JP2005173398A - 吸音装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 所定の周波数域における高い吸音率を実現しながら、低周波数域においてもある程度の吸音率が確保できる吸音装置を提供する。
【解決手段】 板厚方向に貫通する多数の微細孔を備えた2枚の微細孔パネル10,20を、所定間隙30を介して相対して配置する。
【選択図】 図1
【解決手段】 板厚方向に貫通する多数の微細孔を備えた2枚の微細孔パネル10,20を、所定間隙30を介して相対して配置する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、内装材やパーティション等に適用される吸音装置に関する。
物体の体積の中に通気性の小さな孔を持つ材料、いわゆる多孔質の材料は音を吸収する性質を持つことが知られており、吸音用途に昔から多種の材料が利用されてきて、グラスウール、ロックウールなどが著名である。
しかしながら、多孔質の材料の吸音性能は、使用する厚さに依存し、使用する厚さが吸音の対象とする音の波長の4分の1よりも薄くなると、吸音率が急速に低下するという欠点がある(下記非特許文献1参照)。
また、多孔質材料の中には、繊維質や粉塵などを発生し、周囲の環境を損なうものがあり、用途が限定される場合があった。
さらに、一般に多孔質材料は耐久性に乏しいものが多く、油、薬品、塵埃、湿気などによる劣化が生じ、環境条件の厳しいところでの利用には不利である。
ところで、多数個の微細な孔をその板厚方向に貫通させた板(以下、微細孔パネルと称する。)を剛壁の直前に一定間隔を隔てて配置し、微細孔の中の吸気の体積、および微細孔パネルと剛壁との間の空気層でヘルムホルツ共鳴器を構成し、微細な孔の部分の摩擦損失で吸音させる構造を備えた吸音装置が、Maa Dah-Youによって考案されている(下記非特許文献2、3参照)。
建築・環境音響学 第2版 前川純一、森本雅之、阪上公博著、共立出版刊、2000年,第81頁〜 Theory and design of microperforated panel sound-absorbing constructions Maa Dah-You,Scientia Sinica,Vol.XVIII,No.1,pp55-71,Jan-Feb.1975 Potential of microperforated panel absorber Maa Dah-You,Journal of the Acoustical Society of America,Vol.104,No.5,pp2861-2866,Nov.1998
建築・環境音響学 第2版 前川純一、森本雅之、阪上公博著、共立出版刊、2000年,第81頁〜 Theory and design of microperforated panel sound-absorbing constructions Maa Dah-You,Scientia Sinica,Vol.XVIII,No.1,pp55-71,Jan-Feb.1975 Potential of microperforated panel absorber Maa Dah-You,Journal of the Acoustical Society of America,Vol.104,No.5,pp2861-2866,Nov.1998
しかしながら、非特許文献2及び3に基づく構造の吸音装置は、共鳴器としての共振周波数では高い吸音率を示すが、高い吸音率は比較的狭い周波数領域内でしか得られず、共振周波数から遠ざかるにつれて吸音率は急速に低下してしまうという欠点があった。
さらに、低周波域における吸音性能を得ようとすれば、共振器としての要求から、微細孔パネルと剛壁との間の空気層を極端に厚くしなければならず、実用に供し難い大きな寸法になってしまうことが多かった。
そこで、本発明は、所定の周波数域における高い吸音率を実現しながら、低周波数域においてもある程度の吸音率が確保できる吸音装置を提供することを目的とする。
本発明は、以下の手段を提供する。すなわち、
[1]板厚方向に貫通する多数の微細孔を備えた2枚の微細孔パネルを所定間隙を介して相対して配置したことを特徴とする吸音装置。
[1]板厚方向に貫通する多数の微細孔を備えた2枚の微細孔パネルを所定間隙を介して相対して配置したことを特徴とする吸音装置。
[2]前記2枚の微細孔パネルは、同一構造を有することを特徴とする前項1に記載の吸音装置。
[3]板厚方向に貫通する多数の微細孔を備えた3枚以上の微細孔パネルを、それぞれ同一または異なる所定間隔を介して相対して配置したことを特徴とする吸音装置。
[4]前記微細孔の直径は、0.5mm以下であることを特徴とする前項1〜3のいずれかに記載の吸音装置。
[5]前記微細孔のピッチは、0.8mm以上、10.0mm以下であることを特徴とする前項1〜4のいずれかに記載の吸音装置。
[6]前記微細孔パネルの板厚は、0.1mm以上、1.0mm以下であることを特徴とする前項1〜5のいずれかに記載の吸音装置。
[7]前記2枚の微細孔パネルの間隙が20mm以上、100mm以下であることを特徴とする前項1〜6のいずれかに記載の吸音装置。
[8]周波数が150Hz以上、600Hz以下の周波数領域において、吸音率のピークを有することを特徴とする前項1〜7のいずれかに記載の吸音装置。
[9]前記ピークにおける吸音率が0.9以上であることを特徴とする前項8に記載の吸音装置。
[10]吸音率のピーク波形の実質的な勾配部分における低周波側の終端よりも低周波側の低周波領域において、略一定の吸音率を維持していることを特徴とする前項1〜9のいずれかに記載の吸音装置。
[11]前記低周波領域において、0.5以上の吸音率を有することを特徴とする前項10に記載の吸音装置。
[12]前記低周波領域において、0.1以上、0.4以下の透過率を有することを特徴とする前項1〜11のいずれかに記載の吸音装置。
[13]前記3枚以上の微細孔パネルの各間隔は、当該装置の外側に位置し、最も音源に近い側の間隔が最も狭くなるように、各微細孔パネルを配置したことを特徴とする前項3に記載の吸音装置。
[14]前記3枚以上の微細孔パネルの各間隔は、音源に近い側から遠い側に向かって間隔が順次広くなるように、各微細孔パネルを配置したことを特徴とする前項13に記載の吸音装置。
[15]前記3枚以上の微細孔パネルは、当該装置の両外側に位置する間隔が狭く、当該装置の両外側から内側に向かって順次広くなるように、各微細孔パネルを配置したことを特徴とする前項13に記載の吸音装置。
上記[1]の発明によると、極めて簡潔な構成でありながら、所定の周波数域における高い吸音率を実現しながら、過大な空気層の厚さを必要とすることなく、低周波数域においてもある程度の吸音率が確保できる。
上記[2]の発明よると、装置のどちら側から到来する音に対しても同じ吸音性能を発揮することができる。
上記[3]の発明によると、高い設計の自由度が得られるため、極めて優れた吸音性能を得ることができる。
上記[4]の発明によると、透過率を抑えながら高いエネルギー吸収率を得て、優れた吸音性能を実現することができる。
上記[5]の発明によると、透過率を抑えながら高いエネルギー吸収率を得て、優れた吸音性能を実現することができる。
上記[6]の発明によると、透過率を抑えながら高いエネルギー吸収率を得て、優れた吸音性能を実現することができる。
上記[7]の発明によると、透過率を抑えながら高いエネルギー吸収率を得て、優れた吸音性能を実現することができる。
上記[8]の発明によると、高い吸音率を得て、優れた吸音性能を実現することができる。
上記[9]の発明によると、高い吸音率を得て、優れた吸音性能を実現することができる。
上記[10]の発明によると、低周波領域における吸音率を高く設定することが可能となる。
上記[11]の発明によると、低周波領域において十分に高い吸音率を確保し、幅広い周波数域における優れた吸音性能を実現することができる。
上記[12]の発明によると、低周波領域において十分に高い吸音率を確保し、幅広い周波数域における優れた吸音性能を実現することができる。
上記[13]の発明によると、幅広い周波数域における優れた吸音性能を実現することができる。
上記[14]の発明によると、幅広い周波数域において、極めて優れた吸音性能を実現することができる。
