図1を参照するに、図1には本発明の実施形態に係る複合加工装置1を構成する構成要素としての各種機械の概略的な配置関係が示されている。すなわち、四角形状の板状のワークWに対して第1の加工を行う第1の板材加工機の1例としてのタレットパンチプレス3が配置してあると共に、ワークに対して第2の加工を行う第2の板材加工機の1例としてレーザ加工機5が直列に配置してある。
前記第1,第2の板材加工機としては、タレットパンチプレス,レーザ加工機に限ることなく、第1,第2の板材加工機ともパンチプレス又はレーザ加工機でも、又はワークに穴加工を行った後にタッピング加工を行うタッピングマシン等と、適宜の板材加工機を配置することができるものである。なお、第1,第2の板材加工機として配置するパンチプレスやレーザ加工機は公知の構成であるから、前記タレットパンチプレス3,レーザ加工機5の詳細については説明を省略する。
前記タレットパンチプレス3とレーザ加工機5との間には、上記タレットパンチプレス3,レーザ加工機5に対してワークWを搬出入自在なワーク搬送装置7が配置してある。前記レーザ加工機5の形式によっては、レーザ加工機のテーブル上へワークを直接搬入する構成とすることも可能であるが、前記レーザ加工機5として、ワークを支持する剣山を多数備えた剣山テーブル上のワークにレーザ加工を行う形式のレーザ加工機5が例示してある。
したがって、前記レーザ加工機5に対して剣山テーブルの搬出入を行うために、また前記ワーク搬送装置7によって剣山テーブルに対してワークの搬入を行うために、前記タレットパンチプレス3とレーザ加工機5との間でレーザ加工機5に近接した位置には、パレットチェンジャ9が設けられている。本例においては、上記パレットチェンジャ9は、レーザ加工機5の一部を構成するものである。さらに、上記パレットチェンジャ9と前記タレットパンチプレス3との間には、収納棚装置11と前記ワーク搬送装置7との間でワークの受け渡しを行うためのワーク受け渡しステーション13が設けられている。
前記収納棚装置11は、例えば特開平8−108905号公報に開示されている板材貯蔵棚に準じた構成であって、図2に概略的に示すように、板状のワークを積載したパレット(図示省略)を出入自在の収納棚15を複数段備えた棚フレーム17の後側(図2において右側)に、前記収納棚15に対してパレットの出入を行うためのエレベータ19が上下動可能に設けられている。
そして、前記棚フレーム17の前側(図2において左側)で前記ワーク受け渡しステーション13の上方位置には、前記収納棚15内のパレット上から板状のワークを一枚毎取り出すための一枚取り装置20が設けられている。
すなわち、前記棚フレーム17の前側には昇降フレーム21が上下動可能に設けてあり、この昇降フレーム21には、前記収納棚15に対して出入自在の一枚取りフレーム23が前記収納棚15に対して出入する方向へ移動自在に備えられている。そして、上記一枚取りフレーム23には、前記収納棚15内のパレット上に積載されているワークを保持自在の、例えばバキュームパッド或はマグネット等よりなる複数のワーク保持具25が備えられている。
前記複数のワーク保持具25のうち、前記一枚取りフレーム23のX,Y方向の原点位置に近接して設けた適数の原点位置決め用のワーク保持具25Aは、図3に概略的に示すように、例えばエアーシリンダ等のごとき適宜のアクチュエータ27の作用によって、X軸方向及びY軸方向に対して交差する方向へ移動自在に設けられている。
上記適数のワーク保持具25Aは、原点位置決め用ワーク保持具をなすものであって、前記ワーク受け渡しステーション13において前記ワーク搬送装置7に対してワークの受け渡しを行うとき、前記アクチュエータ27の作動によってワークをX軸,Y軸方向に移動して、直交するワークの2辺を、ワーク搬送装置7におけるX軸方向,Y軸方向の基準位置(原点位置)に位置決めする機能を奏するものである。
既に理解されるように、前記収納棚装置11においては、前記ワークの受け渡しステーション13にワーク搬送装置が位置する場合には、ワークをX,Y方向の原点位置に位置決めしてワーク搬送装置に受け渡すことができるものである。なお、ワーク受け渡しステーション13に、例えばパレットが直接位置決めされているような場合には、四角形のワークの直交する2辺を上記パレットのX軸方向,Y軸方向の原点位置に合わせてワークの受け渡しを行うことができるものである。
