JP2005190615A - 光ピックアップ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 光源の波長が変動しても集光性能の劣化が少なく、かつCD用またはDVD用も含む互換光学系として用いる場合にも従来に比して収差劣化を低減できる光ピックアップ装置を提供すること。
【解決手段】 波長λ、λの光束を発する第1、第2の光源1a、1b、第1、第2のビームスプリッタ2、3、コリメータ4、絞り5、球面収差補正素子6、波長λの光束に生ずる収差を位相を補正して低減するが波長λの光束については位相を変えない位相補正素子7、対物レンズ8、情報記録面9aを有する第1の光ディスク9、情報記録面10aを有する第2の光ディスク10、受光素子11を含むように構成される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光ディスク、光磁気ディスク、光メモリカード等の光記録媒体に情報を記録し、または、光記録媒体に記録された情報を再生するための光ピックアップ装置に関する。
従来、CDやDVD等で知られる光ディスクは、音楽情報、映像情報等の保存、コンピュータから出力されるデータの記録等に広く使われている。そして、近年の高度情報化の進展にともない、光ディスクの大容量化、高密度化の要求が益々強まっている。
光ディスクへの記録の高密度化を達成するためには、対物レンズを介して集光される光線のスポットの径(以下、スポット径という。)を小さくする必要がある。一般に、このスポット径は、使用する光の波長(以下、使用波長という。)に比例し、光学系の開口数(NA)に反比例することが知られており、上記の高密度化のためには、使用波長を短くするか、光学系の開口数を大きくすればよい。CDからDVDへの高密度化は、波長を、約780nmから約650nmに短くすると共に、光学系の開口数を、0.45から0.60または0.65に増大することで実現されている。更に高密度化するために、光源に440nmより短い波長の光を用い、開口数を0.80以上に大きくする光ピックアップ光学系が検討されている。
ここで、上記のような短波長化、高開口数化を実現するには、光ピックアップ光学系の対物レンズの集光性能が、波長変動によって劣化することが大きな問題となる。この現象は、光学系に用いる光学材料の屈折率が波長によって異なること、すなわち分散があることから生ずる。用いる光源からの光の波長が、常に一定であれば集光性能は劣化しないが、出力により波長が変動することが知られており、例えば、低出力でトラッキングまたはフォーカシングを行い、所定の位置で書き込みのために高出力にした際、波長が変動して適切な集光位置に書き込みができなくなる。
このような問題を解決すべく、光学系の中に、凹レンズと凸レンズからなる色収差補正用光学素子を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、光源の波長に比例して位相差を与える位相構造を有する位相補正素子を用いて、波長変動に対して集光性能の変動の少ない光学系を実現しようとする技術も提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
特開2000−19388号公報 ISOM/ODS 2002 Technical Digest pp395−397
しかし、このような特許文献1に開示された従来の光ピックアップ装置では、対物レンズとは別に新たに二枚のレンズ(一群)を必要とし、光学系がコンパクト化できない問題があった。
また、非特許文献1に開示された技術では、上記の使用波長が一種類の光ピックアップ装置に対しては有効であるが、使用波長が複数の所謂互換光学系として用いることはできない問題があった。これは、例えば、使用波長が650nm付近のDVDと、使用波長が405nm付近の光ディスクを同一の光学系で使用しようとした場合、一方の使用波長で波長に比例する位相補正機能を設けると、他方の使用波長では波長に比例する位相補正機能を実現できないことによる。この技術では、むしろ上記の他方の使用波長で、収差が増大してしまうことになる。
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、光源の波長が変動しても集光性能の劣化が少なく、かつCD用またはDVD用も含む互換光学系として用いる場合にも従来に比して収差劣化を低減できる光ピックアップ装置を提供する。