上記[15]の発明によると、装置のどちら側から到来する音に対しても、幅広い周波数域における優れた吸音性能を実現することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態は、2枚の微細孔パネル(MPP)を用いたものである。
第1実施形態は、2枚の微細孔パネル(MPP)を用いたものである。
図1は、本発明の第1実施形態にかかる吸音装置の一部断面斜視図である。図2は、同装置の断面図である。
図1に示すように、この吸音装置は、第1の微細孔パネル10と第2の微細孔パネル20とが所定の間隙30を介して相対して配置されている。この間隙30は、吸音装置の空気層として機能する。また、第1、第2の微細孔パネル10,20には、それぞれ板厚方向に貫通する多数の微細孔11…,21…が設けられている。そして、この吸音装置は、従来のヘルムホルツ型吸音器のような剛壁を有していない。
図2に示す吸音装置における設計諸元、すなわち第1,第2の微細孔パネル10,20が相対する間隔(空気層の厚み)D1、第1,第2の微細孔パネル10,20における微細孔11…,21…の直径(孔径)d1,d2、第1,第2の微細孔パネル10,20の板厚t1,t2、および第1,第2の微細孔パネル10,20における微細孔11…,21…のピッチb1,b2は、吸音装置としての要求性能に応じて適宜設定すればよい。
具体的に、微細孔11…,21…の直径d1,d2は、他の設計諸元との関係によるが、一般的には、0.5mm以下を好適な範囲として挙げることができる。
また、微細孔11…,21…のピッチb1,b2は、他の設計諸元との関係によるが、一般的には、0.8mm以上、10.0mm以下を好適な範囲として挙げることができる。
また、微細孔パネル10,20の板厚t1,t2は、他の設計諸元との関係によるが、一般的には、0.1mm以上、1.0mm以下を好適な範囲として挙げることができる。
また、2枚の微細孔パネル10,20の間隙D1は、他の設計諸元との関係によるが、一般的には、20mm以上、100mm以下を好適な範囲として挙げることができる。
このような吸音装置の具体的な用途としては、たとえば部屋内に設けられるパーティションを挙げることができる。また、建物の内壁や外壁、あるいは天井や床板にも適用することができる。
この吸音装置の微細孔パネル10,20は透明でも不透明でもよい。すべての微細孔パネル10,20を透明とすれば、視野を遮ることなく、吸音および遮音を行うことができる。
各微細孔パネル10,20に設けられる多数の微細孔11…,21…は、断面が真円形に限らず、任意の形状を採用することができ、楕円形やトラック形状等、あるいは六角形や四角形、三角形等であってもよい。また、各微細孔11…,21…は、たとえば、テーパー形状やラッパ形状のように、孔の深さ方向(微細孔パネルの厚み方向)について断面形状が変化するようにしてもよい。また、各微細孔パネル10,20には、複数種類(異なる形状)の微細孔を形成するようにしてもよい。
(設計諸元と吸音性能の関係)
次に、第1実施形態のように2枚の微細孔パネルを備えた吸音装置における各設計諸元と吸音・遮音性能の関係について説明する。
次に、第1実施形態のように2枚の微細孔パネルを備えた吸音装置における各設計諸元と吸音・遮音性能の関係について説明する。
<電気的等価回路の導出>
まず、この吸音装置の音響系の電気的等価回路を求める。
まず、この吸音装置の音響系の電気的等価回路を求める。
非特許文献1および2によれば、音の周波数をf、角周波数ω=2πf、虚数単位をjとすると、微細孔パネルの(空気のインピーダンスを規準とする)規準化音響インピーダンスzは複素数表現z=r+jωmで書き表すことができる。微細孔の孔径をd、板厚をt、微細孔のピッチをbとするとき、(空気のインピーダンスを規準とする)規準化音響インピーダンスzの実数部(規準化音響レジスタンス)r、および虚数部(規準化音響リアクタンス)mは、それぞれ下記式で書き表すことができる。
すなわち、MPPの材質が非金属材料の場合には、
また、MPPの材質が金属材料の場合には、
ここに、cは空気中の音速、μは粘性係数で一般に1.56・10-5m2/sec、νは大気圧中の熱伝導係数で2.0・10-5m2/secである。
したがって、第1,第2の微細孔パネル10,20の基準化音響インピーダンス(以下、インピーダンスという。)は、それぞれ、r1+jωm1,r2+jωm2と書き表すことができ、それぞれの規準化音響レジスタンスr1,r2および規準化音響リアクタンスm1,m2よび規準化音響リアクタンスは、上式に倣って第1,第2の微細孔パネル10,20の孔径d1,d2,板厚t1,t2,ピッチb1,b2により書き表すことができる。
一方、これら第1、第2の微細孔パネル10,20の間隙D1、すなわち第1、第2の微細孔パネルの間にある厚さD1の空気層30の規準化音響リアクタンスは、−cot((ωD1)/c)として表すことができる。
したがって、第1の微細孔パネル10が音源側に位置し、第2の微細孔パネル20が音源と反対側(出力側)に位置しているとすれば、これら第1、第2の微細孔パネル10,20および空気層30を備えたこの音響系の電気的等価回路は、図3のように書き表すことができる。
ここに、Z0,Z1,Z2はそれぞれの回路の接合点から、出力側へのインピーダンスを表している。
<吸音率、透過率、エネルギー吸収率の導出>
次に、この吸音装置の吸音率、透過率およびエネルギー吸収率(エネルギー消費率)を導く。
次に、この吸音装置の吸音率、透過率およびエネルギー吸収率(エネルギー消費率)を導く。
音源と反対側(出力側)の第2の微細孔パネル20、空気層30、出力側の大気からなるインピーダンスZ1は、
と表される。係数Kr,Kiを導入すればZ1は、
と整理できる。
さらに、音源側の第1の微細孔パネル10を加えたインピーダンスZ0は、
この音響回路の全電流に相当する規準化粒子速度I0は、
負荷Z0に加わる電圧に相当する規準化音圧E0は、
したがって、負荷Z0で消費する規準化音響エネルギーP0は、
となる。この規準化音響エネルギーP0は、この吸音装置に吸収されるエネルギー、すなわちこの吸音装置の吸音率を示している。
負荷Z1に加わる規準化音圧E1は、
第2の微細孔パネル20と出力側空気インピーダンスで直列に構成された分岐を流れる規準化粒子速度I2Aは、
出力側空気インピーダンスでの規準化音圧E2Aは、
したがって、出力側空気インピーダンスで消費する規準化音響エネルギーP2Aは、
となる。この出力側空気インピーダンスで消費する規準化音響エネルギーP2Aは、この吸音装置から出力側空気に放散されるエネルギー、すなわちこの吸音装置から外部への透過率を示している。
2枚の微細孔パネル10,20と空気層30で消費する規準化音響エネルギーPdissipationは、
となる。この2枚の微細孔パネル10,20と空気層30で消費する規準化音響エネルギーPdissipationは、この吸音装置内部でのエネルギー吸収率(エネルギー消費率)を示している。
上述の数式を用いれば、この吸音装置に入射する音の周波数毎に、この吸音装置の吸音率、透過率およびエネルギー吸収率を計算することができる。
(具体的設計例)
次に、2枚の微細孔パネル10,20を用いた第1実施形態において、設計諸元を様々に設定した各種の設計例を示し、各設計例についてコンピュータシミュレーション実験によって得られた吸音性能を説明する。
次に、2枚の微細孔パネル10,20を用いた第1実施形態において、設計諸元を様々に設定した各種の設計例を示し、各設計例についてコンピュータシミュレーション実験によって得られた吸音性能を説明する。
<第1の設計例>
表1は、この第1の設計例の設計数値データである。図4は、この第1の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。図5は、同じく第1の設計例におけるインピーダンスの位相角の周波数特性を示すグラフである。図6は、同じく第1の設計例におけるインピーダンスの振幅の周波数特性を示すグラフである。
表1は、この第1の設計例の設計数値データである。図4は、この第1の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。図5は、同じく第1の設計例におけるインピーダンスの位相角の周波数特性を示すグラフである。図6は、同じく第1の設計例におけるインピーダンスの振幅の周波数特性を示すグラフである。
