JP2005190557A - 磁気記録媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 磁性層中の磁性粒子が互いに凝集しにくく、生産性に優れ、強磁性を示す磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】 強磁性規則合金相を有する磁性粒子を含有する磁性層が、支持体上に設けられてなる磁気記録媒体であって、
前記磁性層が、CuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金相を形成し得る合金粒子を作製した後、前記合金粒子を溶媒中に含有した状態でアニール処理を施して磁性粒子とし、当該磁性粒子と結合剤と極性溶媒と非極性溶媒とを含有する塗布液を支持体上に塗布してなることを特徴とする磁気記録媒体である。
また、強磁性規則合金相を有する磁性粒子を含有する磁性層が、支持体上に設けられてなる磁気記録媒体であって、
さらに、結合剤と、極性溶媒に有機物と、非極性溶媒とを、前記磁性層中に含有することを特徴とする磁気記録媒体である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ビデオテープ、コンピュータテープ、ディスク等の磁気記録媒体に関する。
磁性層に含有される磁性粒子のサイズを小さくすることは、磁気記録密度を高くする上で重要である。例えば、ビデオテープ、コンピュータテープ、ディスク等として広く用いられている磁気記録媒体では、強磁性体の質量が同じ場合、粒子サイズを小さくしていった方がノイズは下がる。
磁気記録密度の向上に有望な磁性粒子の素材としては、CuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金がある(例えば、特許文献1参照)。前記強磁性規則合金は規則化時に発生する歪みのために結晶磁気異方性が大きく、磁性粒子のサイズを小さくしても強磁性を示すことが知られている。
ここで、CuAu型またはCu3Au型合金を形成し得る合金粒子は、面芯立方晶となる。面芯立方晶は通常、軟磁性または常磁性を示す。軟磁性または常磁性では記録媒体用には適していない。磁気記録媒体に必要な95.5kA/m以上の保磁力を有する強磁性規則合金を得るには、500℃以上で熱処理をする必要があった。このため工業的に使用できる支持体が無機物に限られる物となっていた。
また、合金粒子を液相法で作製した場合、合金粒子から磁性粒子とする際に、当該磁性粒子を構成する金属が酸化されないように、Ar、N2等の非酸化性雰囲気で、気相中でのアニール処理を行う必要があった。しかし、本発明者らの実験によれば、アニール処理を施して合金相を規則化しようとすると、変態温度が高くなることがあり、基板の耐熱性が問題となったり、磁性粒子同士が凝集しやすくなって分散性が低下する問題が生じたりすることがわかった。
特開2003−73705号公報
以上から、本発明は、上記従来の課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、磁性層中の磁性粒子が互いに凝集しにくく、生産性に優れ、強磁性を示す磁気記録媒体を提供することを目的とする。
上記の目的を達成すべく鋭意検討の結果、本発明者らは、下記本発明により当該目的を達成できることを見出した。
すなわち、本発明は、CuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金相を有する磁性粒子を含有する磁性層が、支持体上に設けられてなる磁気記録媒体であって、
前記磁性層が、CuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金相を形成し得る合金粒子を作製した後、前記合金粒子を溶媒中に含有した状態でアニール処理を施して磁性粒子とし、当該磁性粒子と結合剤と極性溶媒と非極性溶媒とを含有する塗布液を支持体上に塗布してなることを特徴とする磁気記録媒体である。
また、本発明は、CuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金相を有する磁性粒子を含有する磁性層が、支持体上に設けられてなる磁気記録媒体であって、
さらに、結合剤と、極性溶媒と、非極性溶媒とを、前記磁性層中に含有することを特徴とする磁気記録媒体である。
上記本発明の磁気記録媒体においては、支持体と磁性層との間に、非磁性層が設けられてなることが好ましい。
本発明によれば、磁性層中の磁性粒子が互いに凝集しにくく、生産性に優れ、強磁性を示す磁気記録媒体を提供することができる。
〔1〕磁気記録媒体:
本発明の磁気記録媒体は、CuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金相を有する磁性粒子を含有する磁性層が支持体上に設けられてなる。
そして、その磁性粒子は、CuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金相(以下、単に「強磁性規則合金相」ということがある)を形成し得る合金粒子を作製(合金粒子作製工程)した後、前記合金粒子を溶媒(有機溶媒)中に含有した状態でアニール処理を施して(アニール処理工程)作製される。この磁性粒子を含有する溶液に、結合剤、極性溶媒および非極性溶媒を添加して塗布液を調製し、この塗布液を支持体上に塗布して(塗布工程)、磁性層が形成されて本発明の磁気記録媒体が製造される。
なお、磁性粒子の製造方法(上記合金粒子作製工程およびアニール処理工程等)を含む磁気記録媒体の製造方法の詳細については、後述する。
アニール処理後の磁性粒子は、有機溶媒中に分散した状態で存在する。この磁性粒子を用いて磁性層を形成する場合、アニール処理後の磁性粒子含有液に結合剤を添加して塗布する必要がある。しかし、ウレタン樹脂等の結合剤は、極性溶媒を用いなければ溶解することができない。そこで、磁性粒子含有液に極性溶媒を添加し、結合剤を溶解することが考えられるが、極性溶媒を加えると磁性粒子の凝集が生じ、機械的に再分散を行う必要がある。磁性粒子はその粒径が非常に微小であるため、機械的な再分散では、充分な分散性が得られない。
上記現象は、本発明者らのこれまでの実験からも明らかである。例えば、磁性粒子含有液(磁性粒子:20質量%)に非極性溶媒(トルエン)を混合して、磁性粒子の含有量を10質量%とした場合、磁性粒子は、良好な分散状態を保っている。これに対し、磁性粒子含有液(磁性粒子:20質量%)に極性溶媒(シクロヘキサノン)を混合して、磁性粒子の含有量を10質量%とした場合では、磁性粒子がやや凝集していることが確認できる。
一方、混合した後の両溶液に、結合剤(ウレタン樹脂)を混合すると、非極性溶媒を含有する溶液では、結合剤は溶解しないに対し、極性溶媒を含有する溶液では、結合剤が溶解するのを確認できる。
そこで、本発明では、磁性粒子含有液中に、非極性溶媒を添加し、その後、極性溶媒および結合剤を添加して塗布液を調製している。非極性溶媒を含有させることで、極性溶媒の価電で粒子の安定性を乱す効果を緩和する作用が生じ、磁性粒子の凝集が防がれると考えられる。
非極性溶媒は、磁性粒子の凝集を防ぐために含有させるものであるから、極性溶媒より先に磁性粒子含有液に添加することが好ましいが、極性溶媒と混合した状態、または、極性溶媒および結合剤と混合した状態で磁性粒子含有液に添加してもよい。
非極性溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、オクタン、デカン、ヘキサン、ノナン等を少なくとも1種使用することが好ましい。
非極性溶媒は、塗布液とする前の状態で20〜95質量%含有されていることが好ましく、30〜85質量%含有されていることがより好ましい。
極性溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類;グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル系;シクロヘキサノン等を少なくとも1種使用することが好ましい。
極性溶媒は、塗布液とする前の状態で、20〜95質量%含有されていることが好ましく、30〜85質量%含有されていることがより好ましい。
結合剤の溶解性と磁性粒子の凝固防止との両立を図る観点から、極性溶媒と非極性溶媒との質量比(極性溶媒/非極性溶媒)は、1/9〜9/1であることが好ましく、2/8〜8/2であることがより好ましい。
結合剤としては、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物を使用することができる。
熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1,000〜200,000(好ましくは10,000〜100,000)、重合度が約50〜1000のものを使用することが好ましい。
このような熱可塑性樹脂の例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル、等を構成単位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。
また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシーポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーとの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートとの混合物等が挙げられる。
これらの樹脂については、朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬化型樹脂を各層に使用することも可能である。これらの例とその製造方法については、特開昭62−256219号公報に詳細に記載されている。
以上の樹脂は単独または組合せて使用できるが、好ましいものとしては、ポリウレタン単独の場合や、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコール共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体、から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂との組合せ、または、上記した共重合体等にポリイソシアネートを組み合わせたものが挙げられる。
ポリウレタン樹脂の構造は、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタン等が使用できる。
上記したすべての結合剤について、より優れた分散性と耐久性とを得るためには必要に応じ、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2、−O−P=O(OM)2(以上につき「M」は水素原子、またはアルカリ金属塩基を表す)、OH、NR2、N+3(以上につき「R」は炭化水素基を表す)やエポキシ基、SH、CN、等から選ばれる少なくとも1以上の極性基を共重合または付加反応で導入したものを用いることが好ましい。なかでも、−SO3Mが検討した中では好ましかった。このような極性基の量は10-1〜10-8モル/gであることが好ましく、10-2〜10-6モル/gであることがより好ましい。
本発明に用いられるこれらの結合剤の具体的な例(製品名)としては、ユニオンカーバイト社製VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、VYES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、PKHH、PKHJ、PKHC、PKFE;日信化学工業社製MPR−TA、MPR−TA5、MPR−TAL、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、MPR−TM、MPR−TAO;電気化学社製1000W、DX80、DX81、DX82、DX83、100FD;日本ゼオン社製MR−104、MR−105、MR110、MR100、MR555、400X−110A;日本ポリウレタン社製ニッポランN2301、N2302、N2304;大日本インキ社製パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バーノックD−400、D−210−80、クリスボン6109、7209;東洋紡社製バイロンUR8200、UR8300、UR8700、RV530、RV280;大日精化社製ダイフェラミン4020、5020、5100、5300、9020、9022、7020;三菱化成社製MX5004;三洋化成社製サンプレンSP−150;旭化成社製サランF310、F210;等が挙げられる。