本発明の光ピックアップ装置は、複数波長の光束を発する光源によって発せられる各波長の前記光束を個別に情報記録面に集光させ、情報の記録または再生を行うための光ピックアップ装置において、前記光源によって発せられる、第1の波長λおよび第1の偏光方向を有する光束に対しては、位相補正を行い、前記第1の波長λと異なる第2の波長λ、および前記第1の偏光方向と直交する第2の偏光方向を有する光束に対しては、位相補正を行わない位相補正素子を備えた構成を有している。
この構成により、独立して特定の波長の光束に対して位相補正を行うことができるため、光源の波長が変動しても集光性能の劣化が少なく、かつCD用またはDVD用も含む互換光学系として用いる場合にも従来に比して収差劣化を低減できる光ピックアップ装置を実現できる。
また、本発明の光ピックアップ装置は、請求項1において、前記位相補正素子が、前記第1の波長λおよび前記第1の偏光方向を有する光束に対して、λ・(0.9〜1.1)の整数倍の位相差を生じさせる構成を有している。
この構成により、請求項1の効果に加え、位相補正素子が、λ・(0.9〜1.1)の整数倍の位相差を生じさせるため、位相補正量または位相補正感度を調整できる光ピックアップ装置を実現できる。
また、本発明の光ピックアップ装置は、請求項1または2において、前記位相補正素子が、複屈折性材料層に等方性材料層を積層した構成を有している。
この構成により、請求項1または2の効果に加え、位相補正素子が、複屈折性材料層に等方性材料層を積層した構成を有するため、偏光方向を調節することで独立して特定の波長の光束に対して位相補正を行うことができる光ピックアップ装置を実現できる。
また、本発明の光ピックアップ装置は、請求項3において、前記複屈折性材料層が、前記光ピックアップ装置の光学系の光軸を中心とする同心円状の段差部を有し、前記等方性材料層は、前記複屈折性材料層の段差部に隙間なく接触するように積層された構成を有している。
この構成により、請求項3の効果に加え、複屈折性材料層が、光ピックアップ装置の光学系の光軸を中心とする同心円状の段差部を有するため段差を調節することで位相補正量や位相補正の感度を変えることができる光ピックアップ装置を実現できる。
また、本発明の光ピックアップ装置は、請求項3または4において、前記第2の波長λに対する、前記複屈折性材料層の常光屈折率no2と異常光屈折率ne2とが異なるとき、前記等方性材料層の屈折率ns2が、前記常光屈折率no2または前記異常光屈折率ne2にほぼ等しい構成を有している。
この構成により、請求項3または4の効果に加え、等方性材料層の屈折率を、常光屈折率または異常光屈折率にほぼ等しくするため、光束の偏光方向を選択する自由度を増やすことができる光ピックアップ装置を実現できる。
また、本発明の光ピックアップ装置は、請求項3から5のいずれか1項において、前記第1の波長λと異なる第3の波長λに対する、前記複屈折性材料層の常光屈折率no3と異常光屈折率ne3とが異なるとき、前記複屈折性材料層は、λ/(ne3−ns3)若しくはλ/(no3−ns3)、またはそれらの整数倍の、前記光軸の方向の段差であって、前記光軸を中心とする同心円状に複数形成されたものを有する構成を有している。
この構成により、請求項3から5のいずれか1項の効果に加え、複屈折性材料層の段差を1波長分の光路差またはその整数倍としたため、波長が変動した際に位相補正機能を発揮できる光ピックアップ装置を実現できる。
また、本発明の光ピックアップ装置は、請求項3から6のいずれか1項において、前記段差の数が、5から10のいずれかである構成を有している。
この構成により、請求項3から6のいずれか1項の効果に加え、段差の数を5から10のいずれかとしたため、透過率の低下を回避し、適切な位相補正機能を発揮できる光ピックアップ装置を実現できる。
また、本発明の光ピックアップ装置は、請求項3から7のいずれか1項において、前記複屈折性材料層が、高分子材料を用いて形成されている構成を有している。
この構成により、請求項3から7のいずれか1項の効果に加え、複屈折性材料層が、高分子材料を用いて形成されているため、製作が容易にできる光ピックアップ装置を実現できる。
また、本発明の光ピックアップ装置は、請求項8において、前記高分子材料が、液晶である構成を有している。
この構成により、請求項8の効果に加え、高分子材料が、液晶でできているため、電圧を印加することによって屈折率を調節できる光ピックアップ装置を実現できる。
また、本発明の光ピックアップ装置は、請求項1から9のいずれか1項において、前記第3の波長λが、420nm以下である構成を有している。
この構成により、請求項1から9のいずれか1項の効果に加え、第3の波長λを420nm以下としたため、例えば、波長約405nmの光束に対して確実に位相補正機能を実現できる光ピックアップ装置を実現できる。
