JP2004319215A - 静電駆動素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造が容易で歩留まりが高く、外力等による誤動作を抑制できて設計通りの動作を行える静電駆動素子を提供する。
【解決手段】基板2上に形成されたコプレーナー線路3の上方側に可動体6を配置し、可動体6と基板2との間隔が広がる方向に変位するよう静電引力を利用して可動体6を変位させる可動体駆動手段を設ける。可動体駆動手段に電圧を印加しない状態では梁7により可動体6を基板2側に付勢して可動電極10とコプレーナー線路3とを接触状態と成し、可動体駆動手段に電圧を印加することにより可動体6を梁7の付勢力に抗して基板2から遠ざけて可動電極10とコプレーナー線路3とを非接触状態と成す。基板2上に、可動電極10とコプレーナー線路3とを接触状態としたときの可動体6の基板面に沿った方向の位置を位置決めする位置決めガイド部9を形成し、可動体6を設定位置に配置する。
【選択図】 図1
【解決手段】基板2上に形成されたコプレーナー線路3の上方側に可動体6を配置し、可動体6と基板2との間隔が広がる方向に変位するよう静電引力を利用して可動体6を変位させる可動体駆動手段を設ける。可動体駆動手段に電圧を印加しない状態では梁7により可動体6を基板2側に付勢して可動電極10とコプレーナー線路3とを接触状態と成し、可動体駆動手段に電圧を印加することにより可動体6を梁7の付勢力に抗して基板2から遠ざけて可動電極10とコプレーナー線路3とを非接触状態と成す。基板2上に、可動電極10とコプレーナー線路3とを接触状態としたときの可動体6の基板面に沿った方向の位置を位置決めする位置決めガイド部9を形成し、可動体6を設定位置に配置する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば周辺監視レーダー用アンテナスキャン等の高周波回路モジュールに組み込まれるRF MEMS(micro electro mechanical systems)スイッチ素子や容量型素子等、静電容量変化を利用して駆動する静電駆動素子に関するものである。
【0002】
【背景技術】
ミリ波、マイクロ波の高周波信号で用いるスイッチ素子の例として、例えば図9に示すような、静電容量変化を利用して駆動するマイクロマシンスイッチが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図9(a)は平面図、図9(b)は図9(a)のA−A部分の断面図であり、このマイクロマシンスイッチ40において、基板41上には、第1の信号線42aと第2の信号線42bが互いに端部をギャップGを介し対向させて配置形成されている。また、基板41上には下部電極43が第1の信号線42aおよび第2の信号線42bと間隔を介して形成されている。
【0004】
さらに、基板41には、固定部45が下部電極43の近傍に配設されている。さらにまた、基板41の上方側には、第1の信号線42aおよび第2の信号線42bの各端部の形成領域から下部電極43の形成領域にかけての基板領域に間隔を介して対向する可動体44が配置されている。この可動体44は、固定部45に梁46(46a,46b)を介して支持されている。
【0005】
可動体44の基板側の面にはほぼ全面に絶縁膜47が形成されており、この絶縁膜47の表面には、可動用電極48が下部電極43に対向させて形成され、また、接触電極50が第1の信号線42aの端部からギャップGを介し第2の信号線42bの端部に至るまでの領域に対向させて形成されている。
【0006】
このような構成のマイクロマシンスイッチ40では、例えば、下部電極43と可動用電極48間に直流電圧を印加することにより、当該下部電極43と可動用電極48間に静電引力が発生し、この静電引力によって梁46a,46bが撓んで可動体44が基板41側に引き寄せられる。この可動体44の変位によって接触電極50が信号線42a,42bの両方の端部に接触することにより、信号線42a,42bは接触電極50を介して導通する。
【0007】
このマイクロマシンスイッチ40では、上記のように接触電極50が信号線42a,42bに接触することによって信号線42a,42bの信号導通がオンし、また、接触電極50が信号線42a,42bから離れることによって信号線42a,42bの信号導通がオフするという如く、スイッチング動作を行う。
【0008】
また、マイクロマシンスイッチ等のスイッチ素子の別の例として、可動体(可動部)の両側に可動体を駆動させる駆動機構が形成された構成が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
【特許文献1】
特開2000―188050号公報
【特許文献2】
特開平5―242788号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図9に示したような構成の従来のマイクロマシンスイッチ40は、下部電極43と可動用電極48間に直流電圧を印加しない状態において、可動体44が固定部45に梁46(46a,46b)を介して支持された状態で、基板41上に浮いた状態で配置されており、振動等の外力によって可動体44が振動して、可動体44と基板41との間隔が容易に変化する。したがって、上記外力等によって接触電極50と信号線42a,42bとの間隔も容易に変化し、接触状態となることもあり、スイッチの誤動作につながるといった問題があった。
【0011】
また、上記特許文献2に提案されているスイッチ素子は、駆動機構を可動体の両側に設ける必要があるために、製造工程が複雑になり、歩留まりの低下やコストアップを招くといった問題があった。
【0012】
さらに、上記従来のスイッチ素子は、いずれも、例えば製造工程において基板に可動体の支持部(図9に示す例においては固定部45)を固定する際に、位置合わせを十分に行ったとしてもわずかな振動や基板の反り等に起因して可動体の基板に対する位置がずれてしまい、損失の増加や歩留まりの低下を招くといった問題もあった。
【0013】
本発明は、上記従来の問題を解決するために成されたものであり、その目的は、製造が容易で歩留まりが高く、外力等による誤動作を抑制できて設計通りの動作を行える静電駆動素子を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成をもって課題を解決するための手段としている。すなわち、この発明は、基板面上に形成された信号導通部と、前記基板の上方側に間隔を介して対向配置されて前記信号導通部の少なくとも一部と対向する可動体と、該可動体に形成されて前記信号導通部に対向する可動電極と、前記可動体を前記基板側に付勢する付勢手段と、静電引力を利用して前記可動体と前記基板面との間隔が広くなる方向に変位するように可動体を変位させる可動体駆動手段とを有し、該可動体駆動手段に電圧を印加しない状態では前記付勢手段の付勢力により前記可動電極と前記信号導通部とを接触状態と成し、前記可動体駆動手段に電圧を印加することにより前記可動体を前記付勢手段の付勢力に抗して基板から遠ざけて可動体と基板との間隔を広げ、前記可動電極と前記信号導通部とを非接触状態と成すことを特徴として構成されている。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明に係る実施形態例を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1(a)には本発明に係る静電駆動素子の第1実施形態例が模式的な平面図により示され、図1(b)には、図1(a)の線A−A’での切断面が模式的に示され、図1(c)には、図1(a)の線B−B’での切断面が模式的に示されている。
【0017】
この第1実施形態例の静電駆動素子1は、高周波回路に組み込まれてコプレーナー線路のスイッチ素子として機能するものである。この静電駆動素子1において、基板2(例えばシリコン基板やサファイア基板など)を有し、この基板面上には、例えば酸化膜等により形成された絶縁膜15を介してコプレーナー線路(CPW線路)3が形成されている。なお、基板2がアルミナやガラス等の絶縁基板の場合は、絶縁膜15は省略することができる。コプレーナー線路3は、高周波の信号導通部(高周波信号導通部)であり、このコプレーナー線路3は、信号線3sを2本のグランド線3g1,3g2が間隔を介し挟み込む形態で配置されて成る高周波信号伝送用の線路である。これらの線路3s,3g1,3g2は、例えばAu等の導体膜により構成される。また、その線路3s,3g1,3g2の厚みは適宜設定されるものであるが、その一例を挙げるとすると、例えば約2μm程度である。この第1実施形態例では、コプレーナー線路3には例えば5GHz以上の高周波の信号が流れる。
【0018】
