しかしながら、上記従来の画像記録装置では、プリントパターンの露光とスルーホール部の露光で露光量を変える必要があり、スルーホール部用の厚い層を硬化させるには、プリントパターン用の薄い層に比べて露光量を増やす必要がある。露光量を増やすために光源数を増やすと画像記録装置のコストがアップする問題がある。
本発明は上記事実を考慮し、光源数を増減させることなく重層感光層が塗布された記録媒体(例えばプリント配線基板)への露光量を増減させ、高感度部画像(例えば、高解像度が必要なプリントパターン部画像)と、低感度部画像(例えば、スルーホール内壁及び周縁の銅箔保護が必要なスルーホール部画像)とを露光することができる露光装置を得ることが目的である。
請求項1に記載の発明は、支持体表面上の導電膜に、相対的に低感度の第一感光層と、高感度の第二感光層を重合して形成された記録媒体へ直線状に配列された複数の記録ヘッドから光ビームを結像し、前記記録ヘッドと記録媒体とを、前記複数の記録ヘッドを直線状に配列した方向と交差する走査方向へ相対的に往復移動させて、前記記録媒体上の前記第一感光層及び第二感光層を露光する露光装置であって、前記記録媒体上に形成させる画像元データを、低感度部画像データと高感度部画像データとに分離するデータ分離手段と、前記低感度部画像データに基づいて前記記録媒体上の前記第一感光層を露光するための露光量、並びに前記高感度部画像データに基づいて前記記録媒体上の前記第二感光層を露光するための露光量をそれぞれ演算する露光量演算手段と、
前記露光量演算手段で演算した結果に基づいて、前記第一感光層と前記第二感光層の露光をそれぞれ前記記録ヘッドと記録媒体との相対移動における往路と復路とに分けて制御する露光制御手段と、を有することを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、画像分離手段は、記録媒体上に画像を形成する画像元データを第一感光層を感光させる領域に関する低感度部画像データと、第二感光層を感光させる領域に関する高感度部画像データとに分離し、露光量演算手段では、分離した低感度部画像データに基づいて低感度の第一感光層を感光させるために必要な露光量、並びに高感度部画像データに基づいて高感度の第二感光層を感光させるために必要な露光量をそれぞれ演算する。
露光制御手段は、前記露光量演算手段で演算した必要露光量に基づき、記録ヘッドが記録媒体に対して往復移動する往路と復路とに分けて低感度部画像データを低感度の第一感光層へ、高感度部画像データを高感度の第二感光層へそれぞれ露光する。すなわち、記録ヘッドが記録媒体に対して一往復することにより、記録媒体上へ低感度部画像データと高感度部画像データとが共に露光される。なお、低感度部画像データを第一感光層へ感光させると重合されている第二感光層も感光する。
このように、露光制御手段によって露光処理を往路と復路とに分けることで低感度部画像データを第一感光層へ、高感度部画像データを第二感光層へそれぞれ感光させる露光量に調整することができる。また、露光制御手段によって露光処理を往路と復路とに分けて時間的にずらすことで互いの干渉を回避でき、それぞれ最適な露光処理が可能となる。
請求項2に記載の発明は、支持体表面上の導電膜に、相対的に低感度の第一感光層と、高感度の第二感光層を重合して形成された記録媒体へ直線状に配列された複数の記録ヘッドから光ビームを結像し、前記記録ヘッドと記録媒体とを、前記複数の記録ヘッドを直線状に配列した方向と交差する走査方向へ相対的に往復移動させて、前記記録媒体上の前記第一感光層及び第二感光層を露光する露光装置であって、前記記録媒体上にプリント配線を形成させる画像元データであるプリント配線図データを、前記記録媒体の表裏面を貫通するスルーホールの位置に関するスルーホール部画像データと、前記記録媒体上に形成される配線パターンに関する配線パターン部画像データとに分離するデータ分離手段と、前記スルーホール部画像データに基づいて前記記録媒体上の前記第一感光層を露光するための露光量、並びに前記配線パターン部画像データに基づいて前記記録媒体上の前記第二感光層を露光するための露光量をそれぞれ演算する露光量演算手段と、
前記露光量演算手段で演算した結果に基づいて、前記第一感光層と前記第二感光層の露光をそれぞれ前記記録ヘッドと記録媒体との相対移動における往路と復路とに分けて制御する露光制御手段と、を有することを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、画像分離手段は、プリント配線を形成する元データであるプリント配線図データを記録媒体のスルーホールの位置に関するスルーホール部画像データと、実際の配線に関する配線パターン部画像データとに分離し、露光量演算手段では、分離したスルーホール部画像データに基づいて低感度の第一感光層を感光させるために必要な露光量、並びに配線パターン部画像データに基づいて高感度の第二感光層を感光させるために必要な露光量をそれぞれ演算する。