本発明は、独立して特定の波長の光束に対して位相補正を行うことができるようにしたため、光源の波長が変動しても集光性能の劣化が少なく、かつCD用またはDVD用も含む互換光学系として用いる場合にも従来に比して収差劣化を低減できる光ピックアップ装置を実現できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る光ピックアップ装置の概念的な構成を示す図である。光ピックアップ装置は、波長λの光束を発する第1の光源1a、波長λの光束を発する第2の光源1b、第1のビームスプリッタ2、第2のビームスプリッタ3、コリメータ4、絞り5、球面収差補正素子6、位相補正素子7、対物レンズ8、第1の光ディスク9(9aは光ディスク9の情報記録面)、第2の光ディスク10(10aは光ディスク10の情報記録面)、受光素子11を含むように構成される。なお、図1において符号12は光軸を示す。
第1の光源1aによって発せられた光束は、第1のビームスプリッタ2を透過し、第2のビームスプリッタ3、コリメータ4、絞り5、球面収差補正素子6、位相補正素子7、対物レンズ8を順に透過し、第1の光ディスク9の情報記録面9aに集光する。第2の光源1bによって発せられた光束は、第1のビームスプリッタ2で反射され、第2のビームスプリッタ3、コリメータ4、絞り5、球面収差補正素子6、位相補正素子7、対物レンズ8を順に透過し、第2の光ディスク10の情報記録面10aに集光する。
第1の光ディスク9の情報記録面9aまたは第2の光ディスク10の情報記録面10aに集光した光束は、それぞれ、情報記録面9a、または情報記録面10aで反射され、対物レンズ8、位相補正素子7、球面収差補正素子6、絞り5、コリメータ4を順に透過し、ビームスプリッタ3で反射されて受光素子11に入る。
受光素子11からの出力信号を用いて、第1の光ディスク9の情報記録面9a、または、第2の光ディスク10の情報記録面10aに記録された情報の読み取り信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号が得られるようになっている。なお、光ピックアップ装置には、上記フォーカスエラー信号に基づいて、レンズを光軸方向に移動する機構(フォーカスサーボ)、及び上記トラッキングエラー信号に基づいて、レンズを光軸にほぼ垂直の方向に移動する機構(トラッキングサーボ)が含まれるが、図1に示す構成では省略されている。
第1の光源1aは、例えば、半導体レーザで構成され、405nm近傍の波長で発散光束を直線偏光で出射するようになっている。同様に、第2の光源1bは、例えば、半導体レーザで構成され、655nm近傍の波長で発散光束を直線偏光で出射するようになっている。ここで、第1の光源1aからの光束の変更方向と、第2の光源1bからの光束の偏光方向とは、互いに直交するように第1の光源1aと第2の光源1bとが配置されている(以下第1の光源1aからの光束の偏光方向を第1の偏光方向、第2の光源1bからの光束の偏光方向を第2の偏光方向という。)。
第1のビームスプリッタ2は、第1の光源1aからの光束を透過させ、第2の光源1bからの光束を反射させ、それぞれを同一の光軸上に導く役割を持つ。第2のビームスプリッタ3は、第1の光源1aおよび第2の光源1bからの光束を透過させると共に、第1の光ディスク9の情報記録面9aおよび第2の光ディスク10の情報記録面10aからの反射光束を反射させ、受光素子11に導く役割を持つ。
コリメータ4は、第1の光源1aおよび第2の光源1bからの光束をほぼ平行光に変換する役割を持つ。
絞り5は、光源1aおよび光源1bからの光束を選択的に開口制限することで開口数NAの設定を行う機能を有する。絞り5を設ける理由は、記録又は再生の際、第1の光ディスク9用の開口数と第2の光ディスク10用の開口数とが異なる場合、絞り5により開口数を調整するためである。第1の光ディスク9用の開口数と第2の光ディスク10用の開口数とが同じである場合には絞り5は通常不要である。絞り5には、機械的絞り、光学的絞り等があり、特に限定されないものとする。
球面収差補正素子6は、第2の光源1bからの光束を対物レンズ8で屈折させ集光する際に発生する球面収差を補正する機能を有する。これは、対物レンズ8として第1の光源1a(波長λa)に対して、第1の光ディスク9のディスク厚さを考慮して収差補正した設計のレンズを用いた場合、λaとは異なる波長λb、第1の光ディスクのディスク厚さとは異なる第2の光ディスク10のディスク厚さに対しては、球面収差が発生するため、この球面収差を補正するために設けるものである。このような機能を有する素子として、例えば特願2003−276076記載の位相補正素子を用いることができる。特願2003−276076記載の位相補正素子は、断面形状が鋸波状(鋸波が階段状をしているのでもよい。)であり、平面形状が同心円状である凹凸を有し、特定の波長について位相補正を行わず、その他の波長については位相補正を行うようになっている。
