発振周波数の可動範囲が広範であり、回路規模が小さく且つ位相ノイズ特性が良好な電圧制御発振器に関する特許出願(特願2002−215092号)が既に本出願人によってなされている。
特願2002−215092号で提案されている電圧制御発振器の構成を図14に示す。図14の電圧制御発振器は、共振部1と、共振部1の振動が減衰しないように共振部1に電力を供給する能動部2とを有する。
共振部1は、インダクタL1及びL2から成る直列回路と、第1の可変容量素子Cv1及びCv2から成る直列回路と、固定容量素子C21、第2の可変容量素子Cv21、第2の可変容量素子Cv22、及び固定容量素子C22から成る直列回路とが並列接続されたものである。
固定容量素子C21と第2の可変容量素子Cv21との接続ノードに抵抗R11の一端が接続され、第2の可変容量素子Cv22と固定容量素子C22の接続ノードに抵抗R12の一端が接続される。抵抗R11及びR12のそれぞれの他端は第2基準電圧端子T4に接続される。
そして、インダクタL1と第1の可変容量素子Cv1の接続ノードに出力端子T1が接続され、インダクタL2と第1の可変容量素子Cv2の接続ノードに出力端子T2が接続される。さらに、第1の可変容量素子Cv1と第1の可変容量素子Cv2との接続ノード及び第2の可変容量素子Cv21と第2の可変容量素子Cv22との接続ノードに制御電圧端子T3が接続される。なお、可変容量素子とは、両端端子間の電位差に応じて両端端子間の容量が変化する素子である。
インダクタL1とインダクタL2との接続ノードに定電圧VCCが印加され、制御電圧端子T3に制御電圧VCTLが印加される。そして、第2基準電圧端子T4に第2基準電圧Vref2が印加される。
したがって、第1の可変容量素子Cv1及びCv2の容量は、定電圧VCCに基づく電圧と制御電圧端子T3に印加される制御電圧VCTLとの電位差で制御され、第2の可変容量素子Cv21及びCv22の容量は、第2基準電圧端子T4に印加される第2基準電圧Vref2と制御電圧端子T3に印加される制御電圧VCTLとの電位差で制御される。
能動部2は、NPN型トランジスタQ1及びQ2と、バイアス抵抗R1及びR2と、信号レベル調整用の固定容量素子C1、C2、C11、及びC12と、直流電流源3とを備える。
トランジスタQ1のコレクタが出力端子T1に接続され、トランジスタQ2のコレクタが出力端子T2に接続される。そして、トランジスタQ1のベースが、バイアス抵抗R1の一端及び固定容量素子C11の一端に接続される。バイアス抵抗R1の他端にバイアス電圧Vbiasが印加され、固定容量素子C11の他端は接地される。また、トランジスタQ2のベースが、バイアス抵抗R2の一端及び固定容量素子C12の一端に接続される。バイアス抵抗R2の他端にバイアス電圧Vbiasが印加され、固定容量素子C12の他端は接地される。さらに、トランジスタQ1のエミッタとトランジスタQ2のエミッタとが共通接続され、直流電流源3を介して接地される。
このような構成において、共振部1が共振周波数の信号を出力端子T1、T2に出力する。能動部2の負性抵抗及び出力端子T1、T2間に接続される負荷抵抗とが相殺することによって、出力端子T1、T2間に出力される出力電圧VOが定常振動になる。そして、制御電圧VCTLに応じた任意の発振周波数の出力電圧VOを得ることが可能となる。
ここで、共振部1から第1の可変容量素子と第2の可変容量素子と固定容量素子とによって構成される可変容量部の一方を抜き出すと図15に示すようになる。
図15に示す可変容量部31の容量は、第1基準電圧Vref1と制御電圧VCTLとの電位差で制御される第1の可変容量素子Cv1(又はCv2)と、固定容量素子C21(又はC22)及び第2の可変容量素子Cv21(又はCv22)の直列接続体であって第2基準電圧Vref2と制御電圧VCTLとの電位差で制御される可変容量部Cv21’(又はCv22’)との並列容量となる。
