JP2005184126A - スイッチ素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】 構造の簡略化を図る。
【解決手段】 ベース基板2上には高周波信号導通線路3を形成する。当該高周波信号導通線路3は、高周波信号の入側から出側に向かう途中の1箇所以上の各位置で複数の枝線路10に分岐している形態と成す。各枝線路10の対向位置には、ベース基板2に対して遠近方向に変位可能な可動体14を設ける。可動体14は、枝線路10の高周波信号の導通オン・オフ制御を行うスイッチ部4を構成するものである。ベース基板2上に設けられている全ての可動体14は半導体から成り、当該全ての可動体14は電気的に接続されて同電位となっている。可動体14に接続する唯1つの外部接続部を設けるだけで、全ての可動体14を外部と接続させることができるので、各可動体14毎に外部接続部を設ける場合に比べて、構造を簡略化できる。
【選択図】 図1
【解決手段】 ベース基板2上には高周波信号導通線路3を形成する。当該高周波信号導通線路3は、高周波信号の入側から出側に向かう途中の1箇所以上の各位置で複数の枝線路10に分岐している形態と成す。各枝線路10の対向位置には、ベース基板2に対して遠近方向に変位可能な可動体14を設ける。可動体14は、枝線路10の高周波信号の導通オン・オフ制御を行うスイッチ部4を構成するものである。ベース基板2上に設けられている全ての可動体14は半導体から成り、当該全ての可動体14は電気的に接続されて同電位となっている。可動体14に接続する唯1つの外部接続部を設けるだけで、全ての可動体14を外部と接続させることができるので、各可動体14毎に外部接続部を設ける場合に比べて、構造を簡略化できる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、例えばミリ波帯等の高周波信号が通電する高周波回路(例えば周辺監視レーダー用アンテナスキャンの回路)に組み込まれるスイッチ素子に関するものである。
図12(a)にはマイクロマシンスイッチの一例が平面図により示され、図12(b)には図12(a)のA−A部分の断面図が示されている(例えば特許文献1参照)。このマイクロマシンスイッチ40において、基板41上には、分断部Gを備えた信号線42が伸長形成されると共に、その信号線42の分断部Gと間隔を介した横側の位置には下部電極43が設けられている。基板41の上方側には、分断部Gおよびその両端側の信号線42部分と下部電極43とに共通に対向する可動体44が配置されている。この可動体44は、基板41上に固定されている固定部45に、梁46(46a,46b)によって、基板41に対して遠近方向に変位可能に支持されている。
可動体44の基板側の面にはほぼ全面に絶縁膜47が形成され、この絶縁膜47上には、下部電極43に対向する部分に可動用電極48が形成され、また、分断部Gの両端側の信号線42部分を掛け渡す態様の接触電極50が形成されている。
このような構成のマイクロマシンスイッチ40では、例えば、下部電極43と可動用電極48間に直流電圧を印加することにより、当該下部電極43と可動用電極48間に静電引力が発生し、この静電引力によって梁46a,46bが撓んで可動体44が基板41側に引き寄せられる。この可動体44の変位によって接触電極50が分断部Gの両端側の信号線42部分に接触することにより、信号線42は接触電極50を介して導通する。また、下部電極43と可動用電極48間の電圧印加を停止すると、下部電極43と可動用電極48間の静電引力が無くなって可動体44が基板41から離れる方向に変位し、これにより、接触電極50が信号線42から離れることによって信号線42の信号導通がオフする。
ところで、高周波回路に組み込まれるスイッチ素子の一つとして、1入力複数出力タイプと呼ばれるスイッチ素子がある。この1入力複数出力タイプのスイッチ素子は高周波信号の導通経路を切り換えることができるものであり、1つの信号の入力部に対して複数の出力部を備え、入力部から入力した高周波信号を例えば外部からの制御信号により選択された出力部から出力させる構成を備えている。マイクロマシンスイッチ40を用いて、その1入力複数出力タイプのスイッチ素子を構成しようとすると、例えば図13の平面図に示されるような形態が考えられる。
つまり、図13に示されるスイッチ素子は、1入力3出力タイプのスイッチ素子であり、このスイッチ素子を構成するベース基板51の基板面上には、高周波信号が入力する入力側の信号線42inが伸長形成されると共に、3つの出力側の信号線42outが共通に入力側の信号線42inの伸長先端部に接続した態様でもって形成されている。それら各出力側の信号線42outに、それぞれ、当該信号線42outの信号の導通オン・オフを制御するマイクロマシンスイッチ40(40A,40B,40C)が設けられている。なお、マイクロマシンスイッチ40は、ベース基板51を基板41として用いて作製される。
各マイクロマシンスイッチ40の下部電極43と可動用電極48は、それぞれ、導体線等の導通手段によって、外部の例えばスイッチング制御部52に接続される。例えば、マイクロマシンスイッチ40A〜40Cの中から選択された1つのマイクロマシンスイッチ40の下部電極43と可動用電極48間にスイッチング制御部52から電圧が印加されると、その選択されたマイクロマシンスイッチ40は高周波信号の導通オン動作を行う。このとき、他のマイクロマシンスイッチ40は高周波信号の導通オン動作を行わない(つまり、オフ動作状態である)ので、入力側の信号線42inに入力した高周波信号は、オフ動作状態のマイクロマシンスイッチ40が設けられている出力側の信号線42outは通らずに、オン動作状態のマイクロマシンスイッチ40が設けられている出力側の信号線42outを通って外部に出力されることとなる。各マイクロマシンスイッチ40の導通オン・オフ動作状態を切り換えることによって、高周波信号の導通経路を切り換えることができる。
上記のようにマイクロマシンスイッチ40を用いて1入力複数出力タイプのスイッチ素子を構成することができる。しかしながら、各マイクロマシンスイッチ40の下部電極43および可動用電極48にそれぞれ一対一に対応させて外部との接続部を設けなければならないし、1入力複数出力タイプのスイッチ素子を高周波回路に組み込んで使用する際には、各マイクロマシンスイッチ40の下部電極43および可動用電極48をそれぞれ別々に外部の例えばスイッチング制御部52に接続させるための配線作業が必要となり、配線作業が面倒である等の問題が発生する。