結合剤は、磁性層だけでなく非磁性層が形成される場合には、当該非磁性層にも含有される。非磁性層および磁性層に用いられる結合剤は、非磁性層の場合は非磁性粉末の全質量、磁性層の場合は強磁性規則合金(磁性粒子)の全質量に対し、2〜50質量%の範囲で使用することが好ましく、10〜30質量%の範囲で使用することがより好ましい。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は5〜30質量%、ポリウレタン樹脂を用いる場合は2〜20質量%、ポリイソシアネートは2〜20質量%の範囲でこれらを組み合わせて用いることが好ましいが、例えば、微量の脱塩素によりヘッド腐食が起こる場合は、ポリウレタン樹脂のみまたはポリウレタン樹脂とイソシアネートのみを使用することも可能である。
また、ポリウレタン樹脂を用いる場合は、そのガラス転移温度が−50〜150℃であることが好ましく、0℃〜100℃であることがより好ましく、30℃〜90℃であることがさらに好ましい。また、破断伸びは100〜2000%であることが好ましく、破断応力は0.05〜10kg/mm2(0.49〜98MPa)であることが好ましく、降伏点は0.05〜10kg/mm2(0.49〜98MPa)であることが好ましい。
本発明の磁気記録媒体の磁性層は単層でもかまわないが、好ましくは2層以上から構成される。従って、結合剤量、結合剤中に含有される塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート、あるいはそれ以外の樹脂の量、磁性層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは先に述べた樹脂の物理特性などを必要に応じ各層で変えることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきであり、多層磁性層に関する公知技術を適用できる。
例えば、各層で結合剤量を変更する場合、磁性層表面の擦傷を減らすためには磁性層の結合剤量を増量することが有効であり、ヘッドに対するヘッドタッチを良好にするためには、非磁性層の結合剤量を多くして柔軟性を持たせることができる。
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1、5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を使用することができる。
これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートMTL;武田薬品社製タケネートD−102、タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202;住友バイエル社製デスモジュールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL;等があり、これらを単独または硬化反応性の差を利用して2種以上の組合せで各層とも用いることができる。
磁性粒子含有液に、結合剤、極性溶媒および非極性溶媒を添加して調製した塗布液は、後述する手段により支持体上に塗布(塗布工程)し、適宜乾燥等を行って磁性層を形成することで、本発明の磁気記録媒体が製造される。
以上のようにして作製された本発明の磁気記録媒体では、既述の塗布液を用いて磁性層が形成されるため、当該磁性層には、磁性粒子と、結合剤と、極性溶媒と、非極性溶媒と、が含有されている。
既述のように、上記塗布液中では磁性粒子同士が互いに凝集することなく高分散な状態で存在する。従って、かかる塗布液を使用して形成された磁性層中の磁性粒子の表面には、結合剤、極性溶媒、非極性溶媒が存在するため、互いに凝集することがなく、高い効率で強磁性を発揮することが可能となる。また、磁性粒子の再分散等を必要としないため、生産性の高い磁気記録媒体とすることができる。このような工程を経て、磁気記録媒体を作製するのがよい。そして、最終的には、極性溶媒、非極性溶媒が残留することになる。
なお、磁性粒子の存在は、X線回折法等により確認できるが、結合剤、極性溶媒、非極性溶媒は、磁気記録媒体に残留する溶媒をガスクロマトグラフィー等で測定することで評価・確認できる。
本発明の磁気記録媒体は、支持体上に、磁性粒子、結合剤、極性溶媒および非極性溶媒を含有する磁性層が形成されていれば、その構成は特に限定されるものではない。例えば、支持体上に、非磁性層、磁性層を順次形成した構成とし、適宜、バック層や下塗層等を形成した構成とすることができる。また、磁性層等には、上記4つの成分の他に、種々の添加剤を含有させることができる。
以下、支持体および磁性層を始めとした各層について説明する。
<支持体>
本発明に用いられる支持体は、特に制限されるべきものではないが、実質的に非磁性で可撓性のものが好ましい。
可撓性支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、ポリベンゾオキサプールなどの公知のフィルムが使用できる。ポリエチレンナフタレート、ポリアミドなどの高強度支持体を用いることが好ましい。
また、必要に応じて、支持体の磁性層とバック層を塗布する面の表面粗さを変えるため特開平3−224127号公報に記載されるような積層タイプの支持体を用いることもできる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理等を施しておいてもよい。また、本発明の支持体としてアルミニウムまたはガラス基板を適用することも可能である。
支持体としてWYKO社製TOPO−3Dで測定した中心面平均表面粗さ(Ra)は、通常、8.0nm以下であることが好ましく、4.0nm以下であることがより好ましく、2.0nm以下であることさらにが好ましい。これらの支持体は単に中心面平均表面粗さが小さいだけではなく、0.5μm以上の粗大突起がないことが好ましい。
また、表面の粗さ形状は必要に応じて支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由にコントロールされるものである。これらのフィラーの一例としては、Ca、Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の無機微粒子、アクリル系などの有機微粉末が挙げられる。支持体の最大高さRmaxは1μm以下であることが好ましく、十点平均粗さRzは0.5μm以下であることが好ましく、中心面山高さRpは0.5μm以下であることが好ましく、中心面谷深さRvは0.5μm以下であることが好ましく、中心面面積率Srは10%〜90%であることが好ましく、平均波長λaは5μm〜300μmが好ましい。所望の電磁変換特性と耐久性を得るため、これら支持体の表面突起分布をフィラーにより任意にコントロールできるものであり、0.01μmから1μmの大きさのもの各々を0.1mm2あたり0個から2000個の範囲で制御することができる。
また、支持体のF−5値は好ましくは5〜50kg/mm2(49〜490MPa)である。さらに、支持体の100℃30分での熱収縮率は好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下、80℃30分での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。破断強度は5〜100kg/mm2(49〜980MPa)であることが好ましく、弾性率は100〜2000kg/mm2(0.98〜19.6GPa)が好ましい。温度膨張係数は10-4〜10-8℃であることが好ましく、10-5〜10-6/℃であることがより好ましい。湿度膨張係数は10-4/RH%以下であることが好ましく、10-5/RH%以下であることがより好ましい。これらの熱特性、寸法特性、機械強度特性は支持体の面内各方向に対し10%以内の差でほぼ等しいことが好ましい。
支持体の厚みは、2〜100μmであることが好ましく、2〜80μmであることがより好ましい。コンピューターテープの場合の支持体は、3.0〜6.5μmであることが好ましく、3.0〜6.0μmであることがより好ましく、4.0〜5.5μmであることがさらに好ましい。
<磁性層>
磁性層には、既述の磁性粒子、結合剤、極性溶媒および非極性溶媒の他に、必要に応じて、種々の添加剤等が含有されてなる。
本発明の磁気記録媒体は、既述の磁性層を支持体の片面だけに設けてもよく、両面に設けてもよい。また、潤滑剤の供給源とする観点および支持体の突起を被覆する観点から、支持体と磁性層との間に非磁性層を設けてもよい。
支持体上に非磁性層を形成する場合、当該磁性層(上層または上層磁性層ともいう)は、非磁性層を塗布により形成した後、非磁性層が湿潤状態のうち(W/W)に設けてもよく、または、非磁性層が乾燥した後(W/D)に設けてもよい。生産得率の点から同時、または逐次湿潤塗布が好ましいが、ディスクの場合は乾燥後塗布でも十分に使用できる。
重層構成(非磁性層+磁性層)で、両層を同時に、または、逐次湿潤塗布(W/W)では非磁性層+磁性層が同時に形成できるため、カレンダー工程などの表面処理工程を有効に活用でき、超薄層でも上層の磁性層の表面粗さを良化できる。
磁性層の厚みは、0.005μm〜0.20μmであることが好ましく、0.05〜0.15μmであることがよりに好ましい。0.005μm〜0.20μmとすることで、再生出力の低下、オーバーライト特性および分解能の劣化を防ぐことができる。
(カーボンブラック、研磨剤)
磁性層には、カーボンブラックを含有させることが好ましい。当該カーボンブラックとしては、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
カーボンブラックのSBETは5〜500m2/gであることが好ましく、DBP吸油量は10〜400ml/100gであることが好ましい。平均粒子径は5〜300nmであることが好ましく、10〜250nmであることがより好ましく、20〜200nmであるであることがさらに好ましい。pHは2〜10であることが好ましく、含水率は0.1〜10%であることが好ましく、タップ密度は0.1〜1g/mlであることが好ましい。
上記カーボンブラックの具体的な例としては、キャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、905、800、700、VULCAN XC−72;旭カーボン社製#80、#60、#55、#50、#35;三菱化成工業社製#2400B、#2300、#900、#1000、#30、#40、#10B;コロンビアンカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN150、50、40、15、RAVEN−MT−P;日本EC社製ケッチェンブラックEC;等が挙げられる。
カーボンブラックは、分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用してもよい。また、その表面の一部をグラファイト化したものを使用してもよい。さらに、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。
これらのカーボンブラックは単独、または組合せて使用することができる。カーボンブラックを使用する場合は磁性体(磁性粒子)に対する全質量の0.1〜30%の範囲で使用することが好ましい。カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。従って、本発明に使用されるこれらのカーボンブラックは上層の磁性層、下層の非磁性層でその種類、量、組合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。本発明の磁性層で使用できるカーボンブラックは、例えば、「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
