JPWO2020036031A1 - 区画部材、乗物、及び電子機器 - Google Patents

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Abstract

防音構造体の音の吸収率が極大となる周波数との関係に基づき、好適な周波数で遮音効果を得ることが可能な区画部材、並びにその区画部材を有する乗物及び電子機器を提供する。二つの空間の一方側にある音源から発せられた騒音を低減する防音構造体を備える区画部材であって、防音構造体は、貫通空間が設けられた表面部と、表面部とは間隔を空けて配置された背面部と、表面部及び背面部に固定されて表面部及び背面部を連結する連結部と、を有し、音源から発せられた騒音を遮音する。防音構造体による遮音量が極大となる周波数fsは、防音構造体の音の吸収率が極大となる周波数frよりも低い。防音構造体の構造に関する値は、周波数の差分である(fr−fs)に応じて設定されている。

Description

本発明は、防音構造体を備えた区画部材、並びに区画部材が設けられた乗物及び電子機器に係り、特に、貫通空間が形成された表面部を有する防音構造体を備えた区画部材、並びに区画部材が設けられた乗物及び電子機器に関する。
建材又は乗物等において、壁を揺らして抜けてくる(透過する)音が騒音として問題になることが多い。特に、騒音が単周波音となる場合、その単周波音は、人にとって不快(耳障り)なものであるため、そのような騒音に対しては、防音対策を講じる必要がある。
防音方法としては、吸音(音を吸収して熱に変えること)による方法と、遮音(音の反射又は音の打ち消し合いによって音を遮蔽すること)による方法とが挙げられる。なお、従来の防音方法としては、例えば、多孔質の吸音体を用いた防音方法が挙げられるが、この方法は、主として吸音による防音効果を狙ったものであり、遮音効果が小さいものであった。
多孔質吸音体とは異なる防音方法として、共鳴周波数とは異なる周波数にて防音することが可能な共鳴構造を用いる方法が挙げられ、その一例としては、特許文献1乃至3に開示の共鳴構造が挙げられる。特許文献1乃至3には、騒音発生振動体(騒音の音源に相当)と連結機構等を介して接続された振動体(具体的には、振動板)を有する共鳴器が開示されている。この共鳴器によれば、騒音発生振動体が振動して騒音を発すると、振動体が振動して共鳴器内の体積が変化する。ここで、共鳴器の共振周波数よりも高い周波数では、共鳴器から放射される音と騒音発生振動体から発せられた騒音とが逆位相になるため、これらの音が互いに打ち消し合って消音(遮音)される。
特開平10−205351号公報 特開平10−8939号公報 特開平9−256868号公報
ところで、防音方法における遮音性能を高めるためには、その方法に用いる防音構造体を構成する板等の重量を大きくすることが一般的である。ただし、その場合には、防音構造体の重量化に繋がり、結果として、防音構造体を備える区画部材の重量、並びに、区画部材を備えた乗物又は電子機器の重量を増加させてしまう。なお、特許文献1乃至3のように共鳴周波数よりも高周波数側で遮音する構成の場合には、共鳴周波数をより低い周波数に設定する必要があり、そのために、防音構造体(具体的には振動体を用いた共鳴構造)をより大型化させてしまうことになる。
また、特許文献1乃至3の防音方法では、振動体の共鳴周波数(すなわち、吸音のピーク周波数)に対してずれた周波数帯域で音を打ち消し合うことで防音効果を得ている。つまり、特許文献1乃至3の防音方法では、防音効果が発現する周波数が共鳴(吸音)及び遮音の間で異なるため、吸音と遮音の双方を活かした防音効果が得られ難い。
また特許文献3(特に、特許文献3の段落0045)に示されているように、振動体の共鳴周波数より高周波側において遮音性を高めることはできているが、共鳴周波数と同じ周波数、あるいは、より低周波側では、遮音性を高めることができていない。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、以下に示す目的を解決することを課題とする。
つまり、本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、防音構造体の音の吸収率が極大となる周波数との関係に基づき、好適な周波数で遮音効果を得ることが可能な区画部材、並びに、その区画部材を有する乗物及び電子機器を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の区画部材は、二つの空間の一方側にある音源から発せられた騒音を低減する防音構造体を備え、二つの空間を区画する区画部材であって、防音構造体は、貫通空間が設けられた表面部と、表面部とは間隔を空けて配置された背面部と、表面部及び背面部に固定されて表面部及び背面部を連結する連結部と、を有し、音源から発せられた騒音を遮音し、防音構造体による遮音量が極大となる周波数fsは、防音構造体の音の吸収率が極大となる周波数frよりも低く、防音構造体の構造に関する値が、周波数差分である(fr−fs)に応じて設定されていることを特徴とする。
また、上記の区画部材において、表面部と背面部と連結部とがヘルムホルツ共鳴体を構成し、ヘルムホルツ共鳴体の共鳴周波数のうち、音の吸収率が極大となる極大共鳴周波数が防音構造体の音の吸収率が極大となる周波数frであると、好適である。
また、上記の区画部材において、背面部の厚みt(mm)は、下記の関係式(1)を満たすように設定されていると、好適である。
(fr−fs)∝t−1.6±0.4 (1)
また、上記の区画部材において、背面部のヤング率をE(Pa)とし、背面部の厚みをt(mm)としたとき、背面部の硬さHは、E×tとなり、且つ、下記の関係式(2)を満たすように設定されていると、好適である。
(fr−fs)∝H−0.5±0.2 (2)
また、上記の区画部材において、表面部の厚みが2mm以上に設定されていると、好適である。さらに、背面部の厚みが2mm以上に設定されていると、より一層好適である。
また、上記の区画部材において、背面部の厚みが2mm以下に設定されてもよい。さらに、背面部の厚みが表面部の厚みよりも小さいと、より一層好適である。
また、上記の区画部材において、背面部の一部が、発泡材料、独立気泡発泡材料、中空材料及び多孔質材料のうちの少なくとも一つから構成された空気を含む構造体であると、好適である。
また、上記の区画部材において、貫通空間は、表面部に形成された貫通孔であり、貫通孔の直径又は円相当直径が、表面部と背面部と連結部とに囲まれた背面空間の厚みよりも大きいと、好適である。
また、上記の区画部材において、防音構造体は、複数種類のヘルムホルツ共鳴体によって構成されていると、好適である。
また、上記の区画部材において、防音構造体は、同径の貫通孔が複数形成された一枚の表面板を有し、複数種類のヘルムホルツ共鳴体の各々は、表面板のうち、貫通孔が少なくとも一つ形成された部分を表面部として構成されており、少なくとも二つ以上のヘルムホルツ共鳴体の間では、表面部と背面部と連結部とに囲まれた背面空間の体積が異なっていると、好適である。
また、上記の区画部材において、防音構造体の各部の厚みの平均値が10mm以下であると、好適である。
また、上記の区画部材において、表面部と背面部と連結部とに囲まれた背面空間の内部、若しくは、防音構造体の外表面のうちの少なくとも一部分に多孔質吸音体が設けられていると、好適である。
また、上記の区画部材において、防音構造体は、表面部が音源側を向いた状態で配置されていると、好適である。
また、前述した課題を解決するために、本発明の乗物は、上述した区画部材のうち、いずれか一つの区画部材が、モータ、インバータ、エンジン及びタイヤのうちの少なくとも一方の機器が配置された空間と、乗員が乗る空間と、の間に配置されていることを特徴とする。
また、前述した課題を解決するために、本発明の電子機器は、筐体内に音源を備え、且つ、上述した区画部材のうち、いずれか一つの区画部材が筐体のうちの少なくとも一部分、又は、筐体内に配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、防音構造体の音の吸収率が極大となる周波数との関係に基づき、好適な周波数で遮音効果が得られる区画部材、並びに、その区画部材を有する乗物及び電子機器を提供することが可能となる。
本発明の一例に係る区画部材の模式的な正面図である。 区画部材が有する防音構造体の模式的な断面図である。 防音構造体の斜視図である。 防音構造体の変形例を示す図であり、略シリンジ形状の防音構造体の断面図である。 防音構造体の変形例を示す図であり、背面部が湾曲した構成の断面図である。 防音構造体の変形例を示す図であり、貫通孔の直径又は円相当直径が背面空間の厚みよりも大きい構成の断面図である。 防音構造体の変形例を示す図であり、開口部のサイズが異なっている構成の断面図である。 防音構造体の変形例を示す図であり、背面空間内に多孔質吸音体が配置された構成を示す断面図である。 防音構造体の遮音メカニズムの説明図である。 実施例1の防音構造体についての音の吸収率を示す図である。 実施例1と比較例1との透過損失差分を示す図である。 実施例2の防音構造体についての透過損失と音の吸収率を示す図である。 実施例2と比較例2について透過損失を比較した結果を示す図である。 実施例3の防音構造体についての透過損失と音の吸収率を示す図である。 実施例3と比較例3について透過損失を比較した結果を示す図である。 実施例4の防音構造体についての透過損失と音の吸収率を示す図である。 実施例4と比較例4について透過損失を比較した結果を示す図である。 表面部と背面部が同一厚みであるときの透過損失を計算した計算結果を示す図である。 ヘルムホルツ共鳴体各部の変位方向を可視化した図である(その1)。 ヘルムホルツ共鳴体各部の変位方向を可視化した図である(その2)。 背面部の厚みを変えたときの透過損失のピーク周波数を示す図である。 背面部の厚みを変えたときの極大遮音周波数の変化を示す図である。 表面部に貫通孔を形成したことによる、透過損失ピークでの透過損失の上がり幅を示す図である。 背面部の厚みを変えたときの、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分を示す図である。 