JP2005190557A - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 強磁性規則合金相を有する磁性粒子を含有する磁性層が、支持体上に設けられてなる磁気記録媒体であって、
前記磁性層が、CuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金相を形成し得る合金粒子を作製した後、前記合金粒子を溶媒中に含有した状態でアニール処理を施して磁性粒子とし、当該磁性粒子と結合剤と極性溶媒と非極性溶媒とを含有する塗布液を支持体上に塗布してなることを特徴とする磁気記録媒体である。
また、強磁性規則合金相を有する磁性粒子を含有する磁性層が、支持体上に設けられてなる磁気記録媒体であって、
さらに、結合剤と、極性溶媒に有機物と、非極性溶媒とを、前記磁性層中に含有することを特徴とする磁気記録媒体である。
【選択図】 なし
Description
磁気記録密度の向上に有望な磁性粒子の素材としては、CuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金がある(例えば、特許文献1参照)。前記強磁性規則合金は規則化時に発生する歪みのために結晶磁気異方性が大きく、磁性粒子のサイズを小さくしても強磁性を示すことが知られている。
すなわち、本発明は、CuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金相を有する磁性粒子を含有する磁性層が、支持体上に設けられてなる磁気記録媒体であって、
前記磁性層が、CuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金相を形成し得る合金粒子を作製した後、前記合金粒子を溶媒中に含有した状態でアニール処理を施して磁性粒子とし、当該磁性粒子と結合剤と極性溶媒と非極性溶媒とを含有する塗布液を支持体上に塗布してなることを特徴とする磁気記録媒体である。
さらに、結合剤と、極性溶媒と、非極性溶媒とを、前記磁性層中に含有することを特徴とする磁気記録媒体である。
本発明の磁気記録媒体は、CuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金相を有する磁性粒子を含有する磁性層が支持体上に設けられてなる。
そして、その磁性粒子は、CuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金相(以下、単に「強磁性規則合金相」ということがある)を形成し得る合金粒子を作製(合金粒子作製工程)した後、前記合金粒子を溶媒(有機溶媒)中に含有した状態でアニール処理を施して(アニール処理工程)作製される。この磁性粒子を含有する溶液に、結合剤、極性溶媒および非極性溶媒を添加して塗布液を調製し、この塗布液を支持体上に塗布して(塗布工程)、磁性層が形成されて本発明の磁気記録媒体が製造される。
なお、磁性粒子の製造方法(上記合金粒子作製工程およびアニール処理工程等)を含む磁気記録媒体の製造方法の詳細については、後述する。
一方、混合した後の両溶液に、結合剤(ウレタン樹脂)を混合すると、非極性溶媒を含有する溶液では、結合剤は溶解しないに対し、極性溶媒を含有する溶液では、結合剤が溶解するのを確認できる。
非極性溶媒は、塗布液とする前の状態で20〜95質量%含有されていることが好ましく、30〜85質量%含有されていることがより好ましい。
極性溶媒は、塗布液とする前の状態で、20〜95質量%含有されていることが好ましく、30〜85質量%含有されていることがより好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1,000〜200,000(好ましくは10,000〜100,000)、重合度が約50〜1000のものを使用することが好ましい。
これらの樹脂については、朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬化型樹脂を各層に使用することも可能である。これらの例とその製造方法については、特開昭62−256219号公報に詳細に記載されている。
例えば、各層で結合剤量を変更する場合、磁性層表面の擦傷を減らすためには磁性層の結合剤量を増量することが有効であり、ヘッドに対するヘッドタッチを良好にするためには、非磁性層の結合剤量を多くして柔軟性を持たせることができる。
これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートMTL;武田薬品社製タケネートD−102、タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202;住友バイエル社製デスモジュールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL;等があり、これらを単独または硬化反応性の差を利用して2種以上の組合せで各層とも用いることができる。