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的は、構造の簡略化を図ることができ、また、高周波回路に組み込むときの作業を容易にすることができる複数の出力部を備えたスイッチ素子を提供することにある。
上記目的を達成するために、この発明は次に示す構成をもって前記課題を解決するための手段としている。すなわち、この発明は、ベース基板と、このベース基板上に1つ以上形成された高周波信号導通線路とを有し、その少なくとも1つの高周波信号導通線路は、高周波信号の入側から出側に向かう途中の1箇所以上の各位置で複数の枝線路に分岐している形態と成し、高周波信号導通線路の各枝線路の対向位置には当該枝線路に対して遠近方向に変位可能な可動体が配置されて当該可動体の変位を利用して高周波信号の導通オン・オフ制御を行うスイッチ部が設けられており、また、それら各スイッチ部の可動体の変位動作をそれぞれ個別に制御する可動体変位用制御信号を外部から入力させるための制御信号入力部が設けられており、外部から高周波信号導通線路に入力した高周波信号は、可動体変位用制御信号に応じた各スイッチ部の可動体の変位動作による各スイッチ部の高周波信号導通オン・オフ制御動作によって定まる出力経路の枝線路を通って外部に出力される構成と成しており、ベース基板上に設けられている全てのスイッチ部の可動体は半導体により構成され、当該全ての可動体は電気的に接続されて同電位と成していることを特徴としている。
この発明によれば、スイッチ素子のベース基板上に設けられている全てのスイッチ部の可動体が電気的に接続されて同電位と成す構成を備えているので、例えば、可動体を電気的に外部と接続させるための可動体外部接続用の接続部を唯1つ設けるだけでよい。また、可動体に例えばグランド等の基準電位を持たせるためには、各可動体をそれぞれ個別に外部の例えばグランド部等の基準電位部に接続しなくとも、全ての可動体に共通の唯1つの可動体外部接続用の接続部を外部の基準電位部に接続させるだけで済むこととなる。すなわち、各可動体毎にそれぞれ対応させて外部接続用の接続部を設けなくてよいので、スイッチ素子の構造の簡略化を図ることができる。また、可動体を外部に接続させるための例えば配線作業の手間を大幅に軽減することが可能である。
可動体が梁を介して固定部に支持固定されており、スイッチ素子のベース基板上に形成されている全ての可動体と梁と固定部は半導体基板を加工して一体的に形成され、全ての可動体は、梁と固定部により電気的に接続されて同電位となっている構成を備えることにより、可動体間を配線により接続させるというような作業を行わなくとも、全ての可動体を電気的に接続させて同電位とすることができるので、スイッチ素子の製造工程の簡略化を図ることができる。
また、梁全体の電気的な抵抗率を下げるための導体膜が梁に形成されている構成を備えることによって、梁の電気的な抵抗に起因した各可動体間の電位ばらつきを抑制することができて、全ての可動体をより確実に同電位とすることができる。また、可動体に対向させて可動体用固定電極を設け、電極として機能する可動体と、可動体用固定電極との間に電圧を印加して可動体と可動体用固定電極間に静電引力を発生させ当該静電引力によって可動体を変位させる構成を備えている場合には、梁に導体膜を形成して梁全体の抵抗率を下げることによって、可動体と可動体用固定電極間に電圧を印加してから可動体が変位を開始するまでの時定数を小さくすることができる。これにより、スイッチ素子の応答性を向上させることができる。
さらに、可動体が高抵抗半導体により構成され、当該可動体自体を電極として機能させて可動体を変位させる構成を備えることによって、可動体に当該可動体を変位させるための電極を別に設けなくともよくなるので、スイッチ素子の構造の簡素化および製造工程の簡略化を図ることができる。
高周波信号導通線路がコプレーナ線路又はマイクロストリップ線路である構成を備えていることによって、スイッチ素子での信号損失を抑制することができるので、挿入損失の少ないスイッチ素子を提供することができる。
また、スイッチ部が直列型(つまり、高周波信号導通線路における可動体に対向する領域に分断部が設けられており、可動体に設けられている可動電極によって分断部の両端側の線路部分を掛け渡して電気的に接続させることにより、高周波信号導通線路を導通オン状態とする構成を備えたもの)であっても、また、スイッチ部が並列型(つまり、高周波信号導通線路であるコプレーナ線路の信号線路とその両側のグランド線路とを、可動体の可動電極によって電気的に接続させることにより、コプレーナ線路の高周波信号の導通をオフさせる構成を備えたもの)であっても、上記したような優れた効果を同様に得ることができる。
スイッチ部が並列型のものにおいて、高周波信号導通線路の分岐部と、当該分岐部から伸長形成されている各枝線路に対向している可動体に設けられている可動電極の配置領域との間の電気的な長さが、枝線路に通電する高周波信号の波長の1/4の長さである構成を備えていることによって、スイッチ部により高周波信号の導通オフ状態である枝線路を高周波信号導通線路の分岐部から見たときに、その枝線路側はオープンと見なすことができることとなる。このため、分岐部からその導通オフ状態の枝線路側に高周波信号が入り込んで信号ロスとなる事態をより確実に防止することができる。
並列型のスイッチ部の可動体には複数の可動電極が枝線路の伸長方向に沿って配列配置されており、それら可動電極間の電気的な長さは、枝線路に通電する高周波信号の波長の1/4以下の長さである構成を備えていることによって、スイッチ部を設けたことによる挿入損失や、スイッチ部の配置に起因した反射損失の低減やアイソレーション特性の向上を図ることが容易となる。
以下に、この発明に係る実施形態例を図面に基づいて説明する。
図1(a)には、この実施形態例のスイッチ素子の平面図が簡略化されて示され、また、図1(b)には図1(a)のA−A部分の断面図が模式的に示されている。この実施形態例のスイッチ素子1は、1つの入力部に対して3つの出力部を備え高周波信号の出力経路を切り換えることができる1入力3出力タイプのスイッチ素子である。当該スイッチ素子1は、ベース基板2と、このベース基板2上に形成される高周波信号導通線路であるコプレーナ線路(CPW)3と、コプレーナ線路3に設けられるスイッチ部4(4A,4B,4C)と、ベース基板2の上方側に配置されベース基板2のほぼ全面を覆うように設けられている上部部材5と、この上部部材5をベース基板2に支持固定するための上部部材用固定部6とを有して構成されている。