すなわち、前記収納棚装置11における一枚取りフレーム23からワーク受け渡しステーション13に位置するワーク受け取り対象としてのワーク搬送装置等に対してワークを渡すとき、ワークを原点位置に位置決めして受け渡すことができるものである。
上記説明より理解されるように、収納棚装置11における収納棚15内のパレット上からワークを1枚取り出して、前記ワーク受け渡しステーション13に位置するワーク搬送装置又はパレットにワークの受け渡しを行うとき、前記ワーク搬送装置の原点位置又はパレットの原点位置にワークの原点位置を合わせた状態(一致した状態)として受け渡すことができる。
したがって、タレットパンチプレス3のテーブル上へワークを搬入するとき、上記タレットパンチプレス3の機械原点位置にワークの原点位置を合わせた状態又は上記機械原点位置とワークの原点位置との位置関係を常に所定の位置関係を保持する状態でもって搬入することができるものである。よって、タレットパンチプレス3側において改めてワークの原点位置合せを行う必要がなく、作業能率向上を図ることができるものである。
前記パレットチェンジャ9は、例えばパレットを移動自在に支持するガイドレールを上下二段に備えた昇降架台を備え、この昇降架台に備えた上下のガイドレールをパスライン高さ位置に合せることによって前記レーザ加工機5に対してパレットの搬入,搬出を交互に行う構成であり、この種のパレットチェンジャの構成は公知であるから、パレットチェンジャの詳細については説明を省略する。
前記搬送装置7には、前記タレットパンチプレス3に近接した位置から前記レーザ加工機5に近接した位置までX方向に長いガイド部材29を備えており、このガイド部材29には、前記ガイド部材29に沿ってX方向へ移動してワークの移送を行うワークキャリッジ31が備えられている。
前記ワークキャリッジ31は、図4,図5に示すように、前記ガイド部材29に沿ってX軸方向へ移動自在の移動フレーム33を備えると共に、ワークをクランプ自在の複数のワーククランプ35を備えたクランプ支持フレーム37を備えている。
より詳細には、前記ガイド部材29にはX軸方向のガイドレール39(図5参照)が取付けてあると共にX軸方向に長いラック41が設けてあり、前記ガイドレール39には、前記移動フレーム33に備えたスライダ43が移動自在に係合してある。そして、前記ラック41には、前記移動フレーム33に装着したサーボモータ等のごとき制御モータ45によって回転されるピニオン47が噛合してある。
したがって、制御装置(図示省略)の制御の下に前記制御モータ45を制御駆動してピニオン47を回転制御することにより、ワークキャリッジ31をガイド部材29に沿ってX軸方向へ移動し所望位置に位置決めすることができるものである。
前記クランプ支持フレーム37は、前記移動フレーム33に対して水平方向へ僅かに移動可能かつ移動フレーム33に対して一体的に固定自在に支持されている。すなわち、前記移動フレーム33の複数箇所には、前記クランプ支持フレーム37を微動可能に支持する微動支持機構48が設けられている。より詳細には、前記移動フレーム33の複数箇所には水平方向へ突出した支持ブラケット49が一体的に取付けてあり、この支持ブラケット49に備えた上下方向の貫通孔49H(図6,図7参照)には、前記クランプ支持フレーム37に一体的に固定した支持軸51が貫通してある。
そして、前記支持軸51の外周面と前記貫通孔49Hの内周面との間には、前記支持ブラケット49に対して支持軸51が水平方向へ僅かに移動可能であるように僅かなクリアランスCが形成されている。なお、前記支持ブラケット49に対する支持軸51の上下動は、当該支持軸51に固定したナット等のごとき固定具53によって規制されている。上記構成により、前記移動フレーム33に対して、前記クランプ支持フレーム37は前記クリアランスCの分だけ僅かに水平移動することが許容されているものである。
前述のごとく、クランプ支持フレーム37は移動フレーム33に対して水平方向へ僅かに移動可能であるが、前記ワーククランプ35に保持されたワークと前記移動フレーム33との位置的関係を正確に保持するために、前記クランプ支持フレーム37は移動フレーム33に対して一体的に固定自在に設けられている。