また、磁性層には研磨剤を含有させることが好ましい。研磨剤としては、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化ケイ素、炭化ケイ素チタンカーバイド、酸化チタン、二酸化ケイ素、窒化ホウ素、等主としてモース硬度6以上の公知の材料が単独または組合せで使用される。また、これらの研磨剤どうしの複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。これらの研磨剤には主成分以外の化合物または元素が含まれる場合もあるが主成分が90質量%以上であれば効果にかわりはない。
これら研磨剤の粒子サイズは0.01〜2μmであることが好ましく、0.05〜1.0μmであることがより好ましく、0.05〜0.5μmであることがさらに好ましい。
特に電磁変換特性を高めるためには、その粒度分布が狭い方が好ましい。また耐久性を向上させるには必要に応じて粒子サイズの異なる研磨剤を組み合わせたり、単独の研磨剤でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることも可能である。研磨剤のタップ密度は0.3〜2g/mlであることが好ましく、含水率は0.1〜5%であることが好ましく、pHは2〜11であることが好ましく、SBETは1〜30m2/gであることが好ましい。研磨剤の形状は針状、球状、サイコロ状、のいずれでもよいが、形状の一部に角を有するものが研磨性が高く好ましい。
具体的には、住友化学社製AKP−12、AKP−15、AKP−20、AKP−30、AKP−50、HIT20、HIT−30、HIT−55、HIT60A、HIT70、HIT80、HIT100;レイノルズ社製ERC−DBM、HP−DBM、HPS−DBM;不二見研磨剤社製WA10000;上村工業社製UB20;日本化学工業社製G−5、クロメックスU2、クロメックスU1;戸田工業社製TF100、TF140;イビデン社製ベータランダムウルトラファイン;昭和鉱業社製B−3;等が挙げられる。これらの研磨剤は必要に応じ非磁性層に添加することもできる。非磁性層に添加することで表面形状を制御したり、研磨剤の突出状態を制御したりすることができる。これら磁性層、非磁性層の添加する研磨剤の粒径、量はむろん最適値に設定すべきものである。
(添加剤)
磁性層および後述の非磁性層には、種々の添加剤を含有させることが好ましい。使用される添加剤としては、潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果等の少なくとも1つの効果を有するものが適宜使用される。
例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステングラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基をもつシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、αナフチル燐酸、フェニル燐酸、ジフェニル燐酸、p−エチルベンゼンホスホン酸、フェニルホスフィン酸、アミノキノン類、各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、フッ素含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また、分岐していてもよい)、および、これらの金属塩(Li、Na、K、Cuなど)または、炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもよい)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもよい)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもよい)とからなるモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステルまたはトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミン、等が使用できる。
より具体的には、脂肪酸では、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、などが挙げられる。エステル類ではブチルステアレート、オクチルステアレート、アミルステアレート、イソオクチルステアレート、ブチルミリステート、オクチルミリステート、ブトキシエチルステアレート、ブトキシジエチルステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、2−オクチルドデシルパルミテート、2−ヘキシルドデシルパルミテート、イソヘキサデシルステアレート、オレイルオレエート、ドデシルステアレート、トリデシルステアレート、エルカ酸オレイル、ネオペンチルグリコールジデカノエート、エチレングリコールジオレイル;アルコール類ではオレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、等が挙げられる。
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリンドール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体、等のノニオン界面活性剤;環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウムまたはスルホニウム類、等のカチオン系界面活性剤;カルボン酸、スルフォン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基、などの酸性基を含むアニオン界面活性剤;アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸または燐酸エステル類、アルキルベダイン型、等の両性界面活性剤;等も使用できる。
これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純物が含まれてもかまわない。これらの不純物は30質量%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。
これらの潤滑剤および界面活性剤は個々に異なる物理的作用を有するものであり、その種類、量、および相乗的効果を生み出す潤滑剤または界面活性剤の併用比率は目的に応じ最適に定められるべきものである。当該目的としては、(1)非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、(2)沸点、融点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、(3)界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、(4)潤滑剤の添加量を中間層で多くして潤滑効果を向上させる、等考えられ、無論ここに示した例のみに限られるものではない。一般には、潤滑剤の総量としては、磁性体(磁性粒子)または非磁性粉末に対し、0.1〜50質量%とすることが好ましく、2〜25質量%とすることがより好ましい。
また、本発明で用いられる添加剤のすべて、または、その一部は、磁性塗料製造および非磁性塗料製造のどの工程で添加してもかまわない。例えば、混練工程前に磁性体と混合する場合、磁性体と結合剤と溶剤とによる混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。
また、目的に応じて磁性層を塗布した後、同時または逐次塗布で、添加剤の一部または全部を塗布することにより目的が達成される場合がある。さらに、目的によってはカレンダー処理を施した後、またはスリット終了後、磁性層表面に潤滑剤を塗布することもできる。
<非磁性層>
次に、非磁性層に関する詳細な内容について説明する。非磁性層は実質的に非磁性であればその構成は制限されるべきものではないが、通常、少なくとも樹脂からなり、好ましくは、粉体、例えば、無機粉末もしくは有機粉末が樹脂中に分散されたものが挙げられる。無機粉末は、好ましくは非磁性粉末であるが、非磁性層が実質的に非磁性である範囲で磁性粉末も使用することができる。
これら非磁性粉末の粒子サイズ(粒径)は、0.005〜2μmの範囲が好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましい非磁性粉末の粒子サイズは、0.01μm〜0.2μmの範囲である。特に、非磁性粉末が粒状金属酸化物である場合は、平均粒子径は0.08μm以下が好ましい。針状金属酸化物である場合は、長軸長が0.3μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましい。タップ密度は0.05〜2g/mlであることが好ましく、0.2〜1.5g/mlであることがより好ましい。非磁性粉末の含水率は0.1〜5質量%であることが好ましく、0.2〜3質量%であることがより好ましく、0.3〜1.5質量%であることがさらに好ましい。非磁性粉末のpHは2〜11であることが好ましく、pHは5.5〜10であることが特に好ましい。
非磁性粉末のSBET(比表面積)は1〜100m2/gであることが好ましく、5〜80m2/gであることがより好ましく、10〜70m2/gであることがさらに好ましい。非磁性粉末の結晶子サイズ(結晶子径)は0.004μm〜1μmが好ましく、0.04μm〜0.1μmが更に好ましい。DBP(ジブチルフタレート)を用いた吸油量は5〜100ml/100gであることが好ましく、10〜80ml/100gであることがより好ましく、20〜60ml/100gであることがさらに好ましい。非磁性粉末の比重は1〜12であることが好ましく、3〜6であることがより好ましい。形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでも良い。モース硬度は4以上10以下のものが好ましい。非磁性粉末のSA(ステアリン酸)吸着量は1〜20μmol/m2であることが好ましく、2〜15μmol/m2であることがより好ましく、3〜8μmol/m2であることがさらに好ましい。pHは3〜6の間が好ましい。
非磁性粉末としては、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の無機化合物から選択することができる。
無機化合物としては、例えば、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化ケイ素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどを単独または組合せて使用される。特に好ましいのは、粒度分布の小ささ、機能付与の手段が多いこと等から、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、最も好ましいのは、二酸化チタン、α酸化鉄である。
非磁性粉末の具体的な例(製品名)としては、昭和電工製ナノタイト;住友化学製HIT−100、ZA−G1;戸田工業社製αへマタイトDPN−250、DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、DPN−500BX、DBN−SA1、DBN−SA3;石原産業製酸化チタンTTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、αへマタイトE270、E271、E300、E303;チタン工業製酸化チタンSTT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、αへマタイトα−40;テイカ製MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−100F、MT−500HD;堺化学製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、ST−M;同和鉱業製DEFIC−Y、DEFIC−R;日本アエロジル製AS2BM、TiO2P25;宇部興産製100A、500A;が挙げられる。特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンとα−酸化鉄である。
