JP2005199327A - アルミニウム系材と鋼材との超音波接合方法 - Google Patents

アルミニウム系材と鋼材との超音波接合方法 Download PDF

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誠二 笹部
Satoru Iwase
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Abstract

【課題】 接合界面にAl―Fe系の金属間化合物が生成せず、安定して高い接合強度が得られるアルミニウム系(アルミニウム又はアルミニウム合金)材と鋼材との超音波接合方法を提供する。
【解決手段】 アルミニウム又はアルミニウム合金材3と鋼材1とを超音波接合する方法において、超音波接合後に、下記条件を満たす加熱温度T(K)及び保持時間t(秒)で、後熱処理を行う。
(864.2−T)/37.2≦logt≦(889.3−T)/33.9
T≦アルミニウム又はアルミニウム合金材の固相線温度
この場合に、超音波接合装置に加熱機能を具備させることにより、超音波接合工程と、後熱工程とを連続して行う。
【選択図】 図1

Description

本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金材(以下、総称してアルミニウム合金材という)と、鋼材との異種金属間の超音波接合方法に関する。
アルミニウム合金材は軽量で美観に優れており、輸送機等の軽量化のための材料として使用されている。なかでも、アルミニウム合金材を強度及び成形性が優れた鋼材とを組合せたハイブリッド構造のものが注目されている。
しかし、アルミニウム合金材と鋼材とを接合する場合、アルミニウム合金材同士、又は鋼材同士の接合において従来から使用されている各種の溶接技術をそのまま適用することは困難である。例えば、抵抗スポット溶接をアルミニウム合金材と鋼材との接合に適用した場合、アルミニウム合金材は導電性が良いので、加圧、通電後の両材の接合界面に、脆弱な金属間化合物が形成されてしまう。このため、アルミニウム合金材と鋼材との接合部分は界面剥離しやすく、十分な接合品質が得られない。
この抵抗スポット溶接に代わり、超音波接合によりこれらの異種金属を接合する方法が提案されている。超音波接合は、固相接合の一種であり、接合界面に対して、接合界面に垂直の方向の加圧による応力と、接合界面に平行な方向の高い振動加速度による繰返し応力とを与えて接合界面に摩擦発熱を生じさせ、被溶接材の原子の移動を促し、これを拡散させて接合するという接合方法である。例えば、特開2000―202643号公報(特許文献1)には、鋼材とアルミニウム合金材との接合部に、その接合強度を損なうことなく十分な防錆処理を施すために、鋼材の接合箇所にフラックスを塗布した後、溶融亜鉛メッキを施し、この亜鉛メッキ膜にアルミニウム合金材の接合箇所を当接させて超音波接合することにより、前記亜鉛メッキ膜を溶融させて接合するという方法が開示されている。
また、特開平10−71465号公報(特許文献2)には、ハンダ接合時の濡れ性を良好にするために、超音波振動を利用する技術が開示されている。
更に、軽金属溶接Vol.37(1999)No.10(非特許文献1)には、超音波振動を利用して金属を溶融させずに、固相接合する技術が開示されており、異種金属間での接合の可能性も期待されている。
特開2000―202643号公報 特開平10−71465号公報 軽金属溶接Vol.37(1999)No.10
しかしながら、単に、亜鉛メッキ鋼材とアルミニウム合金材とを超音波接合により接合しても、接合界面にAl―Fe系の金属間化合物が生じてしまうため、接合強度が極めて弱いという問題点がある。
また、濡れ性を良好にするために、超音波振動を付与してハンダ接合する技術においても、接合強度が低いという問題点がある。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、接合界面にAl―Fe系の金属間化合物が生成せず、安定して高い接合強度が得られるアルミニウム系(アルミニウム又はアルミニウム合金)材と鋼材との超音波接合方法を提供することを目的とする。
本発明に係るアルミニウム系材と鋼材との超音波接合方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金材と鋼材とを超音波接合する方法において、超音波接合後に、下記条件を満たす加熱温度T(K)及び保持時間t(秒)で、後熱処理を行うことを特徴とする。
(864.2−T)/37.2≦logt≦(889.3−T)/33.9
