ガスを反応させる温度は反応ガスの種類によって異なるが、高温エッチングで100〜400℃、ブラズマCVDで200〜500℃、CVDで400〜800℃程度である。
通常、ウェハ保持体にヒーターを内蔵して、ウェハを直接加熱して反応を行なうために必要な所定の温度にする。反応ガスを室温のままでガスシャワー体から反応部に供給すると、反応ガスはウェハ上で急激に加熱され、ウェハ温度もそれに伴って下げられるため、特に大面積のウェハ面内におけるガスの温度を均一にするのは困難で、反応速度も場所によって異なり、均一な厚みの膜を形成することが難しくなる。
そこで、半導体製造装置の外の配管から反応ガスをチャンバに送り込み、ヒーターで加熱した後に、ガスシャワー体に通過させる構造を採用することによって、反応ガスを予備加熱する方法が考えられる。
しかし、ガスシャワー体を通過する前に反応ガスを予備加熱すると、ガスシャワー体の貫通孔を通過する前に反応ガスが反応を開始して、ガスシャワー体の貫通孔を閉塞させ、または予備加熱部に反応生成物を無駄に生成するという問題がある。また、反応生成物が剥離して生ずるパーティクルが異物として半導体ウェハの表面上に付着してしまう等の問題もある。
上記の問題を解決するために、ガスシャワー体にヒーターを内蔵することが考えられる。しかしながら、ヒーターコイルやヒーター線をセラミックス成形体の間に挟み込んでホットプレス焼結を行なうことによってヒーターを内蔵したガスシャワー体を製造すると、ヒーターコイルの巻き外径が3〜6mm程度であるので、ヒーターコイルをガスシャワー体の基材の内部に埋込むと、厚みが10mm以上になってしまい、貫通孔は閉塞しやすくなる。また、ヒーターコイルに接触しないように貫通孔を形成する必要がある。そのため、貫通孔を形成する位置がヒーターコイルの埋設位置によって制約されてしまうという問題がある。この場合、貫通孔の間隔が3〜6mm以上になる領域が多く存在することになる。また、ヒーターコイルを埋設するためにガスシャワー体の厚みが厚くなると、貫通孔が長くなることによっても上記の閉塞が起こりやすくなる。
そこで、反応が起こるウェハ上での均熱性を確保するためには、ウェハの下のヒーター内蔵のウェハ保持体からの輻射熱でガスシャワー体を暖め、ガスシャワー体が所定の温度まで暖まってからガスを流すということも行なわれている。
膜の積層においては、製品のウェハだけでなく、ガスシャワー体、ウェハ保持体、チャンバにも積層し、積層した厚みが厚くなると熱応力で剥離を生じ、パーティクルとなって製品のウェハ上に付着して不良を発生する。したがって、これらチャンバ内部の部品の表面は頻繁にクリーニングを行なう必要がある。積層に最適な温度とクリーニングに最適な温度は異なる。一般にクリーニングにはClF3やNF3等のガスが用いられ、積層温度で用いるとエッチングカが強すぎるため、積層温度より温度を下げてガスシャワー体、ウェハ保持体、チャンバの表面を必要以上に傷めないようにする必要がある。そこで、積層(高温)→クリーニング(低温)→積層(高温)…と温度を変える必要がある。ヒーターを内蔵しないガスシャワー体は下のヒーターの輻射熱でのみ加熱されるので、所定の温度に達するまでかなりの時間を要し、クリーニング工程を介在させることがウェハ処理のスループットを低下させる要因となっていた。
そこで、この発明の目的は、上述の問題点を解消するとともに、CVD装置、プラズマCVD装置、エッチング装置等の半導体製造装置のチャンバ内において反応を均一にすることができる半導体製造装置用ガスシャワー体を提供することである。
また、この発明のもう一つの目的は、薄型のガスシャワー体においても貫通孔の閉塞が起こり難く、かつ閉塞やパーティクルの原因となる不要な膜の積層が半導体製造装置用チャンバ内の部品表面上で起こった場合においても、クリーニング工程をスムーズに行なうことができ、ウェハ処理のスループットを向上させることができる半導体製造装置用ガスシャワー体を提供することである。
この発明に従った半導体製造装置用ガスシャワー体は、基材の厚みが5mm以下の半導体製造装置用ガスシャワー体であって、複数の貫通孔を有するセラミックス焼結体基材と、そのセラミックス焼結体基材に形成された導電層とを備える。
クリーニング頻度を減らすためには少なくとも24時間以上貫通孔の閉塞が起こらないガスシャワー体が望まれていたが、5mm以下の厚みの基材に通常の直径(0.01mm以上)の貫通孔を形成したガスシャワー体を用いると、貫通孔の閉塞が起こるまでの時間を24時間以上にすることができる。したがって、この発明にしたがったガスシャワー体を用いると、薄型のガスシャワー体において貫通孔の閉塞が起こり難く、貫通孔の閉塞を引き起こす原因となる反応ガスの予備加熱の必要もない。また、ガスシャワー体に導電層としてヒーターを内蔵することによって、パーティクルの発生原因となるチャンバ部品に付着した積層膜のクリーニングを行なう低温から、ウェハ上への膜の積層を行なう高温までの加熱をスムーズに行ない、ウェハ処理のスループットを向上させることができる。昇温と降温の時間の合計が1時間以内であるのが望まれていたが、ヒーターを内蔵することによって昇温時間を短縮し、薄型のガスシャワー体を構成することによって降温時間を短縮することができる。
また、反応の均一性の観点からも、好ましくは、この発明のガスシャワー体において導電層はヒーター回路パターンを形成する導電層を含む。このようにすることにより、反応ガスがガスシャワー体の貫通孔を通過中において予備加熱されるので、半導体製造装置用チャンバにおいて反応を均一にすることができる。したがって、貫通孔の閉塞やパーティクルの発生を抑制することができる。
好ましくは、この発明のガスシャワー体において導電層はプラズマ発生用電極を形成する導電層を含む。このようにすることにより、プラズマ上部電極とガスシャワー体との間の空間をなくすことができるので、プラズマの均一化によって半導体製造装置用チャンパ内において反応を均一化することが可能になる。したがって、上記の空間で発生していた不要な膜形成による貫通孔の閉塞やパーティクルの発生を抑制することができる。
好ましくは、この発明のガスシャワー体においてセラミックス焼結体基材は、直径0.01mm以上の貫通孔を0.1個/cm2以上有し、さらに好ましくは直径0.01mm以上の貫通孔を0.5個/cm2以上有する。貫通孔の大きさと密度を上記の値以上にすることにより、半導体製造装置のチャンバ内で反応ガスを均一に半導体ウェハに供給することができるので、半導体ウェハの表面上の温度分布をより均一にすることが可能になる。
