JP2006152165A - インク組成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 分散媒と、色材およびポリマーを少なくとも含む粒子と、を含有するインク組成物の製造方法において、前記分散媒、色材およびポリマーを10℃未満の温度で湿式分散する湿式分散工程を含むことを特徴とするインク組成物の製造方法。
【選択図】 なし
Description
一方、静電界を利用する方式は、インク滴の飛翔方向を静電界により制御するため、望ましい位置へインク滴を正確に着弾させることが可能であり、高画質の画像形成物(印刷物)を作成でき優れている。
前記のようにインクジェット記録用のインク組成物は、通常乾式粉砕して得た粒子を分散媒および分散剤とともに湿式分散させる工程を経て製造されるが、従来技術ではこの湿式分散工程の際、顔料の1次粒子間または顔料−ポリマー界面で粒子が破断し、粒子表面
に顔料が露出した状態となる。また顔料単体が遊離して放出される。これが原因となり、粒子間に相互作用が働き、吐出性能および保存安定性に悪影響を及ぼしていた。
したがって本発明の目的は、前記問題点を解決することのできるインク組成物の製造方法を提供することである。詳しくは、インク組成物に含まれる粒子間に働く相互作用を抑制し、例えば該インク組成物をインクジェット記録用として用いた場合に、インクジェット記録装置のインクジェットヘッドのノズルに粒子が付着しにくく、かつ保存安定性も改善することのできるインク組成物の製造方法を提供することである。
即ち、本発明は以下の通りである。
(1)分散媒と、色材およびポリマーを少なくとも含む粒子と、を含有するインク組成物の製造方法において、前記分散媒、色材およびポリマーを10℃未満の温度で湿式分散する湿式分散工程を含むことを特徴とするインク組成物の製造方法。
(2)前記湿式分散工程終了後、得られた分散液を加熱処理する工程をさらに含むことを特徴とする前記(1)に記載のインク組成物の製造方法。
[分散媒]
分散媒は、高い電気抵抗率、具体的には1010Ωcm以上を有する誘電性の液体であることが好ましい。仮に電気抵抗率の低い分散媒を使用すると、隣接する記録電極間で電気的導通を生じさせるため、本形態には不向きである。また、誘電性液体の比誘電率は5以下が好ましく、より好ましくは4以下、更に好ましくは3.5以下である。このような比誘電率の範囲とすることによって、誘電性液体中の荷電粒子に有効に電界が作用されるため好ましい。
本発明に用いる色材としては、公知の染料および顔料を使用することができ、用途や目
的に応じて選択することができる。例えば、記録された画像記録物(印刷物)の色調の観点からは、顔料を用いることが好ましい(例えば、技術情報協会発行 「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」 2001年12月25日 第1刷参照。以下「非特許文献1」とも称する)。色材を変更することにより、イエロー、マゼンタ、シアン、墨(ブラック)の4色のインクを作成することができる。特に、オフセット印刷用インクやプルーフに用いられる顔料を使用するとオフセット印刷物と同様な色調が得られるので好ましい。
更にマイクロリス−A,−K,−Tなどのマイクロリス顔料に代表される加工顔料も好適に使用できる。その具体例としてはマイクロリスイエロー4G−A,マイクロリスレッドBP−K,マイクロリスブルー4G−T,マイクロリスブラックC−Tなどが挙げられる。
また、白インク用の顔料として炭酸カルシウムや酸化チタン顔料を、銀インク用としてアルミニウム粉を、金インク用として銅合金を用いる等、必要に応じて各種の顔料を使用することができる。
、公知の方法により顔料を表面処理した後使用してもよい(前述の非特許文献1)。
インク組成物全体に対する顔料の含有量は、0.1〜50質量%の範囲内であることが好ましい。0.1質量%以上において、顔料量が充足し、印刷物において充分良好な発色が得られ、また、50質量%以下において、色材を含有する粒子を分散媒に良好に分散させることができる。さらに好ましくは、1〜30質量%である。
