JP2005186399A - インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】色材粒子と溶媒の追従性を含めてインクの状態を制御することにより、吐出部において最適なインクの濃縮状態を得て、吐出するインク液滴の色材粒子濃度を一定濃度に安定的に制御し、十分な濃度でにじみの少ない高画質な画像を、ノズルの詰まり等を生じることなく安定して記録できるインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インク液滴中の粒子濃度が所望の濃度となるように、インクの緩和時間を制御して、画像を記録することにより上記課題を解決する。
【選択図】図5

Description

本発明は、静電力を利用してインク組成物を吐出させる静電式のインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置に関する。
静電式のインクジェット記録方式は、帯電した色材粒子を溶媒(分散媒)に分散してなるインク組成物(以下、インクとする)を用い、画像データに応じて、インクジェットヘッドの各々の吐出部に所定の電圧を印加することにより、静電力を利用してインクの吐出を制御し、画像データに対応した画像を記録媒体上に記録するものである。
この静電式のインクジェット記録方法を採用するインクジェット記録装置としては、例えば特許文献1に開示のインクジェット記録装置が知られている。
図7に、特許文献1に開示される静電式インクジェット記録装置のインクジェットヘッドの概念図を示す。
このインクジェットヘッド110は、ヘッド基板112と、インクガイド114と、絶縁性基板116と、制御電極(吐出電極)118と、バイアス電圧源122と、信号電圧源124とを備えている。また、インクジェットヘッド110に対向する位置には対向電極120が備えられており、対向電極120のインクジェットヘッド110側の面には記録媒体Pが保持されている。
絶縁性基板116には、インクを吐出するための貫通孔(ノズル)126が形成される。この貫通孔126の配列方向に延在してヘッド基板112が設けられ、貫通孔に対応する位置のヘッド基板112上にはインクガイド114が配置される。インクガイド114は、貫通孔126を貫通して、先端部分114aが絶縁性基板116の記録媒体P側の表面よりも上部に突出している。また、インクガイド114には、その中央部に所定幅のインク案内溝114bが形成されている。
ヘッド基板112と絶縁性基板116とは所定の間隔を離して配置されており、両者の間にはインクQの流路128が形成されている。制御電極118に印加される電圧と同極性に帯電した色材粒子を含むインクQは、図示していないインクの循環機構により、このインク流路128内を例えば図中右側から左側へ向かって循環され、各貫通孔126にインクが供給される。
制御電極118は、絶縁性基板116の記録媒体P側の面の表面に、貫通孔126の周囲を囲むようにリング状に設けられている。また、制御電極118は、画像デ−タに応じてパルス電圧を発生する信号電圧源124に接続され、この信号電圧源124は、バイアス電圧源122を介して接地されている。一方、対向電極120は接地されている。
この静電式インクジェット記録装置において、制御電極118にバイアス電圧源122によりバイアス電圧が印加された状態で、信号電圧源124によりパルス電圧が重畳され、吐出オン状態とされると、インクガイド114の先端部分114aから色剤成分(色材粒子)を中心としたインク液滴Rが吐出する。吐出したインク液滴Rは対向電極120に引っ張られて飛翔し、記録媒体P上に着弾する。これにより、記録媒体Pに画像が形成される。
このような静電式インクジェット記録方式は、吐出部を高集積配置することが可能であり、高解像度化を図ることができるという利点を有する。しかしながら、吐出されるインク液滴Rの濃度、すなわち、インク液滴R中の色材粒子の量は、吐出部に印加される電圧により生じる電界によって、インクガイド114の先端部分114aに凝集する色材粒子の量に対応しているため、電界強度の変化やインク流の変化等によって左右されやすく、吐出されるインク液滴Rの濃度(色材粒子濃度)が不安定であるという問題がある。
インク液滴の濃度が不足した場合、画像濃度の低下やにじみを生じてしまう。しかし、インク液滴の濃度を上げるために、色材粒子に作用する静電力(クーロン力)を大きくして、メニスカス先端部におけるインクの濃縮度を高めようとすると、インク中の色材粒子が多くなり過ぎて、インクQの粘度が著しく上昇することとなり、応答性の低下やノズルの詰まりを生じる。
一方、特許文献2は、特許文献1とは異なる形態の、1つのインク噴出位置に複数の記録電極(吐出電極)が配列され、各記録電極の先端から液滴が噴出される静電式の液滴噴出装置において、粒状性材質(色材粒子)に作用するクーロン力と、溶媒に作用する誘電分極力をそれぞれ調整することにより、吐出される液滴の粒状性材質の含有率を調整する方法を開示している。具体的には、特許文献2は、ゼータ電位によって粒状性材質のクーロン力を制御し、また、液体(粒状性材質が分散した溶媒、インク)の誘電率εと導電率σの比で定まる電荷緩和時間τ(τ=ε/σ)によって、ある有限時間内にメニスカス表面に集積する溶媒の集積電荷による誘電分極力を制御するとしており、これらがそれぞれ所定の範囲となるように調整することにより、記録濃度を低下させることなく、高い応答性を維持できるとしている。
特開平10−230608号公報 特開2002−370364号公報
しかしながら、特許文献2の方法等によっても、インク液滴濃度の制御を充分には行えていないのが現状である。これは以下のように考えることができる。すなわち、インク中の色材粒子(荷電粒子)は、静電力を受けて運動する際に、溶媒からいわゆるストークス抵抗を受ける。そして、溶媒にはその反作用としての力が作用し溶媒も運動する。つまり、インクの濃縮の過程において、色材粒子には、静電力(クーロン引力)以外に溶媒からのストークス抵抗も作用し、溶媒には、誘電分極力以外に色材粒子からの力も作用する。
このように、色材粒子と溶媒とは、相互に作用を及ぼし合いながら追従して運動しているため、色材粒子および溶媒のそれぞれに作用する静電力を制御するだけでは、インクの色材粒子および溶媒の相互作用(追従性)を含んだ実際の挙動を制御することができない。そのため、インク液滴の色材粒子濃度を十分には制御できず、所定のインク液滴濃度を安定して得るのは困難である。
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、色材粒子と溶媒の追従性を含めてインクの状態を制御することにより、吐出部において最適なインクの濃縮状態を得て、吐出するインク液滴の色材粒子濃度を一定濃度に安定的に制御し、十分な濃度でにじみの少ない高画質な画像を、ノズルの詰まり等を生じることなく安定して記録できるインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は、色材粒子と溶媒の追従性を代表する指標として、次式で定義される色材粒子と溶媒との緩和時間T(sec)に着目し、この緩和時間が所定範囲となるように制御することによりメニスカス先端部におけるインクの濃縮状態を制御し、インク液滴の濃度を制御するものである。ここで、ρは、色材粒子の粒子密度(kg/m3 )、Dは、色材粒子の粒子径(m)、μは、溶媒の粘度(Pa・sec)である。
T=ρ*D^2/18/μ
なお、上述の引用文献2における電荷緩和時間τは、電荷がインクの界面に集積するのに要する時間を表すものであるのに対し、本発明で用いる緩和時間Tは、固液混相流における固体と液体の連成運動において、固体と液体とが互いに追従する時間を表すものであり、両者は全く異なるものである。
すなわち、本発明は、絶縁性溶媒に色材粒子を分散させたインクに静電力を作用させることにより、インクの曳糸を形成し、前記インクの曳糸よりインクを分断してインク液滴を形成し、前記インク液滴を記録媒体上に着弾せしめることにより画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インク液滴中の粒子濃度が所望の濃度となるように、前記インクの緩和時間を制御して、画像を記録するようにしたことを特徴とするインクジェット記録方法を提供するものである。
ここで、複数色の前記インクを用い、前記緩和時間は、各色の前記インク間で所定の関係となるように設定されるのが好ましい。
また、予め求められた前記インクの温度と前記緩和時間との関係から、前記緩和時間が所定の値となる適正インク温度を取得し、前記適正インク温度となるように前記インクの温度を調整するのが好ましく、
あるいは、予め求められた前記インクの粘度と前記緩和時間との関係から、前記緩和時間が所定の値となる適正インク粘度を取得し、前記適正インク粘度となるように前記インクの温度を調整するのが好ましい。
また、前記記録媒体の種類および記録部の環境温度の少なくとも一方に応じて、前記適正インク温度および前記適正インク粘度を変更するのが好ましい。
また、前記緩和時間は、10-8sec以上10-7sec以下であるのが好ましい。
また、本発明は、絶縁性溶媒に色材粒子を分散させたインクに静電力を作用させることにより、インクの曳糸を形成し、前記インクの曳糸よりインクを分断してインク液滴を形成し、前記インク液滴を記録媒体上に着弾せしめることにより画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インク液滴中の粒子濃度が所望の濃度となるように、前記インク中の色材粒子密度、色材粒子径および溶媒粘度の少なくとも1つを制御することを特徴とするインクジェット記録方法を提供するものである。
また、本発明は、絶縁性溶媒に色材粒子を分散させたインクに静電力を作用させて、インクの曳糸を形成し、前記インクの曳糸よりインクを分断してインク液滴を吐出する吐出手段を備え、吐出した前記インク液滴を記録媒体上に着弾せしめることにより画像を記録するインクジェット記録装置であって、
前記インクの温度を検出するインク温度検出手段と、
前記インクの温度を調整するインク温度調整手段と、
予め求められた、前記インクの温度と前記インクの緩和時間との関係を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段から、前記緩和時間が所定値となる適正インク温度を取得し、前記インク温度検出手段によって検出された前記インクの温度が、前記適正インク温度と一致するように、前記インク温度調整手段を制御する制御手段とを有することを特徴とするインクジェット記録装置を提供するものである。
また、本発明は、絶縁性溶媒に色材粒子を分散させたインクに静電力を作用させて、インクの曳糸を形成し、前記インクの曳糸よりインクを分断してインク液滴を吐出する吐出手段を備え、吐出した前記インク液滴を記録媒体上に着弾せしめることにより画像を記録するインクジェット記録装置であって、
前記インクの粘度を検出するインク粘度検出手段と、
前記インクの温度を調整するインク温度調整手段と、
予め求められた、前記インクの粘度と前記インクの緩和時間との関係を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段から、前記緩和時間が所定値となる適正インク粘度を取得し、前記インク粘度検出手段によって検出された前記インクの粘度が、前記適正インク粘度と一致するように、前記インク温度調整手段を制御する制御手段とを有することを特徴とするインクジェット記録装置を提供するものである。