上記基板2の上方側には基板2と間隔を介して上部部材(例えばガラス基板)4が配置されている。なお、図1(a)では、上部部材4を鎖線で示しており、図1(a)は上部部材4を透かして見た平面図である。基板2と上部部材4間の間隙には、高周波信号に対して絶縁性を有する半導体により形成された可動体6が、コプレーナー線路3の上方側に間隔を介し、かつ、コプレーナー線路3の信号線3sとグランド線3g1,3g2の一部分に共通に対向させて配置されている。なお、可動体6は絶縁体により形成することもできる。
【0019】
可動体6は、可動体6と基板2の面との間隔が広狭方向に変位可能となるように、つまり、図のZ方向に変位可能となるように梁7(7a,7b)を介して支持部8(8a,8b)に支持されている。梁7(7a,7b)は、折り曲げ梁により形成されており、梁7(7a,7b)は、可動体6を基板2側に付勢する付勢手段として機能する。また、梁7(7a,7b)は、可動体6が基板2の面に沿った方向に変位可能となるように、つまり、可動体6が図のX方向およびY方向にも変位可能となるように可動体6を支持している。
【0020】
可動体6における基板2側の面には、例えばAu等の導体膜から成る可動電極10が形成されている。可動電極10は、コプレーナー線路3のグランド線3g1から信号線3sを介しグランド線3g2にかけて跨ぐように、かつ、それら線路3s,3g1,3g2と間隔を介し対向させて形成されている。図1(b)に示すように、この第1実施形態例では、可動電極10の表面には絶縁膜11が形成されている。この絶縁膜11は、例えばSiN等の絶縁体により構成され、膜厚が例えば0.1μm程度という如く、非常に薄い膜である。なお、図1(b)は絶縁膜11を可動電極10の表面全体に形成した図を示しているが、絶縁膜11は可動電極10の表面の一部に(例えば点状に)形成してもよい。
【0021】
また、この実施形態例において、前記上部部材4には、可動体6に対向する部位に、凹部4aが形成されており、この凹部4aの内壁面には可動体6に対向する第1の駆動電極12(12a)が形成されている。一方、可動体6には、第1の駆動電極12(12a)に対向させて第2の駆動電極12(12b)が形成されている。
【0022】
上記第1の駆動電極12aは、上部部材4の基板対向面に形成された通電用電極19(19a)を介して電極パッド14aに接続され、取り出し用シリコン層23、電極パッド14bを順に介し、さらに、取り出し電極22に接続されている。この取り出し電極22を介して第1の駆動電極12(12a)に給電が行われる。また、上部部材4には、当該上部部材4の表面から支持部8(8a,8b)に至るスルーホール13が形成されており、この支持部8(8a,8b)に接続されている梁7(7a,7b)上に形成された通電用電極19(19b)とスルーホール13を介し、第2の駆動電極12(12b)がワイヤーボンディングされる構成と成している。なお、図1は、図1(a)の左下側に示した1つの支持部8aのスルーホール13に挿入されたワイヤー16を介してワイヤーボンディングされる構成を示しているが、他のスルーホール13にワイヤー16を設けてもよい。4つのうちいずれかのスルーホール13を介して通電用電極19に通電が行われ、第2の駆動電極12bに通電が行われる。また、電極パッド14(14a,14b)間に挟まれた取り出し用シリコン層23の抵抗を小さくするために、この取り出し用シリコン層23にイオンをドープしてもよいし、イオンドープを行わなくてもよい。
【0023】
上記第1と第2の駆動電極12a,12bは、静電引力を利用して、可動体6と前記基板2の面との間隔が広くなる方向に変位するように可動体6を変位させる可動体駆動手段を構成している。この可動体駆動手段に電圧を印加する、つまり、電極パッド14(14b)とワイヤー16を介して外部から、数Vから数十Vの直流電圧を第1と第2の駆動電極12(12a,12b)間に印加すると、これら駆動電極12(12a,12b)間に静電引力が発生する。この静電引力によって可動体6は、図1(b)の矢印Bに示すように、上部部材4側に引き寄せられて可動体6と基板2の面との間隔が広くなり、かつ、可動体6は上部部材4に固定される。
【0024】
つまり、この実施形態例において、可動体駆動手段に電圧を印加しない状態では、前記梁7(7a,7b)の付勢力により前記可動電極10と信号導通部であるコプレーナー線路3とが絶縁膜11を介して接触状態と成し、可動体駆動手段に電圧を印加することにより、前記のように、駆動電極12(12a,12b)間の静電引力によって可動体6を梁7(7a,7b)の付勢力に抗して基板2から遠ざけて可動体6と基板2との間隔を広げ、可動電極10とコプレーナー線路3とを非接触状態と成す。
【0025】
図4(a)の平面図および図4(b)の側面図には、可動電極10とコプレーナー線路3の配置関係が示されており、また、図5(a)には可動電極10およびコプレーナー線路3の等価回路が示されている。なお、これらの図において、C1は可動電極10とグランド線3g1間の静電容量を示し、C2は可動電極10とグランド線3g2間の静電容量を示し、C3は可動電極10と信号線3s間の静電容量を示している。また、LS1,RS1は、それぞれ、可動電極10のグランド線3g1側のインダクタンス値、抵抗値を示し、LS2,RS2は、それぞれ、可動電極10のグランド線3g2側のインダクタンス値、抵抗値を示す。
【0026】
図5(a)の等価回路を整理すると、図5(b)に示すように表すことができる。なお、近似的に、静電容量Cは、C=1/((1/(C1+C2))+(1/C3))の数式に基づくものであり、インダクタンスLSは、LS=1/((1/LS1)+(1/LS2))の数式に基づくものであり、抵抗RSは、RS=1/((1/RS1)+(1/RS2))の数式に基づくものである。
【0027】
第1実施形態例の静電駆動素子1は、可動体6が基板2側に下がっていて、可動電極10とコプレーナー線路3とが絶縁膜11を介して接触状態と成している状態では、可動電極10とコプレーナー線路3間の間隔は絶縁膜11の厚み(例えば0.1μm)程度で非常に狭く、可動電極10とコプレーナー線路3間の静電容量は大きくなる。この場合、信号線3s側から可動電極10を介してグランド側を見たときのLC回路部分のインピーダンス(可動電極10の近傍のコプレーナー線路3の信号線3sとグランド間のインピーダンス)が非常に小さくなり、信号線3sから可動電極10を介してグランド側を見たとき、f=1/2π√(LC)なる周波数のときに短絡と等価な状態となる。これにより、コプレーナー線路3の信号の導通がオフする。
【0028】
また、可動体6が基板2から離れる方向に(つまり、上側に)変位して、可動電極10とコプレーナー線路3が非接触状態となり、その間の間隔が例えば3μm程度に広がると、可動電極10とコプレーナー線路3間の静電容量Cが小さくなり、信号線3s側から可動電極10を介してグランド側を見たときのインピーダンスが非常に大きくなる。つまり、信号線3sから可動電極10を介してグランド側を見たときにオープンと等価な状態となる。これにより、コプレーナー線路3の信号の導通はオンする。
【0029】
以上のように、この第1実施形態例の静電駆動素子1は、可動体6を、静電引力を利用して変位させ、可動電極10とコプレーナー線路3間の静電容量変化を利用してコプレーナー線路3の信号導通のオン・オフを行うシャントスイッチ素子として機能する。
【0030】
ところで、図2には、この実施形態例の静電駆動素子の製造に際し、可動部と基板部分とを接合するときの状態が図1(a)のA−A’部分の断面により模式的に示されている。この第1実施形態例では、図1(b)、図2に示すように、基板2の面に、断面形状が三角形状の位置決めガイド部9が形成されている。この位置決めガイド部9は図3(a)に示す平面形状を有し、これら図1(b)、図2、図3(a)に示す斜面9aを有している。位置決めガイド部9は、可動体6が可動体6と基板2の面との間隔が狭くなる方向に移動するときに、可動体6を斜面9aによってガイドし、可動電極10とコプレーナー線路3とを接触状態としたときの可動体6の基板面に沿った方向の位置を位置決めする。
【0031】
この実施形態例では、可動体6の角部21が位置決めガイド部9にガイドされてその斜面9aに沿って移動することにより、可動体6は基板面に沿った方向の位置が設定位置に配置され、図1(b)に示すように、可動電極10とコプレーナー線路3のグランド線3g1との接触長さ(重なり量)と、可動電極10とグランド線3g2との接触長さ(重なり量)が互いに等しくなる。
【0032】
つまり、静電駆動素子1の組み立て時には、図2に示すように、支持部8aと支持部8b(同図には図示せず)の底面および取り出し用シリコン層23の底面側を基板2と対向させ、その後、図1(b)、(c)に示すように、支持部8(8a,8b)の底面を基板2上に固定し、取り出し用シリコン層23の底面側に設けられた電極パッド14bを取り出し用電極22に接続固定するが、このとき、可動体6とコプレーナー線路3との対向位置がずれていたとしても、この第1実施形態例では、可動体6と基板2の面との間隔が狭くなる方向に可動体6を移動するときに、可動体6は斜面9aによってガイドされて移動するので、可動電極10とコプレーナー線路3とを接触状態としたときの可動体6の基板面に沿った方向の位置が設定位置になるように位置決めされる。
