JP2005179730A - 多孔質金属酸化物の製造方法及びそれによって得られる多孔質金属酸化物を用いたバイオチップ - Google Patents

多孔質金属酸化物の製造方法及びそれによって得られる多孔質金属酸化物を用いたバイオチップ Download PDF

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Abstract

【課題】 機械加工では及ばない細孔径や細孔間隔を有する多孔体を簡潔に、かつ大面積の基板に特性劣化なく作製することを目的とする。
【解決手段】陽極酸化による多孔質金属酸化物の製造方法において、電解液は、硫酸、りん酸、クロム酸、しゅう酸から選択される1種又は2種以上の第一の酸と、ジカルボン酸あるいはトリカルボン酸から選択される1種又は2種以上の第二の酸とを混合したものであることを特徴とする多孔質金属酸化物の製造方法とした。
【選択図】 図3

Description

本発明は、陽極酸化を利用した金属酸化物の製造方法に係り、より具体的には、金属に酸化物皮膜を形成する電解液、および該電解液を用いて表面に多孔質酸化物皮膜を形成した金属に関する。さらに、得られた多孔質金属酸化物を利用したバイオチップに関する。
陽極酸化による金属酸化物の製造は、例えば、アルミニウムやその合金を電極として用い、硫酸、しゅう酸、りん酸などの電解液中で陽極酸化することにより、電極表層に多孔質のアルミナ皮膜が得られることにより行なわれる。前記のような陽極酸化によって得られるアルミナは、中心に垂直な孔を持つセルと呼ばれる多孔質の柱状の酸化物の集合体からなり、この特異的な構造に由来し、他の材料にない様々な特徴を有している。
多孔質構造の形成は、陽極酸化により形成される酸化物層に、酸の溶解作用に電場による溶解作用が加わり、孔が形成されることで進行される。この時、酸化物からなるシリンダー状のセルが細密充填することで、規則構造が自己組織化的に形成される。陽極酸化条件を制御することで、細孔径5〜450nm、セルサイズ10〜500nmの範囲の多孔体を形成させることができる。(例えば、非特許文献1参照。)
益田秀樹、応用物理、第69巻、第5号、2000年(558頁―562頁)
陽極酸化アルミナは、80年以上もの歴史があるが、近年では自己組織化により形成される長距離規則化構造を利用して、フォトニック結晶や高磁気記録密度媒体などへの応用が試みられている。
前記のように、機械加工ではできない領域である細孔径5〜450nm、セルサイズ10〜500nmの範囲の多孔体を形成させることができるが、さらに細孔径を大きくすることで、バイオチップなど機械加工では及ばない新しい用途へ応用することが期待できる。
機械加工ではできない領域であるが、陽極酸化により金属酸化物膜の細孔径の大きな細孔を得ようとする場合には、酸やアルカリ液に浸漬して、細孔径を大きくすることがなされている(例えば、特許文献1〜2参照。)。
このような場合、多孔質構造維持のため、隣接する細孔同士の結合を防ぐ必要があり、細孔径や細孔間隔を広げることには限界があった。さらに、細孔径を広げることで、開孔率が高くなるため、アルミナ皮膜の強度が低下する問題があった。
特開平7−216587号公報(第4頁) 特開2002−04087号公報(第6頁)
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、従来の自己組織化による規則配列構造を維持しつつ、硬度、強度など優れた特性を有する、金属酸化物膜、特に、バイオチップへの適用に関して好適な細孔径の大きな多孔質金属酸化物を得るための形成方法を提供することである。
上記目的を達成するために請求項1は、陽極酸化による多孔質金属酸化物の製造方法において、電解液は、硫酸、りん酸、クロム酸、しゅう酸から選択される1種又は2種以上の第一の酸と、ジカルボン酸あるいはトリカルボン酸から選択される1種又は2種以上の第二の酸とを混合したものであることを特徴とする多孔質金属酸化物の製造方法。とした。