これらの非磁性粉末の表面には、表面処理を施すことによりAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、ZnO、Y23のいずれか1以上を存在させることが好ましい。分散性を考慮すると、Al23、SiO2、TiO2、ZrO2であることが好ましいが、更に好ましいのはAl23、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用しても良いし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナを存在させた後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
非磁性層中にカーボンブラックを混合させて表面電気抵抗Rsを下げること、光透過率を小さくすることができるとともに、所望のマイクロビッカース硬度を得る事ができる。また、非磁性層にカーボンブラックを含ませることで潤滑剤貯蔵の効果をもたらすことも可能である。カーボンブラックの種類はゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。非磁性層のカーボンブラックは所望する効果によって、以下のような特性を最適化すべきであり、併用することでより効果が得られることがある。
非磁性層のカーボンブラックのSBETは100〜500m2/gであることが好ましく、150〜400m2/gであることがより好ましい。DBP吸油量は20〜400ml/100gであることが好ましく、30〜400ml/100gであることがより好ましい。カーボンブラックの粒子径は5nm〜80nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましく、10〜40nmであることがさらに好ましい。カーボンブラックのpHは2〜10であることが好ましく、含水率は0.1〜10%であることが好ましく、タップ密度は0.1〜1g/mlであることが好ましい。
本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例(製品名)としては、キャボット社製BLACKPEARLS2000、1300、1000、900、800、880、700、VULCAN XC−72;三菱化成工業社製#3050B、#3150B、#3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B、#970B、#850B、MA−600、MA−230、#4000、#4010;コロンビアンカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN 8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250;アクゾー社製ケッチェンブラックEC;等が挙げられる。
カーボンブラックは、分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用してもよく、またその表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。さらに、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもよい。これらのカーボンブラックは上記無機粉末に対して50質量%を越えない範囲で、かつ、非磁性層の総質量の40%を越えない範囲で使用できる。これらのカーボンブラックは単独、または組合せて使用することができる。本発明で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
また、非磁性層には有機質粉末を目的に応じて、添加することもできる。例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は、特開昭62−18564号公報、特開昭60−255827号公報に記載されているような方法を使用できる。
非磁性層の厚みは、0.2μm〜5.0μmとすることが好ましく、0.3μm〜3.0μmとすることがより好ましく、1.0μm〜2.5μmとすることがさらに好ましい。
なお、非磁性層は実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、例えば、不純物として、または意図的に少量の磁性体(磁性材料)を含んでいてもよい。「実質的に非磁性」とは残留磁束密度が0.01T以下または保磁力が7.96kA/m(100Oe以下)であることを示し、好ましくは残留磁束密度と保磁力をもたないことを示す。
非磁性層の結合剤樹脂、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は、磁性層のそれが適用できる。特に、結合剤樹脂量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
支持体と非磁性層または磁性層との間には密着性向上のための下塗層を設けてもかまわない。下塗層の厚みは0.01〜0.5μmが好ましく、0.02〜0.5μmであることがより好ましい。本発明の磁気記録媒体は、支持体両面に非磁性層と磁性層とを設けてなるディスク状媒体であっても、片面のみに設けたテープ状媒体またはディスク状媒体でもよい。この場合、帯電防止やカール補正等の効果を出すために非磁性層、磁性層側と反対側にバック層を設けてもかまわない。バック層の厚みは、0.1〜4μmであることが好ましく、0.3〜2.0μmであることがより好ましい。これらの下塗層、後述するバック層には公知の材料が使用できる。
(バック層)
一般に、コンピュータデータ記録用の磁気テープは、ビデオテープ、オーディオテープに比較して、繰り返し走行性が強く要求される。このような高い走行耐久性を維持させるために、バック層には、カーボンブラックと無機粉末とが含有されていることが好ましい。
カーボンブラックは、平均粒子径の異なる二種類のものを組み合わせて使用することが好ましい。この場合、平均粒子径が10〜20nmの微粒子状カーボンブラックと平均粒子径が230〜300nmの粗粒子状カーボンブラックを組み合わせて使用することが好ましい。
一般に、上記のような微粒子状のカーボンブラックの添加により、バック層の表面電気抵抗を低く設定でき、また光透過率も低く設定できる。磁気記録装置によっては、テープの光透過率を利用し、動作の信号に使用しているものが多くあるため、このような場合には特に微粒子状のカーボンブラックの添加は有効になる。また微粒子状カーボンブラックは一般に液体潤滑剤の保持力に優れ、潤滑剤併用時、摩擦係数の低減化に寄与する。
一方、体積平均粒子径が230〜300nmの粗粒子状カーボンブラックは、固体潤滑剤としての機能を有しており、また、バック層の表面に微小突起を形成し、接触面積を低減化して、摩擦係数の低減化に寄与する。しかし、粗粒子状カーボンブラックを単独で用いると、過酷な走行系では、テープ摺動により、バック層からの脱落が生じ易くなり、エラー比率の増大につながる欠点を有している。
微粒子状カーボンブラックの具体的な製品名としては、以下のものを挙げることができる。カッコ内は体積平均粒子径を示す。すなわち、RAVEN2000B(18nm)、RAVEN1500B(17nm)(以上、コロンビアカーボン社製);BP800(17nm)(キャボット社製);PRINNTEX90(14nm)、PRINTEX95(15nm)、PRINTEX85(16nm)、PRINTEX75(17nm)(以上、デグサ社製);#3950(16nm)(三菱化成工業(株)製);等である。
また、粗粒子カーボンブラックの具体的な製品名としては、サーマルブラック(270nm)(カーンカルブ社製);RAVEN MTP(275nm)(コロンビアカーボン社製);を挙げることができる。
バック層において、平均粒子径の異なる二種類のものを使用する場合、体積平均粒径が10〜20nmの微粒子状カーボンブラックと230〜300nmの粗粒子状カーボンブラックの含有比率(質量比)は、前者:後者=98:2〜75:25の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、95:5〜85:15の範囲である。
バック層中のカーボンブラック(2種類のものを使用する場合には、その全量)の含有量は、結合剤100質量部に対して、通常30〜80質量部の範囲であり、好ましくは、45〜65質量部の範囲である。
無機粉末は、硬さの異なる2種類のものを併用することが好ましい。具体的には、モース硬度3〜4.5の軟質無機粉末とモース硬度5〜9の硬質無機粉末とを使用することが好ましい。モース硬度が3〜4.5の軟質無機粉末を添加することで、繰り返し走行による摩擦係数の安定化を図ることができる。しかもこの範囲の硬さでは、摺動ガイドポールが削られることもない。またこの無機粉末の平均粒子径は、30〜50nmの範囲にあることが好ましい。
モース硬度が3〜4.5の軟質無機粉末としては、例えば、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、及び酸化亜鉛を挙げることができる。これらは、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
バック層内の軟質無機粉末の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して10〜140質量部の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、35〜100質量部である。
モース硬度が5〜9の硬質無機粉末を添加することにより、バック層の強度が強化され、走行耐久性が向上する。これらの無機粉末をカーボンブラックや前記軟質無機粉末と共に使用すると、繰り返し摺動に対しても劣化が少なく、強いバック層となる。また、この無機粉末の添加により、適度の研磨力が付与され、テープガイドポール等への削り屑の付着が低減する。特に軟質無機粉末と併用すると、表面の粗いガイドポールに対しての摺動特性が向上し、バック層の摩擦係数の安定化も図ることができる。
硬質無機粉末は、その平均粒子サイズが80〜250nm(更に好ましくは、100〜210nm)の範囲にあることが好ましい。
モース硬度が5〜9の硬質無機質粉未としては、例えば、α−酸化鉄、α−アルミナ、及び酸化クロム(Cr23)を挙げることができる。これらの粉末は、それぞれ単独で用いても良いし、あるいは併用しても良い。これらの内では、α−酸化鉄又はα−アルミナが好ましい。硬質無機粉末の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して通常3〜30質量部であり、好ましくは、3〜20質量部である。
バック層に前記軟質無機粉末と硬質無機粉末とを併用する場合、軟質無機粉末と硬質無機粉末との硬さの差が、2以上(更に好ましくは、2.5以上、特に、3以上)であるように軟質無機粉末と硬質無機粉末とを選択して使用することが好ましい。
バック層には、前記それぞれ特定の平均粒子サイズを有するモース硬度の異なる二種類の無機粉末と、前記平均粒子サイズの異なる2種類のカーボンブラックとが含有されていることが好ましい。
バック層には、潤滑剤を含有させることができる。潤滑剤は、前述した非磁性層、あるいは磁性層に使用できる潤滑剤として挙げた潤滑剤の中から適宜選択して使用できる。バック層において、潤滑剤は、結合剤100質量部に対して通常1〜5質量部の範囲で添加される。
(保護膜等)
また、磁性層上に非常に薄い保護膜を形成することで、耐磨耗性を改善し、さらにその保護膜上に潤滑剤を塗布して滑り性を高めることによって、十分な信頼性を有する磁気記録媒体とすることができる。
保護膜の材質としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化コバルト、酸化ニッケルなどの酸化物;窒化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化物;炭化ケイ素、炭化クロム、炭化ホウ素等の炭化物;グラファイト、無定型カーボンなどの炭素(カーボン);等があげられるが、特に好ましくは、一般に、ダイヤモンドライクカーボンと呼ばれる硬質の非晶質のカーボンである。
