JP2005187843A - 化成処理性及び接着性に優れた潤滑処理鋼板 - Google Patents

化成処理性及び接着性に優れた潤滑処理鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】化成処理性、接着性、成形性が高いレベルで要求される自動車の車体パネル等の車体構造部品に適した潤滑処理鋼板とその潤滑皮膜形成処理液を提供する。
【解決手段】リチウムシリケートを皮膜成分とし、これに潤滑剤と成形性改善剤が配合された潤滑皮膜を鋼板表面に形成する。リチウムシリケートはLi/Si原子比= 0.8〜4.0 であり、潤滑剤/リチウムシリケート質量比= 0.1〜2.0 とする。成形性改善剤はポリアクリル酸および/非イオン界面活性剤からなり、その含有量は固形分中の0.01〜20%とする。潤滑剤はワックスと金属石鹸とから成り、金属石鹸/ワックス質量比= 0.3〜5.0 とする。リチウムシリケートと潤滑剤と成形性改善剤の総量は10〜1100 mg/m2がよい。
【選択図】 図3

Description

本発明は、潤滑処理鋼板、特に化成処理性、接着性に優れた潤滑処理鋼板とその製造に用いる潤滑皮膜形成処理液とに関する。本発明の潤滑処理鋼板は、熱延鋼板と冷延鋼板のいずれを母材鋼板としても、化成処理性と接着性を確保することができ、かつ母材鋼種が高張力鋼であっても良好なプレス成形性と耐型かじり性を発現することができるので、自動車の車体構造部品や他の各種部品の加工にも使用することができる。
熱延鋼板、冷延鋼板を問わず、最近では、各種材料について高張力鋼が広く採用されるようになってきている。高張力鋼は本来成形性が十分でないことから、材料自体の成形性を高める手段を講じたり、あるいはそのような加工の難しい材料を成形する場合には、金型の焼付きが見られることから、金型の焼付き防止を図る必要がある。
鋼板の成形性を改善するために、ミルボンドで代表される有機系の潤滑皮膜を表面に塗布する方法があるが、潤滑処理皮膜の厚みが大きく、プレス加工時に皮膜の剥離によるプレかす発生が不可避であり、発生したプレスかすが加工表面を汚染したり、表面欠陥の原因になるという問題がある。特に、自動車用トルクコンバータ部品といった精密機器では、加工後のプレスかす、汚れ等は、内部の機械動作不良の原因になるため、プレスかすが低減でき、良好な可能性が確保できる潤滑処理が求められる。
このような課題に対して、次のようにシリケートを適用した潤滑処理に関する提案がいくつかなされている。
例えば、特開平10−130861号公報 (特許文献1) および特開平11−58599 号公報 (特許文献2) に開示された潤滑皮膜は、有機樹脂と固形潤滑剤を添加したリチウムシリケート皮膜である。皮膜の造膜性と耐食性を確保するために、有機樹脂の添加が前提となっている。
特開平9−57188 号公報 (特許文献3) にも、有機樹脂と固形潤滑剤を添加したリチウムシリケート皮膜が開示されている。これも、前述と同様に、皮膜の造膜性と耐食性の確保のために有機樹脂の添加を前提にしている。さらに、成形性の向上を目的とし、高軟化点のワックスと低軟化点のワックス併用する考え方が開示されている。
特開2002−307613号公報(特許文献4)では、化成処理性、接着性、成形性に優れた潤滑処理鋼板におけるリチウムシリケート皮膜が開示されている。具体的には、リチウムシリケートのLi分がLi/Si(原子比)= 0.4〜0.7 とし、かつ潤滑剤/リチウムシリケート (質量比) = 0.1〜2.0 とすることで、良好な化成処理性、接着性、成形性を得ることができる。
特開平10−130861号公報 特開平11−58599 号公報 特開平9−57188 号公報 特開2002−307613号公報
自動車の車体パネル用鋼板の性能に関するユーザーの要求はますます厳しくなる傾向がある。たとえば、特許文献4に記載の技術でも、成形性や化成処理性のさらなる改善が要求される場合がある。
本発明の課題は、化成処理性、接着性、成形性が高いレベルで要求される自動車の車体パネル等の車体構造部品にも適用可能な潤滑処理鋼板とその潤滑皮膜形成処理液を提供することである。
本発明者らは、特許文献4の技術をベースとして検討を進めたところ、皮膜中にさらに特定の物質を一定範囲の量で含有させることにより成形性が著しく向上することを見出した(以下、この物質を成形性改善剤という)。さらに、この成形性改善剤は、処理液安定性の向上にも寄与するため、特許文献4の技術では処理液安定性の面で困難であった、化成処理性のさらなる向上を図る上でも有利であることがわかった。
本発明は、次の通りである。
