しかしながら、この種電球は極めて線径の細いコイル状のフィラメントや導入線、さらには破損し易いガラス等を有し、これら部品を厳密に管理しながら製造する必要があり、製造工程時における歩留まりの向上が、この種電球における課題の一つとなっている。
この種電球における不良品の内容を分析すると、フィラメント断線の現象が多く、その発生原因を調査・分析した結果、ガラスバルブ内の異物の存在、特に動く異物の存在がフィラメント断線と因果関係があることが判明した。
製造工程中で検出されるバルブ内異物の主なものは、金属やガラス等であり、特に金属が動く異物の約90%を占めており、この動く金属がフィラメントに付着した場合、フィラメントの金属付着部が局部的に加熱し、この一部加熱現象が繰り返されることにより、ついにはフィラメントが断線に至ってしまう。
動く金属の異物発生の要因は、ガラスバルブ内に封入され、フィラメントを懸架している一対の導入線が主たる発生源で、その発生要因としては、導入線を構成しているジュメット線の表面のニッケル(Ni)層の粒子が粗い状態で存在し、ガラスビーズを加熱する工程の際に、この粗い状態の粒子が酸化して表面に不安定な形で酸化金属膜が生成される。
この不安定な酸化金属膜が、フィラメント間の寸法を調整するために行われる、一対の導入線の一端側を折り曲げる工程の際に、不安定な酸化金属膜の一部が浮き剥がれ、導入線の表面から剥離脱落、或いは剥離した酸化金属膜が導入線表面に付着、または一部不安定な状態で表面に残存する現象が発生する。
この現象を、さらに詳細に分析すると、図8の従来の電球における導入線及びガラスビーズの断面図に示すように、導入線2a、2bのフィラメント3の両端を支持するフック部から下方のガラスビーズ1の外表面と導入線2a、2bとの接触部分までが素線の状態、換言すればニッケル(Ni)層の粒子が粗い状態になっており、この部分Xがガラスビーズの加熱時にガスバーナーによって同時に加熱され、ニッケル層の粗い状態の粒子が酸化して酸化金属膜が生成され、この酸化金属膜が不安定な状態で導入線の外表面に存在するために、導入線2a、2bの折り曲げ加工のときに酸化金属膜が金属片として剥離脱落、或いは剥離した酸化金属膜が導入線表面に付着、または一部不安定な状態で表面に残存する現象が発生する。
この金属片の内、電球完成後の検査工程までに剥離してバルブ内で動く異物として確認された電球は、工程不良品としてバルブ内異物の検査工程で除去されるが、一部不安定な状態で導入線表面に残存した状態で、金属片の検査を通過した電球が、その後の実使用における振動・衝撃等を受けて剥離が進行し、動く金属片となってフィラメントコイルに付着することで、本来のランプ寿命よりも短い時間で、フィラメントが断線するという重要な問題の要因であることが判明した。
本発明は、上述した課題を解決することを目的とし、導入線の表面層の粒子を圧縮してビーズ加熱時における導入線の酸化を抑制するようにして、酸化金属膜が金属片として剥離したり、一部不安定な状態で表面に残存するような現象を極力防止することを可能となし、歩留まりを向上し、優れた信頼性を備えた電球及び電球の製造方法を提供しようとするものである。
請求項1に記載の電球の発明は、ガラス製のビーズを加熱溶融することにより、フィラメントを懸架する一対の導入線を離間して保持し、導入線を折り曲げて導入線間の寸法を調整するようにした電球において、前記折り曲げられる導入線の表面層の粒子を圧縮してビーズ加熱時における導入線の酸化を抑制するようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、導入線の表面層の粒子を圧縮してビーズ加熱時における導入線の酸化を抑制するようにしたので、導入線の表面が安定し、導入線の折り曲げ加工時などに酸化金属膜が金属片として剥離したり、一部不安定な状態で表面に残存するような現象を極力防止することが可能となる。
