JP5098792B2 - マグネシウム合金と鋼の異種金属接合方法 - Google Patents
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また、Fe−Mg二元状態図は二相分離型を示し、互いの固溶限も非常に小さいことから、これら金属を主成分とする上記材料同士を直接接合することは、冶金的に極めて困難である。
そして、接合に際しては、加熱及び加圧によって共晶溶融を生じさせ、その反応生成物を接合界面から排出すると共に、Al−Mg系及びFe−Al系の金属間化合物を生成させ、Al3Mg2とFeAl3を含む複合組織を備えた化合物層を介して両材料を接合するようにしている。
すなわち、Mg−Zn系合金は341℃及び364℃に2点、Mg−Cu系合金は485℃及び552℃に2点の共晶点をそれぞれ有している。また、Mg−Sn系合金及びMg−Ni系合金にはそれぞれ561℃及び506℃の共晶点があることが知られている。
すなわち、洗浄後の清浄面に対して上記のような被覆手段により付着させることによって、共晶反応により溶融された被覆層が、表面の酸化皮膜や不純物と共に接合部周囲に排出された後は、被覆層の下から極めて清浄な新生面が現れるため強固な接合を可能とすることができる。
これによって、新たにめっきを施したり、特別な準備を要したりすることもなく、防錆目的でめっきを施した通常の市販鋼材をそのまま使用することができ、極めて簡便かつ安価に、異種金属の強固な接合を行なうことができるようになる。
図1は、Mg−Zn系2元状態図を示すものであって、図に示すようにMg−Zn系には、共晶点が2点(Te1及びTe2)あり、それぞれ341℃及び364℃であり、マグネシウムの融点650℃よりも遙かに低い温度で共晶反応を生じる。
したがって、図に示した共晶点を利用してMgとZnの共晶溶融を作り出し、接合時の酸化皮膜除去に利用することによって、接合性を阻害するマグネシウムの酸化皮膜を低温で確実に除去できると共に、接合時の界面温度をより均一に保持できるようになり、安定した接合が実施できる。
したがって、両金属の清浄面を接触させ、共晶温度以上に加熱保持すると反応が生じ、これを共晶溶融といい、共晶組成は相互拡散によって自発的達成されるため、組成のコントロールは必要ない。
まず、図2(A)に示すように、少なくとも接合界面側の表面に、Mgと共晶を形成する金属Mとして機能する亜鉛を含む亜鉛めっき層(第3の材料)2pが施された亜鉛めっき鋼板2と、マグネシウム合金材1を用意する。そして、図2(B)に示すように、これら亜鉛めっき鋼板2とマグネシウム合金材1を亜鉛めっき層2pが内側になるように重ねる。なお、マグネシウム合金材1には、予め適量のAl(例えば、6%程度)が添加されており、表面には酸化皮膜1fが生成している。
このように酸化皮膜1fが破壊されると、MgとZnの局部的な接触が起こり、所定の温度状態に保持されると、図2(C)に示すように、MgとZnの共晶溶融Eが生じ、マグネシウム合金材1の表面の酸化皮膜1fが順次効果的に除去される。
この例では、接合後の接合界面には亜鉛層が残存せず、これがマグネシウム合金材1と鋼板2の強固な接合が得られる要因であるが、これには所定の押圧や、反応や排出に要する温度や時間、さらには亜鉛めっき鋼板2の亜鉛めっき層2pの厚さが共晶反応に消費される量に見合ったものであることが必要となる。
そして、接合面には前述したように、少なくともAl−Mg系金属間化合物(Al3Mg2)とFe−Al系金属間化合物(FeAl3)を含み、これらが混在した複合組織を備えた化合物層3が形成され、これを介してマグネシウム合金材1と鋼板2が接合されている。さらに、この接合部を囲むように、亜鉛めっき鋼板2の亜鉛2pを含む共晶溶融物と共に酸化皮膜1fに由来する酸化物や接合界面の不純物などが排出され、両板材1,2の間に排出物Wとなって介在している。
特に、抵抗溶接を適用する場合には、マグネシウム合金材に含まれるAl含有量を2%以上10%未満とすることが好ましく、さらに3〜9%の範囲内であることがより好ましい。
そして、高エネルギービームを用いた接合の場合には、Al含有量を3%以上10%未満とすることが好ましく、さらには6〜9%の範囲内とすることがより好ましい。
したがって、これらの合金を利用することによって、改めて合金調合することなく、Al含有のマグネシウム合金材安価に入手し、活用することができる。
一方、突き合わせ接合においては、排出物Wを接合界面から周囲に排出して、接合部材から完全に除去することも可能である。
なお、亜鉛めっき鋼板としては、JIS G 3302に規定されているめっきの種類、すなわち非合金化めっき鋼板(GI)と合金化めっき鋼板(GA)とを適宜用いた。
図4は、当該実施例に用いた接合装置として抵抗スポット溶接装置の構造を示す概略図である。図に示す接合装置10は、1対の電極11により被接合材であるマグネシウム合金材1と亜鉛めっき鋼板2を所定の加圧力で加圧しながら、交流電源12により所定時間だけ通電し、接合界面の電気抵抗発熱を利用して接合するものである。
このとき、マグネシウム合金材1の板厚は1.0mm、亜鉛めっき鋼板2は、非合金化めっき鋼板(GI)、合金化めっき鋼板(GA)ともに板厚0.55mmのものを用いた。
一方、マグネシウム合金材のAl含有量が2%以上に増加すると、接合強度が向上し、特に3%〜9%までは安定して高い接合強度が得られた。そして、Al含有量9.8%では、接合強度は相対的にやや低下したが、まだ高いレベルの接合強度が得らることが判った。