(1) リチウムシリケートを皮膜成分とし、これに潤滑剤と成形性改善剤が配合された潤滑皮膜を備える潤滑処理鋼板であって、リチウムシリケートがLi/Si (原子比) = 0.8〜4.0 であって、かつ潤滑剤の量が潤滑剤/リチウムシリケート (質量比) = 0.1〜2.0 となる量であり、成形性改善剤がポリアクリル酸および非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上であって、成形性改善剤の皮膜中の含有量が0.01〜20質量%であることを特徴とする、潤滑処理鋼板。
(2) 潤滑剤がワックスと金属石鹸とから成り、金属石鹸/ワックス(質量比)= 0.3〜5.0 である、上記(1) の潤滑処理鋼板。
(3) リチウムシリケートと潤滑剤と成形性改善剤の総量が10〜1100 mg/m2である、上記(1) または(2) の潤滑処理鋼板。
(4) リチウムシリケートを皮膜成分とし、これに潤滑剤と成形性改善剤が配合された潤滑皮膜の形成用処理液であって、リチウムシリケートがLi/Si(原子比)= 0.8〜4.0 であって、かつ潤滑剤の量が潤滑剤/リチウムシリケート (質量比) = 0.1〜2.0 となる量であり、成形性改善剤がポリアクリル酸および非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上であって、成形性改善剤の含有量が固形分中の0.01〜20%であることを特徴とする、潤滑皮膜形成処理液。
(5) 潤滑剤がワックスと金属石鹸とから成り、金属石鹸/ワックス(質量比)= 0.3〜5.0 である、上記(4) の潤滑皮膜形成処理液。
(6) pHが10〜13の範囲である、上記(4) または(5) の潤滑皮膜形成処理液。
本発明によれば、化成処理性、接着性、成形性が高いレベルで要求される車体パネルといった車体構造部品やトルクコンバータ等の精密機器にも適用可能な潤滑処理鋼板を得ることができる。特に、将来的に自動車用鋼材として適用の拡大が見込める高張力鋼板に、より過酷な成形に耐えうる改善された成形性を付与することができ、さらに、簡単な後処理を施すことによって、従来の処理では付与することが困難であった、自動車用鋼板としての必須性能である化成処理性と接着性を確保することができる点において、本発明の産業上の貢献度は極めて大である。
本発明の潤滑処理鋼板の母材鋼板の鋼種は特に制限されない。金型かじりなどが問題となる限り、高張力鋼はもちろん、一般の低炭、極低炭軟鋼等の鋼板にも広く本発明を適用できることは理解されよう。鋼板は熱延鋼と冷延鋼板のいずれであってもよい。用途として、化成処理性、プレス成形性、接着性を要求され、結果としてそれらを満足できるものであれば、特に制限されない。
本発明で利用する潤滑皮膜は、リチウムシリケートを皮膜成分とし、それに潤滑剤と成形性改善剤とを配合したものである。この潤滑皮膜は、通常添加されるアクリル樹脂、ウレタン樹脂などの有機樹脂の添加は行わずに、成形性改善剤を添加し、かつ潤滑剤を分散させたリチウムシリケートの処理液を用い、必要により水酸化リチウムを添加してLi/Si比 (原子比、以下同じ) を調整した後、これを鋼板表面に塗布し、乾燥させることにより形成することが好ましい。即ち、皮膜骨格はリチウムシリケートだけから構成することが好ましく、そこに潤滑剤および成形性改善剤を含有させたものである。なお、リチウムシリケート (ケイ酸リチウム) は、水溶液の塗布と乾燥により、微細なシリカ質乾燥ゲル粒子からなる強固なガラス質のシリケート皮膜を形成する。
成形性改善剤はポリアクリル酸および非イオン性界面活性剤から少なくとも1種からなる。
ポリアクリル酸は、水溶性高分子であるが、水溶性が非常に高いため、樹脂として使用される物質ではなく、高分子電解質などとして使用されている。ポリアクリル酸はそのナトリウム塩などの塩の形態でもよい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールなどが挙げられるが、これらに限られるものではない。
成形性改善剤は、皮膜中に (従って、処理液の固形分<リチウムシリケート、潤滑剤、成形性改善剤その他の皮膜形成時の不揮発成分>に基づいて) 0.01〜20質量%の量で含有させる。成形性改善剤の量がこの範囲外であると、目的とする成形性の改善が必ずしも得られないことがある。成形性改善剤の好ましい含有量は 0.1〜10質量%である。ただし、この量が0.01質量%程度あるいは20質量%程度であっても、後述するように、処理液の安定性改善には効果があり、それによってLi/Si比の値を増大させることができるため、化成処理性は改善される。