この発明のガスシャワー体を構成する基材に用いられるセラミックスは、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ケイ素または酸窒化アルミニウムのいずれか1種を含むのが好ましく、熱伝導率、耐食性の観点から、窒化アルミニウムを用いるのが最も好ましい。上記のようなセラミックスを用いることにより、ガスシャワー体の基材が耐熱性を備えるとともに、反応ガスに用いられる、たとえばハロゲンを含む腐食性のガスに対する耐食性も備えることができる。
この発明のガスシャワー体において、セラミックス焼結体基材は、第1のセラミックス焼結体と第2のセラミックス焼結体とを含み、導電層は第1のセラミックス焼結体の表面上に形成されるのが好ましい。そして、この発明のガスシャワー体は、導電層が形成された第1のセラミックス焼結体の表面と第2のセラミックス焼結体との間に介在し、第1のセラミックス焼結体と第2のセラミックス焼結体とを接合する接着層をさらに含むのが好ましい。
また、この発明のガスシャワー体は、導電層がセラミックス焼結体基材の一方の表面または両方の表面に形成され、導電層の表面を被覆するように保護層が形成されることによって構成されてもよい。具体的な実施の形態としては、セラミックス焼結体基材としてセラミックス焼結体を1枚だけ用いて、このセラミックス焼結体の一方の表面に導電層をヒーター回路パターンとして形成し、導電層をハロゲン等の腐食ガスから保護するために、導電層の表面を耐食性の高い保護層、好ましくは非酸化物セラミックスからなる保護層で被覆するという構造で、ヒーター回路内蔵のガスシャワー体を構成してもよい。また、セラミックス焼結体基材としてセラミックス焼結体を1枚だけ用いて、このセラミックス焼結体の一方の表面に導電層をヒーター回路パターンとして形成し、他方の表面に導電層を
プラズマ上部電極として形成し、導電層をハロゲン等の腐食ガスから保護するために、セラミックス焼結体の両面に形成された導電層の表面を耐食性の高い保護層、好ましくは非酸化物セラミックスからなる保護層で被覆するという構造で、ヒーター回路とプラズマ上部電極を内蔵したガスシャワー体を構成してもよい。上記のいずれの場合でも、セラミックス焼結体を接合する必要がないため、接合隙等の不良要因を低減でき、歩留まりの向上を図ることができる。また、1枚の焼結体でガスシャワー体を構成するので、製造コストの低減を図ることができる。
上記の接着層または保護層はガラスを含むのが好ましい。高温で高電圧を印加して用いられるガスシャワー体では、耐熱性、耐食性、耐電圧の観点から、上記の接着層または保護層は非酸化物セラミックスを含むのがさらに好ましい。この場合、熱伝導性や絶縁性の観点から、非酸化物セラミックスは、窒化アルミニウムまたは窒化ケイ素のいずれかを50質量%以上含むのが好ましい。
また、基材を構成するセラミックスとして窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ケイ素または酸窒化アルミニウムのいずれかを用いる場合には、上記の接着層は、3.0×10-6/℃以上8.0×10-6/℃以下の熱膨脹係数を有するガラス層であるのが好ましい。このようなガラス層を上記の接着層として用いることにより、接着層の熱膨脹係数をセラミックス焼結体とほぼ同等にすることができ、接合あるいはガスシャワー体の加熱、冷却の際に生じる熱応力を小さくすることができる。
上記の保護層としては、できるだけ耐食性の高いガラスを用いることが好ましい。また、熱応力低減の観点から、保護層は、3.0×10-6/℃以上8.0×10-6/℃以下の熱膨脹係数を有するガラス層であることが好ましい。ガスシャワー体を室温から600℃まで昇温する時間を30分以内とすることが目標とされており、熱膨張係数が上記の範囲内である場合、この目標を達成できる。
基材を構成するセラミックスとして窒化アルミニウムを用いる場合には、ガラスの中でも濡れ性、接着性の観点から、上記の接着層は、イッテルビウム(Yb)とネオジウム(Nd)とカルシウム(Ca)とを含む酸化物、または加熱によりイッテルビウム(Yb)とネオジウム(Nd)とカルシウム(Ca)とを含む酸化物を生ずる化合物を含むのが好ましい。基材を構成するセラミックスが窒化ケイ素の場合には、ガラスの中でも濡れ性、接着性の観点から、上記の接着層は、イットリウム(Y)とアルミニウム(Al)とを含む酸化物、または加熱によりイットリウム(Y)とアルミニウム(Al)とを含む酸化物を生ずる化合物を含むのが好ましい。
また、接着層または保護層の材料として非酸化物セラミックスを用いる場合、3.0×10-6/℃以上6.0×10-6/℃以下の熱膨脹係数を有する非酸化物セラミックスを用いるのが熱応力の観点から好ましい。
この発明のガスシャワー体において導電層は、タングステン、モリブデン、銀、パラジウム、白金、ニッケルまたはクロムの少なくとも1種を含むのが好ましい。
この発明のガスシャワー体において、導電層はセラミックス焼結体基材内の平面に沿って形成されるのが好ましい。さらに、ガスシャワー体は、導電層に接続するようにセラミックス焼結体基材内の平面と同一の平面に沿って形成され、セラミックス焼結体から露出している外部接続端子を備えるのが好ましい。このようにすることにより、導電層を内蔵しているセラミックス焼結体基材の領域のみが反応ガスに晒され、外部接続端子を半導体製造装置のチャンバの外に配置することができる。また、セラミックス焼結体基材に内蔵された導電層と、その導電層に接続する外部接続端子を同一平面に沿って形成することにより、ガスシャワー体を均一に加熱することができるとともに、加熱や冷却に要する時間も少なくすることができ、すなわち加熱速度と冷却速度を高めることが可能となる。
この発明のガスシャワー体は、セラミックス焼結体基材に内蔵された温度検出部をさらに備えるのが好ましい。このようにすることにより、ガスシャワー体の温度分布を測定することができ、ガスシャワー体の加熱温度を制御することができる。
この発明によれば、処理対象としての半導体ウェハの外径が増大することによってより均一な加熱が必要なCVD装置、プラズマCVD装置、高温エッチング装置等の半導体製造装置に用いられるガスシャワー体として、ヒーター機能を備えた構造やヒーターとプラズマ電極の機能を併せ持った構造を提供することができる。このような構造を有するガスシャワー体を用いることにより、反応ガスの均一加熱を実現することができ、半導体ウェハの表面上において均一に膜を形成すること、または均一なエッチングを行なうことが可能になる。また、ガスシャワー体の基材の表面に不要な膜形成が生じなくなるので、貫通孔の閉塞によるチャンバ内のガスの濃度や流量の経時変化を防止することができる。さらに、ガスシャワー体の基材の表面に付着した膜が剥離して発生するパーティクルの発生も抑制することが可能になる。
図1と図2は、この発明のガスシャワー体が適用される半導体製造装置の実施の形態を概念的に示す図である。