すなわち、前記クランプ支持フレーム37の複数箇所には、前記移動フレーム33に対して当該クランプ支持フレーム37を一体的に固定自在の固定手段55が設けられている。より詳細には、前記クランプ支持フレーム37の複数箇所には、図7に示すように、ガイドブラケット57が取付けてあり、このガイドブラケット57には、上端部及び下端部にテーパ状の係合部59A,59Bを備えたショットピン59が上下動自在に支持されている。
そして、前記ガイドブラケット57に取付けたエアーシリンダ等のごとき上下動用アクチュエータ61に上下動自在に備えたピストンロッドのごとき作動杆61Aと、前記ショットピン59に取付けたブラケット63は適宜に連結してある。
したがって、前記上下動用アクチュエータ61を作動することにより前記ショットピン59は上下動されるものであり、ショットピン59を上方向に移動したときには、前記移動フレーム33に備えた前記支持ブラケット49に固定した係合ブラケット65に形成したテーパ状の係合孔65Hに、上部の係合部59Aが係合するものである。このように、係合孔65Hにショットピン59の上部の係合部59Aが係合すると、クランプ支持フレーム37は移動フレーム33と一体化されるものである。
そして、前記ショットピン59が下降されたときには、前記係合孔65Hと上部の係合部59Aとの係合が解除されて、下部の係合部59Bが、例えば板材加工機としての前記タレットパンチプレス3における機械原点位置に対応して、固定位置に予め正確な位置関係を保持し設けたテーパ状の係合孔67(図1参照)又は前記パレットチェンジャ9に位置決めされたパレット69の原点位置に対応して予め設定されたテーパ状の係合孔71(図1参照)に係合するものである。
したがって、上記ワークキャリッジ31をタレットパンチプレス3側へ移動して、固定位置の前記係合孔67に前記ショットピン59の下部側の係合部59Bを係合すると、前記クランプ支持フレーム37は、上記タレットパンチプレス3における機械原点に対して予め設定された所定の位置的関係を正確に保持して固定されるものである。よって、前記クランプ支持フレーム37に備えた複数のワーククランプ35に保持されたワークのワーク原点位置は、前記タレットパンチプレス3の機械原点に対して所定の位置関係を保持して正確に固定されるものである。
なお、前記固定位置の係合孔67は、前記タレットパンチプレス3に備えたワークテーブルに設けてもよく、又は前記タレットパンチプレス3から独立した構成のベースフレーム等に設けても良いものである。すなわち、前記係合孔67を設ける位置は、第1の板材加工機としてのタレットパンチプレス3における機械原点と所定の位置関係にあるように予め設定された位置であれば良いものである。
既に理解されるように、前記ワークキャリッジ31をパレットチェンジャ9側へ移動して、パレットチェンジャ9に位置するパレット69に備えた前記係合孔71に対して前記ショットピン59の下部側の係合部59Bを係合すると、前記クランプ支持フレーム37は、前記パレット69における原点位置に対し、予め設定された所定の位置的関係を正確に保持して固定されるものである。
前記構成においては、ワーククランプを備えたクランプ支持フレーム37は前記固定手段55によって移動フレーム33に一体的に固定自在であるので、前記ワーククランプによってワークをクランプした状態で移動するとき、高速移動が可能なものである。
そして、前記固定手段55による移動フレーム33とクランプ支持フレーム37との固定を解除して、タレットパンチプレス3又はパレット69の係合孔67,71に上記固定手段55に備えたショットピン59の下端部を係合するときには、移動フレーム33に対してクランプ支持フレーム37は水平方向に微動可能であるから、前記係合孔67とショットピン59との位置的関係に多少のずれがある場合であっても、上記ずれ量を吸収して係合することができるものである。
すなわち、組立時の誤差によって前記搬送装置7における基準位置とタレットパンチプレス3又はパレット69の基準位置とが多少位置ずれしている場合であっても、上記誤差を吸収して前記搬送装置7におけるクランプ支持フレーム37を、タレットパンチプレス3又はパレット69の基準位置に合わせて固定することができ、前記クランプ支持フレーム37の基準位置とタレットパンチプレス3又はパレット69の基準位置とを、予め設定した所定の位置関係を正確に保持してワークの受け渡しを行うことができるものである。