背面部の硬さを変えたときの、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分を示す図である。 表面部と背面部とが連結部によって連結されていない構造について、背面部の厚みを変えて求めた透過損失を示す図である。 表面部の貫通孔の直径を4mmとし、背面部の厚みを変えたときの極大遮音周波数の変化を示す図である。 表面部の貫通孔の直径を4mmとし、背面部の厚みを変えたときの、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分を示す図である。 表面部の貫通孔の直径を4mmとし、背面部の硬さを変えたときの、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分を示す図である。 背面空間の厚みを3mmとし、背面部の厚みを変えたときの極大遮音周波数の変化を示す図である。 背面空間の厚みを3mmとし、背面部の厚みを変えたときの、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分を示す図である。 背面空間の厚みを3mmとし、背面部の硬さを変えたときの、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分を示す図である。 表面部の厚みを1mmとしたときの透過損失を計算した計算結果を示す図である。 表面部の厚みを1mmとし、背面部の厚みを変えたときの、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分を示す図である。 表面部の厚みを1mmとし、背面部の硬さを変えたときの、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分を示す図である。 表面部の厚みを3mmとしたときの透過損失を計算した計算結果を示す図である。 表面部の厚みを3mmとし、背面部の厚みを変えたときの、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分を示す図である。 実施例1と同じ構造の防音構造体について、音の吸収率をシミュレーションしたときの結果を示す図である。 実施例1と同じ構造の防音構造体について、貫通孔がない構造との透過損失の差分をシミュレーションしたときの結果を示す図である。 背面空間の厚みを変えて透過損失の差分をシミュレーションしたときの結果を示す図である。 貫通孔の直径を変えて透過損失の差分をシミュレーションしたときの結果を示す図である。 表面部及び背面部の各々の厚みを変化させて、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分をシミュレーションしたときの結果を示す図である。 図42のシミュレーション結果を背面空間の厚み(背面距離)で微分して得られるグラフを示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、例えば、「45°」、「平行」、「垂直」あるいは「直交」等の角度は、特に記載がなければ、厳密な角度との差異が5度未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との差異は、4度未満であることが好ましく、3度未満であることがより好ましい。
本明細書において、「同じ」、「同様」、「同一」及び「同径」は、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。また、本明細書において、「全部」、「いずれも」及び「全面」等というとき、100%である場合のほか、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含み、例えば99%以上、95%以上、又は90%以上である場合を含むものとする。
[区画部材]
本発明の区画部材は、二つの空間を区画する区画部材であって、二つの空間の一方側にある音源から発せられた騒音を低減する防音構造体を備える。防音構造体は、貫通空間が設けられた表面部と、表面部とは間隔を空けて配置された背面部と、表面部及び背面部に固定されて表面部及び背面部を連結する連結部と、を有し、音源から発せられた騒音を遮音する。また、防音構造体による遮音量が極大となる周波数fsは、防音構造体の音の吸収率が極大となる周波数frよりも低い。そして、表面部及び背面部の各々の厚み、並びに背面部の硬さなどが、周波数差分である(fr−fs)に応じて設定されている。
以上のように構成された本発明の区画部材では、その区画部材に備えられた防音構造体の音の吸収率が極大となる周波数との関係に基づき、好適な周波数で遮音効果が得られる。
ここで、「防音」とは、音響特性として、「遮音」と「音の吸収(吸音)」の両方の意味を含む概念である。また、「遮音」は、「音を遮蔽する」こと、すなわち「音を透過させない」こと、分かり易くは「音を反射する」こと(音響の反射)、及び「音を打ち消し合う」こと(音響の打ち消し合い)である。「音の吸収(吸音)」は、「音を反射させない」こと、すなわち「音の反射を少なくする」ことである。(三省堂 大辞林(第三版)、並びに、日本音響材料学会のウェブページのhttp://www.onzai.or.jp/question/soundproof.html、及びhttp://www.onzai.or.jp/pdf/new/gijutsu201312_3.pdf参照)
以下、本発明の区画部材の一例(以下、区画部材10)について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、区画部材10の模式的な正面図である。図2は、区画部材10が有する防音構造体20の模式的な断面図であり、図1のI−I断面を示す図である。
区画部材10は、上述したように二つの空間を区画する部材であり、壁、天井、床、ドア、間仕切り、パーテーション、機器及び装置の内部に配置される仕切り材、筐体、並びにケースカバー等として利用される略板状の部材(例えば、パネル又はボード)である。なお、区画部材10は、その周辺部材(例えば、隣接する壁部材等)とともに上記二つの空間を隙間なく区画する(厳密には、僅かに空気が通過する程度の隙間が残る場合を含む)。
区画部材10によって区画される二つの空間のうちの一方側には、音源が配置されている。音源としては、例えば、モータ及びファン等の回転部品;インバータ、パワーサプライ、昇圧器、昇圧コンバータ及びインバータを含むパワーコントロールユニット(PCU)、大容量コンデンサ、セラミックコンデンサ、インダクタ、コイル、並びに、スイッチング電源及びトランス等の電気制御装置を含む電子部品;ギア、又はアクチュエータによる移動機構等の機械部品が挙げられる。
音源からは音(騒音)が発生し、その騒音は、空気中を伝播する。具体的に説明すると、音源がインバータ等の電子部品である場合には、キャリア周波数に応じた音(スイッチングノイズ)が発生する。音源がモータ又はファン等の回転機器である場合には、その回転数に応じた周波数の音(電磁騒音)が発生する。このとき、発生する音の周波数は、必ずしも回転数、又はその倍数に限る訳ではないが、回転数を大きくすることで、より高周波の音が発生するといった強い関連性が見られる。すなわち、音源はそれぞれ、音源固有の周波数の音を発生する。固有周波数にて音を発生する音源に関しては、特定周波数を発振するような物理的若しくは電気的メカニズムを有するものが多い。例えば、ファンなどの回転系は、その回転数に羽根枚数を乗じた値で決まる周波数の音、又はその倍数の周波数の音が発せられる。また、インバータ等の交流電気信号を受ける部分は、その交流の周波数に対応する音を発振する場合が多い。
なお、音源が固有の周波数を有するか否かについては、下記のような実験にて判定することができる。
音源を無響室内、半無響室内、若しくはウレタン等の吸音体で囲まれた空間内に配置する。このように音源周辺に吸音体を配置することで、部屋及び測定系の反射干渉による影響を排除することができる。その上で、音源から音を発生させ、音源から離れた位置から上記の音をマイクで集音して測定し、その周波数情報を取得する。音源とマイクとの距離については、音源及び測定系のサイズに応じて適宜選択できるが、約30cm以上離れていることが望ましい。
区画部材10は、図2に図示の防音構造体20を備えている。この防音構造体20により、音源から発せられた騒音が低減される。この結果、区画部材10によって区画された二つの空間のうち、音源が設置されている側の空間から音源が設置されていない側の空間への騒音の伝播が抑えられる。
なお、防音構造体20が区画部材10の表面の少なくとも一部分を構成しており、図1に図示の構成では、縁部を除き、区画部材10の表面の略全面を構成している。ただし、これに限定されるものではなく、区画部材10の表面の一部分(例えば、中央部分)が防音構造体20によって構成されてもよい。また、区画部材10の外表面に防音構造体20が取り付けられてもよく、あるいは、区画部材10の内部に防音構造体20が配置されてもよい。
区画部材10は、建物内の間仕切りとして好適に利用することが可能である。区画部材10を建物用の間仕切りとして利用すれば、例えば、区画部材10により区画された室(部屋)において、他の室にある音源から発生された音が伝播してくるのを抑える(厳密には遮音する)ことが可能となる。
なお、建物用の間仕切りとしては、壁、ドア、パーテーション及び衝立、シャッター、床、及び天井等が挙げられる。
また、区画部材10は、外壁に囲まれた空間内に音源を備えた電子機器において好適に利用することが可能である。具体的には、電子機器の筐体の少なくとも一部、又は、筐体内に区画部材10が配置されているのがよい。このような構成であれば、電子機器内の音源から発せられた騒音が電子機器の外へ伝播するのを抑える(遮音する)ことが可能となる。特に、区画部材10を、外壁に囲まれた空間内に設けられた音源(例えば、モータ、インバータ又はパワーコントロールユニット等)のカバーとして用いた場合には、音源から発せられる特徴的な騒音、詳しくは単周波音を抑える(遮音する)ことができる。