既述のように、上記塗布液中では磁性粒子同士が互いに凝集することなく高分散な状態で存在する。従って、かかる塗布液を使用して形成された磁性層中の磁性粒子の表面には、結合剤、極性溶媒、非極性溶媒が存在するため、互いに凝集することがなく、高い効率で強磁性を発揮することが可能となる。また、磁性粒子の再分散等を必要としないため、生産性の高い磁気記録媒体とすることができる。このような工程を経て、磁気記録媒体を作製するのがよい。そして、最終的には、極性溶媒、非極性溶媒が残留することになる。
以下、支持体および磁性層を始めとした各層について説明する。
本発明に用いられる支持体は、特に制限されるべきものではないが、実質的に非磁性で可撓性のものが好ましい。
可撓性支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、ポリベンゾオキサプールなどの公知のフィルムが使用できる。ポリエチレンナフタレート、ポリアミドなどの高強度支持体を用いることが好ましい。
磁性層には、既述の磁性粒子、結合剤、極性溶媒および非極性溶媒の他に、必要に応じて、種々の添加剤等が含有されてなる。
本発明の磁気記録媒体は、既述の磁性層を支持体の片面だけに設けてもよく、両面に設けてもよい。また、潤滑剤の供給源とする観点および支持体の突起を被覆する観点から、支持体と磁性層との間に非磁性層を設けてもよい。
支持体上に非磁性層を形成する場合、当該磁性層(上層または上層磁性層ともいう)は、非磁性層を塗布により形成した後、非磁性層が湿潤状態のうち(W/W)に設けてもよく、または、非磁性層が乾燥した後(W/D)に設けてもよい。生産得率の点から同時、または逐次湿潤塗布が好ましいが、ディスクの場合は乾燥後塗布でも十分に使用できる。
重層構成(非磁性層+磁性層)で、両層を同時に、または、逐次湿潤塗布(W/W)では非磁性層+磁性層が同時に形成できるため、カレンダー工程などの表面処理工程を有効に活用でき、超薄層でも上層の磁性層の表面粗さを良化できる。
磁性層には、カーボンブラックを含有させることが好ましい。当該カーボンブラックとしては、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
カーボンブラックのSBETは5〜500m2/gであることが好ましく、DBP吸油量は10〜400ml/100gであることが好ましい。平均粒子径は5〜300nmであることが好ましく、10〜250nmであることがより好ましく、20〜200nmであるであることがさらに好ましい。pHは2〜10であることが好ましく、含水率は0.1〜10%であることが好ましく、タップ密度は0.1〜1g/mlであることが好ましい。
これらのカーボンブラックは単独、または組合せて使用することができる。カーボンブラックを使用する場合は磁性体(磁性粒子)に対する全質量の0.1〜30%の範囲で使用することが好ましい。カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。従って、本発明に使用されるこれらのカーボンブラックは上層の磁性層、下層の非磁性層でその種類、量、組合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。本発明の磁性層で使用できるカーボンブラックは、例えば、「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
特に電磁変換特性を高めるためには、その粒度分布が狭い方が好ましい。また耐久性を向上させるには必要に応じて粒子サイズの異なる研磨剤を組み合わせたり、単独の研磨剤でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることも可能である。研磨剤のタップ密度は0.3〜2g/mlであることが好ましく、含水率は0.1〜5%であることが好ましく、pHは2〜11であることが好ましく、SBETは1〜30m2/gであることが好ましい。研磨剤の形状は針状、球状、サイコロ状、のいずれでもよいが、形状の一部に角を有するものが研磨性が高く好ましい。
磁性層および後述の非磁性層には、種々の添加剤を含有させることが好ましい。使用される添加剤としては、潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果等の少なくとも1つの効果を有するものが適宜使用される。
これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純物が含まれてもかまわない。これらの不純物は30質量%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。
次に、非磁性層に関する詳細な内容について説明する。非磁性層は実質的に非磁性であればその構成は制限されるべきものではないが、通常、少なくとも樹脂からなり、好ましくは、粉体、例えば、無機粉末もしくは有機粉末が樹脂中に分散されたものが挙げられる。無機粉末は、好ましくは非磁性粉末であるが、非磁性層が実質的に非磁性である範囲で磁性粉末も使用することができる。
無機化合物としては、例えば、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化ケイ素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどを単独または組合せて使用される。特に好ましいのは、粒度分布の小ささ、機能付与の手段が多いこと等から、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、最も好ましいのは、二酸化チタン、α酸化鉄である。
なお、非磁性層は実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、例えば、不純物として、または意図的に少量の磁性体(磁性材料)を含んでいてもよい。「実質的に非磁性」とは残留磁束密度が0.01T以下または保磁力が7.96kA/m(100Oe以下)であることを示し、好ましくは残留磁束密度と保磁力をもたないことを示す。
一般に、コンピュータデータ記録用の磁気テープは、ビデオテープ、オーディオテープに比較して、繰り返し走行性が強く要求される。このような高い走行耐久性を維持させるために、バック層には、カーボンブラックと無機粉末とが含有されていることが好ましい。
また、粗粒子カーボンブラックの具体的な製品名としては、サーマルブラック(270nm)(カーンカルブ社製);RAVEN MTP(275nm)(コロンビアカーボン社製);を挙げることができる。
また、磁性層上に非常に薄い保護膜を形成することで、耐磨耗性を改善し、さらにその保護膜上に潤滑剤を塗布して滑り性を高めることによって、十分な信頼性を有する磁気記録媒体とすることができる。
カーボン保護膜の形成方法として、ハードディスクにおいては、スパッタリング法が一般的であるが、ビデオテープ等の連続成膜を行う必要のある製品ではより成膜速度の高いプラズマCVDを用いる方法が多数提案されている。従って、これらの方法を適用することが好ましい。
中でもプラズマインジェクションCVD(PI−CVD)法は成膜速度が非常に高く、得られるカーボン保護膜も硬質かつピンホールが少ない良質な保護膜が得られると報告されている(例えば、特開昭61−130487号公報、特開昭63−279426号公報、特開平3−113824号公報等)。
そして、カーボン保護膜として、ダイヤモンド状炭素(ダイヤモンドライクカーボン)膜を使用した場合、この構造はラマン光分光分析によって確認することができる。すなわち、ダイヤモンド状炭素膜を測定した場合には、1520〜1560cm-1にピークが検出されることによって確認することができる。炭素膜の構造がダイヤモンド状構造からずれてくるとラマン光分光分析により検出されるピークが上記範囲からずれるとともに、保護膜としての硬度も低下する。
また、この保護膜と基板となる磁性層の密着性を改善するために、あらかじめ磁性層表面を不活性ガスでエッチングしたり、酸素等の反応性ガスプラズマに曝して表面改質する事が好ましい。
パーフルオロポリエーテル基としては、パーフルオロメチレンオキシド重合体、パーフルオロエチレンオキシド重合体、パーフルオロ−n−プロピレンオキシド重合体(CF2CF2CF2O)n、パーフルオロイソプロピレンオキシド重合体(CF(CF3)CF2O)nまたはこれらの共重合体等である。
さらに、この分子量は、500〜5000、好ましくは1000〜3000である。500〜5000とすることで、揮発を抑え、また潤滑性の低下を抑えることができる。また、粘度が高くなるのを防ぎ、スライダーとディスクが吸着しやすなって走行停止やヘッドクラッシュなどを発生するのを防ぐことができる。
このパーフルオロポリエーテルは、具体例的には、アウジモンド社製のFOMBLIN、デュポン社製のKRYTOXなどの商品名で市販されている。
本発明の磁気記録媒体は、以下に説明するような物理特性を有することが好ましい。