図16は、制御電圧VCTLと図15に示す可変容量部31の容量値との関係を示すグラフである。第1の可変容量素子Cv1(又はCv2)の容量特性曲線33が線形に変化する範囲VRNG33の幅と、可変容量部Cv21’(又はCv22’)の容量特性曲線34が線形に変化する範囲VRNG34の幅とは同一であるが、第1の可変容量素子Cv1(又はCv2)に印加される第1基準電位Vref1と可変容量部Cv21’(又はCv22’)に印加される第2基準電圧Vref2とを異なる値にすることで、第1の可変容量素子Cv1(又はCv2)の容量特性曲線33が線形に変化する範囲VRNG33と、可変容量部Cv21’(又はCv22’)による容量特性曲線34が線形に変化する範囲VRNG34とをずらすことができ、その結果可変容量部31の容量特性曲線32が線形に変化する範囲VRNG32を広範にすることができた。
これにより、制御電圧VCTLに対する発振周波数の変化が緩やかになり電圧制御発振器のVCO感度を下げることができるため、発振周波数の可動範囲を広範にしても位相ノイズ特性を良好にすることができた。
また、図14の電圧制御発振器では、発振周波数帯域の異なる電圧制御発振器を複数設けたり、共振回路の可変容量素子を切替えるスイッチを設けたりする必要がないので、回路規模も小さくできた。
特開平7−22841号公報
図14に示す電圧制御発振器においては、第1の可変容量素子Cv1及びCv2の一端と、第2の可変容量素子Cv21及びCv22の一端とに印加する制御電圧VCTLは共通としながら、第1の可変容量素子Cv1及びCv2の他端に印加する基準電圧を第1基準電圧Vref1とし、第2の可変容量素子Cv21及びCv22の他端に印加する基準電圧を第2基準電圧Vref2とすることによって、可変容量部の容量値が線形に変化する領域を広げている。そして、第2の可変容量素子Cv21及びCv22の他端に印加する第2基準電圧Vref2を第1の可変容量素子Cv1及びCv2の他端に印加する第1基準電圧Vref1と直流的に分離するために、固定容量素子C21及びC22を第2の可変容量素子Cv21及びCv22に直列に挿入している。
第1の可変容量素子Cv1及びCv2、第2の可変容量素子Cv21及びCv22、並びに固定容量素子C21及びC22は、インダクタL1及びL2と共に、共振回路を構成しており、これらの定数や特性により、電圧制御発振器の発振周波数の可動範囲や位相ノイズ特性が決定される。
一般に、発振出力の位相ノイズ特性への要求が厳しくなるほど、発振周波数における共振回路の損失を小さくする(Qを高くする)必要がある。
ここで、Qを下げる要因としては、たとえば、配線の直流抵抗や、固定容量素子や可変容量素子の容量を実現するために用いられている材料の誘電損失等、共振回路の素子を構成する材料の発振周波数における損失などがある。したがって、共振回路を構成する素子が多いほど、損失が増え、Qは下がることになる。
図14に示す電圧制御発振器において、共振部1に挿入された固定容量素子C21及びC22は、第1基準電圧Vref1と第2基準電圧Vref2を直流的に分離するためには不可欠ではあるが、共振回路にとってはQを下げる要因となっている。
続いて、固定容量素子C21及びC22の容量について検討する。図15に示す可変容量部Cv21’(又はCv22’)の容量CCv21’ (又はCCv22’)は、第2の可変容量素子Cv21(又はCv22)の容量CCv21(又はCCv22)と固定容量素子C21(又はC22)の容量CC21(又はCC22)との直列容量となり、以下に示す(1a)式、(1b)式で表される。
上記(1a)式、(1b)式を変形すると、以下に示す(2a)式、(2b)式となる。
固定容量素子C21の容量値C
C21及び固定容量素子C22の容量値C
C22が無限大であれば、(2a)式、(2b)式それぞれの右辺の分母の第2項はゼロになるので、容量C
Cv21’及びC
Cv22’はそれぞれ以下に示す(3a)式、(3b)式で表される。
しかしながら、実際には固定容量素子C21の容量値C
C21及び固定容量素子C22の容量値C
C22は有限であり、特に半導体集積回路上に図14に示す電圧制御発振器を構成した場合は、実現可能な容量値に限界がある。例えば、容量C