なお、電子機器としては、空調機(エアコン)、エアコン室外機、給湯器、換気扇、冷蔵庫、掃除機、空気清浄機、扇風機、食洗機、電子レンジ、洗濯機、テレビ、携帯電話、スマートフォン、及びプリンター等の家庭用電気機器;複写機、プロジェクター、デスクトップPC(パーソナルコンピューター)、ノートPC、モニター、及びシュレッダー等のオフィス機器;サーバー及びスーパーコンピューター等の大電力を使用するコンピューター機器;恒温槽、環境試験機、乾燥機、超音波洗浄機、遠心分離機、洗浄機、スピンコーター、バーコーター、及び搬送機等の科学実験機器が挙げられる。
また、区画部材10は、内部に乗員が乗る乗物において好適に用いることが可能である。具体的には、音源であるモータ、インバータ、エンジン及びタイヤのうちの少なくとも一方の機器が配置された空間と、乗員が乗る空間と、の間に区画部材10が配置されているとよい。より詳しくは、乗員が着座する座席と音源との間に防音構造体20を備えた区画部材10が配置されていればよい。例えば、ハイブリッド自動車又は電気自動車においてモータが車軸若しくはタイヤ部に配置されている場合には、モータと車室との間に、区画部材10からなる車室フロアを配置するのが望ましい。また、ハイブリッド自動車又は電気自動車のフロント部分(ガソリン駆動車のエンジンルームに相当する部分)にモータ及びインバータが収容されている場合には、モータ及びインバータと車室との間に、区画部材10からなるダッシュインシュレータを配置するのが望ましい。以上の構成によれば、乗物内において音源から発せられた騒音が乗員の場所(乗員が居る空間)まで伝播するのを抑える(遮音する)ことができる。
なお、乗物としては、電動の自動車(バス又はタクシー等を含む)、電車、航空機器(飛行機、戦闘機又はヘリコプター等)、船舶、航空宇宙機器(ロケット等)、及びパーソナルモビリティー等が挙げられる。特に、ハイブリッド自動車及び電気自動車、PHV(Plug−in Hybrid Vehicle)においては、内部に搭載されるモータ及びパワーコントロールユニット(インバータ及びバッテリ電圧昇圧ユニット等を含む)などに起因する特有の騒音が車室内で聞こえることが問題となる。
<防音構造体>
本発明の区画部材10が有する防音構造体(以下、防音構造体20)について、図2及び図3を参照しながら説明する。図3は、防音構造体20の斜視図である。なお、防音構造体20の内部を図示するため、図3に図示の防音構造体20の一部(具体的には、図中、右下隅の角部)については、表面部24が取り外された状態で図示している。
防音構造体20は、区画部材10によって隙間がない(あるいは、僅かな隙間が形成された)状態で区画された二つの空間のうちの一方から他方に向かって、空気を伝播する騒音を低減するものである。防音構造体20の構成について概説すると、防音構造体20は、図2及び図3に示すように、表面部24、背面部30及び連結部32を主な構成要素として有する。
表面部24は、板状の部分であり、図2及び図3に示すように、表面部24の略中央部分には貫通空間26が設けられている。この貫通空間26は、外気と連通しており、空気等の流体を防音構造体20の外から後述の背面空間40内へ導くために表面部24に設けられた空間であり、本実施形態では、例えば、表面部24を貫く貫通孔からなる。なお、図2に図示の構成では、貫通孔が円穴となっているが、それ以外の形状であってもよく、例えば、三角形、四角形又はその他の多角形、若しくは楕円形等であってもよく、あるいは不定形であってもよい。また、貫通孔からなる貫通空間26に限定されず、図4に示すように、表面部24の外表面から突出した筒状の凸部24aを設け、この凸部24a及び表面部24を貫く貫通空間26であってもよい。つまり、防音構造体20が略シリンジ形状であってもよい。図4は、防音構造体20の変形例を示す図であり、略シリンジ形状の防音構造体20の断面図である。
背面部30は、図2に示すように、表面部24とは間隔を空けて配置された板状の部材である。なお、図2に図示の構成では、背面部30が平板形状であるが、これに限定されず、図5に示すように、背面部30が弓形に湾曲した形状であってもよい。図5は、防音構造体20の変形例を示す図であり、背面部30が湾曲した構成の断面図である。
連結部32は、筒状の中空部材であり、図2に示すように表面部24及び背面部30に固定されて表面部24及び背面部30を連結している。より詳しく説明すると、図2に示すように、連結部32には開口部34が設けられており、連結部32の一端面には、開口部34を塞ぐように表面部24が固定されている。また、連結部32の開口部34における、表面部24が固定されている側とは反対側の端部には、背面部30が嵌め込まれた状態で固定されている。ただし、連結部32における、表面部24及び背面部30の各々の固定位置については、特に限定されるものではなく、連結部32のうち、表面部24が固定される側とは反対側の端面に、背面部30が開口部34を塞ぐように固定されてもよい。また、連結部32の開口部34の一端部に表面部24が嵌め込まれた状態で固定されてもよい。
また、防音構造体20は、表面部24、背面部30及び連結部32に囲まれた背面空間40を有する。この背面空間40は、図2に示すように、貫通空間26の背面側に位置し、貫通空間26と連通している。なお、背面空間40の横幅(図2中、記号Laにて示す長さ)は、貫通空間26である貫通孔の直径又は円相当直径(図2中、記号dにて示す長さ)に比べて十分に長くなっている。ここで、円相当直径とは、その形状の面積と等しい面積となった円の直径である。
上記のように構成された防音構造体20は、表面部24、背面部30及び連結部32によって構成されたヘルムホルツ共鳴構造によって騒音を吸収する。ヘルムホルツ共鳴構造は、一般に、容器内部の空間(背面体積)と、この空間と外部とを連通する貫通孔と、を有する構造として知られている。また、ヘルムホルツ共鳴構造の共鳴周波数を決定する式として、下記式が知られている。
共鳴周波数f=c/2π×√(S/(V×L1))
c:音速、S:貫通孔の断面積、V:容器の内部体積、
1:貫通孔の長さ+開口端補正距離
ヘルムホルツ共鳴構造のメカニズムについて説明すると、背面体積内での熱力学的な断熱圧縮膨張がバネとして機能し、貫通孔内の空気がマスとして機能する結果、特定の周波数(共鳴周波数)の音に共鳴する。なお、ヘルムホルツ共鳴構造を音響等価回路モデルで表すと、前者がコンダクタンスC、後者がインダクタンスLとなり、LC直列共振回路となる。
防音構造体20では、表面部24と背面部30と連結部32とがヘルムホルツ共鳴体22を構成しており、貫通空間26の内部にある空気がバネとして働いて、特定の周波数(共鳴周波数)の音に共鳴する。そして、貫通空間26付近の空気が振動する際、共鳴周波数の音波と貫通空間26の内壁との摩擦熱によってエネルギーロスが生じることにより、音の吸収が生じる。
ここで、上記のヘルムホルツ共鳴体22の共鳴周波数のうち、音の吸収率が極大値(以下、ピークとも言う)に達する共鳴周波数、すなわち、極大共鳴周波数は、防音構造体体20の音の吸収率が極大となる周波数frである。そして、極大共鳴周波数は、貫通空間26である貫通孔の直径又は円相当直径、並びに背面空間40の厚み等を変更することで調整することが可能である。
なお、騒音をより効果的に防音する目的から、区画部材10において、防音構造体20は、表面部24が音源側を向いた状態で配置されているのが好ましい。ただし、区画部材10を配置する際の防音構造体20の向き(具体的には、表面部24が面する向き)については、特に限定されるものではなく、用途等に応じて適宜設定すればよい。
次に、防音構造体20の詳細構成について説明する。防音構造体20は、図1及び図3に示すように、平面状に並べられた複数のヘルムホルツ共鳴体22(図1及び図3に図示の構成では、縦4個×横3個の計12個)によって構成されている。換言すると、本発明の防音構造体20は、一つのヘルムホルツ共鳴体22を一単位(セル)とし、連続して並んだ複数のセルを一つのユニットとして一体化させたものである。なお、防音構造体20を構成するヘルムホルツ共鳴体22数は、特に限定されるものではなく、一つのみであってもよく、あるいは二つ以上の任意の数であってもよい。
複数のヘルムホルツ共鳴体22の各々は、図2に示すように、表面部24、背面部30及び連結部32によって構成されている。そして、各ヘルムホルツ共鳴体22は、前述の極大共鳴周波数をピーク周波数として騒音を吸収する。
また、図2に図示の構成では、防音構造体20を構成する複数のヘルムホルツ共鳴体22の各々の厚み(表面部24及び連結部32が重ねられている方向における長さ)がヘルムホルツ共鳴体22間で揃っている。すなわち、防音構造体20各部の厚みが略均一である。ただし、これに限定されるものではなく、二つ以上のヘルムホルツ共鳴体22の間で厚みが異なっていてもよく、換言すると、防音構造体20各部の厚みが不均一であってもよい。なお、防音構造体20を小型化する観点から、防音構造体20各部の厚みの平均値は、10mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましく、6mm以下であることがさらに好ましい。
ちなみに、防音構造体20各部の厚み、すなわち、各ヘルムホルツ共鳴体における表面部24、背面部30及び連結部32の各々の厚みについては、厚みが略均一である場合には、ノギス、顕微鏡、光学干渉及びレーザー変位計等、様々な一般的な測定手法にて測定することができる。他方、厚みが不均一である場合には、その面内各部の厚みの平均値を代表的な厚みとして定義する。例えば、段差がある材料の厚みを測定する場合等においては、各部分の厚みをノギスで測定して、各厚みを有する面のそれぞれの面積にて厚みを重み付けして平均値を求めればよい。また、より複雑な形状の材料について厚みを測定する場合には、物体の光学透過率に光源波長を合わせて(測定用の光の波長を測定対象材料の構造等に応じて調整して)、レーザー干渉法又は光学干渉法に従って容易に測定することが可能である。また、二次元高速寸法測定器(例えば、キーエンス社 TM-3000シリーズ)のような面内の複数個所の厚みを測定する機器を用いれば、平均の厚みを容易に求めることができる。
各ヘルムホルツ共鳴体22の表面部24、背面部30及び連結部32は、いずれも、平面視で略正方形状の外径形状を有する。なお、表面部24、背面部30及び連結部32の各々の外径形状については、特に限定はなく、例えば、長方形、菱形、平行四辺形及び台形等のような他の四角形、正三角形、直角三角形及び二等辺三角形を含む三角形、正五角形及び正六角形等の正多角形を含む多角形、円形若しくは楕円等であってもよいし、不定形であってもよい。