上記いずれかのインクジェット記録装置において、前記記録媒体の種類を検出する記録媒体種検出手段、前記記録媒体の種類を入力する記録媒体種入力手段、および、記録部の環境温度を検出する環境温度検出手段の少なくとも1つを有し、
前記制御手段によって、前記記録媒体の種類および前記環境温度の少なくとも一方に応じて、前記適正インク温度および前記適正インク粘度が変更されるのが好ましい。
また、前記緩和時間は、10-8sec以上10-7sec以下であるのが好ましい。
また、前記吐出手段は、
少なくとも1つのノズルが穿孔され、前記ノズルのそれぞれを囲む様に吐出電極が配置された絶縁性基板、および、前記ノズルの略中央に、その先端部を前記インクの吐出方向に向けて配置されたインクガイドを有する吐出ヘッドと、
前記インクガイドの先端に対向する位置に配置され、前記記録媒体を保持する対向電極と、
前記ヘッドに前記インクを供給するインク供給手段とを有するのが好ましい。
また、複数色の前記インクのそれぞれに対応する複数の前記吐出手段を備え、
前記制御手段によって、前記緩和時間が、各色の前記インク間で所定の関係となるように設定されるのが好ましい。
本発明の静電式のインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置によれば、色材粒子と溶媒の追従性を表す緩和時間によって、インクの状態を調整し、あるいは、インクの色材粒子の粒子密度、粒子径および溶媒の粘度の少なくとも1つによって、インクの状態を調整することにより、吐出部において、詰まりを生じることなく、尚且つ、一定の高いインクの濃縮度とすることができる。従って、常に一定の高い濃度のインク液滴を吐出することができ、にじみの無い、濃度および画質の安定した画像を記録することができる。
また、本発明によれば、複数種のインクを用いた場合にも、各インク間で緩和時間が同一または所定の比率となるように各インクの状態が制御されるので、各インクによる記録ドットのにじみや光学的濃度が同程度で安定した画質の画像を記録することができる。
また、本発明によれば、上記のインク状態の調整に加え、さらに、記録媒体の種類および記録部の環境温度に応じて、インク状態の調整が加えられるので、記録媒体の種類または記録部の環境温度が変化した場合にも常に安定した画質の画像を記録することができる。
以下、本発明のインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置について、添付の図面に示される好適実施形態を基に詳細に説明する。
以下では、静電式のインクジェット記録装置において、インク中の色材粒子が正帯電している場合を例にとって説明を行うが、本発明はこれには限定されず、逆に、インク中の色材粒子を負に帯電させたものを用いてもよい。その場合は、記録に作用する各部の極性を以下の例とは逆にすればよい。
図1は、本発明のインクジェット記録方法を実施する本発明のインクジェット記録装置の一実施形態の構成概略図である。同図に示すインクジェット記録装置10(以下、記録装置10とする)は、静電力により、帯電した色材粒子(着色荷電粒子)を含むインクの吐出を制御し、記録媒体(記録用紙)P上に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色印刷をしてフルカラー画像を記録するもので、記録媒体Pの保持手段12、搬送手段14および記録手段16と、溶媒回収手段18と、筐体22とを備えている。
記録媒体Pの保持手段12は、記録前の記録媒体Pを保持する給紙トレイ24と、フィードローラ26と、記録後の記録媒体Pを保持する排出トレイ28とを備えている。
給紙トレイ24は、その先端部が給紙トレイ24の装着部(図中筐体22の左面下部)の内部に挿入され、装着部の所定位置に着脱可能なものである。給紙トレイ24が装着部に完全に装着された状態では、その挿入方向の先端部が装着部の奥端部に接触し、給紙トレイ24の後端部は筐体22の外部に突出した状態で装着される。また、フィードローラ26は、給紙トレイ24の装着部の奥部近傍に配置されている。
給紙トレイ24内には、記録前の記録媒体Pが複数枚積層されてストックされる。画像の記録時には、フィードローラ26により、記録媒体Pが給紙トレイ24から1枚ずつ取り出され、記録媒体Pの搬送手段14に供給される。
排出トレイ28は、記録媒体Pの排出部(図中筐体22の左面の中央部)の近傍に、その先端部側(記録媒体Pの搬送方向側)が筐体22の外部に位置し、その後端部側が筐体22の内部に位置するように配設されている。また、排出トレイ28は、その先端部が後端部よりも低くなるように、所定の傾斜角度で配設されている。
記録後の記録媒体Pは、搬送手段14により搬送されて排出部から排出され、排出トレイ28内に順次積層されてストックされる。
続いて、記録媒体Pの搬送手段14について説明する。
搬送手段14は、記録媒体Pを静電吸着し、給紙トレイ24から排出トレイ28まで所定の経路に沿って搬送するものであり、搬送ローラ対30と、搬送ベルト32と、ベルトローラ34a、34b、34cと、プラテン36と、記録媒体Pの帯電装置38および除電装置40と、分離爪42と、ガイド44と、定着ローラ対46とを備えている。なお、搬送手段14としては、図示されるもの以外にも適宜、搬送ローラ対や搬送ベルト等の通常の搬送手段が、記録媒体Pを搬送するのに適当な間隔で配置されていてもよい。
搬送ローラ対30は、記録媒体Pの搬送経路上の、フィードローラ26と搬送ベルト32との間の位置に設けられている。
フィードローラ26により給紙トレイ24から取り出された記録媒体Pは、この搬送ローラ対30により挟持搬送され、搬送ベルト32上の所定の位置に供給される。
記録媒体Pの帯電装置38は、スコロトロン帯電器48と、負の高圧電源50とを備えている。スコロトロン帯電器48は、記録媒体Pの搬送経路上の、搬送ローラ対30と記録手段16との間の位置で、搬送ローラ対30により、記録媒体Pが供給される位置の搬送ベルト32の表面に対向する位置に配置されている。また、負の高圧電源50の負側の端子はスコロトロン帯電器48に接続され、その正側の端子は接地されている。
記録媒体Pの表面は、負の高圧電源50に接続されたスコロトロン帯電器48により所定の負の高電位に均一に帯電され、常に一定のDCバイアス電圧(例えば、約−1.5kV)が印加された状態となる。また、これにより、記録媒体Pは搬送ベルト32の絶縁性を有する表面上に静電吸着される。
搬送ベルト32は、ループ状のエンドレスベルトであり、3つのベルトローラ34a、34b、34cによって三角形状に張架されている。また、ベルトローラ34bおよび34cの間の、記録手段16のインクジェットヘッドに対向する位置にある搬送ベルト32の内側には、平板状のプラテン36が配置されている。プラテン36は、ベルトローラ34bおよび34cの外周を結ぶ線よりヘッド側に張り出すように配置することにより、ベルトにヘッド方向に向かう張力を付与し、ベルトのばたつきを抑えても良い。
搬送ベルト32は、記録媒体Pが静電吸着される側の面(表面)が絶縁性(絶縁シート32b)、ベルトローラ34a、34b、34cと接触する側の面(裏面)が導電性(電極基板32a)のものである。ベルトローラ34bは接地されており、これにより、記録手段16のインクジェットヘッドに対向する位置の搬送ベルト32は、インクジェットヘッドの対向電極として機能する。
ベルトローラ34a、34b、34cのうちの少なくとも1つは図示していない駆動源に接続されており、記録時には、所定の速度で回転駆動される。これにより、搬送ベルト32は、記録時に図中の矢印方向へ移動する。従って、搬送ベルト32の表面に静電吸着された記録媒体Pは、搬送ベルト32の移動とともに移動し、記録手段16の前を副走査搬送される。
記録媒体Pの除電装置40は、コロトロン除電器52と、交流電圧源53と、高圧電源54とを備えている。コロトロン除電器52は、記録媒体Pの搬送経路上の、記録手段16のインクジェットヘッドと分離爪42との間の位置で、記録後の記録媒体Pが搬送される位置の搬送ベルト32の表面に対向する位置に配置されている。また、高圧電源54の一端は交流電圧源53を介してコロトロン除電器52に接続され、他端は接地されている。
記録後の記録媒体Pは、高圧電源54に交流電圧源53を介して接続されたコロトロン帯電器52により除電される。これにより、記録媒体Pは、搬送ベルト32から分離されやすくなる。
また、分離爪42、ガイド44、および定着ローラ対46は、記録媒体Pの搬送経路上の、除電装置40の下流側にこの順に配置されている。
除電装置40により除電された記録媒体Pは、分離爪42により搬送ベルト32上から分離され、ガイド44に沿って定着ローラ対46に供給される。定着ローラ対46は、ヒートローラを備えるローラ対であり、記録媒体Pは、定着ローラ対46により挟持搬送されつつ、その上に記録された画像は、接触加熱され定着される。定着後の記録媒体Pは排出部から排出され、排出トレイ28内に順次積層されてストックされる。
続いて、記録媒体Pの記録手段16について説明する。
記録手段16は、静電力により、記録媒体P上に4色印刷をしてフルカラー画像を記録するものであり、インクジェットヘッド56と、制御部58と、インク循環系60と、記録媒体Pの位置検出装置62とを備えている。
インクジェットヘッド56は、同時に1行分の画像を記録することが可能なラインヘッドであり、フルカラー画像を記録するためのシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色の吐出ヘッド80(80C,80M,80Y,80K)を備えている。インクジェットヘッド56は、帯電した色材粒子を含むインクの吐出を静電力により制御する方式のものである。この吐出ヘッドの構造および作用については後に詳述する。
記録媒体Pの位置検出装置62は、フォトセンサ等の従来公知の位置検出手段であり、記録媒体Pの搬送経路上の、帯電装置38とインクジェットヘッド56との間の位置で、記録媒体Pが搬送される搬送ベルト32の表面に対向する位置に配置されている。位置検出装置62により記録媒体Pの位置が検出され、その位置情報は制御部58に供給される。
制御部58は、筐体22内部の図中右面に取り付けられている。制御部58は、インクジェットヘッド56と駆動信号ケーブルを介して接続されており、インクジェットヘッド56のインクの吐出動作を制御する。制御部58には、外部装置から画像データが入力され、位置検出装置62から記録媒体Pの位置情報が入力される。制御部58は、この画像データおよび記録媒体Pの位置情報に応じてインクジェットヘッド56の各色の吐出ヘッドからの吐出のオン/オフを制御する。また、制御部58は、インクジェットヘッド56においてインクQが所定の濃縮度に濃縮され、所定の色材粒子濃度を有するインク液滴Rが吐出されるように、後述するインク温度調整手段70を制御してインクタンク64内のインクQの温度を制御する。
記録媒体Pは、搬送手段14により、インクジェットヘッド56の前を所定の速度で副走査搬送されつつ、インクジェットヘッド56から画像データに応じて各色のインクが吐出され、その表面に4色印刷が行われてフルカラー画像が記録される。