カーボンからなるカーボン保護膜は、非常に薄い膜厚で十分な耐磨耗性を有し、摺動部材に焼き付きを生じ難いため、保護膜の材料としては好適である。
カーボン保護膜の形成方法として、ハードディスクにおいては、スパッタリング法が一般的であるが、ビデオテープ等の連続成膜を行う必要のある製品ではより成膜速度の高いプラズマCVDを用いる方法が多数提案されている。従って、これらの方法を適用することが好ましい。
中でもプラズマインジェクションCVD(PI−CVD)法は成膜速度が非常に高く、得られるカーボン保護膜も硬質かつピンホールが少ない良質な保護膜が得られると報告されている(例えば、特開昭61−130487号公報、特開昭63−279426号公報、特開平3−113824号公報等)。
このカーボン保護膜は、ビッカース硬度で1000kg/mm2以上であることが好ましく、2000kg/mm2以上であることがより好ましい。また、その結晶構造はアモルファス構造であり、かつ非導電性であることが好ましい。
そして、カーボン保護膜として、ダイヤモンド状炭素(ダイヤモンドライクカーボン)膜を使用した場合、この構造はラマン光分光分析によって確認することができる。すなわち、ダイヤモンド状炭素膜を測定した場合には、1520〜1560cm-1にピークが検出されることによって確認することができる。炭素膜の構造がダイヤモンド状構造からずれてくるとラマン光分光分析により検出されるピークが上記範囲からずれるとともに、保護膜としての硬度も低下する。
このカーボン保護膜を形成するための炭素原料としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン等のアルカン;エチレン、プロピレン等のアルケン;アセチレン等のアルキン;をはじめとした炭素含有化合物を用いることが好ましい。また、必要に応じてアルゴンなどのキャリアガスや膜質改善のための水素や窒素などの添加ガスを加えることができる。
カーボン保護膜の膜厚が厚いと、電磁変換特性の悪化や磁性層に対する密着性の低下が生じ、膜厚が薄いと耐磨耗性が不足する。従って、膜厚は、2.5〜20nmとすることが好ましく、5〜10nmとすることがより好ましい。
また、この保護膜と基板となる磁性層の密着性を改善するために、あらかじめ磁性層表面を不活性ガスでエッチングしたり、酸素等の反応性ガスプラズマに曝して表面改質する事が好ましい。
走行耐久性および耐食性を改善するため、上記磁性層もしくは保護膜上に潤滑剤や防錆剤を付与することが好ましい。添加する潤滑剤としては公知の炭化水素系潤滑剤、フッ素系潤滑剤、極圧添加剤などが使用できる。
炭化水素系潤滑剤としては、ステアリン酸、オレイン酸等のカルボン酸類;ステアリン酸ブチル等のエステル類;オクタデシルスルホン酸等のスルホン酸類;リン酸モノオクタデシル等のリン酸エステル類;ステアリルアルコール、オレイルアルコール等のアルコール類;ステアリン酸アミド等のカルボン酸アミド類;ステアリルアミン等のアミン類;などが挙げられる。
フッ素系潤滑剤としては、上記炭化水素系潤滑剤のアルキル基の一部または全部をフルオロアルキル基もしくはパーフルオロポリエーテル基で置換した潤滑剤が挙げられる。
パーフルオロポリエーテル基としては、パーフルオロメチレンオキシド重合体、パーフルオロエチレンオキシド重合体、パーフルオロ−n−プロピレンオキシド重合体(CF2CF2CF2O)n、パーフルオロイソプロピレンオキシド重合体(CF(CF3)CF2O)nまたはこれらの共重合体等である。
また、炭化水素系潤滑剤のアルキル基の末端や分子内に水酸基、エステル基、カルボキシル基などの極性官能基を有する化合物が、摩擦力を低減する効果が高く好適である。
さらに、この分子量は、500〜5000、好ましくは1000〜3000である。500〜5000とすることで、揮発を抑え、また潤滑性の低下を抑えることができる。また、粘度が高くなるのを防ぎ、スライダーとディスクが吸着しやすなって走行停止やヘッドクラッシュなどを発生するのを防ぐことができる。
このパーフルオロポリエーテルは、具体例的には、アウジモンド社製のFOMBLIN、デュポン社製のKRYTOXなどの商品名で市販されている。
極圧添加剤としては、リン酸トリラウリル等のリン酸エステル類;亜リン酸トリラウリル等の亜リン酸エステル類;トリチオ亜リン酸トリラウリル等のチオ亜リン酸エステルやチオリン酸エステル類;二硫化ジベンジル等の硫黄系極圧剤;などが挙げられる。
前記潤滑剤は単独もしくは複数を併用して使用される。これらの潤滑剤を磁性層もしくは保護膜上に付与する方法としては、潤滑剤を有機溶剤に溶解し、ワイヤーバー法、グラビア法、スピンコート法、ディップコート法等で塗布するか、真空蒸着法によって付着させればよい。
防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、プリン、ピリミジン等の窒素含有複素環類およびこれらの母核にアルキル側鎖等を導入した誘導体;ベンゾチアゾール、2−メルカプトンベンゾチアゾール、テトラザインデン環化合物、チオウラシル化合物等の窒素および硫黄含有複素環類およびこの誘導体;等が挙げられる。
(物理特性)
本発明の磁気記録媒体は、以下に説明するような物理特性を有することが好ましい。
本発明になる磁気記録媒体の磁性層の飽和磁束密度は、好ましくは0.1〜0.3Tである。磁性層の保磁力Hcは159kA/m(2000Oe)〜796kA/m(10000Oe)が好ましく、159〜239kA/m(2000〜3000Oe)がより好ましい。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SFDは0.6以下が好ましい。
磁気ディスクの場合、角形比は2次元ランダムの場合は0.55以上0.67以下で、好ましくは0.58以上、0.64以下、3次元ランダムの場合は0.45以上、0.55以下が好ましく、垂直配向の場合は垂直方向に0.6以上好ましくは0.7以上、反磁界補正を行った場合は0.7以上好ましくは0.8以上である。2次元ランダム、3次元ランダムとも配向度比は0.8以上が好ましい。2次元ランダムの場合、垂直方向の角形比、Br、Hcは面内方向の0.1〜0.5倍以内とすることが好ましい。
磁気テープの場合、角型比は通常、0.55以上であり、好ましくは0.7以上である。本発明の磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は温度−10℃から40℃、湿度0%から95%の範囲において0.5以下、好ましくは0.3以下、表面固有抵抗は好ましくは磁性層表面104〜1012オーム/sq、帯電位は−500Vから+500V以内が好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は面内各方向で好ましくは100〜2000kg/mm2(0.98〜19.6GPa)、破断強度は好ましくは10〜70kg/mm2(98〜686MPa)、磁気記録媒体の弾性率は面内各方向で好ましくは100〜1500kg/mm2(0.98〜14.7GPa)、残留のびは好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、もっとも好ましくは0.1%以下である。磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50℃以上120℃以下が好ましく、下層非磁性層のそれは0℃〜100℃が好ましい。
損失弾性率は1×109〜8×1010μN/cm2の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障が発生しやすい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向で10%以内でほぼ等しいことが好ましい。磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは100mg/m2以下、さらに好ましくは10mg/m2以下である。塗布層が有する空隙率は非磁性層、磁性層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
磁性層の中心面平均表面粗さRaはWYKO社製TOPO−3Dを用いて、250μm×250μmの面積での測定で4.0nm以下、好ましくは3.8nm以下、さらに好ましくは3.5nm以下である。磁性層の最大高さRmaxは0.5μm以下、十点平均粗さRzは0.3μm以下、中心面山高さRpは0.3μm以下、中心面谷深さRvは0.3μm以下、中心面面積率Srは20%以上80%以下、平均波長λaは5μm以上、300μm以下が好ましい。磁性層の表面突起は前述の通りに設定することにより電磁変換特性、摩擦係数を最適化することが好ましい。これらは支持体のフィラーによる表面性のコントロールや前述したように磁性層に添加する粉体の粒径と量、カレンダー処理のロール表面形状などで容易にコントロールすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。
本発明の磁気記録媒体で、非磁性層と磁性層とを有する場合、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができるのは容易に推定されることである。例えば、磁性層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りを良くするなどである。
〔2〕磁気記録媒体の製造方法:
<<磁性粒子の製造方法>>
本発明の磁気記録媒体の磁性層に含有される磁性粒子は、強磁性規則合金相を形成し得る合金粒子を液相法等により作製し(合金粒子作製工程)、合金粒子作製後(酸化処理が施される場合は、酸化処理工程後)に溶媒中でアニール処理を施して(アニール処理工程)製造される。
以下、上記各工程を説明する。
<合金粒子作製工程>
アニール処理により磁性粒子となる合金粒子は、液相法により製造することができる。液相法としては、従来から知られている種々の方法を適用することができるが、これらに改良を加えた還元法を適用することが好ましく、還元法のなかでも粒径制御が容易な逆ミセル法が特に好ましい。
(逆ミセル法)
上記逆ミセル法は、少なくとも、(1)2種の逆ミセル溶液を混合して還元反応を行う還元工程と、(2)還元反応後に所定温度で熟成する熟成工程と、を有する。
以下、各工程について説明する。
(1)還元工程:
まず、界面活性剤を含有する非水溶性有機溶媒と還元剤水溶液とを混合した逆ミセル溶液(I)を調製する。
前記界面活性剤としては、油溶性界面活性剤が用いられる。具体的には、スルホン酸塩型(例えば、エーロゾルOT(和光純薬製))、4級アンモニウム塩型(例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)、エーテル型(例えば、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル)などが挙げられる。
非水溶性有機溶媒中の界面活性剤量は、20〜200g/リットルであることが好ましい。
前記界面活性剤を溶解する非水溶性有機溶媒として好ましいものは、アルカン、エーテルおよびアルコール等が挙げられる。
アルカンとしては、炭素数7〜12のアルカン類であることが好ましい。具体的には、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等が好ましい。
エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等が好ましい。
アルコールとしては、エトキシエタノール、エトキシプロパノール等が好ましい。
還元剤水溶液中の還元剤としては、アルコール類;ポリアルコール類;H2;HCHO、S26 2-、H2PO2 -、BH4 -、N25 +、H2PO3 -などを含む化合物;を単独で使用、または2種以上を併用することが好ましい。
水溶液中の還元剤量は、金属塩1モルに対して、3〜50モルであることが好ましい。
ここで、逆ミセル溶液(I)溶液中の水と界面活性剤との質量比(水/界面活性剤)は、20以下となるようにすることが好ましい。質量比が20以下であると、沈殿の生成を抑え、粒子も揃いやすいといった利点がある。質量比は、15以下とすることが好ましく、0.5〜10とすることがより好ましい。なお、逆ミセル溶液(I)溶液とともに、目的に応じて、上記質量比や使用原料を変えた逆ミセル溶液(I’)、(I’’)等を調製し、これらを併用してもよい。