露光制御手段は、前記露光量演算手段で演算した必要露光量に基づき、記録ヘッドが記録媒体に対して往復移動する往路と復路とに分けてスルーホール部画像データを低感度の第一感光層へ、配線パターン部画像データを高感度の第二感光層へそれぞれ露光する。すなわち、記録ヘッドが記録媒体に対して一往復することにより、記録媒体上へスルーホール部画像データと配線パターン部画像データとが共に露光される。なお、スルーホール部画像データを第一感光層へ感光させると重合されている第二感光層も感光する。
このように、露光制御手段によって露光処理を往路と復路とに分けることでスルーホール部を第一感光層へ、配線パターンを第二感光層へそれぞれ感光させる露光量に調整することができる。よって、露光量を調整するため光源数を増減させる必要が無くなり、光源数の増加による露光装置のコストアップを抑えることができる。
ここで、高解像度の画像が要求される配線パターン部画像領域では、薄い肉厚の感光層(第二感光層)を適用し、テント性(被膜保護性)を要求されるスルーホール部画像領域では、厚い肉厚の感光層(第一感光層)を適用することで、それぞれの要求にあった露光が可能となる。
請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記記録ヘッドから出力される前記光ビームの光量が一定であり、前記露光制御手段が、前記記録ヘッドと前記記録媒体とを走査方向へ相対的に移動させる走査速度を、往路と復路とで変更することを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、記録ヘッドから出力される光ビームの光量を一定であっても、走査速度を速くすることで露光量を減らして第二感光層を感光させ、走査速度を遅くすることで露光量を増やして第一感光層を感光させることができる。なお、この第一感光層が感光すると重合されている第二感光層も感光する。
よって、記録ヘッドと記録媒体とが往復移動する往路と復路とで走査速度を変化させることにより、光源数を増減させることなく記録媒体上への露光量を増減させることができる。
請求項4に記載の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記記録ヘッドと前記記録媒体とが走査方向へ相対的に移動する往路と復路との走査速度が一定であり、前記露光制御手段が、前記記録ヘッドから出力される前記光ビームの光量を、前記第一感光層の露光では最大光量とし、前記第二感光層の露光では最大光量の1/n(nは正の整数)とすることをすることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、往路と復路との走査速度が一定であっても、露光制御手段による画像データを第一感光層へ露光する場合は、記録ヘッドから出力される光ビームの光量を最大にして露光量を増やし、低感度の第一感光層をより早く感光させる。
一方、画像データを第二感光層へ露光する場合は、例えば、記録ヘッドに設けたフィルタ等によって光ビームの光量を1/n(nは正の整数)に減らして露光量を減らし、第二感光層のみを感光させる。記録ヘッドからの光量を減らすことにより、光源数を減少させることなく露光量を減らすことができる。
よって、記録ヘッドと記録媒体とが往復移動する往路と復路との走査速度が一定であっても、光ビームの光量を増減させることにより、光源数を増減させることなく記録媒体上への露光量を増減させることができる。
請求項5に記載の発明は、前記請求項2乃至請求項4の何れか1項記載の発明において、前記露光制御手段が、前記スルーホール部画像データの露光において、前記記録媒体上に点在している前記スルーホールの間を露光せずに増速して移動することを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、スルーホールは記録媒体の任意の位置に点在しており、スルーホール部画像データの露光処理では、点在するスルーホールの位置のみを露光する。よって、スルーホールの位置以外を露光しないため、スルーホールの位置以外での走査速度を増加させる。この増速により、スルーホール部画像データ全体を記録媒体上へ露光する処理時間が短縮し、生産性を向上させることができる。
以下に、本発明に適用される媒体(重層感光材料、プリント配線基板(記録媒体))について説明する。
(重層感光材料(DFR)について)
本発明に適用される重層感光材料(DFR)は、バインダーポリマー、エチレン性不飽和結合含有モノマー、及び光重合開始剤を含む感光性樹脂組成物からなる層が少なくとも2層以上有し、相対的に低感度の第一感光層、相対的に高感度の第二感光層がこの順に積層されており、以下、ドライフィルムフォトレジスト(DFR)という。このDFRの組成の条件を列挙する。