位相補正素子7は、第1の光源1aからの光束(波長λ、第1の偏光方向)に対しては、λの整数倍の位相差を生じさせる機能を有する位相補正素子として作用し、第2の光源1bからの光束(波長λ、第2の偏光方向)に対しては、位相補正素子として作用しない偏光位相補正素子である。位相補正素子7を通過した後に波長の整数倍の位相差を持つことは、実質的に位相差がないのと等価であるが、本発明の第1の実施の形態では、位相補正の機能を有するものとして表現する。また、位相補正素子として作用しないとは、位相差がゼロの場合であって、波長の整数倍の位相差の場合は含まないものとする。
このような機能を持たせるために、位相補正素子7は、光軸を垂直方向とする複屈折性材料層と等方性材料層とが積層され、この複屈折性材料層は光軸を中心として同心円状の円盤または輪を積層した構造を有し、等方性材料層は複屈折性材料層と密着するように構成されている。したがって、位相補正素子7は、複屈折性材料層と等方性材料層とには、光軸を中心とする動径方向に段差を有する。
また、波長λ、第1の偏光方向の光束に対する上記の複屈折性材料層の屈折率をn11)とし、波長λに対する上記の等方性材料層の屈折率をn2)とすると、複屈折性材料層が有する上記の段差は、
λ/(n11(λ)−n2))、
の整数倍となるように設定されている。
この様に構成することにより、波長λの光束に対しては、収差変化を与えず、波長がλから僅かにずれた場合、波長のずれに応じて波面形状が変化する。そして、波長のずれに応じた波面形状の変化は、対物レンズの波長変化に伴う色収差を減少する方向に作用するようになっている。ここで、僅かとは、例えば、±10nm程度をいう。
さらに、波長λ、第2の偏光方向の光束に対する上記の複屈折性材料層の屈折率をn12)とし、波長λの光束に対する上記の等方性材料層の屈折率をn2)とすると、屈折率n12)と屈折率n2)とは、
12(λ)=n2)
を満足する。この様に構成することにより、波長λで第2の偏光方向の光束に対して、段差部を有することによって位相が変化しないようになっている。
対物レンズ8は、レンズの両面が非球面の形状をし、NAが例えば0.85の単レンズであり、波長λの光線に対して収差が最も小さくなるように設計されている。そして、位相補正素子7を通過した波長λのほぼ平行光は、対物レンズ8によって光ディスク9の情報記録面9aに集光されるようになっている。また、波長λのほぼ平行光は、対物レンズ8と球面収差補正素子6と組み合わせることによって、第2の光ディスク10の情報記録面10aに集光されるようになっている。
第1の光ディスク9は、波長λの光束を用いた情報の書き込みまたは読み出しに用いるものであり、例えば、0.1mmの保護層厚を有する。また、第2の光ディスク10は、波長λの光束を用いた情報の書き込みまたは読み出しに用いるものであり、例えば、0.6mmの保護層厚を有する。
受光素子11は、光ディスクの情報記録面9aまたは10aからの反射光を受光し、受光した反射光に基づき、これらの情報記録面9aまたは10aに記録された情報に応じた、読み取り信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号の各信号を生成し、外部に出力するようになっている。
上記の本発明の実施の形態に基づく具体的な実施例を以下に説明する。ここで、本実施例に係る光ピックアップ装置の光学配置は、図1に示す上記の光学配置と同様とする。
以下に、コリメータ4、球面収差補正素子6、位相補正素子7、および対物レンズ8の具体的数値構成を示し、位相補正素子7を設けた場合と設けない場合における、波長λからの波長変動に対する波面収差の変動等について説明する。
表1に、使用する光源の中心波長λ、コリメータ4の焦点距離f、レンズ材料の屈折率nの一例を示す。
Figure 2005190615
ここで、コリメータ4の焦点距離fの単位は、mmである。また、コリメータ4の材料をガラスとし、レンズ中心厚を1.50mmとした。
コリメータ4の非球面形状は、以下の式(1)基づいて決定されるものとした。
Figure 2005190615
ここで、記号iは非球面次数であり、2、4、6、8、10のいずれかをとる。また、記号jは面番号であり、光源側の面を面番号1、対物レンズ側の面を面番号2とした。さらに、記号hは光軸からの距離(以下、高さという。)であり、記号zは第j面非球面の頂点の接平面(一般に、光軸近傍で非球面に接し、光軸に垂直な面。)からその非球面上の高さhの点までの光軸方向の距離であり、r、k、ai,j、およびjは第j面の決定に係る各係数である。
