JP2005187843A - 化成処理性及び接着性に優れた潤滑処理鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リチウムシリケートを皮膜成分とし、これに潤滑剤と成形性改善剤が配合された潤滑皮膜を鋼板表面に形成する。リチウムシリケートはLi/Si原子比= 0.8〜4.0 であり、潤滑剤/リチウムシリケート質量比= 0.1〜2.0 とする。成形性改善剤はポリアクリル酸および/非イオン界面活性剤からなり、その含有量は固形分中の0.01〜20%とする。潤滑剤はワックスと金属石鹸とから成り、金属石鹸/ワックス質量比= 0.3〜5.0 とする。リチウムシリケートと潤滑剤と成形性改善剤の総量は10〜1100 mg/m2がよい。
【選択図】 図3
Description
例えば、特開平10−130861号公報 (特許文献1) および特開平11−58599 号公報 (特許文献2) に開示された潤滑皮膜は、有機樹脂と固形潤滑剤を添加したリチウムシリケート皮膜である。皮膜の造膜性と耐食性を確保するために、有機樹脂の添加が前提となっている。
(1) リチウムシリケートを皮膜成分とし、これに潤滑剤と成形性改善剤が配合された潤滑皮膜を備える潤滑処理鋼板であって、リチウムシリケートがLi/Si (原子比) = 0.8〜4.0 であって、かつ潤滑剤の量が潤滑剤/リチウムシリケート (質量比) = 0.1〜2.0 となる量であり、成形性改善剤がポリアクリル酸および非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上であって、成形性改善剤の皮膜中の含有量が0.01〜20質量%であることを特徴とする、潤滑処理鋼板。
(3) リチウムシリケートと潤滑剤と成形性改善剤の総量が10〜1100 mg/m2である、上記(1) または(2) の潤滑処理鋼板。
(6) pHが10〜13の範囲である、上記(4) または(5) の潤滑皮膜形成処理液。
ポリアクリル酸は、水溶性高分子であるが、水溶性が非常に高いため、樹脂として使用される物質ではなく、高分子電解質などとして使用されている。ポリアクリル酸はそのナトリウム塩などの塩の形態でもよい。
潤滑剤は、成形性以外に、化成処理性や接着性にも影響を及ぼす。
成形性改善剤は、特にLi/Si比が高い処理液において、液安定性の向上にも寄与する。その含有量が少なすぎると、液が分離しやすくなり、安定した操業を行う上で不利である。前述したように、液が不安定化し易いリチウムシリケートのLi/Si比が0.7 以上である場合、成形性改善剤を処理液の固形分濃度に対して0.01質量%以上、好ましくは0.1 質量%以上の量で含有させることにより、液の安定性が改善される。
処理液の塗布方法は、所定量の潤滑皮膜を形成できれば特に問わない。具体的な塗布方法としては、処理液をスプレーし、所定量にロールで絞るシャワーリンガー法、ロールにてコーティングするロールコータ法等が挙げられる。また、処理液後の乾燥については、皮膜が乾燥すれば充分であり、温風乾燥で対応可能であるが、常温放置や乾燥器内での加熱といった他の乾燥手段も採用可能である。本発明の潤滑処理鋼板において、潤滑皮膜は鋼板の片面だけに設けても、両面に設けてもよい。
化成処理性はアルカリ脱脂における潤滑皮膜の脱膜率 (皮膜除去率) により評価した。この脱膜性が高いほど、良好な化成皮膜が形成される。この化成処理性に基づいて、リチウムシリケートのLi/Si比が決定された。
脱脂剤:FC−4420(日本パーカライジング社製)、濃度=18 g/L、
脱脂温度:40℃、
脱脂時間:3分間の浸漬。
皮膜除去率=(脱脂前Si強度−脱脂後Si強度)/(脱脂前Si強度)
その結果を図1に示す。リチウムシリケート皮膜のLi量が、Li/Si比で0.4 以上であると皮膜の約3/4以上、Li/Si比が0.5 以上で皮膜のほぼ全部が脱膜可能となり、良好な脱膜性を確保することができた。
金属石鹸とワックスの配合量は成形性に基づいて検討された。