第一の酸である硫酸、りん酸、クロム酸、しゅう酸を用いることで自己規則的に配列した多孔質構造を形成させることができるが、この時同時に、第二の酸であるこはく酸、クエン酸などのジカルボン酸あるいはトリカルボン酸などの電解液を混合することで、通常の陽極酸化で印加することのできない化成電圧を印加できるようになり、規則的に配列した細孔径の大きな多孔質金属酸化物を得ることができる。
得られる細孔径の大きさは、30nm〜1μm、セルサイズは、50nm〜2.5μmの範囲の多孔質金属酸化物を提供できる。さらに細孔径は、エッチングにより多孔質構造が維持できるまで、拡大することができる。
陽極酸化時に印加する化成電圧とセルサイズの間には、相関関係があり、化成電圧を高くするとセルサイズを大きくすることができる。上記電解液は水に対する電離度が小さく、電流が流れにくいため、高い化成電圧を印加することができる。この結果、セルサイズを従来よりも大きくすることができる。化成電圧の高電圧化により、セルサイズが大きくなるのは、細孔先端にかかる半球状電場の半径が高電圧化により、大きくなるためと考えられる。
図1は、上記のメカニズムを示すもので、通常のAlの陽極酸化を行った場合の多孔質アルミナの構造を示した図である。参照符号1は、基板のAl、2は、陽極酸化により形成されたセル、セルの中心部には、細孔3が位置している。セル構造は、六角柱状の集合体となっていることが分かる。参照符号4は、陽極酸化初期に形成されるバリヤー層である。
図2は、通常の硫酸やしゅう酸などを電解液に用いて、Alの陽極酸化を行った場合の細孔の形成の仕方について、模式的に示した図である。参照符号1は、基板のAl、2は陽極酸化により形成されたセル、3はセルを形成する細孔、5は細孔先端にかかる半球状電場である。
参照符号3に示した細孔は、半球状電場5の溶解作用と電解液の化学溶解作用により、形成されると考えられる。この時、化成電圧を高くすると半球状電場の半径は大きくなり、セル2のサイズを大きくすることができる。
また請求項2では、前記電解液において、第二の酸は0.01〜5mol/L含有していることを特徴とする請求項1に記載の多孔質金属酸化物の製造方法とした。高化成電圧印加のためには、電解液濃度は高い方が好ましいが、高すぎると、ガス発生のため、高電圧印加が困難となるため、高電圧印加を確保する第二の酸は5mol/L以下であることが望ましい。
また請求項3では、前記電解液において、第一の酸は0.01〜0.3mol/L含有していることを特徴とする請求項1に記載の多孔質金属酸化物の製造方法とした。濃度が高すぎると、ガス発生が低電圧で起こりやすく、また濃度が低すぎると多孔質金属酸化物を得ることが困難となるため、細孔の規則性を確保する第一の酸は、0.3mol/L以下であることが好ましい。
また請求項4では、前記電解液の温度を10℃以下としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の多孔質金属酸化物の製造方法とした。電解液が高温になれば、導電率が高くなり、電流が流れやすくなることで多孔質金属表面にやけが生じ易くなる。この結果、皮膜特性の劣化を招いてしまうため、前記設定した10℃以下とした方が良い。浴温度は低いほど好ましく、凝固点以下にまで冷却しなければ良い。本実施例においては、浴温度を0℃に設定した。
また請求項5では、陽極酸化による多孔質金属酸化物の製造方法において、陽極酸化により多孔質金属酸化物膜を所定厚み形成する工程と、前記工程により形成された細孔の一部を閉塞する工程と、前記工程の後、更に陽極酸化を行う工程とを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の多孔質金属酸化物の製造方法とした。