上記とは別に、界面活性剤を含有する非水溶性有機溶媒と金属塩水溶液とを混合した逆ミセル溶液(II)を調製する。
界面活性剤および非水溶性有機溶媒の条件(使用する物質、濃度等)については、逆ミセル溶液(I)の場合と同様である。逆ミセル溶液(I)と同種のものまたは異種のものを使用することができる。
また、逆ミセル溶液(II)の溶液中の水と界面活性剤との質量比も逆ミセル溶液(I)の場合と同様であり、逆ミセル溶液(I)の質量比と同一としてもよく、異なっていてもよい。また、逆ミセル溶液(II)溶液とともに、目的に応じて、上記質量比や使用原料を変えた逆ミセル溶液(II’)、(II’’)等を調製し、これらを併用してもよい。
金属塩水溶液に含有される金属塩としては、作製しようとする磁性粒子がCuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金を形成し得るように、適宜選択することが好ましい。
ここで、当該CuAu型強磁性規則合金としては、FeNi、FePd、FePt、CoPt、CoAuなどが挙げられ、なかでも、FePd、FePt、CoPtであることが好ましい。
Cu3Au型強磁性規則合金としては、Ni3Fe、FePd3、Fe3Pt、FePt3、CoPt3、Ni3Pt、CrPt3、Ni3Mnが挙げられ、なかでも、FePd3、FePt3、CoPt3、Fe3Pd、Fe3Pt、Co3Ptが好ましい。
金属塩の具体例としては、H2PtCl6、K2PtCl4、Pt(CH3COCHCOCH32、Na2PdCl4、Pd(OCOCH32、PdCl2、Pd(CH3COCHCOCH32、HAuCl4、Fe2(SO43、Fe(NO33、(NH43Fe(C243、Fe(CH3COCHCOCH33、NiSO4、CoCl2、Co(OCOCH32などが挙げられる。
金属塩水溶液中の濃度(金属塩濃度として)は、0.1〜1000μmol/mlであることが好ましく、1〜100μmol/mlであることがより好ましい。
合金粒子は後述する溶媒中のアニール処理によって合金相を不規則相から規則相へ変態させる必要があるが、変態温度が高温であると使用できる溶媒が限られたものとなってしまう。そこで、当該変態温度を下げるために、前記2元系合金に、Sb、Pb、Bi、Cu、Ag、Zn、Inなどの第三元素を加えることが好ましく、なかでも、Cuが特に好ましい。これらの第三元素は、それぞれの第三元素の前駆体を、前記金属塩溶液に予め添加しておくことが好ましい。添加量としては、2元系合金に対し、1〜30at%であることが好ましく、15〜30at%であることがより好ましい。
以上のようにして調製した逆ミセル溶液(I)と(II)とを混合する。混合方法としては、特に限定されるものではないが、還元の均一性を考慮して、逆ミセル溶液(I)を撹拌しながら、逆ミセル溶液(II)を添加していって混合することが好ましい。混合終了後、還元反応を進行させることになるが、その際の温度は、−5〜30℃の範囲で、一定の温度とすることが好ましい。
還元温度を−5〜30℃とすることで、水相が凝結して還元反応が不均一になるといった問題を解消し、凝集または沈殿が起こりやすく系が不安定となる問題をも解消することができる。好ましい還元温度は0〜25℃であり、より好ましくは5〜25℃である。
ここで、前記「一定温度」とは、設定温度をT(℃)とした場合、当該TがT±3℃の範囲にあることをいう。なお、このようにした場合であっても、当該Tの上限および下限は、上記還元温度(−5〜30℃)の範囲にあるものとする。
還元反応の時間は、逆ミセル溶液の量等により適宜設定する必要があるが、1〜30分とすることが好ましく、5〜20分とすることがより好ましい。
還元反応は、粒径分布の単分散性に大きな影響を与えるため、できるだけ高速攪拌しながら行うことが好ましい。
好ましい攪拌装置は高剪断力を有する攪拌装置であり、詳しくは、攪拌羽根が基本的にタービン型あるいはパドル型の構造を有し、さらに、その羽根の端もしくは、羽根と接する位置に鋭い刃を付けた構造であり、羽根をモーターで回転させる攪拌装置である。具体的には、ディゾルバー(特殊機化工業製)、オムニミキサー(ヤマト科学製)、ホモジナイザー(SMT製)などの装置が有用である。これらの装置を用いることにより、単分散な合金粒子を安定な分散液として合成することができる。
前記逆ミセル溶液(I)および(II)の少なくともいずれかに、アミノ基またはカルボキシ基を1〜3個有する少なくとも1種の分散剤を、作製しようとする合金粒子1モル当たり、0.001〜10モル添加することが好ましい。
かかる分散剤を添加することで、より単分散で、凝集の無い合金粒子を得ることが可能となる。
添加量が、0.001〜10モルとすることで、合金粒子の単分散性をより向上させながら、凝集の発生を抑制することができる。
前記分散剤としては、合金粒子表面に吸着する基を有する有機化合物が好ましい。具体的には、アミノ基、カルボキシ基、スルホン酸基またはスルフィン酸基を1〜3個有するものであり、これらを単独または併用して用いることができる。
構造式としては、R−NH2、NH2−R−NH2、NH2−R(NH2)−NH2、R−COOH、COOH−R−COOH、COOH−R(COOH)−COOH、R−SO3H、SO3H−R−SO3H、SO3H−R(SO3H)−SO3H、R−SO2H、SO2H−R−SO2H、SO2H−R(SO2H)−SO2Hで表される化合物であり、式中のRは直鎖、分岐または環状の飽和、不飽和の炭化水素である。
分散剤として特に好ましい化合物はオレイン酸である。オレイン酸はコロイドの安定化において周知の界面活性剤であり、鉄等の金属粒子を保護するのに用いられてきた。オレイン酸の比較的長い(たとえば、オレイン酸は18炭素鎖を有し長さは〜20オングストローム(〜2nm)である。オレイン酸は脂肪族ではなく二重結合が1つある)鎖は粒子間の強い磁気相互作用を打ち消す重要な立体障害を与える。
エルカ酸やリノール酸など類似の長鎖カルボン酸もオレイン酸同様に(たとえば、8〜22の間の炭素原子を有する長鎖有機酸を単独でまたは組み合わせて用いることができる)用いられる。オレイン酸は(オリーブ油など)容易に入手できる安価な天然資源であるので好ましい。また、オレイン酸から誘導されるオレイルアミンもオレイン酸同様有用な分散剤である。
以上のような還元工程では、CuAu型あるいはCu3Au型強磁性規則合金相中のCo、Fe、Ni、Cr等の酸化還元電位が卑な金属(−0.2V(vs.N.H.E)程度以下の金属)が還元され、極小サイズで単分散な状態で析出するものと考えられる。その後、昇温段階および後述する熟成工程において、析出した卑な金属を核とし、その表面で、Pt、Pd、Rh等の酸化還元電位が貴な金属(−0.2V(vs.N.H.E)程度以上の金属)が卑な金属で還元されて置換、析出する。イオン化した卑な金属は還元剤で再度還元されて析出すると考えられる。このような繰返しによって、CuAu型あるいはCu3Au型強磁性規則合金を形成し得る合金粒子が得られる。
(2)熟成工程:
還元反応終了後、反応後の溶液を熟成温度まで昇温する。
前記熟成温度は、30〜90℃で一定の温度とすることが好ましく、その温度は、前記還元反応の温度より高くする。また、熟成時間は、5〜180分とすることが好ましい。熟成温度および時間が上記範囲にあることで、凝集または沈殿を防ぎ、不完全な反応による組成変化を防ぐことができる。好ましい熟成温度および時間は40〜80℃および10〜150分であり、より好ましい熟成温度および時間は40〜70℃および20〜120分である。
ここで、前記「一定温度」とは、還元反応の温度の場合と同義(但し、この場合、「還元温度」は「熟成温度」となる)であるが、特に、上記熟成温度の範囲(30〜90℃)内で、前記還元反応の温度より5℃以上高いことが好ましく、10℃以上高いことがより好ましい。5℃以上高くすることで、処方通りの組成が得られやすくなる。
以上のような熟成工程では、還元工程で還元析出した卑な金属上に貴な金属が析出する。
すなわち、卑な金属上でのみ貴な金属の還元が起こり、卑な金属と貴な金属とが別々に析出することが無いため、効率良くCuAu型あるいはCu3Au型強磁性規則合金を形成し得る合金粒子を、高収率で処方組成比どおりに作製することが可能で、所望の組成に制御することができる。また、熟成の際の温度の撹拌速度を適宜調整することで、得られる合金粒子の粒径を所望なものとすることができる。
前記熟成を行った後は、水と1級アルコールとの混合溶液で前記熟成後の溶液を洗浄し、その後、1級アルコールで沈殿化処理を施して沈殿物を生成させ、該沈殿物を有機溶媒で分散させる洗浄・分散工程を設けることが好ましい。
かかる洗浄・分散工程を設けることで、不純物が除去され、磁気記録媒体の磁性層を塗布により形成する際の塗布性をより向上させることができる。
上記洗浄および分散は、少なくともそれぞれ1回、好ましくは、それぞれ2回以上行う。
洗浄で用いる前記1級アルコールとしては、特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール等が好ましい。体積混合比(水/1級アルコール)は、10/1〜2/1の範囲にあることが好ましく、5/1〜3/1の範囲にあることがより好ましい。
水の比率が高いと、界面活性剤が除去されにくくなることがあり、逆に1級アルコールの比率が高いと、凝集を起こしてしまうことがある。
以上のようにして、溶液中に分散した合金粒子(合金粒子含有液)が得られる。
当該合金粒子は、単分散であるため、支持体に塗布しても、これらが凝集することなく均一に分散した状態を保つことができる。従って、アニール処理を施しても、それぞの合金粒子が凝集することがないため、効率良く強磁性化することが可能で、塗布適性に優れる。
後述する酸化処理前の合金粒子の粒径は、ノイズを下げる観点から小さいことが好ましいが、小さすぎるとアニール後に超常磁性となり、磁気記録に不適当となることがある。一般に、1〜100nmであることが好ましく、1〜20nmであることがより好ましく、3〜10nmであることがさらに好ましい。
(還元法)
合金粒子は、既述の逆ミセル法以外に、一般的な還元法で作製してもよい。
還元法でCuAu型あるいはCu3Au型強磁性規則合金を形成し得る合金粒子を作製するには種々の方法があるが、少なくとも、酸化還元電位が卑な金属(以下、単に「卑な金属」ということがある)と、酸化還元電位が貴な金属(以下、単に「貴な金属」ということがある)と、を有機溶剤もしくは水、または有機溶剤と水との混合溶液中で還元剤等を使用して還元する方法を適用することが好ましい。
卑な金属と貴な金属との還元順序は、特に限定されず、同時に還元してもよい。
前記有機溶剤としては、アルコール、ポリアルコール等を使用することが可能で、アルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられ、ポリアルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
なお、CuAu型あるいはCu3Au型強磁性規則合金の例としては、既述の逆ミセル法の場合と同様である。
また、貴な金属を先に析出させて合金粒子を調製する方法としては、特願2001−269255号の段落18〜30等に記載の方法等を適用することができる。
酸化還元電位が貴な金属としては、Pt、Pd、Rh等が好ましく用いることができ、H2PtCl6・6H2O、Pt(CH3COCHCOCH32、RhCl3・3H2O、Pd(OCOCH32、PdCl2、Pd(CH3COCHCOCH32等を溶媒に溶解して用いることができる。溶液中の金属の濃度は、0.1〜1000μmol/mlが好ましく、0.1〜100μmol/mlがより好ましい。
また、酸化還元電位が卑な金属としては、Co、Fe、Ni、Crを好ましく用いることができ、特に好ましくは、Fe、Coである。このような金属は、FeSO4・7H2O、NiSO4・7H2O、CoCl2・6H2O、Co(OCOCH32・4H2O等を溶媒に溶解して用いることができる。溶液中の金属の濃度は、0.1〜1000μmol/mlが好ましく、0.1〜100μmol/mlがより好ましい。