本発明は、例えば、導入線の表面を、プレス等で圧縮して表面の粗い粒子を凝縮することにより粒子の結合状態を密にして、ビーズ加熱工程での導入線の酸化を抑制し、表面の酸化が少なくなったことで表面が安定し酸化金属膜の剥離が生じたり、一部不安定な状態で表面に残存するような現象をなくすことが実現できるが、上記に例示した具体的な手段、内容には限定されない。
さらに、圧縮する手段はプレスに限らず、種々の手段が採用できる。
また、圧縮する範囲は、導入線全体を圧縮しても、また一部を除いて圧縮してもよく、要は折り曲げられる範囲の導入線が圧縮されていればよい。
さらに、酸化が完全に無くなることのみを意味しているのではなく、酸化金属膜が金属片として剥離したり、一部不安定な状態で表面に残存するような現象が防止できる程度に酸化を抑えればよい。
請求項2に記載の電球の発明は、ガラス製のビーズを加熱溶融することにより、フィラメントを懸架する一対の導入線を離間して保持し、導入線を折り曲げて導入線間の寸法を調整するようにした電球において、前記折り曲げられる導入線の表面層のビーズ外表面との接触部近傍までの粒子を圧縮してビーズ加熱時における導入線の酸化を抑制するようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、導入線の表面層のビーズ外表面との接触部近傍までの粒子を圧縮してビーズ加熱時における導入線の酸化を抑制するようにしたので、導入線の表面が安定し、導入線の折り曲げ加工時などに酸化金属膜が金属片として剥離したり、一部不安定な状態で表面に残存するような現象を極力防止することが可能となる。
本発明において、「導入線の表面層のビーズ外表面との接触部近傍まで」は、ビーズの外表面と導入線の外表面との接触部分の近傍、いわゆる導入線の付け根部の近傍をまでを含み、通常はフィラメント側導入線の外表面とビーズの外表面との接触部近傍までであることが好ましいが、電球の形態、性能等によってはフィラメントの反対側、すなわち電気的な端子側導入線の外表面とビーズ外表面との接触部近傍までであってもよい。さらには、フィラメント側及び端子側の両方の導入線とビーズ外表面との接触部近傍までであってもよい。
ビーズ外表面は、平坦面である必要はなく、ビーズ外表面が陥没した状態になっているときには、陥没した底面の凸凹した湾曲した表面であることも含み、要はビーズの外気に接する表面部分であればよい。
請求項3に記載の電球の発明は、透光性材料よりなる気密性容器と、気密性容器内に封入されたフィラメントと、フィラメントを懸架しビーズ外表面との接触部近傍までの表面層の粒子を圧縮した一対の導入線と、導入線を離間して保持するビーズとを具備することを特徴とする。
本発明によれば、フィラメントを懸架しビーズ外表面との接触部近傍までの表面層の粒子を圧縮した一対の導入線を具備する構成としたので、ビーズ加熱時における導入線の酸化が抑制されて導入線の表面が安定し、導入線の折り曲げ加工時などに酸化金属膜が金属片として剥離したり、一部不安定な状態で表面に残存するような現象を極力防止することが可能となる。
請求項4に記載の電球の製造方法の発明は、ガラス製のビーズを加熱溶融することにより、フィラメントを懸架する一対の導入線を離間して保持し、導入線を折り曲げて導入線間の寸法を調整するようにした電球の製造方法において、前記折り曲げられる導入線をプレス加工して表面層の粒子を圧縮する工程を有することを特徴とする。
本発明によれば、折り曲げられる導入線をプレス加工して表面層の粒子を圧縮する工程を有するので、ビーズ加熱時における導入線の酸化が抑制されて導入線の表面が安定し、導入線の折り曲げ加工時などに酸化金属膜が金属片として剥離したり、一部不安定な状態で表面に残存するような現象を極力防止することが可能となる。