インク循環系60は、インクジェットヘッド56にインクQを供給するインク供給手段であり、インクタンク64と、ポンプ(図示省略)と、インクの供給路および回収路66とを備えている。図示例では、インクタンク64は、筐体22内部の底面上に配置され、インクの供給路および回収路66を介してインクジェットヘッド56と接続されている。インク循環系60、インクタンク64およびポンプ等は、各色のインクごとに備えられている。
インクタンク64は、各色のインクタンク64C,64M,64Y,64Kで構成されており、各色のインクタンク64C等の中には、各色の色材粒子とこれを分散させる溶媒(分散媒)とを含む4色のインクがそれぞれ備えられている。インクタンク64内の各色のインクQは、ポンプにより、インクの供給路66を介して、インクジェットヘッド56の各色の吐出ヘッドに供給される。また、画像記録に使用されなかった余分な各色のインクQは、ポンプにより、インクの回収路66を介してインクタンク64内に回収される。
各色のインクタンク64C等には、インク温度検出手段68、インク温度調整手段70および攪拌手段72がそれぞれ設けられている。インク温度検出手段68は制御部58に接続されており、インク温度検出手段68による温度検出結果は制御部58に送られる。また、インク温度調整手段70は、制御部58によって制御される。これらについては後に詳述する。攪拌手段72は、インクタンク内のインクQを攪拌し、インクQ中の色材粒子を均一に分散させると共に、温度を均一にする。また、図示しないが、インクタンク64には、新しいインクの供給機構等が適宜設けられている。
ここで、記録装置10で使用されるインクQについて説明する。
次に、記録装置10で使用されるインクQ(インク組成物)について説明する。
本発明で使用するインクQは、溶媒と、色材を少なくとも含む粒子(色材粒子)、この色材粒子に荷電を発生させる荷電調整剤とを、少なくともを有し、前記荷電調整剤によって荷電を発生された色材粒子(荷電粒子)を溶媒に分散してなるインク組成物である。本発明で使用するインクQの好適な一例として、以下のものが例示される。
本発明で使用するインクQにおいて、溶媒は、高い電気抵抗率、特に、1010Ωcm以上を有する誘電性の液体であることが好ましい。電気抵抗率の低い溶媒を使用すると、隣接する記録電極間で電気的導通を生じさせるため、本発明には不向きである。
また、溶媒(誘電性液体)の比誘電率は5以下が好ましく、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3.5以下である。分散倍の比誘電率をこの範囲とすることによって、溶媒の色材粒子(荷電粒子)に有効に電界が作用するため好ましい。
このような溶媒としては、直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、または芳香族炭化水素、およびこれらの炭化水素のハロゲン置換体、シリコーンオイル等が好ましく例示される。
一例として、ヘキサン、ヘプタン、オクタン.イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、トルエン、キシレン、メシチレン、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM(アイソパー:エクソン社の商品名)、シェルゾール70、シェルゾール71(シェルゾール:シェルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ:スピリッツ社の商品名)、KF−96L(信越シリコーン社の商品名)等を、単独または混合して用いることができる。
インクQ全体に対する溶媒の含有量は、20〜99質量%が好ましい。溶媒の含有量を20質量%以上とすることにより、良好に色材粒子を溶媒に分散することができ、99質量%以下とすることにより、色材粒子の含有量を充足できる。
本発明で使用するインクQにおいて、色材粒子に含有される色材は、公知の染料および顔料を使用することができ、用途や目的に応じて選択することができる。
例えば、記録された画像記録物(印刷物)の色調の観点からは、顔料を用いることが好ましい(例えば、技術情報協会発行「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」2001年12月25日第1刷参照。以下「参考文献」とする)。特に、オフセット印刷用インクやプルーフに用いられる顔料を使用すると、オフセット印刷物と同様な色調が得られるので好ましい。
また、本発明で使用するインクQにおいては、用いる色材を変更することにより、イエロー、マゼンタ、シアン、墨(ブラック)の4色、あるいはさらに、他の色のインクを作成することができる。
イエローインク用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー74等のモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー17等のジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180等の非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100等のアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95等の縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115等の酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18等の塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー等のアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT等のイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー等のキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー等のきイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153等のニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117等の金属錯塩アゾメチン顔料、C.I.ピグメントイエロー139等のイソインドリノン顔料などが挙げられる。
マゼンタインク用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド3等のモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38等のジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1等やC.I.ピグメントレッド57:1等のアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144等の縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174等の酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81等の塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88等のチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194等のペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149等のペリレン顔料、C.I.ピグメントレッド122等のキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180等のイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83等のアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
シアンインク用の顔料としては、例えば、C.Iピグメントブルー25等のジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15等のフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24等の酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1等の塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18等のアルカリブルー顔料等が挙げられる。
墨インク用の顔料としては、例えば、アニリンブラック系顔料等の有機顔料や酸化鉄顔料、およびファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料類等が挙げられる。
更にマイクロリス−A,−K,−Tなどのマイクロリス顔料に代表される加工顔料も好適に使用できる。その具体例としてはマイクロリスイエロー4G−A,マイクロリスレッドBP−K,マイクロリスブルー4G−T,マイクロリスブラックC−Tなどが挙げられる。
また、本発明で使用するインクQは、イエロー、マゼンタ、シアン、および墨の各色のインク以外にも、炭酸カルシウムや酸化チタン顔料を用いた白インク、アルミニウム粉を用いた銀インク、銅合金を用いた金インク等であってもよい。
顔料は、基本的には一色につき一種類の顔料を使うことが、インク製造の簡便性の点で好ましい。あるいは、色相調整として、例えば、墨インク用に、カーボンブラックにフタロシアニンを混合するなど、場合によっては2種以上を併用することも好ましい。また、ロジン処理等、公知の方法により顔料を表面処理した後に使用してもよい(前記参考文献参照)。
インクQ全体に対する色材の含有量は、0.1〜50質量%であるのが好ましい。顔料の含有量を0.1質量%以上とすることにより、顔料の量が充足し、印刷物において充分良好な発色が得られ、また、50質量%以下とすることにより、色材を含有する粒子を溶媒に良好に分散させることができる。インクQ全体に対する顔料の含有量は、さらに好ましくは、1〜30質量%である。
本発明で使用するインクQにおいて、色材粒子は、顔料等の色材を溶媒に直接、分散(粒子化)したものであってもよいが、好ましくは、被覆剤で色材を被覆してなる粒子を色材粒子とし、これを溶媒に分散する。
被覆剤で被覆することにより、色材自身が持つ荷電を遮蔽して、望ましい荷電特性を付与することができる。また、インクQに色材を被覆剤で被覆してなる色材粒子を用いることにより、メディア(記録媒体)に静電インクジェットによる画像記録を行った後、ヒートローラ等を用いた加熱定着によって、画像をより安定化させることが可能になる。
被覆剤としては、例えば、ロジン類、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、 (メタ)アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニールアルコールのアセタール変性物、ポリカーボネート等を挙げられる。