Cv21’及びC
Cv22’が第2の可変容量素子Cv21の容量C
Cv21及び第2の可変容量素子Cv22の容量C
Cv22の90%以上となるためには、上記(2a)式、(2b)式それぞれの右辺の分母の第2項が以下に示す(4)式の関係を満たす必要があり、固定容量素子の容量は、少なくとも第2の可変容量素子の最大容量の9倍でなければならない。したがって、第2の可変容量素子の最大容量が1pFの場合に必要な固定容量素子の容量は9pF以上必要であるが、このような容量の固定容量素子を半導体集積回路上で実現すると相当な面積を占めることになる。
続いて、容量C
Cv21’及びC
Cv22’が第2の可変容量素子Cv21の容量C
Cv21及び第2の可変容量素子Cv22の容量C
Cv22の90%以上となる場合において、可変容量部Cv21’及びC22’の容量可変幅を検討する。
例えば、第1の可変容量素子Cv1及びCv2並びに第2の可変容量素子Cv21及びCv22の可変比(可変容量素子の最大容量÷最小容量)を2とし、第2の可変容量素子Cv21の最小容量をCCv21minとし第2の可変容量素子Cv22の最小容量をCCv22minとすれば、第2の可変容量素子Cv21の最大容量CCv21maxは2CCv21minとなり、第2の可変容量素子Cv22の最大容量CCv22maxは2CCv22minとなる。したがって、(4)式より、固定容量素子C21の容量CC21は18CCv21minとなり、固定容量素子C22の容量CC22は18CCv22minとなる。よって、可変容量部Cv21’の可変比(=CCv21max’/CCv21min’)は、以下の(5a)式で表される。
同様にして、可変容量部Cv22’の可変比(=C
Cv22max’/C
Cv22min’)は、以下の(5b)式で表される。
このように、可変容量部Cv21’及び Cv22’の可変比は、第1の可変容量素子Cv1及びCv2並びに第2の可変容量素子Cv21及びCv22の可変比2より10%狭い1.9となってしまう。その結果、図16に示すように、可変容量部Cv21’(又はCv22’)の最小容量と、第1の可変容量素子Cv1(又はCv2)の最小容量とが一致するように調整したとしても、第1の可変容量素子Cv1(又はCv2)の最大容量と可変容量部Cv21’(又はCv22’)の最大容量との間に容量差ΔCが生じることになり、図15に示す可変容量部31の容量を設定するために必要な計算が複雑になっていた。
本発明は、上記の問題に鑑み、発振周波数の可動範囲が広範であり、回路規模がより小さく且つ位相ノイズ特性がより良好である電圧制御発振器並びにそれを用いた高周波受信器及び高周波送信機を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明に係る電圧制御発振器は、共振部と、前記共振部の振動が減衰しないように前記共振部に電力を供給する能動部と、を備え、制御電圧に応じて発振周波数を制御する電圧制御発振器であって、前記制御電圧を入力し、前記制御電圧をレベルシフトした第2制御電圧を生成する電圧シフト部を備える構成とする。そして、前記共振部が、第1の可変容量素子及び第2の可変容量素子を有し、前記第1の可変容量素子の一端と前記第2の可変容量素子の一端が共通接続され、前記第1の可変容量素子の他端に前記制御電圧が印加され、前記第2の可変容量素子の他端に前記第2制御電圧が印加されるようにする。
可変容量素子は両端端子間の電位差によって容量値が決まるため、電圧制御発振器を上記構成にすると、第1の可変容量素子と第2の可変容量素子において、制御電圧の変化に対して容量値が線形的に変化する制御電圧の範囲が互いに異なることになる。したがって、第1の可変容量素子及び第2の可変容量素子の合成容量が制御電圧の変化に対して線形的に変化する制御電圧の範囲を広範にすることができる。これにより、制御電圧に対する発振周波数の変化が緩やかになり電圧制御発振器のVCO感度を下げることができるため、発振周波数の可動範囲を広範にしても位相ノイズ特性を良好にすることができる。