潤滑皮膜の皮膜成分であるリチウムシリケートは、そのリチウム量が、Li/Si比= 0.4〜4.0 の範囲内となるようにする。Li/Si比が高い方が化成処理性(化成処理前のアルカリ脱脂による脱膜性)が向上するので、特に優れた化成処理性が求められる場合は、Li/Si比を0.8 以上にすることが好ましい。
Li/Si比が0.7 を超えると、上記の成形性改善剤を含有しないリチウムシリケート処理液では、液安定性が劣化する。具体的には、処理液からリチウムシリケートが分離し、沈殿する。この場合も、強く攪拌する等の手段で沈殿成分を強制的に懸濁させながら塗布して潤滑処理皮膜を形成することは不可能ではないが、操作が煩雑となり、品質の安定性にも不安を生ずる。本発明では、成形性改善剤を0.01%以上の量で含有させることにより、Li/Si比が0.7 を超える高さになっても、処理液の安定性が確保され、安定した品質の潤滑処理鋼板を製造することが可能になる。
リチウムシリケートのLi/Si比は、市販のモル比の異なるリチウムシリケートを組合わせて使用したり、必要に応じてケイ酸コロイドや水酸化リチウムを添加することにより調整することができる。
プレス成形性の確保には、潤滑剤の添加が効果的である。本発明では、潤滑剤としてワックスと金属石鹸を併用することが好ましい。次に述べるように、ワックスは比較的低い温度域で、金属石鹸は比較的高い温度域で潤滑性を改善するので、ワックスを低温潤滑剤、金属石鹸を高温潤滑剤と称することができる。
ワックスは成形性の改善効果が大きいが、比較的融点の低いもの(融点≦130 ℃)が多い。そのため、ワックスは、特に室温からワックス融点までに比較的低温の温度域での成形性の確保には有効であるが、強加工時に金型焼付きを起こしやすい高温の温度域時(>130 ℃)での潤滑性は不充分である。
このような高温時の潤滑性を補うためには、金属石鹸を添加することが効果的であり、金属石鹸をワックス類と併用することにより、より広い温度域で良好な潤滑性の確保が可能となる。
ワックスとしては、ポリエチレンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス、テフロン(R)ワックス等が挙げられるが、シリケートが水溶性であるため、水溶性か、または水溶液中での分散性が良好な水分散性のワックスが好適である。具体的には、水分散性ポリエチレンワックス、水溶性テフロン(R)ワックス、それらの混合物等が挙げられる。
金属石鹸としては、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、ラウリル酸塩、ドデシルベンゼンスルフォン醸塩等が挙げられるが、そのなかでもステアリン酸亜鉛が好適である。
潤滑剤は、成形性以外に、化成処理性や接着性にも影響を及ぼす。
潤滑剤の添加量 (上記のようにワックスと金属石鹸を併用する場合には、その合計添加量) は、潤滑剤/リチウムシリケート比 (質量比) = 0.1〜2.0 、好ましくは 0.5〜1.5 となる量である。この範囲内の量であると、潤滑処理鋼板の加工性と化成処理性が改善された上で、接着性の確保も可能となる。上記質量比が2.0 を越えると、成形性改善効果が飽和するか、逆に皮膜の脆弱化に伴って成形性が劣化傾向となる上、後述するように、接着性も劣化する。一方、上記質量比が0.1 を下回ると、成形性が十分でなくなる。
本発明の好適態様に従って、潤滑剤として金属石鹸とワックスを併用する場合、耐型かじり性重視の際に高温時の潤滑性を確保するために、金属石鹸/ワックスの質量比は 0.3〜5.0 、好ましくは 0.5〜3.0 の範囲内とすることが好ましい。
接着性に関しては、リチウムシリケートを皮膜成分とする皮膜は、もともと接着性が良好である。このシリケート皮膜は、表面に多量のシラノール基(Si−OH基)を有し、このシラノール基が接着剤と反応することで潤滑皮膜と接着剤との密着力が向上するためと考えられる。一方、潤滑剤として使用するワックスは、非常に不活性で、基本的に接着剤とは反応しない。従って、シリケート皮膜中にワックスを多量に含有させると、潤滑皮膜の表面に存在するシラノール基が減少し、接着性が劣化する。しかし、潤滑剤としてワックスと併用する金属石鹸は、ワックスほど接着剤との相性が悪くないので、接着性の劣化抑制の点でも、金属石鹸の添加は効果的である。
従って、潤滑剤の合計添加量が多すぎると、皮膜が脆弱になり、潤滑皮膜と接着剤との界面剥離が生じやすくなるので、接着性の観点からも、潤滑剤の添加量は潤滑剤/シリケート質量比が2.0 以下となるようにする。また、接着性を確保するため、金属石鹸/ワックス比は0.3 以上に高めることが好ましい。