この実施形態例では、ベース基板2は、例えば抵抗率が5000Ωcm以上というような高抵抗の半導体基板(例えばシリコン(Si)基板やGaAs基板)により構成されている。
コプレーナ線路3は、信号線路7と、その両側に間隔を介して並設されているグランド線路8g1,8g2とを有して構成されており、それら信号線路7とグランド線路8g1,8g2は、それぞれ、例えばAu等の導体材料から成る例えば1μm厚みの導体膜により構成されている。
図2にはベース基板2上のコプレーナ線路3が抜き出され簡略化されて示されている。この図2に示されるように、コプレーナ線路3は、高周波信号の入側から出側に向かう途中の位置で3つの枝線路10(10A,10B,10C)に分岐されている形態を備え、この実施形態例では、当該コプレーナ線路3は、高周波信号が入力する幹線路9の中心線およびその延長線を対称中心線とした対称的な線路形態となっている。このコプレーナ線路3を構成している各枝線路10A〜10Cには、それぞれ、後述するスイッチ部4(4A,4B,4C)が設けられている。
ベース基板2には、コプレーナ線路3の分岐部Xの位置に、図1(a)に示されるようなエアブリッジ12が設けられている。このエアブリッジ12はAu等の導体材料により構成され、コプレーナ線路3の幹線路9と枝線路10A〜10Cを構成する全てのグランド線路8g1,8g2を、信号線路7を跨ぐ態様でもって接続する構成を備えている。このエアブリッジ12によって、各グランド線路8g1,8g2の電位がばらつくという問題を確実に防止することができる。
上部部材用固定部6は、ベース基板2の周縁に沿って形成された枠状の形態を有し、例えば、シリコン等の半導体により構成されている。上部部材5は、例えばガラス基板により構成されており、上部部材用固定部6は上部部材5に例えば陽極接合工法によって接合されている。また、上部部材用固定部6は、例えば、ポリイミド等の樹脂材料から成る接着材料によってベース基板2に固定されている。この実施形態例では、ベース基板2と上部部材5と上部部材用固定部6によってスイッチ部4の形成領域は液密封止されている。なお、図1(b)中の符号Tは、上部部材用固定部6をベース基板2に接着固定している接着部を示している。
各枝線路10A〜10Cにそれぞれ設けられているスイッチ部4(4A,4B,4C)は同じ構成を有するものであり、各スイッチ部4は、それぞれ、ベース基板2と上部部材5との間に配設される可動体14を有している。この実施形態例では、上部部材5のベース基板側の面には、各可動体14(14a,14b,14c)の両側を間隔を介して挟み込む位置に、ベース基板2に対して遠近方向に変位可能な梁16を介して可動体14を支持する可動体支持用の固定部15(15a,15b,15c,15d)が例えば陽極接合工法により固定されている。固定部15aは可動体14aを支持するものであり、固定部15bは、可動体14a,14bを兼用して支持するものであり、固定部15cは、可動体14b,14cを兼用して支持するものであり、固定部15dは可動体14cを支持するものである。
つまり、この実施形態例では、各可動体14a〜14cは、それぞれ、その両側に配置されている固定部15に梁16を介して両持ちの形態でもって、ベース基板2に対して遠近方向に変位可能な状態で支持されている構成と成している。
また、この実施形態例では、可動体14と固定部15と梁16は、高抵抗半導体により構成されている。高抵抗半導体とは、高周波信号(例えば約5GHz以上の交流信号)に対しては絶縁体として振る舞い、低周波信号(例えば約100kHz以下の交流信号)および直流信号に対しては電極として振る舞う高い抵抗率を有する半導体である。ここでは、100Ωcm以上、かつ、10000Ωcm以下の範囲内の抵抗率を有する高抵抗半導体を用いて、可動体14と固定部15と梁16が構成されている。
さらに、この実施形態例では、全ての可動体14a〜14cと固定部15a〜15dと梁16は、上記のような高抵抗半導体から成る基板を加工して一体的に形成されている。すなわち、全ての可動体14a〜14cは、固定部15b,15cと梁16を介して電気的に接続されて同電位を持つことができる構成となっている。なお、この実施形態例では、可動体14と固定部15と梁16だけでなく、上部部材用固定部6も同じ半導体基板により構成されている。また、梁16全体の抵抗率を下げるべく、梁16に導体膜を形成する構成を備えてもよい。この場合には、各可動体間を接続している導通部分の抵抗率が低下するので、可動体間の接続部部分の電気的な抵抗に起因して可動体14a〜14cの電位がばらつくという問題発生を防止することができる。
上部部材5には、各可動体14a〜14cの対向部分に、それぞれ、可動体用固定電極17(17a〜17c)が形成されている(図1(b)参照)。可動体用固定電極17の表面には保護用の絶縁層18が形成されている。
例えば、図3(a)の平面図、および、図3(b)に表されている図3(a)のB−B部分の断面図に示されるように、上部部材5には、各可動体用固定電極17a〜17cから上部部材5の上面に至るスルーホール30(30a,30b,30c)が形成されると共に、固定部15cから上部部材5の上面に至るスルーホール30(30d)が形成されている。また、上部部材5の上面には、各スルーホール30a〜30dにそれぞれ電気的に接続している電極パッド31(31a〜31d)が形成されている。これら電極パッド31a〜31dは、それぞれ、外部接続部として機能するものである。
例えば、電極パッド31dを外部の基準電位部(例えばグランド)に接続するだけで、全ての可動体14a〜14cに同じ基準電位(例えばグランド)を持たせることができる。また、例えば、各電極パッド31a〜31cをそれぞれ外部のスイッチング制御部(図示せず)に接続して、そのスイッチング制御部から信号を電極パッド31とスルーホール30を介して各可動体用固定電極17a〜17cにそれぞれ個別に印加できる状態とすることができる。
このように、電極パッド31a〜31dを利用して、全ての可動体14a〜14cを基準電位とし、また、各可動体用固定電極17a〜17cをそれぞれ個別に例えばスイッチング制御部に接続することにより、各可動体14a〜14cをそれぞれ別々に次に示すように変位制御することができる。