この第1の設計例では、図4に示すように、吸音率およびエネルギー吸収率は、約800Hzにおいてそれぞれ0.98および0.93の最大値を示し、およそ250Hzより低周波帯域ではそれぞれ0.57および0.47の略一定値を示している。透過率は低周波帯域より約500Hzまでは0.12と略一定の値を示し、以後の高周波数帯域では透過率はほとんどゼロとなっている。また、図5に示すように、Z0の位相角がゼロとなる周波数、すなわち共振周波数は約800Hzとなっている。
このように、この第1の設計例では、共振周波数である約800Hzの音に対しては、従来のヘルムホルツ共鳴器型の吸音装置に劣らない、極めて優れた吸音性能を備えていることが確認できる。
さらに、この第1の設計例では、共振周波数が最大値を示すピーク波形より低い低周波数域においても、かなり高い略一定の吸音率およびエネルギー吸収率が確保されており、極めて広い周波数範囲において優れた吸音性能を備えていることが確認できる。
さらに、音源の反対側への透過率は低周波域より共振周波数近傍までは、約0.12という低い値となっており、それより高周波域においては音の透過がさらに低下し非常に小さくなっていることから、音源の反対側への音洩れも比較的小さいものであることが確認できる。
<第2の設計例>
表2は、第2の設計例の設計数値データである。図7は、この第2の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。
表2は、第2の設計例の設計数値データである。図7は、この第2の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。
この第2の設計例では、図7に示すように、約800Hzの共振周波数近傍領域において0.9以上の吸音率とエネルギー吸収率が得られている。一方、透過率が非常に低いため、低周波域では吸音率およびエネルギー吸収率も低くなっており、低周波域での吸音性のは、上述の第1の設計例より劣っている。この第2の設計例から、低周波域でのより優れた吸音性能を確保するには、ある程度の透過率を有している方が好ましいことが分かる。
なお、この第2の設計例は、第1の設計例と比較して第2の微細孔パネル20の微細孔21…の孔径が小さくなっていることから、第2の微細孔パネル20が剛壁の状態に近づいており、このため従来のヘルムホルツ共鳴器型の吸音装置に近い吸音特性が得られていると考えられる。
<第3の設計例>
表3は、第3の設計例の設計数値データである。図8は、この第3の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。
表3は、第3の設計例の設計数値データである。図8は、この第3の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。
この第3の設計例では、図8に示すように、低周波域から共振周波数付近まで0.9に近い高い吸音率が得られており、音源側の吸音には有効であることが分かる。しかしながら、透過率が約0.40と比較的高い値になっており、音源と反対側への遮音性能は、上述した第1の設計例より劣っている。また、共鳴に相当する顕著なピークが認められない。
<第4の設計例>
表4は、第4の設計例の設計数値データである。図9は、この第4の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。
表4は、第4の設計例の設計数値データである。図9は、この第4の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。
この第4の設計例では、図9に示すように、低周波域において0.9を越える高い吸音率が得られており、低周波域における音源側の吸音には有効であることが分かる。しかしながら、低周波域の透過率が約0.55と比較的高い値になっており、音源と反対側への遮音性能は上述した第1の設計例より劣っている。また、約800Hzの共振周波数において吸音率およびエネルギー吸収率のピークが認められるが、この共振周波数の低域側で吸音率およびエネルギー吸収率に大きなディップ(吸音およびエネルギー吸収の低下)が発生している。
<第5の設計例>
表5は、第5の設計例の設計数値データである。図10は、この第5の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。
表5は、第5の設計例の設計数値データである。図10は、この第5の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。
この第5の設計例では、図10に示すように、低周波域では比較的高い吸音率が得られており、低周波域における音源側の吸音には有効であることが分かる。しかしながら、31.5Hzでは透過率が約0.50と比較的高い値になっており、音源と反対側への遮音性能は上述した第1の設計例より劣っている。また、約300Hzの共振周波数において吸音率およびエネルギー吸収率のピークが認められるが、共振周波数に近づくにつれて透過率の低下する傾向が上述した第4の設計例よりも顕著であり、この共振周波数の低域側での吸音率およびエネルギー吸収率のディップ(吸音およびエネルギー吸収の低下)もさらに大きくなっていることが分かる。
<第6の設計例>
表6は、第6の設計例の設計数値データである。図11は、この第6の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。
表6は、第6の設計例の設計数値データである。図11は、この第6の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。
この第6の設計例では、図11に示すように、低周波域では比較的高い吸音率が得られており、低周波域における音源側の吸音には有効であることが分かる。しかしながら、共鳴は見られず、エネルギー吸収が殆ど行われていないことが分かる。
<第7の設計例>
表7は、第7の設計例の設計数値データである。図12は、この第7の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。
表7は、第7の設計例の設計数値データである。図12は、この第7の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。
この第7の設計例では、図12に示すように、低周波域では高い吸音率が得られており、低周波域における音源側の吸音には有効であることが分かる。また、約1600Hzの共振周波数において、エネルギー吸収率のピークが見られる。しかしながら、この共振周波数より低周波域では透過率が高く、音源の反対側への遮音効果は低い。これは、第1の微細孔パネル10は比較的高い音響インピーダンスを持っているが、第2の微細孔パネル20が比較的低い音響インピーダンスしか持っていないために、共振周波数の近傍以外では、ほとんどの入射音が吸音装置を素通りしてしまうためであると考えられる。
(設計諸元の設定)
以上の各設計例から、吸音装置としてより好ましい設計諸元の設定について検討する。
以上の各設計例から、吸音装置としてより好ましい設計諸元の設定について検討する。
上記の設計例の中では、第1の設計例(表1、図4)の吸音性能が、種々の観点から最も優れており、表1の設計例における吸音性能は本発明にかかる吸音装置の吸音性能の理想型の一つである。
この第1の設計例から優れた吸音性能を得るために充足することが望ましいポイントとしては、(1)所定の周波数領域に吸音率のピークが存在すること、(2)吸音率のピークが十分に大きいこと、(3)低周波領域において略一定の吸音率を維持していること、(4)低周波域において所定の吸音率を持つこと、(5)低周波領域において所定の透過率を持つこと、の5点を挙げることができる。
以下、これら5つのポイントと、それを満たすための具体的な設計諸元の設定条件について説明する。
<1>所定の周波数領域に吸音率のピークが存在すること。
共振による吸音率のピークが存在すると、その近傍において優れた吸音性能が得ることができる。
吸音率のピークを存在させるべき所定の周波数領域は、求められる吸音性能に応じて決まるものである。主に日常的な騒音の除去を目的とする場合であれば、この吸音率のピークが存在するべき所定の周波数領域としてたとえば150Hz〜2000Hzを挙げることができる。特に重低音の騒音を中心的に除去することが求められるのであれば、この所定の周波数領域としてたとえば150Hz〜300Hzを挙げることができる。逆にある程度の高音域の騒音を中心的に除去することが求められるのであれば、この所定の周波数領域としてたとえば300Hz〜600Hzを挙げることができる。