上記と同じJSC 270D冷延鋼板(板厚=0.8 mm) を用い、Li/Si比=1.0 のリチウムシリケート水溶液に含有させる潤滑剤総量と成形性改善剤の量を変化させた処理液を用いて潤滑皮膜皮膜を形成した。成形性改善剤を含有しない場合、処理液が分離することがあったが、攪拌により強制的に攪拌した処理液を直ちに鋼板に塗布して皮膜を形成させた。塗布と乾燥方法は上記と同じである。
潤滑剤:ステアリン酸亜鉛/ポリエチレンワックスの質量比=1、
成形性改善剤:ポリアクリル酸(処理液中の固形分に対して0%、0.1 %、1%)、
潤滑:一般防錆油2g/m2(Nox-Rust 550HN:パーカ興産社製)。
比較例として、同一冷延鋼板上に、高潤滑性防錆油としてプレトンR860(塗油量=2g/m2、杉村化学社製)を塗布したもの、およびミルボンドとしてMC560J(塗布量=1.2 g/m2、日本油脂社製)を施したものも、同様の円筒深絞り試験により評価した。
潤滑性は、成形限界しわ抑え圧により判定した。高潤滑性防錆油(プレトンR860)と同等以上で合格とし、ミルボンド(MC560J)と同等以上を好適とした。
次に、成形性改善剤の添加の有無による摺動性への影響をさらに調査する為、平板摺動時の動摩擦係数を調査した。試験は、後述するバウデン試験により、下記の皮膜条件で行った。潤滑皮膜の形成は上記と同様であった。
リチウムシリケートのLi/Si比=1.0 、
リチウムシリケート皮膜量:200 mg/m2 、
潤滑剤:総量200 mg/m2(潤滑剤/リチウムシリケート=1) 、
ステアリン酸亜鉛/ポリエチレンワックスの質量比=1、
成形性改善剤:ポリアクリル酸(処理液中の固形分に対して0%、5%)、
pH:11。
次に、高温潤滑剤 (金属石鹸) と低温潤滑剤 (ワックス) の配合比率の影響について、動摩擦係数により検討した。
潤滑剤:総量200 mg/m2(潤滑剤/リチウムシリケート=1) 、
ポリアクリル酸(対固形分):5質量%、
皮膜の総付着量:440 mg/m2 、
pH:11。
合否判定:
30往復させた際の摩擦係数をもって、合否判定を行った。その際の判定基準としては、室温時の高潤滑性防錆油の摩擦係数(=0.19)以下を合格とし、ミルボンドと同等以上の摩擦係数(≧0.07)であれば好適とした。
図6から、室温時の潤滑性については、低温潤滑剤であるワックスの比率が高いほど潤滑性に優れ、高温潤滑剤であるステアリン酸亜鉛の比率が増大すると潤滑性が低下し、型かじりが生じやすくなった。ステアリン酸亜鉛/ワックスの質量比≦5.0 では高潤滑性防錆油と同等以上の潤滑性を確保でき、この質量比が3.0 以下では、潤滑性がさらに改善され、ミルボンドを凌ぐ優れた潤滑性が得られた。
上記と同様のJSC 270D冷延鋼板 (板厚=0.8 mm)を用い、Li/Si比=1.0 のリチウムシリケートをベース組成とする処理液を用いて、潤滑剤の総量を変化させることにより、接着性に及ぼす潤滑剤量の影響を接着性試験により検討した。その他の処理条件は以下の通りであり、潤滑皮膜の形成は上記と同様に行った。
潤滑剤:ステアリン酸亜鉛/ポリエチレンワックス=1
潤滑:一般防錆油2g/m2(Nox-Rust 550HN:パーカ興産社製)
ポリアクリル酸量(対固形分):5質量%
pH:11
せん断引張り試験による引張強度である接着強度にて合否判定を行った。判定基準としては、構造用接着剤にて接着強度の低下問題が生じることのあるミルボンド以上の接着強度が確保できる領域を合格とした。また、高潤滑性防錆油を塗油したものと同等以上の接着性が確保できる領域を好適と判断した。
表1に示すように、Li量 (Li/Si比) の異なる各種リチウムシリケート水溶液を準備し、これにワックスとして水分散性ポリエチレンワックス (PEと略記) を、金属石鹸としてステアリン酸亜鉛 (St−Znと略記) を添加して溶解または分散させ、さらに成形性改善剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル (POLEと略記)(非イオン界面活性剤の一種)またはポリアクリル酸 (PAと略記) を添加して、潤滑皮膜形成処理液を作成した。処理液のpHは、適宜アルカリ (水酸化カリウム水溶液) または酸 (硫酸) によりpH11に調整した。