つまり、スイッチング制御部から直流信号又は低周波信号の可動体変位用制御信号を可動体用固定電極17に印加して、可動体用固定電極17と、電極として機能する可動体14との間に電圧を印加する。この電圧印加によって、可動体用固定電極17と可動体14との間に静電引力が発生し、この静電引力によって、可動体14は、可動体用固定電極17に引き寄せられ、例えば図3(b)の状態から図3(c)に示されるように上部部材5側に変位する。また、スイッチング制御部から可動体用固定電極17への電圧印加を停止すると、可動体用固定電極17と可動体14間の静電引力が無くなって、可動体14は、ベース基板2側に変位する。
なお、可動体14と可動体用固定電極17間に印加する電圧は、梁16のばね定数や、可動体14と可動体用固定電極17間の間隔や対向面積などを考慮して設定するものであり、特に限定されるものではないが、その一例として、例えば可動体14と可動体用固定電極17間に印加する電圧として50Vを挙げることができる。また、この実施形態例では、各可動体用固定電極17a〜17c毎に個別に可動体変位用制御信号を印加できる構成であるので、各可動体14a〜14c毎に変位制御を行うことができる。さらに、この実施形態例では、上記のように電極パッド31a〜31cを通して外部から可動体変位用制御信号が入力する構成となっており、それら電極パッド31a〜31cが制御信号入力部として機能している。
スイッチ部4A〜4Cは、上記のように変位制御が可能な可動体14を利用して後述するように高周波信号の導通オン・オフ制御を行うものであり、これらスイッチ部4A〜4Cによって、スイッチ素子1の出力切り換え動作が行われる。つまり、スイッチ部4A〜4Cによって、枝線路10A〜10Cのうちの何れか1つの枝線路10を高周波信号の導通オン状態とし、他の枝線路10は高周波信号の導通オフ状態とすることにより、コプレーナ線路3の幹線路9に入力した高周波信号は、その導通オン状態の枝線路10を通って外部に出力されることとなるので、スイッチ部4A〜4Cによって、各枝線路10の導通オン・オフ状態を適宜に切り換えることによって、幹線路9に入力した高周波信号の出力経路を切り換えることができる。
以下に、可動体14の変位を利用して高周波信号の導通オン・オフ制御を行うスイッチ部4の構成例を説明する。例えば、スイッチ部4は、並列型(シャント型)と呼ばれる構成を備える場合と、直列型と呼ばれる構成を備える場合とが考えられる。スイッチ部4が並列型の構成を備えている場合には、スイッチ部4の可動体14には、ベース基板2側の面に、例えば図4(a)の平面図に示されるような可動電極20が設けられる。この可動電極20は、コプレーナ線路3の信号線路7およびその両側のグランド線路8g1,8g2に共通に対向する形態を有している。図4(b)の断面図に示されるように、可動体14と可動電極20との間には、当該可動体14と可動電極20を絶縁するための絶縁層21が設けられている。
図4(a)の例では、可動体14には、2つの可動電極20がコプレーナ線路3の伸長方向に沿って配列配置されており、それら各可動電極20間の電気的な長さは、コプレーナ線路3に通電する高周波信号の波長の約1/4の長さとなっている。また、各可動体14に設けられている複数の可動電極20のうち、最もコプレーナ線路3の分岐部Xに近い可動電極20と、分岐部Xとの間の電気的な長さは、コプレーナ線路3に通電する高周波信号の波長の約1/4の長さとなっている。
コプレーナ線路3の信号線路7とグランド線路8g1,8g2の各々の上面には、例えばSiO2等の絶縁材料から成る例えば0.1μm厚の絶縁層(図示せず)が設けられている。この例では、可動体14と可動体用固定電極17間に電圧が印加されていないときには、図4(b)の断面図に示されるように、可動体14の可動電極20がコプレーナ線路3上の絶縁層に接触している状態となり、可動体14は、梁16の弾性力によってコプレーナ線路3側に押圧力を加える構成と成している。
ところで、コプレーナ線路3の信号線路7とその両側のグランド線路8g1,8g2に共通に対向する可動電極20を設けることによって、コプレーナ線路3の信号線路7は、可動電極20とコプレーナ線路3の線路7,8g1,8g2との間の静電容量(C)と、可動電極20が持つインダクタンス(L)とに基づいたLC共振回路を介して、グランド線路8g1,8g2に接続された状態となる。この例では、可動体14の変位によって可動電極20とコプレーナ線路3間の静電容量(C)が可変して、信号線路7とグランド線路8g1,8g2間の等価的なLC共振回路の共振周波数が可変する構成と成している。
可動電極20がコプレーナ線路3上の絶縁層に接触している状態(つまり、可動体14が最もコプレーナ線路3側に変位している状態)のときに、信号線路7とグランド線路8g1,8g2間の等価的なLC共振回路の共振周波数が、コプレーナ線路3を通電している高周波信号の周波数と同じ又はその近傍となるように、可動電極20が持つインダクタンス値を考慮して、可動体14とコプレーナ線路3間の間隔(つまり、コプレーナ線路3上の絶縁層の厚み)が設定されている。
これにより、可動体14が最もコプレーナ線路3側に変位している状態で、信号線路7とグランド線路8g1,8g2間の等価的なLC共振回路のインピーダンスが非常に小さくなり、可動電極20とコプレーナ線路3間が高周波的に容量を介し接続してコプレーナ線路3の信号線路7とグランド線路8g1,8g2との間が可動電極20を介して短絡した状態となる。このため、可動電極20が配置されている位置で、コプレーナ線路3を通電している高周波信号は、ほぼ全反射することとなる。つまり、コプレーナ線路3の高周波信号の導通オフ状態となる。なお、この例では、コプレーナ線路3上の絶縁層によって、可動電極20は、コプレーナ線路3と容量を介して接続することになるので、可動電極20がコプレーナ線路3に直接接続する場合に生じる接触抵抗の発生を防止することができる。また、コプレーナ線路3上の絶縁層は、可動電極20とコプレーナ線路3の接触に因るコプレーナ線路3の劣化を防止することができる。