【0033】
また、この第1実施形態例では、静電駆動素子1の動作時に、前記可動体駆動手段に電圧を印加して可動体6とコプレーナー線路3とを非接触状態としたときには可動体6とコプレーナー線路3との位置精度が良好でなくても、その後、可動体駆動手段への電圧印加をやめることにより、可動体6が梁7(7a,7b)の付勢力によって可動体6と基板2の面との間隔が狭くなる方向に移動するときには、可動体6は斜面9aによってガイドされて移動するので、可動電極10とコプレーナー線路3とを接触状態としたときの可動体6の基板面に沿った方向の位置が設定位置になるように位置決めされ、可動体6の良好な位置精度が得られる。
【0034】
つまり、この第1実施形態例では、上記のように、静電駆動素子1の組み立て時、および、動作時に、可動体6は、位置決めガイド部9にガイドされてその斜面9aに沿って移動することにより、可動体6は基板面に沿った方向の位置が設定位置に配置され、この配置によって、前記のように、可動電極10とコプレーナー線路3のグランド線3g1との接触長さと、可動電極10とグランド線3g2との接触長さが互いに等しくなる。
【0035】
可動電極10とコプレーナー線路3のグランド線3g1との接触長さと、可動電極10とグランド線3g2との接触長さが異なると、可動電極10とコプレーナー線路3との容量結合のバランスが崩れ、コプレーナー線路3のモードと異なる不要なモードが発生されてしまい、エネルギーが放射され、損失増加の要因になる。そこで、コプレーナー線路3を有する並列型のスイッチ素子において、可動電極10とコプレーナー線路3のグランド線3g1との接触長さと、可動電極10とグランド線3g2との接触長さが等しくなるように設計されるが、従来は、位置合わせを十分に行ったとしてもわずかな振動や基板の反り等に起因して可動体の基板に対する位置がずれてしまうことがあった。それに対し、この第1実施形態例では、位置決めガイド部9を設けて可動体6を設計通りの位置に配置できるので、損失の増加を抑制できる。
【0036】
なお、位置決めガイド部9は、基板2に一体的に形成する。
【0037】
第1実施形態例は以上のように構成されており、可動電極10とコプレーナー線路3とが接触状態の時には可動体6が梁7(7a,7b)の付勢力によって基板2上に固定されており、また、可動電極10とコプレーナー線路3とが非接触状態の時には、前記可動体駆動手段による静電力によって可動体6が上部部材4側に引きつけられて上部部材4に固定されているので、可動電極10とコプレーナー線路3とが接触状態と非接触状態のいずれの状態でも可動体6は固定され、安定している。
【0038】
したがって、第1実施形態例は、可動体駆動手段に電圧を印加している場合でも、印加していない場合でも、振動等の外力によって可動体6と基板2との間隔が容易に変化することはなく、スイッチの誤動作を抑制することができる。
【0039】
また、第1実施形態例は、製造工程において、基板2に可動体6の支持部8を固定する際にも、組み立て後、可動体6が、梁7(7a,7b)の付勢力によって可動体6と基板2の面との間隔が狭くなる方向に移動するときにも、可動体6を斜面9aによってガイドして、可動電極10とコプレーナー線路3とを接触状態としたときの可動体6の基板面に沿った方向の位置を位置決めするので、可動電極10とコプレーナー線路3のグランド線3g1との接触長さと、可動電極10とグランド線3g2との接触長さを互いに等しくでき、これらの接触長さの違いによる損失増加等のスイッチ特性の劣化を抑制することができる。
【0040】
さらに、第1実施形態例は、可動体6の駆動機構である可動体駆動手段を可動体6の片側に設けるものであり、駆動機構を可動体6の両側に設ける場合のように製造工程が複雑になることはなく、歩留まりの低下やコストアップを招くこともない。
【0041】
さらに、例えば仮にコプレーナー線路3と可動電極10が直接接触により結合する構成とすると、LC共振を使用していないため、周波数に影響されずに帯域幅の広いアイソレーション特性を有するスイッチが可能となる。その一方で、抵抗値RSに接触抵抗成分が含まれて抵抗値RSが大きくなってしまう。これにより、信号のロスが増加する。これに対して、この第1実施形態例では、コプレーナー線路3と可動電極10は静電容量を介して結合する構成であるので、コプレーナー線路3と可動電極10間に接触抵抗は発生せず、信号のロスを抑制することができる。
【0042】
なお、上記位置決めガイド部9は、例えば図3(b)に示すような、平面形状がL字形状の部材としてもよい。この場合、斜面9aは、位置決めガイド部9の内側9bに向かって傾斜する斜面とし、可動体6の角部21が谷部9cに沿って移動することにより、可動体6はX方向とY方向の位置が設定位置に配置される。また、位置決めガイド部9は、図3(c)に示すように、2つの部材を設けて形成してもよい。この場合も、斜面9aは、位置決めガイド部9の内側9bに向かって傾斜する斜面とする。図3(b)、(c)に示す態様で位置決めガイド部9を設けると、図3に示すX方向とY方向の両方について可動体6の位置決めをより一層正確に行うことができる。
【0043】
以下、第2実施形態例について説明する。なお、この第2実施形態例の説明において、第1実施形態例と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。図6には、第2実施形態例の静電駆動素子が模式的な断面図により示されている。なお、第2実施形態例は上記第1実施形態例とほぼ同様の平面構成を有しており、図6は、図1(a)の線A−A’のように、静電駆動素子1の中心線に沿って切断したXZ断面図である。
【0044】
この第2実施形態例の静電駆動素子1は、上記第1実施形態例とほぼ同様に構成されており、第2実施形態例が第1実施形態例と異なる特徴的なことは、可動体6が、高周波信号に対しては絶縁体として振る舞い、かつ、低周波信号および直流信号に対しては電極として振る舞う半導体のシリコンにより構成されていることである。このシリコン層の抵抗値が十分に小さく、仕様で定まる時間内に、駆動信号が可動体6に伝達する場合には、図6に示すように、駆動電極12bと通電用電極19bを設けなくてもよい。
【0045】
第2実施形態例は以上のように構成されており、第2実施形態例も上記第1実施形態例と同様の効果を奏することができる。
【0046】
また、第2実施形態例では、前記の如く、可動体6自体が可動体駆動手段の電極として機能することができるので、可動体6に、可動体駆動手段を構成するための電極を形成しなくてすみ、静電駆動素子1の構造および製造工程の簡略化をより一層図ることができ、静電駆動素子1の低コスト化を図ることができる。
【0047】
以下に、第3実施形態例を説明する。なお、この第3実施形態例の説明において、第1、第2の各実施形態例と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0048】
図7(a)には第3実施形態例の静電駆動素子1の模式的な平面図が示され、図7(b)には図7(a)のA−A’部分の断面図が示されている。
【0049】
第1、第2の各実施形態例の静電駆動素子1は、いわゆる並列型スイッチの構成であるのに対して、この第3実施形態例では、直列型スイッチの構成を有している。また、第3実施形態例では、高周波信号導通部はマイクロストリップ線路30により形成している。
【0050】
この第3実施形態例では、マイクロストリップ線路30の信号線3sには分断部18が形成されており、可動電極10は、その分断部18の一端側の線路端部から分断部18を介し他端側の線路端部にかけて対向するように、可動体6に形成されている。なお、図7の図中、3gはマイクロストリップ線路30のグランド層を示す。
【0051】
この第3実施形態例は、上記のようなマイクロストリップ線路30および可動電極10以外の構成は、第1実施形態例と同様であり、第3実施形態例の静電駆動素子1は、可動電極10と信号線路の分断部18の両端部分との接触と離間とにより信号線路の直列接続オン・オフを行う。
【0052】
つまり、この第3実施形態例の静電駆動素子1では、図7(b)に示すように、可動電極10上の絶縁膜11がマイクロストリップ線路30の信号線3sに接触して、可動電極10と、分断部18の両端の線路部分との間の間隔が非常に狭い場合には、可動電極10と分断部18の両端の線路部分とは静電容量が大きくなって当該可動電極10と分断部18の両端の線路部分との間は高周波的に短絡する。これにより、分断部18の両端の線路端部分は可動電極10を介して導通し、信号線の信号の導通がオンする。
【0053】
また、可動体駆動手段による可動体6の変位によって可動電極10が基板2から離れる方向に変位すると、可動電極10と分断部18の両端の線路端部との間の間隔が広がって、当該可動電極10と分断部18の両端の線路端部との間の静電容量が小さくなる。これにより、可動電極10と分断部18の両端の線路端部との間がオープンとなり、信号線3sの信号導通はオフする。