図1に示すように、CVD装置やエッチング装置のチャンバ101には、膜形成またはエッチングがなされる処理対象物としての半導体ウェハ3を配置する。半導体ウェハ3はウェハ保持体2の上に固定されている。ウェハ保持体2は支持体4に取付けられている。ウェハ保持体2は、半導体ウェハ3を静電力によって固定するための静電チャック用電極23と、半導体ウェハ3を加熱するためのヒーター回路21とを備える。半導体ウェハ3の上方には、ガスシャワー体1が設けられる。ガスシャワー体1は、反応ガスを通過させるための複数の貫通孔11を有し、反応ガスを加熱するためのヒーター回路パターンを内蔵している。ヒーター回路パターンは導電層の形態でガスシャワー体1に内蔵されている。膜形成用反応ガスまたはエッチング用ガスがガス導入口200からチャンバ101の内部に導入される。導入されたガスは複数の貫通孔11を通過して半導体ウェハ3の表面上に供給される。半導体ウェハ3の表面上において所定の膜形成またはエッチングが行なわれる。チャンバ101の内部のガスを排気するために排気口300が設けられている。
図2に示すように、プラズマCVD装置やプラズマエッチング装置に用いられるチャンバ102の内部には、膜形成またはエッチングの処理対象物としての半導体ウェハ3を配置する。半導体ウェハ3はウェハ保持体2の上に固定される。ウェハ保持体2は支持体4の上に取付けられている。ウェハ保持体2は、半導体ウェハ3を加熱するためのヒーター回路21と、プラズマをチャンバ102内に発生させるためのプラズマ下部電極22と、半導体ウェハ3を固定するための静電力を発生させる静電チャック用電極23とを備える。半導体ウェハ3の上方にはガスシャワー体1が設けられている。ガスシャワー体1は、反応ガスを通過させるための複数の貫通孔11を有し、プラズマ下部電極22に対向するようにプラズマ上部電極と、反応ガスを加熱するためのヒーター回路パターンを内蔵して
いる。ヒーター回路パターンとプラズマ上部電極は導電層の形態でガスシャワー体1に内蔵されている。ガス導入口200からチャンバ102の内部に導入された膜形成用またはエッチング用のガスはガスシャワー体1の貫通孔11を通過して半導体ウェハ3の表面上に供給される。ガスシャワー体1に内蔵されたプラズマ上部電極とウェハ保持体2に内蔵されたプラズマ下部電極22との間でプラズマ放電が発生する。このようにして形成されたガスプラズマによって半導体ウェハ3の表面上で所定の膜形成またはエッチングが行なわれる。チャンバ102の内部のガスを排出するための排気口300が設けられている。
図3は、この発明のガスシャワー体の1つの実施の形態を示す斜視図である。図3に示すように、ガスシャワー体1において、セラミックス焼結体基材10にはヒーター回路パターン12やプラズマ上部電極14を形成する導電層が内蔵されている。
図4〜図6は、この発明のガスシャワー体の実施の形態として断面構造を概念的に示す図である。
図4に示すように、ガスシャワー体1は、2枚のセラミックス焼結体基材10aと10bが接合された構造を有する。セラミックス焼結体基材10aの一方の表面上には導電層としてヒーター回路パターン12が形成されている。ヒーター回路パターン12が形成されたセラミックス焼結体基材10aの一方の表面とセラミックス焼結体基材10bの表面との間にガラス層または非酸化物セラミックス層を介在させることによってセラミックス焼結体基材10aと10bが接合されている。複数の貫通孔11は、セラミックス焼結体基材10a、ガラス層または非酸化物セラミックス層13、セラミックス焼結体基材10bを貫通するように形成されている。ヒーター回路パターン12は貫通孔11に接触しないように形成されている。
図5に示すように、2枚のセラミックス成形体の間に導電体ペーストを挟んで焼結することにより、一体化したセラミックス焼結体基材10の内部に導電層としてヒーター回路パターン12を形成してもよい。この場合、接着層としてのガラス層または非醸化物セラミックス層はガスシャワー体1に含まれない。
また、図6に示すように、ガスシャワー体1は、ヒーター回路パターン12とプラズマ上部電極14を導電層の形態で内蔵している。セラミックス焼結体10aの一方の表面上に導電層としてヒーター回路パターン12が形成されている。ヒーター回路パターン12が形成されたセラミックス焼結体10aの一方の表面とセラミックス焼結体10bとの間にガラス層または非酸化物セラミックス層13aを介在させることによってセラミックス焼結体10aと10bを接合する。また、セラミックス焼結体基材10cの一方の表面上に導電層としてプラズマ上部電極14が形成されている。プラズマ上部電極14が形成されたセラミックス焼結体基材10cの一方の表面とセラミックス焼結体基材10aの他方の表面との間にガラス層または非酸化物セラミックス層13bを介在させることによってセラミックス焼結体10aと10cを接合する。このようにして、ヒーター機能とプラズマ電極を備えたガスシャワー体1が構成される。
なお、ガスシャワー体1は、ヒーター回路パターンとプラズマ上部電極を兼ねる1つの導電層のみを内蔵するようにしてもよい。また、プラズマ上部電極のみを内蔵するようにガスシャワー体を構成してもよい。
図7は、ヒーター回路パターンが形成されたセラミックス焼結体基材10aの一方の表面を示す平面図である。図7に示すように、複数個の微細な貫通孔11がセラミックス焼結体基材10aの一方の表面に形成されている。貫通孔11の位置に接触しないように導電層としてヒーター回路パターン12がジグザグ状に一定のパターンに従って形成されている。ヒーター回路パターン12の両端部には外部に接続するための円形状の接続端子12aと12bが形成されている。また、セラミックス焼結体基材10aの一方の表面上には温度検出部として温度センサを挿入するための溝部15が形成されている。
図8は、プラズマ上部電極が形成されたセラミックス焼結体基材の一方の表面を示す平面図である。図8に示すように、複数個の微細な貫通孔11が、図7に示すセラミックス焼結体基材10aの貫通孔と位置が一致するようにセラミックス焼結体基材10cの一方の表面上に形成されている。また、2つの貫通孔17aと17bが、図7に示すヒーター回路パターンの接続端子12aと12bの位置に一致するように形成されている。貫通孔11の開口部を塞がないようにほぼ全面にわたって導電層としてプラズマ上部電極14がセラミックス焼結体基材10cの一方の表面上に形成されている。