請求項5の本発明は、通常の陽極酸化により形成される多孔質金属酸化物の細孔を閉塞することで、電解液との化学反応場が小さくなり、化学溶解作用を低下させたり、あるいは細孔先端にかかる電場溶解作用が低下するため、細孔形成は主に、複合粒子が取込まれていない細孔で進行することになる。これにより、細孔密度が低下して、結果的にセルサイズを大きくすることができることを知見したものであり、その際に形成される細孔も径の拡大が見られたことを利用したもので、特に、細孔を規則的に閉塞することで、細孔間隔が広くなった多孔質金属酸化物を提供できる。細孔閉塞後に形成される細孔径の大きさは、30nm〜2μm、セルサイズは50nm〜20μmの範囲の多孔質金属酸化物を提供できる。
図3は、上記のメカニズムを示すもので、電解液に例えば、金属・有機ポリマー複合粒子7を添加することで、細孔の一部を閉塞することができる。閉塞された細孔には、電解液が供給されずに成長が止まるものと思われるが、閉塞されていない細孔3では、細孔3の成長は続く。近接した細孔3の成長が止まることにより、セル2の成長し得る領域が広がるため、セルサイズを広げることができる。なお、上記した複合粒子は、図3に示すように中心金属8を様々な長さの鎖長を持つ有機ポリマー9で取り囲まれたものである。
また、請求項6では、前記陽極酸化に利用する陽極金属板には、規則配列した窪みパターンを予め表面に形成したことを特徴とする多孔質金属酸化物の製造方法とした。
本発明では、金属板に予め窪みを形成しておくことにより、その窪みが陽極酸化の開始点となり、窪みに対応した位置に細孔が形成されることを利用し、規則的な細孔の形成を図ることができるものである。
また、請求項7では、前記細孔の一部を閉塞する工程は、細孔に金属・有機ポリマー複合粒子の一部を挿入することによりなされることを特徴とする請求項5または6に記載の多孔質金属酸化物の製造方法とした。
本発明では、電解浴に金属・有機ポリマー複合粒子を添加することで、有機ポリマーの嵩高さにより、一定の間隔で分布を持って細孔を閉塞させることができる。
また、請求項8では、電解浴中に予め金属・有機ポリマー複合粒子を添加することでも上記同様の作用効果を呈することができる。
また請求項9では、前記金属・有機ポリマー複合粒子の大きさを20nm以上5μm以下とした。通常の条件で、陽極酸化を行った場合、セルサイズ10〜500nmであるため、前記粒子の影響と思われるが、細孔間隔が広く形成され、また、途中から粒子を添加する場合には、隣のセルの細孔に粒子が入らないように、20nm以上としており、500nmより大きいと形成された細孔径の大きさにバラツキが生じるため望ましくない。
さらに、有機ポリマーに極性を付与すれば、電解浴中への分散時に互いに一定間隔で自己組織化することができ、細孔間隔の制御を行うことができる。
また、請求項10記載の発明によれば、複合粒子にアニオン性を付与することで、アノード側に複合粒子を電気泳動させることができ、微細孔へ吸着させることができる。微細孔への吸着は、全ての細孔に対して行われるわけではなく、有機ポリマーの嵩高さにより、一定の間隔で分布させることができる。
例えば、嵩高さの小さな複合粒子であれば、立体障害効果が低くなり細孔密度の高いアルミナ皮膜を、逆に嵩高さの大きな複合粒子であれば、立体障害効果が高くなるため細孔密度の低いアルミナ皮膜を形成させることが可能となる。
また、請求項11記載の発明によれば、得られた皮膜を酸あるいはアルカリ溶液に浸漬することで従来よりも細孔径の大きな多孔体を形成させることができる。
また、請求項12は、請求項1乃至11の何れかに記載の製造方法で得られた多孔質金属酸化物を用いたバイオチップとした。
本発明の陽極酸化によって形成された多孔質金属酸化物は、細孔径450nm〜15μmの機械加工ではできない領域であり、バイオチップに好適な孔径を有す。
本発明によれば、
1)機械加工では及ばない細孔径や細孔間隔を有する多孔体を形成できる
2)化成電圧を従来より高めることができるので、大孔径の多孔体を形成できる。