T≦アルミニウム又はアルミニウム合金材の固相線温度
この場合に、超音波接合装置に加熱機能を具備させることにより、超音波接合工程と、後熱工程とを連続して行うことが好ましい。
本発明によれば、アルミニウム系材と鋼材との超音波接合において、高接合強度を得ることができる。また、本発明によれば、接合界面にAl―Fe系の金属間化合物が生成せず、安定した接合強度が得られる。よって、アルミニウム又はアルミニウム合金材料と鋼系材との異種金属同士の接合を、溶接フラックス等の特別な消耗品を使用せずに低コストで行うことができる。
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。
本発明者は、超音波接合後に後熱処理を加えることにより、材料間の原子拡散が促進され、接合強度を格段に高めることができることを見出し、本発明に到ったものである。
図1は、本発明によりアルミニウム合金材と鋼材とを超音波接合するときの超音波接合装置を示す縦断面図である。なお、本発明では、この図1に示すものに限らず、種々の超音波接合装置を使用することができる。図1に示すように、アルミニウム合金材3と、鋼材1とを重ね、この積層体4を、水平姿勢に固定して設置されたアンビル6と、水平方向に超音波振動(S)するホーンに直結したチップ5との間に配置する。そして、チップ5を介して、積層体4に接合面に垂直の加圧力Pを印加し、この状態で、チップ5を水平方向に超音波振動(S)させて、チップ5と共にアルミニウム合金材3を高い振動加速度で超音波振動させる。そうすると、超音波振動するアルミニウム合金材3と、固定された鋼材1との間に摩擦力による発熱が生じ、接合界面にて、原子の移動が促進され、Fe原子のアルミニウム合金材3への拡散が生じる。これにより、鋼材1とアルミニウム合金材3との接合界面にて、アルミニウム合金材3と鋼材1とが固相接合される。
そして、このアンビル6及びチップ5の近傍には、抵抗発熱装置等の加熱装置7が設けられている。この加熱装置7は、アンビル6及びチップ5により、アルミニウム合金材1と鋼材2とを接合した後の積層体4を、そのまま、所定の熱処理温度Tに加熱し、この温度Tに、保持時間tだけ保持して、積層体4を熱処理する。
このとき、本発明においては、超音波接合された後の積層体4に対し、加熱温度Tに保持時間tだけ加熱するが、このT及びtは、以下の数式1にて示す関係を満たす。
Figure 2005199327
Figure 2005199327
図2は、横軸に後熱処理時間を、縦軸にU字継手の引張破断荷重をとって、超音波接合後の加熱処理が強度向上に及ぼす影響を示す図である。450℃から550℃のいずれの温度においても、加熱を行うに従い、接合強度は向上していくが、一定の時間を超えると極端に強度が下がる。
この図2において、後熱処理をしない場合に比して、後熱処理をすることにより、50%以上の強度の向上を見込める範囲を規定する。そうすると、後熱処理をしない場合は、つまり、超音波接合しただけの状態では、U字継手の引張破断荷重が179Nであり、その50%の強度上昇は、268Nとなる。
そして、図2の550℃(823K)の場合に、引張破断荷重が268N以上である後熱処理時間tは、1.28×10秒以上、9×10秒以下である。また、図2の450℃(723K)の場合に、引張破断荷重が268N以上である後熱処理時間tは、6.2×10秒以上、8×10秒以下である。そこで、加熱温度Tと加熱保持時間tとの関係を、Tとlogtとの一次関数で表し、引張破断荷重が268N以上であるときの短時間側(tの下限値)の加熱温度Tと加熱保持時間tとの関係をT=a(logt)+bとし、長時間側(tの上限値)の加熱温度Tと加熱保持時間tとの関係をT=A(logt)+Bとして表して、この関係式を求める。
即ち、短時間側と長時間側との関係式に、夫々t及びTの数値を代入すると、、短時間側では、
823=a(log1.28×10)+b
723=a(log6.2×10×10)+b
長時間側では、
823=A(log9×10)+B
723=A(log8×10)+B
となる。この連立方程式を解くと、aは−37.2、bは864.2、Aは−33.9、Bは889.3となる。そこで、下記数式が得られる。
短時間側:logt=(864.2−T)/37.2
長時間側:logt=(889.3−T)/33.9
そこで、logtが短時間側の境界と長時間側の境界との間にあれば、引張破断荷重が268N以上となり、従来のように後熱処理をしない場合に比して、50%以上の強度上昇が得られることになる。