また、図7に示すようにセラミックス焼結体10aの一方の表面上に導電層としてヒーター回路パターン12が形成されている。ヒーター回路パターン12が形成されたセラミックス焼結体10aの一方の表面上を非酸化物セラミックス層13aで被覆することにより、ヒーター回路パターンをハロゲン等の腐食ガスから保護する保護層を形成する。このようにして、1枚のセラミックス焼結体10aを用いて、ガスシャワー体1がヒーター回路パターン12を導電層の形態で内蔵するように構成してもよい。
さらに、図7に示すようにセラミックス焼結体10aの一方の表面上に導電層としてヒーター回路パターン12が形成され、他方の表面上に導電層として図8に示すようにプラズマ上部電極14が形成されてもよい。この場合、これらの導電層上を非酸化物セラミックス層で被覆することにより、導電層としてのヒーター回路パターンとプラズマ上部電極をハロゲン等の腐食性ガスから保護する保護層を形成する。このようにして、1枚のセラミックス焼結体10aを用いて、ガスシャワー体がヒーター回路パターン12とプラズマ上部電極14を導電層の形態で内蔵するように構成してもよい。
図9は、ヒーター回路パターンが形成されたセラミックス焼結体基材10aのもう一つの実施の形態の一方の平面を示す平面図である。図9に示すように、接続端子12aと12bが、ヒーター回路パターン12に接続するようにセラミックス焼結体基材10aの一方の表面上で同一の平面に沿って形成され、側面まで延びて、半導体製造装置のチャンバの外側で配線と接続できるようになっている。また、温度センサを挿入するための溝部15も、セラミックス焼結体基材10aの側面まで延びて、半導体製造装置のチャンバの外側から温度センサを挿入することができるようになっている。温度センサで測定された温度に応じて半導体製造装置の外側に設置した温度調整モジュールを用いてガスシャワー体の温度を制御することができる。
図10は、プラズマ上部電極が形成されたセラミックス焼結体基材10cのもう一つの実施の形態の一方の平面を示す平面図である。図10に示すように、接続端子14aが、プラズマ上部電極14に接続するようにセラミックス焼結体基材10cの一方の表面上で同一の平面に沿って形成され、側面まで延びて、半導体製造装置のチャンバの外側で配線と接続できるようになっている。
この発明のガスシャワー体の基材を構成するセラミックス焼結体は、従来の方法で製造することができ、セラミックス粉末には必要により焼結用の助剤を添加し、さらには必要に応じてバインダを添加し、その混合粉末の成形体を焼結することによって製造する。セラミックスは耐熱性、ハロゲンを含む腐食性のガス等に対する耐食性を備える観点から、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、酸窒化アルミニウムが好ましく、窒化アルミニウムが熱伝導率と耐食性の観点から最も好ましい。
セラミックス粉末を成形する方法としては、ドクターブレード、押出し、プレス等の公知のシート成形方法を用いる。成形体を乾燥した後に焼結時の収縮率を勘案した形状に打ち抜きまたは切断する。この時点で貢通孔を形成してもよく、あるいは焼結体を接合した後に機械加工によって貫通孔を形成してもよい。
成形体を脱バインダした後に焼結する。焼結は常圧で行なうのが好ましいが、特に制限されない。必要があれば、焼結体の表面を研磨したり、焼結体に切断加工を施してもよい。ただし、寸法や反りが所定の範囲内に収まっている場合には、焼結したままの状態でガスシャワー体の基材に用いてもよい。
セラミックス焼結体の上にタングステンやモリブデン等の高融点金属またはこれらの混合物、あるいは銀、銀−パラジウム、ニッケル−クロム等の金属または合金の導電性物質を含むペーストを印刷塗布して焼付けることによって導電層をセラミックス焼結体の表面上に形成する。導電層が形成されたセラミックス焼結体と他のセラミックス焼結体との間にガラスまたは非酸化物セラミックス等の接着剤を介在させることによって重ね合わせてセラミックス焼結体を接合する。このようにしてセラミックス焼結体基材に導電層を内蔵したガスシャワー体を製造することができる。
上述の製造方法においては、セラミックス焼結体の上に導電性物質を含むペーストを塗布して焼付けることによって導電層を形成する方法、すなわちポストメタライズ法を採用している。ヒーター回路パターンやプラズマ上部電極に相当する導電層をセラミックス焼結体基材に内蔵させるために、タングステンやモリブデン等の高融点金属またはこれらの混合物を含むペーストをセラミックス成形体の表面上に印刷塗布し、他のセラミックス成形体を重ね合わせて熱圧着し、成形体に脱バインダ処理を施した後に、セラミックス成形体の焼結と導電体ペーストの焼付けとを同時に行なうコファイヤー法を採用してもよい。
ヒーターとプラズマ上部電極の2つの機能を兼ねる導電層をセラミックス焼結体基材に内蔵するために、ヒーター回路パターンとプラズマ上部電極のそれぞれの導電層を形成し、2層の導電層を内蔵するガスシャワー体を製造してもよく、あるいはコンパクトにするためにヒーターとプラズマ上部電極の両方の機能を兼ねる1つの導電層を形成してもよい。
反応ガスを均一に半導体ウェハの表面上に供給するためには、少なくとも0.01mm以上の直径を有する貫通孔を0.1個/cm2以上の密度で、好ましくは0.5個/cm2以上の密度で形成するのが望ましい。
(実施例1)
窒化アルミニウム粉末に焼結助剤としてイットリア(Y2O3)を5質量%とバインダを添加して分散混合した後に、焼結後に1.0mmの厚みになるようにドクターブレード法を用いて成形した。この成形体を乾燥した後、焼結後の外径が300mmになるように打ち抜くとともに、焼結後の直径が0.5mmになるように500個の貫通孔を打ち抜いて形成した。この成形体を温度800℃の窒素ガス気流中で脱脂し、温度1800℃で4時間焼結した。得られた焼結体の上下面をダイヤモンド砥粒を用いて研磨した。このようにして2枚の窒化アルミニウム焼結体基材を作成した。
1枚の窒化アルミニウム焼結体基材の一方の表面上に、タングステン粉末と焼成助剤をエチルセルロースバインダにて混練したものを印刷塗布した。印刷パターンは、線幅が3・0mmの線状パターンとし、この線状パターンを貫通孔の開口部に接触しないように図7に示すようにジグザグ状に形成した。この印刷パターンが形成された窒化アルミニウム焼結体を温度800℃の窒素ガス中で脱脂し、温度1700℃の窒素ガス中にて焼付けることにより導電層を形成した。
一方、もう1枚の窒化アルミニウム焼結体基材の一方の表面上にガラス粉末を印刷塗布した後、温度500℃で脱脂した。この窒化アルミニウム焼結体基材の一方の表面と導電層が形成された窒化アルミニウム焼結体基材の表面とを重ね合わせて、モリブデン製の治具で固定して重しを載せた状態で温度650℃の窒素ガス中で接合した。このようにして図4に示されるようなヒーター回路パターンを内蔵した窒化アルミニウム焼結体基材からなるガスシャワー体を製造した。得られたガスシャワー体の厚みは2.0mmであった。