表2に上記の式(1)で用いる各係数の値を示す。
Figure 2005190615
本実施例では、光源1a(波長λ=405nm)からコリメータ4までの光軸上の距離を16.74mmとし、光源1b(波長λ=655nm)からコリメータ4までの光軸上の距離を17.21mmとした。また、光源1aまたは光源1bとコリメータ4の間に、硝材BK7、厚さ2.00mmのビームスプリッタ2と、硝材BK7、厚さ2.00mmのビームスプリッタ3を配置した。
次に、本実施例の球面収差補正素子6の構造について説明する。
図2は、光軸12を含む面を断面とする球面収差補正素子6の断面図である。この球面収差補正素子6は、複屈折性材料層21に等方性材料層22を積層してなり、複屈折性材料層21は光軸を中心とする同心円状の段差部を有し、等方性材料層22が、対物レンズ8側の面に隙間なく接触するように構成される。具体的には、複屈折性材料層21に等方性材料層22を充填する等によって構成される。
そして、波長λ、第1の偏光方向の光束に対する複屈折性材料層21の屈折率をn11(λ)、波長λの光束に対する等方性材料層22の屈折率をn2)とし、波長λ、第2の偏光方向の光束に対する複屈折性材料層21の屈折率をn12)とし、波長λの光束に対する等方性材料層22の屈折率をn2)とすると、n11(λ)とn2)とは、
11(λ)=n2)
の関係を満足し、屈折率n12)と屈折率n2)とは、
12(λ)≠n2)
の関係を満足するように構成される。
このように構成することによって、球面収差補正素子6を通過する波長λ、第1の偏光方向の光束に対しては、位相変化は生ぜず、波長λ、第2の偏光方向の光束に対しては位相変化を与えることができる。そして、このような関係を満たす屈折率n12)および屈折率n2)を調節することによって、波長λの光束が光学系を通過する際の球面収差を補正できるようになる。
球面収差補正素子6の具体的な形状について、図2を用いて説明する。
図2において、符号23は光源側の面を示し、符号24は対物レンズ側の面を示し、それぞれの面を平面とした。また、段差部δ(k=1、2、...、54)は、それぞれ光軸12を中心として同心円状に形成され、符号φi(i=1、2、...、54)は、段差部δ(k=1、2、...、54)の直径である。ここで、同心円状の各段差部の段差を形成する側面は、光軸に平行な円筒形状をなす。
また、符号S(k=1、2、...54)は、隣り合う段差部δk−1と段差部δとで挟まれた輪状の領域(以下、輪帯部という。)を示す。なお、輪帯部Sは、段差部δによって囲まれた円状部であり、輪帯部S55は、段差部δ54より外側の輪帯部であり、SからS55まですべて光軸に垂直な平面とする。
球面収差補正素子6は、上記のように光軸方向の光路長が異なる同心円状の領域を設けることによって、波長λの光束に対して位相補正がなされるようになっている。そして、球面収差補正素子6の位相補正量は、対物レンズ8によって、波長λの光束に対して生ずる球面収差を低減または除去するように設計される。
表3は、輪帯部Sの光軸方向の座標を0とし、対物レンズ8の方向(面24の側)を正としたときの輪帯部S(k=2、3、...、55)の光軸方向の座標と、輪帯部の直径φ(k=1,2、...、54)の数値を示す表である。
Figure 2005190615
球面収差補正素子6に用いた材料の屈折率を表4に示す。
Figure 2005190615
表4から、波長405nm、第1の偏光方向の光束に対しては、複屈折性材料層21と等方性材料層22とで屈折率の差がないため、段差を設けたことによって位相のずれを生じないことがわかる。一方、波長655nm、第2の偏光方向(第1の偏光方向とは直交)の光束に対しては、複屈折性材料層21と等方性材料層22とで屈折率の差を持つため、段差を設けたことによって位相のずれを生じさせることができ、この位相のずれを利用して、波長655nm、第2の偏光方向の光束に対して球面収差の補正を行うものである。
次に、位相補正素子7の構造について説明する。図3は、光軸12を含む面を断面とする位相補正素子7の断面図である。
位相補正素子7は、複屈折性材料層31に等方性材料層32を積層してなり、複屈折性材料層31は光軸を中心とする同心円状の段差部を有し、等方性材料層32が、対物レンズ8側の面に隙間なく接触するように構成される。具体的には、複屈折性材料層31に等方性材料層32を充填する等によって構成される。