(1) 前記第一感光層(低感度層)は、その厚さ寸法が50μm以下であり、第二感光層(高感度層)は、その厚さ寸法が1〜10μm以下であり(図7参照)、第一感光層の方が、第二感光層よりも厚い。
(2) 第二感光層を硬化させるために必要な光量Aと、第一感光層を硬化させるために必要な光量Bとの比A/Bが0.01〜0.5の範囲にある(図7参照)。
(3) 第二感光層を硬化させるために必要な光量Aと第一感光層の硬化が始まるまでに必要な光量Cとの差C−Aが、第二感光層を硬化させるために必要な光量Aの10倍より少ない量である。
(4) 第二感光層を硬化させるために必要な光量Aと、第一感光層の硬化が始まるまでに必要な光量Cとの差C−Aが、100mJ/cm2以下である。
(5) 第一感光層及び第二感光層が、互いに同一のバインダーポリマー、エチレン性不飽和結合含有モノマー、及び光重合開始剤を含み、第二感光層が第一感光層よりも光重合開始剤を多く含む。
(6) 第二感光層が、さらに増感剤を含む。
上記のようにDFRは、例えば、第二感光層の光重合開始剤の含有量を第一感光層よりも多くする、或いは第二感光層に増感剤を添加することにより得ることができる。
DFRにおいて用いるバインダーポリマーは、アルカリ性水溶液に可溶性であるか、或いはアルカリ性水溶液との接触により少なくとも膨潤する性質を持つ共重合体であることが好ましい。
エチレン性不飽和結合含有モノマーの好適な例としては、少なくとも2個のエチレン不飽和二重結合を有する化合物である(以下、多官能モノマーと言う)。例えば、このような多官能モノマーの例としては、特公昭36−5093号公報、特公昭35−14719号公報、特公昭44−28727号公報等に記載される化合物を挙げることができる。
光重合開始剤としては、芳香族ケトン、米国特許第2367660号明細書に開示されているピシナルポリケタドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書及び同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール二量体とp−アミノケトンの組合せ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。
本発明に適用されるDFRでは、感光層に増感剤を添加してもよい。増感剤は、通常は第二感光層にのみ添加する。DFRでは、感光層ロイコ色素を含むことができる。また、DFRには、感光層を着色させたり、保存安定性を付与したりする目的に染料を用いることができる。
DFRの第一感光層と第二感光層との密着性、或いは第二感光層とプリント基板形成用基板との密着性を向上させるために、感光層に公知の所謂密着促進剤を用いることができる。
支持体として用いられるのは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、三酢酸セルロース、二酢酸セルロース、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、セロファン、ポリ塩化ビニルデン共重合体、ポリアミド、ポリイミド、塩化ビニル、酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフロロエチレン、ポリトリフロロエチレン等の各種のプラスチックフィルムを挙げることができる。さらに、これらの二種以上からなる複合材料も使用することができる。
DFRは、第二感光層の上に、さらに保護フィルムを設けることができる。上記保護フィルムの例としては、前記支持体に使用されるものの他、紙、或いはポリエチレン、ポリプロピレンがラミネートされた紙等を挙げることができる。特に、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムが好ましい。
(DFR層を持つプリント配線基板(記録媒体)の製造方法の原理について)
以下に、本発明に適用されるDFR層を持つプリント配線基板の製造方法の原理について説明する。
内壁に銅めっき層を供えた直径3mmのスルーホールを有し、表面が研磨、乾燥した銅層で覆われた、ポリエチレンフィルムを剥離したDFRの第二感光層を重ね、ヒートロールラミネーターを用いて、気泡が入らないように圧着し、胴張積層板、第二感光層、第一感光層、そしてポリエチレンテレフターレートフィルムがこの順で積層された積層体を得る。
得られた積層体のポリエチレンテレフタレートフィルムの上から、波長405nmの青色レーザ光源を有する露光装置を用いて、銅張積層板の配線パターン形成領域に、4mJ/cm2の光を所定のパターン上に照射して、露光する。一方、銅張積層板のスルーホールの開口部及びその周囲領域に、40mJ/cm2の光を照射して、感光層を露光する。