これらのうち、粒子形成の容易さの観点から、重量平均分子量が2,000〜1000,000の範囲内であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.0〜5.0の範囲内であるポリマーが好ましい。さらに、前記定着の容易さの観点から、軟化点、ガラス転移点または、融点のいずれか1つが40〜120℃の範囲内にあるポリマーが好ましい。
本発明において、被覆剤として特に好適に使用されるポリマーは、下記一般式(1)〜(4)で示される構成単位のいずれか1つを少なくとも含有するポリマーである。
Figure 2005186399
上記式中、X11は、酸素原子または−N( R13) −を示す。R11は、水素原子またはメチル基を示し、R12は、炭素数1から30個の炭化水素基を示し、R13は、水素原子または炭素数1から30の炭化水素基を示す。R21は、水素原子または炭素数1から20の炭化水素基を示す。R31、R32およびR41は、それぞれ、炭素数1から20個の2価の炭化水素基を示す。なお、R12、R21、R31、R32、R41の炭化水素基中に、エーテル結合、アミノ基、ヒドロシキ基、または、ハロゲン置換基を含んでいても良い。
一般式(1)で示される構成単位を含有するポリマーは、対応するラジカル重合性モノマーを公知の方法によりラジカル重合することにより得られる。
用いられるラジカル重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、 (メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、および、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
一般式(2)で示される構成単位を含有するポリマーは、対応するラジカル重合性モノマーを公知の方法によりラジカル重合することにより得られる。
用いられるラジカル重合性モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、4−メチルスチレン等が挙げられる。
一般式(3)で示される構成単位を含有するポリマーは、対応するジカルボン酸または酸無水物とジオールとを公知の方法で脱水縮合することにより得られる。
用いられるジカルボン酸および酸無水物としては、コハク酸無水物、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−フェニレンジ酢酸、ジグリコール酸等が挙げられる。また、用いられるジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、ジエチレングリコール等が挙げられる。
一般式(4)で示される構成単位を含有するポリマーは、対応するヒドロキシ基を有するカルボン酸をまたは公知の方法で脱水縮合するかまたは、対応するヒドロキシ基を有するカルボン酸の環状エステルを公知の方法で開環重合することにより得られる。
用いられるヒドロキシ基を有するカルボン酸またはその環状エステルとしては、6−ヒドロキシヘキサン酸、11−ヒドロキシウンデカン酸、ヒドロシキ安息香酸、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
一般式(1)〜(4)で示される構成単位のいずれか1つを少なくとも含有するポリマーは、一般式(1)〜(4)で示される構成単位のホモポリマーであってもよく、他の構成成分との共重合体(コポリマー)であっても良い。また、これらのポリマーは、被覆剤として単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
インクQ全体に対する被覆剤の含有量は、0.1〜40質量%であることが好ましい。被覆材の含有量を0.1質量%以上とすることにより、被覆剤の量が充足し、充分な定着性が得られるとともに、40質量%以下とすることにより、色材を被覆剤で被覆してなる色材粒子を良好に形成することができる。
本発明で使用するインクQにおいては、前述のような色材粒子を溶媒中に分散(粒子化)するが、粒子直径を制御し、かつ組成物中における色材粒子の沈降を抑制するために、分散剤を使用するのが、さらに好ましい。
好適な分散剤としては、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステルや、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステルに代表される界面活性剤が挙げられる。また、例えば、スチレンとマレイン酸のコポリマー、およびそのアミン変性物、スチレンと(メタ)アクリル化合物のコポリマー、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリエチレンと(メタ)アクリル化合物のコポリマー、ロジン、BYK−160、162、164、182(ビックケミー社製のポリウレタン系ポリマー)、EFKA−401、402(EFKA社製のアクリル系ポリマー)、ソルスパース17000,24000(ゼネカ社製のポリエステル系ポリマー)等が挙げられる。本発明においては、インクQの長期間保存安定性の観点から、分散剤は、重量平均分子量が1,000〜1000,000の範囲内であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.0〜7.0の範囲内であるポリマーが好ましい。さらに、グラフトポリマーまたはブロックポリマーを用いることが、最も好ましい。
本発明で使用するインクQにおいて、分散剤として特に好適に用いられるポリマーは、下記一般式(5)および(6)で示される構成単位の少なくともいずれか一方からなる重合体成分と、下記一般式(7)で示される構成単位を少なくともグラフト鎖として含有する重合体成分とを、少なくとも含有するグラフトポリマーである。
Figure 2005186399
上記式中、X51は、酸素原子または−N( R53) −を示す。R51は、水素原子またはメチル基を示し、R52は、炭素数1から10個の炭化水素基を示し、R53は、水素原子または炭素数1から10の炭化水素基を示す。R61は、水素原子、炭素数1から20の炭化水素基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、または、炭素数1から20個のアルコキシ基を示す。X71は、酸素原子または−N( R73) −を示す。R71は、水素原子またはメチル基を示し、R72は、炭素数4から30個の炭化水素基を示し、R73は、水素原子または炭素数1から30の炭化水素基を示す。なお、R52、R72の炭化水素基中にエーテル結合、アミノ基、ヒドロキシ基、または、ハロゲン置換基を含んでいても良い。
上記グラフトポリマーは、一般式(7)に対応するラジカル重合性モノマーを、好ましくは連鎖移動剤の存在下で重合し、得られたポリマーの末端に重合性官能基を導入し、さらに、一般式(5)または(6)に対応するラジカル重合性モノマーと共重合することにより得ることができる。
一般式(5)に対応するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルの(メタ)アクリル酸エステル類、および、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
一般式(6)に対応するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、4−メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン等が上げられる。
さらに、一般式(7)に対応するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、等が挙げられる。
これらのグラフトポリマーの具体例としては、下記の構造式で示されるポリマーが挙げられる。
Figure 2005186399
Figure 2005186399
一般式(5)および(6)で示される構成単位のいずれか1つを少なくとも含有する重合体成分と、一般式(7)で示される構成単位を少なくともグラフト鎖として含有する重合成分とを含有するグラフトポリマーは、一般式(5)および/または(6)、並びに一般式(7)で示される構成単位のみを有していてもよいし、他の構成成分を含有していても良い。グラフト鎖を含有する重合体成分と、これ以外の重合体成分との好ましい組成比は、10:90〜90:10である。この範囲において、良好な粒子形成性が得られ、所望の粒子直径を得やすく、好ましい。
これらのポリマーは、分散剤として単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
インクQ全体に対する分散剤の含有量は、0.01〜30質量%であるのが好ましい。分散剤の含有量をこの範囲とすることにより、良好な粒子形成性が得られ、所望の色材粒子直径を得ることができる。
本発明で使用するインクQは、荷電調整剤を添加することにより、好ましくは分散剤を用いて溶媒中に分散されてなる前述の色材粒子に荷電を発生させる。
好適な荷電調整剤としては、ナフテン酸ジルコニウム塩、オクテン酸ジルコニウム塩等の有機カルボン酸の金属塩、ステアリン酸テトラメチルアンモニム塩等の有機カルボン酸のアンモニム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸マグネシウム塩等の有機スルホン酸の金属塩、トルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等の有機スルホン酸のアンモニウム塩、スチレンと無水マレイン酸のコポリマーをアミンで変性したカルボン酸基を含有するポリマー等の側鎖にカルボン酸基を有するポリマー、メタクリル酸ステアリルとメタクリル酸のテトラメチルアンモニウム塩の共重合体等の側鎖にカルボン酸アニオン基を有するポリマー、スチレンとビニルピリジンの共重合体等の側鎖に窒素原子を有するポリマー、メタクリル酸ブチルとN−(2−メタクリロイルオキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムトシラート塩との共重合体等の側鎖にアンモニウム基を有するポリマー等が挙げられる。
また、非水溶媒に可溶となしうる少なくとも1種以上の単量体および無水マレイン酸を構成単位として有する共重合体と、1級アミノ化合物、または、1級アミノ化合物および2級アミノ化合物との反応により得られる高分子化合物であり、かつ、半マレイン酸アミド成分とマレインイミド成分とを繰返し単位として有するポリマーも、荷電調整剤として好適に例示される。この荷電調整剤に関しては、本件出願人による2003−51021号の明細書に詳述される。
このような荷電調整剤は、ポリマーであるのが好ましく、特に、カルボン酸基を含有するポリマーが好ましい。
本発明で使用するインクQにおいて、荷電調整剤によって色材粒子に付与される電荷は、正電荷でも負電荷でもよい。
また、本発明で使用するインクQにおいて、このような荷電調整剤は、その含有量に限定は無いが、インクQ全体に対する荷電調整剤の分量は、0.0001〜10質量%の範囲内であるのが好ましい。この範囲内において、インクQの電気伝導度を10〜10000nS/mの範囲内、また、色材粒子(荷電粒子)の易動度を0.1×10-9〜1000×10-92 /V・sの範囲内に容易に調節することができる。