そして、波長λ、第1の偏光方向の光束に対する複屈折性材料層31の屈折率をn11(λ)、長λの光束に対する等方性材料層32の屈折率をn2)とすると、複屈折性材料層31が有する上記の段差は、
λ/(n11(λ)−n2))、
の整数倍となるように設定されている。
この様に構成することにより、波長λの光束に対しては、収差変化を与えず、波長がλから僅かにずれた場合、波長のずれに応じて波面形状が変化する。そして、波長のずれに応じた波面形状の変化は、対物レンズの波長変化に伴う色収差を減少する方向に作用するようになっている。ここで、僅かとは、例えば、±10nm程度をいう。
さらに、波長λ、第2の偏光方向の光束に対する複屈折性材料層31の屈折率をn12)とし、波長λの光束に対する等方性材料層32の屈折率をn2)とすると、n12(λ)とn2)とは、
12(λ)=n2)
の関係を満足する。この様に構成することにより、波長λで第2の偏光方向の光束に対して、段差部を有することによって位相が変化しないようになっている。
位相補正素子7の具体的な形状について、図3を用いて説明する。
図3において、符号33は光源側の面を示し、符号34は対物レンズ側の面を示し、それぞれの面を平面とした。また、段差部δ(k=1、2、...、7)は、それぞれ光軸12を中心として同心円状に形成され、符号φi(i=1、2、...、54)は、段差部δ(k=1、2、...、7)の直径である。ここで、同心円状の各段差部の段差を形成する側面は、光軸に平行な円筒形状をなす。
また、符号S(k=1、2、...7)は、隣り合う段差部δk−1と段差部δとで挟まれた輪帯部を示す。なお、輪帯部Sは、段差部δによって囲まれた円状部であり、輪帯部Sは、段差部δより外側の輪帯部であり、輪帯部S〜Sのぞれぞれの面は、すべて光軸に垂直な平面とする。
位相補正素子7は、上記のように光軸方向の光路長が異なる同心円状の領域を設けることによって、波長λの光束に対して位相補正がなされるようになっている。このように、光軸方向にそれぞれ位置の異なる輪帯状の平面を構成することによって、位相補正素子7に位相補正機能を持たせ、この位相補正機能により、波長λの光束が波長λから僅かに変化した場合に発生する収差の低減を行っている。
表5に、輪帯部Sの光軸方向の座標を0とし、対物レンズ8の方向(面34の方向)を正としたときの輪帯部S(k=2、3、...、8)の光軸方向の座標と、輪帯部の直径φ(k=1,2、...、7)の数値を示す表である。
Figure 2005190615
位相補正素子7に用いた材料の屈折率を表6に示す。
Figure 2005190615
表6から、波長405nm、第1の偏光方向の光束に対しては、複屈折性材料層31と等方性材料層32とで屈折率の差があるため、段差を設けたことによって位相のずれを生じさせることができることがわかる。ここで、波長λ、第1の偏光方向の光束に対する複屈折性材料層31の屈折率をn11)(表6では、1.641)、波長λの光束に対する等方性材料層32の屈折率をn2)(表6では、1.561)とすると、上記の段差は、
λ/(n11(λ)−n2))、
の整数倍であり、その値は、
0.405/(1.641−1.561)=5.06(μm)
の整数倍となる。
以上のように構成することにより、波長λの光束に対しては、収差変化をなくし、波長がλ1から僅かにずれた場合には段差部において位相の変化が生じ、これが対物レンズ8の波長変化に伴う色収差を減少する方向に作用する。一方、波長655nm、第2の偏光方向(第1の偏光方向とは直交)の光束に対しては、複屈折性材料層31と等方性材料層32とで屈折率の差がないため、段差を設けたことによって位相のずれを生じることがない。
次に、対物レンズ8について説明する。表7に、使用する光源1a、1bの中心波長λ、対物レンズ8の焦点距離f、開口数(NA)、レンズ材料の屈折率nの一例を示す。
Figure 2005190615
ここで、コリメータ4の焦点距離fの単位は、mmである。また、コリメータ4の材料をガラスとし、レンズ中心厚を1.50mmとした。
対物レンズ8の材料は、コリメータ4と同一のガラスとし、レンズ中心厚は1.60mmとした。開口数(NA)の設定は、絞り5により行うが、波長405nmの光束に対しては、φ2.30mmのビーム直径となるよう、また、波長655nmの光束に対しては、φ1.81mmのビーム直径となるように設定して、表7記載のNAの値を実現している。
対物レンズ8の非球面形状は、式(1)に基づいて決定される。面番号jは、光源側の面を面番号1、光ディスク側の面を面番号2とした。
表8に、対物レンズの非球面形状を表す各係数を示す。
Figure 2005190615