露光後、積層体からポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし取り、次いで、濃度1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を第二感光層表面にスプレーして、第一感光層及び第二感光層の未硬化領域を溶解除去して、硬化層レリーフを得る。
銅張積層板の硬化層パターンを観察したところ、配線パターン形成領域上の硬化層、及びスルーホール開口部上の硬化層に剥がれや破れなどの欠陥は見られなかった。また、硬化層の厚さを測定したところ、配線パターン形成領域上の硬化層の厚さは5μmであり、スルーホール開口部上の硬化層の厚さは30μmであった。
次いで、銅張積層板の表面に、塩化鉄エッチャント(塩化第一鉄含有エッチング溶液)をスプレー塗布して、硬化層で覆われていない露出した領域の銅層を溶解除去し、次いで、第2質量%の水酸化ナトリウム水溶液をスプレーして硬化層レリーフを除去して、スルーホールを有し、表面に配線パターン状の銅層を備えたプリント配線板を得る。得られたプリント配線板のスルーホール部を目視で観察したところ、スルーホール内壁の銅めっき層に異常は見られなかった。
以上説明した如く本発明では、露光処理を往路、復路に分けて記録媒体への露光を制御することにより、光源数を増減させることなく重層感光層が塗布された記録媒体上への露光量を増減させ、高感度部画像(例えば、高解像度が必要なプリントパターン部画像)と、低感度部画像(例えば、スルーホール内壁及び周縁の銅箔保護が必要なスルーホール部画像)とを露光することができるという優れた効果を有する。
図1及び図2には、本実施の形態に係るフラッドベッドタイプの画像露光装置10が示されている。
画像露光装置10は、棒状の角パイプを枠状に組み付けて構成された矩形状の枠体12に各部が収容されて構成されている。なお、枠体12には、図示しないパネルが張り付けられることで、内外を遮断している。
枠体12は、背高の筐体部12Aと、この筐体部12Aの一側面から突出するように設けられたステージ部12Bと、で構成されている。
ステージ部12Bは、その上面が筐体部12Aよりも低位とされ、作業者がこのステージ部12Bの前に立ったときに、ほぼ腰高の位置となっている。
ステージ部12Bの上面には、開閉蓋14が設けられている。開閉蓋14の筐体部12A側の一辺には、図示しない蝶番が取付けられており、この一辺を中心として、開閉動作が可能となっている。
開閉蓋14を開放した状態のステージ部12Bの上面には、露光ステージ16が露出可能となっている。
露光ステージ16は、定盤18の長手方向に沿って配設された一対の摺動レール20を介して支持され、露光ステージ16下部に設けたリニアモータ26(図2参照)の駆動力によって、図1のy方向へ摺動可能となっている。また、露光ステージ16下部には、図示しないリニアエンコーダ27を設けており、露光ステージ16の移動に伴いパルス信号が出力され、パルス信号により露光ステージ16の摺動レール20に沿った位置情報及び走査速度が検出可能となっている。
露光ステージ16には、記録媒体22が位置決めされるようになっている。
露光ステージ16における定盤18上での移動軌跡(図1のy方向)のほぼ中間位置には、露光ヘッドユニット28が配設されている。
露光ヘッドユニット28は、前記定盤18の幅方向両端部の外側にそれぞれ立設された一対の支柱30に掛け渡されるように架設されている。すなわち、露光ヘッドユニット28と定盤18との間を前記露光ステージ16が通過するゲートが形成される構成である。
露光ヘッドユニット28は、複数のヘッドアッセンブリ28Aが前記定盤18の幅方向に沿って配列されて構成されており、前記露光ステージ16を往復移動させながら、所定のタイミングでそれぞれのヘッドアッセンブリ28Aから照射される複数の光ビーム(詳細後述)を前記露光ステージ16上の記録媒体22へ照射することで、感光材料を露光することができるようになっている。
図3(B)に示される如く、露光ヘッドユニット28を構成するヘッドアッセンブリ28Aは、m行n列(例えば、2行5列)の略マトリックス状に配列されており、これら複数のヘッドアッセンブリ28Aが前記露光ステージ16の移動方向(以下走査方向という)と直交する方向に配列される。本実施の形態では、記録媒体22の幅との関係で、2行で合計10個のヘッドアッセンブリ28Aとした。
ここで、1つのヘッドアッセンブリ28Aによる露光エリア28Bは、走査方向を短辺とする矩形状で、且つ、走査方向に対して所定の傾斜角で傾斜しており、露光ステージ16の移動に伴い、記録媒体22にはヘッドアッセンブリ28A毎に帯状の露光済み領域が形成される(図3(A)参照)。