化成処理性に関しては、シリケート皮膜の中でもリチウムシリケートは化成処理性がよく、特にリチウム量がLi/Si比= 0.4〜4.0 の範囲が良好である。しかし、潤滑剤も化成処理性に影響を及ぼし、潤滑剤の添加量が多くなると、化成処理性は向上する。つまり、潤滑剤の添加量が多くなると、潤滑皮膜中のシリケート量が相対的に減少し、鋼板と接触するシリケート量が減少するため、アルカリ脱脂時の脱膜性が向上するからである。その際、潤滑剤として用いる金属石鹸の添加量が多いと、化成結晶が撤密になり、更に化成処理性が向上する。
その機構は必ずしも明確ではないが、鋼板表面に金属石鹸が吸着されているサイトを起点に化成結晶が成長して、化成結晶が均一に成長しやすくなるものと推定される。従って、化成処理性の確保の観点からも、潤滑剤の量を潤滑剤/シリケート比が0.1 以上となるようにし、かつ金属石鹸/ワックス比を0.3 以上にすることが有利である。
本発明の潤滑処理鋼板における潤滑皮膜の付着量は、前述した各成分 (即ち、リチウムシリケートと潤滑剤と成形性改善剤) の総量として、10〜1100 mg/m2とすることが好ましく、より好適な範囲は 100〜500 mg/m2 である。この付着量が10 mg/m2未満では、高潤滑性防錆油なみの成形性確保が困難であり、1100 mg/m2超では、潤滑皮膜が厚すぎて、接着性評価において皮膜内での凝集破壊が生じることと、化成処理性に関してアルカリ脱脂による脱膜が不十分となり、問題が生じる。付着量が100 mg/m2 以上あれば、成形性に優れるミルボンド以上の優れた成形性が確保でき、500 mg/m2 以下であれば、冷延鋼板と同等の化成処理性が確保できるために、より好適である。
本発明の潤滑処理鋼板の製造に使用する潤滑皮膜形成処理液は、リチウムシリケートと潤滑剤と成形性改善剤とを含有する。溶媒は好ましくは水であるが、アルコール等の水混和性有機溶媒を水と併用してもよい。各成分は、原則として、上述した所望の皮膜が得られるような量で配合すればよい。
ただし、成形性改善剤の含有量について若干補足する。
成形性改善剤は、特にLi/Si比が高い処理液において、液安定性の向上にも寄与する。その含有量が少なすぎると、液が分離しやすくなり、安定した操業を行う上で不利である。前述したように、液が不安定化し易いリチウムシリケートのLi/Si比が0.7 以上である場合、成形性改善剤を処理液の固形分濃度に対して0.01質量%以上、好ましくは0.1 質量%以上の量で含有させることにより、液の安定性が改善される。
処理液のpHも、液安定性に寄与する。本発明では、処理液のpHを10〜13とするのが好ましい。pH10未満ではシリケートの沈殿が生じやすい。pH13以上では成形性改善剤の効果が低下する。処理液のpHは、必要に応じて、各種のアルカリ性化合物または酸性化合物を添加することにより調整できる。
なお、リチウムシリケートのLi/Si比が上限の4.0 を超えると、成形性改善剤を配合しても、なお液の分離が起こる場合がある。この比は好ましくは3.0 以下である。
処理液の塗布方法は、所定量の潤滑皮膜を形成できれば特に問わない。具体的な塗布方法としては、処理液をスプレーし、所定量にロールで絞るシャワーリンガー法、ロールにてコーティングするロールコータ法等が挙げられる。また、処理液後の乾燥については、皮膜が乾燥すれば充分であり、温風乾燥で対応可能であるが、常温放置や乾燥器内での加熱といった他の乾燥手段も採用可能である。本発明の潤滑処理鋼板において、潤滑皮膜は鋼板の片面だけに設けても、両面に設けてもよい。
次に、本発明の潤滑処理鋼板における潤滑皮膜の構成を上記のように決定した理由について、実験データによって、より具体的に説明する。以下の説明において、リチウムシリケート皮膜量とは、リチウムシリケートのみの付着量を意味し、皮膜全体の付着量ではない。また、%は、特に指定しない限り質量%である。
以下の試験で使用した潤滑剤は、ワックスが水分散性ポリエチレンワックス、金属石鹸がステアリン酸亜鉛であり、成形性改善剤としてはポリアクリル酸 (平均分子量約10000)を使用した。また、処理液のpHは適宜アルカリまたは酸により調整した。
(化成処理性)
化成処理性はアルカリ脱脂における潤滑皮膜の脱膜率 (皮膜除去率) により評価した。この脱膜性が高いほど、良好な化成皮膜が形成される。この化成処理性に基づいて、リチウムシリケートのLi/Si比が決定された。
日本鉄鋼連盟規格における自動車用冷延鋼板JSC 270D(板厚=0.8 mm) の表面に、リチウムシリケート中のLi/Si比を変化させたシリケート皮膜(リチウムシリケート皮膜量=200 mg/m2)を形成した潤滑処理鋼板を準備した。