このような非球面形状を有する対物レンズ8は、波長405nmの光束が、無限系で入射し、光ディスクの保護層厚が0.1mmのものを用いたときに、軸上の収差が最小となるように設定されている。
なお、対物レンズ8は、位相補正素子7から光軸方向1.00mmのところに設置されている。
比較のために、まず位相補正素子7がない場合、すなわち、コリメータ4と対物レンズ8で構成される光学系において、光源の波長変動に対する、光ディスクの情報記録面上の収差を表9に示す。
Figure 2005190615
次に、位相補正素子7を用いた場合の、光源の波長変動に対する、光ディスクの情報記録面上の収差を表10に示す。
Figure 2005190615
表9と表10を比較して、主波長が405nmの場合、位相補正素子7を用いることでの劣化はなく、また波長が主波長から変動した場合には、そのことにより発生する収差を低減させる方向に作用していることがわかる。また、主波長が405nmの場合、本発明の効果は、少なくとも420nm以下の波長に対して奏する。なお、波長655nmの光束に対しては、上記のように、位相補正素子7は複屈折性材料層31と等方性材料層32とで屈折率差を持たず、何らの位相変化を与えない。
対物レンズ8は、波長405nmの光束に対して収差補正をしているため、波長655nmの光束に対しては、NAを0.65として、軸上波面収差RMS値で0.810λの収差を持つ。しかし、球面収差補正素子6を用いることで、軸上の波面収差(RMS値)を0.029λまで低減できる。波長655nmの光束の偏光方向を波長405nmの光束の偏光方向と直交させることによって、球面収差補正素子6の機能は、位相補正素子7の機能に影響を与えない。
なお、上記の実施例では、光源として、波長405nmの光源を用いて説明したが、本発明は、この波長の光源に限らない。波長405nmの光源の代わりに390nmから430nm程度の波長の光源を用いることができる。この場合、光源の主波長をλとして、λの整数倍の位相シフトが生ずるような段差を持つ位相補正素子を用いればよい。
また、DVD用光学系との互換性を考慮して、波長655nmの光源を用いて実施例を構成したが、代わりに630nmから680nmの波長を持つ光源でもよい。さらにはCD用の波長760nmから820nmの光源、または、その両方を持つ光学系として構成してもよい。
また、本実施例に係る光学系は、波長405nmと波長655nmの両方に用いられる光学系として説明したが、波長405nmだけで使用される光学系としてもよい。
また、本実施例に係る光学系は、コリメータ4を用いて所謂無限系の光学系として構成したが、無限系に限らない。コリメータ4を使用しない有限系の光学系としてもよい。
また、対物レンズ8の形状等を波長405nmに対して最適化したが、これに限らない。波長655nmに対して最適化するのでも、両方の波長に対して最適化するのでもよい。波長655nmに対して最適化したレンズを用いるが場合には、球面収差補正素子として405nmで生ずる収差を補正するような素子とすればよい。
また、波長405nmでの開口数を0.85として説明したが、これに限らない。開口数は0.6から0.7程度であってもよい。
波長405nmでの光ディスクの保護層厚さを0.1mmとしたが、これに限らない。保護層厚さ0.6mmの光ディスクでもよい。
また、球面収差補正素子6を、複屈折性材料層と等方性材料層の二層からなる構成としたが、その両側または片側を等方性の透明材料層で保護する保護層を設けるのでもよい。この複屈折性材料層は、液晶等の高分子材料を用いて形成されるのでもよい。
また、位相補正素子7を、複屈折性材料層と等方性材料層の二層からなる構成としたが、その両側または片側を等方性の透明材料層で保護する保護層を設けるのでもよい。
また、位相補正素子を7つの段差部を持つ構成としたが、7つに限らない。ただ、5つ以下になると収差の補正が困難となり、また10以上では、透過率の減少が起こるため、5から10程度の段差部を持つことが好適である。
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る光ピックアップ装置は、独立して特定の波長の光束に対して位相補正を行うことができるため、光源の波長が変動しても集光性能の劣化が少なく、かつCD用またはDVD用も含む互換光学系として用いる場合にも従来に比して収差劣化を低減できる。
また、位相補正素子が、λ・(0.9〜1.1)の整数倍の位相差を生じさせるため、位相補正量または位相補正感度を調整できる。
また、位相補正素子が、複屈折性材料層に等方性材料層を積層した構成を有するため、偏光方向を調節することで独立して特定の波長の光束に対して位相補正を行うことができる。