図1に示される如く、前記筐体部12A内には、前記定盤18上の露光ステージ16の移動を妨げない別の場所に光源ユニット31が配設されている。この光源ユニット31には複数のレーザー(半導体レーザー)を収容しており、このレーザーから出射する光を光ファイバー(図示省略)を介して、それぞれのヘッドアッセンブリ28Aへ案内している。
それぞれのヘッドアッセンブリ28Aは、前記光ファイバーによって案内され、入射された光ビームを空間光変調素子である図示しないデジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)によって、ドット単位で制御し、記録媒体22に対してドットパターンを露光する。本実施の形態では、前記複数のドットパターンを用いて1画素の濃度を表現するようになっている。
図4に示される如く、前述した帯状の露光済み領域28B(1つのヘッドアッセンブリ28A)は、二次元配列(例えば4×5)された20個のドットによって形成される。
また、前記二次元配列のドットパターンは、走査方向に対して傾斜されていることで、走査方向に並ぶ各ドットが、走査方向と交差する方向に並ぶドット間を通過するようになっており、実質的なドット間ピッチを狭めることができ、高解像度化を図ることができる。
ここで、ステージ部12B(図1参照)において、前記露光ステージ16上に位置決めされた記録媒体22への露光処理は、前記露光ステージ16に記録媒体22を載置し、定盤18上の摺動レール20に沿って奥側へ移動する際(往路)と、一旦、定盤18の奥側端部へ到達して、手前側へ戻る際(復路)にそれぞれ実行され、1往復することにより記録媒体22への露光処理が完了する。
また、前記露光ヘッドユニット28の露光ステージ16側に隣接して記録媒体22の位置情報を得るためのユニットとして、アライメントユニット32が配設されている。アライメントユニット32では、前記露光ステージ16上の記録媒体22へ光を照射し、その反射光を撮影し、記録媒体22上のマークを検出する。
露光ステージ16と、記録媒体22とは、作業者が記録媒体22を載置することで、その相対位置関係が決まるため、若干のずれが生じることがある。前記撮影されたマークによって前記ずれが認識され、露光ステージ16と既知の相対関係となっている前記露光ヘッドユニット28による露光タイミングに補正をかけ、記録媒体22と画像との相対位置を所望の位置としている。
ここで、本実施の形態の記録媒体22は、プリント配線基板22P(図5参照)であり、前記画像露光装置10は、このプリント配線基板22P上に塗布された感光層を露光し、適当なプリント配線パターンを形成する役目を有している。
本実施の形態に適用されるプリント配線基板22P(完成状態)には、適宜銅箔で形成されたプリント配線パターン100が施され、適宜箇所に直径3mm程度のスルーホール102が設けられている。このスルーホール102は、周縁部並びに内壁に銅箔106(図6(G)参照)が形成されており、例えば、電子部品の電気的かつ構造的に接続する位置として適用される、或いは、プリント配線基板22Pの表裏面に設けられたプリント配線パターン同士の導通に適用されるようになっている。
プリント配線基板22Pは、図6(A)に示される如く、原基板22Aから生成されるようになっている。
原基板22Aは、支持体107の表面(或いは表裏面)に銅箔106が張り付けられ(蒸着され)、その上に薄い肉厚の第二感光層108、厚い肉厚の第一感光層110の順に感光層が塗布されている。この第二感光層108は相対的に高感度であるため少ない露光量で感光して硬化し、第一感光層110は低感度であるため多くの露光量で感光して硬化する(図7参照)。なお、図6(A)では、保護層等は省略してある。
この原基板22Aを露光ステージ16に装填し、露光ステージ16を走査方向へ往復移動させるが、往路と復路で露光量を変えて、往路では低感度部であるスルーホール部領域を露光(図6(B)参照)して第一感光層110を感光(図6(C)参照)させ、復路では高感度部である配線パターン領域を露光(図6(D)参照)して第二感光層108を感光させる(露光量制御については後述)。
往路と復路で露光量を変えることにより、第一感光層110と第二感光層108とは、異なる領域が感光して硬化する(図6(E)参照)。
この感光層(第一感光層110及び第二感光層108)の硬化状態で現像処理を施すと(図6(F)参照)、硬化した感光層のみが残り、その他の非硬化部分が除去される。
その後、エッチング処理を施すと、露出している銅箔106と、硬化している感光層(第一感光層110及び第二感光層108)が溶出し、完成されたプリント配線基板22P(図6(G)参照)を仕上げることができる。
このように2種類の異なる感光層への異なる露光量での露光処理を実現するために、本実施の形態では、露光処理を露光ステージ16が往復移動するときの往路と復路とに分けて行っている。