また、共振部において、第1の可変容量素子及び第2の可変容量素子以外の容量素子を必要としないため、共振部の容量を設定するために必要な計算が従来と比較して単純になる。また、共振部において、第1の可変容量素子及び第2の可変容量素子以外の容量素子を必要としないため、共振部の回路構成を従来と比較して単純化できる。これにより、Qが向上し、位相ノイズ特性そのものも改善される。また、発振周波数帯域の異なる電圧制御発振器を複数設けたり、共振部内の可変容量素子を切り替えるスイッチを設けたり、共振部において第1の可変容量素子及び第2の可変容量素子以外の容量素子を設けたりする必要がないので、回路規模を小さくすることができる。
また、前記第1の可変容量素子と前記第2の可変容量素子の合成容量値が前記制御電圧の変化に対して略直線的に変化するように、前記電圧シフト部のレベルシフト値を設定するとよい。
電圧シフト部のレベルシフト値が、第1の可変容量素子の容量値が直線的に変化する制御電圧範囲と第2の可変容量素子の容量値が直線的に変化する制御電圧範囲との差であるので、電圧シフト部のレベルシフト値を最適値に設定することで、第1の可変容量素子と第2の可変容量素子の合成容量値変化の直線性を増加させることができる。
また、電圧制御発振部に供給する電源電圧を電圧シフト部に供給してもその電源電圧の変動範囲が電圧シフト部で生成される第2制御電圧の値に影響を与えない場合や第2制御電圧の範囲を大きく変える必要がない場合等には、前記共振部及び前記能動部から成る電圧制御発振部の電源電圧と前記電圧シフト部の電源電圧とが共通の電源端子から供給されるようにすることが望ましい。
また、電圧制御発振部に供給する電源電圧を電圧シフト部に供給するとその電源電圧の変動範囲が電圧制御発振部では特性に影響を与えないが、電圧シフト部で生成される第2制御電圧の値に影響を与える場合や、第2制御電圧の範囲を大きく変えたい場合等には、前記共振部及び前記能動部から成る電圧制御発振部の電源電圧と前記電圧シフト部の電源電圧とがそれぞれ別個の電源端子から供給されるようにすることが望ましい。
上記構成の本発明に係る電圧制御発振器では、VCOの電圧感度を下げることによって、位相ノイズ特性は良好になるが、電圧の変化に対する周波数の変化が小さくなるので、ロック時間が長くなるという問題が生じる。例えば、本発明に係る電圧制御発振器を複数搭載した半導体集積回路に対して個々の電圧制御発振器の動作をテストする場合、ロック時間が長くなるとテストの時間も長くなり、半導体集積回路のコストアップの要因にもなる。また、高周波受信器或いは高周波送信器に本発明に係る電圧制御発振器を設けた場合、受信周波数或いは送信周波数を変更するときに変更に要する時間が長くなるという問題がある。
このような問題を解決する観点から、前記電圧シフト部のレベルシフト値が可変するようにしてもよい。電圧制御発振器の発振周波数を変更する際に電圧シフト部のレベルシフト値を一時的に小さくして(零であってもよい)、ロックした時点で元のレベルシフト値に戻すことによって、ロック時間を短くすることができる。
また、全ての回路を単一の半導体チップ上に形成するようにしてもよい。
上述したように本発明に係る電圧制御発振器は回路規模を小さくできるので、全ての回路を単一の半導体チップ上に形成することが容易である。全ての回路を単一の半導体チップ上に形成することによって、外付け部品点数を低減することができ、コストの削減を図ることができる。
また、本発明に係る高周波送信器又は高周波受信器においては、上記いずれかの構成の電圧制御発振器を備えるようにする。
このような構成にすることで、局部発振信号の位相ノイズが低くなるとともに小型化を図ることができる。したがって、優れた送信特性を有するとともに小型化を図ることができる高周波送信器又は優れた受信特性を有するとともに小型化を図ることができる高周波受信器を実現することができる。
本発明によると、発振周波数の可動範囲が広範であり、回路規模がより小さく且つ位相ノイズ特性がより良好である電圧制御発振器並びにそれを用いた高周波受信器及び高周波送信器を実現することができる。