所望する所定の周波数領域に吸音率のピークを存在させるための具体的な条件は、以下のとおりである。
一般的に、負荷の音響インピーダンスZ0を抵抗成分rとリアクタンス成分xから成る複素数表現で表せば、Z0=r+jxとなる。
この表現を用いれば、粒子速度I0は、上式[数12]より、
同様に、音圧Eは上式[数13]より、
負荷Z0で消費するエネルギーP0は、上式[数14]より、音圧と粒子速度の内積で計算することができて、
それ故に、負荷Z0で消費する規準化音響エネルギーP0、換言すれば吸音率αは、周波数特性を持つリアクタンス成分xがゼロとなる(あるいは限りなくゼロに近づく)周波数において最大となり、その最大値は、
である。
2枚の微細孔パネル10,20で構成された場合、負荷の音響インピーダンスZ0のリアクタンス成分xは上式[数11]より、
が成立する周波数においてゼロとなる。これを展開すれば、
となり、これが成り立つ周波数においてリアクタンス成分xがゼロとなり、吸音率が最大となる。なお、透過率は周波数による変動が少ないので、吸音率が最大となれば、吸音率と透過率の差であるところのエネルギー吸収率も最大値に近づく。
したがって、所定の周波数領域に吸音率のピークを存在させるには、[数25]が所望する周波数領域内の所定の周波数(角周波数ω)において成り立つように各設計諸元を設定することが条件となる。
なお、この[数25]では、第1,第2の微細孔パネル10,20の規準化インピーダンスを標記した際の実数部r1,r2および虚数部m1,m2が含まれているが、これらは[数1]〜[数6]に示したように、各パネル10,20の微細孔の孔径d1,d2、板厚t1,t2、微細孔のピッチb1,b2で表現されるものである。
<2>吸音率のピークが十分に大きいこと。
吸音率のピークは、求められる吸音性能に応じて、十分に大きいことが求められる。ピークの値が大きければ、通常、その近傍(ピークに対する裾野部分)の吸音率も高くなり、その結果、ピークの存在する周波数を含む広がりのある周波数領域において高い吸音性能が確保できることにつながる。
このピークにおける吸音率の大きさは、吸音性能の他の側面との優先度合い等によるが、たとえば0.5以上であることが必要である。さらに、吸音装置としては、0.8以上であることが望ましく、0.9以上があれば好適な吸音装置として各種の用途に適用することができ、0.95以上があれば最適である。
十分に大きい吸音率のピークを確保するための具体的な条件は、以下のとおりである。
2枚の微細孔パネル10,20で構成された場合、音響インピーダンスの抵抗成分rは上式[数11]より、
本発明において、ある特定の設計値を持つ吸音装置の吸音値の最大値αmaxは、上式[数23]より、インピーダンスの抵抗成分のみの関数であるため、吸音率の最大値の抵抗成分rについての導関数はゼロであることから、次式が導き出される。
したがって、抵抗成分rはr>0であるので、吸音率の最大値を最も大きくするためには、rの値をできるだけ1に近づくように、各設計諸元を定めることが条件となる。
一般的には、
を満足するように設計諸元を定めればよい。
さらに具体的な条件は、吸音率は上式[数23]に示されたものであるので、これを所望の吸音率のピークの大きさ以上となるように定式化すればよい。たとえば、吸音率の最大値を0.9以上とすることが求められる場合ならば、これを満たす条件は、0.52≦r≦1.9となる。
なお、上式[数28]から、音源側に位置する第1の微細孔パネル10のリアクタンス成分m1は吸音率を最大とする周波数には影響を及ぼすが、吸音率の最大値には影響を及ぼさず、一方では上式[数25]から、音源側にある第1の微細孔パネル10の抵抗成分r1は吸音率最大値には影響を及ぼすが、吸音率を最大とする周波数には影響を及ぼさないことが判る。
<3>低周波領域において略一定の吸音率を維持していること。
上述したように、従来の吸音装置では低周波音に対する吸音性能に難点があり、ヘルムホルツ型の吸音装置でも共振周波数では高い吸音率を示すが、共振周波数から遠ざかると吸音率は急速に低下してしまうという欠点があった。これに対し、上述した第1の設計例(図4)に明らかなように、本発明にかかる吸音装置によれば、その設計諸元の設定によっては、吸音率のピークよりも低周波側の領域において、略一定でかつある程度高い吸音率を維持することができる。
なお、この明細書において、低周波領域とは、ピーク波形の実質的な勾配部分における低周波側の終端よりも低周波側の領域をいうものとする。上述した第1、第2の設計例(図4,図7)であれば、125Hz〜250Hzよりも低周波側の領域である。低周波領域の具体例としては、100Hz〜200Hzの周波数領域を挙げることができる。
また、この明細書において、吸音率が略一定とは、実質的に吸音率が同程度であることをいう。具体的には、対象とする周波数領域における吸音率の最小値に対する最大値の比が0.8〜1.2程度に収まっていることをいうものとする。
低周波領域において略一定の吸音率を維持するための具体的な条件は、以下のとおりである。
低周波域から共振周波数近傍まで略一定の吸音率を維持するためには、規準化音響インピーダンスの位相角を小さい値に維持すればよい。
複素数表現された規準化音響インピーダンス、Z0=r+jxの位相角は、
特に低周波域においては、空気層の厚さが大きくない限り、cot(ωD1/c)が大きい値を持つので、位相角の近似式として、
が得られる。
したがって、低周波領域において略一定の吸音率を維持するためには、上式[数29]または[数30]に従って、低周波域の各振動数ωにおいても、基準化音響インピーダンスの位相角θが小さな値となるように、各設計諸元を定めることが条件となる。
具体的には、規準化音響インピーダンスの位相角θが、−0.6ラジアンよりゼロに近くなるように設計諸元を定めることが望ましい。さらに、−0.3ラジアンよりゼロに近くなるようにすると、好適である。
<4>低周波域において所定の吸音率を持つこと。
低周波域においては、略一定の吸音率を有することに加え、その吸音率がある程度高いものであることが望ましい。
この低周波域における吸音率の大きさは、吸音性能の他の側面との優先度合い等によるが、たとえば0.2以上であることが必要である。さらに、吸音装置としては、0.3以上であることが望ましく、0.5以上があれば好適な吸音装置として各種の用途に適用することができ、0.7以上があれば最適である。
低周波域において所定の吸音率を持つための具体的な条件は、以下のとおりである。
上式[数26]においても、低周波域においては、空気層の厚さが大きくない限り、cot(ωD1/c)が大きい値を持つので、規準化音響インピーダンスの抵抗成分の近似式として、
が得られる。この式[数31]の右辺第3項は、第2の微細孔パネル20の出力側の空気の規準化インピーダンスであることは明らかである。
上式[数22]において、低周波域ではリアクタンス成分xは略ゼロになるので、上式[数31]と組み合わせて
が得られる。
したがって、低周波域における吸音率が所定の値に近づくように上式[数32]に従って設計諸元を定めることが条件となる。
<5>低周波領域において所定の透過率を持つこと。
本発明にかかる吸音装置は、従来のヘルムホルツ型の吸音装置とは異なり、剛壁を有しないため、音源の反対側への音の透過が生じる。本発明にかかる吸音装置では、この音の透過の存在によって、この吸音装置によって吸収されるエネルギー(吸音率)は、この吸音装置内で熱等として消費するエネルギー(エネルギー吸収率)に、この吸音装置を透過する音のエネルギー(透過率)を加えたものとなるため、結果的に吸音率の向上に寄与することになる。
この低周波域における透過率の大きさ、すなわち洩れることが許容される音量の程度(上限)は求められる吸音性能によるが、たとえば0.05以上、0.5以下程度であることが望ましい。ある程度大きい音漏れを許容できる場合であれば、たとえば透過率を0.3〜0.4程度とすればよい。また、できるだけ音漏れを減らしたい場合には、たとえば透過率を0.1〜0.2程度としてもよい。
低周波域において所定の透過率を持つための具体的な条件は、以下のとおりである。