使用した処理液は、リチウムシリケートの水溶液中に成形性改善剤としてポリアクリル酸を液中固形分に対し5質量%の量で含有しており、pHは11であった。潤滑剤は含有させなかった。この処理液は、静置しておいても、シリケートの分離、沈殿が認められなかった。処理液を上記鋼板にスピンコータ法により塗布し、温風乾燥して、潤滑皮膜を形成した。
この潤滑処理鋼板について、下記条件下でアルカリ脱脂を行った:
脱脂剤:FC−4420(日本パーカライジング社製)、濃度=18 g/L、
脱脂温度:40℃、
脱脂時間:3分間の浸漬。
上記条件での浸漬脱脂を行った後、脱脂前後のSi量 (蛍光X線でのSiの強度)から、次式に従ってアルカリ脱脂による潤滑皮膜の皮膜除去率を求めた。
皮膜除去率=(脱脂前Si強度−脱脂後Si強度)/(脱脂前Si強度)
その結果を図1に示す。リチウムシリケート皮膜のLi量が、Li/Si比で0.4 以上であると皮膜の約3/4以上、Li/Si比が0.5 以上で皮膜のほぼ全部が脱膜可能となり、良好な脱膜性を確保することができた。
(成形性)
金属石鹸とワックスの配合量は成形性に基づいて検討された。
上記と同じJSC 270D冷延鋼板(板厚=0.8 mm) を用い、Li/Si比=1.0 のリチウムシリケート水溶液に含有させる潤滑剤総量と成形性改善剤の量を変化させた処理液を用いて潤滑皮膜皮膜を形成した。成形性改善剤を含有しない場合、処理液が分離することがあったが、攪拌により強制的に攪拌した処理液を直ちに鋼板に塗布して皮膜を形成させた。塗布と乾燥方法は上記と同じである。
リチウムシリケート皮膜量:150 mg/m2
潤滑剤:ステアリン酸亜鉛/ポリエチレンワックスの質量比=1、
成形性改善剤:ポリアクリル酸(処理液中の固形分に対して0%、0.1 %、1%)、
潤滑:一般防錆油2g/m2(Nox-Rust 550HN:パーカ興産社製)。
この潤滑処理鋼板について、円筒深絞り試験を行った。円筒深絞り試験条件は、図2に示す通りであった。
比較例として、同一冷延鋼板上に、高潤滑性防錆油としてプレトンR860(塗油量=2g/m2、杉村化学社製)を塗布したもの、およびミルボンドとしてMC560J(塗布量=1.2 g/m2、日本油脂社製)を施したものも、同様の円筒深絞り試験により評価した。
合否判定:
潤滑性は、成形限界しわ抑え圧により判定した。高潤滑性防錆油(プレトンR860)と同等以上で合格とし、ミルボンド(MC560J)と同等以上を好適とした。
結果を図3に示す。潤滑剤の総含有量が、潤滑剤/シリケートの質量比で0.1 以上であれば高潤滑性防錆油と同等以上、0.5 以上であればミルボンドと同等以上の円筒深絞り成形性が確保できることが判る。一方、上記質量比が1.5 を超えると成形性の劣化がおこり始め、2.0 超ではミルボンドより成形性が劣る傾向が確認できた。
また、成形性改善剤のポリアクリル酸を含有させることでも成形性が改善した。中でも、固形分に対し1%の量で含有させた場合、特に良好であった。
次に、成形性改善剤の添加の有無による摺動性への影響をさらに調査する為、平板摺動時の動摩擦係数を調査した。試験は、後述するバウデン試験により、下記の皮膜条件で行った。潤滑皮膜の形成は上記と同様であった。
鋼板:JSC 270D冷延鋼板 (板厚=0.8 mm) 、
リチウムシリケートのLi/Si比=1.0 、
リチウムシリケート皮膜量:200 mg/m2
潤滑剤:総量200 mg/m2(潤滑剤/リチウムシリケート=1) 、
ステアリン酸亜鉛/ポリエチレンワックスの質量比=1、
成形性改善剤:ポリアクリル酸(処理液中の固形分に対して0%、5%)、
pH:11。
その結果を図4に示す。ポリアクリル酸の添加によって、動摩擦係数を下がることが認められた。これが成形性改善に寄与するものと考えられる。
次に、高温潤滑剤 (金属石鹸) と低温潤滑剤 (ワックス) の配合比率の影響について、動摩擦係数により検討した。
前述の脱脂性評価と同じJSC 270D冷延鋼板 (板厚=0.8 mm)を用い、Li/Si比=1.0 のリチウムシリケートをベース組成とする処理液を用いて、潤滑剤のステアリン酸亜鉛 (高温潤滑剤) と水分散性ワックス (低温潤滑剤) の配合比率を変化させた。その他の処理条件は以下の通りであり、潤滑皮膜の形成は上記と同様に行った。
リチウムシリケート皮膜量:200 mg/m2
潤滑剤:総量200 mg/m2(潤滑剤/リチウムシリケート=1) 、
ポリアクリル酸(対固形分):5質量%、
皮膜の総付着量:440 mg/m2
pH:11。