すなわち、往路時は、スルーホール部のテント性(被膜保護性)を保つことを目的として第一感光層110を対象とした露光処理を行い、復路時は、配線パターンの高解像度化を目的として第二感光層108を対象とした露光処理を行う。
このように、時間的に露光処理をずらすことで、互いの干渉を回避して、それぞれ最適な露光処理が可能となる。
図8には、本実施の形態における画像露光装置10において、露光ステージ16を往復移動させる往路と復路とで露光処理を行う制御に関する機能ブロック図が示されている。なお、機能ブロック図には図示しないCPUがあり、CPUにより往路露光処理、復路露光処理の開始指示が出力される。
データ分離部112は、スルーホールデータ記憶メモリ114及び配線パターンデータ記憶メモリ116と接続されている。データ分離部112は、プリント配線図データ(本実施の形態以前の配線を設計する工程にて作成)が入力されると、前記プリント配線図データから配線パターンとスルーホール部とを判別して低感度部画像データであるスルーホール部画像データと高感度部画像データである配線パターン部画像データとに分離し、スルーホール部画像データをスルーホールデータ記憶メモリ114、配線パターン部画像データを配線パターンデータ記憶メモリ116へ記憶させる。
露光量演算部118は、スルーホールデータ記憶メモリ114、配線パターンデータ記憶メモリ116、露光時間演算部120及び図示しないCPUと接続されている。露光量演算部118は、図示しないCPUより往路露光処理の開始指示を受けるとスルーホールデータ記憶メモリ114からスルーホール部画像データを読み込み、スルーホール部画像データを第一感光層110に感光させる必要な露光量(以下、スルーホール部必要露光量)をプリント配線基板上の露光位置毎に演算する。
一方、図示しないCPUより復路露光処理の開始指示を受けると配線パターンデータ記憶メモリ116から配線パターン部画像データを読み込み、配線パターン部画像データを第二感光層108に感光させる必要な露光量(以下、配線パターン部必要露光量)を露光位置毎に演算する。演算した各必要露光量は露光時間演算部120へ送出される。
露光時間演算部120は、露光量演算部118、移動制御部122及び露光制御部128と接続されている。露光時間演算部120は、露光制御部128(後述)より光源ユニット31から出力される光量データと露光量演算部118より各必要露光量とを受け、光量データより必要露光量が得られる露光時間を演算する。すなわち、往路露光処理では、スルーホール部必要露光量が得られる露光時間(以下、スルーホール部露光時間)を、復路露光処理では、配線パターン部必要露光量が得られる露光時間(以下、配線パターン部露光時間)を露光位置毎に演算する。演算した各露光時間は移動制御部122へ送出される。
移動制御部122は、リニアモータ26、リニアエンコーダ27、露光時間演算部120、トリガ記憶メモリ124及び露光制御部128と接続されている。移動制御部122は、露光時間演算部120より往路露光処理ではスルーホール部露光時間、復路露光処理では配線パターン部露光時間を受け、各露光時間に基づきリニアモータ26を制御して露光ステージ16を往路、復路へ移動させる。このとき、移動制御部122では、露光ステージ16の移動によって生じるリニアエンコーダ27からのパルスを検出して、露光ステージ16の位置情報及び走査速度を検出している。すなわち、往路、復路露光処理の開始位置からのパルス数をカウントすることにより露光ステージ16の摺動レール20に沿った位置情報が検出し、パルス間隔(パルスが検出される時間間隔)を測定することにより走査速度が検出する。移動制御部122では検出した走査速度に基づきリニアモータ26を制御して所望の走査速度とし、露光ステージ16の位置情報を露光制御部128へ送出する。
さらに、移動制御部122は、往路露光処理(スルーホール部画像データの露光処理)において、露光位置毎のスルーホール部露光時間からスルーホール部の露光開始位置となるパルス数を演算し、露光位置トリガとしてトリガ記憶メモリ124に記憶する。これは、往路露光処理がプリント配線基板上に点在するスルーホールのみの露光処理であるため、スルーホール以外の部分(点在しているスルーホールの間)の走査速度を増加させて処理時間を短縮するためである。移動制御部122では、露光ステージ16の移動によって検出されるパルス数が露光位置トリガの値となると、走査速度を制御してスルーホールの露光を行い、スルーホールの露光が終了すると速度を増加させる。