【0054】
第3実施形態例は以上のように構成されており、第3実施形態例も上記第1実施形態例と同様の効果を奏することができる。
【0055】
なお、この発明は第1〜第3の各実施形態例に限定されるものではなく、様々な実施の形態を採り得る。例えば、第1〜第3の各実施形態例では、位置決めガイド部9を基板2の上面に形成したが、例えば図3(d)に示すように、位置決めガイド部9を可動体6の基板側対向面に形成し、この位置決めガイド部9を基板2に設けた凹部17に挿入しながら可動体6をガイドする構成としてもよい。
【0056】
また、上記第2実施形態例では、可動体6を構成する半導体として、シリコンを例に挙げたが、シリコン以外の例えばGaAs等の半導体により、可動体6を構成してもよいものである。
【0057】
さらに、上記第3実施形態例のような直列型スイッチ素子においても、上記第2実施形態例のように、可動体6を高周波信号に対しては絶縁体として振る舞い、かつ、低周波信号および直流信号に対しては電極として振る舞う半導体により形成し、電極として機能する可動体6と上部部材4側に設ける駆動電極12とにより可動体駆動手段を形成してもよい。
【0058】
さらに、第1〜第3の各実施形態例では、可動電極10上に絶縁膜11が形成されていたが、例えば、絶縁膜11を可動電極10に設けるのに代えて、コプレーナー線路3やマイクロストリップ線路30における少なくとも可動電極10に対向する部分に絶縁膜11を形成してもよいし、また、対向し合う可動電極10とコプレーナー線路3の両方または可動電極10とマイクロストリップ線路30の両方の表面に絶縁膜11を形成してもよい。
【0059】
さらに、第1〜第3の各実施形態例において、可動電極10上に形成されていた絶縁膜11を省略し、互いに対向するコプレーナー線路3等の高周波信号導通部と可動電極10の少なくとも一部が互いに直接接触と離間とを行うことにより高周波信号導通部の信号の導通オン・オフを制御する構成としてもよい。この場合、例えば並列型のスイッチ素子として機能する静電駆動素子1の等価回路は図8に示される回路となる。
【0060】
さらに、第1、第3の各実施形態例では、第2の駆動電極12(12b)は、スルーホール13を介してワイヤーボンディングする構成としたが、第2の駆動電極12(12b)も第1の駆動電極12(12a)と同様に、支持部8a側に配置される電極パッドを介して給電されるように構成してもよい。
【0061】
【発明の効果】
この発明によれば、可動体駆動手段に電圧印加が無く、可動電極と信号導通部とが接触状態の時には可動体が付勢手段の付勢力によって基板上に固定されており、また、前記可動体駆動手段に電圧が印加されて可動電極と信号導通部とが非接触状態の時には、可動体は可動体駆動手段による静電力により基板から遠ざかった状態で安定しているので、可動電極と信号導通部とが接触状態と非接触状態のいずれの状態でも可動体が安定しており、可動体駆動手段に電圧を印加している場合でも、印加していない場合でも、振動等の外力によって可動体と基板との間隔が容易に変化することはなく、誤動作を抑制することができる。
【0062】
また、この発明は、可動体駆動手段を可動体の両側に設ける必要はないので、可動体の両側に駆動手段を設ける場合のように製造工程が複雑になることはなく、歩留まりの低下やコストアップを抑制できる。
【0063】
また、可動電極と信号導通部の少なくとも一方の表面側には絶縁膜が形成され、可動体駆動手段に電圧を印加しない状態のときに可動電極と信号導通部とを前記絶縁膜を介して接触状態と成すものにおいては、信号導通部や可動電極の保護を図ることができるし、信号導通部と可動電極は直接接触することがないので、信号導通部と可動電極の直接接触による接触抵抗に起因した信号のロスを確実に防止することができる。
【0064】
さらに、基板面と可動体の基板側対向面とのいずれか一方に、可動電極と振動導通部とを接触状態としたときの、可動体の基板面方向の位置決めを行う少なくとも一つの位置決めガイド部を形成した構成によれば、可動電極と信号導通部とを接触状態としたときの可動体の基板面方向の位置決めを正確に行うことができ、可動体を設定位置に配置できるので、設計通り動作を行える損失の小さい静電駆動素子を実現できる。
【0065】
さらに、信号導通部は高周波信号導通部と成し、静電駆動素子は、可動電極と信号導通部の接触状態と非接触状態の一方の状態でスイッチオンし、他方の状態でスイッチオフするスイッチ素子であるものにおいては、上記優れた効果を奏して誤動作を抑制可能なスイッチ素子を実現できる。
【0066】
さらに、高周波信号導通部をコプレーナー線路とマイクロストリップ線路のうちの一方側の線路により形成して、静電駆動素子をシャントスイッチ素子としたものにおいては、上記優れた効果を奏し、誤動作を抑制可能なシャントスイッチ素子を実現できる。
【0067】
さらに、静電駆動素子は、互いに対向する高周波信号導通部と可動電極が互いに直接接触と離間とを行うことにより高周波信号導通部の信号導通オン・オフを制御するコンタクト型スイッチ素子としたものにおいては、上記優れた特性を有し、かつ、LC共振を使用していないため、周波数に影響されずに帯域幅の広いアイソレーション特性を有するスイッチが可能となる。
【0068】
さらに、高周波信号導通部は可動電極に対向する領域内に分断部を有する信号線路と成して、静電駆動素子を直列型スイッチ素子としたものにおいては、上記優れた効果を奏し、誤動作を抑制可能な直列型スイッチ素子を実現できる。
【0069】
さらに、信号導通部は高周波信号の導通部とし、可動体は高周波信号に対して絶縁性を有する半導体又は絶縁体により構成され、可動体の上方側に間隔を介して対向する上部部材の可動体対向面と可動体の上面にそれぞれ駆動電極を形成したものにおいては、高周波信号導通部との間に静電容量を発生させる可動電極と、この可動電極が設けられている可動体を静電引力を利用して変位させるための駆動電極とをそれぞれ独立に設計することができ、電極設計の自由度を高めることができる。
【0070】
さらに、信号導通部は高周波信号の導通部とし、可動体は、高周波信号に対しては絶縁体として振る舞い、かつ、低周波信号および直流信号に対しては電極として振る舞う半導体により構成されているものにおいては、可動体自体を可動体駆動手段の電極として機能させることができるので、可動体に可動体駆動手段の電極を形成しなくて済み、静電駆動素子の構造および製造工程の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態例の静電駆動素子を説明するための図である。
【図2】第1実施形態例の静電駆動素子の製造に際し、可動部と基板部分とを接合するときの状態を示す説明図である。
【図3】第1実施形態例の静電駆動素子における位置決めガイド部の平面構成と、位置決めガイド部のその他の構成例を示す説明図である。
【図4】第1実施形態例の静電駆動素子を構成する可動電極とコプレーナー線路を抜き出して当該可動電極とコプレーナー線路の配置関係の一例を示す模式的に示すモデル図である。
【図5】第1実施形態例の静電駆動素子を構成する可動電極とコプレーナー線路部分の等価回路図である。
【図6】第2実施形態例の静電駆動素子を説明するための図である。
【図7】第3実施形態例の静電駆動素子を説明するための説明図である。
【図8】その他の実施形態例の静電駆動素子の回路を説明するための説明図である。
【図9】従来のマイクロマシンスイッチの例を説明するための図である。
【符号の説明】
1 静電駆動素子
2 基板
3 コプレーナー線路
4 上部部材
6 可動体
9 位置決めガイド部
10 可動電極
11 絶縁膜
12 駆動電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば周辺監視レーダー用アンテナスキャン等の高周波回路モジュールに組み込まれるRF MEMS(micro electro mechanical systems)スイッチ素子や容量型素子等、静電容量変化を利用して駆動する静電駆動素子に関するものである。
【0002】
【背景技術】
ミリ波、マイクロ波の高周波信号で用いるスイッチ素子の例として、例えば図9に示すような、静電容量変化を利用して駆動するマイクロマシンスイッチが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図9(a)は平面図、図9(b)は図9(a)のA−A部分の断面図であり、このマイクロマシンスイッチ40において、基板41上には、第1の信号線42aと第2の信号線42bが互いに端部をギャップGを介し対向させて配置形成されている。また、基板41上には下部電極43が第1の信号線42aおよび第2の信号線42bと間隔を介して形成されている。
【0004】
さらに、基板41には、固定部45が下部電極43の近傍に配設されている。さらにまた、基板41の上方側には、第1の信号線42aおよび第2の信号線42bの各端部の形成領域から下部電極43の形成領域にかけての基板領域に間隔を介して対向する可動体44が配置されている。この可動体44は、固定部45に梁46(46a,46b)を介して支持されている。
