<<複写装置の構成>>
図1は、本発明に係る画像処理装置の一実施形態を搭載した画像形成装置の一例であるカラー複写装置(画像処理システムの一例)の機構図である。このカラー複写装置1は、大まかに、原稿を読み取って画像データを取得する画像取得部10と、画像取得部10にて読み取られた画像データに対して所望の画像処理を施す画像処理部20と、画像処理部20により処理された処理済み画像に基づいて原稿に対応する画像を所定の出力媒体上に形成する画像出力部30と、プラテンカバー60とを備える。画像処理部20は、画像取得部10と画像出力部30との境界部分に設けられている。
このカラー複写装置1は、画像取得部10にて読み取った原稿の複写物を形成する複写機能だけでなく、接続ケーブルやネットワークなどの通信手段90を介して図示を割愛した様々な画像入力端末に接続可能になっている。これにより、通信手段90を介してパソコンなどの画像入力端末から取得した文書データや画像ファイルなどに基づいて画像を印刷するいわゆるプリント機能や、電話回線やその他の通信インタフェースを介して取得したFAXデータやその他の画像データに基づいて印刷出力する機能も備えた、いわゆる複合機(マルチファンクション機)で、デジタルプリント装置として構成されている。
画像取得部10は、筐体上に設けられた透明ガラスからなるプラテンガラス(原稿載置台)11の下方に、プラテンガラス11の原稿載置面と反対側の面(裏面)に向かって光を照射する光源12と、光源12から発せられた光をプラテンガラス11側に反射させる略凹状の反射笠17とを備える。また、画像取得部10は、プラテンガラス11側からの反射光を受光して副走査SS(Slow Scan )の方向(図中矢印X1の読取方向)と略直交する主走査FS(Fast Scan )の方向(図の紙面奥行き方向)に画像を読み取り、濃度に応じた画像信号(アナログの電気信号)を順次出力する受光部13と、受光部13からの画像信号を所定のレベルまで増幅し出力する信号処理部14とを備える密着光学系のものである。受光部13は、信号処理部14などとともに基板15上に配設され、光学走査系(センサユニット)16を構成する。
画像取得部10は、プラテンガラス11上に載置された原稿を読み取って得た入力画像を赤,緑,青の各色成分のデジタル画像データR,G,Bに変換し信号処理部14に入力する。信号処理部14は、受光部13からの赤,緑,青の各画像信号を図示しない増幅部により所定のレベルまで増幅し、さらに図示しないA/Dコンバータによりデジタルデータに変換することで、赤,緑,青のデジタル画像データR,G,BをA/Dコンバータから出力する。この赤,緑,青の画像データR,G,Bは、ケーブル19を通じて画像処理部20に送られる。
画像処理部20は、入力された画像データR,G,Bに対して拡縮、濃度調整、シャープネス(鮮鋭度)調整、あるいは色変換などの画像処理を行なうことで、Y,M,C,Kの画像データを生成し、このY,M,C,Kの画像データを画像出力部30へ送る。
画像出力部30は、一方向に順次一定間隔をおいて並置された出力色Y,M,C,Kの各色の画像形成部(転写部/印刷エンジン)31を有するタンデム構成のものである。以下、各色の画像形成部31のそれぞれに符号Y,M,C,Kを付して示し、纏めていうときには色の符号を省略して示す。その他の部材についても同様である。
なお、図示した例では、出力色としてY,M,C,Kの4色を使用する例を示したが、これに限らず、たとえば第5色としてのグレイ(灰色)Gyなどより多くの出力色を含むものであってもよいし、ブラック(K)を除くY,M,Cの3色であってもよい。また、図示した例では、出力色Y,M,C,Kに対応する各画像形成部31Y,31M,31C,31Kの配列順をY→M→C→Kとしてあるが、これに限らず、K→Y→M→Cなど、他の配列順であってもよい。
画像形成部31の中央部には、感光体ドラム32が配され、この感光体ドラム32の周囲には、一次帯電器33、現像器34、および転写帯電器35などが配設され、さらに画像形成データに基づいて潜像を感光体ドラム32に記録するためのポリゴンミラー39などの書込走査光学系を有する。
また画像出力部30は、画像形成部31に印刷用紙を搬送するための用紙カセット41と搬送路42とを備えている。また先端検出器44が、用紙カセット41から各画像形成部31に搬送される印刷用紙の搬送路42上に近接して設けられている。先端検出器44は、レジストローラ42aを通じて転写ベルト(搬送ベルト)43上に送り出された印刷用紙の先端をたとえば光学的に検出して先端検出信号を得、この先端検出信号を画像処理部20に送る。
画像処理部20は、画像出力部30から入力された先端検出信号に同期して、画像取得部10の信号処理部14からの赤,緑,青の画像データR,G,Bに所定の画像処理を施した後、Y,M,C,Kの画像形成データ(たとえばオンオフ2値化トナー信号)を得、画像処理済みのY,M,C,Kの各色の画像形成データを順次一定間隔(いわゆるタンデムギャップ分)をおいて画像出力部30に入力する。
画像出力部30においては先ず、潜像形成用の光源としての半導体レーザ38Yは、画像処理部20からのイエロー(Y)の画像形成データによって駆動されることで、イエローの画像形成データを光信号に変換し、この変換されたレーザ光をポリゴンミラー39に向けて照射する。このレーザ光は、さらに反射ミラー47Y,48Y,49Yを介して一次帯電器33Yによって帯電された感光体ドラム32Y上を走査することで、感光体ドラム32Y上に静電潜像を形成する。
この静電潜像は、イエローのトナーが供給される現像器34Yによってトナー像とされ、このトナー像は、転写ベルト43上の用紙が感光体ドラム32Yを通過する間に転写帯電器35Yによって用紙上に転写される。そして転写後は、クリーナ36Yによって感光体ドラム32Y上から余分なトナーが除去される。
M,C,Kの各色についてもY色と同様にして、感光体ドラム32M,32C,32K上に静電潜像が順次形成される。この各静電潜像は、各色のトナーが供給される現像器34M,34C,34Kによって順次トナー像とされる。各トナー像は、転写ベルト43上の用紙が対応する感光体ドラム32M,32C,32Kを通過する間に対応する転写帯電器35M,35C,35Kによって用紙上に順次転写される。このように、Y,M,C,Kの各色のトナー像が順次多重転写された用紙は、転写ベルト43上から剥離され、定着ローラ45によってトナーが定着されて、複写機の外部に排出される。
なお、画像出力部30の構成は上述したものに限らず、たとえば、中間転写ベルトを1つあるいは2つ備えた中間転写方式のものとしてもよい。
<<画像処理部の構成および作用>>
<第1実施形態>
図2は、上記構成のカラー複写装置1に設けられた画像処理部20の第1実施形態を説明するブロック図である。この第1実施形態の画像処理部20は、処理対象画像の全面に対する下地検知処理と同時並行的に、予め設定されている各々異なる下地検知量に対応した下地除去特性や下地除去量で個別に下地除去処理を行なって、各々出力用(低ビット数)にデータ変換してから所定の記憶媒体に記憶しておき、下地検知量が確定する全画像の取り込み完了時点で、実際に検知した信頼度の高い下地検知量に対応する系統の処理済みデータを記憶媒体から読み出して出力データとして画像出力部30に供給する点に特徴を有する。以下具体的に説明する。
第1実施形態の画像処理部20においては、その前段側である画像取得部10や通信手段90を介して接続された画像入力端末から比較的高ビット数(たとえば8〜10ビット)の画像データVinを取得する画像入力部120と、画像入力部120が取得した画像データVinを基に処理対象画像の下地レベル(地肌レベル)を検出する下地検知部140と、それぞれ異なる除去処理手法や除去量などを用いることで異なる態様の下地除去処理を行なう複数の機能ブロックを有する下地除去処理部420と、下地除去処理部420の処理済みデータを画像出力部30用のデータに変換する出力データ処理部720とを備えている。
また第1実施形態の画像処理部20は、出力データ処理部720で変換されたデータを入力データとして、下地除去処理部420における複数の下地除去処理に関わる機能ブロックのうちの何れかの処理結果を選択して出力する選択処理部840と、割付処理(N−UP)、電子ソート処理、あるいは回転処理などの画像に対しての加工操作である画像編集処理を行なう画像操作処理部880とを備えている。なお、画像編集処理としての割付処理(N−UP)、電子ソート処理、あるいは回転処理は、画像に対しての加工操作の一例であって、これら以外にも様々な加工操作を行なうことが可能である。
選択処理部840が選択した処理済み画像データVoは、後段の画像出力部30に渡される。また、必要に応じて一旦画像操作処理部880に渡されて、電子ソートや回転などの画像編集処理が加えられた後に画像出力部30に渡される。なお、画像操作処理部880による画像操作は、選択ブロックで選択された画像のみに対して行なう。