得られたガスシャワー体1を図1に示すCVD装置の内部に組み込んだ。ウェハ保持体2の上に直径300mmのシリコンウェハ3を載せて温度700℃に加熱した。一方、ガスシャワー体1のヒーター回路パターン12に200Vを印加してガスシャワー体1を600℃に加熱した状態で反応ガスを貫通孔11に通過させてシリコンウェハ3の表面上に供給した。シリコンウェハ3の表面における温度分布を輻射表面温度計によって測定したところ、±0.4℃であった。また、所定の反応ガスを用いて窒化チタン(TiN)膜をシリコンウェハ3の表面上に形成する処理を100時間行なったが、ガスシャワー体1の表面や貫通孔11では膜形成が行なわれず、膜の付着も発生しなかった。また、シリコンウェハ3の表面上では粒径0.05μm以上のパーティクルの発生もなかった。反応終了後、ガスシャワー体1のヒーター回路パターン12への電源の供給を停止させると、ガスシャワー体1の温度は600℃から室温まで10分で到達した。また、ヒーター回路パターン12に200Vの電圧を印加して電源を供給したところ、ガスシャワー体1の温度は室温から600℃まで6分で到達した。昇温および降温時においてガスシャワー体に割れ等は見られなかった。
(実施例2)
実施例1と同じ製造方法を用いて窒化アルミニウム焼結体基材を2枚製造した。貫通孔の個数を100個にした以外は、実施例1と同じ仕様のガスシャワー体を製造した。
得られたガスシャワー体1を図1に示されるようなCVD装置に組み込んだ。ウェハ保持体2の上に直径300mmのシリコンウェハ3を載せて温度700℃に加熱した。一方、ガスシャワー体1のヒーター回路パターン12に200Vを印加してガスシャワー体1を600℃に加熱した状態で反応ガスを貫通孔11に通過させてシリコンウェハ3の表面上に供給した。この状態でシリコンウェハ3の表面における温度分布を輻射表面温度計によって測定した。その温度分布は±4.0℃であった。また、シリコンウェハ3の表面上に窒化チタン(TiN)膜を形成する処理を100時間行なったが、ガスシャワー体1の基材の表面や貫通孔11には膜が全く形成されず、膜が付着しなかった。また、シリコンウェハ3の表面上においては、粒径が0.05μm以上のパーティクルも発生しなかった。反応終了後、ヒーター回路パターン12への電源の供給を停止すると、ガスシャワー体1の温度は600℃から室温に10分で到達した。また、ヒーター回路パターン12に200Vの電圧を印加して電源を供給したところ、ガスシャワー体1の温度は室温から600℃まで6分で到達した。
(実施例3)
実施例1と同じ製造方法によって同一の数の貫通孔を有する直径300mm、厚み1mmの窒化アルミニウム焼結体基材を3枚製造した。
1枚の窒化アルミニウム焼結体基材の一方の表面上に、タングステン粉末と焼成助剤をバインダにて混練したものを印刷塗布した。印刷パターンは、線幅が0.5mm、線間隔が0.5mmの線状のパターンとし、この線状のパターンを貫通孔の開口部に接触しないように図7に示すようにジグザグ状に形成した。
また、もう1枚の窒化アルミニウム焼結体基材の一方の表面上にも、タングステン粉末と焼成助剤をバインダにて混練したものを印刷塗布した。印刷パターンは、ほぼ円形のパターンとし、貫通孔の開口部を塞がないように図8に示すようにプラズマ上部電極を構成するように形成した。
上記の2枚の窒化アルミニウム焼結体基材の一方の表面上に形成した印刷パターンを実施例1と同様にして焼付けることにより、それぞれ、ヒーター回路パターンとプラズマ上部電極を形成する導電層を窒化アルミニウム焼結体基材の上に形成した。
上記の2枚の窒化アルミニウム焼結体基材ともう1枚の窒化アルミニウム焼結体基材とを、実施例1と同様にしてガラス層を介在させることによって接合した。このようにして、図6に示すようにヒーター回路パターン12とプラズマ上部電極14とを内蔵するガスシャワー体1を製造した。得られたガスシャワー体の厚みは3.0mmであった。
このガスシャワー体1を図2に示されるような、シリコン酸化膜(SiO2膜)形成用のプラズマCVD装置に組み込んだ。ウェハ保持体2の上に直径300mmのシリコンウェハ3を載せて温度300℃に加熱した。一方、ガスシャワー体1のヒーター回路パターン12に200Vを印加して600℃にガスシャワー体1を加熱した状態で反応ガスを貫通孔11に通過させることによってシリコンウェハ3の表面上に反応ガスを供給した。その状態でシリコンウェハ3の表面における温度分布を輻射表面温度計によって測定したところ、±0.5℃であった。ガスシャワー体1のプラズマ上部電極14にも200Vを印加してチャンバ102の内部にガスプラズマを形成した状態で、シリコンウェハ3の表面上にシリコン酸化膜を形成する処理を50時間行なったところ、貫通孔に閉塞が見られ、クリーニングを要した。また、シリコンウェハ3の表面上において粒径0.05μm以上のパーティクルは発生しなかった。反応終了後、ヒーター回路パターン12とプラズマ上部電極14に供給する電源を停止すると、ガスシャワー体1の温度が600℃から室温に13分で到達した。また、ヒーター回路パターン12に200Vの電圧を印加して電源を供給したところ、ガスシャワー体1の温度は室温から600℃まで10分で到達した。
(実施例4)
窒化アルミニウム粉末に焼成助剤としてイットリア(Y2O3)を3質量%と酸化カルシウム(CaO)を1質量%とバインダとを添加して分散混合した後、その混合粉末を、焼結後の厚みが1.0mmになるようにドクターブレード成形した。この成形体を乾燥した後、焼結後において外径が300mmになるように打ち抜き、また焼結後において直径が0.5mmになるような貫通孔を500個打ち抜いて形成した。この成形体の一方の表面上に、タングステン粉末と焼成助剤をエチルセルロースバインダにて混練したものを印刷塗布した。印刷パターンは、線幅が2.0mmの線状パターンとし、この線状パターンを貫通孔の開口部に接触しないように図7に示すようにジグザグ状に形成した。このように印刷パターンを形成した窒化アルミニウム成形体の上にもう1枚の窒化アルミニウム成形体を重ね合わせて熱圧着した。熱圧着した2枚の窒化アルミニウム成形体を温度800℃の窒素ガス気流中で脱脂し、温度1800℃で4時間焼結することにより、印刷パターンと窒化アルミニウムを同時に焼結した。このようにして図5に示すような、ヒーター回路パターン12を内蔵して一体化した窒化アルミニウム焼結体基材10からなるガスシャワー体1を製造した。得られたガスシャワー体の厚みは2.0mmであった。