なお、本発明で使用するインクQは、以上のような溶媒、色材粒子、分散剤、荷電調整剤等の成分のみならず、さらに、腐敗防止のために防腐剤や、表面張力を制御するための界面活性剤等の各種の成分を、目的に応じて含有してもよい。
続いて、溶媒回収手段18について説明する。
溶媒回収手段18は、インクジェットヘッド56から記録媒体P上に吐出されたインクから蒸発する溶媒や、画像の定着時にインクから蒸発する溶媒等を回収するもので、活性炭フィルタ74と、排出ファン76とを備えている。活性炭フィルタ74は、筐体22の図中上側の内壁面に取り付けられ、排出ファン76は、活性炭フィルタ74に取り付けられている。
筐体22内部の溶媒成分を含む空気は、排出ファン76により、活性炭フィルタ74を介して筐体22の外部に排出される。その際、筐体22内部の空気中に含まれる溶媒成分は、活性炭フィルタ74によって吸着除去される。
以下、記録装置10の動作を説明する。
記録装置10では、画像の記録時に、給紙トレイ24に収納された記録媒体Pがフィードローラ26により1枚ずつ取り出され、搬送ローラ対30により挟持搬送されて搬送ベルト32上の所定位置に供給される。
搬送ベルト32上に供給された記録媒体Pは、帯電装置38により負の高電位に帯電され、搬送ベルト32の表面に静電吸着される。
搬送ベルト32の表面に静電吸着された記録媒体Pは、搬送ベルト32の移動とともに所定の一定速度で副走査搬送されつつ、インクジェットヘッド56により、その表面に画像データに対応した画像が記録される。
画像記録後の記録媒体Pは、除電装置40により除電され、分離爪42により搬送ベルト32から分離され、ガイド44に沿って定着ローラ対46に供給される。そして、定着ローラ対46により挟持搬送されつつ、記録された画像が加熱定着され、排出トレイ28内に積層された状態でストックされる。
次に、記録装置10の記録手段16を構成するインクジェットヘッド56の構造およびインク吐出動作について詳細に説明する。なお、インクジェットヘッド56の各色の吐出ヘッド80(80C,80M,80Y,80K)はいずれも同様の構造を有するので、ここでは、インクジェットヘッド56として、インクジェットヘッド56を構成する各色の吐出ヘッドの1つについて説明する。
図2は、インクジェットヘッド56における吐出ヘッド80の一実施形態を概念的に示す部分断面図である。吐出ヘッド80は、図3に概念的に示すように、多数の吐出部を二次元的に配置したマルチチャンネル構造のインクジェットヘッドであるが、図2には、構造を明瞭に示すために、吐出部の一部のみを示す。また、図2には、インク循環系60および搬送ベルト32も合わせて示してある。
図2および図3に示す吐出ヘッド80は、2層電極構造の吐出電極を持つ静電式のインクジェットであって、帯電された顔料等の色材粒子を含むインクQを静電力により吐出させて、画像データに応じた画像を記録媒体P上に記録するものであり、ヘッド基板81と、ノズル基板82と、インクガイド84とを備えている。吐出ヘッド80は、対向電極となる記録媒体Pを支持する搬送ベルト32と対向するように配置されている。
ヘッド基板81とノズル基板82は、互いに対面して所定の間隔離間して配置され、その間に、各吐出口にインクQを供給するためのインク流路100が形成されている。インクQは、帯電した色材粒子を含み、記録時には、インク流路100内を所定方向(図示例では矢印a方向)に所定の速度(例えば、200mm/sのインク流)で循環される。
ヘッド基板81は、全ての吐出部に共通なシート状の絶縁性基板であり、その表面には、電気的にフローティング状態である浮遊導電板92が設けられている。
浮遊導電板92には、画像の記録時に、後述する吐出部の吐出電極に印加される吐出電圧の電圧値に応じて誘起される誘導電圧が発生する。また、誘導電圧の電圧値は稼動チャンネル数に応じて自動的に変化する。この誘導電圧により、インク流路100内のインクQに含まれる色材粒子は付勢されてノズル基板82側に泳動し、後述するノズル98へ泳道して、ノズル98のインクが濃縮される。
なお、浮遊導電板92は必須の構成要素ではなく、必要に応じて適宜設けるのが好ましい。また、浮遊導電板92は、インク流路100よりもヘッド基板81側に配置されていればよく、例えばヘッド基板81の内部に配置してもよい。また、浮遊導電板92は、吐出部が配置される位置よりもインク流路100の上流側に配置される方が好ましい。また、浮遊導電板92に所定の電圧を印加するようにしても良い。
ノズル基板82は、ヘッド基板81と同様に全ての吐出部に共通なシート状の基板であり、絶縁性基板86と、第1吐出電極88と、第2吐出電極90と、ガード電極96と、絶縁層94a,94b,94cとの積層体である。また、ノズル基板82には、各インクガイド84に対応する位置に、インクの吐出口となるノズル98が貫通して開口している。
第1吐出電極88および第2吐出電極90は、それぞれ絶縁性基板86の図中上面および下面の表面に、各吐出部に対応するノズル98の周囲を囲むようにリング状に設けられた円形電極である。絶縁性基板86および第1吐出電極88の表面には、その表面を保護すると共に平坦化する絶縁層94bが被覆され、同様に、絶縁性基板86および第2吐出電極90の表面には、その表面を保護および平坦化する絶縁層94aが被覆されている。
なお、第1吐出電極88および第2吐出電極90はリング状の円形電極に限定されず、インクガイド84に臨むように配置される電極であれば、例えば略円形電極、分割円形電極、平行電極、略平行電極など、どのような形状であっても良い。
また、本実施形態では、第1吐出電極88および第2吐出電極90を絶縁被覆する構成としたが、第1吐出電極88および第2吐出電極90を、インクQに直接接する、接液電極としても良い。
図3(a)、(b)および(c)は、それぞれガード電極96、第1吐出電極88、および第2吐出電極90の配置を表す一実施形態の構成概略図である。図3においては、行方向(主走査方向)の1行当り5個(1列、2列、3列、4列、5列)ずつ、かつ列方向(副走査方向)の1列当たり3個(A行、B行、C行)ずつの計15個の吐出部が、マトリクス状に配置された状態が示されている。
図3(b)に示すように、同じ列に配置された吐出部の第1吐出電極88は、相互に接続されている。また、図3(c)に示すように、同じ行に配置された吐出部の第2吐出電極90は、相互に接続されている。そして、詳細は後述するが、第1吐出電極88および第2吐出電極90は、吐出ヘッド80からの吐出を制御する制御部58(図1参照)に接続されている。第1吐出電極88および第2吐出電極90には、この制御部58によって、画像データに応じてインクQと同極性のパルス電圧が印加される。
各行の吐出部は、行方向に対して所定の間隔を離して配置される。
また、B行目の吐出部は、A行目の吐出部に対して、列方向に所定の間隔を有し、かつ、行方向に対して、それぞれA行目の吐出部とC行目の吐出部との間に配置されている。同様に、C行目の吐出部は、B行目の5個の吐出部に対して、列方向に所定の間隔を離して、かつ、行方向に対して、それぞれB行目の吐出部とA行目の吐出部との間に配置されている。このように、各行A,B,Cに含まれる各吐出部を、それぞれ行方向にずらして配置することにより、記録媒体Pに記録される1行は行方向に3分割される。
画像の記録時には、同一列に配置された第1吐出電極88は同時かつ同一電圧レベルに駆動される。同様に、同一行に配置された5個の第2吐出電極90は同時かつ同一電圧レベルに駆動される。
また、記録媒体Pに記録される1行は、行方向に対して、第2吐出電極90の行数に相当する3つのグループに分割され、時分割で順次記録される。例えば、図3に示す例の場合、第2吐出電極90のA行目、B行目、C行目を所定のタイミングで順次記録することにより、記録媒体P上に1行分の画像が記録される。また、この記録に対応して、第1吐出電極88を画像データ(記録画像)に応じてパルス変調駆動して、インク液滴Rを吐出して、画像を記録する。
従って、図示例においては、記録媒体Pと吐出ヘッド80とを、列方向(主走査方向)に相対的に移動しつつ画像記録を行うことにより、行方向(副走査方向)に各行の有する記録密度の3倍の記録密度の画像記録を行うことができる。
なお、吐出電極は、第1吐出電極88および第2吐出電極90の2層電極構造に限定されず、単層電極構造でもよいし、3層以上の電極構造としても良い。
ガード電極96は、全ての吐出部に共通なシート状の電極であり、図3(a)に示すように、各々の吐出部のノズル98の周囲に形成された第1吐出電極88および第2吐出電極90に相当する部分が穿孔されている。また、絶縁層94bおよびガード電極96の表面には、その表面を保護するとともに、平坦化する絶縁層94cが被覆されている。ガード電極96は所定の電圧が印加されており、隣接する吐出部のインクガイド84の間に生じる電界干渉を抑制する役割を果たす。
なお、ガード電極96は必須の構成要素ではない。また、ノズル基板82には、第1吐出電極88または第2吐出電極90からのインク流路100方向への反発電界を遮蔽するために、第2吐出電極90よりインク流路100側にシールド電極を設けても良い。
インクガイド84は、凸状の先端部分84aを持つ所定厚さのセラミック製平板である。図示例においては、同一行の吐出部のインクガイド84は、ヘッド基板81上の浮遊導電板92の上に配置された同じ支持体84bの上に所定の間隔で配置される。インクガイド84は、ノズル基板82に開孔されたノズル98を貫通し、先端部分84aをノズル基板82の記録媒体P側の最表面(絶縁層94cの図1中上側の表面)よりも上部に突出している。
インクガイド84の先端部分84aは、記録媒体Pを保持する搬送ベルト32に向かって漸次細くなる略三角形状(または台形状、ないしは四角錘状)に成形されている。
なお、先端部分(最先端部)84aは、金属が蒸着されているのが好ましい。この先端部分84aの金属蒸着は必須の要素ではないが、これにより、先端部分84aの誘電率が実質的に大きくなり、強電界を生じさせ易くできるという効果がある。
なお、インクガイド84の形状は、インクQ内の色材粒子を先端部分84aに向けて泳動(すなわちインクQを濃縮)させることができれば、特に制限的ではなく、例えば先端部分84aは凸状でなくても良い等、自由に変更してもよい。また、インクの濃縮を促進するために、毛細管現象によってインクQを先端部分84aに集めるインク案内溝となる切り欠きを、インクガイド84の中央部分に図中上下方向に沿って形成しても良い。
なお、このような吐出ヘッド80は、記録媒体Pの一辺の全域に対応する吐出部列を有する、いわゆるラインヘッドであってもよく、あるいは、吐出ヘッド80の走査と記録媒体Pの断続的な搬送とを組み合わせる、いわゆるシャトルタイプのヘッドであってもよい。
各色の吐出ヘッドは、インクガイド84の先端部分84aが、搬送ベルト32によって搬送される記録媒体Pの表面と所定の間隔(例えば、200μm〜1000μm)となるように配置されている。
上述したように、画像の記録時には、対向電極となる搬送ベルト32上に静電吸着された記録媒体Pの表面は、帯電装置38(図1参照)によって、第1吐出電極88および第2吐出電極90に印加される高電圧と逆極性の所定の負の高電圧、例えば−1.5kVに均一に帯電されている。その結果、記録媒体Pは、第1吐出電極88または第2吐出電極90に対して負の高電圧にバイアスされるとともに、搬送ベルト32の絶縁シート32bに静電吸着されている。