極めて面圧の高い状態で型かじりが発現しやすいバウデン試験(付着滑り試験器)にて評価を実施した。より過酷なプレス条件下では、加工に伴う発熱で、金型、材温の上昇がおこり、より型かじりが発現しやすくなる状況をシミュレートするため、バウデン試験を、室温とともに、150 ℃に設定した板温でも実施した。バウデン試験の詳細な試験条件は、図5に記載する。
比較材として、前述と同様に高潤滑性防錆油(プレトンR860)とミルボンド(MC560J)でも同時に評価を行った。
合否判定:
30往復させた際の摩擦係数をもって、合否判定を行った。その際の判定基準としては、室温時の高潤滑性防錆油の摩擦係数(=0.19)以下を合格とし、ミルボンドと同等以上の摩擦係数(≧0.07)であれば好適とした。
その結果を図6 (常温での試験結果) および図7 (150 ℃での試験結果) に示す。
図6から、室温時の潤滑性については、低温潤滑剤であるワックスの比率が高いほど潤滑性に優れ、高温潤滑剤であるステアリン酸亜鉛の比率が増大すると潤滑性が低下し、型かじりが生じやすくなった。ステアリン酸亜鉛/ワックスの質量比≦5.0 では高潤滑性防錆油と同等以上の潤滑性を確保でき、この質量比が3.0 以下では、潤滑性がさらに改善され、ミルボンドを凌ぐ優れた潤滑性が得られた。
図7から、高温時(=150 ℃)の潤滑性については、上とは逆に、低温潤滑剤であるワックスに高温潤滑剤であるステアリン酸亜鉛を添加するにつれて、潤滑性が著しく向上した。室温時の高潤滑性防錆油と同等の摩擦係数≦0.19を確保するには、ステアリン酸亜鉛/ワックスの質量比≧0.3 が必要であった。この質量比が 0.5〜3.0 の範囲内では、高温時にも非常に優れた潤滑性が得られた。
高温時の潤滑性はミルボンドを施した場合でもかなり低下したが、本発明における金属石鹸/ワックスの好適な配合比率では、高温時にも極めて優れた潤滑性、従って、耐型かじり性が確保でき、ミルボンドを著しく凌ぐ優れた潤滑性が得られることがわかった。
(接着性)
上記と同様のJSC 270D冷延鋼板 (板厚=0.8 mm)を用い、Li/Si比=1.0 のリチウムシリケートをベース組成とする処理液を用いて、潤滑剤の総量を変化させることにより、接着性に及ぼす潤滑剤量の影響を接着性試験により検討した。その他の処理条件は以下の通りであり、潤滑皮膜の形成は上記と同様に行った。
リチウムシリケート皮膜量:150 mg/m2
潤滑剤:ステアリン酸亜鉛/ポリエチレンワックス=1
潤滑:一般防錆油2g/m2(Nox-Rust 550HN:パーカ興産社製)
ポリアクリル酸量(対固形分):5質量%
pH:11
接着性試験は、図8に示す条件で、エポキシ系構造用接着剤であるPV5306(ヘンケル白水社製)を用いて実施し、この接着を行った後のせん断引張り強度により接着性を評価した。その際、防錆油とのなじみの問題が生じる可能性もあるため、防錆油を塗油し、室温でスタック状態にして7日間の養生期間を取った後、接着を行って接着性を試験した。
比較例として、高潤滑性防錆油のプレトンR860(塗油量=2g/m2杉村化学社製)とミルボンドのMC560J(塗布量=1.2 g/m2、日本油脂社製)を塗布したものも、併せて接着試検に供した。
合否判定:
せん断引張り試験による引張強度である接着強度にて合否判定を行った。判定基準としては、構造用接着剤にて接着強度の低下問題が生じることのあるミルボンド以上の接着強度が確保できる領域を合格とした。また、高潤滑性防錆油を塗油したものと同等以上の接着性が確保できる領域を好適と判断した。
試験結果を図9に示す。成形性評価結果である図3では、潤滑剤の総量が多くても、高潤滑性防錆油以上の良好な円筒深絞り成形性が確保できていたが、図9から、潤滑剤総量が多くなると、接着強度が低下し、良好な接着性の確保が困難になってくることが判る。即ち、潤滑剤/リチウムシリケートの質量比が2.0 超になると、接着性に問題が生じるミルボンドよりも接着強度が低下し、接着性が劣化する。また、成形性評価(図3)においてミルボンドと同等以上の成形性が確保できていた、この質量比が 0.5〜1.5 の範囲内では、図9から、接着強度においても高潤滑防錆油と同等以上の接着強度が確保でき、好適範囲であることが判る。
本接着試験においては、冷延鋼板に一般防錆油のみを塗油した無処理材が最も接着性が良好であり、高潤滑性防錆油はやや劣るが、ミルボンドは防錆油を塗油したものに比較し接着強度が大きく低下しており、本試験による接着性評価が現状の接着問題をよくシミュレートできていることが判る。
なお、自動車車体パネルを想定すると、本実施例に使用したようなエポキシ系の構造用接着剤以外にも、高防錆スポットシーラー等の接着強度の低いマスチック型接着剤もあるが、本発明の潤滑処理鋼板では、これらのマスチック型接着剤でも良好な接着性を確保することができることも確認した。