ドットパターンデータ変換部126は、スルーホールデータ記憶メモリ114、配線パターンデータ記憶メモリ116、露光制御部128及び図示しないCPUと接続されている。ドットパターンデータ変換部126は、図示しないCPUより往路露光処理の開始指示を受けるとスルーホールデータ記憶メモリ114からスルーホール部画像データを読み込みドットパターンデータに変換する。一方、図示しないCPUより復路露光処理の開始指示を受けると配線パターンデータ記憶メモリ116から配線パターン部画像データを読み込みドットパターンデータに変換する。変換した各ドットパターンデータは露光制御部128へ送出される。
露光制御部128は、露光時間演算部120、移動制御部122、ドットパターン変換部126、各ヘッドアッセンブリ28A及び各光源ユニット31と接続されている。露光制御部128は、移動制御部122より露光ステージ16の位置情報、ドットパターン変換部126より各ドットパターンデータを受け、往路露光処理ではスルーホール部画像データを変換したドットパターンデータ、復路露光処理では配線パターン部画像データを変換したドットパターンデータに基づき、露光ステージ16が移動する位置毎に複数のヘッドアッセンブリ28AのDMDドライバ130を制御してDMD132をオン/オフさせ、光源ユニット31の光源ドライバ136へ点灯信号を送出してLD138を点灯させる。
また、露光制御部128では、往路、復路露光処理で点灯させるLD138の光量を光量データとして露光時間演算部120へ送出する。なお、本実施の形態では、往路、復路で共にLD138を全て点灯(最大光量)させてとしており、往路、復路露光処理で露光時間演算部120へ送出される光量データは同一となる。
以下に本実施の形態の作用を説明する。
(露光処理の流れ)
記録媒体22(図1参照)への露光処理は、記録媒体22を表面に吸着した露光ステージ16が露光ヘッドユニット28を通過する際に行われる。
往路露光処理では、移動制御部122(図8参照)がリニアモータ26を制御して露光ステージ16を定盤18の摺動レール20に沿ってステージ部12Bから筐体部12Aの奥側へ移動させる。
アライメントユニット32(図2参照)は、露光ステージ16が通過する際に、記録媒体22に予め付与されたマークを検出する。このマークは、予め記憶されたマークと照合され、その位置関係に基づいて露光ヘッドユニット28による露光タイミングが補正される。以下の往路、復路露光処理は補正された露光タイミングに基づき処理が行われる。
露光ヘッドユニット28では、露光ステージ16の位置情報とスルーホール部画像データを変換したドットパターンデータに基づき、前記補正された露光タイミングでDMDへレーザ光が照射され、DMDのマイクロミラーがオン状態のときに反射されたレーザ光が光学系を介して記録媒体22へと案内され、この記録媒体22上(図6(B)参照)に結像される。
移動制御部122(図8参照)は、スルーホール部で記録媒体22上の第一感光層110を硬化させるため、図9(A)に示すように露光ステージ16の走査速度を低速にする。走査速度を低速にすることにより、露光ヘッドユニット28からレーザ光が照射される露光時間が長くなり、第一感光層110が感光して硬化する必要露光量が得られる。
また、移動制御部122は、スルーホール部以外では露光を行わないため走査速度を増加させている。これは、図10に示すように、露光ステージ16の移動に伴いリニアエンコーダ27から出力されるパルスをカウントした値が、トリガ記憶メモリ124(図8参照)に記憶した露光位置トリガ値となると(図10の矢印t1)、露光ステージ16の走査速度を低速にしてスルーホール部の露光(図10の期間t2)を行う。スルーホール部の露光が終了すると走査速度を速くする。
露光ステージ16(図1参照)が往路端に至ると往路露光処理は終了し、復路露光処理が開始される。
復路露光処理では、移動制御部122(図8参照)がリニアモータ26を制御して露光ステージ16(図2参照)を筐体部12Aの奥側から手前側へ移動させる。
露光ヘッドユニット28では、往路露光処理と同様に、露光ステージ16の位置情報と配線パターン部画像データを変換したドットパターンデータに基づき、DMDへレーザ光が照射され、DMDより反射されたレーザ光が記録媒体22上(図6(D)参照)に結像される。
移動制御部122では、第二感光層108を硬化させるため、図9(B)に示すように露光ステージ16の走査速度を高速にする。走査速度を高速にすることにより、レーザ光が照射される露光時間が短くなり、第二感光層108のみが感光して硬化する必要露光量が得られる。
このように、本実施の形態によれば、露光ステージ16の走査速度を制御することにより、往路露光処理では、スルーホール部画像データに基づき第一感光層110を感光させてスルーホール部領域のテント性(被膜保護性)を保つことができ、復路露光処理では、配線パターン部画像データに基づき第二感光層108を感光させて配線パターン領域を高解像度にすることができる。