なお、本実施形態では、搬送ベルト32を電極基板32aと絶縁シート32bとで構成し、記録媒体Pを帯電装置38によって負の高電圧に帯電させることにより、記録媒体Pに所定のバイアス電圧を印加するとともに記録媒体Pを絶縁シート32bの表面に静電吸着させているが、記録媒体Pの搬送ベルト32への静電吸着と、記録媒体Pへの負のバイアス高電圧の印加または搬送ベルト32への負のバイアス高電圧の印加とを別々の負の高電圧源によって行っても良いし、搬送ベルト32による記録媒体Pの支持は、記録媒体Pの静電吸着に限られず、他の支持方法や支持手段を用いても良い。
また、上述の例では、吐出ヘッド80において、第2吐出電極90の各行を順次駆動し、第1吐出電極88の各列を画像データに応じて駆動しているが、別の実施形態として、第1吐出電極88と第2吐出電極90とを逆の状態、すなわち第1吐出電極88を1列毎に順次駆動し、画像データに応じて、第2吐出電極90を駆動することも可能である。
この場合、列方向は、第1吐出電極88の1列毎に駆動され、列方向のそれぞれの吐出部を中心として、その両側の列の吐出部の第1吐出電極88は常に接地レベルになるため、この両側の列の吐出部の第1駆動電極36がガード電極96の役割を果す。このように、上層の第1吐出電極88で各列を順次オンし、画像データに応じて下層の第2吐出電極90を駆動する場合には、ガード電極96を設けなくても、隣接する吐出部の影響を排除し、記録品質を向上させることができる。
また、吐出ヘッド80において、インク吐出のオン/オフの制御を第1吐出電極88および第2吐出電極90の一方で行うか、あるいは両方で行うかは何ら制限的ではない。すなわち、吐出電極側の電圧値と記録媒体P側の電圧値との差分が所定値よりも大きい場合にはインクが吐出し、所定値よりも小さい場合にはインクが吐出しないように、吐出電極側および記録媒体P側の電圧を適宜設定すればよい。
図4(a)〜(c)は、インクジェットヘッド56の吐出ヘッド80におけるインク吐出動作を説明する図である。
画像記録に際しては、まず、インクQが、吐出ヘッド80のインク流路100内を図2中右側から左側(図2中矢印a方向)に向かって所定の速度で循環する。
一方、記録媒体Pは、帯電装置38により、負の高電位(例えば、−1.5kV)に帯電され、搬送ベルト32の絶縁シート32bに静電吸着された状態で、図2中、紙面に垂直な方向に所定の速度で搬送される。
記録媒体Pと吐出ヘッド80との間に所定のバイアス電圧のみが印加されている状態、すなわち、インク吐出の待機状態では、インクQには、バイアス電圧とインクQの色材粒子の荷電とのクーロン引力、色材粒子間のクーロン反発力、溶媒のストークス抵抗(粘性抵抗)、表面張力、誘電分極力等が作用し、これらによって色材粒子と溶媒が連成運動して移動し、図4(a)に概念的に示すように、ノズル98から若干盛り上がったメニスカスが形成されて、その状態でバランスが保たれる。
また、このクーロン引力等によって、色材粒子は、いわゆる電気泳動により、バイアス電圧が帯電された記録媒体Pに向かって移動する。これにより、ノズル98のメニスカス先端部(記録媒体P側のメニスカス凸部)においては、インクQが濃縮された状態となる。
記録時には、この状態から、インク液滴Rを吐出するためのパルス電圧が印加される。すなわち、図示例においては、第1吐出電極88および第2吐出電極90が制御部58によって制御されて所定のパルス電圧が印加される。
第2吐出電極90は、所定のタイミングで1行ずつ順番に、例えば400V〜600Vの高電圧レベルまたはハイインピーダンス状態(オン状態)とされ、残りの全ての第2吐出電極90は接地レベル(接地状態:オフ状態)に駆動される。また、第1吐出電極88は、画像データに応じて、列単位で高電圧レベル(オン状態)または接地レベル(オフ状態)に駆動される。これにより、各々の吐出部におけるインクの吐出および非吐出が制御される。
すなわち、ある吐出部において、第1吐出電極88および第2吐出電極90の両方がオン状態とされると、その吐出部における電界強度がインク吐出に必要な所定値に達し、インクQがインク液滴Rとして吐出する。一方、第1吐出電極88および第2吐出電極90のいずれか一方でもオフ状態のときには、電界強度は所定値に達しておらず、インクQは吐出しない。
ここで、第1吐出電極88および第2吐出電極90の両方がオン状態とされたとき、すなわち、インク吐出動作開始時においては、バイアス電圧に所定の駆動電圧が重畳されることにより、先の連成運動に加えて、さらにこの駆動電圧の重畳によって連成運動が起こり、色材粒子および溶媒がバイアス電圧(対向電極)側すなわち記録媒体P側に引っ張られ、図4(b)に概念的に示すように、メニスカスが成長して、その上部から略円錐状のインク液柱、いわゆるテーラーコーンが形成される。メニスカス先端部(テーラーコーンの先端部)では、色材粒子が電気泳動によって移動してインクQが濃縮され、色材粒子を多数有するほぼ均一な高濃度状態となっている。
パルス電圧の印加開始後、さらに有限な時間が経過すると、色材粒子が多数存在する電界強度の高いメニスカスの先端部分に大きな静電力が作用し、主に色材粒子に作用するクーロン力と溶媒に作用する表面張力とのバランスが崩れ、図4(c)に概念的に示すように、曳糸と呼ばれる直径数μm〜数十μm程度の細長いインク液柱が形成される。
さらに有限な時間が経過すると、曳糸の成長、レイリー・ウエーバー不安定性によって発生する振動、メニスカス内における色材粒子の分布不均一、メニスカス部の静電界の不均一等の複合作用によって曳糸が分断され、曳糸径に対応する非常に小さいインク液滴Rとなって吐出し、飛翔する。このインク液滴Rは、対向電極(図示例では記録媒体P)に引っ張られて、記録媒体Pの所定位置に着弾する。
1回のインク吐出動作が終了し、第1吐出電極88および第2吐出電極90の両方がオフ状態とされると、バイアス電圧のみが印加された図4(a)のメニスカスの状態に戻る。
吐出動作時における曳糸の成長および分断は、1パルス電圧の印加中に連続して発生する。曳糸からの液滴の分断周波数は、吐出電極(図示例においては第1吐出電極88)の駆動周波数(吐出電極へのパルス電圧の印加周波数)よりも遥かに高い。また、メニスカス(曳糸)への色材粒子の移動は、1パルス電圧の印加中、連続的に行われている。
すなわち、この静電式インクジェット方式によれば、1回のパルス電圧の印加に対応する1つのドットは、曳糸が分断されてなる微細な複数のインク液滴で形成される。
従って、1回のパルス電圧の印加時間(いわゆるパルス幅)を可変とし、これを制御することで、1回のパルス電圧の印加すなわち1ドットを形成する微細液滴の吐出量(数)を調整して、微細なドットの記録、ドット径の均一性の向上や、ドット径の調整を用いた濃度階調制御による画像記録の高階調化を図ることができる。
次に、記録装置10におけるインク液滴Rの色材粒子濃度の制御方法について説明する。
上記のようにして吐出されるインク液滴Rの色材粒子濃度は、ノズル98のメニスカス先端部におけるインクQの濃縮度、すなわち、メニスカス先端部の色材粒子の量と、それに対する溶媒の割合とに応じて変化する。従って、メニスカス先端部におけるインクQの濃縮度を制御することにより、インク液滴Rの色材粒子濃度を制御することができる。
ノズル98のメニスカス近傍でのインクの濃縮の過程において、色材粒子は、静電力(クーロン引力)によって運動する際に、溶媒からのストークス抵抗を受ける。また、溶媒は、静電力による誘電分極力に加え、色材粒子からの反作用を受けて運動する。このように、色材粒子と溶媒は、相互に作用を及ぼし合いながら追従して運動している。本発明の記録装置10においては、このような、色材粒子と溶媒の連成運動を含めて、メニスカス先端部におけるインクQの濃縮の状態を制御するために、制御パラメータとして緩和時間Tを用いる。
ここで、インクの緩和時間Tとは、インク中の粒子(色材粒子)と流体(溶媒)の追従性、すなわち、流体が動いたときに粒子がどれだけ動くか、あるいは、粒子が動いたときに流体がどれだけ動くかを代表する指標であり、粒子密度ρ(kg/m3 )、粒子径D(m)、溶媒粘度μ(Pa・sec)としたとき、T=ρ*D^2/18/μ(sec)で定義される。緩和時間Tが長ければ、粒子と流体とが追従するのに要する時間が長く、すなわち、追従性が悪く、反対に、緩和時間Tが短ければ、粒子と流体の追従性が良い。
ノズル98におけるインクQの濃縮過程においては、緩和時間Tが長いほど、粒子と流体の追従性が悪いため濃度不均衡が生じやすく、濃縮されやすい。また、緩和時間Tが短いほど、粒子と流体の追従性が良いため粒子が泳動すると流体も追従して運動し、濃縮されにくい。
すなわち、緩和時間Tが長いほどインク液滴Rの濃度が高くなり、所定の色材粒子量に対しては溶媒が少なくなり、ノズル98の詰まりを生じやすくなる。反対に、緩和時間Tが短いほどインク液滴Rの濃度が低くなり、所定の色材粒子量に対しては溶媒が多くなり、記録ドットのにじみを生じやすくなる。
従って、緩和時間Tが所定の範囲となるように、インクQの状態を調整することにより、ノズル98におけるインクQの濃縮状態を十分に制御して、一定の濃縮度を得ることができ、インク液滴Rの色材粒子濃度を一定の高い濃度に制御できるので、一定の高い濃度でにじみの少ない高画質な画像を、ノズル98の詰まりを生じることなく安定して記録することができる。
図5は、インクジェット記録装置10におけるインク液滴R中の色材粒子濃度の制御方法を説明するブロック図である。インクタンク64に備えられる各色のインクタンク64C,64M,64Y,64Kは同様の構成を有しているので、同図には、これらを代表して、インクタンク64Cを示してある。
上述したように、各色のインクタンク64C,64M,64Y,64K(以下、インクタンク64Cで代表する。)には、それぞれ、インク温度検出手段68、インク温度調整手段70、攪拌手段72が設けられており、インク温度検出手段68およびインク温度調整手段70は制御部58に接続されている。また、制御部58は、その内部の記憶手段にLUT59を有している。
インク温度検出手段68は、インクタンク64CのインクQの温度を検出するもので、サーミスタや熱電対等が用いられる。インク温度検出手段68によって検出されたインクQの温度は制御部58に送られる。
インク温度調整手段70は、インクタンク64CのインクQの温度を調整するもので、パネルヒータ、鋳込みヒータ、ランプ加熱等の加熱手段およびチラー等の冷却手段の少なくとも一方が用いられる。
制御部58は、インク温度と緩和時間との関係を記憶する記憶手段を有しており、この記憶手段には、各色のインクタンク64C,64M,64Y,64Kに備えられる各色のインクに対応するLUT(ルックアップテーブル)59が記憶されている。LUT59は、インクタンク64C等内のインク温度と緩和時間との関係を表すLUTであり、インクQが所定の緩和時間となるときのインクQの温度を与えるものである。