本発明の一実施形態について図面を参照して以下に説明する。本発明に係る電圧制御発振器の一構成例を図3に示す。図3に示す電圧制御発振器は、電圧制御発振部4と電圧シフト部5を備えている。定電圧VCCが電源電圧として電圧制御発振部4と電圧シフト部5に供給され、制御電圧VCTLが電圧制御発振部4と電圧シフト部5に入力される。また、電圧シフト部5は制御電圧VCTLを電圧レベルシフトした第2制御電圧VCTL2を発生させその第2制御電圧VCTL2を電圧制御発振部4に出力する。電圧制御発振部4は制御電圧VCTLと第2制御電圧VCTL2によって決定される共振周波数の出力電圧VOを出力する。
電圧制御発振部4の一構成例を図1に示し、電圧シフト部5の一構成例を図2に示す。なお、図1において図14と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
まず、図2に示す電圧シフト部5について説明する。抵抗R3の一端に定電圧VCCが印加され、抵抗R3の他端に抵抗R4の一端とP型MOS電界効果型トランジスタQ3のゲートが接続される。抵抗R4の他端は接地されるため、P型MOS電界効果型トランジスタQ3のゲート電圧は、抵抗R3と抵抗R4により、定電圧VCCを接地電位(=0[V])との間で分圧した電圧になる。
P型MOS電界効果型トランジスタQ3のソースは定電圧VCCに接続されているので、抵抗R3と抵抗R4とによって定電圧VCCを分圧した一定の電圧であるゲート−ソース間電圧VGSに応じた一定のドレイン電流Idが流れる。このドレイン電流Idは、P型MOS電界効果型トランジスタQ3と直列に接続したP型MOS電界効果型トランジスタQ4のドレイン電流と等しい。ここで、P型MOS電界効果型トランジスタQ3及びQ4を同一特性のものを用いることで、P型MOS電界効果型トランジスタQ4のゲート−ソース間電圧VSFTはP型MOS電界効果型トランジスタQ3のゲート−ソース間電圧VGSと同一の値になる。
ここで、P型MOS電界効果型トランジスタQ4のゲートには制御電圧VCTLが印加されるので、P型MOS電界効果型トランジスタQ4のソース電圧である第2制御電圧VCTL2は、制御電圧VCTLよりP型MOS電界効果型トランジスタQ4のゲート−ソース間電圧VSFTだけ高い電圧になる。
次に、図1に示す電圧制御発振部4について説明する。図1に示す電圧制御発振部4は、共振部1’と能動部2を有しており、図14に示す電圧制御発振器から、固定容量素子C21及びC22、抵抗R11及びR12を取り除き、第2基準電圧端子T4の代わりに第2制御電圧端子T4’を設けた構成である。
第2の可変容量素子Cv21の一端は出力端子T1に接続され、第2の可変容量素子Cv22の一端は出力端子T2に接続される。また、第2の可変容量素子Cv21の他端及び第2の可変容量素子Cv22の他端がそれぞれ第2制御電圧端子T4’に接続される。
第2制御電圧端子T4’には電圧シフト部5から出力される第2制御電圧VCTL2が印加される。したがって、第2の可変容量素子Cv21およびCv22の容量は第2制御電圧端子T4’に印加される第2制御電圧VCTL2によって制御される。
共振部1’は、図14の電圧制御発振器が具備する共振部1と同様に、第1の可変容量素子Cv1及びCv2と第2の可変容量素子Cv21及びCv22を備えているが、共振部1のように、共通の電位として制御電圧VCTLを第1の可変容量素子Cv1及びCv2と第2の可変容量素子Cv21及びCv22に印加するのではなく、第1の可変容量素子Cv1及びCv2並びに第2の可変容量素子Cv21及びCv22の一端に共通の基準電位を印加する。一方、第1の可変容量素子Cv1及びCv2の他端には、制御電圧VCTLをそのまま印加し、第2の可変容量素子Cv21及びCv22の他端には、制御電圧VCTLと比べて電圧VSFT分だけ高い電圧である第2制御電圧VCTL2を印加する。