請求項1の発明によれば、導入線の表面層の粒子を圧縮してビーズ加熱時における導入線の酸化を抑制するようにしたので、導入線の表面が安定し、導入線の折り曲げ加工時などに酸化金属膜が金属片として剥離したり、一部不安定な状態で表面に残存するような現象を極力防止することが可能となり、歩留まりを向上し、優れた信頼性を備えた電球を提供することができる。
請求項2の発明によれば、導入線の表面層のビーズ外表面との接触部近傍までの粒子を圧縮してビーズ加熱時における導入線の酸化を抑制するようにしたので、導入線の表面が安定し、導入線の折り曲げ加工時などに酸化金属膜が金属片として剥離したり、一部不安定な状態で表面に残存するような現象を極力防止することが可能となり、歩留まりを向上し、優れた信頼性を備えた電球を提供することができる。
請求項3の発明によれば、フィラメントを懸架しビーズ外表面との接触部近傍までの表面層の粒子を圧縮した一対の導入線を具備する構成としたので、ビーズ加熱時における導入線の酸化が抑制されて導入線の表面が安定し、導入線の折り曲げ加工時などに酸化金属膜が金属片として剥離したり、一部不安定な状態で表面に残存するような現象を極力防止することが可能となり、歩留まりを向上し、優れた信頼性を備えた電球を提供することができる。
請求項4の発明によれば、折り曲げられる導入線をプレス加工して表面層の粒子を圧縮する工程を有するので、ビーズ加熱時における導入線の酸化が抑制されて導入線の表面が安定し、導入線の折り曲げ加工時などに酸化金属膜が金属片として剥離したり、一部不安定な状態で表面に残存するような現象を極力防止することが可能となり、歩留まりが向上し、優れた信頼性を備えた電球の製造方法を提供することができる。
図1は第一実施形態の電球を拡大して示す斜視図、図2は第一実施形態の電球のマウントを拡大して示す正面図、図3は第一実施形態の電球のマウントを拡大して示す側面図、図4は第一実施形態の電球のマウントを拡大して示す上面図、図5は図4のA−A線に沿う断面図、図6は、第一実施形態の電球の製造方法を概略的に示す工程図、図7は第一実施形態の電球の製造方法における「導入線プレス工程」で成形された導入線を拡大して示す図面で、(a)はその正面図、(b)は(a)におけるB−B線に沿う断面図、(c)は(a)におけるC−C断面図、(d)は(a)におけるD−D線に沿う断面図、(e)は(a)におけるE−E線に沿う断面図である。
図1において、10はウェッジベース形(T5タイプ)の電球で透光性の気密性容器であるガラスバルブ11と、ガラスバルブ内に封入されたマウント12と、排気管部を含めた封止部13とから構成されている。
ガラスバルブ11の頂点から封止部13下端までの、電球としての高さ寸法は約20mm、ガラスバルブ11の外直径は約4.75mm、或いは約4.85mm(肉厚0.52mm)に構成されている。
なお、以下、マウント12を上側、封止部13を下側として説明する。
ガラスバルブ11は、材質が透明な軟質、或いは鉛を含まない軟質鉛フリーガラスで、一端が封止され他端に開口部11a(図2破線で示す)を有して構成されている。
マウント12は、図2に示すように一対の導入線14a、14bと、一対の導入線を所定寸法で離間させて保持するためのガラス製のビーズ15と、一対の導入線の上端部に懸架されたフィラメント16と、フィラメントの略中央部分を持ち上げて略逆V字状に支持するアンカー17で構成されている。
一対の導入線14a、14bは、材質が鉄ニッケル合金に、銅を被覆したジュメット線にNiメッキが施されている。導入線の直径は約0.25或いは0.3mmに構成され、その円柱状をなす上端部の両面が圧縮されて断面が略小判形をなした扁平部14dを形成し、その先端を折り返して形成したフック部14cの内側にフィラメント両端のレグ部16aを位置させ、この状態で折り返されたフック部14cを圧縮してレグ部16aを挟持し、フィラメント16の両端を一対の導入線14a、14bの上端部に懸架している。