したがって、搬送装置7におけるクランプ支持フレーム37に備えた複数のワーククランプ35に保持されているワークを、タレットパンチプレス3又はパレット69に受け渡すとき、上記ワークの原点位置を、前記タレットパンチプレス3の原点位置又はパレット69の原点位置に対して一致して、又は常に所定の位置関係を保持して正確に受け渡しを行うことができるものである。
前記クランプ支持フレーム37に支持された複数のワーククランプ35は、図4に示すように、前記ワークキャリッジ31の移動方向すなわちワークの搬送方向であるX軸方向と、X軸方向に対して直交するY軸方向に配置してあり、X軸方向に配置したワーククランプ35Xは、前記クランプ支持フレーム37のY軸方向の端部においてX軸方向へ移動自在に支持された移動アーム73の先端部に支持されている。
より詳細には、前記クランプ支持フレーム37におけるY軸方向の基準側(原点側)の端部にはX軸方向のガイド部材75が設けてあり、このガイド部材75にX軸方向へ移動自在に係合したレール部材77が前記移動アーム73に取付けてある。そして、前記移動アーム73をX軸方向に移動するために、前記クランプ支持フレーム37には例えばエアーシリンダ等のごときアーム移動用アクチュエータ79が取付けてある。
上記構成により、アーム移動用アクチュエータ79の作動によって移動アーム73をX軸方向に移動でき、この移動アーム73の先端部に装着した前記ワーククランプ35Xを、ワークのX軸方向の寸法に対応してX軸方向の所望位置に位置決めすることができるものである。また、タレットパンチプレス3に対してワークの受け渡しを行うとき、上記ワーククランプ35Xがタレットパンチプレス3の一部と干渉するおそれがあるような場合には、退避することができ、干渉を防止することができるものである。
前記複数のワーククランプ35は、前記クランプ支持フレーム37に対して上下動可能に支持されている。なお、X軸方向のワーククランプ35Xは移動アーム73の先端部に対して上下動可能に支持されているものであり、その支持構成やワーククランプ35X自体の構成は、ワーククランプ35と同様の構成であるから、ワーククランプ35の支持構成等について説明し、X軸方向のワーククランプ35Xに関しては、同一機能を奏する構成要素には同一符号を付することとして説明は省略する。
前記ワーククランプ35におけるクランプ本体81の背部には、図8に示すように、前記クランプ支持フレーム37に固定した上下方向のガイド部材83に上下動自在に案内支持されたスライダ85が一体的に取付けてあり、このスライダ85の上方位置には、前記クランプ本体81を上下動するための上下動用アクチュエータ87が設けられている。上記構成により、ワーククランプ35のY方向(左右方向)の幅寸法を小さく抑えることができ、ワーククランプ35のコンパクト化を図ることができるものである。
前記上下動用アクチュエータ87は、例えばエアーシリンダ等よりなるものであって、前記クランプ本体81上に装着したクランプ作動用アクチュエータ89の上部に固定したエンドプレート91に装着してある。そして、前記上下動するための上下動用アクチュエータ87に相対的に上下動自在に備えたピストンロッドのごとき作動杆87Pは、前記ガイド部材83の上方に位置するように前記クランプ支持フレーム37の上面に固定した固定ブラケット93に固定連結してある。
したがって、前記上下動用アクチュエータ87を作動することにより、前記クランプ本体81は、ガイド部材83に沿って垂直に上下動されるものである。なお、前記クランプ本体81の上下停止位置を調節するために、前記エンドプレート91を相対的に上下動自在に貫通したアジャストボルト95が前記固定ブラケット93に上下調節可能に螺着立設してあり、このアジャストボルト95には、下降位置を調節するためのアジャストナット97が上下位置調節可能に螺合してある。
前記アジャストナット97にエンドプレート91が当接して下降を停止した位置は、ワークをクランプするために前記クランプ本体81の下部に備えた下部ジョー99がパスラインより僅かに下降した状態となる位置であり、前記エンドプレート91がアジャストボルト95の頭部に当接して上昇を停止した位置は、前記下部ジョーがパスライン高さ位置でワークをクランプする位置である。したがって、前記下部ジョー99上にワークを位置決めするとき、ワークの端部と下部ジョーの先端部とが当接するようなことはないものである。