本発明において、顔料等の色材は、ポリマーにより被覆された状態で分散媒に分散(粒子化)される。被覆剤で被覆することにより、色材が持つ荷電を遮蔽し望ましい荷電特性を付与することができる。また、本形態においては、被印刷媒体へインクジェット記録した後、ヒートローラ等の加熱手段により定着するが、この際被覆剤が熱により溶融し、効率良く定着できる。
本発明においては、色材と被覆剤の混合物を分散媒中に分散(粒子化)するが、粒子直径を制御し、かつ粒子の沈降を抑制するために分散剤を使用することがさらに好ましい。
好適な分散剤としては、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステルや、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステルに代表される界面活性剤が挙げられる。また、例えば、スチレンとマレイン酸のコポリマー、及びそのアミン変性物、スチレンと(メタ)アクリル化合物のコポリマー、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリエチレンと(メタ)アクリル化合物のコポリマー、ロジン、BYK−160、162、164、182(ビックケミー社製のポリウレタン系ポリマー)、EFKA−401、402(EFKA社製のアクリル系ポリマー)、ソルスパース17000,24000(ゼネカ社製のポリエステル系ポリマー)等が挙げられる。本発明においては、インク組成物の長期間保存安定性の観点から、質量平均分子量が1,000〜1,000,000の範囲内であり、かつ多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)が、1.0〜7.0の範囲内であるポリマーが好ましい。さらに、グラフトポリマーまたはブロックポリマーを用いることが最も好ましい。
クリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルの(メタ)アクリル酸エステル類、及び、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
また、一般式(7)に対応するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、等が挙げられる。
これらのグラフトポリマーの具体例としては、下記の構造式で示されるポリマーが挙げられる。
本発明においては、粒子の荷電量を制御するために荷電調整剤を併用することがさらに好ましい。
好適な荷電調整剤としては、ナフテン酸ジルコニウム塩、オクテン酸ジルコニウム塩等の有機カルボン酸の金属塩、ステアリン酸テトラメチルアンモニム塩等の有機カルボン酸のアンモニム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸マグネシウム塩等の有機スルホン酸の金属塩、トルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等の有機スルホン酸のアンモニウム塩、スチレンと無水マレイン酸のコポリマーをアミンで変性したカルボン酸基を含有するポリマー等の側鎖にカルボン酸基を有するポリマー、メタクリル酸ステアリルとメタクリル酸のテトラメチルアンモニウム塩の共重合体等の側鎖にカルボン酸アニオン基を有するポリマー、スチレンとビニルピリジンの共重合体等の側鎖に窒素原子を有するポリマー、メタクリル酸ブチルとN−(2−メタクリロイルオキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムトシラート塩との共重合体等の側鎖にアンモニウム基を有するポリマー等が挙げられる。粒子に付与される荷電は、正荷電であっても負荷電であっても良い。インク組成物全体に対する荷電調整剤の含有量は、0.0001〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
本発明においては、さらに、腐敗防止のために防腐剤や、表面張力を制御するための界面活性剤等を目的に応じて含有することができる。