本発明になる磁気記録媒体の磁性層の飽和磁束密度は、好ましくは0.1〜0.3Tである。磁性層の保磁力Hcは159kA/m(2000Oe)〜796kA/m(10000Oe)が好ましく、159〜239kA/m(2000〜3000Oe)がより好ましい。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SFDは0.6以下が好ましい。
<<磁性粒子の製造方法>>
本発明の磁気記録媒体の磁性層に含有される磁性粒子は、強磁性規則合金相を形成し得る合金粒子を液相法等により作製し(合金粒子作製工程)、合金粒子作製後(酸化処理が施される場合は、酸化処理工程後)に溶媒中でアニール処理を施して(アニール処理工程)製造される。
以下、上記各工程を説明する。
アニール処理により磁性粒子となる合金粒子は、液相法により製造することができる。液相法としては、従来から知られている種々の方法を適用することができるが、これらに改良を加えた還元法を適用することが好ましく、還元法のなかでも粒径制御が容易な逆ミセル法が特に好ましい。
上記逆ミセル法は、少なくとも、(1)2種の逆ミセル溶液を混合して還元反応を行う還元工程と、(2)還元反応後に所定温度で熟成する熟成工程と、を有する。
以下、各工程について説明する。
まず、界面活性剤を含有する非水溶性有機溶媒と還元剤水溶液とを混合した逆ミセル溶液(I)を調製する。
非水溶性有機溶媒中の界面活性剤量は、20〜200g/リットルであることが好ましい。
アルカンとしては、炭素数7〜12のアルカン類であることが好ましい。具体的には、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等が好ましい。
エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等が好ましい。
アルコールとしては、エトキシエタノール、エトキシプロパノール等が好ましい。
水溶液中の還元剤量は、金属塩1モルに対して、3〜50モルであることが好ましい。
界面活性剤および非水溶性有機溶媒の条件(使用する物質、濃度等)については、逆ミセル溶液(I)の場合と同様である。逆ミセル溶液(I)と同種のものまたは異種のものを使用することができる。
また、逆ミセル溶液(II)の溶液中の水と界面活性剤との質量比も逆ミセル溶液(I)の場合と同様であり、逆ミセル溶液(I)の質量比と同一としてもよく、異なっていてもよい。また、逆ミセル溶液(II)溶液とともに、目的に応じて、上記質量比や使用原料を変えた逆ミセル溶液(II’)、(II’’)等を調製し、これらを併用してもよい。
ここで、当該CuAu型強磁性規則合金としては、FeNi、FePd、FePt、CoPt、CoAuなどが挙げられ、なかでも、FePd、FePt、CoPtであることが好ましい。
Cu3Au型強磁性規則合金としては、Ni3Fe、FePd3、Fe3Pt、FePt3、CoPt3、Ni3Pt、CrPt3、Ni3Mnが挙げられ、なかでも、FePd3、FePt3、CoPt3、Fe3Pd、Fe3Pt、Co3Ptが好ましい。
還元温度を−5〜30℃とすることで、水相が凝結して還元反応が不均一になるといった問題を解消し、凝集または沈殿が起こりやすく系が不安定となる問題をも解消することができる。好ましい還元温度は0〜25℃であり、より好ましくは5〜25℃である。
ここで、前記「一定温度」とは、設定温度をT(℃)とした場合、当該TがT±3℃の範囲にあることをいう。なお、このようにした場合であっても、当該Tの上限および下限は、上記還元温度(−5〜30℃)の範囲にあるものとする。
好ましい攪拌装置は高剪断力を有する攪拌装置であり、詳しくは、攪拌羽根が基本的にタービン型あるいはパドル型の構造を有し、さらに、その羽根の端もしくは、羽根と接する位置に鋭い刃を付けた構造であり、羽根をモーターで回転させる攪拌装置である。具体的には、ディゾルバー(特殊機化工業製)、オムニミキサー(ヤマト科学製)、ホモジナイザー(SMT製)などの装置が有用である。これらの装置を用いることにより、単分散な合金粒子を安定な分散液として合成することができる。
添加量が、0.001〜10モルとすることで、合金粒子の単分散性をより向上させながら、凝集の発生を抑制することができる。
構造式としては、R−NH2、NH2−R−NH2、NH2−R(NH2)−NH2、R−COOH、COOH−R−COOH、COOH−R(COOH)−COOH、R−SO3H、SO3H−R−SO3H、SO3H−R(SO3H)−SO3H、R−SO2H、SO2H−R−SO2H、SO2H−R(SO2H)−SO2Hで表される化合物であり、式中のRは直鎖、分岐または環状の飽和、不飽和の炭化水素である。
エルカ酸やリノール酸など類似の長鎖カルボン酸もオレイン酸同様に(たとえば、8〜22の間の炭素原子を有する長鎖有機酸を単独でまたは組み合わせて用いることができる)用いられる。オレイン酸は(オリーブ油など)容易に入手できる安価な天然資源であるので好ましい。また、オレイン酸から誘導されるオレイルアミンもオレイン酸同様有用な分散剤である。