出力データ処理部720は、下地除去処理部420にて下地除去処理された処理済みのカラー画像用データY,M,C,Kを入力データとして、画像出力部30が適用可能はビット数の出力データVoを生成する。たとえば、各々にスクリーン処理をかけた2値化データ(1ビットのデータ)もしくは数ビットの(入力画像データのビット数より低い)多値化データを出力する。詳しくは後述するが、画像操作処理部880との組合せの観点では、記憶部850のメモリ容量を少なくするため、出力データ処理部720は、少なくとも2値化処理機能部を設ける構成とするのがよい。
選択処理部840は、下地検知部140の下地検知結果に基づいて、下地除去処理部420にてそれぞれ異なる態様で下地除去処理された複数の処理済み画像データVout の何れを選択すべきかを判定する選択判定部844と、下地除去処理部420にて各々異なる態様で下地除去処理された複数の処理済み画像データVout を記憶するSDRAMやハードディスク装置など所定の記憶媒体を有する記憶部(メモリ)850とを有している。
選択判定部844は、何れの処理済み画像データVout を選択すべきかを判定したら、記憶部850に記憶されている複数の処理済み画像データVout の中から、対応するデータを出力画像データVoとして選択して画像出力部30に渡すように、記憶部850の読出動作を制御する。なお、記憶部850の読出動作を制御することで1つのデータを出力させる構成に代えて、記憶部850の後段に選択回路を設け、この選択回路に記憶部850からの複数系統の処理済み画像データVout を入力して、その中から1つのデータ系統を出力させる構成としてもよい。
なお、画像入力部120と下地除去処理部420との間には、図中点線で示すように、変倍処理、色変換処理(RGBデータ→Labデータ→YMCKデータなど)、コントラスト調整(濃度調整)処理、色補正処理、フィルタ処理などの所定の画像処理(前処理)を下地除去処理に先立って行なう前処理部160を設けてもよい。前処理部160における、これら前処理自体の詳細については、従来のものと同様であるため、ここではその説明を割愛する。
ここで、第1実施形態の特徴部分として、先ず、下地検知部140と下地除去処理部420は、下地検知速度を重視した処理(即時性に優れた下地検知処理と下地除去処理)ではなく、下地検知性能や下地除去性能を重視した処理を行なう点に第1の特徴を有する。すなわち、画像入力部120が取り込んだ原稿画像の地色情報を、検知速度を重視してではなく、低速ではある(地色情報の取得に時間が掛かる)けれども、信頼度の高い下地情報の確定値を用いた下地検知処理を実行する点に特徴を有する。
ここで、信頼度重視の下地検知手法としては、下地成分(地肌濃度)のライン変動のない検知ものである限り、公知の様々な手法を使用することができる。典型例としては、ヒストグラム下地検知手法を利用するのがよい。たとえば、下地検知部140は、信頼度の高い下地検知処理として、原稿全面に対するヒストグラム下地検知を行なう全面ヒストグラム検知部142を有する構成とする。
なお、一般には、ヒストグラム検知は精度重視の検知手法、リアルタイム検知は速度重視の検知手法とも言われることがあるが、本実施形態では、後述する第3実施形態を踏まえて、ヒストグラム検知は信頼度重視の検知手法、リアルタイム検知は速度重視の検知手法として用いることとする。
また、第2の特徴として、下地除去処理部420は、除去処理手法そのものは共通するが、それぞれ異なる下地検出量DAH(Data of All Histogram ;本例ではDAH1〜7)に対する下地除去量(閾値;本例ではTh1〜7)を決めておき個別に下地除去処理を行なう複数の機能ブロックを有している。図示した例では、第1〜第7の下地除去処理部(各々を421,422,…,427とする)を有している。
また、下地除去処理部420は、下地検出量DAH1〜7を下地除去処理部421〜427に設定する検出レベル設定部430を有している。この検出レベル設定部430が設定する検出レベルは、固定とするのではなく、図示しないユーザインタフェースを介して適宜変更可能にするのがよい。
また、下地除去処理部420内の個々の機能ブロックに対応して、出力データ処理部720は、第1〜第7の出力データ処理部(各々を721,722,…,727とする)を有している。出力データ処理部721〜727は、下地除去処理部420にて個別に下地除去された処理済みデータを個別に2値化する2値化処理部として機能する。
また、出力データ処理部720内の個々の機能ブロックに対応して、記憶部850は、第1〜第7の記憶部(各々を851,852,…,857とする)を有している。なお、記憶部851〜857は、独立したメモリで構成してもよいし、共通のメモリを、領域を分けて使用することで実現してもよい。独立したメモリで構成すれば、書込みと読出しの制御は同時並行的に行なうことができるので、画素データの周期と同等のクロックを使用できる。一方、領域を分けて使用する構成の場合には、分けた領域に対しては書込みと読出しの制御を同時並行的に行なうことができないの、画素データの周期に対して領域分割分だけ高速のクロックを使用する必要がある。
処理済みデータVout が格納された記憶部850からDMA(Direct Memory Access)転送で画像出力部30へデータ転送する場合、転送モードとしては、1回のアドレス指定で複数のデータを纏めて連続的に転送するバースト転送モードを用いることで、データ転送時に逐一アドレスを指定するサイクルを実行する手間を省き、データ転送速度を向上させるのがよい。この場合、独立した記憶媒体を使用するか共有の記憶媒体を用いつつ領域分割で使用するかに拘わらず、下地除去処理部421〜427の系統ごとに処理済みデータVout を、記憶部850における、連続したアドレスに格納するようにする。
下地除去処理部420と出力データ処理部720との間には、図中点線で示すように、コントラスト調整(濃度調整)、色補正処理、フィルタ処理、TRC(Tone Reproduction Control)補正(階調補正)などの所定の画像処理(後処理)を行なう後処理部680を、下地除去処理部420の各機能ブロックに対応するように(下地除去処理部420の機能ブロックごとに)設けてもよい。後処理部680における、これら後処理自体の詳細についても、従来のものと同様であるため、ここではその説明を割愛する。
図3は、検出レベル設定部430により下地除去処理部421〜427に設定される検知レベル1〜7の一例を示した図表である。全面ヒストグラム検知部142により検知される下地検知量DAHに対応するように下地除去量(地肌除去値)Thを決めておく。
たとえば図3に示すように、下地検知量DAHが“0以上で10未満(以下、他の範囲についても、0〜10などと記す)”の場合には下地除去量Thを“12”とする検知レベル1、下地検知量DAHが“10〜20”の場合には下地除去量Thを“21”とする検知レベル2、下地検知量DAHが“20〜25”の場合には下地除去量Thを“27”とする検知レベル3、下地検知量DAHが“25〜30”の場合には下地除去量Thを“33”とする検知レベル4、下地検知量DAHが“30〜40”の場合には下地除去量Thを“45”とする検知レベル5、および下地検知量DAHが“40〜55”の場合には下地除去量Thを“60”とする検知レベル6というように、下地検出量に対する下地除去量Thを検出レベル設定部430にて予め定義しておく。ある閾値(例では55)を超えたら、地肌の無い原稿として、下地除去量(地肌除去量)Thを少なくする(検知レベル7とする)。
なお、この図3に示すものは一例であって、この検知レベル1〜7で定義される、下地検知量と下地除去量Thとの対応付けは、実体に即して適宜変更すればよい。
下地除去処理部421は検知レベル1に基づく下地除去処理を行なう。同様に、下地除去処理部422〜427は、対応する検知レベル2〜7に基づく下地除去処理を行なう。
図4は、各下地除去処理部421〜427が行なう下地除去処理の一例を説明する図である。図において、縦軸は数値が大きくなるほど高濃度(黒)になる処理済み画像データVout の画素値(出力画素値)であり、横軸は入力画像データVinの画素値(入力画素値)である。
下地除去処理部421〜427は、画像入力部120が取り込んだ画像データVinに対して、たとえばその値が検出レベル設定部430から通知される下地除去量Th1〜7(以下纏めてTh0という)より小さければ、後段に出力する画像データVout の値が“0”となるように変換することを基本としつつ、階調段差の防止を図ることのできる下地除去処理を実行する。