この吸音装置から出力側空気に放散されるエネルギー、すなわちこの吸音装置から外部への透過率は、[数18]に示したように、出力側空気インピーダンスで消費する規準化音響エネルギーP2Aとして求められる。
したがって、低周波域における透過率が所定の値に近づくように上式[数18]に従って設計諸元を定めることが条件となる。
一方、この吸音装置内で消費されるエネルギー吸収率は、大きいことが望ましく、低周波域においても、0.2以上程度を有することが望ましい。さらに、0.3以上であれば好適であり、0.4以上であれば最適である。
以上の各条件を連立して満足するように設計諸元を設定すれば、求められる吸音性能を備えた吸音装置を得ることができる。
[第2実施形態]
次に、本発明にかかる吸音装置の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、同一構造を有する2枚の微細孔パネル(MPP)を所定間隙を介して相対して配置することにより、吸音装置を構成したたものである。このような構成にすると、構造上、吸音装置に表裏がなくなるため、吸音装置のどちら側から到来する音に対しても同一の吸音・遮音性能を実現することができる。
次に、本発明にかかる吸音装置の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、同一構造を有する2枚の微細孔パネル(MPP)を所定間隙を介して相対して配置することにより、吸音装置を構成したたものである。このような構成にすると、構造上、吸音装置に表裏がなくなるため、吸音装置のどちら側から到来する音に対しても同一の吸音・遮音性能を実現することができる。
この第2実施形態にかかる吸音装置では、上述した第1実施形態と比較して、2枚の微細孔パネルの孔径、孔のピッチおよび板厚が同一であるという制約により設計諸元の設定の自由度は制限されるが、上述した第1実施形態と同様に求められる設計性能に応じた設計諸元を設定することができる。
以下、同一構造を有する2枚の微細孔パネルを用いた第2実施形態において、具体的な設計諸元を設定した2つの設計例についてコンピュータシミュレーション実験によって得られた吸音性能を説明する。
<第8の設計例>
表8は、第8の設計例の設計数値データである。図13は、この第8の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。設計数値から明らかなように、第8の設計例は、第1,第2の微細孔パネルの設計諸元が同一である第2実施形態の一例となっている。
表8は、第8の設計例の設計数値データである。図13は、この第8の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。設計数値から明らかなように、第8の設計例は、第1,第2の微細孔パネルの設計諸元が同一である第2実施形態の一例となっている。
この第8の設計例では、図13に示すように、31.5Hzから1000Hzの広い範囲で0.70以上の吸音率を維持し、共振周波数700Hzでは吸音率のピークが約0.95となっている。一方、350Hz以下の低周波域での透過率は約0.20であり、900Hzに近づくと殆どゼロになることが示されている。
<第9の設計例>
表9は、第9の設計例の設計数値データである。図14は、この第9の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。設計数値から明らかなように、第9の設計例は、第1,第2の微細孔パネルの設計諸元が同一である第2実施形態の一例となっている。
表9は、第9の設計例の設計数値データである。図14は、この第9の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。設計数値から明らかなように、第9の設計例は、第1,第2の微細孔パネルの設計諸元が同一である第2実施形態の一例となっている。
この第9の設計例では、図14に示すように、31.5Hzから1400Hzの広い範囲で0.70以上の吸音率を維持し、共振周波数1000Hzでは吸音率のピークが約0.95となっている。一方、500Hz以下の低周波域での放射率は約0.20であり、1200Hzに近づくと殆どゼロになることが示されている。
これらの結果から、第8、第9の設計例に示す第2実施形態の吸音装置は、いずれも低周波域から高周波域まで広い周波数範囲で優れた吸音・遮音性能を持っていることがわかる。また、2枚の微細孔パネルが同一構造を持っているので、吸音性能について表裏がなく、吸音装置のどちら側から到来する音に対しても、同じ効果を発揮することができる。
また、第8,第9の設計例を比較すると、両設計例は微細孔パネルの構造寸法は同一で、空気層の厚さのみが異なっているところ、これらの吸音性能の結果(図13、図14)を比較すると、共振周波数近傍の吸音率とエネルギー吸収率のピークおよび透過率の凹みが平行移動し、その他の領域の性能曲線は殆ど同じであることが分かる。これは、共振周波数近傍の吸音率とエネルギー吸収率のピークおよび透過率の凹みが生じる周波数領域の平行移動は空気層厚さに起因するものである。
[第3実施形態]
次に、本発明にかかる吸音装置の第3実施形態について説明する。この第3実施形態は、3枚以上の多数枚の微細孔パネルを用いて吸音装置を構成したものである。
次に、本発明にかかる吸音装置の第3実施形態について説明する。この第3実施形態は、3枚以上の多数枚の微細孔パネルを用いて吸音装置を構成したものである。
図16は、本発明の第3実施形態にかかる吸音装置の断面図である。
図16に示すように、この第3実施形態にかかる吸音装置では、n枚の微細孔パネル(MPP)をそれぞれ所定の間隙を介して相対して配置している。各微細孔パネル間の間隙は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。各間隙は、この吸音装置の空気層として機能する。また、各微細孔パネルには、それぞれ板厚方向に貫通する多数の微細孔が設けられている。各微細孔パネルの板厚は、同一であっても異なっていてもよい。また、各微細孔パネルの微細孔の大きさ(孔径)やピッチも同一であっても異なっていてもよい。
この図16に示す第3実施形態にかかる吸音装置における設計諸元、すなわち第1〜第nの微細孔パネルの相対する間隔(空気層の厚み)D1〜Dn-1、第1〜第nの微細孔パネルにおける微細孔の直径(孔径)d1〜dn、第1〜第nの微細孔パネルの板厚t1〜tn、および第1〜第nの微細孔パネルにおける微細孔のピッチb1〜bnは吸音装置としての要求性能に応じて適宜設定すればよい。
具体的には、上述した第1実施形態と同様に、各微細孔パネルの規準化音響インピーダンスは複素数表現r+jωmで書き表すことができ、第1〜第nの微細孔パネルの規準化音響レジスタンスr1〜rnおよび規準化音響リアクタンスm1〜mnは、[数1]〜[数6]に示したように、各微細孔パネルの設計諸元によって書き表すことができる。また、各パネル間の空気層の規準化音響リアクタンスは、−cot((ωD)/c)として表すことができる。したがって、これら第1〜第nの微細孔パネルおよび各パネル間の空気層を備えたこの音響系の電気的等価回路は、図17のように書き表すことができる。
この電気的等価回路から求められる吸音率、透過率、エネルギー吸収率は、第1実施形態において示した式[数14]、[数18]、[数19]に準じて計算することができる。
以下、多数枚の微細孔パネルを用いた第3実施形態において、具体的な設計諸元を設定した設計例についてコンピュータシミュレーション実験によって得られた吸音性能を説明する。
<第10の設計例>
表10は、第10の設計例の設計数値データである。図15は、この第10の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。設計数値から明らかなように、第10の設計例は、同一構造を持つ3枚の微細孔パネルを厚さ50mmの空気層を隔てて配置した第3実施形態の一例である。
表10は、第10の設計例の設計数値データである。図15は、この第10の設計例における吸音率、透過率およびエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。設計数値から明らかなように、第10の設計例は、同一構造を持つ3枚の微細孔パネルを厚さ50mmの空気層を隔てて配置した第3実施形態の一例である。