還元反応終了後、反応後の溶液を熟成温度まで昇温する。
前記熟成温度は、30〜90℃で一定の温度とすることが好ましく、その温度は、前記還元反応の温度より高くする。また、熟成時間は、5〜180分とすることが好ましい。熟成温度および時間が上記範囲にあることで、凝集または沈殿を防ぎ、不完全な反応による組成変化を防ぐことができる。好ましい熟成温度および時間は40〜80℃および10〜150分であり、より好ましい熟成温度および時間は40〜70℃および20〜120分である。
すなわち、卑な金属上でのみ貴な金属の還元が起こり、卑な金属と貴な金属とが別々に析出することが無いため、効率良くCuAu型あるいはCu3Au型強磁性規則合金を形成し得る合金粒子を、高収率で処方組成比どおりに作製することが可能で、所望の組成に制御することができる。また、熟成の際の温度の撹拌速度を適宜調整することで、得られる合金粒子の粒径を所望なものとすることができる。
かかる洗浄・分散工程を設けることで、不純物が除去され、磁気記録媒体の磁性層を塗布により形成する際の塗布性をより向上させることができる。
上記洗浄および分散は、少なくともそれぞれ1回、好ましくは、それぞれ2回以上行う。
水の比率が高いと、界面活性剤が除去されにくくなることがあり、逆に1級アルコールの比率が高いと、凝集を起こしてしまうことがある。
当該合金粒子は、単分散であるため、支持体に塗布しても、これらが凝集することなく均一に分散した状態を保つことができる。従って、アニール処理を施しても、それぞの合金粒子が凝集することがないため、効率良く強磁性化することが可能で、塗布適性に優れる。
合金粒子は、既述の逆ミセル法以外に、一般的な還元法で作製してもよい。
還元法でCuAu型あるいはCu3Au型強磁性規則合金を形成し得る合金粒子を作製するには種々の方法があるが、少なくとも、酸化還元電位が卑な金属(以下、単に「卑な金属」ということがある)と、酸化還元電位が貴な金属(以下、単に「貴な金属」ということがある)と、を有機溶剤もしくは水、または有機溶剤と水との混合溶液中で還元剤等を使用して還元する方法を適用することが好ましい。
卑な金属と貴な金属との還元順序は、特に限定されず、同時に還元してもよい。
なお、CuAu型あるいはCu3Au型強磁性規則合金の例としては、既述の逆ミセル法の場合と同様である。
また、貴な金属を先に析出させて合金粒子を調製する方法としては、特願2001−269255号の段落18〜30等に記載の方法等を適用することができる。
酸化還元電位は系のpHに依存するが、酸化還元電位が−0.2V(vs.N.H.E)より貴な還元剤には、1,2−ヘキサデカンジオール等のアルコール類、グリセリン類、H2、HCHOが好ましく用いられる。
−0.2V(vs.N.H.E)より卑な還元剤にはS2O6 2-、H2PO2 -、BH4 -、N2H5 +、H2PO3 -が好ましく用いる事ができる。
なお、卑な金属の原料として、Feカルボニル等の0価の金属化合物と用いる場合は、特に卑な金属の還元剤は必要ない。
前記ポリマーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリN−ビニル−2ピロリドン(PVP)、ゼラチン等が挙げられる。なかでも、特に好ましくはPVPである。
また、分子量は2万〜6万が好ましく、より好ましくは3万〜5万である。ポリマーの量は生成する合金粒子の質量の0.1〜10倍であることが好ましく、0.1〜5倍がより好ましい。
粒子サイズ(粒径)を大きくする方法としては種晶法が有効である。磁気記録媒体として用いるには合金粒子を最密充填することが記録容量を高くする上で好ましく、そのためには、合金粒子のサイズの標準偏差は10%未満が好ましく、より好ましくは5%以下である。
以上のような還元法により合金粒子含有液が作製される。
酸化処理工程は、合金粒子作製工程とアニール処理工程との間に、適宜設けられる工程で、合金粒子に酸化処理を施す工程である。作製した合金に酸化処理を施すことで、後の溶媒中でアニール処理を施す際の温度を高くすることなく、強磁性を有する磁性粒子を効率よく製造することができる。
これは、以下に説明する現象によると考えられる。
すなわち、まず、合金粒子を酸化することで、その結晶格子上に酸素が進入する。酸素が進入した状態でアニール処理を行うと、熱により酸素が結晶格子上から脱離する。酸素が脱離することで欠陥が生じ、かかる欠陥を通じて合金粒子を構成する金属原子の移動が容易になるため、比較的低温でも相変態が起こりやすくなると考えられる。
例えば、Fe−Pt合金粒子で酸化処理を施さない合金粒子では、Fe原子と、Pt原子やFe原子との結合の存在が確認できる。