いずれの場合も、マグネシウム合金材と鋼板とが金属間化合物を含む化合物層を介して接合され、当該化合物層は、Al3Mg2とFeAl3の混在する複合組織であることが確認された。また、その厚さは、図6(A)に示す実施例1(3%Al)の場合、0.08〜0.2μm、図6(B)に示す実施例4(9%Al)の場合には、0.3〜0.5μmであって、このような組識と厚さを備えた界面構造とすることにより高い接合強度が得られることが判明した。
なお、この実施例では抵抗スポット溶接を適用した例を示したが、同様の原理に基づいて連続的に線接合を行う抵抗シーム接合においても同様の効果が得られることが確認されている。
図7は、当該実施例に用いた拡散接合装置の構造を示す概略図であって、図に示す拡散接合装置20は、加熱炉21と、この加熱炉21内の雰囲気温度を調整する温度制御装置22と、加圧装置23を備えている。
そして、加熱炉21内にセットした円柱形のマグネシウム材1と逆U字状に成形した鋼材2を所定の加圧力で加圧しながら、温度制御装置22により各温度に制御し、それぞれの時間だけ保持した後、加熱を中止して空冷した。
これらの結果を表2に示す。また、マグネシウム合金材のAl含有量と引張り強度の関係を図8に示す。
これに対し、マグネシウム合金材中におけるAl含有量の増加と共に接合強度が向上し、4%以上、とりわけ6%〜9%までは安定して高い接合強度が得られることが確認された。
3%Al含有マグネシウム合金材を用いた比較例4(図9(A))では、接合界面に化合物層が形成されるものの、その組成はFeAl3が主体で、Al3Mg2は形成されず、これら金属間化合物の混在組織とはなっておらず、その平均厚さも0.5μmに満たない不連続なものであった。
すなわち、拡散接合においては、Al含有量が4%以上10%未満、望ましくは6%〜9%の範囲のマグネシウム合金材を用いることによって、接合界面にAl3Mg2とFeAl3の混在する複合組織を備えた化合物層が得られ、高い接合強度を得ることができる。そして、この時の化合物層の厚さが0.5〜5.0μmとなることが確認された。
図10は、当該実施例に用いたYAGレーザによるレーザ接合の要領を示す概略図であって、使用するレーザ接合装置は、マグネシウム合金材1の上に重ねた鋼材2の表面にレーザビームBを照射するYAGレーザヘッドと、その照射直後位置を加圧する加圧ローラ31から主に構成されている。
そして、一体的に連結されたこれらレーザヘッドと加圧ローラ31を上記合金材1と鋼材2に対して、図示する移動方向に相対移動させることによって、これらを連続的又は断続的な線状に接合することができる。
次いで、加圧ローラ31により120MPaの加圧力を加え、マグネシウム合金材1と亜鉛めっき鋼板2を塑性変形させながら相対的に密着させ、ビーム照射により加熱された鋼板側からの伝熱によりマグネシウム合金材1の接合界面を加熱して、両材料1,2を接合した。
接合後、継手強度を測定するため、幅20mmの試験片を採取して、引張せん断試験を行い、せん断強度を測定した。これらの結果を表3に示す。また、マグネシウム合金材のAl含有量と引張り強度の関係を図11に示す。
一方、マグネシウム合金材のAl含有量が3%以上になると、特に非合金化亜鉛めっき鋼板(GI)において接合強度が向上し、Al含有量が6%〜9%の範囲では、非合金化亜鉛めっき鋼板(GI)、合金化亜鉛めっき鋼板(GA)共に、安定して高い接合強度が得られることが確認された。
このことから、マグネシウム合金中のアルミニウム添加量を3%以上10%未満、望ましくは6%以上9%以下とすることにより、良好な接合強度が得られることが判明した。
いずれの場合も、マグネシウム合金材と鋼板とがAl3Mg2とFeAl3との2種類の金属間化合物を含み、これらが混在する複合型の化合物層を介して接合されていることが確認された。また、その厚さは、いずれの場合でも0.5〜10.0μm程度であって、このような組識と厚さを備えた界面構造とすることにより高い接合強度が得られることが判明した。
1f 酸化皮膜
2 亜鉛めっき鋼板(鋼材)
2c 亜鉛めっき層(第3の材料)
3 化合物層
Claims (6)
- マグネシウム合金材と鋼材との間に、Mg及びFeの少なくとも一方と共晶溶融を生じる金属Mを含有する第3の材料を介在させ、共晶溶融による反応生成物を接合界面から排出して上記マグネシウム合金材と鋼材を接合するに際して、
上記マグネシウム合金材にAlを含有させ、当該Alと上記両材料に含まれるMg及びFeとの金属間化合物を接合界面に形成させ、Al3Mg2とFeAl3を含む複合組織を備えた化合物層を介して接合することを特徴とするマグネシウム合金と鋼との異種金属接合方法。 - 上記金属MがZn、Cu、Sn及びNiから成る群より選ばれた少なくとも1種の金属であることを特徴とする請求項1に記載の異種金属接合方法。
- 上記第3の材料がめっき、溶射、蒸着、コーティング等の被覆手段によって鋼材の接合面に付着させてあることを特徴とする請求項1又は2に記載の異種金属接合方法。
- 上記マグネシウム合金材のAl含有量が質量比で2%以上10%未満であって、抵抗接合によって接合することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の異種金属接合方法。
- 上記マグネシウム合金材のAl含有量が質量比で4%以上10%未満であって、拡散接合によって接合することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の異種金属接合方法。
- 上記マグネシウム合金材のAl含有量が質量比で3%以上10%未満であって、高エネルギービームの照射によって接合することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の異種金属接合方法。
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