この第10の設計例では、図15に示すように、31.5Hzから250Hzの範囲では0.70の吸音率を、250Hz〜2800Hzの広い範囲で0.75以上の吸音率を維持し、特に1200Hz〜1800Hzでは吸音率のピークが約0.95以上となっている。一方、350Hz以下の低周波域での放射率は約0.16であり、1200Hzに近づくと殆どゼロになることが示されている。
この結果から、第10の設計例に示す第3実施形態の吸音装置は、低周波域から高周波域までの極めて広い周波数範囲において、極めて優れた吸音・遮音性能を持っていることがわかる。
さらに、この第10の設計例は、微細孔パネルの構造も空気層の配置も吸音装置の厚さ方向に対して対称の構造をもっているので、吸音性能にて表裏がなく、吸音装置のどちら側から到来する音に対しても、同じ吸音・遮音効果を得ることができる。
この第10の設計例のように、3枚以上の微細孔パネルを用いた第3実施形態の構成にすると、2枚の微細孔パネルによる構成と比較して高い設計の自由度が得られるため、極めて高度な吸音・遮音性能を実現することができる。
[第4実施形態]
次に、本発明にかかる吸音装置の第4実施形態について説明する。この第4実施形態は3枚以上の多数枚の微細孔パネルを用いて吸音装置を構成したものであり、特に空気層の厚さ(微細孔パネルの間隔)に注目して配置順序を工夫し、配置順序を最適化することにより、吸音率とエネルギー吸収率の高い範囲を拡張することを可能としたものである。
次に、本発明にかかる吸音装置の第4実施形態について説明する。この第4実施形態は3枚以上の多数枚の微細孔パネルを用いて吸音装置を構成したものであり、特に空気層の厚さ(微細孔パネルの間隔)に注目して配置順序を工夫し、配置順序を最適化することにより、吸音率とエネルギー吸収率の高い範囲を拡張することを可能としたものである。
<第11,第12の設計例>
表11は、第11設計例の設計数値データである。表12は、第12設計例の設計数値データである。図18は、これら第11,第12の設計例におけるエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。
表11は、第11設計例の設計数値データである。表12は、第12設計例の設計数値データである。図18は、これら第11,第12の設計例におけるエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。
これらの設計数値から明らかなように、第11,第12の設計例は、それぞれ5枚ずつの微細孔パネルから構成されており、両設計例の全てパネルは、微細孔の寸法(直径)、板厚、ピッチは全てのパネルとも同じ値を持つように設定されている。すなわち、両設計例は、空気層厚さのみが異なっているものである。なお、これら第11,第12の設計例は、ともに空気層の配置が吸音装置の厚さ方向に対称になっており、両側からの吸音性能が同一になるように構成されているものである。
第11の設計例(表11)では、装置の両外側に位置する空気層厚さが装置の内側の空気層厚さよりも薄くなるように配置されており、第12の設計例(表12)では、第11の設計例とは逆に、装置の内側の空気層厚さが装置の両外側の空気層厚さよりも薄くなるように配置されている。
エネルギー吸収率が0.6となる周波数で比較すると、第11の設計例の低周波側は140Hz、高周波側は1352Hz、帯域幅が1212Hzである。第12の設計例の低周波側は157Hz、高周波側は980Hz、帯域幅が823Hzである。したがって、第11の設計例のエネルギー吸収率の帯域幅は、第12の設計例のエネルギー吸収率の帯域幅の約1.5倍という広い帯域幅を確保できていて、第11の設計例の方が、第12の設計例よりも好適な設計であるということができる。
このことから、3枚以上の多数枚の微細孔パネルを用いた吸音装置を構成する場合、空気層の厚さ、すなわち微細孔パネルの間隔は、装置の両外側の方が内側よりも狭くなるように配置することが好適であるといえる。
<第13,14の設計例>
表13は、第13設計例の設計数値データである。表14は、第14設計例の設計数値データである。図19は、これら第13,第14の設計例におけるエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。
表13は、第13設計例の設計数値データである。表14は、第14設計例の設計数値データである。図19は、これら第13,第14の設計例におけるエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。
これらの設計数値から明らかなように、第13,第14の設計例は、それぞれ5枚ずつの微細孔パネルから構成されており、両設計例の全てパネルは、微細孔の寸法(直径)、板厚、ピッチは全てのパネルとも同じ値を持つように設定されている。すなわち、両設計例は、空気層厚さのみが異なっているものである。なお、これら第13,第14の設計例は、ともに、装置の一方の外側の空気層が最も薄く、反対側の外側の空気層が最も厚く、その中間空気層の厚さは空気層の厚さが薄い方から反対側に向かって次第に厚くなるように配置されている。
第13の設計例(表13)では、空気層厚さの最も厚い側が音源に近い側に配置され、第14の設計例(表14)では、第13の設計例とは逆に、空気層厚さの最も厚い側が音源に遠い側に配置されている。
エネルギー吸収率が0.6となる周波数で比較すると、第13の設計例の低周波側は198Hz、高周波側は744Hz、帯域幅が546Hzである。第14の設計例の低周波側は157Hz、高周波側は2189Hz、帯域幅が1991Hzである。このように、第14の設計例のエネルギー吸収率の帯域幅は、第13の設計例のエネルギー吸収率の帯域幅の約3.7倍という広い帯域幅を確保できている。また、さらに帯域内においても、概して第14の設計例のエネルギー吸収率の方が第13の設計例のエネルギー吸収率よりも大きくなっている。したがって、第14の設計例の方が、第13の設計例よりも好適な設計であるということができる。
このことから、3枚以上の多数枚の微細孔パネルを用いた吸音装置を構成する場合、装置の外側に位置し、最も音源に近い側の空気層の厚さ、すなわち微細孔パネルの間隔が最も狭くなるように、各微細孔パネルを配置することが望ましいといえる。また、このように3枚以上の多数枚の微細孔パネルを用いた吸音装置を構成する場合であって、装置両側を対称に構成しない場合、空気層の厚さ、すなわち微細孔パネルの間隔は、音源に近い側の方が、音源に遠い側より狭くなるように配置することが好適であるといえる。また、装置の中間においては、音源に近い側から音源に遠い側に向かって、順次、空気層が厚くなるように、すなわち微細孔パネルの間隔が広くなるように配置することが好適であるといえる。
[比較例]
次に、本発明にかかる吸音装置の吸音性能を比較例との比較において検討する。
次に、本発明にかかる吸音装置の吸音性能を比較例との比較において検討する。
<第1の比較例>
第1の比較例は、1枚の微細孔パネルを剛壁の前に所定間隙を介して配置したものであり、上述した非特許文献2,3に記載された従来のヘルムホルツ型吸音器構造を備えた吸音装置である。この吸音装置の吸音性能は、上述した方法と同様の手法により算出することができる。
第1の比較例は、1枚の微細孔パネルを剛壁の前に所定間隙を介して配置したものであり、上述した非特許文献2,3に記載された従来のヘルムホルツ型吸音器構造を備えた吸音装置である。この吸音装置の吸音性能は、上述した方法と同様の手法により算出することができる。
表15は、第1の比較例の設計数値データである。
この設計数値から明らかなように、第1の比較例は、微細孔の直径、パネルの板厚、孔ピッチ、そして空気層の厚さという設計諸元のすべてについて、上述した本発明の第2実施形態である第8の設計例(表8、図13)に用いたものと全く同じ値を設定している。唯一の相違点は、本発明にかかる第8の設計例では、2枚の微細孔パネルを相対して配置しているのに対して、この第1の比較例は、1枚の微細孔パネルと剛壁を相対して配置する点である。すなわち、この第1の比較例は、本発明にかかる第8の設計例における第2の微細孔パネルを剛壁に置き換えたものといえる。
図20は、この第1の比較例における吸音率の周波数特性と、本発明にかかる上記第8の設計例のそれとを並記して示したグラフである。