また、図3に図示の構成では、複数のヘルムホルツ共鳴体22のうち、隣接するヘルムホルツ共鳴体22の間では、表面部24が連続している。すなわち、複数のヘルムホルツ共鳴体22の各々の表面部24は、連続して一体化しており、一枚の広い板体(以下、表面板42と言う)を構成している。換言すると、防音構造体20は、各ヘルムホルツ共鳴体22の表面部24を構成する一枚の表面板42を有する。このような構成であれば、一枚の表面板42を各連結部32に重ねて固定することにより、複数のヘルムホルツ共鳴体22の各々の表面部24を一度に配置することが可能である。ただし、これに限定されるものではなく、表面部24を構成する板材がヘルムホルツ共鳴体22別に分離していてもよい。
なお、各表面部24が個々に分離している場合、各表面部24の厚みがヘルムホルツ共鳴体22の間で揃っていてもよく、あるいは、少なくとも二つのヘルムホルツ共鳴体22の間で表面部24の厚みが異なっていてもよい。
また、表面板42では、図3に示すように、貫通空間26である貫通孔が、一定ピッチで列状に複数並んだ状態で形成されている。貫通孔は、ヘルムホルツ共鳴体22と同じ数だけ形成されており、各貫通孔は、ヘルムホルツ共鳴体22と対応する位置(詳しくは、各ヘルムホルツ共鳴体22を構成する表面部24の略中央位置)に形成されている。つまり、複数のヘルムホルツ共鳴体22の各々は、表面板42のうち、貫通孔が少なくとも一つ形成された部分を表面部24として構成されていることになる。
なお、図3に図示の構成では、各貫通孔の直径又は円相当直径が貫通孔間で同径となるように形成されている。ただし、これに限定されるものではなく、貫通孔の直径又は円相当直径が貫通孔間で異なっていてもよい。また、各ヘルムホルツ共鳴体22の表面部24に形成される貫通孔の個数は、少なくとも一つであればよく、二つ以上であってもよい。
また、図2に図示の構成では、貫通孔(貫通空間26)の直径又は円相当直径が、背面空間40の厚み(図2中、記号Lbにて示す長さ)よりも小さくなっている。ただし、これに限定されるものではなく、図6に示すように、貫通孔(貫通空間26)の直径又は円相当直径が、背面空間40の厚みよりも大きくてもよい。つまり、背面空間40の厚みを貫通孔の直径又は円相当直径より小さくしてもよい。このような構成では、ヘルムホルツ共鳴体22の共鳴周波数に対する開口端補正の効果が顕著となり、ヘルムホルツ共鳴体22の厚みを小さくしつつ極大共鳴周波数(すなわち、音の吸収のピーク周波数)を低周波側にシフトすることが可能となる。図6は、防音構造体20の変形例を示す図であり、貫通孔の直径又は円相当直径が背面空間40の厚みよりも大きい構成の断面図である。
また、図3に図示の構成では、複数のヘルムホルツ共鳴体22のうち、隣接するヘルムホルツ共鳴体22の連結部32が連続している。詳しく説明すると、各ヘルムホルツ共鳴体22の連結部32は、方形状の枠であり、四方で隣接する連結部32と接合して一体化しており、一つの格子状部材を構成している。ただし、これに限定されるものではなく、連結部32をなす枠体がヘルムホルツ共鳴体22別に分離していてもよい。
なお、連結部32が個々に分離している場合において、各連結部32の厚み(高さ)がヘルムホルツ共鳴体22の間で揃っていてもよく、あるいは、少なくとも二つのヘルムホルツ共鳴体22の間で連結部32の厚みが異なっていてもよい。
また、各連結部32には、図3に示すように、平面視での形状が略正方形となった開口部34が形成されている。この開口部34の内側空間が背面空間40となる。なお、各連結部32の開口部34の形状(厳密には、平面視での形状)については、特に限定されるものではなく、長方形、菱形、平行四辺形及び台形等のような他の四角形、正三角形、直角三角形及び二等辺三角形を含む三角形、正五角形及び正六角形等の正多角形を含む多角形、円形若しくは楕円等であってもよいし、不定形であってもよい。また、連結部32は、開口部34の全周を取り囲んだ閉断面構造であることが好ましいが、これに限定されるものではなく、開口部34の周囲における一部分が欠落した非閉断面構造であってもよい。
また、図2に図示の構成では、各連結部32の開口部34のサイズ及び形状(厳密には、平面視でのサイズ及び形状)がヘルムホルツ共鳴体22間で揃っている。ただし、これに限定されるものではなく、図7に示すように、少なくとも二つのヘルムホルツ共鳴体22の間で連結部32の開口部34のサイズ及び形状が異なっていてもよい。図7は、防音構造体20の変形例を示す図であり、開口部34のサイズが異なっている構成の断面図である。
ここで、連結部32の厚み、並びに、開口部34の形状及びサイズが異なれば、背面空間40の体積が異なる。背面空間40の体積が異なることは、その背面空間40が形成されたヘルムホルツ共鳴体22の種類が異なることを意味する。ヘルムホルツ共鳴体22の種類は、防音構造体20を構成する複数のヘルムホルツ共鳴体22すべての間で同一であってもよい。あるいは、少なくとも二つ以上のヘルムホルツ共鳴体22の間で、ヘルムホルツ共鳴体22の種類が異なっていてもよい。換言すると、防音構造体20が複数種類のヘルムホルツ共鳴体22によって構成されてもよい。
複数種類のヘルムホルツ共鳴体22によって構成された防音構造体20(例えば、図7に図示の防音構造体20)では、各種類のヘルムホルツ共鳴体22では、表面板42のうち、貫通孔が少なくとも一つ形成された部分が表面部24を構成している。また、互いに種類が異なるヘルムホルツ共鳴体22の間では、背面空間40の体積が異なる。このような構成であれば、各種類のヘルムホルツ共鳴体22において共鳴周波数が異なるので、複数の周波数帯域にて騒音を吸収することが可能となる。
ヘルムホルツ共鳴体22の構成部品、すなわち表面部24、背面部30及び連結部32の材質については、騒音の音源に適用するのに適した強度を持ち、防音環境に対して耐性があれば、特に制限的ではなく、音源及び防音環境等に応じて選択することができる。例えば、上記各部の材料としては、アルミニウム、チタン、ニッケル、パーマロイ、42アロイ、コバール、ニクロム、銅、ベリリウム、リン青銅、黄銅、洋白、錫、亜鉛、鉄、タンタル、ニオブ、モリブデン、ジルコニウム、金、銀、白金、パラジウム、鋼鉄、タングステン、鉛、及び、イリジウム等の各種金属、並びにこれらの合金、金属接合材料、又は高張力鋼などの特殊合金等の金属材料;PET(ポリエチレンテレフタレート)、TAC(トリアセチルセルロース)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PMP(ポリメチルペンテン)、COP(シクロオレフィンポリマー)、ゼオノア、ポリカーボネート、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PAR(ポリアリレート)、アラミド、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PES(ポリエーテルサルフォン)、ナイロン、PEs(ポリエステル)、COC(環状オレフィン・コポリマー)、ジアセチルセルロース、ニトロセルロース、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリアミドイミド、POM(ポリオキシメチレン)、PEI(ポリエーテルイミド)、ポリロタキサン(スライドリングマテリアルなど)、及びポリイミド等の樹脂材料;炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)、カーボンファイバ、及びガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics);建造物の壁材と同様なコンクリート及びモルタル等の壁材、石膏ボード、及び木材;天然ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)、シリコーンゴム等、及びこれらの架橋構造体を含むゴム類を挙げることができる。また、これらの材料のうち、いくつかの種類の材料を組み合わせて用いてもよい。
また、連結部32の材料としては、ハニカムコア材料を用いることもできる。ハニカムコア材料は、軽量で高剛性材料として用いられているため、既製品の入手が容易である。一例を挙げると、アルミハニカムコア、FRPハニカムコア、ペーパーハニカムコア(新日本フエザーコア株式会社製、若しくは昭和飛行機工業株式会社製など)、及び、熱可塑性樹脂ハニカムコア(岐阜プラスチック工業株式会社製 TECCELLなど)をはじめとする様々な素材で形成されたハニカムコア材料が挙げられる。
また、背面部30の一部については、空気を含む構造体、具体的には発泡材料、独立気泡発泡材料、中空材料及び多孔質材料のうちの少なくとも一つによって構成することができる。特に、背面部30を通過する音及び空気を抑えるためには、独立気泡発泡材料等を用いて背面部30を構成するのがよい。つまり、独立気泡発泡材料は、連続気泡発泡材料と比較して音、水及び気体等を通し難く、また、比較的大きい構造強度を備えるため、背面部30として用いるには適している。なお、独立気泡発泡材料としては、独立気泡ポリウレタン、独立気泡ポリスチレン、独立気泡ポリプロピレン、独立気泡ポリエチレン及び独立気泡ゴムスポンジ等の様々な素材を選ぶことができる。
また、表面部24、背面部30及び連結部32の各々は、互いに別部材であってもよい。この場合には、表面部24及び背面部30を両面テープ、接着剤若しくは物理的な固定具を用いて連結部32に接合することで各ヘルムホルツ共鳴体22を組み立てる。両面テープについては、例えば、スリーエム社製の高耐熱両面粘着テープ9077等を利用することができる。接着剤については、例えば、エポキシ系接着剤(アラルダイト(登録商標)(ニチバン社製)等)、若しくは、シアノアクリレート系接着剤(アロンアルフア(登録商標)(ニチバン社製)等)、及びアクリル系接着剤等を利用することができる。物理的な固定具については、例えば、ボルト、ネジ、釘又はビス、カシメ用のリベット、及び鋲等を利用することができる。