【0005】
可動体44の基板側の面にはほぼ全面に絶縁膜47が形成されており、この絶縁膜47の表面には、可動用電極48が下部電極43に対向させて形成され、また、接触電極50が第1の信号線42aの端部からギャップGを介し第2の信号線42bの端部に至るまでの領域に対向させて形成されている。
【0006】
このような構成のマイクロマシンスイッチ40では、例えば、下部電極43と可動用電極48間に直流電圧を印加することにより、当該下部電極43と可動用電極48間に静電引力が発生し、この静電引力によって梁46a,46bが撓んで可動体44が基板41側に引き寄せられる。この可動体44の変位によって接触電極50が信号線42a,42bの両方の端部に接触することにより、信号線42a,42bは接触電極50を介して導通する。
【0007】
このマイクロマシンスイッチ40では、上記のように接触電極50が信号線42a,42bに接触することによって信号線42a,42bの信号導通がオンし、また、接触電極50が信号線42a,42bから離れることによって信号線42a,42bの信号導通がオフするという如く、スイッチング動作を行う。
【0008】
また、マイクロマシンスイッチ等のスイッチ素子の別の例として、可動体(可動部)の両側に可動体を駆動させる駆動機構が形成された構成が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
【特許文献1】
特開2000―188050号公報
【特許文献2】
特開平5―242788号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図9に示したような構成の従来のマイクロマシンスイッチ40は、下部電極43と可動用電極48間に直流電圧を印加しない状態において、可動体44が固定部45に梁46(46a,46b)を介して支持された状態で、基板41上に浮いた状態で配置されており、振動等の外力によって可動体44が振動して、可動体44と基板41との間隔が容易に変化する。したがって、上記外力等によって接触電極50と信号線42a,42bとの間隔も容易に変化し、接触状態となることもあり、スイッチの誤動作につながるといった問題があった。
【0011】
また、上記特許文献2に提案されているスイッチ素子は、駆動機構を可動体の両側に設ける必要があるために、製造工程が複雑になり、歩留まりの低下やコストアップを招くといった問題があった。
【0012】
さらに、上記従来のスイッチ素子は、いずれも、例えば製造工程において基板に可動体の支持部(図9に示す例においては固定部45)を固定する際に、位置合わせを十分に行ったとしてもわずかな振動や基板の反り等に起因して可動体の基板に対する位置がずれてしまい、損失の増加や歩留まりの低下を招くといった問題もあった。
【0013】
本発明は、上記従来の問題を解決するために成されたものであり、その目的は、製造が容易で歩留まりが高く、外力等による誤動作を抑制できて設計通りの動作を行える静電駆動素子を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成をもって課題を解決するための手段としている。すなわち、この発明は、基板面上に形成された信号導通部と、前記基板の上方側に間隔を介して対向配置されて前記信号導通部の少なくとも一部と対向する可動体と、該可動体に形成されて前記信号導通部に対向する可動電極と、前記可動体を前記基板側に付勢する付勢手段と、静電引力を利用して前記可動体と前記基板面との間隔が広くなる方向に変位するように可動体を変位させる可動体駆動手段とを有し、該可動体駆動手段に電圧を印加しない状態では前記付勢手段の付勢力により前記可動電極と前記信号導通部とを接触状態と成し、前記可動体駆動手段に電圧を印加することにより前記可動体を前記付勢手段の付勢力に抗して基板から遠ざけて可動体と基板との間隔を広げ、前記可動電極と前記信号導通部とを非接触状態と成すことを特徴として構成されている。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明に係る実施形態例を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1(a)には本発明に係る静電駆動素子の第1実施形態例が模式的な平面図により示され、図1(b)には、図1(a)の線A−A’での切断面が模式的に示され、図1(c)には、図1(a)の線B−B’での切断面が模式的に示されている。
【0017】
この第1実施形態例の静電駆動素子1は、高周波回路に組み込まれてコプレーナー線路のスイッチ素子として機能するものである。この静電駆動素子1において、基板2(例えばシリコン基板やサファイア基板など)を有し、この基板面上には、例えば酸化膜等により形成された絶縁膜15を介してコプレーナー線路(CPW線路)3が形成されている。なお、基板2がアルミナやガラス等の絶縁基板の場合は、絶縁膜15は省略することができる。コプレーナー線路3は、高周波の信号導通部(高周波信号導通部)であり、このコプレーナー線路3は、信号線3sを2本のグランド線3g1,3g2が間隔を介し挟み込む形態で配置されて成る高周波信号伝送用の線路である。これらの線路3s,3g1,3g2は、例えばAu等の導体膜により構成される。また、その線路3s,3g1,3g2の厚みは適宜設定されるものであるが、その一例を挙げるとすると、例えば約2μm程度である。この第1実施形態例では、コプレーナー線路3には例えば5GHz以上の高周波の信号が流れる。
【0018】
上記基板2の上方側には基板2と間隔を介して上部部材(例えばガラス基板)4が配置されている。なお、図1(a)では、上部部材4を鎖線で示しており、図1(a)は上部部材4を透かして見た平面図である。基板2と上部部材4間の間隙には、高周波信号に対して絶縁性を有する半導体により形成された可動体6が、コプレーナー線路3の上方側に間隔を介し、かつ、コプレーナー線路3の信号線3sとグランド線3g1,3g2の一部分に共通に対向させて配置されている。なお、可動体6は絶縁体により形成することもできる。
【0019】
可動体6は、可動体6と基板2の面との間隔が広狭方向に変位可能となるように、つまり、図のZ方向に変位可能となるように梁7(7a,7b)を介して支持部8(8a,8b)に支持されている。梁7(7a,7b)は、折り曲げ梁により形成されており、梁7(7a,7b)は、可動体6を基板2側に付勢する付勢手段として機能する。また、梁7(7a,7b)は、可動体6が基板2の面に沿った方向に変位可能となるように、つまり、可動体6が図のX方向およびY方向にも変位可能となるように可動体6を支持している。
【0020】
可動体6における基板2側の面には、例えばAu等の導体膜から成る可動電極10が形成されている。可動電極10は、コプレーナー線路3のグランド線3g1から信号線3sを介しグランド線3g2にかけて跨ぐように、かつ、それら線路3s,3g1,3g2と間隔を介し対向させて形成されている。図1(b)に示すように、この第1実施形態例では、可動電極10の表面には絶縁膜11が形成されている。この絶縁膜11は、例えばSiN等の絶縁体により構成され、膜厚が例えば0.1μm程度という如く、非常に薄い膜である。なお、図1(b)は絶縁膜11を可動電極10の表面全体に形成した図を示しているが、絶縁膜11は可動電極10の表面の一部に(例えば点状に)形成してもよい。
【0021】
また、この実施形態例において、前記上部部材4には、可動体6に対向する部位に、凹部4aが形成されており、この凹部4aの内壁面には可動体6に対向する第1の駆動電極12(12a)が形成されている。一方、可動体6には、第1の駆動電極12(12a)に対向させて第2の駆動電極12(12b)が形成されている。
【0022】
上記第1の駆動電極12aは、上部部材4の基板対向面に形成された通電用電極19(19a)を介して電極パッド14aに接続され、取り出し用シリコン層23、電極パッド14bを順に介し、さらに、取り出し電極22に接続されている。この取り出し電極22を介して第1の駆動電極12(12a)に給電が行われる。また、上部部材4には、当該上部部材4の表面から支持部8(8a,8b)に至るスルーホール13が形成されており、この支持部8(8a,8b)に接続されている梁7(7a,7b)上に形成された通電用電極19(19b)とスルーホール13を介し、第2の駆動電極12(12b)がワイヤーボンディングされる構成と成している。なお、図1は、図1(a)の左下側に示した1つの支持部8aのスルーホール13に挿入されたワイヤー16を介してワイヤーボンディングされる構成を示しているが、他のスルーホール13にワイヤー16を設けてもよい。4つのうちいずれかのスルーホール13を介して通電用電極19に通電が行われ、第2の駆動電極12bに通電が行われる。また、電極パッド14(14a,14b)間に挟まれた取り出し用シリコン層23の抵抗を小さくするために、この取り出し用シリコン層23にイオンをドープしてもよいし、イオンドープを行わなくてもよい。