図20から、第1の比較例と第8の設計例(本発明の一例)とは、ともに吸音率のピークが約700Hz付近に存在しており、第1の比較例の吸音率は0.98、第8の設計例(本発明の一例)の吸音率は0.95であることが分かる。すなわち、両者は吸音率のピークに関してはほぼ同等の高い吸音性能を備えているといえる。
また、両者とも、約2000Hzにおいて吸音率の落ち込みがあり、第1の比較例の吸音率は0.1まで低下するが、第8の設計例(本発明の一例)の吸音率は0.35までの低下に抑えられていることが分かる。すなわち、吸音率の落ち込みという特徴は両者ともに存在するが、その吸音性能の低下は本発明にかかる第8の設計例の方が小さく抑えられているといえる。
そして、低周波域における吸音性能は、第1の比較例では、250Hzにおいて0.5、100Hzにおいて0.1と吸音率が減少し、31.5Hzにおいてはほとんどゼロに近づくが、第8の設計例(本発明の一例)では吸音率の減少が緩慢で、157Hzにおいて0.71となり、それ以下の低周波域でも0.7以下となることはない。すなわち、低周波域における吸音性能は、本発明にかかる第8の設計例の方が格段に優れているといえる。
つづいて、これら第1の比較例と第8の設計例(本発明の一例)の音響インピーダンス(以下、インピーダンスという。)の周波数特性について比較・検討する。
これらの吸音装置の音響インピーダンスは、音響抵抗成分rと音響リアクタンス成分xとして複素数表現z=r+jxで表すことができ、このとき、音響インピーダンスの絶対値および位相角は、次式で表すことができる。
図21および図22は、第1の比較例と第8の設計例のインピーダンスの絶対値および位相角の周波数特性を並記して示したグラフである。
図21から、第1の比較例では125Hzよりも低周波域においてはインピーダンスの絶対値が急激に増大するのに対して、第8の設計例(本発明の一例)のインピーダンス絶対値は約3.5と略一定の値を保っているという顕著な差異が認められる。
また、図22から、第1の比較例の位相角は31.5Hzにおいて−1.5ラジアンから増加し始めて630Hzでゼロラジアンとなるのに比べて、第8の設計例(本発明の一例)の位相角は31.5Hzではゼロラジアンであり、それ以降は周波数が増加しても位相差はほとんど変化せず、350Hzにおいて−0.3となり、その後630Hzにおいてゼロラジアンになるという特徴を示す。
このことから、本発明にかかる第8の設計例は低周波域ではリアクタンス成分が少なく、かつ抵抗成分も略一定の比較的低い値を持っているので、第1の比較例に比べて低周波域で高い吸音率を発揮することができることがわかる。
以上の第1の比較例により、第8の設計例に代表される本発明は、第1の比較例と同様に簡潔な構造でありながら、第1の比較例では実現できない、低周波域を含む広範囲にわたる高い吸音性能を実現できることが認められる。
<第2の比較例>
第2の比較例は、1枚だけの微細孔パネルを大気中に配置したものである。
第2の比較例は、1枚だけの微細孔パネルを大気中に配置したものである。
このような構成の吸音装置の音響系の電気的等価回路は、図23のように表すことができる。
図23において、記号rおよびjxは微細孔パネルの規準化音響インピーダンスの抵抗成分およびリアクタンス成分を表し、それらの前後の数字1は微細孔パネルの両側の大気の規準化音響インピーダンスを表す。音源に対してこれらがすべて直列接続されていることから、音響エネルギーの消費率や透過率などは容易に計算することができる。
表16は、第2の比較例の設計数値データである。
この設計数値から明らかなように、第2の比較例に用いた微細孔パネルは、上述した本発明の第2実施形態である第8の設計例(表8、図13)に用いたものと全じであり、唯一の相違点は、本発明にかかる第8の設計例では、2枚の微細孔パネルを相対して配置しているのに対して、この第2の比較例は、1枚の微細孔パネルのみから構成されている点である。
図24は、この第2の比較例におけるエネルギー吸収率の周波数特性と、本発明にかかる上記第8の設計例のそれとを並記して示したグラフである。なお、1枚の微細孔パネルのみからなる第2の比較例におけるエネルギー吸収率とは、図24におけるZ0とZ1の間におけるエネルギーの消費率を意味する。
図24によれば、第2の比較例のエネルギー吸収率は、31.5Hzにおいて約0.24の値を示し、900Hz近傍までほとんど一定の値を保ち、それ以降は徐々に減少して4000Hzにおいて0.1となっている。これに対し、第8の設計例(本発明の一例)では、31.5Hzから63Hzの間において約0.5であるが、それを越えると増大し始めて、800Hzにおいて0.92という最大値となり、2000Hzにおいて0.29まで減少するが、2600Hzにおいて再び0.7とピーク値を持っている。また、第8の設計例(本発明の一例)では、700〜800Hz近傍において共鳴が発生し、その帯域においては大きなエネルギー消費が実現されているが、第2の比較例ではエネルギー吸収率は平坦で、共鳴が起こっておらず、本発明にかかる第8の設計例との間にはエネルギー吸収率に大きな相違が存在する。
図25は、この第2の比較例における透過率の周波数特性と、本発明にかかる上記第8の設計例のそれとを並記して示したグラフである。なお、1枚の微細孔パネルのみからなる第2の比較例における透過率とは、図23におけるZ1から拡散するエネルギーを意味する。
図25によれば、第2の比較例の透過率は、31.5Hzにおいて約0.62の値を示し、250Hz近傍までほとんど一定の値を保ち、それ以降は徐々に減少して4000Hzにおいて0.24となる。これに対し、第8の設計例(本発明の一例)では、31Hzから90Hzの間において約0.2であるが、それ以降は減少して1000Hzにおいて略ゼロとなり、2400Hz近傍において0.12という小さなピーク値を持つ。すなわち、第2の比較例では、かなり多くの音がその背後に透過しているが、本発明にかかる第8の設計例では、全周波数域において音漏れを0.2以下に抑えている。
以上から、第8の設計例のように本発明にかかる吸音装置の構造であれば、目標とする周波数帯域において共鳴が発生するように適切に設計されれば、エネルギー吸収率においても、透過率においても、1枚の微細孔パネルでは実現できない高い吸音性能を発揮できることが明らかである。
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例A)
実施例Aは、ピーク周波数帯域400〜600Hz、透過率0.15の好適な設計例を設定したものである。
実施例Aは、ピーク周波数帯域400〜600Hz、透過率0.15の好適な設計例を設定したものである。
表17は、具体的な設計例A1〜A7の設計諸元である。図26は、設計例A1〜A7の吸音率の周波数特性を示すグラフである。図27は、設計例A1〜A7のエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。図28は、設計例A1〜A7の透過率の周波数特性を示すグラフである。
これらの結果から、空気層厚さが50mmら150mmに増加するにつれて吸音率もエネルギー吸収率もピークが大きくなっていることがわかる。
(実施例B)
実施例Bは、ピーク周波数帯域200〜300Hz、透過率0.15の好適な設計例を設定したものである。
実施例Bは、ピーク周波数帯域200〜300Hz、透過率0.15の好適な設計例を設定したものである。
表18は、具体的な設計例B1〜B7の設計諸元である。図29は、設計例B1〜B7の吸音率の周波数特性を示すグラフである。図30は、設計例B1〜B7のエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。図31は、設計例B1〜B7の透過率の周波数特性を示すグラフである。
これらの結果から、空気層厚さが120mmから245mmに増加するにつれて吸音率もエネルギー吸収率もピークが大きくなり、260mmにおいて少し減少していることがわかる。
(実施例C)
実施例Cは、ピーク周波数帯域800〜1200Hz、透過率0.15の好適な設計例を設定したものである。
実施例Cは、ピーク周波数帯域800〜1200Hz、透過率0.15の好適な設計例を設定したものである。