得られたガスシャワー体1を図1に示すようなCVD装置に組み込んだ。ウェハ保持体2の上に直径300mmのシリコンウェハ3を載せて温度700℃に加熱した、一方、ガスシャワー体1のヒーター回路パターン12に200Vを印加してガスシャワー体1を600℃に加熱した状態で反応ガスを貫通孔11に通過させてシリコンウェハ3の表面上に供給した。この状態でシリコンウェハ3の表面上における温度分布を輻射表面温度計によって測定したところ、±0.5℃であった。また、窒化チタン膜(TiN膜)をシリコンウェハ3の表面上に形成する処理を100時間行なったところ、ガスシャワー体1の基材の表面や貫通孔には膜が全く形成されず、膜は付着しなかった。シリコンウェハ3の表面上において粒径0.05μm以上のパーティクルの発生もなかった。反応終了後、ヒーター回路パターン12への電源供給を停止させると、ガスシャワー体1の温度は600℃から室温に10分で到達した。また、ヒーター回路パターン12に200Vの電圧を印加して電源を供給したところ、ガスシャワー体1の温度は室温から600℃まで6分で到達した。
(実施例5〜17)
実施例5〜17では、実施例1と同じ方法で貫通孔が形成され、研磨された窒化アルミニウム焼結体を作製した。
1枚の窒化アルミニウム焼結体の一方の表面上にタングステン粉末と焼成助剤をエチルセルロース系バインダにて混練したものを印刷塗布した。これを窒素ガス中900℃で脱脂し、温度1700℃の窒素ガス中にて焼き付けることにより、導電層としてヒーター回路パターンを形成した。
一方、もう1枚の窒化アルミニウム焼結体の一方の表面上に以下の表2に記載した接着層の組成を有するように配合された非酸化物セラミックスと酸化物セラミックスの混合粉末、または酸化物セラミックス粉末をエチルセルロース系バインダで混練したものを印刷塗布した。これを窒素ガス中にて900℃で脱脂した後、ヒーター回路パターンが形成された窒化アルミニウム焼結体の一方の表面の上に重ね合わせて、カーボン製の治具で固定し、加重を掛けた状態で表2に示した接合温度で窒素ガス中で加熱することにより接合した。
このようにして、図4に示されるようなヒーター回路パターンを内蔵した窒化アルミニウム焼結体基材からなるガスシャワー体を製造した。得られたガスシャワー体の厚みは2.0mmであった。
得られたガスシャワー体1を図1に示すCVD装置の内部に組み込んだ、ウェハ保持体2の上に直径300mmのシリコンウェハ3を載せて温度750℃に加熱した。一方、ガスシャワー体1のヒーター回路パターン12に200Vの電圧を印加してガスシャワー体1を600℃に加熱した状態で反応ガスを貫通孔11に通過させてシリコンウェハ3の表面上に供給した。シリコンウェハ3の表面における温度分布を輻射表面温度計によって測定したところ、±0.5℃であった。また、所定の反応ガスを用いて窒化チタン(TiN)膜をシリコンウェハ3の表面上に形成する処理を100時間行なったが、ガスシャワー体1の表面や貫通孔11では膜形成が行なわれず、膜の付着も発生しなかった。シリコンウェハ3の表面上では粒径0.05μm以上のパーティクルの発生もなかった。反応終了後、ガスシャワー体1のヒーター回路パターン12への電源の供給を停止させると、ガスシャワー体1の温度は600℃から室温まで10分で到達した。また、ヒーター回路パターン12に200Vの電圧を印加して電源を供給したところ、ガスシャワー体1の温度は室温から600℃まで6分で到達した。
実施例1〜4では、ガスシャワー体をフッ素雰囲気中700℃の温度で1000時間連続使用しても問題がなかったが、750℃の温度で1000時間連続使用したところ、10個中1個、800℃の温度で1000時間連続使用したところ、10個中3個、ヒーターの劣化が見られた。ガラス層の熱劣化によってヒーターの保護効果が低下したためと考えられる。
実施例5、11では、ガスシャワー体をフッ素雰囲気中700℃の温度で1000時間、750℃の温度で1000時間連続使用しても問題がなかったが、800℃の温度で1000時間連続使用したところ、10個中1個、ヒーターの劣化が見られた。
実施例6〜10、12〜17では、ガスシャワー体をフッ素雰囲気中700℃、750℃、800℃のいずれの温度で1000時間連続使用しても問題がなかった。
(実施例18)
窒化ケイ素粉末に焼結助剤としてY2O3を5質量%、A12O3を2質量%添加し、バインダとしてポリビニルアルコールを添加してエタノールを溶媒としてボールミルによって分散混合した。この混合粉末をスプレードライ乾燥した後、直径380mm、厚み1mmの形状になるようにプレス成形した。この成形体を温度800℃の窒素ガス中で脱脂した後、温度1550℃で4時間焼結した。得られた窒化ケイ素焼結体の上下面をダイヤモンド砥粒にて研磨した。
実施例1と同じ方法で1枚の窒化ケイ素焼結体にタングステンヒーター回路パターンを形成し、もう1枚の窒化ケイ素焼結体に熱膨張係数が5.0×10-6/℃のSiO2−Al2O3系酸化物セラミックス層を形成して重ね合わせて窒素ガス中1100℃の温度で加熱接合した。
得られたガスシャワー体1を図1に示すCVD装置の内部に組み込んだ。ウェハ保持体2の上に直径300mmのシリコンウェハ3を載せて温度750℃に加熱した。一方、ガスシャワー体1のヒーター回路パターン12に200Vの電圧を印加してガスシャワー体1を600℃に加熱した状態で反応ガスを貫通孔11に通過させてシリコンウェハ3の表面上に供給した。シリコンウェハ3の表面における温度分布を輻射表面温度計によって測定したところ、±2.0℃であった。また、所定の反応ガスを用いて窒化チタン(TiN)膜をシリコンウェハ3の表面上に形成する処理を100時間行なったが、ガスシャワー体1の表面や貫通孔11では膜形成が行なわれず、膜の付着も発生しなかった。シリコンウェハ3の表面上では粒径0.05μm以上のパーティクルの発生もなかった。反応終了後、ガスシャワー体1のヒーター回路パターン12への電源の供給を停止させると、ガスシャワー体1の温度は600℃から室温まで20分で到達した。また、ヒーター回路パターン12に200Vの電圧を印加して電源を供給したところ、ガスシャワー体1の温度は室温から600℃まで15分で到達した。
(実施例19)
酸窒化アルミニウム(AlON)粉末に焼結助剤としてMgOを2質量%添加し、バインダを添加して分散混合した。この混合粉末をスプレードライ乾燥した後、直径380mm、厚み1mmの形状になるようにプレス成形した。この成形体を温度800℃の窒素気流中で脱脂した後、温度1770℃で4時間焼結した。得られた酸窒化アルミニウム焼結体の上下面をダイヤモンド砥粒にて研磨した。
実施例1と同じ方法で1枚の酸窒化アルミニウム焼結体にタングステンヒーター回路パターンを形成し、もう1枚の酸窒化アルミニウム焼結体に熱膨張係数が5.0×10-6/℃のSiO2−Al2O3系酸化物セラミックス層を形成して重ね合わせて窒素ガス中1100℃の温度で加熱接合した。