第1の可変容量素子Cv1及びCv2の両端子間電位差と第2の可変容量素子Cv21及びCv22の両端子間電位差とが電圧VSFT分だけ異なるため、図4に示すように、第1の可変容量素子Cv1及びCv2の合成容量特性曲線37が線形に変化する範囲VRNG37の幅と、第2の可変容量素子Cv21及びCv22の合成容量特性曲線38が線形に変化する範囲VRNG38の幅とは同一であるが、第1の可変容量素子Cv1及びCv2の合成容量特性曲線37が線形に変化する範囲VRNG37と、第2の可変容量部Cv21及びCv22の合成容量特性曲線38が線形に変化する範囲VRNG38とをずらすことができる。共振部1’の容量は、第1の可変容量素子Cv1及びCv2の合成容量と第2の可変容量素子Cv21及びCv22の合成容量との和に等しくなるので、共振部1’の容量を設定するために必要な計算が単純になる。
ここで、P型MOS電界効果型トランジスタQ4のゲート−ソース間電圧VSFTを適切な電圧値に設定すると、共振部1’の容量特性曲線36が線形に変化する範囲VRNG36を広範にすることができ、VCO感度を下げることできる。これにより、位相ノイズ特性を良好にすることができる。P型MOS電界効果型トランジスタQ4のゲート−ソース間電圧VSFTの設定は、抵抗R3及びR4の抵抗値を調整することで行うことができる。また、共振部1’が固定容量素子を具備していないので、図14に示す電圧制御発振器と比較してQを高くすることができるとともに面積規模を小さくすることができる。
なお、更にVCO感度を下げたいときには、本発明に係る電圧制御発振器の構成を図5に示すようにすればよい。図5に示す電圧制御発振器は、図6に示す構成の電圧制御発信部4’と図7に示す構成の電圧シフト部5’を備えている。
図6に示す構成の電圧制御発信部4’は、図1に示す電圧制御発振部4に第3の可変容量素子Cv31及びCv32と第3制御電圧端子T9とを追加した構成である。第3の可変容量素子Cv31の一端は出力端子T1に接続され、第3の可変容量素子Cv32の一端は出力端子T2に接続される。また、第3の可変容量素子Cv31の他端及び第3の可変容量素子Cv32の他端がそれぞれ第3制御電圧端子T9に接続される。
また、図7に示す電圧レベルシフト部5’は、図2に示す電圧レベルシフト部5にP型MOS電界効果型トランジスタQ5及びQ6を追加した構成である。P型MOS電界効果型トランジスタQ5のソースはP型MOS電界効果型トランジスタQ3のソースに共通接続され、P型MOS電界効果型トランジスタQ5のゲートはP型MOS電界効果型トランジスタQ3のゲートに共通接続される。また、P型MOS電界効果型トランジスタQ5のドレインはP型MOS電界効果型トランジスタQ6のソースに接続される。P型MOS電界効果型トランジスタQ6のゲートはP型MOS電界効果型トランジスタQ3のドレインとP型MOS電界効果型トランジスタQ4のソースとの接続ノードに接続され、P型MOS電界効果型トランジスタQ6のドレインは接地される。このような構成により、P型MOS電界効果型トランジスタQ6のソース電圧である第3制御電圧VCTL3は、第2制御電圧VCTL2よりP型MOS電界効果型トランジスタQ6のゲート−ソース間電圧VSFT2だけ高い電圧になる。したがって、図7に示す電圧レベルシフト部5’は、制御電圧VCTLに適切な電圧レベルシフトを与えて第2制御電圧VCTL2と第3制御電圧VCTL3を発生させることができる。さらに、P型MOS電界効果型トランジスタQ5のゲート電圧を抵抗R3及びR4の分圧した電圧でなく、新たに抵抗を2本追加し、異なる分圧の電圧を加えても良い。これにより、さらに精密な合成容量特性の調整が可能となる。
図5に示す電圧制御発振器は、制御電圧VCTLに対して共振部の容量値が線形に変化する領域を図3の電圧制御発振器に比べてさらに拡げることができ、制御電圧VCTLに対する発振周波数の変化が図3の電圧制御発振器に比べてさらに緩やかになり、VCO感度を図3の電圧制御発振器に比べてさらに下げることができる。
また、上述した図3に示す電圧制御発振器は、電圧制御発振部4と電圧シフト部5の電源電圧として定電圧VCCを用いており、電圧シフト部5においてこの定電圧VCCを電圧レベルシフトの基準電圧として第2制御電圧VCTL2を発生させている。