表19は、具体的な設計例C1〜C7の設計諸元である。図32は、設計例C1〜C7の吸音率の周波数特性を示すグラフである。図33は、設計例C1〜C7のエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。図34は、設計例C1〜C7の透過率の周波数特性を示すグラフである。
これらの結果から、空気層厚さが20mmから60mmに増加するにつれて吸音率もエネルギー吸収率もピークが大きくなり、80mmにおいてピーク中心が少し低域側に移動していることがわかる。これは孔の直径が0.1mm以下に小さくならないような制約を加えたからであると推察される。また透過率も0.15よりも大きくなっていることがわかる。
(実施例D)
実施例Dは、ピーク周波数帯域800〜1200Hz、透過率0.3の好適な設計例を設定したものである。
実施例Dは、ピーク周波数帯域800〜1200Hz、透過率0.3の好適な設計例を設定したものである。
表20は、具体的な設計例D1〜D7の設計諸元である。図35は、設計例D1〜D7の吸音率の周波数特性を示すグラフである。図36は、設計例D1〜D7のエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。図37は、設計例D1〜D7の透過率の周波数特性を示すグラフである。
これらの結果から、空気層厚さが20mmから80mmに増加するにつれて吸音率もエネルギー吸収率もピークが大きくなっていることがわかる。
また、設計例D1とD2(空気層厚さが20mm及び25mm)の吸音率とエネルギー吸収率において、ピーク中心より低域側に陥没が認められるが、吸音率とエネルギー吸収率のピークを少し低めに設定すれば解消すると思われる。また、設計例D5〜D7の吸音率とエネルギー吸収率のピーク中心は、少し低域側に移動していることがわかる。
(実施例E)
実施例Eは、設計例A3の孔の直径、0.36mmに対して、0.26mmから0.6mmまで変更し、その他の設計諸元は変更しなかった設計例である。
実施例Eは、設計例A3の孔の直径、0.36mmに対して、0.26mmから0.6mmまで変更し、その他の設計諸元は変更しなかった設計例である。
表21は、具体的な設計例E1〜E7の設計諸元である。図38は、設計例E1〜E7の吸音率の周波数特性を示すグラフである。図39は、設計例E1〜E7のエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。図40は、設計例E1〜E7の透過率の周波数特性を示すグラフである。
これらの結果から、吸音率は孔の直径が大きくなると(設計例E1〜E2)0.45まで減少し、孔の直径が小さくなると(設計例E4〜E7)殆ど1まで増加することが分かる。一方、エネルギー吸収率のピークは設計例A3及びE4、E5は殆ど同じだが、その他の設計例は大きく減少している。これは透過率の変化が孔の直径の変化に大きく影響されているためであると推察される。
(実施例F)
実施例Fは、設計例A3の板厚、0.21mmに対して、0.1mmから0.5mmまで変更し、その他の設計諸元は変更しなかった設計例である。
実施例Fは、設計例A3の板厚、0.21mmに対して、0.1mmから0.5mmまで変更し、その他の設計諸元は変更しなかった設計例である。
表22は、具体的な設計例F1〜F7の設計諸元である。図41は、設計例F1〜F7の吸音率の周波数特性を示すグラフである。図42は、設計例F1〜F7のエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。図43は、設計例F1〜F7の透過率の周波数特性を示すグラフである。
これらの結果から、吸音率は板が薄くなると(設計例F1〜F2)0.95まで大きくなり、板厚が厚くなると(設計例F4〜F7)殆ど0.6まで減少することがわかる。一方、エネルギー吸収率のピークは設計例A3及びE4、E5は殆ど同じだが、その他の設計例は減少している。これは透過率の変化が板厚の変化に影響されているからであると推察されるが、変化の程度は孔の直径の場合(組合わせE)よりも小さいことがわかる。
(実施例G)
実施例Gは、設計例A3の孔のピッチ、5.29mmに対して、2.5mmから10.5mmまで変更し、その他の設計諸元は変更しなかった設計例である。
実施例Gは、設計例A3の孔のピッチ、5.29mmに対して、2.5mmから10.5mmまで変更し、その他の設計諸元は変更しなかった設計例である。
表23は、具体的な設計例G1〜G7の設計諸元である。図44は、設計例G1〜G7の吸音率の周波数特性を示すグラフである。図45は、設計例G1〜G7のエネルギー吸収率の周波数特性を示すグラフである。図46は、設計例G1〜G7の透過率の周波数特性を示すグラフである。
これらの結果から、吸音率は孔のピッチが小さくなると(設計例G1〜G2)0.95まで大きくなり、孔のピッチが大きくなると(設計例G4〜G7)0.4まで減少することがわかる。一方、エネルギー吸収率のピークは設計例A3及びG1は殆ど同じだが、G2のピークはやや大きくなるが、所定の周波数帯域を外れ、また、その他の設計例、G4〜G7は大きく減少して居る。これは透過率の変化が孔のピッチの変化に大きく影響されて居るからであると推察される。
以上の実施例から、吸音率、エネルギー吸収率、透過率に対する設計諸元の影響の度合は、空気層厚さ>孔の直径>孔のピッチ>板厚、の順番であることが判る。
10,20 微細孔パネル
11,21 微細孔
30 空気層
11,21 微細孔
30 空気層
Claims (15)
- 板厚方向に貫通する多数の微細孔を備えた2枚の微細孔パネルを所定間隙を介して相対して配置したことを特徴とする吸音装置。
- 前記2枚の微細孔パネルは、同一構造を有することを特徴とする請求項1に記載の吸音装置。
- 板厚方向に貫通する多数の微細孔を備えた3枚以上の微細孔パネルを、それぞれ同一または異なる所定間隔を介して相対して配置したことを特徴とする吸音装置。
- 前記微細孔の直径は、0.5mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸音装置。
- 前記微細孔のピッチは、0.8mm以上、10.0mm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の吸音装置。
- 前記微細孔パネルの板厚は、0.1mm以上、1.0mm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の吸音装置。
- 前記2枚の微細孔パネルの間隙が20mm以上、100mm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の吸音装置。
- 周波数が150Hz以上、600Hz以下の周波数領域において、吸音率のピークを有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の吸音装置。
- 前記ピークにおける吸音率が0.9以上であることを特徴とする請求項8に記載の吸音装置。
- 吸音率のピーク波形の実質的な勾配部分における低周波側の終端よりも低周波側の低周波領域において、略一定の吸音率を維持していることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の吸音装置。
- 前記低周波領域において、0.5以上の吸音率を有することを特徴とする請求項10に記載の吸音装置。
- 前記低周波領域において、0.1以上、0.4以下の透過率を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の吸音装置。
- 前記3枚以上の微細孔パネルの各間隔は、当該装置の外側に位置し、最も音源に近い側の間隔が最も狭くなるように、各微細孔パネルを配置したことを特徴とする請求項3に記載の吸音装置。
- 前記3枚以上の微細孔パネルの各間隔は、音源に近い側から遠い側に向かって間隔が順次広くなるように、各微細孔パネルを配置したことを特徴とする請求項13に記載の吸音装置。
- 前記3枚以上の微細孔パネルは、当該装置の両外側に位置する間隔が狭く、当該装置の両外側から内側に向かって順次広くなるように、各微細孔パネルを配置したことを特徴とする請求項13に記載の吸音装置。
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2003
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