また、既述の逆ミセル法と同様に2元系合金に、第三元素を加える事で強磁性規則合金への変態温度を下げる事が好ましい。添加量としては逆ミセル法と同様である。
例えば、還元剤を用いて卑な金属と貴な金属とをこの順に還元して析出させる場合、−0.2V(vs.N.H.E)より卑な還元電位を持つ還元剤を用いて卑な金属あるいは卑な金属と貴な金属の一部を還元したものを、貴な金属源に加え酸化還元電位が−0.2V(vs.N.H.E)より貴な還元剤を用いて還元した後、−0.2V(vs.N.H.E)より卑な還元電位を持つ還元剤を用いて還元する事が好ましい。
酸化還元電位は系のpHに依存するが、酸化還元電位が−0.2V(vs.N.H.E)より貴な還元剤には、1,2−ヘキサデカンジオール等のアルコール類、グリセリン類、H2、HCHOが好ましく用いられる。
−0.2V(vs.N.H.E)より卑な還元剤にはS26 2-、H2PO2 -、BH4 -、N25 +、H2PO3 -が好ましく用いる事ができる。
なお、卑な金属の原料として、Feカルボニル等の0価の金属化合物と用いる場合は、特に卑な金属の還元剤は必要ない。
貴な金属を還元析出させる際に吸着剤を存在させる事で合金粒子を安定して調製することができる。吸着剤としてはポリマーや界面活性剤を使用することが好ましい。
前記ポリマーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリN−ビニル−2ピロリドン(PVP)、ゼラチン等が挙げられる。なかでも、特に好ましくはPVPである。
また、分子量は2万〜6万が好ましく、より好ましくは3万〜5万である。ポリマーの量は生成する合金粒子の質量の0.1〜10倍であることが好ましく、0.1〜5倍がより好ましい。
吸着剤として好ましく用いられる界面活性剤は、一般式:R−X、で表される長鎖有機化合物である「有機安定剤」を含むことが好ましい。上記一般式中のRは、直鎖または分岐ハイドロカーボンまたはフルオロカーボン鎖である「テール基」であり、通常8〜22個の炭素原子を含む。また、上記一般式中のXは、合金粒子表面に特定の化学結合を提供する部分(X)である「ヘッド基」であり、スルフィネート(−SOOH)、スルホネート(−SO2OH)、ホスフィネート(−POOH)、ホスホネート(−OPO(OH)2)、カルボキシレート、およびチオールのいずれかであることが好ましい。
前記有機安定剤としては、スルホン酸(R−SO2OH)、スルフィン酸(R−SOOH)、ホスフィン酸(R2POOH)、ホスホン酸(R−OPO(OH)2)、カルボン酸(R−COOH)、チオール(R−SH)等のいずれかであることが好ましい。これらのなかでも、逆ミセル法と同様のオレイン酸が特に好ましい。
前記ホスフィンと有機安定剤との組合せ(トリオルガノホスフィン/酸等)は、粒子の成長および安定化に対する優れた制御性を提供することができる。ジデシルエーテルおよびジドデシルエーテルも用いることができるが、フェニルエーテルまたはn−オクチルエーテルはその低コストおよび高沸点のため溶媒として好適に用いられる。
反応(還元)は必要な合金粒子および溶媒の沸点により80℃〜360℃の範囲の温度で行うことが好ましく、80℃〜240℃がより好ましい。温度がこの温度範囲にあることで、制御性のよい粒子成長を促進し、望ましくない副産物の生成を抑制することができる。
合金粒子の粒径は逆ミセル法と同様で、1〜100nmが好ましく、より好ましくは3〜20nmであり、さらに好ましくは3〜10nmである。
粒子サイズ(粒径)を大きくする方法としては種晶法が有効である。磁気記録媒体として用いるには合金粒子を最密充填することが記録容量を高くする上で好ましく、そのためには、合金粒子のサイズの標準偏差は10%未満が好ましく、より好ましくは5%以下である。
以上のような還元法により合金粒子含有液が作製される。
なお、粒子サイズが小さすぎると超常磁性となり好ましくない。そこで粒子サイズを大きくするため既述のように、種晶法を用いることが好ましい。その際、粒子を構成する金属より貴な金属を析出させるケースが出てくる。このとき、粒子の酸化が懸念されるため、予め粒子を水素化処理することが好ましい。
液相法により作製された合金粒子の最外層は酸化防止の観点から貴な金属にすることが好ましいが、凝集しやすいため、本発明では貴な金属と卑な金属との合金であることが好ましい。かかる構成は、既述のような、液相法によれば容易かつ効率良く実現させることができる。
また、合金粒子合成後に溶液から塩類を除くことは、合金粒子の分散安定性を向上させる意味から好ましい。脱塩にはアルコールを過剰に加え、軽凝集を起こし、自然沈降あるいは遠心沈降させ塩類を上澄みと共に除去する方法があるが、このような方法では凝集が生じやすいため、限外濾過法を採用することが好ましい。以上のようにして、溶液中に分散した合金粒子(合金粒子含有液)が得られる。
合金粒子の粒径評価には透過型電子顕微鏡(TEM)を用いることができる。合金粒子もしくは磁性粒子の結晶系を決めるにはTEMによる電子回折でもよいが、X線回折を用いた方が精度が高いため好ましい。合金粒子もしくは磁性粒子の内部の組成分析には、電子線を細く絞ることができるFE−TEMにEDAXを付け評価することが好ましい。また、合金粒子もしくは磁性粒子の磁気的性質の評価はVSMを用いて行うことができる。
<酸化処理工程>
酸化処理工程は、合金粒子作製工程とアニール処理工程との間に、適宜設けられる工程で、合金粒子に酸化処理を施す工程である。作製した合金に酸化処理を施すことで、後の溶媒中でアニール処理を施す際の温度を高くすることなく、強磁性を有する磁性粒子を効率よく製造することができる。
これは、以下に説明する現象によると考えられる。
すなわち、まず、合金粒子を酸化することで、その結晶格子上に酸素が進入する。酸素が進入した状態でアニール処理を行うと、熱により酸素が結晶格子上から脱離する。酸素が脱離することで欠陥が生じ、かかる欠陥を通じて合金粒子を構成する金属原子の移動が容易になるため、比較的低温でも相変態が起こりやすくなると考えられる。
かかる現象は、例えば、酸化処理後の合金粒子とアニール処理を行った磁性粒子とをEXAFS(広範囲X線吸収微細構造)測定することで、推察される。
例えば、Fe−Pt合金粒子で酸化処理を施さない合金粒子では、Fe原子と、Pt原子やFe原子との結合の存在が確認できる。
これに対し、酸化処理を施した合金粒子では、Fe原子と酸素原子との結合の存在を確認できる。しかし、Pt原子やFe原子との結合はほとんど見えなくなる。このことは、酸素原子によりFe−Pt、Fe−Feの結合が切られていることを意味する。これによりアニール時にPt原子やFe原子が動きやすくなったと考えられる。
そして、当該合金粒子にアニール処理を施した後は、酸素の存在を確認することができず、Fe原子の周りにはPt原子やFe原子との結合の存在が確認できる。
上記現象を考慮すれば、酸化しないと相変態が進行しにくくなりアニール処理温度を高くする必要が生じることがわかる。しかし、過度に酸化するとFe等の酸化されやすい金属と酸素との相互作用が強くなりすぎて金属酸化物が生成してしまうことも考えられる。
よって、合金粒子の酸化状態を制御することが重要となり、そのためには酸化処理条件を最適なものに設定する必要がある。
酸化処理は、例えば、既述の液相法などにより、合金粒子を作製した場合は、作製した後の合金粒子含有液に少なくとも酸素を含有するガス(酸素ガスもしくは空気等)を供給すればよい。このときの酸素分圧は、全圧の10〜100%とすることが好ましく、15〜50%とすることが好ましい。
また、酸化処理温度は、0〜250℃であり、0〜100℃とすることが好ましく、15〜80℃とすることがさらに好ましい。酸化処理は酸素存在下たとえば空気中で粒子分散液を攪拌して行ってもよいし、これらの気体を液中に送り込みバブリングして行ってもよい。
合金粒子の酸化状態は、EXAFS等で評価することが好ましく、Fe等の卑な金属と酸素との結合数は、酸素によりFe−Fe結合やPt−Fe結合を切るという観点から、0.5〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
<アニール処理工程>
合金粒子作製工程を経た後、および、酸化処理工程を経た後の合金粒子は不規則相である。既述のように不規則相では強磁性は得られない。そこで、規則相とするためには、熱処理(アニール処理)を施す必要がある。アニール処理は溶媒(有機溶媒)中で行う。これにより分散した状態を維持した磁性粒子を得ることができるからである。また、溶媒中でアニール処理を行うことができれば、再分散を必要とせずに、アニール処理後の溶液の状態で塗布を行うことができる。アニール処理の温度は、150℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることがさらに好ましく、350℃以上であること特に好ましい。アニール処理は、リフラックスにより行うことが好ましい。アニール処理の時間は、30分〜6時間とすることが好ましく、1〜4時間とすることがより好ましい。
使用する有機溶媒としては、非酸化性のものが好ましく、還元性の溶媒が特に好ましい。具体的には、エタノールアミン、オクチルアミンが好ましく、トリエタノールアミン、トリオクチルアミンがより好ましい。また、ポリオールも好ましく用いられる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコールなどのグリコールが挙げられる。
有機溶媒は、合金粒子1mgあたり、100〜1000mlとすることが好ましく、200〜500mlでリフラックス処理することがより好ましい。
以上のようなアニール処理を施すことで、合金粒子が不規則相から規則相に相変態し、強磁性を有する磁性粒子が有機溶媒中に分散した状態で得られる。
また、以上のような磁性粒子は、それぞれの磁性粒子の表面に有機物が接触してなる、すなわち、磁性粒子の表面に有機物が存在するため、磁性粒子同士が直接接触することがない。従って、支持体上に塗布した状態でアニール処理を施して作製された磁性粒子よりも、凝集する可能性が低くなるため、磁気記録媒体の磁性層などに使用しても高分散な状態を維持することができる。
ここで、「有機物」とは、C、Hの2元素;C、H、Oの3元素、またはC、H、Nの3元素;C、H、O、Nの4元素;を基準としてなる有機化合物をいい、支持体上に塗布してアニール処理後に生成される無機物たる炭化物とは異なる。支持体上等に塗布してアニール処理を施し、磁性粒子を掻き落しこれを採取する方法は、工程が煩雑となり、再分散が困難となる問題がある。しかし、上記方法によって得られた磁性粒子は、すでに分散した状態が保たれているため、既述のような問題が生じることはない。また、溶媒中でアニール処理を施すので、気相中でアニール処理を施して磁性粒子を作製するよりも、均一に強磁性化された磁性粒子が得られる。
上記「有機物」に接触していることの確認は、TEMとEDAXとを使用する等の方法で行うことができる。また、例えば、ウレタン樹脂、塩化ビニルなどのバインダー類が付着ないし吸着している状態となっている。
<<磁性層等の形成>>
まず、上記のようにして作製された磁性粒子を含有する磁性粒子含有液に、非極性溶媒を混合して、磁性粒子の分散状態を良好に保つ。その後、結合剤を溶解した極性溶媒を上記混合後の磁性粒子含有液に混合して、磁性層用の塗布液を調製する。当該塗布液に、カーボンブラック、研磨剤等の添加剤を含有させる場合は、塗布液の調製後に添加してもく、極性溶媒や磁性粒子含有液に予め添加しておいてもよい。また、結合剤や極性溶媒、非極性溶媒の添加順序も、磁性粒子の分散性を損なわなければ、特に限定はされないが、既述の順序が好ましい。
一方、非磁性層を形成する場合は、既述の非磁性粉体や結合剤等を公知の溶剤に混合して、非磁性層用の塗布液を調製する。
磁性層用もしくは非磁性層用の塗布液を作製する際に、分散剤を溶解させるために、オープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダ等を使用した混練処理を施してもよい。また、磁性粒子や非磁性粉体を分散させるため、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズ等の分散メディアを使用してもよい。
そして、磁性層用の塗布液を公知の方法により支持体上に塗布することで、磁性層を形成することができる。