本発明における湿式分散工程は、前記分散媒、色材およびポリマーを10℃未満の温度で湿式分散する工程を含む。なお、湿式分散工程が複数工程、例えばペイントシェーカー等を用いる予備分散工程とこれよりも分散力の強い装置を用いる主分散工程とからなる場合は、いずれかあるいは両方の分散工程における分散液温度が10℃未満であればよい。 分散液温度は、できるだけ低い温度とすることによりポリマーの脆性が向上するので好ましいが、−20℃以上10℃未満が好ましく、−10℃〜5℃がさらに好ましい。分散液温度を10℃未満にするためには、公知の手段を用いればよいが、例えば分散装置の外部に冷却ジャケットを取り付け、水やエチレングリコール水を冷媒として用い、冷却する等の方法がある。
分散する際に用いられる装置としては、例えば、ペイントシェーカー、ニーダー、ディゾルバー、ミキサー、高速ディスパーザー、サンドミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ビーズミル(ダイノミル)(前述の非特許文献1)等が挙げられる。
なお、色材およびポリマーの混合物は、両成分を乾式混合して得られるが、この際に使用される装置は、前記の分散装置が挙げられる。また、乾式混合して得られた粉体粒子の長径/短径比は、1〜5の範囲内であるのが好ましい。さらに前記粉体粒子の体積平均粒子径/数平均粒子径比は、10以下であるのが好ましい。
この加熱処理工程の加熱温度は、ポリマーのガラス転移温度および軟化点より高いことが好ましく、ポリマーの種類により適宜決定すればよいが、40℃以上が好ましい。より好ましくは45〜120℃である。また加熱処理工程の時間は、30分〜10時間であるのが好ましい。
粒子の体積平均直径は、例えば、超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA−700(堀場製作所(株)製)等の装置を用い、遠心沈降法により測定できる。粒子の体積平均粒径は、用いる分散剤の種類と添加量、及び分散する際に用いる装置により、調整することができる。
着し、つまりが生じやすいという問題点があった。また、長期間保存すると粒子が沈降し、攪拌しても再分散せず、保存安定性が悪いという問題点もあった。
本発明では、前記分散媒、色材およびポリマーを10℃未満の温度で湿式分散する工程を含むことにより、ポリマーの脆性が上がり、ポリマー自身の破断が促進され、顔料等の色材の露出および顔料単体の遊離・放出を極力抑制することができる。これにより、色材の存在に基づく粒子間の相互作用が抑制され、なおかつ、色材が持つ荷電を遮蔽し望ましい荷電特性を付与することができる。
さらに詳しくは、湿式分散工程で製造された微小粒子は、分散用ビーズの強力な作用により粒子表面に顔料が露出してしまい、粒子間の相互作用が強く、インクジェットヘッドのノズルで粒子が乾燥付着しやすい。また、保存時に凝集しやすくなる。しかし本発明では前記のように10℃未満の湿式分散工程を含むことから、色材の露出および顔料単体の遊離・放出を抑制しているため、粒子間に働く相互作用が抑制され、前記の乾燥付着が起きにくく、また保存時の凝集も低減する。
なお荷電調整剤の添加は、湿式分散工程時、加熱処理工程時のいずれであってもよい。
ここで本発明でいう再分散性とは、粒子および分散媒を含む組成物を乾燥し、分散媒を蒸発させ、固形物を得、この固形物に該分散媒を加え、固形物を再分散(溶解)し、その際の、再分散した固形物の質量%を意味するものであり、下記の測定方法により測定された値である。
組成物10gを、シャーレに展開し、室温下で自然乾燥(分散媒としてアイソパーGを用いた場合は1時間で乾燥)させ、固形物を得る。
得られた固形物に分散媒を10g加え、室温下30分間静置する。
この混合物を42μmナイロンメッシュでろ過する。
ナイロンメッシュ上の残渣を、室温下で自然乾燥させる。
下式により、再分散性を算出する。
[(固形物の質量−残渣の質量)/固形物の質量] × 100 (%)