可動体14と可動体用固定電極17間に電圧が印加されると、その電圧印加による可動体14と可動体用固定電極17間の静電引力発生によって、可動体14が上部部材5側に変位して、可動電極20とコプレーナ線路3間の間隔が例えば3μm程度に広がる。これにより、可動電極20とコプレーナ線路3間の静電容量が大きくなって、信号線路7とグランド線路8g1,8g2間の等価的なLC共振回路の共振周波数がコプレーナ線路3の高周波信号の周波数から大きくずれることにより、コプレーナ線路3の信号線路7と、グランド線路8g1,8g2との間のインピーダンスが非常に大きくなり、信号線路7から可動電極20を介してグランド線路8g1,8g2側を見たときにオープンと等価な状態となる。これにより、コプレーナ線路3の高周波信号の導通はオンする。
このように図4に示される例の並列型のスイッチ部4では、可動体14と可動体用固定電極17間に電圧が印加されていなくて可動体14が最もコプレーナ線路3側に変位している状態のときに、コプレーナ線路3(枝線路10)の高周波信号の導通をオフし、可動体14と可動体用固定電極17間に電圧が印加されて可動体14が上部部材5側に変位している状態のときに、コプレーナ線路3(枝線路10)の高周波信号の導通をオンする。
ところで、可動体14が上部部材5側に変位してコプレーナ線路3の高周波信号の導通がオン状態であるときに、可動電極20に対向しているコプレーナ線路3の位置で、僅かではあるが高周波信号の一部が通過せずに反射してしまうという現象が生じる。これにより、スイッチ素子1の信号通過特性が悪化するという問題が発生する。
これに対して、この図4(a)の例では、2つの可動電極20がコプレーナ線路3の伸長方向に配列配置されており、それら可動電極20間の電気的な長さが、コプレーナ線路3を通電している高周波信号の波長の1/4の長さと成していて、コプレーナ線路3の高周波信号に対して整合回路が構成されている。この構成により、分岐部Xに近い方の可動電極20に対向するコプレーナ線路3の位置で反射した高周波信号と、分岐部Xから遠い方の可動電極20に対向するコプレーナ線路3の位置で反射した高周波信号とが合成する部分において、それら反射の高周波信号は互いに逆相となって、合成により互いに打ち消し合うことができる。これにより、反射信号が入力側に戻る事態をほぼ回避できる。このため、この図4(a)の例のスイッチ素子1は、信号通過特性に優れたものとなっている。
なお、図4に示した並列型のスイッチ部4の構成では、可動電極20は帯状の形態と成していたが、例えば、図5の平面図に示されるような態様としてもよい。つまり、図5の例では、可動電極20は、信号線路7に対向している電極部分と、グランド線路8g1,8g2にそれぞれ対向している電極部分との間が当該電極部分よりも細い接続電極部によって接続されている形態となっている。この可動電極20は、その細い接続電極部によって、図4に示した帯状の可動電極20よりも可動電極20が持つインダクタンス値を大きくできる構成となっている。特に、図5の例では、その細い接続電極部はミアンダ状に形成されているので、よりインダクタンス値を大きくできる構成となっている。
また、図4の例では、対向し合う可動電極20の面と、コプレーナ線路3の上面とのうちのコプレーナ線路3の上面に絶縁膜が形成されていたが、コプレーナ線路3の上面に代えて、可動電極20の面に絶縁膜を形成してもよいし、また、対向し合う可動電極20の面と、コプレーナ線路3の上面との両方に絶縁膜を形成してもよい。何れの場合にも、可動体14が最もコプレーナ線路3側に変位している状態の時に、コプレーナ線路3の信号線路7と、グランド線路8g1,8g2との間の等価的なLC共振回路の共振周波数が、コプレーナ線路3を通電している高周波信号の周波数と同じ又はその近傍となるように、可動電極20が持つインダクタンス値を考慮して、可動電極20の面上あるいはコプレーナ線路3の上面に形成される絶縁膜の厚みが設定される。
さらに、図4の例では、可動電極20は、コプレーナ線路3と容量を介して高周波的に接続される構成であった。つまり、図4に示したスイッチ部4は、並列型の容量タイプの構成を持つものであった。これに対して、スイッチ部4は、並列型の次に示すようなコンタクトタイプの構成としてもよい。つまり、対向し合う可動電極20の面とコプレーナ線路3の上面との何れにも絶縁膜が形成されていなくて、可動体14のコプレーナ線路3側への変位によって、可動電極20が直接的にコプレーナ線路3に接続できる構成とする。この場合には、可動電極20がコプレーナ線路3に直接的に接続することにより、信号線路7が可動電極20を介して直接的にグランド線路8g1,8g2に接続してコプレーナ線路3の高周波信号の導通はオフする。また、可動体14が上部部材5側に変位して、可動電極20と、コプレーナ線路3との間の間隔が例えば3μm程度に広がることによって、コプレーナ線路3の高周波信号の導通がオンする。
なお、スイッチ部4が、並列型のコンタクトタイプの構成を備えている場合には、コプレーナ線路3の信号線路7と、グランド線路8g1,8g2との間は可動電極20によって直接的に接続されてコプレーナ線路3の高周波信号の導通オフ状態を作り出すものであり、可動電極20のインダクタンスを用いたLC共振を利用していないので、可動電極20のインダクタンス値を大きくする必要がない。このため、可動電極20は、インダクタンス値を大きくするための例えば図5に示されるような複雑な形状を備えなくともよい。
さらに、図4の例では、各可動体14には、それぞれ、複数の可動電極20が設けられている例を示したが、例えば、スイッチ素子1の仕様等により定められている信号通過特性の許容範囲が緩くて、信号通過特性の向上に関して気にしなくともよい場合には、例えば、可動体14には可動電極20を1つだけ設ける構成としてもよい。また、例えば、コプレーナ線路3を通電する高周波信号の周波数が例えば20GHz以下であり、コプレーナ線路3の高周波信号の波長が長いために、例えば仕様等によるスイッチ素子1の小型化の規制によって、2つの可動電極20を、コプレーナ線路3の高周波信号の波長の1/4の長さを介して配置することが難しい場合にも、可動体14には可動電極20を1つだけ設ける構成としてもよい。
さらに、可動体14に3つ以上の可動電極20をコプレーナ線路3の伸長方向に沿って配列配置する構成としてもよいし、また、1以上の可動電極20が形成された複数の可動体14をコプレーナ線路3の伸長方向に沿って配置することで、複数の可動電極20をコプレーナ線路3の伸長方向に沿って配列配置する構成としてもよい。なお、複数の可動体14がコプレーナ線路3の伸長方向に沿って配列配置する場合には、それら配列している可動体14を同時に同じ方向に変位させる手段が講じられることとなる。