(実施例1)
表1に示すように、Li量 (Li/Si比) の異なる各種リチウムシリケート水溶液を準備し、これにワックスとして水分散性ポリエチレンワックス (PEと略記) を、金属石鹸としてステアリン酸亜鉛 (St−Znと略記) を添加して溶解または分散させ、さらに成形性改善剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル (POLEと略記)(非イオン界面活性剤の一種)またはポリアクリル酸 (PAと略記) を添加して、潤滑皮膜形成処理液を作成した。処理液のpHは、適宜アルカリ (水酸化カリウム水溶液) または酸 (硫酸) によりpH11に調整した。
この処理液を、所定量の潤滑皮膜付着量 (リチウムシリケートと潤滑剤と成形性改善剤の合計量) になるように、鋼板の片面にロールコートした後、熱風乾燥(最高到達板温=50℃)を行って、潤滑皮膜を形成した。
比較材として、ミルボンドのMC560J(塗布量=1.2 g/m2)と比較用のシリケート系潤滑皮膜についても、併せて評価に供した。比較用のシリケート系潤滑皮膜は、リチウムシリケート(Li/Si比=0.4)の水溶液に、有機樹脂である水溶性アクリル樹脂を固形分に対して5質量%の量で添加し、さらに潤滑剤を含有させた、有機樹脂含有シリケート皮膜であった。
これらの各種の潤滑処理鋼板の化成処理性、プレス成形性、耐型かじり性、耐プレスかす性、接着性評価を下記の要領で試験した。それらの結果を表1にまとめて示す。
(化成処理性)
日本鉄鋼連盟規格の590 MPa 級の高降伏比型冷延鋼板であるJSC 590R (板厚=1.0 mm) を処理原板として用い、各種潤滑処理を行ったのちに、化成処理に供した。本試験において、高張力鋼を採用した理由は、高張力鋼板はもともと化成処理性が一般軟鋼に比較して劣っているためである。
潤滑処理鋼板の試験片に対して、アルカリ脱脂液FC−E2001(日本パーカライジング社製)を用いて浸漬脱脂を行った後、リン酸亜鉛系化成処理液PB-L3020(日本パーカライジング社製)を用いて指定条件下で化成処理を行った。形成された化成皮膜について外観観察に加えて、SEM観察(倍率×500 倍)によりリン酸塩結晶のミクロ的なスケ状態を観察して、スケ発生面積率を求めた。
判定基準:SEM観察によるスケ発生面積率
◎: 0%、
○:1〜5%、
△:5〜10%、
×:>10%。
(プレス成形性)
日本鉄鋼連盟規格の軟鋼板であるJSC 270D (板厚=0.8 mm)を処理原板として用い、各種潤滑処理(処理後、一般防錆油を2g/m2塗油)を行ったのちに、前述と同じ円筒深絞り試験(図2参照)を実施した。その評価基準は、前述同様、以下の通りである。
判定基準:成形限界しわ抑え圧
◎+:≧425 kN、
◎: ≧375 kN (ミルボンド以上) 、
○: 150〜375 kN (高潤滑性防錆油以上) 、
×: <150 kN。
(耐型かじり性)
日本鉄鋼連盟規格の490 MPa 級の汎用型熱延鋼板であるJSH440W(板厚=3.2 mm) を処理原板として用い、各種潤滑処理(処理後、一般防錆油を2g/m2塗油)を行ったのちに、クランクプレス曲げによる型かじり試験を実施した。その際の加工条件と評価方法は図10および下記に示す通りであり、しごき率=15%で連続10枚成形後の10枚目のサンプルでの正常皮膜残存率 (図10には正常部残存率と表示) により耐型かじり性を評価した。
判定基準として、耐型かじり性が良好なミルボンド(MC560J、塗布量=1.2 g/m2)が同条件で示す正常皮膜残存率=75%であることから、それ以上を合格とし、全く型かじりが発生しないものを最良とした。
加工条件:
サンプルサイズ:25×150 mm、
クリアランス:2.72 mm(しごき率=15%)、
成形回数:連続10枚、
判定基準:正常皮膜残存率
◎:100 %、
○:75〜100 %、
×:75%以下。
あわせて、本試験での摺動部である側壁外観を観察することにより、摺動部でのプレスかすの発生状況を評価した。型かじり試験により、潤滑皮膜が擦れ、剥離し、皮膜が型にビルドアップして鋼板に再付着することで、型かじり部にプレスかすが再付着して、その部分が黒く変色するが、そのプレスかすが蒸気脱脂により除去可能な場合は問題なしと判断した。
判定基準:側壁外観観察
◎:プレスかすによる黒変発生なし、
○:プレスかすにより黒変発生するも、脱脂により黒変除去可能、
×:プレスかすによる黒変発生し、脱脂により除去不可能。
(接着性)