そこで、本発明においては、前記数式1のように規定した。この数式1の範囲を図示すると、図3のようになる。図3は横軸に後熱処理時間t(秒)を対数でとり、縦軸に後熱処理温度Tをとって、後熱により50%以上の強度上昇が得られる領域をハッチングにて示すものである。但し、加熱温度Tは、材料のバーニング等を防止するために、低融点側の素材であるアルミニウム又はアルミニウム合金材の固相線温度(例えば約873K)以下である。
このように、低融点側の素材の固相線温度以下の加熱温度Tと加熱保持時間tが図3のハッチングにて示す範囲を満たし、即ち数式1を満足すれば、適切な拡散状態となり、超音波接合した異材同士の接合強度を格段(50%以上)に向上させることができる。
加熱温度が高温に過ぎ又は加熱時間が長時間に過ぎて数式1を満足しない場合は、鋼材とアルミニウム系材との間で金属間化合物が生成してしまい、良好な接合部材が得られない。また、加熱温度が低温に過ぎ又は加熱時間が短時間に過ぎて数式1を満足しない場合は、拡散が十分に行われず、強度の向上効果が小さい。なお、加熱温度はアルミニウム系材が部分的にも溶融しないように、アルミニウム系材の固相線温度以下であることが必要である。
本実施形態のように、超音波接合装置のチップ5及びアンビル6の周辺に加熱装置7を配置することにより、超音波接合装置に加熱機能が付加され、接合後の接合部を加熱することができる。このような手段を用いることで、接合後連続して加熱処理が行えるため、生産性が良くなる。なお、鋼材はハイテン、Znめっき鋼材等、いずれの種類でも効果が得られる。
超音波接合方法自体は従来周知の方法で良く、特に限定しない。後熱処理は、接合後であれば、接合直後、又は例えば室温で放置した後のいずれであっても、良く、いずれも本発明の効果を得ることができる。
熱処理方法も特に限定しない。この熱処理方法としては、例えば、雰囲気加熱、電磁誘導加熱、赤外加熱等、種々の方法が可能である。また、接合部位に通電することにより加熱しても、同様の効果を得ることができる。
なお、いずれの方法においても、アルミニウム系材と鋼材の界面の温度が本発明の温度範囲になるように適宜温度制御を行う必要がある。
次に、本発明の効果を示すために行った試験の結果について説明する。アルミニウム系材として、AA6022合金(Al-1.2質量%Si-0.6質量%Mg-0.5質量%Cu-0.1質量%Fe-0.05質量%Mn)の板厚1mmの板材を使用し、鋼材として板厚0.8mmのSPCE鋼板を使用した。図1に示すように、アルミニウム系材(アルミニウム合金材3)をチップ側5、鋼板(鋼材1)をアンビル6側に配し、加圧力500N、振動周波数20kHz、振幅20μmで接合を行った。加圧時間t及び加圧温度Tは下記表1に示す。
Figure 2005199327
これらの条件で超音波接合を行った結果を下記表2に示す。数式1の時間を大きく超えて長時間加熱した条件では、接合部から剥がれが発生した。接合が可能であったものについて、U字継手引張試験を行い、破断荷重を求めた。加熱時間が数式1の範囲内では、接合強度が加熱を施さないものに比して、50%を超える強度の向上効果が認められた。
Figure 2005199327
表2において、*印は接合部に剥がれが発生したことを示し、この場合は接合強度を評価しなかった。
この表2に示すように、数式1を満たす関係にある実施例の場合は、接合強度が280N以上であり、本発明の範囲から外れる比較例の場合よりも、接合強度が極めて高かった。
本発明法によりアルミニウム系材と鋼系材とを超音波接合するときの超音波接合装置を示す縦断面図である。 後熱処理時間とU字継手引張破断荷重との関係を示すグラフ図である。 強度向上効果が得られる後熱処理時間と後熱処理温度との関係を示すグラフ図である。
符号の説明
1: 鋼材
3:アルミニウム合金材
4:積層体
5:チップ
6:アンビル
7:加熱装置
P:加圧力
S:超音波振動

Claims (2)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金材と鋼材とを超音波接合する方法において、超音波接合後に、下記条件を満たす加熱温度T(K)及び保持時間t(秒)で、後熱処理を行うことを特徴とするアルミニウム系材と鋼材との超音波接合方法。
    (864.2−T)/37.2≦logt≦(889.3−T)/33.9
    T≦アルミニウム又はアルミニウム合金材の固相線温度
  2. 超音波接合装置に加熱機能を具備させることにより、超音波接合工程と、後熱工程とを連続して行うことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム系材と鋼材との超音波接合方法。
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