陽極酸化は、図5に示すように、陽極10に所望する金属酸化物を形成する金属板(図ではAlを用いている。)を用い、陰極11には、その金属よりイオン化傾向の小さいPtなどの金属を利用し、第一の酸としての硫酸、しゅう酸、りん酸、クロム酸と第二の酸としてのクエン酸、こはく酸などのトリカルボン酸、ジカルボン酸を混合した電解液を電解浴12とする電解槽13を利用している。また、印加電圧(化成電圧)を調整可能な図示していない電源が電極間に配置されている。
陽極酸化に利用する陽極の金属電極としては、Al及びその合金が従来から利用されているが、Ti、Nb、Zrといった金属も適用可能である。
電極に利用する金属板の厚みや大きさには制限はなく、工業的に製造し得る範囲であれば良い。
また、電極に例えば、エポキシ樹脂のような絶縁性を有する材料を用いて、スクリーン印刷することなどによって、マスキングを施しておくことで、所望の大きさ、形状のものを得ることができる。
また、金属板に予め規則的な窪みをプレス成型などを利用して形成させておくことで、細孔の形成を規則的に行えるので、望ましい。窪み間は、あまり広すぎると細孔形成の規則性を損なうので、10nm〜400nmが良い。
また、印加電圧は、セルサイズの大きな多孔質金属酸化物を得るため、より高電圧を印加することが望ましい。通常、化成電圧1000Vを超えると、ほとんどの電解液では絶縁破壊電圧に達し、これ以上の電圧不可が困難であったり、また皮膜特性の劣化が起こる。このため、クエン酸やこはく酸などの電離度の低い混合浴を用いて溶液濃度を適正範囲に制御することで、安定して多孔質アルミナ皮膜を得るために印加できる化成電圧を高く設定することが可能となる。
金属・有機ポリマー複合粒子を添加する場合には、通常の陽極酸化に付与される比較的低電圧を印加し、しゅう酸浴の場合には20V〜80V、りん酸浴の場合には120V〜200Vの範囲又は絶縁破壊電圧に至らない程度にまで化成電圧を高くすることができる。尚、電圧を高めてセルサイズの調整がある程度図れるので、閉塞する細孔間の調整を予め図ることが出来る。また、後述する複合粒子を電解浴に初めから添加しない場合には、この陽極酸化により形成される金属酸化物薄膜が細孔が形成し始める前の、厚み500nmに達する前までに添加することが望ましい。
上記した条件で陽極酸化を行った後、細孔の一部を閉塞する際には、形成される細孔径とほぼ同等かそれより小さな20〜500nmの金属粒子を電解浴に分散させることによって細孔に吸着させても良いが、規則的に、細孔を閉塞するには、金属粒子の表層に有機ポリマーを結合させた金属・有機ポリマー複合粒子を利用し、その複合粒子の嵩高さにより適宜間隔を持って閉塞されるので望ましい。金属・有機ポリマー複合粒子は、平均粒径10nm〜4μmの金属微粒子に有機ポリマーを結合させることによって形成することができるが、金属・有機ポリマー複合粒子は、ポリ(2−ビニルピリジン)とポリスチレンのブロック共重合体のポリ(2−ビニルピリジン)相を1,4−ジヨードブタンにより架橋した後、その中にヨウ化銀の微結晶を析出させ、それを光還元することにより銀・有機ポリマー複合粒子を形成させることで容易に形成できるので、望ましい。金属粒子としては、銀以外でも、白金、パラジウム、ロジウムなどの金属で適用ができる。
また、前記では、細孔を閉塞する粒子を途中で添加したが、電解浴に予め添加しておいても同様の効果をもたらすことができる。特に、金属・有機ポリマー複合粒子は、その嵩高さにより互いに間隔を保って閉塞することができるので、初期の陽極酸化を阻害することも無い。
また、有機ポリマーとしては、金属と親和性のあるブロック鎖を構成する有機ポリマーであれば良く、具体的には、上記したポリ(2−ビニルピリジン)、ポリアミノスチレンなどの窒素原子を持つモノマーユニットから構成されるもの、ポリ(メチルメタクリレート)などの酸素原子を持つモノマーユニットから構成されるもの、ポリプロピレンスルフィドなどの硫黄を含むモノマーユニットから構成されるものなどがある。