これは、入力画素値と閾値(下地除去量Th)とを比較し、下地検出量DAHが閾値以下ならば“白地(0)”とする操作を単純に行なうと、閾値を境に急激に地肌濃度が変化する(階調段差が生じる)ため、たとえば新聞や青図など、地肌濃度むらの大きい原稿の場合、除去しきれないエッジやノイズが現れる。そこで、閾値以下の下地検出量を単純に下地(地肌)として除去するのではなく、閾値の手前から徐々に濃度を下げるようにすることで違和感を低減させる。
具体的には、先ず、下地除去処理部421〜427は、検出レベル設定部430から設定される下地除去量Th0を図示しない下地除去量レジスタに設定する。そして、下地除去量レジスタの値DAH0を“2”の補数に変換し、その変換後の値を入力された画像データVinの値(図4中の線分L1)に加算し、その加算結果Vadd (=Vin−DAH0)が負であれば、変換画像データVconvの値を“0”に丸める。
また、入出力特性を徐々に変化させるために、その入出力特性に傾きGammaを設ける。たとえば入力画像データVinのビット数が8ビットの場合、たとえば傾きGammaを“3”とするべく、その加算結果Vadd を3倍して(図4中の線分L2)、その値が“255”以上であれば、変換画像データVconvの値を“255”に丸める。その後、これにより得られた変換画像データVconv値と入力画像データVinの値とを比較し、何れか小さい方を処理済み画像データVout として出力する。なお、傾きGammaは“3”に限らず、“5”やその他の値にしてもよい。傾きGammaは任意に可変できるようにするのがよい。
この結果、下地除去処理部421〜427は、図4に太い線分L3で示すように、入力された画像データVinが下地除去量Th0以下は全て、処理済み画像データVout を“0”とし、画像データVinが下地除去量Th0から1.5倍の下地除去量Th0の部分までは線分L2に従った値を処理済み画像データVout とし、1.5倍の下地除去量Th0の部分以降(線分L1とL2の交点Z以降)は入力された画像データVinをそのまま理済み画像データVout とする。
下地除去処理部421〜427には、検出レベル設定部430からそれぞれ異なるレベルの下地検出量DAH1〜7に対応した下地除去量Th1〜7が与えられている。このため、各下地除去処理部421〜427は、それぞれ異なった下地除去量Th1〜7で下地除去処理を行なうので、同一の入力画像データVinに対して異なった特性(品質)の下地除去処理を行なうことになる。
図5は、第1実施形態における下地除去機能を説明するタイミングチャートである。画像入力部120は、画像取得部10などからデータを取り込み下地検知部140と下地除去処理部420に渡す(t10〜t12)。
下地検知部140の全面ヒストグラム検知部142は、画像取込後、所定時間遅れてから、ヒストグラム検知処理を利用して、画像入力部120から渡された処理対象画像の下地検知量(地肌濃度)の検出処理を開始する(t11〜t13)。すなわち、1ページ分の全画素データを処理対象として、ヒストグラム解析することで、処理対象画像の下地検知量(地肌濃度)の確定値DAHを検知する。
たとえば、全面ヒストグラム検知部142は、読取りを開始してから順次得られる下地検知用の画素データ(その数は順次多くなる)に基づき、原稿の下地濃度分布のヒストグラムを作成し、そのヒストグラムの度数を高濃度側から調べて、所定度数を超えた最初の濃度エリアに基づいて下地除去量DAHを確定する。このとき、下地検知(その1)で示すように、先ずラインごとに地色情報(濃度情報)を検出し、このラインごとの地色情報に基づきそれまでに取得してある全ライン分についてヒストグラム解析する。これを原稿全面分の全ライン分が完了するまで繰り返すことで下地除去量DAHを順次収束させていく。このように、読取りの都度ヒストグラム解析を行なうリアルタイム検知の性質を持つことで、原稿全面の画像データが得られてから下地除去量DAHの確定値が得られるまでの時間を短縮する。
なお、このような下地検知(その1)の手法で原稿全面の画像データが得られる以前に取得される未確定の下地検出量DTH(Data of Top Histogram )に基づき下地除去処理することも可能である。この場合、下地除去量DAHの確定値を取得するまでは、下地検知(その1)の下地検知の手法は、リアルタイム下地検知として取り扱うこともできる。ただし、ヒストグラム解析を伴わない一般的なリアルタイム下地検知の手法である、ライン単位で下地検知量を都度確定させる手法に比べると、ヒストグラム解析を行なう分だけ処理時間が掛る。この点では、速度重視の下地検知よりも信頼度重視の下地検知の性質の方が強いと考えてよい。
ここで、処理対象画像がグラディエーションを持った多階調画像の場合であって明度情報が多様に変動するような場合やラインのほぼ全体まで画像が記録されている原稿の場合、図5(B1)に示すように、下地検知用の画素データ(たとえば明度情報L)にバラ付きが生じる。たとえば、ラインのほぼ全体に黒画像があるとこの黒画像の濃度を下地検知用の画素データと判定する。画像がないラインでは原稿の下地情報を下地検知用の画素データと判定する。また原稿の下地情報よりも濃度の薄い画像(白画像)がライン全体にあるとその薄い画像の濃度を下地検知用の画素データと判定する。
このため、たとえば、原稿先端部まで画像が記録されている原稿の場合、下地検知用の画素データのバラ付きの影響を受けるので、読取開始直後は、検知した下地除去の閾値TLは必ずしも下地除去に適したものとならない。つまり、原稿全面をヒストグラム処理の対象とする以前(特に先端側)では、読取りの都度、ヒストグラム解析して得た下地検知量を基準に下地除去量(閾値)を設定して下地除去を行なうと下地除去性能が劣る。
一方、読取りが進んで下地検知用の画素データの数が順次多くなると、画像のないラインの数が漸次増え、黒画像や白画像があるラインによる影響が緩和される。したがって、原稿先端部まで画像が記録されている原稿の場合、読取りが進むに連れて、下地検知量や下地除去の閾値TL(すなわち下地除去量Th)が収束されていく。原稿全体の読取りが完了する近傍では、下地検知量は安定した状態となる。
つまり、画像の全面をヒストグラム検知処理の対象とすることで、処理対象画像がグラディエーションを持った多階調画像の場合であって、明度情報が多様に変動するような場合などであっても、最終的には、下地検知量DAHを信頼度よく取得できる(図5(B2)参照)。
なお、上記説明では、下地検知(その1)で示すように、読取りの都度ヒストグラム解析を行なうようにしていたが、これに限らず、下地検知(その2)で示すように、1ページ分の画像データを一旦ページメモリに格納し、その後1ページ分の全画像データを読み出してヒストグラム解析することで、原稿の下地情報(地肌濃度)の確定値(下地検出量)DAHを検知するようにしてもよい。
ただしこの場合には、前述の下地検知(その1)に比べて、全面の画像データが得られてから下地除去量DAHの確定値が得られるまでの時間が掛り、結果として、出力指令を発してから1枚目の出力物が排出されるまでの処理時間FCOT(First Copy Out Time )が長くなる。また、1ページ分の画像データを一旦ページメモリに格納すると、従来技術の項で指摘したようにメモリ容量が増える。よって、この場合、ライン単位で下地情報を検知して、その下地情報をメモリに記憶することでメモリ容量を低減し、ライン単位の下地情報についてヒストグラム解析するのがよい。
下地除去処理部421〜427は、下地検知部140が行なう下地検出処理と並行して、入力された同一の画像データに対して、予め決めておいた各々に設定されている検知レベル1〜7に対応した除去特性(下地除去量Th)で同時並行的に下地除去処理を実行し、処理済みデータを出力データ処理部720の対応する機能ブロックに渡す(t11〜t13)。
出力データ処理部720の各出力データ処理部721〜727は、下地除去後の各画像を2値化処理し選択処理部840に渡す。選択処理部840は、処理済みデータを記憶部850の対応する記憶部851〜857に格納する。
選択判定部844は、全面ヒストグラム検知部142による信頼度重視の下地検出量DAHが確定した段階(t13)で、図3に示した対応付け(検知レベル1〜7)に従って、下地除去処理部421〜427のうちの、実際に取得された下地検出量DAHに対応する下地除去量Thで下地除去を行なった処理系統を決める。この点では下地除去処理部421〜423の処理系統は、全面ヒストグラム検知部142と間接的にリンクしている。
また、選択判定部844は、記憶部850の読出動作を制御することで、確定した処理系統の下地除去済みデータを選択して出力データとして後段の画像出力部30に渡す(t14〜t15)。
このように、第1実施形態では、全面ヒストグラム検知部142による下地検知と並行して、予め定めてあるそれぞれ異なる複数の下地検知レベルに対応した下地除去処理および2値化処理を下地除去処理部420および出力データ処理部720の全ての機能ブロックにて実行して記憶部850に格納しておくようにした。