導入線14a、14bは、フック部14cの下端に扁平部14dが形成され、さらに扁平部14dの下端が断面が円形の素線の状態になっており、この素線部14eの下端から下方先端までは、両面が強く圧潰され、断面が薄い略長方形をなした平坦部14fをなすように形成されている。
この扁平部14dは、素線状態の断面が円形で表面の粗いニッケル粒子を圧縮して凝縮し、表面の粒子の結合状態が密になるように、上下からプレスで圧縮加工して断面が略小判形になるように形成されている。
圧縮する範囲は、後述するフィラメント間の寸法を調整するために導入線が折り曲げ加工される部分Yを含めた、導入線の付け根部Zの近傍までの所定長が圧縮されてニッケル粒子が凝縮されている。
上記のように構成された一対の導入線14a、14bは、素線部14eの上方が拡大されてフィラメント16を懸架し、下方が外側に一旦拡大させから、さらに平坦部14f、14fが平行になるように曲折され、平坦部の下方が後述するように電球としての電気的な端子部分を構成するようになっている。
アンカー17は、材質がモリブデンで、線径0.12或いは0.15mmの線で構成されている。
ガラス製のビーズ15は、前記ガラスバルブ11と同様な材質の透明ガラスで構成され、加熱加工前の外径が3.15mm、内径が2.35mm(肉厚0.4mm)、高さが1.5mmのリング状の円筒から構成され、これを加熱、溶融し固化させてガラス塊にすることにより、図2に示すように一対の導入線14a、14bが離間する寸法aを約0.8mmの所定の寸法で保持するように構成している。
ビーズ15は、電球として構成した際にガラスバルブ11内に透視して見えるように位置させて構成する。
さらに、ビーズ15は、図5に示すように、加熱、溶融し固化することによりガラス塊となり、ビーズ15の外表面とフィラメント16側導入線14a、14bの外表面との接触部分、いわゆる導入線の付け根部Zの部分が陥没し、クレータ状の比較的深い凹部15a,15bがそれぞれの導入線14a、14bを中心として形成され、さらに各クレータ状の凹部15a、15bが連続した状態の凹部15cが形成されている。
さらに、上述のように構成されたビーズ15と一対の導入線14a、14bは、その導入線の付け根部Zの部分(図5のb寸法約0.2mmの部分)は、断面円形の素線状態の素線部14eがビーズ15の外表面から突出し露出している状態となっており、この部分が折り曲げの支点となり、後述するフィラメント16間のc寸法(図2)を約2.7〜2.9mmに調整するためのピッチ調整が行われる。
上記のように構成されたマウント12をガラスバルブ11の開口部11aから挿入し、導入線14a、14b下端の平坦部14f、14fをガラスバルブ11の開口部11aから導出し、ガラス製の排気管18(図1に破線で示す)をガラスバルブ開口部11aの所定の位置に配置して、ガラスバルブ5の開口部11aを加熱、溶融し、両側から圧潰して気密に封止し封止部13を構成する。
さらに、ガラスバルブ11の封止部13から導出された一対の導入線14a、14bの平坦部14f、14fを、それぞれが封止部13の両面に対向するように、互いに逆方向に折り曲げて電気的な端子部19a、19aを構成する。
次に排気管18を介して圧潰封止したガラスバルブ11内を排気して真空にした状態で排気管18を加熱封止した後、不要部分を取り除いて封止部13を構成する。
上記のように構成されたウェッジベース形の電球10は、ガラスバルブ11内に金属片が動く異物として存在しない電球として構成され、自動車の計器盤を構成する回路基板等に装着されたソケットに、端子部19a,19aが押し込まれ、これにより電源が投入されて点灯し、計器盤の表示灯として照明をするようになっている。