なお、ヘルムホルツ共鳴体22の各部(表面部24、背面部30及び連結部32)が互いに別体をなす場合には限定されず、例えば、表面部24及び背面部30の一方又は両方が連結部32と一体成型されて一体化してもよい。
また、防音構造体20(厳密には、複数のヘルムホルツ共鳴体22の各々)は、図8に示すように、多孔質吸音体50をさらに有していてもよい。多孔質吸音体50は、背面空間40の内部、若しくは、防音構造体20の外表面のうちの少なくとも一部に設けられ、図8に示す例では各ヘルムホルツ共鳴体22の背面空間40内に多孔質吸音体50が配置されている。このように背面空間40内に多孔質吸音体50を配置することで、ピーク吸収率(極大共鳴周波数での音の吸収率)が小さくなるものの、低周波側での吸収域が広帯域化する。
図8は、防音構造体20の変形例を示す図であり、背面空間40内に多孔質吸音体50が配置された構成を示す断面図である。
なお、多孔質吸音体50を防音構造体20の外表面の少なくとも一部に設けるには、例えば、表面部24、背面部30及び連結部32の少なくとも一つの外表面に多孔質吸音体50を取り付ければよい。このような構成により、多孔質吸音体50が背面空間40内に配置されている場合と同様、多孔質吸音体50による広帯域な吸音効果を利用することができる。
多孔質吸音体50としては、特に限定はなく、公知の多孔質吸音体が適宜利用可能である。例えば、発泡ウレタン、軟質ウレタンフォーム、木材、セラミックス粒子焼結材、フェノールフォーム等の発泡材料及び微小な空気を含む材料;グラスウール、ロックウール、マイクロファイバー(3M社製シンサレートなど)、フロアマット、絨毯、メルトブローン不織布、金属不織布、ポリエステル不織布、金属ウール、フェルト、インシュレーションボード、並びに、ガラス不織布等のファイバー及び不織布類材料;木毛セメント板;シリカナノファイバー等のナノファイバー系材料;石膏ボード等が挙げられ、また、これらの積層材料若しくは複合材料など、種々の公知の多孔質吸音体が利用可能である。
また、多孔質吸音体50の流れ抵抗σ1には特に限定はないが、1000〜100000(Pa・s/m2)が好ましく、5000〜80000(Pa・s/m2)がより好ましく、10000〜50000(Pa・s/m2)がさらに好ましい。なお、多孔質吸音体50の流れ抵抗σ1は、1cm厚の多孔質吸音体の垂直入射吸音率を測定し、Mikiモデル(J. Acoust. Soc. Jpn., 11(1) pp.19−24 (1990))でフィッティングすることで評価することができる。または、「ISO 9053」に従って多孔質吸音体50の流れ抵抗σ1を評価してもよい。
以上までに説明したように、本発明の防音構造体20は、ヘルムホルツ共鳴構造(貫通空間26が形成された表面部24を連結部32に固定した構造)を板(背面部30)に取り付けて構成されている。これにより、防音構造体20は、その極大共鳴周波数にて音を吸収する。また、本発明者らの検討によれば、上記の構造を有する防音構造体20は、ヘルムホルツ共鳴構造の吸音特性のみならず、背面部30を抜ける音に対する遮音性を備えていることが分かった。つまり、本発明の防音構造体20は、音源から発せられた騒音を、比較的高い遮音性能にて遮音することができる。具体的に説明すると、貫通空間26が形成された表面部24を有する防音構造体20では、表面部24に貫通空間26が設けられていない構成と比較して、遮音量が約10dB以上大きくなる(図39参照)。ここで、「遮音量」とは、遮音性能を示す数値であり、具体的には透過損失であり、防音構造体20に入射する音(入射音)の大きさと、防音構造体20を通って透過する音(透過音)の大きさとの比率をdB表示で表わした量である。詳しくは、入射音圧をpiとし、透過音圧をptとしたときに、20×log10(|pi/pt|)として定義される。
また、本発明者らの更なる検討によれば、騒音に対する防音構造体20の遮音量が極大となる周波数(以下では、極大遮音周波数と言う)は、防音構造体20の構造に関する値に対して依存性を示すことが分かった。例えば、背面部30の厚みを薄くするほど、極大遮音周波数が低周波側にシフトする(図21等参照)。本発明は、このような性質に着目したものであり、本発明の防音構造体20では、その構造に応じた好適な周波数にて遮音効果を得ることができる。
より詳しく説明すると、遮音性能を高めるためには、防音構造体を構成する板等の重量を大きくすることが一般的である。つまり、遮音性能を高くしようとすると、通常、防音構造体自体、及び防音構造体を備える機器等が重量化することになる。
また、騒音を遮音する(厳密には、音を打ち消す)ことが可能な防音構造体としては、前述の特許文献1乃至3に記載された共鳴構造体が挙げられるが、これらは、極大共鳴周波数よりも高い周波数において騒音を打ち消す。したがって、特許文献1乃至3に記載の共鳴構造体を用いて低周波側で遮音する場合、極大共鳴周波数をより低い周波数に設定する必要があり、そのために共鳴構造体が大型化、及び重量化することになる。
また、特許文献1乃至3に記載の共鳴構造体では、極大共鳴周波数から離れた周波数帯域で音を打ち消すため、遮音効果と同時に、極大共鳴周波数での吸音効果を得ることが困難である。
これに対して、本発明の防音構造体20では、その構造に関する値が、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分(以下、周波数差分とも言う)に応じた値に設定されている。具体的には、表面部24及び背面部30の各々の厚み、並びに背面部30の硬さ等が周波数差分に応じて設定されている。換言すると、例えば、背面部30の厚み及び硬さを調整することで、極大遮音周波数を極大共鳴周波数に近付けたり、極大共鳴周波数よりも低周波側にシフトさせたりすることができる。
より具体的に説明すると、例えば、背面部30の厚みが薄くなるほど、極大遮音周波数は、より低周波側にシフトする(例えば、図21参照)。これにより、防音構造体20の小型軽量化を図りつつ、より低周波帯域にて騒音を遮音することが可能となる。
なお、本発明の防音構造体20を構成するヘルムホルツ共鳴体22では、極大遮音周波数が極大共鳴周波数よりも低い周波数帯域に存在する傾向にある(例えば、図38及び図39参照)。これにより、より低周波側で騒音を遮音する防音構造体を実現するにあたり、極大共鳴周波数をより高周波側に設計することができるので、より小型で軽量な防音構造体を実現することが可能となる。
ここで、極大遮音周波数をより低周波側にシフトし、より低周波側で騒音を遮音する場合には、背面部30の厚みを2mm以下に設定するのがよい。また、背面部30の厚みが小さくなるほど、極大遮音周波数が低周波数側に大きくシフトするので、防音構造体20の軽量化及び省スペース化を図る上では、1mm以下であると好適である。
また、極大遮音周波数をfsとし、極大共鳴周波数をfrとしたとき、小型で軽量化された構造体にて低周波の騒音を遮音する上では、両者の周波数差分である(fr−fs)を150Hz以上とすればよく、より好ましくは500Hz以上にするとよい。
さらに、背面部30の厚みは、表面部24の厚みよりも小さい方が好ましく、これにより、極大遮音周波数をより低周波数側にシフトすることができる。
また、表面部24の厚み、並びに背面部30の厚み及び硬さ等を調整することにより、極大遮音周波数を極大共鳴周波数付近に設定することもできる(例えば、図42参照)。この場合には、ヘルムホルツ共鳴体22による音の吸収効果と遮音効果とを同時に得ることが可能となる。この結果、モータ音及びインバータ音などの特定周波数の騒音を効果的に低減することが可能となる。特に、本発明の防音構造体20を備えた区画部材10を自動車等の乗物の所定位置(具体的には、車のボンネット内と運転席の間、あるいはタイヤと運転席の間)に配置すれば、高い吸収効果と高い遮音効果とにより、車外から車内に侵入する騒音を効果的に抑制することが可能となる。
なお、極大遮音周波数を極大共鳴周波数付近に設定し、音の吸収効果と遮音効果を両立させる場合には、背面部30の厚みを2mm以上に設定するのがよく、3mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましい。ただし、厚みを大きくすると全体のサイズ及び重量が大きくなるため、必要に応じて適宜調整する。また、貫通空間26が設けられた表面部24の厚みについては、2mm以上に設定するのがよく、3mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましい。
本発明の防音構造体20の遮音メカニズムについて図9を参照しながら説明すると、ヘルムホルツ共鳴体において、貫通空間26(貫通孔)における空気がマスとして機能する影響(図9中、黒色の矢印)が、貫通空間26の内壁での粘性摩擦を通じて表面部24に伝わり、さらに連結部32まで伝播する。これにより、連結部32における背面部30との接続部分にマス性の振動が生じる。また、ヘルムホルツ共鳴体22では、背面空間40の膨張圧縮によるバネ性の振動(図9中、白抜きの矢印)が背面部30に伝播する。これらの振動が極大共鳴周波数よりも低周波の振動となる場合、背面部30上において、連結部32のマス位相と、背面部30の中央部分を中心とするバネ位相と、が互いに反転するようになる。つまり、背面部30上に、位相が互いに反転した部位ができることになる。この場合、背面部30の振動から再放射される音同士が打ち消し合って透過率が小さくなり、その結果、遮音(透過損失)が生じるというメカニズムであると考えられる。ここで、連結部32のマス性と背面空間40のバネ性との間でインテンシティが一致するときに、位相反転による音の打ち消し合いが最大化して、遮音(透過損失)が最大化する。
なお、上記の振動が極大共鳴周波数よりも高周波の振動となる場合には、背面部30各部が全体として同方向に変位するため、騒音に対する遮蔽性が低下し、ヘルムホルツ共鳴による音場増強が生じている分だけ、板単体のみの構成よりも遮蔽性が劣ってしまう。
また、本発明者らの検討によれば、周波数差分(fr−fs)と背面部30の厚みtとの相関関係、及び、周波数差分(fr−fs)と背面部30の硬さHとの相関関係が定量的に特定された。本発明の防音構造体20では、特定された相関関係に基づいて背面部30の厚み及び硬さが設定されている。具体的に説明すると、背面部30の厚みt(mm)は、下記の関係式(1)を満たすように設定されている。