これにより、信頼度の高い下地除去処理を行なうことができるヒストグラム検知を採用した場合であっても、プリスキャンを要しないので高速に下地情報(地肌濃度)を検出でき、出力指令を発してから1枚目の出力物が排出されるまでの処理時間FCOTを短縮することができる。従来のヒストグラム検知を利用した下地除去処理では、プリスキャンを必要としていたのとは大きく異なる。
また、予め定めた検知レベルで画像の全体に対して下地除去処理するので、下地検出量が変動することによる下地除去量の変動に起因した画質劣化を防止することもできる。
また、下地除去処理部420にて下地除去された処理済みデータを出力データ処理部720にて2値化してから記憶部850に格納するようにしたので、下地検知部140での地肌検知処理が終わるまで、多値画像データを残しておく必要がなく、メモリ容量を低減できる可能性がある。ここで、「可能性がある」といったのは、下地検知のためのメモリを要しないものの、下地除去処理部420による処理済みデータ用のメモリが必要であり、下地除去処理部420に設ける個々の機能部の数との兼ね合いが生じるからである。
すなわち、ヒストグラム検知を採用した場合、下地検知性能自体は信頼度が高い。この信頼度の高い下地検知量に1対1に対応して下地除去量Thを設定すれば、信頼度の高い下地除去処理が実現できる。しかしながら、この第1実施形態では、予め設定した段階的な検知レベルごとに、対応する個々の下地除去処理部420(前例では421〜427)にて下地除去処理を行なうので、結果的には、下地検知部140にて高信頼度に検出された下地検知量DAHに対する近似値にて下地除去処理された結果が画像出力部30に渡される。
よって、段階数(すなわち下地除去処理部420内の個々の機能部の数)が少なければ、下地検知部140にて検出された高信頼度な下地検知量DAHとの乖離が大きくなるケースが増えるので、下地除去性能が低下し得る。
この点では、第1実施形態の構成においては、下地除去性能と下地除去処理部420による処理済みデータ用のメモリ容量とのバランスを考慮して、検出レベルの段階数を決め、それに応じて下地除去処理部420や出力データ処理部720の機能ブロック数を設定するのがよい。ある程度の下地除去性能を維持しようとすれば、2〜3程度では不十分であり、図2および図3に示したように、段階数を比較的多くせざるを得ない。
なお、上記第1実施形態では、下地除去処理部420にて下地除去処理された処理済み画像データVout に対して出力データ処理部720にて2値化処理をしてから記憶部850に格納していたが、2値(すなわち1ビット)にすることに限らず、2あるいは3程度の多値データにしてもよい。この場合、画像出力部30も、多値データに応じた印字処理を行なう構成のものを使用する。
<第2実施形態>
図6および図7は、図1に示した構成のカラー複写装置1に設けられた画像処理部20の第2実施形態を説明するブロック図である。この第2実施形態の画像処理部20は、処理対象画像の先端側(副走査方向の)に対する下地検知処理と同時並行的に、第1実施形態と同様に、予め設定されている各々異なる下地検知量に対応した下地除去特性や下地除去量Thで個別に下地除去処理を行なって、各々出力用(低ビット数)にデータ変換してから所定の記憶媒体に記憶しておき、下地検知量が確定する全画像の取り込み完了時点で、実際に検知した下地検知量に対応する系統の処理済みデータを記憶媒体から読み出して出力データとして画像出力部30に供給する点に特徴を有する。
つまり、この第2実施形態は、下地検知処理の対象が先端側に着目している点で第1実施形態と異なるが、その他の点は、ほぼ第1実施形態と同様である。以下、具体的に説明する。
第2実施形態の画像処理部20における特徴部分として、先ず、下地検知部140と下地除去処理部420は、画像入力部120が取り込んだ原稿画像の先端側(たとえば原稿先端から中間点まで)について、その地色情報を、検知速度を重視してではなく、低速ではある(取得に時間が掛かる)信頼度の高い下地情報の確定値を用いた下地検知処理を実行する点に第1の特徴を有する。
ここで、下地検知部140は、信頼度の高い下地検知処理として、原稿先端側に対するヒストグラム下地検知を行なう先端ヒストグラム検知部144を有する構成とする。このヒストグラム下地検知は、検知速度を重視した下地検知処理の一例であるリアルタイム下地検知に比べて、検知信頼度がよい。ただし、全面ヒストグラム検知部142とは異なり、処理対象範囲を原稿の先端側に着目しているので、全面ヒストグラム検知部142よりは信頼度が低下する可能性を否定できない。
先端ヒストグラム検知部144が検知対象とする原稿先端部の範囲は、後述する先端リアルタイム検知部148が検知対象とする原稿先端部の範囲よりも広くするのが好ましく、たとえば、原稿のほぼ中間点位までを検知対象範囲とするのがよい。先端側に着目しつつ、検知対象範囲をある程度広く取ることで、検知信頼度を、全面ヒストグラム検知部142の検知信頼度と同等レベルにすることができる。
また第2の特徴として、下地検知部140にて先端側での下地検出値DTHが確定したら、選択判定部844は、何れの処理済み画像データVout を選択すべきかを判定する。そして、その判定結果を示す制御情報SELを、下地除去処理部420と出力データ処理部720に通知する。そして、この選択が確定したら、該当しない他の処理部に対しては処理を停止するように命令する。
これにより、下地除去処理部420は、下地検出値DTHが確定した時点以降は、その下地検出量DTHに対応する下地除去量Thでの下地除去処理を行なう機能ブロックのみにて地肌除去を行ない、対応する出力データ処理部720の機能ブロックにて2値化処理を原稿の終わりまで続ける。該当しないその他の機能ブロックの動作は停止させる。このように、無駄な処理系統の動作を停止させることで消費電力の低減を図る。
なお、下地検出値DTHが確定した時点以降も、下地除去処理部420と出力データ処理部720の全ての機能ブロックを動作させたままで、記憶部850へのデータ格納のみを該当する1系統のみにしてもよい。この場合、選択判定部844は、何れの処理済み画像データVout を選択すべきかの判定結果を示す制御情報SELを、下地除去処理部420と出力データ処理部720に通知する必要はなく、記憶部850の書込動作を制御すればよい。
なお、選択処理部840においては、メモリの格納形態の側面から、2つの構成を採り得る。たとえば、図6に示す例では、第3の特徴として、出力データ処理部720内の個々の機能ブロックに対応して、下地除去処理部421〜427の各々から出力される処理済み画像データVout を記憶する第1〜第7の記憶部(各々を851,852,…,857とする)を有するとともに、下地検出値DTHが確定した時点以降の1つの処理系統の処理済み画像データVout を記憶する後半部記憶部859を有する。
選択判定部844は、記憶部851〜857に記憶されている下地検出値DTHの確定時点以前の複数の処理済み画像データVout の中から対応するデータを選択するとともに、後半部記憶部859に記憶されている確定時点以降の処理済み画像データVout と接続し、出力画像データVoとして画像出力部30に渡すように、記憶部850の読出動作を制御する。
一方、図7に示す例では、後半部記憶部859を備えておらず、第1実施形態の記憶部850と同様の構成となっている。この場合、記憶部851〜857のうちの何れか1つのみが下地検出値DTHの確定時点以前と確定時点以後の処理済み画像データVout を格納するが、その他のものは、確定時点以前の処理済み画像データVout だけしか格納しない(後述する図8(B)参照)。
選択判定部844は、第1実施形態と同様に、記憶部851〜857に記憶されている複数の処理済み画像データVout の中から対応するデータを選択し、出力画像データVoとして画像出力部30に渡すように、記憶部850の読出動作を制御する。
図8は、第2実施形態において、記憶部850に格納される画像データの態様(メモリの中身)を説明する図である。
ここで、図8(A)は、図6に対応したもので、特に、処理対象画像に拘らず、確定時点を予め一定の値に設定しておく場合に好適な事例である。線画など、グラディエーションを持たない、もしくは、明度情報の変動が小さいグラディエーションを持った多階調画像を処理対象とする場合に適用するのがよい。
確定時点を予め一定の値に設定すれば、確定時点以前の画像データの容量を固定とすることができる。このため、図8(A)に示すように、確定時点以前において、検知レベル1〜7に対応した下地除去処理部421〜427により下地除去された後の2値化データ(処理済み画像データVout )を隙間なく詰めて格納することができる。加えて、確定時点以後の下地除去量の確定値DAHに対応した下地除去処理部421〜427の何れか(図の例では下地除去処理部422の系統)により下地除去された後の2値化データ(処理済み画像データVout )を、さらに隙間なく詰めて格納することができる。