得られたガスシャワー体1を図1に示すCVD装置の内部に組み込んだ。ウェハ保持体2の上に直径300mmのシリコンウェハ3を載せて温度750℃に加熱した。一方、ガスシャワー体1のヒーター回路パターン12に200Vの電圧を印加してガスシャワー体1を600℃に加熱した状態で反応ガスを貫通孔11に通過させてシリコンウェハ3の表面上に供給した。シリコンウェハ3の表面における温度分布を輻射表面温度計によって測定したところ、±3.0℃であった。また、所定の反応ガスを用いて窒化チタン(TiN)膜をシリコンウェハ3の表面上に形成する処理を100時間行なったが、ガスシャワー体1の表面や貫通孔11では膜形成が行なわれず、膜の付着も発生しなかった。シリコンウェハ3の表面上では粒径0.05μm以上のパーティクルの発生もなかった。反応終了後、ガスシャワー体1のヒーター回路パターン12への電源の供給を停止させると、ガスシャワー体1の温度は600℃から室温まで20分で到達した。また、ヒーター回路パターン12に200Vの電圧を印加して電源を供給したところ、ガスシャワー体1の温度は室温から600℃まで15分で到達した。
(実施例20)
実施例1と同じ製造方法を用いて窒化アルミニウム焼結体基材を1枚製造した。実施例1と同じように窒化アルミニウム焼結体基材に貫通孔を形成し、タングステンの導電層を形成した。この導電層の表面を被覆するように、窒化アルミニウム粉末に3質量%のYb−Nd−Ca−O系のガラスを添加したペーストを印刷し、1650℃の温度で焼き付けた。
得られたガスシャワー体1を図1に示すCVD装置の内部に組み込んだ。ウェハ保持体2の上に直径300mmのシリコンウェハ3を載せて温度700℃に加熱した。一方、ガスシャワー体1のヒーター回路パターン12に200Vの電圧を印加してガスシャワー体1を600℃に加熱した状態で反応ガスを貫通孔11に通過させてシリコンウェハ3の表面上に供給した。この状態でシリコンウェハ3の表面における温度分布を輻射表面温度計によって測定したところ、±0.4℃であった。また、所定の反応ガスを用いて窒化チタン(TiN)膜をシリコンウェハ3の表面上に形成する処理を150時間行なったが、ガスシャワー体1の表面や貫通孔11では膜形成が行なわれず、膜の付着も発生しなかった。シリコンウェハ3の表面上では粒径0.05μm以上のパーティクルの発生もなかった。反応終了後、ガスシャワー体1のヒーター回路パターン12への電源の供給を停止させると、ガスシャワー体1の温度は600℃から室温まで7分で到達した。また、ヒーター回路パターン12に200Vの電圧を印加して電源を供給したところ、ガスシャワー体1の温度は室温から600℃まで5分で到達した。
(実施伽21)
実施例1と同じ製造方法によって窒化アルミニウム焼結体基材を5枚製造した。1枚の窒化アルミニウム焼結体基材の上にタングステンの導電層を実施例1と同じ方法で形成して、5枚の焼結体の間にガラス層を介在させて実施例1と同じ方法で接合した。このようにして実施例1と同じ仕様のガスシャワー体を製造した。
得られたガスシャワー体1を図1に示すCVD装置の内部に組み込んだ。ウェハ保持体2の上に直径300mmのシリコンウェハ3を載せて温度700℃に加熱した。一方、ガスシャワー体1のヒーター回路パターン12に200Vの電圧を印加してガスシャワー体1を600℃に加熱した状態で反応ガスを貫通孔11に通過させてシリコンウェハ3の表面上に供給した。この状態でシリコンウェハ3の表面における温度分布を輻射表面温度計によって測定したところ、±0.6℃であった。また、所定の反応ガスを用いて窒化チタン(TiN)膜をシリコンウェハ3の表面上に形成する処理を30時間行なったところ、ガスシャワー体1の貫通孔11において貫通孔の閉塞が見られた。シリコンウェハ3の表面上においてはパーティクルが発生し、ガスシャワー体1の清掃が必要となった。その後、ガスシャワー体1のヒーター回路パターン12への電源の供給を停止させると、ガスシャワー体1の温度は600℃から室温まで17分で到達した。また、ヒーター回路パターン12に200Vの電圧を印加して電源を供給したところ、ガスシャワー体1の温度は室温から600℃まで7分で到達した。
(実施例22)
実施例1と同じ製造方法によって窒化アルミニウム焼結体基材を2枚製造した。貫通孔の数を30個にした以外はすべて実施例1と同じ仕様のガスシャワー体を製造した。
得られたガスシャワー体1を図1に示すようなCVD装置に組み込んだ。ウェハ保持体2の上に直径300mmのシリコンウェハ3を載せて温度700℃に加熱した。一方、ガスシャワー体1のヒーター回路パターン12に200Vを印加してガスシャワー体1を600℃に加熱した状態で反応ガスを貫通孔11に通過させることによりシリコンウェハ3の表面上に供給した。この状態でシリコンウェハ3の表面における温度分布を輻射表面温度計によって測定したところ、±7.0℃であった。また、窒化チタン膜(TiN膜)をシリコンウェハ3の表面上に形成する処理を100時間行なったが、貫通孔の閉塞等は見られなかった。
その後、ヒーター回路パターン12に供給する電源を停止すると、ガスシャワー体1の温度が600℃から室温になるまで10分かかった。また、ヒーター回路パターン12に200Vの電圧を印加して電源を供給したところ、ガスシャワー体1の温度は室温から600℃まで6分で到達した。
(実施例23)
実施例1と同じ製造方法によって窒化アルミニウム焼結体基材を2枚作製した。1枚の窒化アルミニウム焼結体基材にモリブデン(Mo)ペーストを塗布することによって導電層を形成した以外は実施例1と全く同じ手法でガスシャワー体を作製した。
実施例1と同じ手法でシリコンウェハの表面における温度分布を測定したところ、±0.4℃であった。また、実施例1と同様に膜を形成する処理を100時間行なったが、貫通孔は閉塞しなかった。ガスシャワー体の室温から600℃までの昇温時間は6分、電源の供給を停止させた後の室温までの降温時間は10分を要した。
(実施例24)
実施例1と同じ製造方法によって窒化アルミニウム焼結体基材を2枚作製した。1枚の窒化アルミニウム焼結体基材に銀−パラジウム(Ag−Pd)ペーストを塗布することによって導電層を形成した以外は実施例1と全く同じ手法でガスシャワー体を作製した。
実施例1と同じ手法でシリコンウェハの表面における温度分布を測定したところ、±0.4℃であった。また、実施例1と同様に膜を形成する処理を100時間行なったが、貫通孔は閉塞しなかった。ガスシャワー体の室温から600℃までの昇温時間は6分、電源の供給を停止させた後の室温までの降温時間は10分を要した。
(実施例25)
実施例1と同じ製造方法によって窒化アルミニウム焼結体基材を2枚作製した。1枚の窒化アルミニウム焼結体基材にニッケル−クロム(Ni−Cr)ペーストを塗布することによって導電層を形成した以外は実施例1と全く同じ手法でガスシャワー体を作製した。