日本鉄鋼連盟規格の590 MPa 級の高降伏比型冷延鋼板であるJSC 590R (板厚=1.0 mm) を処理原板として用い、各種潤滑処理を行ったのちに、化成処理に供した。本試験において、高張力鋼を採用した理由は、高張力鋼板はもともと化成処理性が一般軟鋼に比較して劣っているためである。
◎: 0%、
○:1〜5%、
△:5〜10%、
×:>10%。
日本鉄鋼連盟規格の軟鋼板であるJSC 270D (板厚=0.8 mm)を処理原板として用い、各種潤滑処理(処理後、一般防錆油を2g/m2塗油)を行ったのちに、前述と同じ円筒深絞り試験(図2参照)を実施した。その評価基準は、前述同様、以下の通りである。
◎+:≧425 kN、
◎: ≧375 kN (ミルボンド以上) 、
○: 150〜375 kN (高潤滑性防錆油以上) 、
×: <150 kN。
日本鉄鋼連盟規格の490 MPa 級の汎用型熱延鋼板であるJSH440W(板厚=3.2 mm) を処理原板として用い、各種潤滑処理(処理後、一般防錆油を2g/m2塗油)を行ったのちに、クランクプレス曲げによる型かじり試験を実施した。その際の加工条件と評価方法は図10および下記に示す通りであり、しごき率=15%で連続10枚成形後の10枚目のサンプルでの正常皮膜残存率 (図10には正常部残存率と表示) により耐型かじり性を評価した。
サンプルサイズ:25×150 mm、
クリアランス:2.72 mm(しごき率=15%)、
成形回数:連続10枚、
判定基準:正常皮膜残存率
◎:100 %、
○:75〜100 %、
×:75%以下。
◎:プレスかすによる黒変発生なし、
○:プレスかすにより黒変発生するも、脱脂により黒変除去可能、
×:プレスかすによる黒変発生し、脱脂により除去不可能。
日本鉄鋼連盟規格の軟鋼板であるJSC 270D (板厚=0.8 mm) を処理原板として用い、各種潤滑処理(処理後、一般防錆油を2g/m2塗油)を行ったのちに、前述と同じ接着性試験(図8参照)を実施した。その評価基準は、前述同様、以下の通りである。
◎:≧4.0 kN (高潤滑性防錆油以上) 、
○: 3.5〜4.0 kN (ミルボンド以上) 、
×:<3.5 kN。
Claims (6)
- リチウムシリケートを皮膜成分とし、これに潤滑剤と成形性改善剤が配合された潤滑皮膜を備える潤滑処理鋼板であって、リチウムシリケートがLi/Si (原子比) = 0.8〜4.0 であって、かつ潤滑剤の量が潤滑剤/リチウムシリケート (質量比) = 0.1〜2.0 となる量であり、成形性改善剤がポリアクリル酸および非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上であって、成形性改善剤の皮膜中の含有量が0.01〜20質量%であることを特徴とする、潤滑処理鋼板。
- 潤滑剤がワックスと金属石鹸とから成り、金属石鹸/ワックス(質量比)= 0.3〜5.0 である、請求項1記載の潤滑処理鋼板。
- リチウムシリケートと潤滑剤と成形性改善剤の総量が10〜1100 mg/m2である、請求項1または2記載の潤滑処理鋼板。
- リチウムシリケートを皮膜成分とし、これに潤滑剤と成形性改善剤が配合された潤滑皮膜の形成用処理液であって、リチウムシリケートがLi/Si(原子比)= 0.8〜4.0 であって、かつ潤滑剤の量が潤滑剤/リチウムシリケート (質量比) = 0.1〜2.0 となる量であり、成形性改善剤がポリアクリル酸および非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上であって、成形性改善剤の含有量が固形分中の0.01〜20%であることを特徴とする潤滑皮膜形成処理液。
- 潤滑剤がワックスと金属石鹸とから成り、金属石鹸/ワックス(質量比)= 0.3〜5.0 である、請求項4記載の潤滑皮膜形成処理液。
- pHが10〜13の範囲である、請求項4または5記載の潤滑皮膜形成処理液。
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