こうすることで、確定時点以前の下地除去処理部421〜427の系統ごとの処理済みデータVout と、確定時点以後の処理済みデータVout とを、記憶部850における、連続したアドレスに格納することができ、記憶部850からDMA転送で画像出力部30へデータ転送する場合に、1回のアドレス指定で複数のデータを纏めて連続的に転送するバースト転送モードを用いることで、データ転送速度を向上させることができる。加えて、メモリの断片化を防止できる利点もある。
一方、図8(B)は、図7に対応したもので、特に、確定時点がダイナミックに切り替わる場合に好適な事例である。この場合、処理対象画像に応じて確定時点が変動し得るので、確定時点以前の処理済み画像データVout の容量を固定としておくことができない。そこで、記憶部851〜857に確保する容量は原稿全面分とする。
そして、下地検出値DTHの確定値が得られるまでは、全ての記憶部851〜857に、対応する下地除去処理部421〜427の系統の処理済み画像データVout を先ず格納し、下地検出値DTHの確定値が得られた段階で、この確定時点以後の下地除去量の確定値DTHに対応した下地除去処理部421〜427の何れかにより下地除去された後の2値化データ(処理済み画像データVout )を、対応する記憶部851〜857のうちの何れか1つ(該当記憶部という;図の例では記憶部852)にのみ格納する。
このため、記憶部851〜857のうちの該当記憶部を除くもの(格納領域)には、確定時点以後の分の空きスペースが生じ、メモリの断片化が生じる。しかしながら、画像出力部30へ出力すべき処理系統の選択という観点では、第1実施形態と同様に、記憶部851〜857の何れかを選択するだけでよく、簡易である。勿論、バースト転送モードを用いることもできる。
図9および図10は、第2実施形態における下地除去機能を説明するタイミングチャートである。ここで、図9は図6に対応したものであり、図10は図7に対応したものである。先ず、図6に対応した図9に基づいて説明し、図9と図7に対応した図10との相違点については後で説明する。
画像入力部120は、画像取得部10などからデータを取り込み下地検知部140と下地除去処理部420に渡す(t20〜t23)。
下地検知部140の先端ヒストグラム検知部144は、画像取込後、所定時間遅れてから、ヒストグラム検知処理を利用して、画像入力部120から渡された処理対象画像の下地情報(地肌濃度)の検出処理を開始する(t21〜t22)。ここで、先端ヒストグラム検知部144は、1ページ分のうちの先端側の画素データを処理対象として、ヒストグラム解析することで、処理対象画像の下地情報(地肌濃度)の確定値DTHを検知する。
たとえば先端ヒストグラム検知部144は、全面ヒストグラム検知部142と同様に、読取りを開始してから順次得られる下地検知用の画素データ(その数は順次多くなる)に基づき、原稿の下地情報分布のヒストグラムを作成し、そのヒストグラムの度数を高濃度側から調べて、所定度数を超えた最初の濃度エリアに基づいて下地除去の閾値TLを地色画像データDTHと確定する。このとき、先ずラインごとに地色情報(濃度情報)を検出し、このラインごとの地色情報に基づき下地除去の閾値TLを収束させていく。
なお、全面ヒストグラム検知部142とは異なり、画像の全面ではなく副走査方向の先端側に着目してヒストグラム検知処理の対象とするので、処理対象画像がグラディエーションを持った多階調画像の場合であって、明度情報が多様に変動するような場合には、収束が遅くなるので、先端側で検知処理を止めてしまうと(t22)、その時点で取得した下地検知量DTHの検知信頼度が低下する可能性がある(図9(B)参照)。
一方、線画など、グラディエーションを持たない、もしくは、明度情報の変動が小さいグラディエーションを持った多階調画像の場合には、収束がある程度早まるので、先端側で検知処理を止めてしまっても(t22)、その時点で取得した下地検知量DTHの検知信頼度は比較的良好と考えてよい(図9(C)参照)。
選択判定部844は、下地検知部140による信頼度重視の下地検出量DTHが確定した段階(t22)で、下地除去処理部421〜427のうちの、その下地検出量DTHに対する下地除去量Thで下地除去を行なった処理系統を決め、判定結果を示す制御情報SELを下地除去処理部420と出力データ処理部720に通知する。
下地除去処理部421〜427は、下地検知部140が行なう下地検出処理と並行して、入力された同一の画像データに対して、予め決めておいた各々に設定されている検知レベル1〜7に対応した除去特性(下地除去量Th)で同時並行的に下地除去処理を実行し、処理済みデータを出力データ処理部720の対応する機能ブロックに渡す(t21以降、最長でt24まで)。
出力データ処理部720の各出力データ処理部721〜727は、下地除去後の各画像を2値化処理し選択処理部840に渡す。選択処理部840は、処理済みデータを記憶部850に格納する(t21以降、最長でt24まで)。
ここで、下地除去処理部421〜427および出力データ処理部721〜727は、選択判定部844からの制御情報SELに基づき、下地検出値DTHが確定した時点以降は、下地除去処理部421〜427のうちの確定された下地検出量DTHに対応する下地除去量Thでの下地除去処理を行なう機能ブロックのみが動作して地肌除去を行ない、また出力データ処理部721〜727のうちの対応する機能ブロックのみが動作して2値化処理を行ない、処理済み画像データVout を後半部記憶部859に格納する(t22〜t24)。
たとえば、図9(A)に示すように、原稿先端側(たとえば原稿中間点まで)での下地検知により、時点t22にて、下地検出値DTH2が確定値(検知レベル2に相当)として得られた場合、確定時点t22までは、全ての下地除去処理部421〜427および出力データ処理部721〜727が動作して、対応する記憶部851〜857に処理済み画像データVout を格納する(t21〜t22;データ格納852参照)。そして、確定時点t22以降は、検知レベル2に対応した下地除去処理部422および出力データ処理部722のみが動作し、その処理済み画像データVout を後半部記憶部859に格納する(t22〜t24;データ格納859参照)。
選択判定部844は、下地検知部140による信頼度重視の下地検出量DTHが確定した段階(t22)で、記憶部850の読出動作を制御することで、記憶部851〜857に記憶されている下地検出値DTHの確定時点以前の複数の処理済み画像データVout の中から対応するデータを選択するとともに、後半部記憶部859に記憶されている確定時点以降の処理済み画像データVout と接続し、出力画像データVoとして画像出力部30に渡す(t22〜t25)。
一方、図7に対応する図10においては、確定時点t22までは、全ての下地除去処理部421〜427および出力データ処理部721〜727が動作して、対応する記憶部851〜857に処理済み画像データVout を格納する(t21〜t22;確定時点以前を参照)。そして、確定時点t22以降は、検知レベル2に対応した下地除去処理部422および出力データ処理部722のみが動作し、その処理済み画像データVout を、記憶部851〜857のうちの対応するもののみに格納する(t22〜t24;確定時点以降を参照)。
選択判定部844は、下地検知部140による信頼度重視の下地検出量DTHが確定した段階(t22)で、下地除去処理部421〜427のうちの、その下地検出量DTHに対する下地除去量Thで下地除去を行なった処理系統を決める。また、選択判定部844は、記憶部850の読出動作を制御することで、確定した処理系統の下地除去済みデータを選択して出力データとして後段の画像出力部30に渡す(t22〜t25)。
このように、第2実施形態では、先端ヒストグラム検知部144による下地検知と並行して、予め定めてあるそれぞれの下地検知レベルDTHに対応した下地除去処理および2値化処理を下地除去処理部420および出力データ処理部720の全ての機能ブロックにて実行して記憶部850に格納しつつ、先端ヒストグラム検知部144での原稿先端側に着目しての下地検知処理にて確定値DTHが取得された時点(画像の途中)で、該当する1つの処理系統のみの動作に変更するようにした。
これにより、第1実施形態と同様の効果を享受できるとともに、第1実施形態よりも、メモリ容量を低減できる。また、下地検知量DTHの確定値を取得する以前と以後とを隙間なく埋めて処理済み画像データVout を格納する図7に示すメモリ構成とすることで、メモリの断片化を防止することもできる。