初期仕込み用インク組成物および補充用インク組成物の固形分濃度はとくに制限されないが、例えば初期仕込み用インク組成物の固形分濃度を1〜40質量%とし、かつ補充用インク組成物の固形分濃度を2〜60質量%とするとともに、初期仕込み用インク組成物および補充用インク組成物の固形分濃度の比を、後者/前者として1.05〜10.0、好ましくは1.1〜7.0に設定するのがよい。これらの条件を満たすことにより、良好な吐出特性を得ることができる。また、初期仕込み用インク組成物および補充用インク組成物の混合不良が起きることがない。なお、好ましい固形分濃度は、初期仕込み用インク組成物が3〜30質量%、補充用インク組成物が5〜50質量%である。
なお固形分濃度は、インク組成物を加熱し、揮発性成分を除去した際の質量変化を基に算出でき、例えば、インク組成物をホットプレート上で、145℃で2時間乾燥し、質量の変化を基準にして算出することができる。
成物が10pS/cm〜50,000pS/cm(1nS/m〜5,000nS/m)、補充用インク組成物が50pS/cm〜100,000pS/cm(1nS/m〜10,000nS/m)であるのがよい。この範囲内とすることにより、良好な吐出特性が得られる。また、初期仕込み用インク組成物より、補充用インク組成物の電気伝導度を高くすることにより、吐出特性の長時間の維持が可能となり、さらに好ましい。インク組成物の電気伝導度は、用いる分散媒と荷電調整剤の種類と添加量により、調整することができる。
本発明では、以上記述したインク組成物を、インクジェット記録方式により、被記録媒体へ記録する。本発明においては、静電界を利用したインクジェット記録方式を用いることが好ましい。静電界を利用するインクジェット記録方式は、制御電極と被記録媒体背面の背面電極間に電圧を印加することにより、インク組成物の荷電粒子を静電力によって吐出位置に濃縮し、吐出位置から記録媒体へ飛翔させる方式である。制御電極と背面電極間に印加する電圧は、例えば荷電粒子が正の場合、制御電極が正極であり背面電極が負極となる。背面電極へ電圧を印加する代わりに被記録媒体に帯電を行っても同様の効果が得られる。
まずは、図1に示す記録媒体に片面4色印刷を行う装置の概要について説明する。図1に示されるインクジェット記録装置1は、フルカラー画像形成を行うための4色分の吐出ヘッド2C、2M、2Y及び2Kから構成される吐出ヘッド2にインクを供給し、さらに吐出ヘッド2からインクを回収するインク循環系3、図示されないコンピュータ、RIP等の外部機器からの出力により吐出ヘッド2を駆動させるヘッドドライバ4、位置制御手段5を備える。またインクジェット記録装置1は、3つのローラ6A、6B、6Cに張架された搬送ベルト7、搬送ベルト7の幅方向の位置を検知可能な光学センサなどで構成された搬送ベルト位置検知手段8、被記録媒体Pを搬送ベルト上に保持するための静電吸着
手段9、画像形成終了後に被記録媒体Pを搬送ベルト7から剥離するための除電手段10及び力学的手段11を備える。搬送ベルト7の上流、下流には、被記録媒体Pを図示されないストッカーから搬送ベルト7に供給するフィードローラ12及びガイド13、剥離後の被記録媒体Pへインクを定着させると共に図示されない排紙ストッカーに搬送する定着手段14及びガイド15が配置されている。またインクジェット印刷装置1の内部には、搬送ベルト7を挟んで吐出ヘッド2に対向する位置には、被記録媒体位置検出手段16を有し、さらにインク組成物から発生する溶媒蒸気を回収するための排出ファン17及び溶媒蒸気吸着材18からなる溶媒回収部が配置され、装置内部の蒸気は該回収部を通って装置外部に排出される。
画像形成された被記録媒体Pは、除電手段10により除電され、力学的手段11により搬送ベルト7により剥離されて定着部へ搬送される。剥離された被記録媒体Pは、画像定着手段14に送られ、定着がなされる。定着された被記録媒体Pは、ガイド15を通って図示されない排紙ストッカーに排紙される。また、該装置は、インク組成物から発生する溶媒蒸気の回収手段を有する。回収手段は溶媒蒸気吸収材18からなり、排気ファン17により機内の溶媒蒸気を含む気体が吸着材に導入され、蒸気が吸着回収された後、機外に排気される。該装置は、上記例に限定されず、ローラ、帯電器等の構成デバイスの数、形状、相対配置、帯電極性等は任意に選べる。また上記システムでは4色描画について記述しているが、淡色インクや特色インクと組み合わせて、より多色のシステムとしてもよい。