電源電圧として用いられている定電圧VCCの変動範囲が電圧制御発振部4では特性に影響を与えないが、電圧シフト部5で生成される第2制御電圧VCTL2の電圧値に影響を与える場合や、第2制御電圧VCTL2の範囲を大きく変えたい場合等のように電圧制御発振部4と電圧シフト部5の電源電圧要求仕様が異なる場合は、図8に示すように電圧制御発振部4と電圧シフト部5の電源電圧供給ラインを別個に設け、定電圧VCCを電圧制御発振部4の電源電圧とし、定電圧VCC’を電圧シフト部5の電源電圧とする構成の電圧制御発振器が望ましい。
本発明に係る電圧制御発振器は、発振周波数の可動範囲を広範にし且つ位相ノイズ特性を良好にするために、VCO感度を下げている。しかしながら、VCO感度を下げた場合、電圧に対する周波数の変化が小さくなるので、例えば本発明に係る電圧制御発振器をPLL(フェーズロックドループ)に適用した場合、PLLのループゲインが一定であると電圧制御発振器のロック時間が長くなる。
電圧制御発振器のロック時間を短くするために、電圧制御発振器の発振周波数を変更する際にPLLのループゲインを一時的に上げてロック時間を短くし、電圧制御発振器がロックした後にPLLのループゲインを元の戻す等の手法が一般的に用いられる。このようにPLLのループゲインを調整しなくても、上述した本発明に係る電圧制御発振器に電圧制御発振器の発振周波数を変更する際に電圧シフト部の電圧シフトレベルを一時的に小さくする電圧シフト部制御手段を追加することで、ロック時間を短くすることができる。
ここで、電圧シフト部制御手段を具備する本発明に係る電圧制御発振器の一構成例を図9に示す。なお、図9において図3と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。図9の電圧制御発振器は、図3の電圧制御発振器から電圧シフト部5を取り除きその代わりに電圧シフト部5’’を設け、更に電圧シフト部5’’に接続され外部からの電圧シフト制御信号SFTCNTが印加される端子を新たに設けた構成である。
電源電圧として用いられている定電圧VCCの変動範囲が電圧制御発振部4では特性に影響を与えないが、電圧シフト部5’’で生成される第2制御電圧VCTL2の電圧値に影響を与える場合や、第2制御電圧VCTL2の範囲を大きく変えたい場合等のように電圧制御発振部4と電圧シフト部5’’の電源電圧要求仕様が異なる場合は、図10に示すように電圧制御発振部4と電圧シフト部5の電源電圧供給ラインを別個に設け、定電圧VCCを電圧制御発振部4の電源電圧とし、定電圧VCC’を電圧シフト部5’’の電源電圧とする構成の電圧制御発振器が望ましい。
続いて、電圧シフト部5’’について説明する。電圧シフト部5’’の一構成例を図11に示す。電圧シフト部5’’は図2に示す電圧シフト部5にN型MOS電界効果型トランジスタQ7、Q9及びQ10と、P型MOS電界効果型トランジスタQ8と、外部からの電圧シフト制御信号SFTCNTが印加される端子とを新たに設けた構成である。
N型MOS電界効果型トランジスタQ7のソースとN型MOS電界効果型トランジスタQ10のソースとはともに第2制御電圧VCTL2を出力する端子に接続される。また、N型MOS電界効果型トランジスタQ7のドレインは、P型MOS電界効果型トランジスタQ3のドレインとP型MOS電界効果型トランジスタQ7のソースとの接続ノードに接続され、N型MOS電界効果型トランジスタQ10のドレインは、P型MOS電界効果型トランジスタQ4のゲートに接続される。
N型MOS電界効果型トランジスタQ7のゲートは、外部からの電圧シフト制御信号SFTCNTが印加される端子に直接接続され、N型MOS電界効果型トランジスタQ10のゲートは、P型MOS電界効果型トランジスタQ8及びN型MOS電界効果型トランジスタQ9によって構成されるインバータ回路を介して、外部からの電圧シフト制御信号SFTCNTが印加される端子に接続される。