【0023】
上記第1と第2の駆動電極12a,12bは、静電引力を利用して、可動体6と前記基板2の面との間隔が広くなる方向に変位するように可動体6を変位させる可動体駆動手段を構成している。この可動体駆動手段に電圧を印加する、つまり、電極パッド14(14b)とワイヤー16を介して外部から、数Vから数十Vの直流電圧を第1と第2の駆動電極12(12a,12b)間に印加すると、これら駆動電極12(12a,12b)間に静電引力が発生する。この静電引力によって可動体6は、図1(b)の矢印Bに示すように、上部部材4側に引き寄せられて可動体6と基板2の面との間隔が広くなり、かつ、可動体6は上部部材4に固定される。
【0024】
つまり、この実施形態例において、可動体駆動手段に電圧を印加しない状態では、前記梁7(7a,7b)の付勢力により前記可動電極10と信号導通部であるコプレーナー線路3とが絶縁膜11を介して接触状態と成し、可動体駆動手段に電圧を印加することにより、前記のように、駆動電極12(12a,12b)間の静電引力によって可動体6を梁7(7a,7b)の付勢力に抗して基板2から遠ざけて可動体6と基板2との間隔を広げ、可動電極10とコプレーナー線路3とを非接触状態と成す。
【0025】
図4(a)の平面図および図4(b)の側面図には、可動電極10とコプレーナー線路3の配置関係が示されており、また、図5(a)には可動電極10およびコプレーナー線路3の等価回路が示されている。なお、これらの図において、C1は可動電極10とグランド線3g1間の静電容量を示し、C2は可動電極10とグランド線3g2間の静電容量を示し、C3は可動電極10と信号線3s間の静電容量を示している。また、LS1,RS1は、それぞれ、可動電極10のグランド線3g1側のインダクタンス値、抵抗値を示し、LS2,RS2は、それぞれ、可動電極10のグランド線3g2側のインダクタンス値、抵抗値を示す。
【0026】
図5(a)の等価回路を整理すると、図5(b)に示すように表すことができる。なお、近似的に、静電容量Cは、C=1/((1/(C1+C2))+(1/C3))の数式に基づくものであり、インダクタンスLSは、LS=1/((1/LS1)+(1/LS2))の数式に基づくものであり、抵抗RSは、RS=1/((1/RS1)+(1/RS2))の数式に基づくものである。
【0027】
第1実施形態例の静電駆動素子1は、可動体6が基板2側に下がっていて、可動電極10とコプレーナー線路3とが絶縁膜11を介して接触状態と成している状態では、可動電極10とコプレーナー線路3間の間隔は絶縁膜11の厚み(例えば0.1μm)程度で非常に狭く、可動電極10とコプレーナー線路3間の静電容量は大きくなる。この場合、信号線3s側から可動電極10を介してグランド側を見たときのLC回路部分のインピーダンス(可動電極10の近傍のコプレーナー線路3の信号線3sとグランド間のインピーダンス)が非常に小さくなり、信号線3sから可動電極10を介してグランド側を見たとき、f=1/2π√(LC)なる周波数のときに短絡と等価な状態となる。これにより、コプレーナー線路3の信号の導通がオフする。
【0028】
また、可動体6が基板2から離れる方向に(つまり、上側に)変位して、可動電極10とコプレーナー線路3が非接触状態となり、その間の間隔が例えば3μm程度に広がると、可動電極10とコプレーナー線路3間の静電容量Cが小さくなり、信号線3s側から可動電極10を介してグランド側を見たときのインピーダンスが非常に大きくなる。つまり、信号線3sから可動電極10を介してグランド側を見たときにオープンと等価な状態となる。これにより、コプレーナー線路3の信号の導通はオンする。
【0029】
以上のように、この第1実施形態例の静電駆動素子1は、可動体6を、静電引力を利用して変位させ、可動電極10とコプレーナー線路3間の静電容量変化を利用してコプレーナー線路3の信号導通のオン・オフを行うシャントスイッチ素子として機能する。
【0030】
ところで、図2には、この実施形態例の静電駆動素子の製造に際し、可動部と基板部分とを接合するときの状態が図1(a)のA−A’部分の断面により模式的に示されている。この第1実施形態例では、図1(b)、図2に示すように、基板2の面に、断面形状が三角形状の位置決めガイド部9が形成されている。この位置決めガイド部9は図3(a)に示す平面形状を有し、これら図1(b)、図2、図3(a)に示す斜面9aを有している。位置決めガイド部9は、可動体6が可動体6と基板2の面との間隔が狭くなる方向に移動するときに、可動体6を斜面9aによってガイドし、可動電極10とコプレーナー線路3とを接触状態としたときの可動体6の基板面に沿った方向の位置を位置決めする。
【0031】
この実施形態例では、可動体6の角部21が位置決めガイド部9にガイドされてその斜面9aに沿って移動することにより、可動体6は基板面に沿った方向の位置が設定位置に配置され、図1(b)に示すように、可動電極10とコプレーナー線路3のグランド線3g1との接触長さ(重なり量)と、可動電極10とグランド線3g2との接触長さ(重なり量)が互いに等しくなる。
【0032】
つまり、静電駆動素子1の組み立て時には、図2に示すように、支持部8aと支持部8b(同図には図示せず)の底面および取り出し用シリコン層23の底面側を基板2と対向させ、その後、図1(b)、(c)に示すように、支持部8(8a,8b)の底面を基板2上に固定し、取り出し用シリコン層23の底面側に設けられた電極パッド14bを取り出し用電極22に接続固定するが、このとき、可動体6とコプレーナー線路3との対向位置がずれていたとしても、この第1実施形態例では、可動体6と基板2の面との間隔が狭くなる方向に可動体6を移動するときに、可動体6は斜面9aによってガイドされて移動するので、可動電極10とコプレーナー線路3とを接触状態としたときの可動体6の基板面に沿った方向の位置が設定位置になるように位置決めされる。
【0033】
また、この第1実施形態例では、静電駆動素子1の動作時に、前記可動体駆動手段に電圧を印加して可動体6とコプレーナー線路3とを非接触状態としたときには可動体6とコプレーナー線路3との位置精度が良好でなくても、その後、可動体駆動手段への電圧印加をやめることにより、可動体6が梁7(7a,7b)の付勢力によって可動体6と基板2の面との間隔が狭くなる方向に移動するときには、可動体6は斜面9aによってガイドされて移動するので、可動電極10とコプレーナー線路3とを接触状態としたときの可動体6の基板面に沿った方向の位置が設定位置になるように位置決めされ、可動体6の良好な位置精度が得られる。
【0034】
つまり、この第1実施形態例では、上記のように、静電駆動素子1の組み立て時、および、動作時に、可動体6は、位置決めガイド部9にガイドされてその斜面9aに沿って移動することにより、可動体6は基板面に沿った方向の位置が設定位置に配置され、この配置によって、前記のように、可動電極10とコプレーナー線路3のグランド線3g1との接触長さと、可動電極10とグランド線3g2との接触長さが互いに等しくなる。
【0035】
可動電極10とコプレーナー線路3のグランド線3g1との接触長さと、可動電極10とグランド線3g2との接触長さが異なると、可動電極10とコプレーナー線路3との容量結合のバランスが崩れ、コプレーナー線路3のモードと異なる不要なモードが発生されてしまい、エネルギーが放射され、損失増加の要因になる。そこで、コプレーナー線路3を有する並列型のスイッチ素子において、可動電極10とコプレーナー線路3のグランド線3g1との接触長さと、可動電極10とグランド線3g2との接触長さが等しくなるように設計されるが、従来は、位置合わせを十分に行ったとしてもわずかな振動や基板の反り等に起因して可動体の基板に対する位置がずれてしまうことがあった。それに対し、この第1実施形態例では、位置決めガイド部9を設けて可動体6を設計通りの位置に配置できるので、損失の増加を抑制できる。
【0036】
なお、位置決めガイド部9は、基板2に一体的に形成する。
【0037】
第1実施形態例は以上のように構成されており、可動電極10とコプレーナー線路3とが接触状態の時には可動体6が梁7(7a,7b)の付勢力によって基板2上に固定されており、また、可動電極10とコプレーナー線路3とが非接触状態の時には、前記可動体駆動手段による静電力によって可動体6が上部部材4側に引きつけられて上部部材4に固定されているので、可動電極10とコプレーナー線路3とが接触状態と非接触状態のいずれの状態でも可動体6は固定され、安定している。
【0038】
したがって、第1実施形態例は、可動体駆動手段に電圧を印加している場合でも、印加していない場合でも、振動等の外力によって可動体6と基板2との間隔が容易に変化することはなく、スイッチの誤動作を抑制することができる。
【0039】