前記クランプ本体81の下部には、ワークを下側からクランプするための前記下部ジョー99が一体的に固定してあり、かつ前記クランプ本体81には、前記下部ジョー99に対向した上部ジョー101が上下動自在に支持されている。より詳細には、前記上部ジョー101は、図9に示すように、前記クランプ本体81に備えたガイドブッシュ103によって垂直に上下動可能に支持された昇降ロッド105の下端部に取付けてある。
前記昇降ロッド105を上下動するための前記クランプ作動用アクチュエータ89は、例えばエアーシリンダ等よりなるものであって、このクランプ作動用アクチュエータ89に上下動自在に備えたピストンロッド等のごとき作動杆107と前記昇降ロッド105は、ヒンジピン109を介して前記クランプ本体81に上下方向に揺動可能に支持された槓杆111を介して連動連結してある。
すなわち、前記槓杆111は、前記ヒンジピン109によって先端部寄りの部分を支持されており、この槓杆111の先端部側に設けた長孔111Aを貫通したピン113Aを介して前記昇降ロッド105と連動連結してある。そして、前記槓杆111の基端部側に設けた長孔111Bを貫通したピン113Bを介して、前記クランプ作動用アクチュエータ89における作動杆107と連動連結してある。
上記構成により、クランプ作動用アクチュエータ89を作動して作動杆107を上下動することにより、昇降ロッド105が垂直に上下動して、昇降ロッド105に備えた上部ジョー101と下部ジョー99との間にワークをクランプすることができるものである。この際、上部ジョー101は垂直に上下動して下部ジョー99との間にワークをクランプするものであるから、上下方向に揺動(回動)するように下降してワークをクランプする構成とは異なり、ワークをクランプするときにワークを微少量も移動することなくクランプすることができるものである。
前述のごとく、上部ジョー101と下部ジョー99によってワークをクランプしたとき、ワークの有無を確認するための例えばリミットスイッチや近接スイッチ等よりなるワーク確認センサ115(図10参照)が前記上部ジョー101に設けられている。したがって、上下のジョー101,99によってワークWをクランプしたときにワークWの有無を検知することができると共に、上下のジョー101,99の間からワークが外れた場合も検知することができるものである。
前述のごとく、上下のジョー101,99の間にワークをクランプするとき、下部ジョー99の奥の段差部99A(図8,9参照)から離れた所定位置にワークの端縁を正確に位置決めするために、前記クランプ本体81には、位置決めブロック117が備えられている。
より詳細には、図10に示すように、前記クランプ本体81の側面には支持ブロック119が一体的に固定してあり、この支持ブロック119に装着したエアーシリンダ等のごとき上下動用アクチュエータ121に上下動自在に備えたピストンロッドのごとき作動杆121Pの下端部に前記位置決めブロック117が連結してある。
そして、前記位置決めブロック117のワーク当接面117A(図11参照)にワークWが当接したときに変位しないように、前記位置決めブロック117には、前記支持ブロック119に備えた複数のガイドブッシュ123によって垂直方向に案内される複数のガイドピン125の下端部が前記位置決めブロック117に固定してある。前記位置決めブロック117には、当該位置決めブロック117のワーク当接面117Aにワークが当接したことを検出するセンサ127が取付けてある。
上記構成により、前記上下動用アクチュエータ121を作動することにより、前記位置決めブロック117を上下動することができるものである。前記位置決めブロック117を下降したときには、位置決めブロック117はワークのパスライン内に位置するものであり、位置決めブロック117のワーク当接面117Aに対してワークを当接してワークWの位置決めを行うものである。
前記上下動用アクチュエータ121の作動によって前記位置決めブロック117を上昇した状態においては、位置決めブロック117はワークWのパスラインよりも上方に位置するものであって、前記ワーク当接面117Aに対してワークを当接することはできないものである。すなわち、位置決めブロック117は、ワークの当接位置決めを行うための位置決め位置から退避した状態にあるものである。