また、記憶部851〜857の全てに原稿全面分の容量を割り当てる図7に示すメモリ構成とすることで、下地検知量DTHの確定値を取得する時点を処置対象画像に応じて動的に切り替えることができる。たとえば、ライン情報が得られる都度、それ以前の全ラインの情報を用いてヒストグラム解析して下地検知量DTHを取得しつつ、その変動幅を監視し、変動幅が所定量以下となったときに下地検知量DTHを確定させることができる。
これにより、原稿の先端側に着目してヒストグラム検知処理の対象とする場合に、明度情報が多様に変動するような場合であって収束が遅くなるケースでも、収束の具合に応じて確定時点を動的に調整することで、確定時点を固定とする場合に生じ得る下地検知量DTHの検知信頼度の低下を防止できる。
また、線画など、グラディエーションを持たない、もしくは、明度情報の変動が小さいグラディエーションを持った多階調画像の場合には、収束がある程度早まるので、早期に下地検知量DTHの確定値を取得できる。これにより、確定時点以前に全ての記憶部851〜857に処理済み画像データVout を格納する期間を短くすることで、メモリ容量を低減することもできる。つまり、下地検知性能や下地除去性能とメモリ使用容量とのバランスを動的に採ることができる。
<第3実施形態>
図11および図12は、図1に示した構成のカラー複写装置1に設けられた画像処理部20の第3実施形態を説明するブロック図である。この第3実施形態の画像処理部20は、第1実施形態の構成に、下地検知速度を重視した処理(即時性に優れた下地検知処理と下地除去処理)を行なう処理系統を追加している点に特徴を有する。
すなわち、画像入力部120が取り込んだ原稿画像の地色情報を、低速ではある(地色情報の取得に時間が掛かる)けれども、信頼度の高い地色情報(下地情報)の確定値を用いた下地検知処理や下地除去処理と、即時性に優れた下地検知処理や下地除去処理とを併用し、信頼度の高い地色情報(下地情報)の確定値が得られた段階で、所定の条件に基づいて決定した処理系統の処理済み画像データVout を出力データVoとして画像出力部30に渡すようにした点に特徴を有する。
具体的には、図11に示すように、第3実施形態の下地検知部140は、信頼度の高い地色情報を検知可能な処理の一例であるヒストグラム下地検知の方式により原稿の下地情報(地肌濃度)を検知する全面ヒストグラム検知部142もしくは先端ヒストグラム検知部144(図では全面ヒストグラム検知部142を使用する例で示している)と、即時性に優れた下地検知処理の一例であるライン単位のリアルタイム下地検知の方式により原稿の下地情報(地肌濃度)を検知する先端リアルタイム検知部148とを備える。
リアルタイム下地検知を原稿先端側のみに着目しているのは、原稿先端に濃度の高い画像が集中している場合であっても、原稿先端側での高濃度の下地情報(地肌濃度)を確実に除去しつつ、主要な情報が存在する可能性の高い原稿中央部で下地検出量が変動することによる下地除去量の変動に起因した画質劣化を防止するためである。
速度重視の下地検知手法の一例であるリアルタイム下地検知としては、ライン単位で下地情報(地肌濃度)を取得するものである限り、公知の様々な手法を使用することができる。たとえば、特開平7−13399号公報や特開平7−322069号公報などに記載の手法を利用することができる。特に、ライン単位で下地成分(地肌濃度)を読み取る際に、ラインを複数のブロックに分割し、この複数のブロックごとに下地成分の最大値を検出するとともに、1ライン中の各ブロックで検出した最大値の中の最小値をラインの下地成分とする、特開平7−322069号公報に記載の手法を利用すると、細かいノイズに影響されず検出値の変動を防止できるので好ましい。
また、特開平7−322069号公報に記載のように、複数のブロックの大きさを任意に設定する、ラインの下地検知量に従って、現ラインの下地検知量を補正する、前ラインからの下地検知量の変化量を規制するよう変化量制限範囲を設ける、変化量制限範囲を処理ラインに応じて漸次小さくする、変化量制限範囲を任意の処理ラインで“0”とする、原稿の両側に原稿外参照を防止するために不感領域を設けるなどの手法も適用すれば、さらに好ましい。
一方、下地除去処理部420は、下地検知部140に先端リアルタイム検知部148を設けたことと対応して、先端リアルタイム検知部148にて得られた下地検知量DTR(Data of Top Real time )を参照しつつ、この下地検知量DTRに対応する下地除去量Th8を決めてリアルタイムに(ライン単位で画素データが得られる都度)下地除去処理を行なうリアルタイム下地除去処理部428を有している。
このリアルタイム下地除去処理部428の後段には、リアルタイム下地除去処理部428から出力された処理済み画像データVout8を入力データとして、スクリーン処理をかけた2値化データもしくは数ビットの多値化データを出力するRT(Real time )出力データ処理部728を有し、同様に、記憶部850は、RT出力データ処理部728から出力された処理済み画像データVout8を記憶するRT記憶部858を有している。
なお、全面ヒストグラム検知部142により得られる信頼度の高い下地検知量DAHに対応した下地除去処理を行なう処理系統としては、図示するように、3の系統が設けられている。第1実施形態と同様に、7つやその他の数の処理系統を設けるようにしてもよいのは言うまでもない。
また、リアルタイム検知として、原稿先端側の検知で処理を停止する先端リアルタイム検知部148を用いているが、全面に亘ってライン単位のリアルタイム下地検知を行なうようにしてもよい。
また、信頼度を重視するのか速度を重視するのかは相対的なものであり、たとえば図12に示すように、全面ヒストグラム検知部142や先端ヒストグラム検知部144(図では全面ヒストグラム検知部142で示している)を信頼度重視の処理系統として用いつつ、下地検知量DAH(もしくはDTH)の確定値が得られるまでは、ライン情報(ラインごとの画素データ)が入力される都度全面ヒストグラム検知部142にて取得される下地検知量DAH(もしくはDTH)をリアルタイム下地除去処理部428におけるリアルタイムの下地除去処理に使用する構成としてもよい。
図13は、第3実施形態の構成において、検出レベル設定部430により下地除去処理部421〜423に設定される検知レベル1〜3の一例を示した図表である。
基本的な考え方は第1実施形態と同様であるが、たとえば下地情報の濃いレベルを検知レベルに設定しておくようにする。具体的には、図13に示すように、下地検知量DAHが“30未満”の場合には下地除去量Thを“33”とする検知レベル1、下地検知量DAHが“30〜40”の場合には下地除去量Thを“45”とする検知レベル2、および下地検知量DAHが“40以上”の場合には下地除去量Thを“60”とする検知レベル3というように、下地検出量DAHに対する下地除去量Thを検出レベル設定部430にて予め定義しておく。
なお、この図13に示すものは一例であって、この検知レベル1〜3で定義される、下地検知量DAHと下地除去量Thとの対応付けは、実体に即して適宜変更すればよい。
下地除去処理部421は検知レベル1に基づく下地除去処理を行なう。同様に、下地除去処理部422,423は、対応する検知レベル2,3に基づく下地除去処理を行なう。
図14は、第3実施形態の選択判定部844の判定手法を説明する図である。第3実施形態の選択判定部844における判定手法においては、以下のような手法を採ることとする。先ず、先端リアルタイム検知部148により得られる下地検知量DTRをAEDATA1、全面ヒストグラム検知部142により得られる下地検知量DAHをAEDATA2とする。またC3〜C5を定数とする。なお、定数C3〜C5は、図13に示した検知レベルとリンクさせる必要がある。たとえばC4はD1に合わせ、C5はD4に合わせる。
そして、AEDATA1+C3<AEDATA2かつC5>AEDATA2>C4(C4=D1)を満たす場合は、図13に示した対応付け(検知レベル1〜3)に従って、下地除去処理部421〜423のうちの、全面ヒストグラム検知部142により実際取得された下地検知量DAHに対応する下地除去量Thで下地除去を行なった処理系統を選択する。この点では、下地除去処理部421〜423の処理系統は、全面ヒストグラム検知部142と間接的にリンクしている。
この選択条件の意義は、全面ヒストグラム検知部142により実際に取得された下地検出量DAHがある程度大きく、かつ先端リアルタイム検知部148により得られた原稿先端側での下地検知量DTRが、全面ヒストグラム検知部142により得られた原稿全面についての下地検知量DAHよりもある程度小さい場合には、図13に示した対応付け(検知レベル1〜3)に従って処理系統を選択することで、信頼度を重視した下地除去処理を実行することにある。