3つ以上の可動電極20がコプレーナ線路3の伸長方向に沿って配列配置される場合には、可動体14(可動電極20)がコプレーナ線路3から離間配置されてコプレーナ線路3が高周波信号の導通オン状態となっているときに、各可動電極20にそれぞれ対向しているコプレーナ線路3の各々の位置で、コプレーナ線路3を通電している高周波信号の一部が反射する現象が生じるので、それら全ての反射信号が合成する部分において、反射信号の合成によって、反射信号が互いに打ち消し合って、合成後の反射信号の振幅を、合成前の反射信号の振幅よりも小さく抑制することができるように、各可動電極20間の電気的な長さが、例えばコプレーナ線路3の高周波信号の波長の1/4以下の適宜な長さに設定される。
次に、スイッチ部4が直列型である場合の構成の一例を述べる。つまり、図4のようにスイッチ部4が並列型の構成を備えている場合には、ベース基板2に形成されているコプレーナ線路3は、図6(b)に示されるように連続的に形成されているのに対して、スイッチ部4が直列型の場合には、図6(a)に示されるように、ベース基板2上のコプレーナ線路3の信号線路7には、スイッチ部4の可動体14に対向する部分に分断部23が形成されている。
直列型のスイッチ部4の可動体14には、コプレーナ線路3側の面に、図7(a)の平面図、および、図7(b)における図7(a)のC−C部分の断面図に示されるように、可動電極25が、分断部23の両端側の信号線路部分を掛け渡す態様でもって設けられている。なお、可動体14と可動電極25との間には、当該可動体14と可動電極25間を絶縁させるために絶縁膜26が設けられている。また、コプレーナ線路3の信号線路7の上面には絶縁膜(図示せず)が形成されている。
この例では、可動体14と可動体用固定電極17間に電圧が印加されていないときには、図7(b)の断面図に示されるように、可動体14の可動電極25がコプレーナ線路3の信号線路7上の絶縁層に接触している状態となり、可動体14は、梁16の弾性力によってコプレーナ線路3側に押圧力を加える構成と成している。
分断部23の両端側の信号線路部分は、可動電極25のインダクタンス(L)と、信号線路7と可動電極25間の静電容量(C)とに基づいた等価的なLC共振回路を介して接続されている状態である。この例では、可動体14が最もコプレーナ線路3側に変位して可動電極25がコプレーナ線路3の信号線路7上の絶縁膜に接触しているときに、分断部23の両端側の信号線路部分間の等価的なLC共振回路の共振周波数が、コプレーナ線路3の高周波信号と同じ又はその近傍の周波数となるように、可動電極25が持つインダクタンス値を考慮して、コプレーナ線路3の信号線路7上の絶縁膜の厚みが設定されている。
このため、可動体14が最もコプレーナ線路3側に変位したときに、分断部23の両端側の信号線路部分間の等価的なLC共振回路のインピーダンスが非常に小さくなり、分断部23の両端側の信号線路部分は可動電極25と容量を介して高周波的に接続されて、分断部23の両端側の信号線路部分間は、可動電極25を介して接続され、高周波信号の導通がオン状態となる。
また、可動体14と可動体用固定電極17間に電圧が印加されて、図7(c)に示されるように可動体14が上部部材5側に変位し、例えば信号線路7と可動電極25との間の間隔が約3μm程度に広がって、分断部23の両端側の信号線路部分から可動電極25を見たときにオープンとなっている状態の時に、コプレーナ線路3の高周波信号の導通はオフ状態となる。
なお、このように、スイッチ部4が直列型の構成を備える場合には、コプレーナ線路3の分岐部Xから各スイッチ部4の可動電極25に至るまでの間隔は、コプレーナ線路3の高周波信号の波長の1/4の長さよりも十分に短い長さとして構わない。
また、図7の例では、可動電極25は帯状の形態であったが、例えば、図8の平面図に示されるような態様としてもよい。つまり、図8の例では、可動電極25は、分断部23の一端側の信号線路部分に対向している電極部分と、分断部23の他端側の信号線路部分に対向している電極部分とを有し、それら電極部分の間がそれら電極部分よりも細い接続電極部によって接続されている形態となっている。この可動電極25は、その細い接続電極部によって、図7に示した帯状の可動電極25よりも可動電極25が持つインダクタンス値を大きくできる構成となっている。特に、図8の例では、その細い接続電極部はミアンダ状に形成されているので、可動電極25のインダクタンス値をより大きくできる構成となっている。
また、図7の例では、対向し合う可動電極25の面と、信号線路7の上面とのうちの信号線路7の上面に絶縁膜が形成されていたが、信号線路7の上面に代えて、可動電極25の面に絶縁膜を形成してもよいし、また、対向し合う可動電極25の面と、信号線路7の上面との両方に絶縁膜を形成してもよい。何れの場合にも、可動体14が最もコプレーナ線路3側に変位している状態の時に、分断部23の両端側の信号線路部分間の等価的なLC共振回路の共振周波数が、コプレーナ線路3を通電している高周波信号の周波数と同じ又はその近傍となるように、可動電極25が持つインダクタンス値を考慮して、可動電極25の面上あるいは信号線路7の上面に形成される絶縁膜の厚みが設定される。
さらに、図7の例では、可動電極25は、分断部23の両端側の信号線路部分と容量を介して高周波的に接続される構成であった。つまり、図7に示したスイッチ部4は、直列型の容量タイプの構成を持つものであった。これに対して、スイッチ部4は、直列型の次に示すようなコンタクトタイプの構成としてもよい。つまり、対向し合う可動電極25の面上と、分断部23の両端側の信号線路部分の上面との何れにも絶縁膜が形成されていなくて、可動体14のコプレーナ線路3側への変位によって、可動電極25が直接的に分断部23の両端側の信号線路部分に接続できる構成とする。この場合には、可動電極25が分断部23の両端側の信号線路部分に直接的に接続することにより、分断部23の両端側の信号線路部分が可動電極25を介して直接的に接続されてコプレーナ線路3の高周波信号の導通はオンする。また、可動体14が上部部材5側に変位して、可動電極25と、分断部23の両端側の信号線路部分との間の間隔が例えば3μm程度に広がることによって、コプレーナ線路3の高周波信号の導通がオフする。