本実施形態において、導入線14a、14bの材質、線径、さらに導入線の離間寸法等は種々の変更が可能である。
また、ガラス製のビーズ15の材質、寸法、導入線を支持する位置等は、各種の電球の形式、種類に応じて種々の変更が可能である。
ビーズ15は、電球として構成した際に、ガラスバルブ11内に透視して見えるに構成したが、ガラスバルブの開口部11aにおける封止の際に、この封止部13の中にビーズ15が埋没されるようにしてもよい。
フィラメント16の材質、寸法、懸架形状、懸架方法等も種々の変更が可能である。
ガラスバルブ11は、光の透過率や機械的な強度等を考慮して決められればよく、材質、形状等は種々の変更が可能である。
本実施形態では、ガラスバルブ11内を真空としたが、ネオン、アルゴン、キセノン等の不活性ガス、あるいはこれらの混合ガスを封入してもよい。
さらに、電球の形態としてはウェッジベース形の電球でなくても他の小型の白熱電球であってもよい。
次に、本実施形態の電球の製造方法を図6、図7に従い説明する。
図6は、第一実施形態の電球の製造方法を概略的に示す工程図で、「導入線プレス工程」「ビーズ仮固定工程」「導入線曲げ工程」「ビーズ加熱工程」「アンカー支持工程」「フック形成・導入線ピッチ調整工程」「電極端子成形工程」「フィラメント懸架工程」「ガラスバルブ挿入工程」「バルブ封止工程」「電極リード成形工程」「排気工程」の各工程が、上記に記載した順番で施工されるようになっている。
上記各工程は、自動化されたマシーンで構成されており、上述した各工程は、本実施形態の全ての工程を記載したものではなく、主要な工程を抽出して説明したものである。
まず、「導入線プレス工程」で、導入線をプレスにより図7に示すように加工する。
すなわち、導入線14a、14bの上端に、断面が小判形状の扁平部14dを、扁平部14dの下端はプレス加工をせずに断面が円形の素線の状態にした素線部14eを、さらに素線部14eの下端から下方先端までを断面が薄い略長方形の平坦部14fが形成されるようにプレスする。
特に、この工程では、断面が円形の素線の状態の導入線を、プレスにより上下から圧縮加工して扁平部14dを形成することにより、表面の粗いニッケル粒子を圧縮して凝縮し、表面の粒子の結合状態を密にすることが行われる。
一対の導入線の扁平部14d、素線部14e及び平坦部14fの断面形状は、図7(b)〜(e)に示す形状となる。
次に、「ビーズ仮固定工程」で、加熱加工前のリング状の円筒をなすガラス製のビーズ15の穴に、下方の片端をマシーンの保持体で支持固定した一対の導入線14a、14bを通し、所定の位置でビーズ15を仮固定する。
この際、ビーズ15を加熱したときに、導入線14a、14bが所定の位置になるように管理する。
次に「導入線曲げ工程」に移動し、ビーズ15に挿入され平行状態になっている一対の導入線14a、14bを、その素線部14eの上方の部分が拡大し、さらに下方を外側に一旦拡大させから、平坦部14f、14fが平行になるように折り曲げて成形する。
これにより、加熱加工前のリング状の円筒をなすビーズ15の穴に一対の導入線14a、14bが挿入され、ビーズ15が仮固定された状態の一次的な半マウント12′が構成される。
次に、上記のように構成された半マウント12′を「ビーズ加熱工程」に移動する。
「ビーズ加熱工程」は、ビーズの予備加熱工程である「第1バーナーの工程」、ビーズの本焼き工程である「第2バーナーの工程」、ビーズ仕上げ焼きの工程である「第3バーナーの工程」の3工程を有しているが、いずれの工程においても一対のガスバーナー20,20の炎がビーズの左右斜め上方から放射され、導入線が挿入されたビーズ15を加熱して溶融すると共に、ガスバーナーの炎により一対の導入線も同時に加熱される。