これに対し、酸化処理を施した合金粒子では、Fe原子と酸素原子との結合の存在を確認できる。しかし、Pt原子やFe原子との結合はほとんど見えなくなる。このことは、酸素原子によりFe−Pt、Fe−Feの結合が切られていることを意味する。これによりアニール時にPt原子やFe原子が動きやすくなったと考えられる。
そして、当該合金粒子にアニール処理を施した後は、酸素の存在を確認することができず、Fe原子の周りにはPt原子やFe原子との結合の存在が確認できる。
よって、合金粒子の酸化状態を制御することが重要となり、そのためには酸化処理条件を最適なものに設定する必要がある。
また、酸化処理温度は、0〜250℃であり、0〜100℃とすることが好ましく、15〜80℃とすることがさらに好ましい。酸化処理は酸素存在下たとえば空気中で粒子分散液を攪拌して行ってもよいし、これらの気体を液中に送り込みバブリングして行ってもよい。
合金粒子作製工程を経た後、および、酸化処理工程を経た後の合金粒子は不規則相である。既述のように不規則相では強磁性は得られない。そこで、規則相とするためには、熱処理(アニール処理)を施す必要がある。アニール処理は溶媒(有機溶媒)中で行う。これにより分散した状態を維持した磁性粒子を得ることができるからである。また、溶媒中でアニール処理を行うことができれば、再分散を必要とせずに、アニール処理後の溶液の状態で塗布を行うことができる。アニール処理の温度は、150℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることがさらに好ましく、350℃以上であること特に好ましい。アニール処理は、リフラックスにより行うことが好ましい。アニール処理の時間は、30分〜6時間とすることが好ましく、1〜4時間とすることがより好ましい。
有機溶媒は、合金粒子1mgあたり、100〜1000mlとすることが好ましく、200〜500mlでリフラックス処理することがより好ましい。
また、以上のような磁性粒子は、それぞれの磁性粒子の表面に有機物が接触してなる、すなわち、磁性粒子の表面に有機物が存在するため、磁性粒子同士が直接接触することがない。従って、支持体上に塗布した状態でアニール処理を施して作製された磁性粒子よりも、凝集する可能性が低くなるため、磁気記録媒体の磁性層などに使用しても高分散な状態を維持することができる。
上記「有機物」に接触していることの確認は、TEMとEDAXとを使用する等の方法で行うことができる。また、例えば、ウレタン樹脂、塩化ビニルなどのバインダー類が付着ないし吸着している状態となっている。
まず、上記のようにして作製された磁性粒子を含有する磁性粒子含有液に、非極性溶媒を混合して、磁性粒子の分散状態を良好に保つ。その後、結合剤を溶解した極性溶媒を上記混合後の磁性粒子含有液に混合して、磁性層用の塗布液を調製する。当該塗布液に、カーボンブラック、研磨剤等の添加剤を含有させる場合は、塗布液の調製後に添加してもく、極性溶媒や磁性粒子含有液に予め添加しておいてもよい。また、結合剤や極性溶媒、非極性溶媒の添加順序も、磁性粒子の分散性を損なわなければ、特に限定はされないが、既述の順序が好ましい。
磁性層用もしくは非磁性層用の塗布液を作製する際に、分散剤を溶解させるために、オープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダ等を使用した混練処理を施してもよい。また、磁性粒子や非磁性粉体を分散させるため、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズ等の分散メディアを使用してもよい。
ここで、非磁性層と磁性層とを形成する重層構成の磁気記録媒体とする場合、以下のような方式を用いることが好ましい。
線圧力は好ましくは200kg/cm(196kN/m)以上、さらに好ましくは300kg/cm(294kN/m)以上である。
以上のようにして、本発明の磁気記録媒体が製造される。
(FePtCu合金粒子の作製)
高純度N2ガス中で下記の操作を行った。
三シュウ酸三アンモニウム鉄(Fe(NH4)3(C2O4)3)(和光純薬製)0.35gと塩化白金酸カリウム(K2PtCl4)(和光純薬製)0.35gとをH2O(脱酸素処理済み)24mlに溶解した金属塩水溶液に、エーロゾルOT10.8gをデカン80mlに溶解したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(II)を調製した。
合金粒子が4質量%となるように真空脱気を行って、調製した合金粒子含有液を濃縮した。濃縮後、雰囲気を常圧にし合金粒子を酸化するため、酸素ガスを合金粒子含有液中に供給した。なお、酸素ガスの供給温度および時間は、25℃および1分間とした。