なお、スイッチ部4が、直列型のコンタクトタイプの構成を備えている場合には、分断部23の両端側の信号線路部分の間は可動電極25によって直接的に接続されてコプレーナ線路3の高周波信号の導通オン状態を作り出すものであり、可動電極25のインダクタンスを用いたLC共振を利用していないので、可動電極25のインダクタンス値を大きくする必要がない。このため、可動電極25は、インダクタンス値を大きくするための例えば図8に示されるような複雑な形状を備えなくともよい。
上記のように、可動体14の変位を利用してコプレーナ線路3の高周波信号の導通オン・オフ制御を行うスイッチ部4の構成には様々な構成があり、この実施形態例のスイッチ素子1には、可動体14を有したスイッチ部4の何れの構成をも採用してよいものである。
なお、この発明はこの実施形態例の形態に限定されるものではなく、様々な実施の形態を採り得る。例えば、この実施形態例では、高周波信号導通線路として、コプレーナ線路が設けられている例を示したが、例えば、マイクロストリップ線路等の他の形態の高周波信号導通線路を設けてもよいものである。
また、この実施形態例では、ベース基板2は、例えば5000Ωcm以上の高抵抗の半導体基板により構成されていたが、例えば、ベース基板2は、サファイア等の絶縁基板により構成してもよい。
さらに、この実施形態例では、可動体14を構成する半導体は、100Ωcm以上、かつ、10000Ωcm以下の範囲内の抵抗率を有する高抵抗半導体であった。高抵抗半導体は、高周波信号に対しては絶縁体として振る舞い、その高周波信号に対して誘電体損失を発生させるが、高抵抗半導体は、信号が高周波化するにつれて誘電体損失が小さくなるという特有な性質を有し、高周波信号に対して誘電体損失を小さく抑制することができる。特に、100Ωcm以上、かつ、10000Ωcm以下の範囲内の抵抗率を有する高抵抗半導体を利用することにより、誘電体損失を非常に小さく抑制できるので、誘電体損失の目標値が小さく厳しいような場合には、非常に有効なものである。これに対して、例えば、高周波信号の誘電体損失の目標値が緩いような場合には、その目標値に応じて、可動体14を構成する半導体として、100Ωcmよりも低い抵抗率の高抵抗半導体を採用してもよい。
さらに、この実施形態例では、半導体から成る上部部材用固定部6および可動体支持用の固定部15は、ガラスから成る上部部材5に陽極接合工法によって接合されている例を示したが、例えば、上部部材用固定部6や、可動体支持用の固定部15を上部部材5に接合する手法は、陽極接合工法に限定されるものではなく、例えば、金属を利用した共晶接合手法や金スズ接合手法や金−金接合手法やはんだ接合手法や、フリットガラス接合手法等の陽極接合以外の接合手法を利用して、上部部材用固定部6や、可動体支持用の固定部15を上部部材5に接合してもよい。また、上部部材用固定部6とベース基板2の接合に関しても同様であり、上部部材用固定部6とベース基板2の接合手法は特に限定されるものではなく、適宜な手法により上部部材用固定部6をベース基板2に接合させてよいものである。
さらに、この実施形態例では、固定部15は、上部部材5に接合されていたが、固定部15はベース基板2に接合されていてもよい。
さらに、この実施形態例では、可動体用固定電極17は上部部材5に設けられていたが、例えば、図9の断面図に示されるように、可動体用固定電極17は、ベース基板2上に、可動体14の一部に対向させて設ける構成としてもよい。この場合には、可動体14と可動体用固定電極17間に電圧を印加することにより、可動体14と可動体用固定電極17間に静電引力が発生して、可動体14がベース基板2側に変位する。また、可動体14と可動体用固定電極17間の電圧印加を停止すると、可動体14は、ベース基板2から離れる方向に変位して、例えば、図9に示されるような状態となる。このように、可動体14を変位制御する構成を備えている場合にあっても、前記した並列型や直列型のスイッチ部4を構成することができる。
さらに、可動体14は長方形状である例を示したが、可動体14は、例えば、機械的な共振周波数や強度等の機械的な特性や、梁16や固定部15の配置位置の規制の問題や、スイッチ部4のスイッチング動作に関わる電気的な特性等を考慮して、適宜な形状としてよいものであり、例えば、円形や、三角形や、五角以上の多角形状としてもよいし、また、可動体14の変位動作をスムーズに行わせるためにダンピングを低減すべく可動体14に1つ以上の貫通孔が形成されている形態としてもよい。
さらに、この実施形態例では、ベース基板2には1つのコプレーナ線路3が形成されている例を示したが、例えば、複数のコプレーナ線路3がベース基板2上に形成されている構成としてもよい。複数のコプレーナ線路3がベース基板2上に形成される場合には、少なくとも1つのコプレーナ線路3は、高周波信号の入側から出側に向かう途中の1箇所以上の各位置で複数の枝線路に分岐している形態と成し、各枝線路には可動体14を備えたスイッチ部4が設けられる構成とする。例えば、図10には、分岐構造を持つ2つのコプレーナ線路3(3A,3B)が隣り合ってベース基板2上に配置されている例が示されており、この図10にも示されているように、ベース基板2上に形成されている全ての可動体14は、例えば固定部15と梁16を介して接続されて同電位と成している構成とする。
さらに、この実施形態例では、コプレーナ線路3は、1箇所の位置で複数の枝線路10に分岐している例を示したが、例えば、図11に示されるように、コプレーナ線路3は、2箇所以上の各位置で複数の枝線路10に分岐している構成としてもよい。図11の例に示されるコプレーナ線路3は、まず、3つの枝線路10A〜10Cに分岐し、その枝線路10A〜10Cの中の枝線路10Cが出力側に向かう途中で3つの枝線路10D,10E,10Fに分岐している形態と成している。それら各枝線路10A〜10Fには、それぞれ、可動体14が対向配置され、それら全ての可動体14(14a〜14f)は固定部15と梁16を介して接続されて同電位となっている。
1 スイッチ素子
2 ベース基板
3 コプレーナ線路
4 スイッチ部
5 上部部材
7 信号線路
8g1,8g2 グランド線路
9 幹線路
10 枝線路
14 可動体
15 可動体支持用の固定部
16 梁
17 可動体用固定電極
20,25 可動電極
23 分断部
2 ベース基板
3 コプレーナ線路
4 スイッチ部
5 上部部材
7 信号線路
8g1,8g2 グランド線路
9 幹線路
10 枝線路
14 可動体
15 可動体支持用の固定部
16 梁
17 可動体用固定電極
20,25 可動電極
23 分断部
Claims (11)