なお、ビーズ15は、上述のように一対の導入線14a、14bの下方の片端をマシーンの保持体で支持固定しているので、回転等はしない状態になっており、各バーナーの工程の際には、ガスバーナーの炎はビーズの同一箇所を加熱するようになっている。
この加熱の際に、上記のようにガスバーナーの炎により一対の導入線も加熱されることになり、一対の導入線、特にビーズより外に突出した上部の導入線の表面が酸化するが、上述のように「導入線プレス工程」で、この突出した部分にはプレスにより扁平部14dが形成され、表面の粗いニッケル粒子を圧縮して凝縮し、表面の粒子の結合状態を密にしてあるので、ビーズ加熱工程でのガスバーナーの炎による酸化が抑制され、表面の酸化が少なくなったことで表面が安定した状態になっている。
上記のようにガスバーナーにより加熱されたビーズ15は、溶融して略球形のガラス塊の状態に変化しながら一対の導入線と一体となる。
この状態からビーズ15及び一対の導入線14a、14bが冷却され、半マウント12′が構成される。
この際、ビーズ15と一対の導入線14a、14bは、その導入線の付け根部Zの部分(図5のb寸法約0.2mmの部分)は、断面円形の素線状態の素線部14eがビーズ15の外表面から突出し露出した状態となっている。
上記のように構成された半マウント12′は、次の「アンカー支持工程」に移動される。
ビーズ15を再度加熱して溶融させ、アンカー17を上部から溶融状態のビーズの略中央部分に挿入し、アンカー17の下部をビーズの中に埋め込み、その後、冷却されることによりビーズ15が固化し、アンカー17がビーズ15に支持される。
次に「フック形成・導入線ピッチ調整工程」に移動する。
この工程では、まず導入線14a、14bの扁平部14d、14dの上部を折り返してプレスすることでフィラメント16両端のレグ部16a、16aを掛けるためのフック部14cを形成する。
次に、ビーズ15が冷却され固化した状態では、加工バラツキにより一対の導入線14a、14b上部の幅が、広い幅寸法で出来上がっており、この状態ではガラスバルブ11の内側面に接触して入らない半マウント12′が多数存在しており、全ての半マウントがガラスバルブ内に入るように、一対の導入線14a、14bの両端を、自動マシーンの一対の押圧体21,21で左右から、等しい力で押圧して導入線ピッチをc寸法2.9mmになるようにする。
この導入線ピッチ調整の際、従来のように導入線の表面を圧縮しない素線状態のままであると、ジュメット線の表面のニッケル(Ni)層の粒子が粗い状態で存在し、ガラスビーズを加熱する工程の際に、この粗い状態の粒子が酸化して表面に不安定な形で酸化金属膜が生成され、この酸化金属膜が一対の導入線14a、14bの折り曲げにより金属片として剥離脱落、或いは剥離した酸化金属膜が導入線表面に付着、または一部不安定な状態で表面に残存する現象が生じてしまう。
しかしならが、本製造方法では、上述のように「導入線プレス工程」で、この突出した部分にはプレスにより扁平部14dが形成され、表面の粗いニッケル粒子を圧縮して凝縮し、表面の粒子の結合状態を密にしてあり、その結果「ビーズ加熱工程」での酸化が抑制されて表面の酸化が少なくなり、表面が安定した状態となっているので、導入線14a、14bを折り曲げても酸化金属膜が金属片として剥離脱落、或いは剥離した酸化金属膜が導入線表面に付着、または一部不安定な状態で表面に残存する現象が発生しない。
さらに、ビーズ15と一対の導入線14a、14bは、その導入線の付け根部Zの部分(図5のb寸法約0.2mmの部分)は、断面円形の素線状態の素線部14eがビーズ15の外表面から突出し露出した状態となっており、この部分で導入線14a、14bの上方先端が内側に縮小するように折り曲げられるので、曲げ方向に対し抵抗する応力が働くような形である断面が略小判形の扁平部14dとなっておらず、応力を軽減することができ、少ない押圧力で折り曲げることができ、導入線14a、14bに大きな力がかからないため、より一層、導入線表面の酸化金属膜が金属片として剥離脱落、或いは剥離した酸化金属膜が導入線表面に付着、または一部不安定な状態で表面に残存する現象が発生しない。