合金粒子0.4mgを含む酸化処理を施した合金粒子含有液(10ml)を、下記表1記載の溶媒(100ml)中で360℃で90分間リフラックス処理を行い、磁性粒子を作製した。この後、5000rpmで遠心分離処理を行い、磁性粒子を分離した。
作製した磁性粒子含有液を磁性粒子が20重量%となるように真空脱気を行った。その後、トルエンを添加して磁性粒子を10重量%含有する混合液を調製した。一方、ウレタン樹脂をシクロヘキサノンに溶解してウレタン樹脂の含有量が1重量%の溶液を調製した。そして、上記混合液1mlに対しこの溶液を108.8μl加えた。この液は安定に分散した状態であった。そしてこの液を塗布液とした。塗布液中の磁性粒子、結合剤、極性溶媒、非極性溶媒の含有量は、それぞれ、9質量%、81質量%、1質量%、9質量%であった。
ガラス製の支持体(厚さ:1mm)上に、塗布液をスピンコータで塗布し、25℃(室温)で乾燥して磁性層を形成した。このときの磁性層の厚さは50nmであった。塗布後150℃で5分間乾燥した。
磁性層表面に400WのRfスパッタでカーボン保護層(10nm)を形成して、磁気記録媒体を作製した。
下記のバーニッシュヘッドを用い、磁気記録媒体を7200rpmで回転させながらバーニッシュ処理を行った。
・バーニッシュヘッド仕様(グライドシグナス社)…スライダー:24pads、荷重:5g、サスペンション:Type 2030、Z−height:29mil(0.7366mm)。
媒体表面をフロリナートFC72(住友スリーエム社製)で洗浄後乾燥した。
フォンブリンZゾル(アウジモント社製)を溶媒フロリナートFC72で1質量%とした後、磁気記録媒体をディップコータで10mm/minで引き上げながら塗布した。
アニール処理における有機溶媒を、トリエタノールアミンからトリオクチルアミンへ変更した以外は、実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製した。
アニ―ル処理における有機溶媒を、トリエタノールアミンから、テトラデカンとエチレングリコールとの質量比を1:1とした溶液に変更し、リフラックス温度を250℃とした以外は、実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製した。
アニール処理を施さず、非極性溶媒を含有しなかった以外は、実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製した。なお、作製後の磁気記録媒体の磁性層を観察したところ、磁性粒子の凝集が一部に見られた。
なお、磁気特性の評価(保磁力の測定)は、東英工業製の高感度磁化ベクトル測定機と同社製DATA処理装置を使用し、印加磁場790kA/m(10kOe)の条件で行った。
結晶構造の解析は、理学電機製のX線回折装置を用い、管電圧50kV、管電流300mAとし、線源にCuKα線を使用し、ゴニオメーターを用いた粉末法で行った。結果を下記表1に示す。
これは、当該アニール処理により、合金粒子が効率よく相変態し、強磁性を有する磁性粒子となったためと考えられる。
支持体をポリエチレンナフタレート製の支持体(厚さ:53μm)とした以外は実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製し、電磁変換特性の評価を行ったところ、原理的に記録再生できることが確認された。
Claims (3)
- CuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金相を有する磁性粒子を含有する磁性層が、支持体上に設けられてなる磁気記録媒体であって、
前記磁性層が、CuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金相を形成し得る合金粒子を作製した後、前記合金粒子を溶媒中に含有した状態でアニール処理を施して磁性粒子とし、当該磁性粒子と結合剤と極性溶媒と非極性溶媒とを含有する塗布液を支持体上に塗布してなることを特徴とする磁気記録媒体。 - CuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金相を有する磁性粒子を含有する磁性層が、支持体上に設けられてなる磁気記録媒体であって、
さらに、結合剤と、極性溶媒と、非極性溶媒とを、前記磁性層中に含有することを特徴とする磁気記録媒体。 - 前記支持体と前記磁性層との間に、非磁性層が設けられてなることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
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