以下、図11のフローチャートに従い、画像データ分割処理、分割した画像データ処理及び往路、復路露光制御の流れについて説明する。
ステップ200では、プリント配線図データが入力されたか否かが判断され、肯定判定されると、ステップ202へ移行する。
ステップ202では、入力されたプリント配線図データから配線パターンと、スルーホール部とを判別し、スルーホール部画像データと配線パターン部画像データとに分離してステップ204へ移行する。
ステップ204では、分離したスルーホール部画像データをスルーホールデータ記憶メモリ114(図8参照)へ、配線パターン部画像データを配線パターンデータ記憶メモリ116へ記憶し、ステップ206へ移行する
ステップ206では、往路露光処理を開始し、露光の往復処理フラグFGに往路を意味する0をセットして、ステップ208へ移行する。
ステップ208では、露光量演算部118とドットパターン変換部126とにおいて、往路露光処理を行うためスルーホールデータ記憶メモリ114からスルーホール部画像データを読み込む。さらに、ドットパターン変換部126では、読み込んだスルーホール部画像データのドットパターンデータに変換を行い、ステップ210へ移行する。
ステップ210では、往路、復路露光処理で各画像データを感光層へ感光させる必要な露光量の演算処理を行う。すなわち、往路露光処理(往復処理フラグFGが0)ではスルーホール部画像データを第一感光層110へ、復路露光処理(往復処理フラグFGが1)では配線パターン部画像データを第二感光層108へ感光させるために必要な露光量を演算して、ステップ212へ移行する。
ステップ212では、光源ユニット31から送出される光量データ(光源ユニット31から出力される光量)に基づき、ステップ210において演算した必要露光量が得られる露光時間を露光位置ごとに演算して、ステップ214へ移行する。
また、往路露光処理(往復処理フラグFGが0)ではスルーホール部の露光開始位置となるパルス数を演算し、露光位置トリガとしてトリガ記憶メモリ124に記憶させる。
ステップ214では、画像データ(往路ではスルーホール部画像データ、復路では配線パターン部画像データ)変換したドットパターンデータと演算した露光時間とに基づき露光処理が実行される。なお、往路、復路露光処理については、本実施の形態の作用の最初に説明したとおりである。
ステップ216では、往復処理フラグFGから復路(1)処理が終了したかを判別する。否定判定の場合、まだ復路露光処理が行われていないため、ステップ218へ移行し、復路露光処理の開始として往復処理フラグFGに復路を意味する1をセットし、その後ステップ220へ移行する。
一方、ステップ216において肯定判定の場合、往路、復路露光処理が終了であるため、処理終了(エンド)となる。
ステップ220では、復路露光処理として、露光量演算部118とドットパターン変換部126とにおいて配線パターン部画像データを読み込む。さらに、ドットパターン変換部126では、読み込んだ配線パターン部画像データのドットパターンデータに変換を行い、ステップ210へ移行し、復路露光処理が実行される。
以上説明したように本実施の形態では、光源数を増減させることなく、露光ステージ16の走査速度を制御することによりプリント配線基板(記録媒体22)上への露光量を増減させることができる。また、往路、復路露光処理では、露光ステージ16の走査速度を制御して、スルーホール部画像(低感度部画像)データを第一感光層110、配線パターン部画像(高感度部画像)データを第二感光層108にそれぞれ感光させることにより、スルーホール部のテント性(被膜保護性)の向上と配線パターンの高解像度化を実現することができる。
なお、本実施の形態では、露光ヘッドユニット28にヘッドアッセンブリ28Aを用いて、ドットパターンにより1画素を表現したが、ドットパターンを有さず、単一の光量の光ビームを出力する露光ヘッドであってもよい。
また、本実施の形態では露光ステージ16の走査速度を制御することにより、プリント配線基板への露光量を調整したが、走査速度を一定として、往路又は復路露光処理で各ヘッドアッセンブリ28Aの二次元配列された20個のドット(図4参照)の一部をオフ状態として光量を制御し、プリント配線基板への露光量を調整してもよい。この場合、例えば、往路露光処理ではドットパターンの全部をオン(最大光量)してスルーホール部画像データを低感度の第一感光層110へ露光(図12(A)参照)し、復路露光処理ではドットパターンの一部(例えば、図4の斜線としたドットパターン)をオフ状態(最大光量の1/n)として、配線パターン部画像データを高感度の第二感光層108へ露光(図12(B)参照)するようにしてもよい。また、記録ヘッドにフィルタを設け、復路露光処理ではフィルタにより光量を最大光量の1/nに減少させ、配線パターン部画像データを第二感光層108へ露光するようにしてもよい。