上記条件を満たさない場合はAEDATA1(下地検知量DTR)に基づいて先端リアルタイム検知部148が処理した処理済み画像データVout8を選択する。
図14を参照して、選択判定部844の判定手法を具体的に説明する。定数C3〜C5は、図13に示した検知レベルとリンクさせる必要がある。たとえばC4はD1に合わせ、C5はD4に合わせる。たとえば、C3=10、C4=25、C5=55である。
図15は、第3実施形態において、記憶部850に格納される画像データの態様(メモリの中身)を説明する図である。
本実施形態では、全面ヒストグラム検知部142にて下地検知量DAHの確定値が得られるのは、原稿全面についてのヒストグラム解析が完了した時点である。よって、記憶部851〜853,858に確保する容量は原稿全面分とする。
ここで、リアルタイム検知が失敗する場合、およびヒストグラム検知とリアルタイム検知の精度と信頼性について説明する。リアルタイム検知は、先端部分に黒い画像が集中したり(以下前者という)、たとえば、パンチ穴がある、原稿のすみが折れている、斜めにおいたりする場合などで、プラテンガラス(原稿載置台)が検知領域に入ったりする(以下後者という)と、下地検知(地肌検知)に失敗することがある。
前者は、検知量が一定値を超えると検知量が初期値に戻り(低い値)、下地除去量も少なくなる処理になっているためである。これは地肌の無い原稿は除去処理をしないようにするためである。黒画像が先端部に集中すると、下地検知量が一定値を超える。また後者では、プラテンガラスが検知領域に入ると、プラテンカバー裏側(バックプラテン)の白色を地肌と認識し、実際の原稿地肌より白く検知されるためである。しかし、ヒストグラム検知はこのような原稿(状態)であっても、検知が失敗することはないため、リアルタイム検知より信頼性が高いと言える。
次に精度の観点では、ヒストグラム検知は、ある程度の幅を持った領域に分割して、ヒストグラムを作成するため、誤差が入り込みやすい方式である。誤差は領域の幅に依存する。たとえば、画素単位にすると誤差はなくなるが、下地検知量を決めるパラメータの設定が難しくなり、下地量の答えが求まらないケースが発生する。
一方、リアルタイム検知は、検知に失敗することがあるが、ヒストグラムより誤差の少ない検知方法であると言える。失敗は、原稿の下地濃度が高い場合に多くなっている。たとえば、バックプラテンの色と濃度差が大きいほど失敗がに目立つ。
つまり、高く検知された場合は、リアルタイム検知は「失敗していない」かつ「誤差も少ない」という理由から、リアルタイム検知の結果を選択すればよいことになる。
また、速度に関しては、リアルタイム方式は、通常、処理遅延が1ラインであるが、ヒストグラムはある程度の画像領域を必要とするので、速度的にはリアルタイム方式が優位となる。
一般には、ヒストグラム検知は精度重視の検知手法、リアルタイム検知は速度重視の検知手法とも言われることがあるが、本実施形態では、上記を踏まえて、ヒストグラム検知は信頼度重視の検知手法、リアルタイム検知は速度重視の検知手法として用いることとする。
図16は、第3実施形態における下地除去機能を説明するタイミングチャートである。画像入力部120は、画像取得部10などからデータを取り込み下地検知部140と下地除去処理部420に渡す(t30〜t33)。
下地検知部140の全面ヒストグラム検知部142は、画像取込後、所定時間遅れてから、検知信頼度を重視したヒストグラム検知処理を利用して、画像入力部120から渡された処理対象画像の下地情報(地肌濃度)の検出処理を開始する(t31〜t34)。
また、下地除去処理部421〜423は、全面ヒストグラム検知部142が行なう下地検出処理と並行して、入力された同一の画像データに対して、予め決めておいた各々に設定されている検知レベル1〜3に対応した除去特性(下地除去量Th1〜3)で同時並行的に下地除去処理を実行し、処理済みデータを出力データ処理部720の対応する機能ブロックに渡す(t31〜t34)。
これと並行して、先端リアルタイム検知部148は、検知速度を重視して、ライン単位で下地レベルを検知する(t31〜t32)。なお、この先端リアルタイム検知部148による下地検知処理は、原稿先端側のt32の時点で終了させる。
先端リアルタイム検知部148は、検出した下地検知量DTRをその都度(ラインごとに)リアルタイム下地除去処理部428に通知する。リアルタイム下地除去処理部428は、この下地検知量DTRに対応する下地除去量Th8を決めてライン単位で画素データが得られる都度下地除去処理を実行し、処理済みデータを出力データ処理部720の対応するRT出力データ処理部728に渡す(t31〜t34)。
なお、先端リアルタイム検知部148は時点t32にて下地検知処理を停止させているので、リアルタイム下地除去処理部428は、t31〜t32の期間はその都度得られる下地検知量DTRに対応する下地除去量Th8に基づき、またt32〜t34の期間は、時点t32にて確定させた下地検知量DTRに対応する下地除去量Th8に基づき、それぞれ下地除去処理を実行することとなる。
出力データ処理部720の出力データ処理部721〜723,728は、下地除去後の各画像を2値化処理し選択処理部840に渡す。選択処理部840は、処理済みデータを記憶部850の対応する記憶部851〜853,858に格納する。
選択判定部844は、全面ヒストグラム検知部142による信頼度重視の下地検出量DAHが確定した段階(t34)で、図14を用いて説明した選択条件に従って、下地除去処理部421〜423,428のうちの、実際に取得された下地検出量DAHもしくは下地検出量DTRに対応する下地除去量Thで下地除去を行なった処理系統を決める。つまり、原稿全面ヒストグラム検知による下地検知量DAHと原稿先端リアルタイム検知による下地検知量DTRを、選択条件に従って比較し、どの処理系統の処理済み画像データVout を出力するべきかを確定する。
そして、選択判定部844は、記憶部850の読出動作を制御することで、確定した処理系統の処理済み画像データVout を選択して出力データとして後段の画像出力部30に渡す(t35〜t36)。
このように、第3実施形態では、高信頼度の下地検知が可能な全面ヒストグラム検知部142と高速の下地検知が可能な先端リアルタイム検知部148とを併用し、先端リアルタイム検知部148により得られる下地除去量DTRに基づきラインごとに下地除去処理と2値化処理を行いつつ、予め定めてあるそれぞれ異なる複数の下地検知レベルに対応した下地除去処理と2値化処理を実行して、それぞれの処理済み画像データVout を記憶部850に格納しておくようにした。そして、全面ヒストグラム検知部142による下地検知量の確定値が得られた段階で、何れの処理系統の処理済み画像データVout を使用するべきかを判定して出力するようにした。
これにより、基本的には、信頼度の高い下地除去処理を行なうことができるヒストグラム検知の処理系統を選択するようにすることで、下地成分の変動のない高品質な出力画像が得られる。先端側に濃度の高い画像が集中している場合に、先端リアルタイム検知部148の検知結果が全面ヒストグラム検知部142の検知結果よりも小さい場合には、全面ヒストグラム検知部142の検知結果に応じた処理系統を選択することで、従来の先端リアルタイム検知処理と除去処理で生じる画質劣化を防止できる。
加えて、原稿先端に濃度の高い画像が集中している場合であって、先端リアルタイム検知部148の検知結果が全面ヒストグラム検知部142の検知結果よりも大きい場合には、先端リアルタイム検知部148に応じた処理系統の処理済み画像データVout を選択することで、原稿先端側に高濃度の画像が集中している場合であっても、確実に下地を低減もしくは除去することができる。
先端リアルタイム検知部148による下地検知は、原稿先端側に限って行なっているので、先端リアルタイム検知部148による処理系統の処理済み画像データVout を使用した場合でも、原稿中央部では、下地検出量の変動がなく、下地検出量の変動や下地除去量の変動に起因した画質劣化を防止することができる。また、先端側に濃度の高い画像が集中していなければ、全面ヒストグラム検知部142に応じた処理系統を選択することで、下地成分の変動のない高品質な出力画像が得られる。
このように、先端リアルタイム検知処理とヒストグラム検知処理とを併用したことで、従来の先端リアルタイム検知処理と下地除去処理の単独使用や、従来のヒストグラム検知処理と下地除去処理の単独使用では改善し得なかった、先端側に濃度の高い画像が集中している場合の対処が可能になるので、本実施形態が果たす効果は大きい。
また、第1実施形態と同様に、プリスキャンを要しない下地除去処理を行なうことができる。また、原稿先端部に局所的な高濃度の下地情報(地肌濃度)が存在しなければ、信頼度の高い下地検知が可能な全面ヒストグラム検知部142の処理系統の処理済み画像データVout を使用することで、下地検出量が変動することによる下地除去量の変動に起因した画質劣化を防止することもできる。