(fr−fs)∝t−1.6±0.4 (1)
上記の関係式(1)に基づいて背面部30の厚みtを設定すれば、極大遮音周波数fsを所望の周波数帯域に設定することが可能となる。
また、背面部30の硬さHについては、背面部30のヤング率をE(Pa)とし、背面部30の厚みをt(mm)としたときにE×tとなり、下記の関係式(2)を満たすように設定されている。
(fr−fs)∝H−0.5±0.2 (2)
上記の関係式(2)に基づいて背面部30の硬さH、具体的にはヤング率及び厚み等を設定すれば、極大遮音周波数fsを所望の周波数帯域に設定することが可能となる。なお、背面部30のヤング率については、背面部30が単一の物質からなる場合には、その物質固有の値を用いればよく、あるいはヤング率を実際に測定して求めてもよい。ヤング率を測定する方法としては、具体的に引張試験、圧縮試験、ねじり試験、共振法、超音波パルス法、及び振子法等を利用することができる。
ヤング率が小さい場合、同じ硬さを得るためには厚みを大きくする必要があり、このときには同じ硬さを得る上で背面部30の質量が大きくなる傾向にある。これは、ヤング率の大きさは、物質に応じて3〜4桁程度異なるが、密度は、物質間でより近い値となるためである。したがって、ヤング率については、ある程度以上大きい値である方が望ましい。
すなわち、ヤング率は、1MPa以上であることが望ましく、100MPa以上であることがより望ましく、1000MPa(1GPa)以上であることが特に望ましい。
一方、背面部30が薄くなりすぎると破け易く取り扱い難くなり、また、非線形振動が生じ易くなるために音が通過し易くなる場合がある。ここで、上述した硬さHの式により、ヤング率が大きすぎる場合には、厚みがより小さいことが求められる。このため、ヤング率については、ある程度以下になるように小さいことが望ましい。
すなわち、ヤング率は、1000GPa以下であることが望ましく、300GPa以下であることがより望ましい。
[実施例1]
<防音構造体の作製>
ヘルムホルツ共鳴体である防音構造体を、背面部の厚みが2mmとなり、表面部の厚みが2mmとなり、背面空間の厚みが2mmとなり、表面部に形成された貫通孔の直径が6mmとなり、背面空間の開口形状が一辺20mmの正方形20mmとなり、且つ、全体として円筒形状となる条件で作製した。
具体的には、厚み2mmのアクリル板を準備し、レーザーカッターを用いて直径60mmの円形状に3枚切り出した。
3枚の円状アクリル板の各々は、表面部、背面部及び連結部として用いた。表面部として用いる厚さ2mmの円状アクリル板の中心には、直径6mmの貫通孔を穿設した。連結部として用いる厚さ2mmの円状アクリル板は、その内側に一辺20mm角の正方形状の開口部が設けられるように加工した。そして、後述の音響管測定に内径40mm、外径60mmの音響管を用いるため、それと同じ外径になるように各円状アクリル板を加工した。これにより、表1に示す表面部、連結部及び背面部が得られた。上記の部品を順に両面テープで貼り合わせることによって、ヘルムホルツ共鳴体である防音構造体を作製した。
Figure 2020036031
[比較例1]
表面部に貫通孔が設けられていない点を除き、実施例1と同様の手順により、比較例1の防音構造体を作製した。比較例1の防音構造体では、厚み2mm、直径60mmのアクリル板が二枚あり、板間に、一辺20mm角の正方形状で厚みが2mmである空間(背面空間)が設けられているが、上述のように貫通孔が設けられていない。
<評価>
作製した実施例1及び比較例1の防音構造体について、表面部側から音を入射させる配置で音響管測定を行った。具体的には、「ASTM E2611-09: Standard Test Method for Measurement of Normal Incidence Sound Transmission of Acoustical Materials Based on the Transfer Matrix Method」に従い、4端子マイク(不図示)を用いた透過率と反射率の測定系を作製して評価を行った。音響管の内部直径は40mmとした。なお、これと同様の測定は、日本音響エンジニアリング製WinZacMTXを用いることができる。
その後、それぞれの測定において得られた透過率から透過損失を求め、また、(1−透過率−反射率)である吸収率を求めた。
作製した実施例1の防音構造体について求めた吸収率を図10に示す。図10に示すように、作製した防音構造体では、ヘルムホルツ共鳴による高い吸収のピークが3900Hz付近にあることが分かる。
また、実施例1と比較例1の各々について求めた透過損失の差分を図11に示す。図11に示すように、ヘルムホルツ共鳴の極大共鳴周波数付近に透過損失のピークが存在することが分かる。
以上のように、実施例1のヘルムホルツ共鳴構造を用いることにより、極大共鳴周波数において高い吸収効果が得られ、さらに、極大共鳴周波数付近にて高い透過損失を得ることができる。
[実施例2〜4及び比較例2〜4]
<防音構造体の作製>
表面部、連結部及び背面部を表2のように変更した点を除き、実施例1と同様の手順により、実施例2〜4の防音構造体を作製した。
また、表面部に貫通孔が設けられていない点を除き、実施例2〜4と同様の構造となった比較例2〜4の防音構造体を作製した。
Figure 2020036031
<評価>
実施例1と同様の方法を用いて、実施例2〜4及び比較例の各々について、透過損失及び音の吸収率を求めた。
実施例2では、図12に示すように、吸収率のピーク周波数(極大共鳴周波数)よりも低周波側に透過損失のピーク周波数(極大遮音周波数)が存在していることが分かる。ここで、二つのピーク周波数の差分は1000Hzであり、吸収率のピーク周波数より大きく低周波側にシフトした位置に透過損失のピーク周波数が現れることが分かった。また、実施例2と比較例2について透過損失を比較した結果を図13に示す。なお、図13では、実線が実施例2の透過損失を、破線が比較例2の透過損失を示している。図13において矢印にて示した箇所付近では、貫通孔を空けて質量が小さくなっている実施例2の方が、比較例2より大きな透過損失を得ることができている。以上のように、背面部が比較的薄い構成であれば、低周波側にてより大きな透過損失を得ることが可能である。
また、実施例3について求めた透過損失及び吸収率を図14に、実施例3の透過損失と比較例3の透過損失との比較結果を図15に、それぞれ示す。これらの図から分かるように、実施例3では、吸収率のピーク周波数(極大共鳴周波数)よりも低周波側に透過損失のピーク周波数(極大遮音周波数)が存在し、両ピーク周波数の差分が400Hzであることが分かった。また、実施例3でも、貫通孔のない比較例3よりも大きな透過損失を有する領域(図15中の矢印部分)があることが分かった。
また、実施例4について求めた透過損失及び吸収率を図16に、実施例4の透過損失と比較例4の透過損失との比較結果を図17に、それぞれ示す。これらの図から分かるように、実施例4では、背面部の厚みをより厚くしたことにより、吸収のピーク周波数(極大共鳴周波数)と透過損失のピーク周波数(極大遮音周波数)とが非常に近くなり、両周波数の差分が100Hzまで小さくなる。つまり、実施例4の防音構造体によれば、高い吸収(吸音)と高い遮音とを両立することができる。また、吸収ピーク周波数(図17の矢印箇所)の付近では、実施例4の方が、貫通孔が設けられてない比較例4に比べて、より大きな遮音効果が得られている。つまり、実施例4は、吸収ピーク周波数から低周波側の領域にかけて高い遮音性を有することが分かった。
[シミュレーション1]
背面部の厚みの変化が本発明の防音構造体の遮音性に及ぼす影響を検討するために、背面部の厚みを変えたときの透過損失ピークの変化を、有限要素法シミュレーションCOMSOLver.5.3aを用いてシミュレーションした。シミュレーションの条件について説明すると、表面部を厚み2mmのアクリル製の板とし、貫通孔の直径を6mmとした。また、背面部を直径20mmの板とし、背面空間の厚みを2mmとし、連結部であるフレームの高さ(厚み)を3mmとした。背面部の厚みについては、0.5mm〜2.0mmまで0.1mmずつ変化させ、それとは別に、2mm〜6mmまで0.5mmずつ変化させた。
計算は、2次元軸対称モデルで円筒形のヘルムホルツ共鳴体をモデル化し、ヘルムホルツ共鳴体の貫通孔側から平面波を入射し、透過率と反射率を求め、(1−透過率−反射率)から吸収率を算出した。なお、ヘルムホルツ共鳴体の貫通孔部分に熱粘性抵抗物理モデルを適用して摩擦による音の吸収効果についても、計算中に取り込んだ。アクリル部材からなる部分については構造力学モデルとし、空気部分については音響モデルとして、さらに、上記の熱粘性抵抗物理モデル部分も含めて、音響と振動とを連成して解析を用いた計算を行った。
シミュレーションの結果について、先ず、表面部と背面部が同一の厚みで、いずれも2mmである場合の透過損失の計算結果を図18に示す。なお、図18には、表面部に貫通孔があるヘルムホルツ共鳴体の透過損失(実線)とともに、貫通孔がない構造の透過損失(破線)が図示されている。図18に示すように、貫通孔があるヘルムホルツ共鳴体を形成することで、4470Hzを中心に強い遮音性能を示す。また、貫通孔のない構造と比較して、12.5dB以上の遮音性能の向上がみられた。また、シミュレーション1にて求めた吸収率から、ヘルムホルツ共鳴体の吸収ピーク周波数(極大共鳴周波数)は、4700Hzであることが分かった。つまり、表面部と背面部の厚みが同一である場合にも、ヘルムホルツ共鳴体の吸収ピーク周波数より低周波側で大きな遮音効果を得ることができる。
また、防音構造体(ヘルムホルツ共鳴体)の各部における変位方向を検証するため、変位量とその方向を可視化し、図19及び20に示すように、その結果(変位量と方向)をヘルムホルツ共鳴体の2次元断面図に対して表示した。ここで、図19は、遮音量がピーク(極大値)となる4470Hzにおける変位量を示しており、図20は、遮音量が極小値となる4925Hzにおける変位量を示した。図19及び20のいずれにおいても、変位前の形状を破線に示している。なお、図示の都合上、ヘルムホルツ共鳴体各部の変位量は、実際よりも誇張して図示されており、極端に拡大して示されている。