既に理解されるように、ワーククランプ35に備えた位置決めブロック117は、ワークの当接位置決めを行うための位置決め位置に対して進退自在であるから、ワークの大きさに対応して選択した所望位置のワーククランプ35における位置決めブロック117を位置決め位置に位置決めし、この位置決めブロック117の当接面117Aにワークの端縁を当接し位置決めすることにより、上下のジョー101,99の間においてワークの端縁を所定位置に正確に位置決めすることができるものである。
以上のごとき構成において、図1に示すように、前記タレットパンチプレス3における機械原点位置3P、レーザ加工機5における機械原点位置5P及びパレット69の原点位置69Pは、前記タレットパンチプレス3からレーザ加工機5側へ又はその逆方向へワークをX方向へ直線的に搬送する場合の搬送方向から見て、右側又は左側の一方側に設けてあり、X軸方向に平行な直線上に配置してある。なお、前記各原点位置3P,5P,69PはX軸方向に平行な直線上に配置することが望ましいが、各種機械,装置のレイアウトによっては、Y軸方向に多少ずれても良いものである。
さらに、前記各原点位置3P,5P,69Pは、ワークの流れ方向に見て、ワークを一方向に搬送する場合の上流側又は下流側の位置に配置してある。すなわち、図1に示す構成においては、タレットパンチプレス3側からレーザ加工機5側へワークを搬送すると仮定した場合、ワークの搬送方向にみて下流側に原点位置3P,5P,69Pがそれぞれ設けられている。そして、前記パレット69の原点位置69Pは、当該パレット69をレーザ加工機5に対して位置決めしたとき、レーザ加工機5の原点位置5Pと一致するものである。
したがって、前記ワーク搬送装置7における前記キャリッジ31によってワークをX軸方向に搬送して、前記タレットパンチプレス3,パレット69に対してワークの供給を行うとき、ワークの原点位置を各機械原点位置に合せ易いものである。なお、ワークの原点位置と各機械原点位置が一致しない場合にはそのオフセット量を予め知ることができ、オフセット量の補正を容易に行い得るものである。
以上のごとき構成において、収納棚装置11におけるエレベータ19によって、各種のワークを積載したパレットや製品を積載するためのパレットを各収納棚15に収納し、各種加工の準備をする。なお、前記エレベータ19によって各収納棚15に対してパレットの搬出入を行うことは、前記第1,第2の板材加工機の加工時にも行うことができるものである。
前述のごとく、収納棚装置11における適宜の収納棚15にワークを積載したパレットが収納してあるとき、前記収納棚装置11の前側に設けた一枚取り装置20によって、前述したように、所望の収納棚15内のパレット上からワークを1枚取り出し、ワークを受け渡しステーション13に位置するワーク搬送装置7におけるワークキャリッジ31に備えた複数のワーククランプ35,35Xにワークの受け渡しを行う。
この際、ワークキャリッジ31においては、X軸方向のワーククランプ35Xに備えた位置決めブロック117のワーク当接面117Aを含むY方向の基準面L1(図4参照)とY軸方向のワーククランプ35に備えた位置決めブロック117のワーク当接面117Aを含むX方向の基準面L2との交差位置すなわち交点PをX,Y方向の原点位置として設定してある。この原点位置Pは、ワークの搬送方向から見て、前記タレットパンチプレス3,レーザ加工機5のそれぞれの原点位置3P,5Pと同じ側に設定してある。そして、上記原点位置Pを通るY軸方向の基準面L1は、タレットパンチプレス3、レーザ加工機5の原点位置3P,5Pを含む基準面と一致してあることが望ましい。
前記一枚取り装置20からワークキャリッジ31にワークの受け渡しを行うとき、前述したように、一枚取り装置20の一枚取りフレーム21に備えた原点位置決め用のワーク保持具25AをX軸方向及びY軸方向に対して交差する方向へ移動すると、上記ワーク保持具25Aに保持されたワークは同方向へ移動され、四角形のワークの直交するX軸方向,Y軸方向の端縁は、前記各ワーククランプ35,35Xにおける各位置決めブロック117の当接面117Aに当接して位置決めされる。