日本鉄鋼連盟規格の軟鋼板であるJSC 270D (板厚=0.8 mm) を処理原板として用い、各種潤滑処理(処理後、一般防錆油を2g/m2塗油)を行ったのちに、前述と同じ接着性試験(図8参照)を実施した。その評価基準は、前述同様、以下の通りである。
判定基準:接着強度
◎:≧4.0 kN (高潤滑性防錆油以上) 、
○: 3.5〜4.0 kN (ミルボンド以上) 、
×:<3.5 kN。
Figure 2005187843
表1のNo.1〜6はLi/Si比=0.5 の例である。成形性改善剤を添加していない例(No.1)に対し、改善剤を添加した例(No.2〜6)の方が成形性が改善されていた。ただし、付着量が大きくなると化成処理性に劣ってくる傾向があった。これは、アルカリ脱脂時の脱膜が十分になされにくくなったためと考えられる。
No.7〜21は、Li/Si比=1.0 の例である。前述したLi/Si比=0.5 の例と比較して、全般に化成処理性が良好であった。しかし、成形性改善剤を添加しない処理液(No.9)では、しばらく静置しておくと液の分離と沈殿が生じた。この液を鋼板に塗布するには、処理液を強く攪拌して強制的に懸濁状態にする必要があった。これに対し、成形性改善剤を添加した液では、このような分離・沈殿は生じず、安定であった。
また、成形性改善剤を添加した場合、添加量が0.01質量%程度(No. 10、16) または20質量%程度(No.15、21)では、無添加のもの(No.9)と比較して、成形性が若干劣ったが、 0.1〜10%程度含有した系(No.11〜14、17〜20)では、上述した液の安定性に加えて成形性も向上し、従来例のミルボンド処理剤(No.27) と比較しても遜色ない性能を示していた。ただし、皮膜が厚くなると、化成処理性および接着性が劣る傾向があった。
No.22〜26は、Li/Si比=4.0 の系である。傾向としては、Li/Si比=1.0 と同様の傾向であった。
アルカリ脱脂による脱膜性に対するリチウムシリケートのリチウム量 (Li/Si原子比) の影響を示すグラフである。 円筒深絞り成形による成形性の試験条件と評価方法を示す模式図である。 成形性 (成形限界しわ抑え圧) に及ぼす潤滑剤および成形性改善剤の含有量の影響を示すグラフである。 動摩擦係数に及ぼす成形性改善剤の含有量の影響を示す図である。 バウデン試験による動摩擦係数の評価方法の模式図である。 室温時のバウデン試験における摩擦係数に及ぼす金属石鹸/ワックスの配合比率の影響を示すグラフである。 150 ℃時のバウデン試験における摩擦係数に及ぼす金属石鹸/ワックスの配合比率の影響を示すグラフである。 構造用接着剤による接着性の評価試験方法を示す模式図である。 接着強度に及ぼす潤滑剤量 (潤滑剤/リチウムシリケートの質量比) の影響を示すグラフである。 耐型かじり性の評価試験方法およびその測定方法を示す模式図である。

Claims (6)

  1. リチウムシリケートを皮膜成分とし、これに潤滑剤と成形性改善剤が配合された潤滑皮膜を備える潤滑処理鋼板であって、リチウムシリケートがLi/Si (原子比) = 0.8〜4.0 であって、かつ潤滑剤の量が潤滑剤/リチウムシリケート (質量比) = 0.1〜2.0 となる量であり、成形性改善剤がポリアクリル酸および非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上であって、成形性改善剤の皮膜中の含有量が0.01〜20質量%であることを特徴とする、潤滑処理鋼板。
  2. 潤滑剤がワックスと金属石鹸とから成り、金属石鹸/ワックス(質量比)= 0.3〜5.0 である、請求項1記載の潤滑処理鋼板。
  3. リチウムシリケートと潤滑剤と成形性改善剤の総量が10〜1100 mg/m2である、請求項1または2記載の潤滑処理鋼板。
  4. リチウムシリケートを皮膜成分とし、これに潤滑剤と成形性改善剤が配合された潤滑皮膜の形成用処理液であって、リチウムシリケートがLi/Si(原子比)= 0.8〜4.0 であって、かつ潤滑剤の量が潤滑剤/リチウムシリケート (質量比) = 0.1〜2.0 となる量であり、成形性改善剤がポリアクリル酸および非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上であって、成形性改善剤の含有量が固形分中の0.01〜20%であることを特徴とする潤滑皮膜形成処理液。
  5. 潤滑剤がワックスと金属石鹸とから成り、金属石鹸/ワックス(質量比)= 0.3〜5.0 である、請求項4記載の潤滑皮膜形成処理液。
  6. pHが10〜13の範囲である、請求項4または5記載の潤滑皮膜形成処理液。
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