上述したように、インクの緩和時間Tは、粒子密度ρ(kg/m3 )、粒子径D(m)、溶媒粘度μ(Pa・sec)としたとき、T=ρ*D^2/18/μ(sec)で表される。この式において、色材粒子密度ρおよび色材粒子径Dは使用するインクQによって一意的に決まる物性値であるから、溶媒粘度μと緩和時間Tとの関係を求めることができる。これに、インクQの温度と溶媒粘度μとの関係を合わせることにより、インクQの温度と緩和時間Tとの関係を得ることができる。LUT59は、このようにして、実測データおよび算出データ等を基に予め作成され、制御部58に設定されている。
記録装置10において、インクの緩和時間Tは、10-8(sec)以上、10-7(sec)以下とするのが好ましい。
制御目標とする緩和時間Tの値は、予め制御部58またはLUT59に設定されていても良いし、外部から制御部58に設定または変更可能とされていてもよい。また、各色のインクの緩和時間Tは、各色のインク間で所定の関係となるように設定されるのが好ましい。インクタンク64C,64M,64Y,64Kにおける各色のインクの緩和時間Tが同一となるように制御することにより、各色のインクのにじみを同程度とし、画質をより安定化することができる。また、各色のインクにおいて、インク液滴Rの色材粒子濃度が同じであっても、そのインク液滴Rによって形成されたドットの光学的濃度が異なる場合、各色のドットの光学的濃度が同程度となるように、例えば、ブラック(K)に対して、イエロー(Y)の光学的濃度が低くなる場合には、イエロー(Y)の光学的濃度が高くなるように、緩和時間を調整するのも好ましい。すなわち、必要な画質を得るように、各色のインク間で、緩和時間が所定の関係となるように調整するのが好ましい。
また、制御部58には、LUT59として、インクタンク64C等に備えられるそれぞれのインクが常に同じ場合には、インクタンク64C等のそれぞれに対し1種類のLUTが設定されていればよいが、複数種のインクが用いられる場合には、LUT59として複数種のLUTが用意され、使用されるインクに応じて選択可能とされていてもよい。例えば、インクタンク64C等に供給されるインクの種類が図示しない識別手段によって識別されるか、図示しない入力手段によって外部から入力されること等により、インクの種類または物性を識別して、それぞれのインクに対応するLUT59が選択されてもよい。あるいは、制御部58には、LUT59として複数種のインクの緩和時間と温度の関係を表す1つのLUTを備え、各色のインクの各インク種に応じてLUT59の対応する領域を参照して、所定の緩和時間となるインク温度を得るようにしてもよい。
なお、制御部58の記憶手段に記憶されるのは、LUTには限定されず、インク温度と緩和時間との関係を表すものであればよく、1つまたは複数の関数式や、関数式とその関数式に用いる複数(組)の係数、インク温度と緩和時間とが関係付けられたデータ列等が記憶されていてもよい。
制御部58は、インク温度検出手段68からインクタンク64C内のインク温度の実測値(実インク温度とする)を取得するとともに、LUT59を参照し、インクタンク64C内のインクに応じた、所定の緩和時間を与える適正インク温度を取得する。そして、実インク温度と適正インク温度を比較することにより、インク温度の調整量を設定し、これに基づいてインク温度調整手段70を制御する。
なお、インクタンク64Cのインク温度は、10℃〜50℃の範囲とするのが好ましく、15℃〜35℃の範囲とするのがより好ましい。これは、記録装置10の安定的稼動やメンテナンス性、インクQの物性の安定性が良好な範囲だからある。例えば、インクQの温度が極端に高くなると、吐出部においてインクQの溶媒が多く揮発してしまい、ノズル98が詰まりやすくなる。
また、所定の緩和時間Tの範囲で、かつ、上記のインク温度範囲においては、インクタンク64Cのインク温度を高めに設定するのが好ましい。インク温度が高めに設定されることにより、記録媒体Pに着弾後のインク液滴Rの溶媒の乾燥速度が促進され、より一層のにじみ低減効果が得られる。
また、制御部58によるインクタンク64C等のインクQの温度調整は、記録装置10の始動時や所定時間ごと、オペレータ等からの指示があったとき等に適宜行われれば良いが、稼動中にインクQの温度が変化した場合にもそれを調整して所定の温度に保つようにするのが好ましい。
以上により、記録装置10において、インクタンク64C内のインクQの温度が調整され、インクQの緩和時間が所定範囲とされるので、インク液滴Rを最適な色材粒子濃度とすることができる。そのため、所定の濃度で、にじみの少ない画像を記録でき、かつ、ノズル98の詰まりを起こすことなく安定した記録を行うことができる。また、複数色のインクを用いてフルカラー画像を記録する際にも、各色のインク間でにじみが同程度とされるので、安定した高画質な画像を得ることができる。
上述の例では、インク温度と緩和時間との関係を記憶する記憶手段は、制御部58の内部に設けられているが、本発明はこれに限定されず、この記憶手段は、制御部58の外部に設けられて、制御部58に接続されていてもよい。また、記録装置10に固定されていても、着脱可能とされていてもよいし、記録装置10の外部に設けられていてもよい。
また、インク温度検出手段68に代えてインクQの粘度を検出するインク粘度検出手段を備える形態としてもよい。この場合、LUT59としてインク粘度、インク温度および緩和時間との関係を表すLUTを備えて、インク粘度検出手段によって検出されたインクQの粘度と、LUT59から得られた適正インク粘度とを比較して、適正インク粘度を得る適正インク温度を算出し、その適正インク温度となるように、インク温度調整手段70によってインク温度を調整するようにすればよい。インク粘度検出手段としては、公知の回転型粘度計等を利用することができる。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
本実施形態では、上記の実施形態に加え、さらに、記録媒体Pの種類およびインクジェット記録装置10における環境温度に応じてインクQの状態を調整し、異なる記録媒体種に記録する場合や、環境温度に変化があった場合にも、常に高画質な画像の記録を行う。
図6は、本発明のインクジェット記録装置の他の実施形態におけるインクの色材粒子濃度の制御方法を説明するブロック図である。同図の例では、図5に示す例の構成要素に加え、制御部58に、メディア種検出手段77、メディア種入力手段78および環境温度検出手段79が接続されている。なお、図5の例と同様の構成要素には、同じ符号を付しその説明を省略する。
メディア種検出手段77は、図1のインクジェット記録装置10において、給紙トレイ24から記録手段16に供給される記録媒体Pの種類を検出するものである。メディア種検出手段77としては、例えば、給紙トレイ24に記録媒体Pの種類を示す符号等を付し、その符号を読み取ることで給紙トレイ24にセットされた記録媒体Pの種類を検知する手段や、図1の搬送ローラ対30を利用し、搬送ローラ対30によって記録媒体Pを挟持搬送する際に表面摩擦力や記録媒体Pの厚さ等を検出することにより、記録媒体Pの種類を検出する手段、あるいは、記録媒体Pの搬送経路上において、光学的手段等によって記録媒体Pの種類を検出する手段等、公知の手段を各種利用することができる。
メディア種入力手段78は、給紙トレイ24にセットされた記録媒体Pの種類を入力するもので、制御部58に接続されたキーボード等の入力機器が利用される。
環境温度検出手段79は、インクジェット記録装置10内においてインクジェットヘッド56近傍に設けられ、記録部の環境温度を検出するものである。
制御部58は、上述の例と同様に、インク温度検出手段68からインクタンク64内のインク温度の実測値を取得するとともに、LUT59を参照して所定の緩和時間を与える適正インク温度を取得し、実インク温度と適正インク温度を比較することにより、インク温度の調整量を設定する。
このとき、制御部58は、メディア種検出手段77またはメディア種入力手段78から取得したメディア種に応じて緩和時間の設定値を調整し、インクQの濃縮度を調整する。例えば、記録媒体Pが、吸湿性の高いものであるか低いものであるかによって、同じ濃度のインク液滴Rでもにじみの生じる程度が異なるので、にじみを生じやすい記録媒体Pの場合にはインク液滴Rの濃度が高めになるように、インクQの緩和時間を調整する。
このように、記録媒体Pの種類に応じた所定の緩和時間となるようにインクQが制御されるため、各種の記録媒体を用いた場合にも、記録媒体Pの性質に対応する所定濃度のインク液滴Rを吐出でき、にじみの少ない高画質な画像を記録することができるとともに、ノズル98の詰まりを生じることなく安定して記録することができる。
また、制御部58は、環境温度検出手段79から得られた記録部の環境温度を基に、設定したインク温度の調整量を変更する。すなわち、記録部の環境温度が高い場合には、設定されたインク温度を所定値だけ低くし、記録部においてインクQの緩和時間が所定値となるように調整する。これにより、記録時間の長期化に伴い記録部の環境が変化した場合等にも、所定の緩和時間を維持し、常に安定した濃度での記録を行うことができる。
なお、本実施形態のように、メディア種検出手段77、メディア種入力手段78および環境温度検出手段79を有することで、記録媒体Pの種類およびインクジェット記録装置10における環境温度の両方に対応して、記録濃度が適切となるようにインク液滴Rの色材粒子濃度を調整できるので好ましいが、本発明はこれに限定されず、メディア種検出手段77、メディア種入力手段78および環境温度検出手段79のいずれか1つ以上を有することで、記録媒体Pの種類またはインクジェット記録装置10における環境温度の少なくとも一方に対応する形態としてもよい。
また、図6の実施形態においても、図5に示して上述した例と同様に、インク温度検出手段68に代えて、インクQの粘度を検出するインク粘度検出手段を備え、LUT59としてインク粘度、インク温度および緩和時間との関係を表すLUTを備えて、適正インク粘度を得るように、インク温度調整手段70によってインク温度を調整してもよい。
なお、本発明によれば、各色のインクごとに、インクの物性(色材粒子密度および色材粒子径)に応じたLUTを用意し、各インクの温度をそれぞれ調整して、各インク間で同一の緩和時間を得ることができるが、緩和時間をパラメータとしてインク液滴Rの色材粒子濃度を制御する他の方法として、インクの製造段階で、各色のインクのインク物性、すなわちインクの色材粒子密度および色材粒子径を調整することにより、同じ温度で同じ緩和時間を得る各色のインクを製造し、これらのインクをインクジェット記録装置10において同一温度となるように制御して、同一の緩和時間を得ることもできる。
なお、上記では、4色のインクを用いてフルカラー画像を形成するインクジェット記録装置について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明のインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置は、1色または任意の複数色、あるいは物性の異なる複数種のインクを用いる記録装置にも適用可能であり、このような装置においても、異種のインク間の差や、同種のインクのロット間差、あるいは、経時的な変化によってインクの物性に違いを生じた場合にも、常に所定の濃度で安定した記録を行うことができる。
以上、本発明のインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