なお、細孔を閉塞するにあたっては、アニオン性が付与された粒子を用いれば、その粒子は、アノード側に向かって電気泳動させることができ、微細孔へ吸着させることができる。その際、上記のような金属・有機ポリマー粒子を用いれば、微細孔への吸着は、全ての細孔に対して行われるわけではなく、有機ポリマーの嵩高さにより、一定の間隔で分布させることができるので、規則的に細孔を閉塞することが可能となる。
最後に、上記によって形成された多孔質金属酸化皮膜は、残存する電極を溶出させ、更に、バリヤー層及び閉塞前の形成された多孔質層部分を溶出させて多孔質金属酸化物を形成する。不要な金属酸化物層を溶出させる際に、同時に細孔の拡大処理を行なうこともできる。
本発明によって製造された多孔質金属酸化物は、その孔径の大きさからバイオチップとして効果的に利用できる。バイオチップとして、例えば、プロテインチップの利用が考えられる。プロテインチップはタンパク質と病気との因果関係を解明するために必要である。病気に関連するタンパク質の特定や新薬の開発のためには、個々の細孔に固定化したタンパク質をあらかじめ識別しておく必要があるが、これにはスポッターなどを利用すればよい。しかしながら、現状では 数μmまでの精度が限界であるため、このようなチップとして利用するためには、細孔の規則配列化と細孔径の拡大化が課題である。
本発明によれば、陽極酸化時の化成電圧、浴組成など諸条件を制御することで、均一細孔径、均一孔間隔を持つ多孔質アルミナの作製が可能で、皮膜特性を劣化させることなく細孔径を広げることができるため、プロテインチップへの応用が可能となる。
更に、アルミナのような金属酸化物は絶縁体であり、孔内面にのみ無電解めっきを施すことで個々の孔で独立した電極を作製できる。固定化したタンパク質から直接信号を取ることができるため、特異物質と相互作用した時の変化を従来の蛍光標識による検出法よりも簡便に、かつ迅速に検出することが可能になる。
図6を用いて、具体的に説明する。
本発明の細孔径15μmまでの、細孔が規則配列した多孔質アルミナ14を用いて、細孔15内への無電解金めっきにより底面に導通部15を形成させることができる。さらに金表面で、末端が硫黄とカルボキシル基あるいは硫黄とアミノ基で構成される化合物を反応させることで、チオール結合により化合物(タンパク質)17を細孔内に固定化させることができる。図6では、末端がカルボキシル基の例を示した。
化合物中の結合していないカルボキシル基あるいはアミノ基は、スポッターにより細孔内へ滴下したタンパク質とペプチド結合により、細孔内へ固定化させることができる。また、この時、どの細孔にどのタンパク質があるのかを識別しておくことができる。
このように固定化したタンパク質に対して、別のタンパク質や化学物質などが特異的に相互作用した場合には、導通部より電気信号を取り出すことができる。その電気信号とタンパク質との関係を蓄積した過去のデータとパソコン18などで処理して、特異的に相互作用したタンパク質を特定することができる。あらかじめ、Pt電極19が集積した電極パッド20を有していれば、上記した処理を施した多孔質アルミナを、電極パッド20に載せるだけで迅速に結果を得ることができ、ランニングコストを低減する効果がある。
本発明を実施例により具体的に説明する。
銀・有機ポリマー複合粒子は、ポリ(2−ビニルピリジン)とポリスチレンのブロック共重合体のポリ(2−ビニルピリジン)相を1,4−ジヨードブタンにより架橋した後、その中にヨウ化銀の微結晶を析出させ、それを光還元することにより銀・有機ポリマー複合粒子を得た。
アノード側に用いるAl電極は、不純物混入による皮膜構造の不規則性を避けるため、5Nの高純度Al板を用いた。さらに、陽極酸化を行う直前に、エタノールと過塩素酸を体積比で4:1で混合した溶液中で、100mA/cm2の電流密度で電解研磨を行い、Al表面を鏡面処理した。