- ベース基板と、このベース基板上に1つ以上形成された高周波信号導通線路とを有し、その少なくとも1つの高周波信号導通線路は、高周波信号の入側から出側に向かう途中の1箇所以上の各位置で複数の枝線路に分岐している形態と成し、高周波信号導通線路の各枝線路の対向位置には当該枝線路に対して遠近方向に変位可能な可動体が配置されて当該可動体の変位を利用して高周波信号の導通オン・オフ制御を行うスイッチ部が設けられており、また、それら各スイッチ部の可動体の変位動作をそれぞれ個別に制御する可動体変位用制御信号を外部から入力させるための制御信号入力部が設けられており、外部から高周波信号導通線路に入力した高周波信号は、可動体変位用制御信号に応じた各スイッチ部の可動体の変位動作による各スイッチ部の高周波信号導通オン・オフ制御動作によって定まる出力経路の枝線路を通って外部に出力される構成と成しており、ベース基板上に設けられている全てのスイッチ部の可動体は半導体により構成され、当該全ての可動体は電気的に接続されて同電位と成していることを特徴とするスイッチ素子。
- 可動体は、ベース基板と該ベース基板の上方側を覆う上部部材との間に配設され、上記上部部材のベース基板側の面、又は、ベース基板上の面には、複数のスイッチ部の可動体を兼用して支持する可動体支持用の固定部が設けられており、各スイッチ部の可動体は、ベース基板に対して遠近方向に変位可能な梁を介して予め定められた固定部に支持固定されている構成と成し、全ての可動体と梁と固定部は半導体基板を加工して一体的に形成されており、全ての可動体は、梁と固定部により電気的に接続されて同電位と成していることを特徴とする請求項1記載のスイッチ素子。
- 梁には、該梁全体の抵抗率を下げるための導体膜が形成されていることを特徴とする請求項2記載のスイッチ素子。
- 可動体は、高周波信号に対しては絶縁体として振る舞い、かつ、低周波信号および直流信号に対しては電極として振る舞う高抵抗半導体により構成されており、ベース基板上には可動体の一部に対向する可動体用固定電極が形成されており、この可動体用固定電極に低周波信号又は直流信号の可動体変位用制御信号が加えられる構成と成し、その信号印加により可動体用固定電極と、電極として機能する可動体との間に発生した静電引力によって可動体がベース基板側に変位してスイッチング動作する構成を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載のスイッチ素子。
- 可動体は、高周波信号に対しては絶縁体として振る舞い、かつ、低周波信号および直流信号に対しては電極として振る舞う高抵抗半導体により構成され、可動体の上方側に間隔を介して対向する上部部材が配設されており、この上部部材の可動体に対向する部分には可動体用固定電極が形成されており、この可動体用固定電極に低周波信号又は直流信号の可動体変位用制御信号が加えられる構成と成し、その信号印加により可動体用固定電極と、電極として機能する可動体との間に発生した静電引力によって可動体が上部部材側に変位してスイッチング動作する構成を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載のスイッチ素子。
- 高周波信号導通線路は、コプレーナ線路とマイクロストリップ線路のうちの何れか一方であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載のスイッチ素子。
- 高周波信号導通線路の枝線路には、スイッチ部の可動体に対向する領域内に、分断部が設けられ、可動体には、その分断部の両端側の枝線路部分を掛け渡す態様の可動電極が設けられており、スイッチ部の可動体が枝線路側に変位して可動電極が分断部の両端側の枝線路部分に直接接続するか、あるいは、高周波的に容量を介して接続することにより、枝線路は可動電極を介して高周波信号が導通するオン状態となり、可動体が枝線路から離れる方向に変位して分断部の両端の枝線路部分が電気的にオープンとなることにより枝線路は高周波信号の導通オフ状態となることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1つに記載のスイッチ素子。
- 高周波信号導通線路は、信号線路の両側に間隔を介してグランド線路が並設されて成るコプレーナ線路により構成され、スイッチ部の可動体には、コプレーナ線路の信号線路とその両側のグランド線路に共通に対向する可動電極が形成されており、可動体がベース基板側に変位して、可動電極がコプレーナ線路の信号線路およびグランド線路に直接接続するか、あるいは、高周波的に容量を介し接続して、信号線路が可動電極を介してグランド線路に高周波的に接続することにより、枝線路は高周波信号の導通オフ状態となり、可動体がベース基板側から離れる方向に変位して、可動電極と信号線路との間が高周波的にオープンとなったときには、枝線路は高周波信号の導通オン状態となることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載のスイッチ素子。
- 高周波信号導通線路の分岐部と、当該分岐部から伸長形成されている各枝線路に対向している可動体に設けられている可動電極の配置領域との間の電気的な長さは、高周波信号導通線路を通電する高周波信号の波長の1/4の長さであることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1つに記載のスイッチ素子。
- 可動体には複数の可動電極が枝線路の伸長方向に沿って配列配置されており、それら可動電極間の電気的な間隔は、枝線路に通電する高周波信号の波長の1/4以下の長さであることを特徴とする請求項8又は請求項9記載のスイッチ素子。
- 高周波信号導通線路は高周波信号が入力する幹線路を備え、当該高周波信号導通線路は、幹線路の中心線およびその延長線を対称中心線とした対称的な線路形態と成していることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1つに記載のスイッチ素子。
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2003
- 2003-12-16 JP JP2003418431A patent/JP2005184126A/ja active Pending
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