図1に示すインクジェット記録装置10を用い、1種のインクAによって、インクの温度を変化させることにより緩和時間を調整して記録を行い、記録された画像の画質評価を行った。記録装置10において、第1制御電極88および第2制御電極90に印加する駆動電圧を700V、記録媒体Pの帯電電位(バイアス電圧)を1500V、インクガイド84の先端部分84aと記録媒体Pの表面との間隔(ギャップ)を500μmとし、記録媒体としてコート紙を用いた。
インクAのゼータ電位は160mV、比誘電率は2、導電率は700pS/cm、色材粒子の密度は1190kg/m3 、色材粒子径は0.9μmであった。
インクAの温度をインクタンク64において8℃〜40℃の範囲で調整し、記録を行った。各インク温度におけるインクAの粘度は1.55×10-3Pa・s〜9.50×10-4Pa・sの範囲で変化し、温度が高いほど粘度は小さくなった。また、緩和時間は、3.45×10-8sec〜5.64×10-8secの範囲で変化し、温度が高いほど緩和時間は短かった。このような条件の下で記録された画像の画質の評価結果は表1の通りである。ここで、にじみは、非常に少ないものを1とし、非常に多いものを5とする5段階で評価した。にじみは少ないほど好ましいが、3以下であれば許容範囲である。また、ノズル98の詰まりについても評価した。
Figure 2005186399
表1に示すように、緩和時間が3.45×10-8sec〜5.64×10-8secの範囲では、緩和時間が小さくなるほどにじみは多くなるものの、全範囲において許容範囲であったが、緩和時間が5.64×10-8secのときは、インク温度が40℃と高く、そのためインクQの溶媒が蒸発しやすく、ノズル98の詰まりを生じた。一方、緩和時間が3.45×10-8のときは、インク温度が8℃と低く、そのためインクQの粘度が高く、吐出電圧を高くする必要があった。
本実施例においては、緩和時間を3.72×10-8sec〜4.87×10-8secとなるようにインクQの温度を制御し、インクQの温度を16℃〜32℃とすることにより、充分なインクQの濃縮度を得、かつ、ノズル98の詰まりのない、安定した記録を行うことができた。
図1に示すインクジェット記録装置10を用い、3種のインクA,B,Cを用いて記録を行い、記録画質の評価を行った。記録装置10の駆動電圧、バイアス電圧、ギャップは上記実施例1と同じとし、記録媒体も同じくコート紙を用いた。
インクAは、上記実施例1で用いたインクと同一のものであり、ゼータ電位は160mV、比誘電率は2、導電率は700pS/cm、色材粒子の密度は1190kg/m3 、色材粒子径は0.9μmであった。また、インクBおよびCは、インクAとは色材粒子の密度および色材粒子径が異なり、インクBの色材粒子の密度は1250kg/m3 、色材粒子径は1.5μmであり、インクCの色材粒子の密度は1150kg/m3 、色材粒子径は0.5μmであった。各インクの物性値および各インクによる記録画像の評価結果を表2に示す。
Figure 2005186399
表2に示すように、各インクの物性値を選択し、緩和時間が9.40×10-9sec〜1.29×10-7secの範囲となるようにした場合では、緩和が9.40×10-9secと小さい場合は濃縮しにくく、にじみが非常に多くなって画質不良となった。また、緩和時間が1.29×10-7secと大きい場合は、濃縮度が高くなり、にじみは非常に少なくなったが、濃縮度が高いためにノズル98において詰まりを生じた。
本実施例においては、緩和時間を3.72×10-8secとなるようにインクQの温度を制御することにより、充分なインクQの濃縮度を得、かつ、ノズル98の詰まりのない、安定した記録を行うことができた。
本発明のインクジェット記録装置の一実施形態の構成概略図である。 本発明のインクジェット記録方法を実施するインクジェット記録装置におけるインクジェットヘッドの一例を概念的に示す部分断面図である。 (a)〜(c)は、図2に示すインクジェットヘッドの吐出電極を説明するための概念図である。 (a)〜(c)は,本発明のインクジェット記録方法を説明するための概念図である。 図1のインクジェット記録装置におけるインク液滴R中の色材粒子濃度の制御方法の一実施形態を説明するブロック図である。 インク液滴R中の色材粒子濃度の制御方法の他の実施形態を説明するブロック図である。 従来の静電式インクジェット記録を説明するための概念図である。
符号の説明
10 (インクジェット)記録装置
12 保持手段
14 搬送手段
16 記録手段
18 溶媒回収手段
22 筐体
24 給紙トレイ
26 フィードローラ
28 排出トレイ
30 搬送ローラ対
32 搬送ベルト
34a,34b,34c ベルトローラ
36 プラテン
38 帯電装置
40 除電装置
42 分離爪
44 ガイド
46 定着ローラ対
48 スコロトロン帯電器
50,54 高圧電源
52 コロトロン除電器
53 交流電圧源
56 インクジェットヘッド
58 制御部
59 LUT
60 インク循環系
62 位置検出装置
64 インクタンク
66 インクの供給路および回収路
68 インク温度検出手段
70 インク温度調整手段
72 攪拌手段
74 活性炭フィルタ
76 排出ファン
77 メディア種検出手段
78 メディア種入力手段
79 環境温度検出手段
80 吐出ヘッド
81 ヘッド基板
82 ノズル基板
84 インクガイド
84a インクガイドの先端部分
84b 支持体
86 絶縁性基板
88,90 吐出電極
92 浮遊導電板
94a,94b,94c 絶縁層
96 ガード電極
98 ノズル
100 インク流路

Claims (13)

  1. 絶縁性溶媒に色材粒子を分散させたインクに静電力を作用させることにより、インクの曳糸を形成し、前記インクの曳糸よりインクを分断してインク液滴を形成し、前記インク液滴を記録媒体上に着弾せしめることにより画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インク液滴中の粒子濃度が所望の濃度となるように、前記インクの緩和時間を制御して、画像を記録するようにしたことを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 複数色の前記インクを用い、
    前記緩和時間は、各色の前記インク間で所定の関係となるように設定されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 予め求められた前記インクの温度と前記緩和時間との関係から、前記緩和時間が所定の値となる適正インク温度を取得し、前記適正インク温度となるように前記インクの温度を調整することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 予め求められた前記インクの粘度と前記緩和時間との関係から、前記緩和時間が所定の値となる適正インク粘度を取得し、前記適正インク粘度となるように前記インクの温度を調整することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記記録媒体の種類および記録部の環境温度の少なくとも一方に応じて、前記適正インク温度および前記適正インク粘度を変更することを特徴とする請求項3または4に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記緩和時間は、10-8sec以上10-7sec以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
  7. 絶縁性溶媒に色材粒子を分散させたインクに静電力を作用させることにより、インクの曳糸を形成し、前記インクの曳糸よりインクを分断してインク液滴を形成し、前記インク液滴を記録媒体上に着弾せしめることにより画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インク液滴中の粒子濃度が所望の濃度となるように、前記インク中の色材粒子密度、色材粒子径および溶媒粘度の少なくとも1つを制御することを特徴とするインクジェット記録方法。
  8. 絶縁性溶媒に色材粒子を分散させたインクに静電力を作用させて、インクの曳糸を形成し、前記インクの曳糸よりインクを分断してインク液滴を吐出する吐出手段を備え、吐出した前記インク液滴を記録媒体上に着弾せしめることにより画像を記録するインクジェット記録装置であって、
    前記インクの温度を検出するインク温度検出手段と、
    前記インクの温度を調整するインク温度調整手段と、
    予め求められた、前記インクの温度と前記インクの緩和時間との関係を記憶する記憶手段と、
    前記記憶手段から、前記緩和時間が所定値となる適正インク温度を取得し、前記インク温度検出手段によって検出された前記インクの温度が、前記適正インク温度と一致するように、前記インク温度調整手段を制御する制御手段とを有することを特徴とするインクジェット記録装置。
  9. 絶縁性溶媒に色材粒子を分散させたインクに静電力を作用させて、インクの曳糸を形成し、前記インクの曳糸よりインクを分断してインク液滴を吐出する吐出手段を備え、吐出した前記インク液滴を記録媒体上に着弾せしめることにより画像を記録するインクジェット記録装置であって、
    前記インクの粘度を検出するインク粘度検出手段と、
    前記インクの温度を調整するインク温度調整手段と、
    予め求められた、前記インクの粘度と前記インクの緩和時間との関係を記憶する記憶手段と、
    前記記憶手段から、前記緩和時間が所定値となる適正インク粘度を取得し、前記インク粘度検出手段によって検出された前記インクの粘度が、前記適正インク粘度と一致するように、前記インク温度調整手段を制御する制御手段とを有することを特徴とするインクジェット記録装置。
  10. 前記記録媒体の種類を検出する記録媒体種検出手段、前記記録媒体の種類を入力する記録媒体種入力手段、および、記録部の環境温度を検出する環境温度検出手段の少なくとも1つを有し、
    前記制御手段によって、前記記録媒体の種類および前記環境温度の少なくとも一方に応じて、前記適正インク温度および前記適正インク粘度が変更されることを特徴とする請求項8または9に記載のインクジェット記録装置。
  11. 前記緩和時間は、10-8sec以上10-7sec以下であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  12. 前記吐出手段は、
    少なくとも1つのノズルが穿孔され、前記ノズルのそれぞれを囲む様に吐出電極が配置された絶縁性基板、および、前記ノズルの略中央に、その先端部を前記インクの吐出方向に向けて配置されたインクガイドを有する吐出ヘッドと、
    前記インクガイドの先端に対向する位置に配置され、前記記録媒体を保持する対向電極と、
    前記ヘッドに前記インクを供給するインク供給手段とを有することを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  13. 複数色の前記インクのそれぞれに対応する複数の前記吐出手段を備え、
    前記制御手段によって、前記緩和時間が、各色の前記インク間で所定の関係となるように設定されることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
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