図5に示すように、陰極に白金を用いて、任意の化成電圧を印加しながら陽極酸化を行い、マスキングテープで10×10mmの面積を暴露させた、Al上にアルミナ皮膜を形成させた。(図5参照)
得られたアルミナ皮膜は、塩化水銀(II)飽和溶液中で残存したAlを溶解して、アルミナ皮膜を分離・回収し、その後、30℃に保持した5wt%りん酸溶液中に1h浸漬して、バリヤー層の溶解とともに細孔径の拡大処理を行った。このように得られたアルミナ皮膜の構造を電子顕微鏡により観察した。また、セルに内接する円の直径をセルサイズとし、多孔質アルミナ酸化物の単位面積当たりの孔面積の割合を開孔率として評価した。
実施例1では、りん酸0.03mol/Lに、トリカルボン酸であるクエン酸0.01mol/lを添加した混合浴で細孔構造に及ぼす影響を調査したものである。りん酸0.03mol/l単独浴で安定して多孔質アルミナ皮膜を得るためには、220Vまでが限界であるが、クエン酸を0.01mol/l添加することで、250Vの化成電圧でも安定して多孔質アルミナ皮膜を形成させることが可能であった。
実施例2では、りん酸0.03mol/lに、クエン酸0.15mol/lを添加した混合浴で細孔構造に及ぼす影響を調査したものである。実施例1のクエン酸濃度が低い場合と比較すると、クエン酸濃度を高くすることによって、さらに高い化成電圧を安定して印加できるようになり、陽極酸化後、得られる多孔質アルミナ皮膜のセルサイズ、細孔径ともに大きい皮膜が得られることが分かる。
実施例3では、銀・有機ポリマー複合粒子0.01mol/l添加の効果を確認したものであるが、銀・有機ポリマー複合粒子を添加しない実施例2のセルサイズが800nmであるのに対し、5μmにまで細孔径が大きくなったことが分かる。
また、銀・有機ポリマー複合粒子で細孔径が部分的に封孔されるため、開孔率も低下していることが分かる。
さらに、実施例4では、銀・有機ポリマー複合粒子濃度の影響を調査したものである。複合粒子0.1mol/lに増加することで、微細孔に取り込まれるあるいは細孔を塞ぐ粒子数が増大し、これにより、セルサイズが6.5μmにまで大きくなることが分かった。
実施例5では、銀・有機ポリマー複合粒子の効果の他、化成電圧の影響を調査したものである。一般に言われているように、化成電圧を大きくするとセルサイズは大きくなるが、この効果は、複合粒子を添加した場合でも化成電圧を大きくすることで、セルサイズが大きくできることを示している。
実施例6ではりん酸0.03mol/Lに、ジカルボン酸であるこはく酸を0.15mol/l添加した混合浴で、細孔構造に及ぼす影響を調査したものである。トリカルボン酸のクエン酸と同様に、ジカルボン酸のこはく酸でも、高い化成電圧を印可できることを示している。
実施例7では、銀・有機ポリマー複合粒子0.1mol/l添加の効果を確認したものであるが、実施例4で見られる効果と同様に、こはく酸でも銀・有機ポリマーを添加することで、劇的にセルサイズが大きくできることを示している。銀・有機ポリマー複合粒子を添加しない実施例6のセルサイズが720nmであるのに対し、5.8μmにまで細孔径が大きくなったことが分かる。
ジカルボン酸、トリカルボン酸では水素イオンの解離は2段階以上で行われ、この際にバリヤー層でプロトンスペースチャージと呼ばれる電荷層を形成し、皮膜形成にはこの電荷層が必要であるとされている。しかしながら、モノカルボン酸では、水素イオンの解離は1段階でしか起こらず、プロトンスペースチャージを形成するにまでは至らないため、多孔質皮膜を得ることができないと考えられる。
酸やアルカリでエッチングする時間を長くしたり、複合粒子の濃度を高濃度化すること、複合粒子の粒径を大きくすることなどで、さらに細孔径を拡大することができる。
上記実施例で挙げたアルミナ皮膜の例は、あくまでも一例に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更し得るものである。