また、複屈折性材料層が、光ピックアップ装置の光学系の光軸を中心とする同心円状の段差部を有するため段差を調節することで位相補正量や位相補正の感度を変えることができる。
また、等方性材料層の屈折率を、常光屈折率または異常光屈折率にほぼ等しくするため、光束の偏光方向を選択する自由度を増やすことができる。
また、複屈折性材料層の段差を1波長分の光路差またはその整数倍としたため、波長が変動した際に位相補正機能を発揮できる。
また、段差の数を5から10のいずれかとしたため、透過率の低下を回避し、適切な位相補正機能を発揮できる。
また、複屈折性材料層が、高分子材料を用いて形成されているため、製作が容易にできる。
また、高分子材料が、液晶でできているため、電圧を印加することによって屈折率を調節することができる。
また、第3の波長λを420nm以下としたため、波長約405nmの光束に対して確実に位相補正機能を実現できる。
本発明にかかる回折素子および光ピックアップ装置は、光源の波長が変動しても集光性能の劣化が少なく、かつCD用またはDVD用も含む互換光学系として用いる場合にも従来に比して収差劣化を低減できるという効果が有用な、光記録媒体に情報を記録し、または記録された情報を再生するための光ピックアップ装置等の用途にも適用できる。
本発明の実施の形態に係る光ピックアップ装置の概念的な構成を示す図。 光軸を含む面を断面とする球面収差補正素子の断面図。 光軸を含む面を断面とする位相補正素子の断面図。
符号の説明
1a、1b 光源
2、3 ビームスプリッタ
4 コリメータ
5 絞り
6 球面収差補正素子
7 位相補正素子
8 対物レンズ
9、10 光ディスク
9a、10a 情報記録面
11 受光素子
12 光軸
21、31 複屈折性材料層
22、32 等方性材料層
23、33 光源側の平面
24、34 対物レンズ側の平面
δ 段差部
S 輪帯部
φ 輪帯部の直径

Claims (10)

  1. 複数波長の光束を発する光源によって発せられる各波長の前記光束を個別に情報記録面に集光させ、情報の記録または再生を行うための光ピックアップ装置において、前記光源によって発せられる、第1の波長λおよび第1の偏光方向を有する光束に対しては、位相補正を行い、前記第1の波長λと異なる第2の波長λ、および前記第1の偏光方向と直交する第2の偏光方向を有する光束に対しては、位相補正を行わない位相補正素子を備えたことを特徴とする光ピックアップ装置。
  2. 前記位相補正素子は、前記第1の波長λおよび前記第1の偏光方向を有する光束に対して、λ・(0.9〜1.1)の整数倍の位相差を生じさせる請求項1に記載の光ピックアップ装置。
  3. 前記位相補正素子は、複屈折性材料層に等方性材料層を積層した構成を有する請求項1または2に記載の光ピックアップ装置。
  4. 前記複屈折性材料層は、前記光ピックアップ装置の光学系の光軸を中心とする同心円状の段差部を有し、前記等方性材料層は、前記複屈折性材料層の段差部に隙間なく接触するように積層された構成を有する請求項3に記載の光ピックアップ装置。
  5. 前記第2の波長λに対する、前記複屈折性材料層の常光屈折率no2と異常光屈折率ne2とが異なるとき、前記等方性材料層の屈折率ns2が、前記常光屈折率no2または前記異常光屈折率ne2にほぼ等しい請求項3または4に記載の光ピックアップ装置。
  6. 前記第1の波長λと異なる第3の波長λに対する、前記複屈折性材料層の常光屈折率no3と異常光屈折率ne3とが異なるとき、前記複屈折性材料層は、λ/(ne3−ns3)若しくはλ/(no3−ns3)、またはそれらの整数倍の、前記光軸の方向の段差であって、前記光軸を中心とする同心円状に複数形成されたものを有する請求項3から5のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
  7. 前記段差の数は、5から10のいずれかである請求項3から6のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
  8. 前記複屈折性材料層は、高分子材料を用いて形成されている請求項3から7のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
  9. 前記高分子材料は、液晶である請求項8に記載の光ピックアップ装置。
  10. 前記第3の波長λは、420nm以下である請求項1から9のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
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