本発明で好適に使用されるインクジェットヘッドは、インク流路内での荷電粒子を電気泳動させて開口付近のインク濃度を増加させ、吐出を行うインクジェット方法であり、主に被記録媒体又は被記録媒体背面に配置された対向電極に起因する静電吸引力によりインク滴の吐出を行うものである。従って、被記録媒体又は対向電極がヘッドに対向していない場合や、ヘッドと対向する位置にあっても被記録媒体又は対向電極に電圧が印加されていない場合には、誤って吐出電極に電圧が印加された場合や振動が与えられた場合でもインク滴の吐出は起こらず、装置内を汚すことはない。
吐出する複数の吐出部76とを有する。吐出部76には、いずれもインク流路72から飛翔するインク滴Gを被記録媒体Pへ向けて案内するインクガイド部78が設けられ、基板74には、インクガイド部78がそれぞれ挿通する開口75が形成されており、インクガイド部78と開口75の内壁面との間にはインクメニスカス42が形成されている。インクガイド部78と被記録媒体Pとのギャップdは200μm〜1000μm程度であることが好ましい。また、インクガイド部78は、下端側で支持棒部40に固定されている。
その際、第1吐出電極46と第2吐出電極56の両者にパルス電圧が印加された場合にのみインク滴Gが吐出するように、第1吐出電極46と第2吐出電極56とに印加する電圧値を調整しておく。
吐出電極46及び第2吐出電極56に印加された正電圧により正の誘導電圧が発生する。
第1吐出電極46及び第2吐出電極56に印加される電圧がパルス状であっても、この誘導電圧はほぼ定常的な電圧である。従って、浮遊導電板62及びガード電極50と、被記録媒体Pとの間に形成される電界によって、インク流路72内で正に帯電している荷電粒子Rは上方へ移動する力を受け、基板74の近傍で荷電粒子Rの濃度が高くなる。図3に示すように、使用する吐出部(すなわちインク滴を吐出させるチャンネル)の個数が多い場合、吐出に必要な荷電粒子数が多くなるが、使用する第1吐出電極46及び第2吐出電極56の枚数が多くなるため、浮遊導電板62に誘起される誘導電圧は高くなり、被記録媒体側へ移動する荷電粒子Rの個数も増大する。
静電界を利用したインクジェット記録方式では、インク組成物中の荷電された粒子(荷電粒子)が濃縮されて吐出する。従って、長時間インク組成物の吐出を行うと、インク組成物中の荷電粒子が減量し、インク組成物の電気伝導度が低下する。また、荷電粒子の電気伝導度とインク組成物の電気伝導度との割合が変化する。さらに、吐出の際、直径の小さな荷電粒子よりも大きな荷電粒子が優先して吐出する傾向にあるため、荷電粒子の平均直径が小さくなる。また、インク組成物中の固形物の含有量が変化するため、粘度も変化する。
これらの物性値の変化により、結果として、吐出不良を起こしたり、記録された画像の光学濃度の低下やインクのにじみが発生する。このため、当初インクタンクへ仕込んだ初期仕込み用インク組成物よりも、高濃度(固形分濃度の高い)の補充用インク組成物を補充することにより、荷電粒子の濃度低下を防止し、インク組成物の電気伝導度を一定の範囲に留めることができる。また、平均粒子直径や粘度を維持することができる。さらに、インク組成物の物性値を一定の範囲内に保つことにより、インク吐出が長時間安定して均一に行われる。この際の補充は、例えば、使用しているインク液の電気伝導度や光学濃度等の物性値を検出し、不足量を算出して、機械的または人力で成されることが好ましい。
また、画像データを基に使用するインク組成物の量を算出し、機械的または人力で成されてもよい。
本発明においては、用途に応じて様々な被記録媒体を用いることができる。例えば、紙、プラスチックフイルム、金属、及び、プラスチックまたは金属がラミネートまたは蒸着された紙、金属がラミネートまたは蒸着されたプラスチックフィルム等を用いれば、インクジェット記録することにより、直接印刷物を得ることができる。また、アルミなどの金属を粗面化した支持体等を用いれば、オフセット印刷版を得ることができる。さらに、プラスチック支持体等を用いれば、フレキソ印刷版や液晶画面用のカラーフィルターを得ることができる。被記録媒体の形状は、シート状のように平面的であっても、円筒形状のように立体的であってもよい。また、シリコンウエハーや配線基板を被記録媒体として用いれば、半導体やプリント配線基板の製造に適用できる。