本発明は、機械加工では及ばない細孔径や細孔間隔を有する多孔体を簡潔に、かつ大面積の基板に作製できる特徴がある。従来の製造方法で得られる細孔径範囲よりも大きくすることで、バイオチップなど新しい用途へ応用することができる。
本発明で得られる多孔質金属酸化物を示す図である。 本発明で得られる多孔質金属酸化物の形成過程を示す図である。 本発明で得られる多孔質金属酸化物のメカニズムを示す図である。 本発明に用いる金属・有機ポリマー複合粒子の概念図である。 本発明に用いる陽極酸化実験装置の図である。 本発明を利用した導電性を有するプロテインチップを示す図である。
符号の説明
1…Al基板
2…セル
3…細孔
4…バリヤー層
5…半球状電場
6…細孔
7…金属・有機ポリマー複合粒子
8…金属
9…有機ポリマー
10…陽極
11…陰極
12…電解浴
13…電解槽
14…アルミナ
15…無電解金めっきを施した細孔
16…導通部
17…タンパク質
18…パソコン
19…白金電極
20…電極パッド

Claims (12)

  1. 陽極酸化による多孔質金属酸化物の製造方法において、電解液は、硫酸、りん酸、クロム酸、しゅう酸から選択される1種又は2種以上の第一の酸と、ジカルボン酸あるいはトリカルボン酸から選択される1種又は2種以上の第二の酸とを混合したものであることを特徴とする多孔質金属酸化物の製造方法。
  2. 前記電解液において、第二の酸は0.01〜5mol/L含有していることを特徴とする請求項1に記載の多孔質金属酸化物の製造方法。
  3. 前記電解液において、第一の酸は0.01〜0.3mol/L含有していることを特徴とする請求項1に記載の多孔質金属酸化物の製造方法。
  4. 前記電解液の温度を10℃以下としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の多孔質金属酸化物の製造方法。
  5. 陽極酸化による多孔質金属酸化物の製造方法において、陽極酸化により多孔質金属酸化物膜を所定厚み形成する工程と、前記工程により形成された細孔の一部を閉塞する工程と、前記工程の後、更に陽極酸化を行う工程とを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の多孔質金属酸化物の製造方法。
  6. 前記陽極酸化に利用する陽極金属板には、規則配列した窪みパターンを予め表面に形成したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の多孔質金属酸化物の製造方法。
  7. 前記細孔の一部を閉塞する工程は、細孔に金属・有機ポリマー複合粒子の一部を挿入することによりなされることを特徴とする請求項5または6に記載の多孔質金属酸化物の製造方法。
  8. 電解液中に陽極及び陰極を挿入し、陽極酸化による多孔質金属酸化物の製造方法において、前記電解液には、少なくとも金属・有機ポリマー複合粒子が添加されていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の多孔質金属酸化物の製造方法。
  9. 前記金属・有機ポリマー複合粒子の粒径は20nm以上5μm以下であることを特徴とする請求項7または8に記載の多孔質金属酸化物の製造方法。
  10. 前記金属・有機ポリマー複合粒子は、アニオン性を有することを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の多孔質金属酸化物の製造方法。
  11. 前記多孔質金属酸化物を得た後、更に、酸、アルカリ溶液中への浸漬により、細孔径を450nm以上15μm以下にまで拡大化する工程を有する請求項1乃至10のいずれかに記載の多孔質金属酸化物の製造方法。
  12. 請求項1乃至11のいずれかに記載の製造方法で得られた多孔質金属酸化物を用いたバイオチップ。

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