図19に示すように、連結部と背面部の他の部位(連結部から離れた部位)との間で変位方向が逆方向になっていることが分かる。これは、背面部から放射される音のうち、連結部の位置からの音と他の部位からの音とが、互いに位相が反対となるために、打ち消し合っていることを示す。一方、図20に示すケースでは、互いに位相が同方向であるため、背面部から放射される音(透過波)が強め合うようになり、この場合の遮音性能は、貫通孔がない構造よりも低下する。以上のように、表面部に連結部を通じて接続(固定)された背面部上の位相変化が、背面部からの放射音(透過波)に影響していることが分かった。
次に、背面部の厚みを変えたときの透過損失のピーク周波数を求めた。具体的には、背面部の厚みを2mmから5mmまで1mmずつ変化させ、それぞれの透過損失を求めた。各厚みでの透過損失を図21に示す。図21に示すように、背面部が薄くなるほど、質量が小さくなるため、透過損失がほとんどの周波数領域に亘り質量則に従って小さくなる。
一方、透過損失にはピーク(極大値)が存在し、そのピーク周波数(極大遮音周波数)は、図21に示すように、背面部が薄くなるほど低周波側にシフトすることが分かる。その極大遮音周波数では、薄い背面部であっても、より厚い背面部よりも大きな透過損失が得られる。
図22には、背面部の厚みを変化させ、それぞれの厚みにおける透過損失ピーク周波数、すなわち極大遮音周波数を示した。図22に示すように、図21に示す厚み(2mm〜5mm)よりも薄い厚みでも、背面部の厚みが薄くなるほど極大遮音周波数が低周波側にシフトすることが分かった。特に、背面部の厚みが表面部の厚み(2mm)より小さくなると、極大遮音周波数の低周波側へのシフト量が著しく大きくなることが分かった。このように、ヘルムホルツ共鳴体は、背面部を薄くして軽量化しているにもかかわらず、透過損失のピーク(極大値)が低周波側に出現するという特異な振る舞いを示す。
また、背面部のバネとしての硬さが小さくなるほど、それに釣り合うように、ヘルムホルツ共鳴体の貫通孔のマスの強さが低下する(弱まる)。ここで、マス性が弱まる周波数は、ヘルムホルツ共鳴体の極大共鳴周波数から離れた周波数である。よって、ヘルムホルツ共鳴体の極大共鳴周波数から離れた周波数、つまり低周波側では、バネとマスの大きさの釣り合いが生じて透過損失のピーク(極大値)が現れるようになる。このように背面部の硬さを変えてバネ性をコントロールすることにより、透過損失のピーク(極大値)が出現する周波数帯域、すなわち極大遮音周波数をコントロールすることができる。
また、変化させたそれぞれの背面部の厚みにおいて、表面部に貫通孔がない構造に対して、ヘルムホルツ共鳴体とする(すなわち、表面部に貫通孔を形成する)ことによる透過損失ピークにおける透過損失の上がり幅を、図23に示す。図23から分かるように、ヘルムホルツ共鳴体では、いかなる背面部の厚みにおいても、貫通孔がない構造に対して約10dB以上の大きな透過損失の向上効果が得られた。このように表面部に貫通孔を設けて軽量化すれば、極大共鳴周波数よりも低周波側に大きな透過損失が現れる構造となる。
また、極大遮音周波数と、ヘルムホルツ共鳴体の音の吸収率が最大となる4700Hz(すなわち、極大共鳴周波数)との差分について、背面部の厚みを変化させたときの各値を図24に示す。さらに、背面部の硬さ、すなわち、(背面部のヤング率E)×(背面部の厚みtの3乗)を変化させたときの、上記の周波数差分を図25に示す。上記の周波数差分は、図24及び25に示すように、背面部の厚みが小さくなるほど大きくなり、また、背面部の硬さが小さくなるほど大きくなり、詳細には、背面部の厚み及び硬さに対して累乗的に変化することが分かった。なお、上記の周波数差分は、背面部の厚みに対して−1.57乗の依存性を示しており、背面部の硬さに対しては−0.52乗の依存性を示している。
[シミュレーション2]
ヘルムホルツ共鳴体から連結部を除いた構造の透過損失についてシミュレーションした。シミュレーションの手法及び条件については、シミュレーション1と同様である。
平面状に配置された複数のヘルムホルツ共鳴体(防音セル)の各々において、貫通孔を有する表面部と背面部とが距離をあけて配置されている一方で連結部によって連結されていない構造は、例えば、建材分野等で利用される孔空き吸音板でよく見受けられる。
上記の内容にてシミュレーションした透過損失の計算結果を図26に示す。図26に示すように、ヘルムホルツ共鳴体から連結部を除いた構造では、極大共鳴周波数における透過損失の極小値が現れる一方で、ヘルムホルツ共鳴体に特徴的な透過損失のピーク(極大値)は現れない。これは、前述したように、透過損失のピークが現れるメカニズムが、貫通孔でのマス成分の振動が連結部に伝播された際に連結部と背面部の他の部位とが互いに逆位相状態となって背面部からの音放射が打ち消し合ったことによる。すなわち、連結部が設けられていない構成では、ヘルムホルツ共鳴体の位相状態(貫通孔でのマス成分の振動)が背面部に局所的に伝わることがないため、放射音の打ち消し合いが生じずに透過損失のピーク(極大値)が現れなかったものと考えられる。
以上のように、大きな遮音効果を得るには、ヘルムホルツ共鳴体において表面部及び背面部の双方が連結部に固定接続されている必要がある。
[シミュレーション3]
表面部の貫通孔の直径を6mmから4mmに変更したモデルを作成し、シミュレーション1と同様の手法によって有限要素法計算を行った。本シミュレーションは、ヘルムホルツ共鳴体の貫通孔の直径を小さくすることで吸収ピーク周波数(極大共鳴周波数)が低周波側にシフトした状況を想定している。具体的に説明すると、極大共鳴周波数が3445Hzとなり、それよりも低周波側に透過損失のピークが現れた。
透過損失のピーク周波数(極大遮音周波数)と背面部の厚みとの対応関係を図27に示す。背面部の厚みを変化させたときの、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分を図28に示す。背面部の硬さを変化させたときの、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分を図29に示す。
図27に示すように、背面部が薄く(軽く)なるほど、極大遮音周波数が低周波側にシフトする。このとき、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分は、背面部の厚みに対して累乗的に変化し、図28に示すケースでは−1.60乗に従って周波数差分が低周波側にシフトしていくことが分かった。また、図29に示すケースでは、周波数差分が背面部の硬さに対して−0.59乗の依存性を示した。
なお、シミュレーション3の結果とシミュレーション1の結果と比較すると分かるように、種類が異なるヘルムホルツ共鳴体であるにもかかわらず、背面部の厚み及び硬さに対する周波数差分の依存性は、ほぼ同一となることが分かった。
[シミュレーション4]
背面空間の厚みを2mmから3mmに変更したモデルを作成し、シミュレーション1と同様の手法によって有限要素法計算を行った。本シミュレーションは、ヘルムホルツ共鳴体の背面空間の体積を大きくすることで極大共鳴周波数(吸収ピーク周波数)が低周波側にシフトした状況を想定している。具体的に説明すると、極大共鳴周波数が4015Hzとなり、それよりも低周波側に透過損失のピークが現れた。
透過損失のピーク周波数(極大遮音周波数)と背面部の厚みとの対応関係を図30に示す。背面部の厚みを変化させたときの、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分を図31に示す。背面部の硬さを変化させたときの、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分を図32に示す。
図30に示すように、背面部が薄くなるほど、極大遮音周波数は、低周波側にシフトする。このとき、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分は、背面部の厚みに対して周波数差分が累乗的に変化し、図31に示すケースでは、周波数差分が背面部の厚みに対して−1.62乗に従って低周波側にシフトすることが分かった。また、図32に示すケースでは、周波数差分が背面部の硬さに対して−0.54乗に従ってシフトすることが分かった。
なお、シミュレーション1、3及び4のそれぞれの結果を比較すると分かるように、種類が異なるヘルムホルツ共鳴体であるにもかかわらず、背面部の厚み及び硬さに対する周波数差分の依存性は、ほぼ同一であることが分かった。
[シミュレーション5]
表面部の厚みを変更し、背面部の硬さを段階的に変更した点を除き、シミュレーション1と同様のシミュレーションを行った。表面部の厚みが1mmである場合には、図33に示すように、ヘルムホルツ共鳴体の吸収ピーク周波数(極大共鳴周波数)が5140Hzとなる。なお、図33には、表面部に貫通孔があるヘルムホルツ共鳴体の透過損失(実線)とともに、貫通孔がない構造の透過損失(破線)が図示されている。シミュレーション1と同様、表面部に貫通孔が形成されたヘルムホルツ共鳴体では、表面部に貫通孔が形成されていない構成に対し、極大共鳴周波数よりも低周波側で大きな遮音効果を得られることが分かった。
また、図34及び図35に示すように、表面部の厚みが1mmであるときにも、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分は、シミュレーション3と同様、背面部の厚み及び硬さに対して相関性を示す。つまり、表面部をより薄くした場合にも、周波数差分に関して上記の相関関係が見出されることが分かった。図34に示すケースでは、周波数差分が背面部の厚みに対して−1.29乗に従って低周波側にシフトし、図35に示すケースでは、周波数差分が背面部の硬さに対して−0.43乗に従ってシフトすることが分かった。
なお、上述の傾向は、図36及び図37に示すように、表面部の厚みが3mmである場合にも確認された。図37に示すケースでは、周波数差分が背面部の厚みに対して−1.987乗に従って低周波側にシフトすることが分かった。
[シミュレーション6]
