程を有し、該金属フッ化物を加熱融解および冷却固化することによって多結晶を製造する、金属フッ化物多結晶の製造方法。
  9. 請求項8に記載の方法によって製造された金属フッ化物多結晶を原料とし、該原料を加熱融解したのち冷却することによって単結晶を成長させる、金属フッ化物単結晶の製造方法。
  10. 請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の金属フッ化物の精製方法による精製工程を有し、該金属フッ化物を加熱融解したのち冷却することによって単結晶を成長させる、金属フッ化物単結晶の製造方法。
  11. 雰囲気炉と、該雰囲気炉内に配置された略密閉構造を有するルツボと、該ルツボに気体状フッ素化剤を供給する手段と、前記雰囲気炉内の雰囲気ガスを構成する成分の分圧を測定する手段と、該雰囲気ガス中の特定成分の分圧に応じて前記気体状フッ素化剤の供給量を制御する手段と、を有する金属フッ化物の製造装置。
  12. 前記特定成分が、前記雰囲気炉の構成部材と前記気体状フッ素化剤との反応生成物である、請求項11に記載の金属フッ化物の製造装置。
  13. 前記雰囲気炉内の雰囲気ガスを構成する成分の分圧を測定する手段が四重極質量分析計である、請求項11または請求項12に記載の金属フッ化物の製造装置。
  14. 前記雰囲気炉の構成部材がステンレス鋼であり、前記雰囲気ガス中の特定成分が五フッ化クロム(CrF5)または六フッ化クロム(CrF6)である、請求項11ないし請求項13のいずれか一項に記載の金属フッ化物の製造装置。
  15. 前記気体状フッ素化剤が、四フッ化メタン(CF4)、三フッ化メタン(CHF3)、二フッ化メタン(CH2F2)、六フッ化エタン(C2F6)、八フッ化プロパン(C3F8)、三フッ化窒素(NF3)から選ばれた少なくとも一種である、請求項11ないし請求項14のいずれか一項に記載の金属フッ化物の製造装置。
  16. 請求項11ないし請求項15のいずれか一項に記載の金属フッ化物の製造装置であって、前記雰囲気炉が、それぞれ独立に温度制御可能な高温部と低温部とに区分され、該雰囲気炉内において前記ルツボを高温部から低温部へ引き下げるためのルツボ引き下げ機構を有する、垂直ブリッジマン法による金属フッ化物単結晶の製造装置。

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