また、第1実施形態例は、製造工程において、基板2に可動体6の支持部8を固定する際にも、組み立て後、可動体6が、梁7(7a,7b)の付勢力によって可動体6と基板2の面との間隔が狭くなる方向に移動するときにも、可動体6を斜面9aによってガイドして、可動電極10とコプレーナー線路3とを接触状態としたときの可動体6の基板面に沿った方向の位置を位置決めするので、可動電極10とコプレーナー線路3のグランド線3g1との接触長さと、可動電極10とグランド線3g2との接触長さを互いに等しくでき、これらの接触長さの違いによる損失増加等のスイッチ特性の劣化を抑制することができる。
【0040】
さらに、第1実施形態例は、可動体6の駆動機構である可動体駆動手段を可動体6の片側に設けるものであり、駆動機構を可動体6の両側に設ける場合のように製造工程が複雑になることはなく、歩留まりの低下やコストアップを招くこともない。
【0041】
さらに、例えば仮にコプレーナー線路3と可動電極10が直接接触により結合する構成とすると、LC共振を使用していないため、周波数に影響されずに帯域幅の広いアイソレーション特性を有するスイッチが可能となる。その一方で、抵抗値RSに接触抵抗成分が含まれて抵抗値RSが大きくなってしまう。これにより、信号のロスが増加する。これに対して、この第1実施形態例では、コプレーナー線路3と可動電極10は静電容量を介して結合する構成であるので、コプレーナー線路3と可動電極10間に接触抵抗は発生せず、信号のロスを抑制することができる。
【0042】
なお、上記位置決めガイド部9は、例えば図3(b)に示すような、平面形状がL字形状の部材としてもよい。この場合、斜面9aは、位置決めガイド部9の内側9bに向かって傾斜する斜面とし、可動体6の角部21が谷部9cに沿って移動することにより、可動体6はX方向とY方向の位置が設定位置に配置される。また、位置決めガイド部9は、図3(c)に示すように、2つの部材を設けて形成してもよい。この場合も、斜面9aは、位置決めガイド部9の内側9bに向かって傾斜する斜面とする。図3(b)、(c)に示す態様で位置決めガイド部9を設けると、図3に示すX方向とY方向の両方について可動体6の位置決めをより一層正確に行うことができる。
【0043】
以下、第2実施形態例について説明する。なお、この第2実施形態例の説明において、第1実施形態例と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。図6には、第2実施形態例の静電駆動素子が模式的な断面図により示されている。なお、第2実施形態例は上記第1実施形態例とほぼ同様の平面構成を有しており、図6は、図1(a)の線A−A’のように、静電駆動素子1の中心線に沿って切断したXZ断面図である。
【0044】
この第2実施形態例の静電駆動素子1は、上記第1実施形態例とほぼ同様に構成されており、第2実施形態例が第1実施形態例と異なる特徴的なことは、可動体6が、高周波信号に対しては絶縁体として振る舞い、かつ、低周波信号および直流信号に対しては電極として振る舞う半導体のシリコンにより構成されていることである。このシリコン層の抵抗値が十分に小さく、仕様で定まる時間内に、駆動信号が可動体6に伝達する場合には、図6に示すように、駆動電極12bと通電用電極19bを設けなくてもよい。
【0045】
第2実施形態例は以上のように構成されており、第2実施形態例も上記第1実施形態例と同様の効果を奏することができる。
【0046】
また、第2実施形態例では、前記の如く、可動体6自体が可動体駆動手段の電極として機能することができるので、可動体6に、可動体駆動手段を構成するための電極を形成しなくてすみ、静電駆動素子1の構造および製造工程の簡略化をより一層図ることができ、静電駆動素子1の低コスト化を図ることができる。
【0047】
以下に、第3実施形態例を説明する。なお、この第3実施形態例の説明において、第1、第2の各実施形態例と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0048】
図7(a)には第3実施形態例の静電駆動素子1の模式的な平面図が示され、図7(b)には図7(a)のA−A’部分の断面図が示されている。
【0049】
第1、第2の各実施形態例の静電駆動素子1は、いわゆる並列型スイッチの構成であるのに対して、この第3実施形態例では、直列型スイッチの構成を有している。また、第3実施形態例では、高周波信号導通部はマイクロストリップ線路30により形成している。
【0050】
この第3実施形態例では、マイクロストリップ線路30の信号線3sには分断部18が形成されており、可動電極10は、その分断部18の一端側の線路端部から分断部18を介し他端側の線路端部にかけて対向するように、可動体6に形成されている。なお、図7の図中、3gはマイクロストリップ線路30のグランド層を示す。
【0051】
この第3実施形態例は、上記のようなマイクロストリップ線路30および可動電極10以外の構成は、第1実施形態例と同様であり、第3実施形態例の静電駆動素子1は、可動電極10と信号線路の分断部18の両端部分との接触と離間とにより信号線路の直列接続オン・オフを行う。
【0052】
つまり、この第3実施形態例の静電駆動素子1では、図7(b)に示すように、可動電極10上の絶縁膜11がマイクロストリップ線路30の信号線3sに接触して、可動電極10と、分断部18の両端の線路部分との間の間隔が非常に狭い場合には、可動電極10と分断部18の両端の線路部分とは静電容量が大きくなって当該可動電極10と分断部18の両端の線路部分との間は高周波的に短絡する。これにより、分断部18の両端の線路端部分は可動電極10を介して導通し、信号線の信号の導通がオンする。
【0053】
また、可動体駆動手段による可動体6の変位によって可動電極10が基板2から離れる方向に変位すると、可動電極10と分断部18の両端の線路端部との間の間隔が広がって、当該可動電極10と分断部18の両端の線路端部との間の静電容量が小さくなる。これにより、可動電極10と分断部18の両端の線路端部との間がオープンとなり、信号線3sの信号導通はオフする。
【0054】
第3実施形態例は以上のように構成されており、第3実施形態例も上記第1実施形態例と同様の効果を奏することができる。
【0055】
なお、この発明は第1〜第3の各実施形態例に限定されるものではなく、様々な実施の形態を採り得る。例えば、第1〜第3の各実施形態例では、位置決めガイド部9を基板2の上面に形成したが、例えば図3(d)に示すように、位置決めガイド部9を可動体6の基板側対向面に形成し、この位置決めガイド部9を基板2に設けた凹部17に挿入しながら可動体6をガイドする構成としてもよい。
【0056】
また、上記第2実施形態例では、可動体6を構成する半導体として、シリコンを例に挙げたが、シリコン以外の例えばGaAs等の半導体により、可動体6を構成してもよいものである。
【0057】
さらに、上記第3実施形態例のような直列型スイッチ素子においても、上記第2実施形態例のように、可動体6を高周波信号に対しては絶縁体として振る舞い、かつ、低周波信号および直流信号に対しては電極として振る舞う半導体により形成し、電極として機能する可動体6と上部部材4側に設ける駆動電極12とにより可動体駆動手段を形成してもよい。
【0058】
さらに、第1〜第3の各実施形態例では、可動電極10上に絶縁膜11が形成されていたが、例えば、絶縁膜11を可動電極10に設けるのに代えて、コプレーナー線路3やマイクロストリップ線路30における少なくとも可動電極10に対向する部分に絶縁膜11を形成してもよいし、また、対向し合う可動電極10とコプレーナー線路3の両方または可動電極10とマイクロストリップ線路30の両方の表面に絶縁膜11を形成してもよい。
【0059】
さらに、第1〜第3の各実施形態例において、可動電極10上に形成されていた絶縁膜11を省略し、互いに対向するコプレーナー線路3等の高周波信号導通部と可動電極10の少なくとも一部が互いに直接接触と離間とを行うことにより高周波信号導通部の信号の導通オン・オフを制御する構成としてもよい。この場合、例えば並列型のスイッチ素子として機能する静電駆動素子1の等価回路は図8に示される回路となる。
【0060】
さらに、第1、第3の各実施形態例では、第2の駆動電極12(12b)は、スルーホール13を介してワイヤーボンディングする構成としたが、第2の駆動電極12(12b)も第1の駆動電極12(12a)と同様に、支持部8a側に配置される電極パッドを介して給電されるように構成してもよい。
【0061】
【発明の効果】
この発明によれば、可動体駆動手段に電圧印加が無く、可動電極と信号導通部とが接触状態の時には可動体が付勢手段の付勢力によって基板上に固定されており、また、前記可動体駆動手段に電圧が印加されて可動電極と信号導通部とが非接触状態の時には、可動体は可動体駆動手段による静電力により基板から遠ざかった状態で安定しているので、可動電極と信号導通部とが接触状態と非接触状態のいずれの状態でも可動体が安定しており、可動体駆動手段に電圧を印加している場合でも、印加していない場合でも、振動等の外力によって可動体と基板との間隔が容易に変化することはなく、誤動作を抑制することができる。