このような構成により、電圧シフト制御信号SFTCNTがHighレベルのとき(例えば、電圧シフト制御信号SFTCNTの電位がVCC電位のとき)は、N型MOS電界効果型トランジスタQ7がオンになり、N型MOS電界効果型トランジスタQ10がオフになるので、第2制御電圧VCTL2のレベルは、制御電圧VCTLをVSFTだけ電圧レベルシフトしたレベルとなる。これに対して、電圧シフト制御信号SFTCNTがLowレベルのとき(例えば、電圧シフト制御信号SFTCNTの電位が接地電位(0V)のとき)は、N型MOS電界効果型トランジスタQ7がオフになり、N型MOS電界効果型トランジスタQ10がオンになるので、第2制御電圧VCTL2のレベルは、制御電圧VCTLと同一になる。すなわち、電圧シフト制御信号SFTCNTがLowレベルのとき、電圧シフト部5’’は電圧レベルシフト動作を行わない。
図9の電圧制御発振器が具備する電圧シフト部5’’を図11に示す構成にした場合、図9の電圧制御発振器に設けられる電圧制御発振部が具備する共振部の容量特性は図12に示すようになる。電圧シフト制御信号SFTCNTがHighレベルからLowレベルに変化すると、第2の可変容量素子Cv21及びCv22の合成容量特性曲線が特性曲線38から特性曲線38’に変化し、その変化に伴って共振部1’の容量特性曲線が特性曲線36から特性曲線36’に変化する。
したがって、通常は電圧シフト制御信号SFTCNTをHighレベルにしておき、電圧制御発振器の発振周波数を変更する際に電圧シフト制御信号SFTCNTを一時的にLowレベルにしてVCO感度を上げ、ロックした時点で電圧シフト制御信号SFTCNTを元のHighレベルに戻すとよい。これにより、ロック時間を短くすることができる。
図11の電圧シフト部5’ ’を用いた場合、一時的に電圧レベルシフトを零にしてVCO感度を上げることになるが、本発明はこれに限定されることはなく、一時的に電圧レベルシフトを小さくするが零にはせずにVCO感度を上げるような形態であっても構わない。
なお、本発明に係る電圧制御発振器は、回路規模が小さいため、全ての回路を単一の半導体チップに形成し、電圧制御発振器の低コスト化を図ることができる。この場合、インダクタL1およびL2は、半導体の配線層にインダクタを形成する形状のパターンで実現するとよい。
次に、本発明に係る高周波送受信器について説明する。本発明に係る高周波送受信器の一構成例を図13に示す。なお、電圧制御発振器(VCO)21は上述した図3に示す本発明に係る電圧制御発振器であり、アンテナ10以外の回路は1チップの半導体集積回路に格納されている。
まず受信側について説明する。アンテナ10によって受信されたRF信号がスイッチ11を介してローノイズアンプ12に入力され、ローノイズアンプ12で増幅されたのち、ミキサ13で局部発振信号とミキシングされ、IF信号にダウンコンバートされる。このIF信号は、バンドパスフィルタ14によって不要な周波数成分が除去されたのち復調部15に送られ、受信信号に復調される。
続いて送信側について説明する。送信信号が変調器16によって変調され、バンドパスフィルタ17によって不要な周波数成分が除去されたのち、ミキサ18で局部発振信号とミキシングされ、RF信号にアップコンバートされる。このRF信号は、パワーアンプ19で電力増幅されたのち、スイッチ11を介してアンテナ10から出力される。
局部発振信号は位相同期発振器20から出力される。位相同期発振器20は、分周器(図示せず)、水晶発振器(図示せず)、位相比較器(図示せず)、及び電圧制御発振器21を備えている。分周器は電圧制御発振器21の出力を水晶発振器の周波数まで分周する。位相比較器は、この分周した信号と水晶発振器からの信号とを位相比較して得られた誤差信号を電圧制御発振器21に負帰還して局部発振信号の周波数を安定させる。
電圧制御発振器21を、位相ノイズ特性が良好で且つ回路規模が小さい図3の電圧制御発振器にしているので、位相同期発振器20から出力される局部発振信号の位相ノイズが低くなるとともに位相同期発振器20の小型化を図ることができる。したがって、図13の高周波送受信器は従来の高周波送受信器と比較して送受信特性が向上するとともに小型化を図ることができる。