ここで、非磁性層と磁性層とを形成する重層構成の磁気記録媒体とする場合、以下のような方式を用いることが好ましい。
第一の方式は、一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布装置等により、まず非磁性層を塗布し、非磁性層がウェット状態のうちに特公平1−46186号公報や特開昭60−238179号公報、特開平2−265672号公報に開示されている支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により磁性層を塗布する方式である。
第二の方式は、特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報、特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを2つ内蔵する一つの塗布ヘッドにより非磁性層および磁性層をほぼ同時に塗布する方式である。
第三の方式は、特開平−174965に開示されているバックアップロール付きエクストルージョン塗布装置により非磁性層および磁性層をほぼ同時に塗布する方式である。
なお、磁性粒子の凝集による磁気記録媒体の電磁変換特性等の低下を防止するため、特開昭62−95174号公報や特開平1−236968号公報に開示されているような方法により塗布ヘッド内部の塗布液にせん断を付与することが望ましい。さらに、磁性層および非磁性層の塗布液の粘度については、特開平3−8471号公報に開示されている数値範囲を満足することが好ましい。重層構成を実現するには非磁性層を塗布し乾燥させたのち、その上に磁性層を設ける逐次重層塗布を行ってもよい。但し、塗布欠陥を少なくし、ドロップアウトなどの品質を向上させるためには、前述の同時重層塗布を用いることが好ましい。
特に、ディスクの場合、配向装置を用いず無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置すること、ソレノイドで交流磁場を印加するなど公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。等方的な配向とは強磁性金属粉末の場合、特に高密度記録を行う場合は垂直配向が好ましい。また、スピンコートを用い円周配向をしてもよい。
また、磁気テープの場合は、コバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に配向する。乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できる様にすることが好ましく、塗布速度は20m/分〜1000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい。また磁石ゾーンに入る前に適度の予備乾燥を行うこともできる。
上記塗布、乾燥後、必要であれば、磁気記録媒体にカレンダー処理を施してもかまわない。カレンダ―処理ロールとしてエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロールまたは金属ロールで処理するが、特に両面磁性層とする場合は金属ロール同士で処理することが好ましい。処理温度は、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。
線圧力は好ましくは200kg/cm(196kN/m)以上、さらに好ましくは300kg/cm(294kN/m)以上である。
以上のようにして、本発明の磁気記録媒体が製造される。
以下、実施例をもとに本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
(FePtCu合金粒子の作製)
高純度N2ガス中で下記の操作を行った。
三シュウ酸三アンモニウム鉄(Fe(NH43(C243)(和光純薬製)0.35gと塩化白金酸カリウム(K2PtCl4)(和光純薬製)0.35gとをH2O(脱酸素処理済み)24mlに溶解した金属塩水溶液に、エーロゾルOT10.8gをデカン80mlに溶解したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(II)を調製した。
NaBH4(和光純薬製)0.57gをH2O(脱酸素処理済み)12mlに溶解した還元剤水溶液に、エーロゾルOT(和光純薬製)5.4gとオレイルアミン(東京化成製)2mlとをデカン(和光純薬製)40mlに溶解したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(I)を調製した。
塩化銅(CuCl2・6H2O)(和光純薬製)0.07gをH2O(脱酸素処理済み)2mlに溶解した金属塩水溶液に、エーロゾルOT2.7gをデカン20mlに溶解したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(II’)を調製した。
アスコルビン酸(和光純薬製)0.88gをH2O(脱酸素処理済み)12mlに溶解した還元剤水溶液に、エーロゾルOT(和光純薬製)5.4gをデカン(和光純薬製)40mlに溶解したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(I’)を調製した。
逆ミセル溶液(II)を22℃でオムニミキサー(ヤマト科学製)で高速撹拌しながら、逆ミセル溶液(I)を瞬時に添加した。3分後、さらに、逆ミセル溶液(II’)を約2.4ml/分の速度で約10分かけて添加した。添加終了5分後に、マグネチックスターラー攪拌に変更して、40℃に昇温した後、逆ミセル溶液(I’)を添加して、120分間熟成した。室温に冷却後、オレイン酸(和光純薬製)2mlを添加、混合して、大気中に取出した。逆ミセルを破壊するために、H2O200mlとメタノール200mlとの混合液を添加して水相と油相とに分離した。油相側に金属ナノ粒子が分散した状態が得られた。油相側を(HO600ml+メタノール200ml)で5回洗浄した。その後、メタノールを1300ml添加して金属ナノ粒子にフロキュレーションを起こさせて沈降させた。上澄み液を除去して、ヘプタン(和光純薬製)20mlを添加して再分散した。さらに、メタノール100ml添加による沈降とヘプタン20ml分散を2回繰り返して、最後にオクタン(和光純薬製)5mlを添加して、FeCuPt合金粒子含有液を得た(合金粒子作製工程)。
(酸化処理工程)
合金粒子が4質量%となるように真空脱気を行って、調製した合金粒子含有液を濃縮した。濃縮後、雰囲気を常圧にし合金粒子を酸化するため、酸素ガスを合金粒子含有液中に供給した。なお、酸素ガスの供給温度および時間は、25℃および1分間とした。
(アニール処理工程)
合金粒子0.4mgを含む酸化処理を施した合金粒子含有液(10ml)を、下記表1記載の溶媒(100ml)中で360℃で90分間リフラックス処理を行い、磁性粒子を作製した。この後、5000rpmで遠心分離処理を行い、磁性粒子を分離した。
(塗布液の調製)
作製した磁性粒子含有液を磁性粒子が20重量%となるように真空脱気を行った。その後、トルエンを添加して磁性粒子を10重量%含有する混合液を調製した。一方、ウレタン樹脂をシクロヘキサノンに溶解してウレタン樹脂の含有量が1重量%の溶液を調製した。そして、上記混合液1mlに対しこの溶液を108.8μl加えた。この液は安定に分散した状態であった。そしてこの液を塗布液とした。塗布液中の磁性粒子、結合剤、極性溶媒、非極性溶媒の含有量は、それぞれ、9質量%、81質量%、1質量%、9質量%であった。
(塗布工程)
ガラス製の支持体(厚さ:1mm)上に、塗布液をスピンコータで塗布し、25℃(室温)で乾燥して磁性層を形成した。このときの磁性層の厚さは50nmであった。塗布後150℃で5分間乾燥した。
磁性層表面に400WのRfスパッタでカーボン保護層(10nm)を形成して、磁気記録媒体を作製した。
(バーニッシュ処理)
下記のバーニッシュヘッドを用い、磁気記録媒体を7200rpmで回転させながらバーニッシュ処理を行った。
・バーニッシュヘッド仕様(グライドシグナス社)…スライダー:24pads、荷重:5g、サスペンション:Type 2030、Z−height:29mil(0.7366mm)。
(潤滑剤層)
媒体表面をフロリナートFC72(住友スリーエム社製)で洗浄後乾燥した。
フォンブリンZゾル(アウジモント社製)を溶媒フロリナートFC72で1質量%とした後、磁気記録媒体をディップコータで10mm/minで引き上げながら塗布した。
〔実施例2〕
アニール処理における有機溶媒を、トリエタノールアミンからトリオクチルアミンへ変更した以外は、実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製した。
〔実施例3〕
アニ―ル処理における有機溶媒を、トリエタノールアミンから、テトラデカンとエチレングリコールとの質量比を1:1とした溶液に変更し、リフラックス温度を250℃とした以外は、実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製した。
〔比較例1〕
アニール処理を施さず、非極性溶媒を含有しなかった以外は、実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製した。なお、作製後の磁気記録媒体の磁性層を観察したところ、磁性粒子の凝集が一部に見られた。
実施例1〜3および比較例1で作製した磁性粒子について、磁気特性の評価と結晶構造の解析を行った。
なお、磁気特性の評価(保磁力の測定)は、東英工業製の高感度磁化ベクトル測定機と同社製DATA処理装置を使用し、印加磁場790kA/m(10kOe)の条件で行った。
結晶構造の解析は、理学電機製のX線回折装置を用い、管電圧50kV、管電流300mAとし、線源にCuKα線を使用し、ゴニオメーターを用いた粉末法で行った。結果を下記表1に示す。
Figure 2005190557
表1より、比較例1では、立方晶の不規則相で低い保磁力(Hc)であったのに対し、所定のアニール処理を施した実施例1〜3の磁性粒子は、高い保磁力を有していた。
これは、当該アニール処理により、合金粒子が効率よく相変態し、強磁性を有する磁性粒子となったためと考えられる。
潤滑剤層を塗布した後の実施例1〜3の磁気記録媒体について、電磁変換特性の評価を行った。なお、当該電磁変換特性は、協同電子社製スピンスタンドLS90を用い、リングヘッドを用い媒体半径25mmの位置で記録再生を行った。書き込み電流は10mAとした。磁気記録媒体の回転数は7200rpmにて電磁変換特性が評価可能かを調べた。その結果、いずれの磁気記録媒体も原理的に記録再生できることが確認された。
〔実施例4〕
支持体をポリエチレンナフタレート製の支持体(厚さ:53μm)とした以外は実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製し、電磁変換特性の評価を行ったところ、原理的に記録再生できることが確認された。

Claims (3)

  1. CuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金相を有する磁性粒子を含有する磁性層が、支持体上に設けられてなる磁気記録媒体であって、
    前記磁性層が、CuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金相を形成し得る合金粒子を作製した後、前記合金粒子を溶媒中に含有した状態でアニール処理を施して磁性粒子とし、当該磁性粒子と結合剤と極性溶媒と非極性溶媒とを含有する塗布液を支持体上に塗布してなることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. CuAu型またはCu3Au型強磁性規則合金相を有する磁性粒子を含有する磁性層が、支持体上に設けられてなる磁気記録媒体であって、
    さらに、結合剤と、極性溶媒と、非極性溶媒とを、前記磁性層中に含有することを特徴とする磁気記録媒体。
  3. 前記支持体と前記磁性層との間に、非磁性層が設けられてなることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
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