次に、実施例1で作製した構造と同じ構造の防音構造体について、シミュレーション1と同様手法及び条件にて、有限要素法シミュレーションCOMSOLver5.3aを用いたシミュレーションを行った。また、シミュレーションの条件として、アクリル板のヤング率、密度及びポアソン比を材料パラメータとして代入し、2次元軸対称モデルで円筒形のヘルムホルツ共鳴体をモデル化した(CADモデルを作成した)。そして、貫通孔部分を熱粘性抵抗物理モデルとし、アクリル板部分を構造力学モデルとし、他の空気部分を音響モデルとして、それぞれのフィジクス(音響と振動)を連成して計算を行った。
計算結果としての吸収率を図38に、貫通孔がない構造との透過損失の差分を図39に、それぞれ示す。図38及び図39を対比すると分かるように、実施例1と同様に、吸収ピークの周波数(極大共鳴周波数)と透過損失のピーク周波数(極大遮音周波数)とが極めて近い周波数に現れる。厳密に説明すると、シミュレーション6では、吸収のピーク周波数が透過損失のピーク周波数よりも、やや高周波側に存在することとなった。
[シミュレーション7]
次に、シミュレーション6と同一のシミュレーションモデルを用いて、背面空間の厚みを1mmから6mmまで1mmずつ変化させて、シミュレーション5と同様のシミュレーションを行った。それぞれの背面空間の厚みについて、貫通孔がない構造の透過損失との差分を図40に示す。図40に示すように、背面空間の厚みが大きくなるほど、ヘルムホルツ共鳴体における背面空間の体積が大きくなるため、吸収のピーク周波数(極大共鳴周波数)が低周波側にシフトする。また、極大共鳴周波数のシフト(変化)に応じて、透過損失のピーク周波数、すなわち極大遮音周波数も低周波側にシフトする傾向が見られた。つまり、遮音量(透過損失)は、ヘルムホルツ共鳴体の体積(具体的には背面空間の体積)に依らず、一般的に極大共鳴周波数付近で極大となる傾向にあることが分かった。
[シミュレーション8]
次に、シミュレーション6と同一のシミュレーションモデルを用いて、貫通孔の直径を2mmから10mmまで2mmずつ変化させて、シミュレーション5と同様のシミュレーションを行った。それぞれの貫通孔の直径について、貫通孔がない構造の透過損失との差分を図41に示す。図41に示すように、貫通孔の直径が大きくなるほど、吸収のピーク周波数(極大共鳴周波数)が高周波側にシフトする。また、吸収のピーク周波数のシフトに応じて、透過損失のピーク周波数(極大遮音周波数)も高周波側にシフトする傾向が見られた。つまり、遮音量(透過損失)は、ヘルムホルツ共鳴体における貫通孔の直径に依らず、一般的に極大共鳴周波数付近で極大となる傾向にあることが分かった。
[シミュレーション9]
次に、シミュレーション1のモデルにおいて表面部の厚みを1〜3mmの間で変化させてシミュレーションし、音の吸収ピークと遮音ピークとが近くなる条件、すなわち、遮音と吸収(吸音)を両立できる条件を検討した。シミュレーションの結果については、図42に示すように、表面部の厚みが1mmである場合は、背面部の厚みを厚くしても、極大共鳴周波数と極大遮音周波数との差分が400Hz程度残る。これに対して、表面部の厚みを2mm以上にすることで、周波数差分が十分に小さくなる。すなわち、表面部の厚みを2mm以上とすることが、遮音と吸収(吸音)を両立するための条件であることが分かった。図42は、表面部及び背面部の各々の厚みを変化させて、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分をシミュレーションしたときの結果を示す。なお、図42中のグラフのうち、条件1のグラフは、貫通孔の直径が6mmで表面部の厚みが1mmであるときの周波数差分を示し、条件2のグラフは、貫通孔の直径が6mmで表面部の厚みが2mmであるときの周波数差分を示し、条件3のグラフは、貫通孔の直径が4mmで表面部の厚みが2mmであるときの周波数差分を示し、条件4のグラフは、貫通孔の直径が6mmで表面部の厚みが2mmで背面空間の厚みが3mmであるときの周波数差分を示し、条件5のグラフは、貫通孔の直径が6mmで表面部の厚みが3mmであるときの周波数差分を示している。
また、図43に、図42のシミュレーション結果を背面空間の厚み(背面距離)で微分して得られるグラフを示した。微分量について説明すると、背面部の厚みをdi(iは整数)とし、極大遮音周波数と極大共鳴周波数との差分をΔf(di)としたときに、厚みd1からd2まで変化させた場合の微分量は、(Δf(d2)−Δf(d1))/(d2−d1)として決めることができる。すなわち、図43が示すグラフは、背面空間の厚みが変化した場合の極大遮音周波数と極大共鳴周波数の差分についての変化量を示している。図43から分かるように、どのような条件においても背面部の厚みが約2mm以上となると、周波数差分がほぼ変化しないことが分かる。さらに、図42に図示のシミュレーション結果と合わせて考えると、表面部を2mm以上とし、背面部の厚みを2mm以上とすると、各々の厚みにはほぼ依存せずに、安定して遮音と吸収(吸音)との両立が可能であることが明らかになった。
次に、シミュレーション9の結果から、透過損失のピーク周波数(極大遮音周波数)を音の吸収のピーク周波数(極大共鳴周波数)よりも低周波にする条件について検討した。一般的に、質量則に従って遮音を行うことは、低周波側であるほど困難となる。そのため、低周波側で極大遮音周波数を発現させることが望ましいケースが多い。ここで、図42によれば、シミュレーション9におけるいずれの条件の表面部の厚みであっても、背面部の厚みが2mm以下になると、極大遮音周波数と極大共鳴周波数とが150Hz以上離れる。また、背面部の厚みが小さくなるほど、極大遮音周波数が低周波側に大きくシフトすることが分かった。よって、低周波側で遮音する上では背面部の厚みが1mm以下であることが望ましい。これは、背面部を薄くすることで、防音構造体の軽量化及び省スペース化を図ることができるため、有意義である。
以上までに説明してきた実施例及びシミュレーション結果から、本発明の効果は明らかである。
10 区画部材
20 防音構造体
22 ヘルムホルツ共鳴体
24 表面部
26 貫通空間
28 表面板
30 背面部
32 連結部
34 開口部
40 背面空間
42 表面板
50 多孔質吸音体

Claims (17)

  1. 二つの空間の一方側にある音源から発せられた騒音を低減する防音構造体を備え、前記二つの空間を区画する区画部材であって、
    前記防音構造体は、
    貫通空間が設けられた表面部と、
    前記表面部とは間隔を空けて配置された背面部と、
    前記表面部及び前記背面部に固定されて前記表面部及び前記背面部を連結する連結部と、を有し、前記音源から発せられた騒音を遮音し、
    前記防音構造体による遮音量が極大となる周波数fsは、前記防音構造体の音の吸収率が極大となる周波数frよりも低く、
    前記防音構造体の構造に関する値が、周波数差分である(fr−fs)に応じて設定されていることを特徴とする区画部材。
  2. 前記表面部と前記背面部と前記連結部とがヘルムホルツ共鳴体を構成し、
    前記ヘルムホルツ共鳴体の共鳴周波数のうち、音の吸収率が極大となる極大共鳴周波数が前記防音構造体の音の吸収率が極大となる周波数frである請求項1に記載の区画部材。
  3. 前記背面部の厚みt(mm)は、下記の関係式(1)を満たすように設定されている請求項2に記載の区画部材。
    (fr−fs)∝t−1.6±0.4 (1)
  4. 前記背面部のヤング率をE(Pa)とし、前記背面部の厚みをt(mm)としたとき、前記背面部の硬さHは、E×tとなり、且つ、下記の関係式(2)を満たすように設定されている請求項2又は3に記載の区画部材。
    (fr−fs)∝H−0.5±0.2 (2)
  5. 前記表面部の厚みが2mm以上に設定されている請求項2乃至4のいずれか一項に記載の区画部材。
  6. 前記背面部の厚みが2mm以上に設定されている請求項5に記載の区画部材。
  7. 前記背面部の厚みが2mm以下に設定されている請求項2乃至4のいずれか一項に記載の区画部材。
  8. 前記背面部の厚みが前記表面部の厚みよりも小さい請求項7に記載の区画部材。
  9. 前記背面部の一部が、発泡材料、独立気泡発泡材料、中空材料及び多孔質材料のうちの少なくとも一つから構成された空気を含む構造体である請求項1乃至8のいずれか一項に記載の区画部材。
  10. 前記貫通空間は、前記表面部に形成された貫通孔であり、
    前記貫通孔の直径又は円相当直径が、前記表面部と前記背面部と前記連結部とに囲まれた背面空間の厚みよりも大きい請求項1乃至9のいずれか一項に記載の区画部材。
  11. 前記防音構造体は、複数種類の前記ヘルムホルツ共鳴体によって構成されている請求項2に記載の区画部材。
  12. 前記防音構造体は、同径の貫通孔が複数形成された一枚の表面板を有し、
    複数種類の前記ヘルムホルツ共鳴体の各々において、前記表面板のうち、前記貫通孔が少なくとも一つ形成された部分が前記表面部を構成しており、
    少なくとも二つ以上の前記ヘルムホルツ共鳴体の間では、前記表面部と前記背面部と前記連結部とに囲まれた背面空間の体積が異なっている請求項11に記載の区画部材。
  13. 前記防音構造体の各部の厚みの平均値が10mm以下である請求項1乃至12のいずれか一項に記載の区画部材。
  14. 前記表面部と前記背面部と前記連結部とに囲まれた背面空間の内部、若しくは、前記防音構造体の外表面のうちの少なくとも一部分に多孔質吸音体が設けられている請求項1乃至13のいずれか一項に記載の区画部材。
  15. 前記防音構造体は、前記表面部が前記音源側を向いた状態で配置されている請求項1乃至14のいずれか一項に記載の区画部材。
  16. 請求項1乃至15のいずれか一項に記載の区画部材が、モータ、インバータ、エンジン、及びタイヤのうちの少なくとも一方の機器が配置された空間と、乗員が乗る空間と、の間に配置されていることを特徴とする乗物。
  17. 筐体内に前記音源を備え、且つ、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の区画部材が前記筐体のうちの少なくとも一部分、又は、前記筐体内に配置されていることを特徴とする電子機器。
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