<使用した材料>
本実施例1においては、下記の材料を使用した。
・被覆剤 [AP−1]
・分散剤 [BZ−2]
・荷電調整剤 [CT−1]
・分散媒 アイソパーG(エクソン社(株)製)
を公知の重合開始剤を用いてラジカル重合することにより得た。
質量平均分子量は、19,000であり、多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、2.6であった。ガラス転移点(ミッドポイント)は50℃であった。
分散剤[BZ−2]は、メタクリル酸ステアリルを、2−メルカプトエタノール存在下ラジカル重合させ、さらに、メタクリル酸無水物と反応させることにより末端にメタクリロイル基を有するメタクリル酸ステアリルのポリマー(質量平均分子量は7,600であった)を得た後、これをスチレンとラジカル重合させることにより得た。質量平均分子量は、110,000であった。
荷電調整剤[CT−1]は、1−オクタデセンと無水マレイン酸のコポリマーに、1−ヘキサデシルアミンを反応させることにより得た。質量平均分子量は、17,000であった。
シアン顔料10gと被覆剤[AP−1]20gを、入江商会(株)製卓上型ニーダーPBV−0.1に入れ、ヒーター温度を100℃に設定し2時間加熱混合した。得られた混合物30gをトリオサイエンス(株)製トリオブレンダーにて粗粉砕し、さらに協立理工(株)製SK−M10型サンプルミルにて微粉砕した。得られた微粉砕物30gを、分散剤[BZ−2]7.5g、アイソパーG75g、および直径約3.0mmのガラスビーズと共に、東洋精機製作所(株)製ペイントシェーカーにて予備分散した。ガラスビーズを除去した後、直径約0.6mmのジルコニアセラミックビーズと共に、シンマルエンタープライゼズ(株)製TypeKDLダイノミルにて、内温を5℃に保ちながら6時間、引き続き55℃で3時間、1,500rpmの回転数で分散(粒子化)した。得られた分散液からジルコニアセラミックビーズを除去し、アイソパーG316gと荷電調整剤[CT−1]0.5gを加え、インク組成物[DC−1]を得た。
インク組成物の20℃での電気伝導度を、LCRメーター(安藤電気(株)社製AG−4311)及び液体用電極(川口電機製作所(株)社製LP−05型)を使用し、印加電圧5V、周波数lkHzの条件で測定したところ、161nS/mであった。荷電粒子の荷電は正であった。
荷電粒子の体積平均直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で5000rpmの回転数で測定したところ、1.0μmであった。また、粒子径が0.2μm以下の粒子の含有率は、1.0体積%であった。尚、数平均直径は、0.15μmであった。インク組成物の20℃での粘度を、東京計器(株)製E型粘度計で測定したところ1.5mPa・sであった。また、再分散性は70%であった。
画像記録後すぐに、ヒートローラを用いて定着した。定着時のコート紙の温度は90℃であり、ヒートローラとの接触時間は0.3秒であった。
画像記録は、画像面積率15%、1日当たりA4サイズ15枚の記録、という条件で1週間行い、インクジェットヘッドの吐出開口に粒子が付着しているかどうか調べた。
また、インク組成物を室温で1ヶ月間静置し、沈降物を調べた。
結果を表1に示す。
<インク組成物[RC−1]の作成>
実施例1において、ダイノミルでの分散を、内温20℃に保ちながら4時間、引き続き55℃で3時間、2,000rpmの回転数で分散(粒子化)したこと以外は、実施例1と同様にしてインク組成物[RC−1]を作成し、評価した。結果を表1に示す。
インク組成物の電導度は、150nS/m、荷電粒子の体積平均直径は、0.9μm、0.2μm以下の粒子の含有率は、5.8体積%、粘度は、1.6mPa・s、再分散性は、30%であった。