実施例1と同じ手法でシリコンウェハの表面における温度分布を測定したところ、±0.4℃であった。また、実施例1と同様に膜を形成する処理を100時間行なったが、貫通孔は閉塞しなかった。ガスシャワー体の室温から600℃までの昇温時間は6分、電源の供給を停止させた後の室温までの降温時間は10分を要した。
(実施例26〜30)
実施例1と同じ製造方法で、窒化アルミニウム焼結体基材を1枚とタングステン導電層を形成した窒化アルミニウム焼結体基材を1枚作製し、熱膨張係数が2.5×10-6/℃、3×10-6/℃、5×10-6/℃、7.9×10-6/℃、10×10-6/℃のガラスをそれぞれ用いて2枚の焼結体を窒素ガス中にて温度700℃で接合した。昇温速度の目標は30分/600℃以内であったが、それぞれ35分で割れ、6分で割れ、6分以下で割れず、8分で割れ、80分で割れた。
(比較例1)
実施例1と同じ製造方法によって貫通孔を有する窒化アルミニウム焼結体基材を2枚製造した。1枚の窒化アルミニウム焼結体基材の一方の表面上にガラス粉末を印刷塗布した。この窒化アルミニウム焼結体基材の一方の表面を温度500℃で脱脂した後、その上にもう1枚の窒化アルミニウム焼結体基材を重ね合わせてモリブデン製の治具で固定し、重しを載せて、温度650℃の窒素ガス中で接合した。このようにして、図11に示すようなガスシャワー体1を製造した。図11に示すように、窒化アルミニウム焼結体基材10aと10bはガラス層13によって接合されている。ガスシャワー体1には複数個の貫通孔11が形成されている。
得られたガスシャワー体1を図1に示すようなCVD装置に組み込んだ。ウェハ保持体2の表面上に直径300mmのシリコンウェハ3を載せて温度700℃に加熱した。ガスシャワー体1の貫通孔11に反応ガスを通過させてシリコンウェハ3の表面上に供給した。この状態でシリコンウェハ3の表面における温度分布を輻射表面温度計によって測定したところ、±15℃であった。また、シリコンウェハ3の表面上に窒化チタン膜を形成する処理を100時間行なったところ、ガスシャワー体1の基材の表面や貫通孔11に膜の付着や貫通孔の閉塞は見られなかった。
下のウェハ保持体2からの輻射熱でガスシャワー体1も徐々に昇温し、600℃に達するまで180分を要した。ウェハ保持体2への電力供給を停止させると、ガスシャワー体1は15分で室温に達した。
(比較例2)
窒化アルミニウム粉末に焼結助剤としてイットリア(Y2O3)を5質量%とバインダとを添加して分散混合した後、焼結後の寸法で外径が300mm、厚みが5mmになるように金型でプレス成形することにより、2枚の窒化アルミニウム成形体を作製した。2枚の窒化アルミニウム成形体の間にコイルの巻き外径が5mmになるように直径0.5mmのモリブデン線を10mmピッチの渦巻状に配置させた状態で、温度1850℃にてホットプレス焼結した。焼結後にヒーターコイルの配置された領域に接触しないように直径0.5mmの貫通孔を1個ずつマイクロダイヤモンドドリルで窒化アルミニウム焼結体基材に形成した。このようにして50個の貫通孔を窒化アルミニウム焼結体基材に形成した。図12に示すようにヒーターコイル線16を窒化アルミニウム焼結体基材10に内蔵したガスシャワー体1が得られた。
このガスシャワー体1を図1に示すようなCVD装置に組み込んだ、ウェハ保持体2の上に直径300mmのシリコンウェハ3を載せて温度700℃に加熱した。一方、ガスシャワー体1のヒーターコイル線16に200Vを印加してガスシャワー体1を600℃に加熱した状態で反応ガスを貫通孔11に通過させることによってシリコンウェハ3の表面上に供給した。この状態でシリコンウェハ3の表面における温度分布を輻射表面温度計によって測定したところ、±10℃であった。また、窒化チタン膜をシリコンウェハ3の表面に形成する処理を8時間行なったところ、ガスシャワー体1の基材の表面や貫通孔に膜が付着し、また貫通孔の閉塞が見られた。シリコンウェハ3の表面上にもパーティクルが発生し、ガスシャワー体1の清掃が必要となった。その後、ヒーターコイル線16に供給する電源を停止すると、ガスシャワー体1の温度が600℃から室温になるまで180分かかった。また、ヒーターコイル線16に200Vの電圧を印加して電源を供給したところ、ガスシャワー体1の温度は室温から600℃になるまで30分かかった。
(比較例3)
実施例1と同じ製造方法によって貫通孔が形成された窒化アルミニウム焼結体基材を6枚製造した。1枚の窒化アルミニウム焼結体基材の上にタングステンの導電層を実施例1と同じ方法で形成して、6枚の焼結体の間にガラス層を介在させて実施例1と同じ方法で接合した。
得られたガスシャワー体1を図1に示すCVD装置の内部に組み込んだ。ウェハ保持体2の上に直径300mmのシリコンウェハ3を載せて温度700℃に加熱した。一方、ガスシャワー体1のヒーター回路パターン12に200Vの電圧を印加してガスシャワー体1を600℃に加熱した状態で反応ガスを貫通孔11に通過させてシリコンウェハ3の表面上に供給した。この状態でシリコンウェハ3の表面における温度分布を輻射表面温度計によって測定したところ、±0.8℃であった、また、所定の反応ガスを用いて窒化チタン(TiN)膜をシリコンウェハ3の表面上に形成する処理を14時間行なったところ、ガスシャワー体1の表面や貫通孔に膜が付着し、また貫通孔の閉塞が見られた。シリコンウェハ3の表面上においてはパーティクルが発生し、ガスシャワー体1の清掃が必要となった。その後、ガスシャワー体1のヒーター回路パターン12への電源の供給を停止させると、ガスシャワー体1の温度は600℃から室温になるまで30分かかった。また、ヒーター回路パターン12に200Vの電圧を印加して電源を供給したところ、ガスシャワー体1の温度は室温から600℃になるまで15分かかった。
以上の実施例1〜30と比較例1〜3におけるガスシャワー体の構造と結果を表1に示す。なお、表1において『Wポスメタ』はタングステンを含む導電層がポストメタライズ法によって形成されることを意味し、『Wコファイヤー』はタングステンを含む導電層がコファイヤー法によって形成されることを示し、『Moコイル/HP』はモリブデンコイル線を介在させた状態でホットプレス焼結によって焼結体基材を製造することを示している。
以上に開示された実施の形態や実施例はすべての点で例示的に示されるものであり、制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態や実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変更を含むものである。