また、第1実施形態と同様に、下地除去処理部420にて下地除去された処理済みデータを出力データ処理部720にて2値化してから記憶部850に格納するようにしたので、下地検知部140での地肌検知処理が終わるまで、多値画像データを残しておく必要がなく、メモリ容量を低減できる可能性がある。
また、ヒストグラム検知は、信頼性はあるがリアルタイムより誤差が入り易い処理である。リアルタイム検知は原稿地肌がある程度濃い原稿のときに失敗する場合が多くなっている。よって、原稿地肌が低い領域はリアルタイム検知に担当させても失敗はない上、誤差も少なくなる。結果的にメモリ容量が減る。
<第4実施形態>
図17は、図1に示した構成のカラー複写装置1に設けられた画像処理部20の第4実施形態を説明するブロック図である。この第4実施形態の画像処理部20は、第3実施形態の構成に対して、全面ヒストグラム検知部142に対応した下地検知処理の系統を1つに変更した点に特徴を有する。
全面ヒストグラム検知部142により、信頼度の高い地色情報(下地情報)の確定値が得られた段階で、所定の条件に基づいて決定した処理系統の処理済み画像データVout を出力データVoとして画像出力部30に渡す点は、第3実施形態と同様である。
下地除去処理部420は、全面ヒストグラム検知部142に対応した下地検知処理を行なう下地除去処理部427と、第3実施形態と同様に、先端リアルタイム検知部148に対応した下地検知処理を行なう先端リアルタイム検知部148を有する。
下地除去処理部427の後段には、下地除去処理部427から出力された処理済み画像データVout7を入力データとして、スクリーン処理をかけた2値化データもしくは数ビットの多値化データを出力するHG(HistoGram )出力データ処理部727を有し、同様に、記憶部850は、HG出力データ処理部727から出力された処理済み画像データVout7を記憶するHG記憶部857を有している。
下地除去処理部427には、第3実施形態と同様に、下地情報の濃いレベルを検知レベルに設定しておくようにする。具体的には、下地検知量DAH,DTRが“40〜55”の場合には、下地除去量Thをたとえば“60”とする検知レベルを設定する。
図18は、第4実施形態の選択判定部844の判定手法を説明する図である。基本的な考え方は、第3実施形態の場合と同様である。すなわち、先ず、先端リアルタイム検知部148により得られる下地検知量DTRをAEDATA1、全面ヒストグラム検知部142により得られる下地検知量DAHをAEDATA2とする。またC3〜C5を定数とする。なお、定数C3〜C5は、検知レベルとリンクさせる必要がある。
そして、AEDATA1+C3<AEDATA2かつC5>AEDATA2>C4(C4=D1)を満たす場合は、設定した検知レベルに従って、全面ヒストグラム検知部142により実際取得された下地検知量DAHに対応する下地除去量Thで下地除去を行なう。この点では、下地除去処理部421の処理系統は、全面ヒストグラム検知部142と間接的にリンクしている。
図18を参照して、選択判定部844の判定手法を具体的に説明する。図から分かるように、第3実施形態では検知レベルが3段階であったが、この第4実施形態では1段階である点が異なるだけである。定数C3〜C5を設定する際には、第3実施形態と同様の考え方を適用しつつ、検知レベルの段階数の違いに対処すればよい。たとえば、C3=10、C4=40、C5=55とする。
図19は、第3実施形態において、記憶部850に格納される画像データの態様(メモリの中身)を説明する図である。本実施形態では、全面ヒストグラム検知部142にて下地検知量DAHの確定値が得られるのは、原稿全面についてのヒストグラム解析が完了した時点である。よって、記憶部857,858に確保する容量は原稿全面分とする。
図20は、第4実施形態における下地除去機能を説明するタイミングチャートである。第4実施形態は、第3実施形態に対して、全面ヒストグラム検知部142に対応した下地検知処理の系統を1つに変更しただけであるので、処理タイミング自体は第3実施形態と同様であるので、説明を割愛する。
この第4実施形態では、高信頼度の下地検知が可能な全面ヒストグラム検知部142と高速の下地検知が可能な先端リアルタイム検知部148とを併用し、先端リアルタイム検知部148により得られる下地除去量DTRに基づきラインごとに下地除去処理と2値化処理を行いつつ、予め定めてある1つの下地検知レベルに対応した下地除去処理と2値化処理を実行して、それぞれの処理済み画像データVout を記憶部850に格納しておくようにした。そして、全面ヒストグラム検知部142による下地検知量の確定値が得られた段階で、何れの処理系統の処理済み画像データVout を使用するべきかを判定して出力するようにした。
このため、第3実施形態と同様の効果を享受できるとともに、全面ヒストグラム検知部142に対応した下地検知処理の系統を1つにしたので、第3実施形態よりも、メモリ容量を低減できる。
図21は、出力データ処理部720に設ける2値化データ生成機能部の意義について説明する図である。ヒストグラム検知を実施する場合に、たとえばプリスキャン方式ではなく、本スキャンで読み取ったデータを多値メモリに保持して地肌検知除去処理を行なうメモリスキャン方式も使われている。地肌検知は本スキャンで処理し、地肌除去はメモリの画像データを読み出して処理する方式である。出力は、最低でもヒストグラム検知領域の分だけ送れる。
一方、一般的な廉価な複写装置では、メモリの量を減らすためと速度アップのために、多値メモリのないシステム(画像処理装置)になっており、メモリの不要なリアルタイム方式により地肌検知除去を実施している。電子ソート機能や回転機能などにおいて、多値画像で処理せずに、2値メモリを持ち、2値画像で行なう方が速度的に有利となるからである。
多値メモリがあるメモリスキャン方式と2値メモリのある形態を比較すると、図21のタイミングチャートに示すように、画像操作処理部880において回転などの処理をした場合に、2値メモリのある形態の方が速度的に優位となる。
メモリ容量に関しては、多値を8ビット、2値メモリのある形態である第1実施形態の検知レベルをレベル8とすれば同量になってしまうため、優位性はない。
第2実施形態に関しては、部分的にヒストグラム処理をしたメモリスキャンと比較して、速度的にもメモリ容量的にも優位性があると言える。
第3実施形態に関しては、速度的にメモリスキャンより有利である。メモリ容量は、第1実施形態と同様に、検知レベルの数によっては優位性がない場合が考えられるが、2つの検知方法を組み合わせることでレベル数は減るため、メモリ容量を減らせる。
第4実施形態に関しては、メモリ容量も速度もメモリスキャンより優位である。
以上より、画像操作処理部880における電子ソートや回転などと組み合わせる場合には、2値画像でも処理可能な処理機能ぶとして、出力データ処理部720には、2値化処理機能部を設けるのがよい。
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
また、上記の実施形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
たとえば、第1実施形態の全面ヒストグラムを第2実施形態で用いた先端部分ヒストグラムになっているように、第3実施形態と第4実施形態の変形例として、全面ヒストグラムを先端部分ヒストグラムに置き換えが可能である。
また、上記4つの実施形態では、下地検知部140にて検知した下地情報に基づいて下地除去処理を行なう例で説明したが、下地除去処理に代えてもしくは下地除去処理と併用して濃度調整処理やその他の画像処理を下地検知部140にて検知した下地情報に基づいて行なう構成にも、上記実施形態で説明した同様の手法を適用できるのは言うまでない。
また、上記4つの実施形態にて取り扱うことのできる処理対象画像は、原稿を画像取得部10によりスキャンすることで得たものに限らない。たとえば、パソコンにインストールされているアプリケーションにより生成された文書データ中における、意図的に下地が付加されているものを対象として、その意図的に付加された下地を除去するために、上記実施形態で説明した手法を適用することができる。
1…カラー複写装置、10…画像取得部、20…画像処理部、30…画像出力部、120…画像入力部、140…下地検知部、142…全面ヒストグラム検知部、144…先端ヒストグラム検知部、148…先端リアルタイム検知部、160…前処理部、420…下地除去処理部、430…検出レベル設定部、680…後処理部、720…出力データ処理部、840…選択処理部、844…選択判定部、848…速度重視下地情報記憶部、850…記憶部、880…画像操作処理部