すなわち、前記一枚取り装置20からワーク搬送装置7におけるワークキャリッジ31にワークの受け渡しを行うとき、ワークの原点位置を、ワークキャリッジ31の原点位置Pに一致した状態でもって受け渡しを行うことができるものである。換言すれば、ワーク搬送装置7は、ワークキャリッジ31の原点位置Pにワークの原点位置を一致した状態でもって、すなわちワークの原点位置がどこに位置しているかを既知の状態でもってワークの搬送を行うことができるものである。
前述のごとく、ワークキャリッジ31の各ワーククランプ35,35Xによってワークを挾持した状態にあるとき、ワークキャリッジ31をガイド部材29に沿ってX軸方向へ移動することにより、前記ワークキャリッジ31を、第1の板材加工機としてのタレットパンチプレス3に対応した位置及び第2の板材加工機としてのレーザ加工機5に対応した位置(本例の場合はタレットチェンジャ9の位置のパレット69に対応した位置となる)へ移動し、ワークの供給を行うことができるものである。
前記ワークキャリッジ31がタレットパンチプレス3側へ移動してワークの供給を行う場合について説明すると、タレットパンチプレス3側においては、加工ステーションに対してワークの位置決めを行うためのワーク位置決め装置3A(図1参照)が予め原点位置に位置決めされ、当該ワーク位置決め装置3Aに備えた複数のワーククランプ3BはワークWをクランプする待機状態にある。
そして、前記ワークキャリッジ31が前記タレットパンチプレス3側へ移動して、前記固定手段55が、タレットパンチプレス3の機械原点位置と予め所定の位置関係を保持して正確な位置に設けられた係合孔67に対応した位置に達すると、上記固定手段55における上下動用アクチュエータ61が作動し、ショットピン59と係合ブラケット65に設けた係合孔65Hとの係合を解除する。すなわち、ワークキャリッジ31における移動フレーム33とクランプ支持フレーム37との一体的な連結状態を解除する。
次に、前記ショットピン59と前記係合孔67とを係合すると、ワークを保持したクランプ支持フレーム37は、タレットパンチプレス3におけるX軸方向,Y軸方向の基準位置(原点位置)3Pに対して正確な位置関係に固定される。したがって、この状態においてタレットパンチプレス3におけるワーク位置決め装置3Aに備えたワーククランプ3Bにワークの受け渡しを行うことにより、ワークの原点位置とタレットパンチプレス3の原点位置3Pとを一致した状態で、又はワークの原点位置とタレットパンチプレス3の原点位置3Pとの位置的関係を予め設定された所定の位置的関係を正確に保持した状態で受け渡しを行うことができる。
したがって、タレットパンチプレス3においては、改めてワークの原点位置決めを行う必要がなく、直ちにワークの加工を開始することができ、加工の能率向上を図ることができるものである。なお、前記ワークキャリッジ31をパレットチェンジャ9に位置するパレット69の位置へ移動してワークの受け渡しを行う場合も、同様の効果を奏し得るものである。
既に理解されるように、前記ワークキャリッジ31からタレットパンチプレス3にワークを搬入供給する場合に限らず、タレットパンチプレス3によって加工されたワークをレーザ加工機5側へ搬送する際、前記タレットパンチプレス3から前記ワークキャリッジ31へワークを受け渡すとき、ワークの原点位置をワークキャリッジ31の原点位置に一致した状態に受け渡すことができるものである。
そして、前述したようにワークキャリッジ31をパレットチェンジャ9の位置のパレット69上へ移動し、パレット69上にワークを搬入して前記ショットピン59をパレット69に設けた係合孔71に係合することにより、タレットパンチプレス3に対するワークの搬入位置決め時と同様に、パレット69の原点位置69Pにワークの原点位置を一致した状態で、又はパレット69の原点位置69Pとワークの原点位置との位置的関係を予め設定した所定の位置的関係を正確に保持した状態に位置決めすることができるものである。
したがって、ワークを載置位置決めしたパレットをレーザ加工機5へ搬入することにより、ワークのレーザ加工を直ちに開始することができ、加工の能率向上を図ることができるものである。なお、ワークの搬送は、レーザ加工機5からタレットパンチプレス3側へ行うことも可能である。
ところで、第1,第2の板材加工機としてのタレットパンチプレス3,レーザ加工機5に対するワークの搬入供給方法としては、前記収納棚装置11における収納棚15からワークを1枚取り出してタレットパンチプレス3,レーザ加工機5へ個別に搬入供給することや、前述したように、一方の板材加工機から他方の板材加工機側へワークを搬入することができるものである。