【0062】
また、この発明は、可動体駆動手段を可動体の両側に設ける必要はないので、可動体の両側に駆動手段を設ける場合のように製造工程が複雑になることはなく、歩留まりの低下やコストアップを抑制できる。
【0063】
また、可動電極と信号導通部の少なくとも一方の表面側には絶縁膜が形成され、可動体駆動手段に電圧を印加しない状態のときに可動電極と信号導通部とを前記絶縁膜を介して接触状態と成すものにおいては、信号導通部や可動電極の保護を図ることができるし、信号導通部と可動電極は直接接触することがないので、信号導通部と可動電極の直接接触による接触抵抗に起因した信号のロスを確実に防止することができる。
【0064】
さらに、基板面と可動体の基板側対向面とのいずれか一方に、可動電極と振動導通部とを接触状態としたときの、可動体の基板面方向の位置決めを行う少なくとも一つの位置決めガイド部を形成した構成によれば、可動電極と信号導通部とを接触状態としたときの可動体の基板面方向の位置決めを正確に行うことができ、可動体を設定位置に配置できるので、設計通り動作を行える損失の小さい静電駆動素子を実現できる。
【0065】
さらに、信号導通部は高周波信号導通部と成し、静電駆動素子は、可動電極と信号導通部の接触状態と非接触状態の一方の状態でスイッチオンし、他方の状態でスイッチオフするスイッチ素子であるものにおいては、上記優れた効果を奏して誤動作を抑制可能なスイッチ素子を実現できる。
【0066】
さらに、高周波信号導通部をコプレーナー線路とマイクロストリップ線路のうちの一方側の線路により形成して、静電駆動素子をシャントスイッチ素子としたものにおいては、上記優れた効果を奏し、誤動作を抑制可能なシャントスイッチ素子を実現できる。
【0067】
さらに、静電駆動素子は、互いに対向する高周波信号導通部と可動電極が互いに直接接触と離間とを行うことにより高周波信号導通部の信号導通オン・オフを制御するコンタクト型スイッチ素子としたものにおいては、上記優れた特性を有し、かつ、LC共振を使用していないため、周波数に影響されずに帯域幅の広いアイソレーション特性を有するスイッチが可能となる。
【0068】
さらに、高周波信号導通部は可動電極に対向する領域内に分断部を有する信号線路と成して、静電駆動素子を直列型スイッチ素子としたものにおいては、上記優れた効果を奏し、誤動作を抑制可能な直列型スイッチ素子を実現できる。
【0069】
さらに、信号導通部は高周波信号の導通部とし、可動体は高周波信号に対して絶縁性を有する半導体又は絶縁体により構成され、可動体の上方側に間隔を介して対向する上部部材の可動体対向面と可動体の上面にそれぞれ駆動電極を形成したものにおいては、高周波信号導通部との間に静電容量を発生させる可動電極と、この可動電極が設けられている可動体を静電引力を利用して変位させるための駆動電極とをそれぞれ独立に設計することができ、電極設計の自由度を高めることができる。
【0070】
さらに、信号導通部は高周波信号の導通部とし、可動体は、高周波信号に対しては絶縁体として振る舞い、かつ、低周波信号および直流信号に対しては電極として振る舞う半導体により構成されているものにおいては、可動体自体を可動体駆動手段の電極として機能させることができるので、可動体に可動体駆動手段の電極を形成しなくて済み、静電駆動素子の構造および製造工程の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態例の静電駆動素子を説明するための図である。
【図2】第1実施形態例の静電駆動素子の製造に際し、可動部と基板部分とを接合するときの状態を示す説明図である。
【図3】第1実施形態例の静電駆動素子における位置決めガイド部の平面構成と、位置決めガイド部のその他の構成例を示す説明図である。
【図4】第1実施形態例の静電駆動素子を構成する可動電極とコプレーナー線路を抜き出して当該可動電極とコプレーナー線路の配置関係の一例を示す模式的に示すモデル図である。
【図5】第1実施形態例の静電駆動素子を構成する可動電極とコプレーナー線路部分の等価回路図である。
【図6】第2実施形態例の静電駆動素子を説明するための図である。
【図7】第3実施形態例の静電駆動素子を説明するための説明図である。
【図8】その他の実施形態例の静電駆動素子の回路を説明するための説明図である。
【図9】従来のマイクロマシンスイッチの例を説明するための図である。
【符号の説明】
1 静電駆動素子
2 基板
3 コプレーナー線路
4 上部部材
6 可動体
9 位置決めガイド部
10 可動電極
11 絶縁膜
12 駆動電極
Claims (9)
- 基板面上に形成された信号導通部と、前記基板の上方側に間隔を介して対向配置されて前記信号導通部の少なくとも一部と対向する可動体と、該可動体に形成されて前記信号導通部に対向する可動電極と、前記可動体を前記基板側に付勢する付勢手段と、静電引力を利用して前記可動体と前記基板面との間隔が広くなる方向に変位するように可動体を変位させる可動体駆動手段とを有し、該可動体駆動手段に電圧を印加しない状態では前記付勢手段の付勢力により前記可動電極と前記信号導通部とを接触状態と成し、前記可動体駆動手段に電圧を印加することにより前記可動体を前記付勢手段の付勢力に抗して基板から遠ざけて可動体と基板との間隔を広げ、前記可動電極と前記信号導通部とを非接触状態と成すことを特徴とする静電駆動素子。
- 可動電極と信号導通部の少なくとも一方の表面側には絶縁膜が形成され、可動体駆動手段に電圧を印加しない状態のときに可動電極と信号導通部とを前記絶縁膜を介して接触状態と成すことを特徴とする請求項1記載の静電駆動素子。
- 基板面と可動体の基板側対向面とのいずれか一方には、前記可動体と基板面との間隔が狭くなる方向に可動体が移動するときに可動体をガイドして、可動電極と信号導通部とを接触状態としたときの可動体の基板面に沿った方向の位置を位置決めする少なくとも一つの位置決めガイド部が形成されており、該位置決めガイド部にガイドされて前記可動体が設定位置に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の静電駆動素子。
- 信号導通部は高周波信号導通部と成し、静電駆動素子は、可動電極と高周波信号導通部の接触状態と非接触状態の一方の状態でスイッチオンし、他方の状態でスイッチオフするスイッチ素子であることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載の静電駆動素子。
- 高周波信号導通部はコプレーナー線路とマイクロストリップ線路のうちの一方側の線路により形成され、静電駆動素子は可動電極と高周波信号導通部間の静電容量変化を利用してコプレーナー線路又はマイクロストリップ線路の信号導通オン・オフを制御するシャントスイッチ素子であることを特徴とする請求項4記載の静電駆動素子。
- 静電駆動素子は、互いに対向する高周波信号導通部と可動電極が互いに直接接触と離間とを行うことにより高周波信号導通部の信号導通オン・オフを制御するコンタクト型スイッチ素子であることを特徴とする請求項4記載の静電駆動素子。
- 高周波信号導通部は可動電極に対向する領域内に分断部を有する信号線路と成し、前記分断部の両端側の線路端部は可動電極に間隔を介して対向しており、静電駆動素子は、可動電極と信号線路の分断部の両端部分との接触と離間とにより信号線路の直列接続オン・オフを行う直列型スイッチ素子であることを特徴とする請求項4の記載の静電駆動素子。
- 信号導通部は高周波信号の導通部とし、可動体は高周波信号に対して絶縁性を有する半導体又は絶縁体により構成され、可動体の上方側に間隔を介して対向する上部部材が配設されており、該上部部材には可動体の少なくとも一部分に対向させて第1の駆動電極が形成されており、前記可動体には前記第1の駆動電極に対向させて第2の駆動電極が形成されており、前記第1の駆動電極と第2の駆動電極がこれらの駆動電極間の直流電圧印加による静電引力によって可動体を第1の駆動電極側に変位させる可動体駆動手段を構成していることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の静電駆動素子。
- 信号導通部は高周波信号の導通部とし、可動体は、高周波信号に対しては絶縁体として振る舞い、かつ、低周波信号および直流信号に対しては電極として振る舞う半導体により構成されており、前記可動体の上方側に間隔を介して対向する上部部材が配設されており、該上部部材には可動体の少なくとも一部分に対向させて駆動電極が形成されており、該駆動電極と前記電極として機能する可動体とが駆動電極と可動体間の直流電圧印加による静電引力によって可動体を駆動電極側に変位させる可動体駆動手段を構成していることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の静電駆動素子。
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