顔料を、C.I.Pigment Red 57:1 東洋インキ製造(株)製、ブリリアントカーミン6B、L.R.6B FG−4213に変更したこと以外は、実施例1を繰り返し、インク組成物[DM−1]を作成した。結果を表2に示す。
顔料を、C.I.Pigment Yellow 74 クラリアント ジャパン(株)製 Hanza Brilliant Yellow 5GXBに変更したこと以外は、実施例1を繰り返し、インク組成物[DY−1]を作成した。結果を表2に示す。
顔料を、C.I.Pigment Black 7 三菱化学(株)製、カーボンブラック、MA−100に変更したこと以外は、実施例1を繰り返し、インク組成物[DK−1]を作成した。結果を表2に示す。
実施例2〜4において、ダイノミルでの分散を、内温20℃に保ちながら4時間、引き続き55℃で3時間、2,000rpmの回転数で分散(粒子化)したこと以外は、実施例2〜4と同様にしてインク組成物[RM−1]、[RY−1]、[RK−1]を作成した。結果を表3に示す。
<インク組成物[DC−2]の作成>
実施例1において、ダイノミルでの分散を、内温0℃に保ちながら7時間、引き続き55℃で3時間、1,000rpmの回転数で分散(粒子化)したこと以外は、実施例1と同様にしてインク組成物[DC−2]を作成し、評価した。結果を表4に示す。
インク組成物の電導度は、166nS/m、荷電粒子の体積平均直径は、0.9μm、0.2μm以下の粒子の含有率は、1.0体積%、粘度は、1.5mPa・s、再分散性は、75%であった。
<インク組成物[DC−3]の作成>
実施例1において、ダイノミルでの分散を、内温5℃に保ちながら3時間、500rpmの回転数で分散(粒子化)し、その後の昇温は行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてインク組成物[DC−3]を作成し、評価した。結果を表4に示す。
インク組成物の電導度は、182nS/m、荷電粒子の体積平均直径は、0.7μm、0.2μm以下の粒子の含有率は、0.9体積%、粘度は、1.5mPa・s、再分散性は、65%であった。
<インク組成物[RC−2]の作成>
実施例1において、ダイノミルでの分散を、内温30℃に保ちながら3時間、500rpmの回転数で分散(粒子化)し、その後の昇温は行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてインク組成物[RC−2]を作成し、評価した。結果を表4に示す。
インク組成物の電導度は、205nS/m、荷電粒子の体積平均直径は、0.5μm、0.2μm以下の粒子の含有率は、31体積%、粘度は、1.8mPa・s、再分散性は、20%であった。
P 被記録媒体
Q インク流
R 荷電粒子
1 インクジェット記録装置
2、2Y、2M、2C、2K 吐出ヘッド
3 インク循環系
4 ヘッドドライバ
5 位置制御手段
6A、6B、6C 搬送ベルト張架ローラ
7 搬送ベルト
8 搬送ベルト位置検知手段
9 静電吸着手段
10 除電手段
11 力学的手段
12 フィードローラ
13 ガイド
14 画像定着手段
15 ガイド
16 記録媒体位置検知手段
17 排出ファン
18 溶媒蒸気吸着材
38 インクガイド
40 支持棒部
42 インクメニスカス
44 絶縁層
46 第1吐出電極
48 絶縁層
50 ガード電極
52 絶縁層
56 第2吐出電極
58 絶縁層
62 浮遊導電板
64 被覆膜
66 絶縁部材
70 インクジェットヘッド
72 インク流路
74 基板
75、75A、75B 開口
76、76A、76B 吐出部
78 吐出部
Claims (2)
- 分散媒と、色材およびポリマーを少なくとも含む粒子と、を含有するインク組成物の製造方法において、前記分散媒、色材およびポリマーを10℃未満の温度で湿式分散する湿式分散工程を含むことを特徴とするインク組成物の製造方法。
- 前記湿式分散工程終了後、得られた分散液を加熱処理する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のインク組成物の製造方法。
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