さらに、前記構成においては、前記第1,第2の板材加工機3,5によって個別に加工した半製品を前記収納棚装置11における適宜の収納棚15へ一時的に収納し、第1,第2の板材加工機3,5の稼動状態に応じて格納した半製品又は新しいワークを供給することも可能である。
すなわち、第1,第2の板材加工機3,5の加工速度が異なる場合には、収納棚装置11を、半製品を一時的に格納するバッファ手段として利用することができると共に、前述したように各板材加工機3,5に対して供給するワークを収納したワーク収納手段として利用することができるものである。
換言すれば、第1,第2の板材加工機3,5においてワークの加工が終了すると、上記第1,第2の板材加工機3,5に対して新しいワーク又は半製品を直ちに搬入供給することができ、前記第1,第2の板材加工機3,5の稼働率を向上することができるものである。すなわち、第1,第2の板材加工機3,5の加工速度が異なる場合であっても、一方の板材加工機の作動時に他方の板材加工機が待機状態にあるようなことがなく、第1,第2の板材加工機3,5は常に作動状態にあり、稼働率の向上を図ることができるものである。
なお、前記説明において、ワーク受け渡しステーション13においてのワークの受け渡しは、一枚取り装置20からワークキャリッジ31に、又はその逆に受け渡す場合について説明したが、レーザ加工機におけるパレットを前記ワーク受け渡しステーション13に移動位置決め自在な構成とした場合には、前記一枚取り装置20から前記パレット上へ直接受け渡すことが可能であり、この場合には、上記パレットの原点位置にワークの原点位置を合わせた状態でもって受け渡すことができるものである。
図12、図13は、前記ワークキャリッジ31の第2の実施形態を概略的に示すもので、前述したワークキャリッジ31の各構成要素と同一機能を奏する構成要素には同一符号を付することとして重複した説明は省略する。
この第2の実施形態に係るワークキャリッジ131においては、複数のワーククランプ35を支持したワーククランプ支持フレーム37の上面の複数箇所に立設した複数の支持軸51を、移動フレーム33の複数箇所に形成した比較的大きな貫通穴133内に水平方向へ移動可能に遊嵌してある。そして、前記支持軸51は、例えばスプリングなどのごとき弾性部材135によって付勢された押圧部材137によって押圧されて、前記貫通穴133のX軸方向の一側に押し付けられた状態にある。
換言すれば、クランプ支持フレーム37は、移動フレーム33に対してX軸方向、すなわちワーククランプ35,35Xを装着したクランプ装着側へ常に押圧付勢された状態にある。
そして、前記クランプ支持フレーム37においてワーククランプ35を装着した装着面には平面ブロック状の基準ブロック139が設けてあると共にVブロック状の位置決めブロック141が設けてある。上記基準ブロック139と位置決めブロック141は、Y軸方向に離隔して設けてある。そして、板材加工機3側に設けた前記係合孔67に相当する位置には、前記基準ブロック139,位置決めブロック141に当接自在の位置決めピン143A、143Bがパスラインに対して出没自在に設けられている。
前記基準ブロック139,位置決めブロック141と前記位置決めピン143A、143Bとが当接したときは、前記係合孔67に前記ショットピン59の下端の係合部59Bが係合したときに相当するもので、複数のワーククランプ35,35XにクランプされているワークWの直交するX軸方向、Y軸方向の両辺が、X軸方向、Y軸方向に正確に位置決めされるものである。
すなわち、前記基準ブロック139が位置決めピン143Aに当接すると共に、位置決めブロック141のV溝に位置決めピン143Bが係合すると、前記弾性部材135の付勢力に抗して、クランプ支持フレーム37は移動フレーム33に対して相対的に移動されることとなり、クランプ支持フレーム37がX軸、Y軸方向に正確に位置決めされるものである。
したがって、前記ワークキャリッジ131から板材加工機のワーク位置決め装置3Aに対してワークWの受け渡しを行うとき、前述同様に、ワークWをX軸方向、Y軸方向に正確に位置決めした状態でもって受け渡すことができるものである。