さらに、折り曲げ作業が容易になると共に、導入線の付け根部にも強い力がかからないため、付け根部におけるガラスビーズ15の欠けも防止することができる。
これにより、導入線14a、14bがビーズ15で保持され、そのc寸法が管理された半マウント12′が構成される。
この半マウント12′は、ビーズ15や導入線14a、14b等に金属片が付着していない状態で構成される。
次に「電極端子成形工程」に移動し、電球として構成されたときに、外部に出る側の導入線14a、14bの平坦部14f、14fを上方に向かって折り曲げ加工し、電球のソケット端子と接触面積が増えるように、2本の線が平行するように略U字形の電極端子を成形する。
次に「フィラメント懸架工程」に移動し、アンカー17の上部を折り曲げて引掛部17aを形成し、フィラメント16の中央部分を引掛部17aに引掛けると共に、フィラメント両端のレグ部16a、16aを上記フック形成工程で折り返されたフック部14c、14cの内側の極小の隙間に挿入し、さらにフック部14c、14cの外側をプレスで圧縮してフィラメントが脱落しないように懸架して、完成したマウント12が構成される。
この際、一対の導入線14a、14bは、上記「導入線ピッチ調整工程」でc寸法が管理されているので、フィラメント16の長さは常に一定になるように構成される。
次に、「ガラスバルブ挿入工程」に移動し、別の工程で一端が半球状に封止され、他端に開口部11aを有し、所定の寸法に裁断された円筒状のガラスバルブ11が搬入され、このガラスバルブの円筒内に、上記のように構成されたマウント12を、ガラスバルブ11内壁に一対の導入線14a、14bの両端が接触しないように位置決めして挿入する。
この状態で、別工程で所定の寸法に裁断されたガラス製の排気管18が搬送され、所定の位置に配置される。
さらに、次の「バルブ封止工程」に移動し、ガラスバルブ11の開口部11aを加熱し、さらに上下から圧潰して封止する。この際、排気管18は潰さない。
次に「電極リード成形工程」に移動して、ガラスバルブ11の封止部13から導出された一対の導入線14a、14bを互いに逆方向に折り曲げて端子部19a,19aを構成する。
さらに、「排気工程」に移動し、排気管18を介して圧潰封止したガラスバルブ11内の空気を排気して真空状態にし、排気管18の不要な部分を取り除いてガラスバルブ11内を気密にした状態での封止部13を構成する。
さらに「検査工程」「マーキング工程」等を経て、ウェッジベース形の電球が完成する。
このようにして完成したウェッジベース形の電球10は、ガラスバルブ11内に金属片が動く異物として存在しない歩留まりのよい電球として構成され、フィラメント断線不良の少ない優れた信頼性を有する電球が提供される。
本実施形態において、ビーズ15と一対の導入線14a、14bは、その導入線の付け根部Zの部分(図5のb寸法約0.2mmの部分)は、断面円形の素線状態の素線部14eがビーズ15の外表面から突出し露出した状態としたが、この導入線の付け根部Zの部分を含めて素線部分全体を圧縮するようにしてもよい。
さらに、「導入線プレス工程」で、断面が円形の素線の状態の導入線を、プレスにより上下から圧縮加工して、対向する外側の両面を扁平にした扁平部14dを形成したが、外側の両面だけでなく、外周全体を圧縮するようにしてもよい。
また「ビーズ加熱工程」で、ビーズ15をガスバーナーで加熱する際に、ガス、エアー、酸素等の量を適宜調整して加熱するようにしてもよい。
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の設計変更を行うことができる。