JP2005170715A - 繊維補強セメント系混合材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属繊維を混入した繊維補強セメント系混合材料であって、前記金属繊維1の直径dは0.3mm以下であり、かつ長さLと直径dとの比(L/d)が20以上であって、前記金属繊維に他の一般部11とは形状の異なる異形部12を複数箇所設けたことを特徴とするものである。ここで、前記金属繊維の引張強度を1500N/mm2以上、好ましくは2600〜3100N/mm2程度とし、前記一般部の断面形状は略円形であって、前記異形部は前記一般部よりも幅が広いものを使用することができる。
【選択図】図1
Description
超高強度繊維補強コンクリートの力学的な特徴は、圧縮強度Fcが180N/mm2〜230 N/mm2と従来のコンクリートに比較すると著しく高い。しかし、高い圧縮強度と相対的に比較すると、材料の直接引張強度Ftは8N/mm2〜12N/mm2であり、曲げ引張強度Fbは30N/mm2〜45N/mm2、曲げによる破壊エネルギーWfが30,O00J/m2〜36,000J/m2であり、引張りに関わる強度特性は圧縮の強度特性を活用するには充分とは言えない。従って、超高強度繊維補強コンクリートを構造材料として適用する場合は、引張強度特性の制限から圧縮特性を充分に活用することはできなかった。
しかし、これらの微粒繊維は、効果の良く知られた石綿と同様の働きをするものであると同時に、健康上の観点から使用が禁止されている石綿と同様に使用禁止になるおそれもある。
また、特許文献1では、引張強度を増加させるために金属繊維の表面をエッチング処理している。エッチング処理は、リン酸塩処理法により金属繊維の表面に金属リン酸塩水溶液を塗布または噴霧しておこなう。さらにここでは、セメント質マトリックス中の表面処理した金属繊維の付着特性の効果を示すために、セメント質マトリックス中に埋め込んだ1本の金属繊維の引き抜き試験をおこない、引き抜き抵抗と抜出し量を測定している。その結果、表面処理をしない場合の平均付着強度が1N/mm2に対して表面処理をすることにより2.5N/mm2に増加している。
<1>特許文献1では、金属繊維の表面にエッチング処理をおこなうことによって付着強度を2.5倍程度向上させている。しかし、処理をおこなう手間や費用を考えると、必ずしも大きな効果が得られたとはいえない。
<2>実際に繊維補強セメント系混合材料iを用いた構造物を構築するに際して、金属繊維cの向きをランダムにすることは難しい。例えば、桁、梁、壁状構造物、またはスラブなどを製作する場合、桁等の長手方向に繊維補強セメント系混合材料iが流れるように打設されるので、流れに平行するように多くの金属繊維cの方向が向く(図11参照)。特に、型枠h近傍ではこの傾向が著しい。このため、ウェブや壁に垂直に配向する金属繊維cは少なくなる。これらの事実を考慮して、現状の設計法では、一般部材に対して配向性による引張強度の低下を考慮し、理想的なランダム配向に対して配向影響係数K=1.25で除して低減している。
また、金属繊維を混入した繊維補強セメント系混合材料であって、前記金属繊維の直径dは0.3mm以下であり、かつ長さLと直径dとの比(L/d)が20以上であって、前記金属繊維に曲折部を設けたことを特徴とするものである。ここで、前記金属繊維の引張強度を1500N/mm2以上、好ましくは2600〜3100N/mm2程度とし、前記曲折部の内角を90度〜150度とすることができる。
さらに、上記した繊維補強セメント系混合材料において、混入する前記金属繊維の体積を硬化後の全体体積の4%以下、好ましくは1.0%〜2.0%とし、前記金属繊維を混入するセメント質マトリックスは、セメントと、最大粒度径が5mm以下、好ましくは2.5mm以下の骨材粒子と、粒子径が1μm以下、好ましくは0.5μm以下のポゾラン系反応粒子と、少なくとも1種類の分散剤を含有する組成物と、水とを混合して製造することができる。
<1>金属繊維の複数箇所に異形部を設けることによって、引き抜け時に異形部とセメント質マトリックスとが機械的に結合し、異形部を設けない場合と比較して引き抜け抵抗は8〜10倍に増大する。すなわち、曲げモーメントの抵抗特性、直接引張抵抗特性、直接せん断抵抗特性などの引張領域の特性が飛躍的に向上する。
<2>金属繊維とセメント質マトリックスの間の付着抵抗応力を充分に確保することで、クラックの分散が可能となり、初期クラックの発生後に引張ひずみが増大しても引張応力が増大する。すなわち、引張応力場における破壊エネルギーが大幅に増大する。このため、耐震性能を要求するような橋脚を始め、高架橋、建築の柱、梁構造などに本発明の繊維補強セメント系混合材料を適用することによって地震エネルギーを吸収することができる。
<3>金属繊維に曲折部を設けることによって、一方向に材料を流すように打設した場合でも金属繊維の配向をランダムにすることができる。この結果、方向によって引張強度を低減させる必要がなくなる。また、配向性に注意を払う必要がなくなるため、繊維補強セメント系混合材料の打設時の品質管理が容易になる。
<4>金属繊維に異形部や曲折部を設けることで引張特性が大幅に向上するため、混入する金属繊維の量を削減することができる。金属繊維を容積で2.0%混入した場合、金属繊維の費用は繊維補強セメント系混合材料の全体の材料費の4割を占めるので、金属繊維の使用量の低減による経済効果は大きい。
金属繊維1とは、セメント質マトリックス中に混入して繊維補強セメント系混合材料を製造するための繊維状材料である。金属繊維1の一般部11は、直径5mm程度のPC鋼線の素線を熱処理と冷間引き抜き加工によって強度の増大と直径を小さくする伸線加工したもので、直径dは0.3mm以下、引張強度は1500N/mm2以上で、好ましくは2600〜3100N/mm2程度を有するものである。また、長さLは、直径dとの比(L/d)が20以上となるように成形する。ここで、一般部11の断面形状は略円形となる。
そして、金属繊維1aの両端部から1〜2mmの範囲を扁平に形成し異形部12とする。断面が長円形状となった扁平の異形部12の幅は、一般部11の幅(直径)の1.5〜2.0倍程度にするのが好ましい(図1参照)。異形部12は、複数箇所に設ける必要があるが、両端部だけでなく中間部に設けることもできる(図2の金属繊維1b参照)。また異形部12は、複数箇所に設けられておればよく、必ずしも両端部に配置する必要はない。
金属繊維1を混入するセメント質マトリックスは、セメントと、骨材粒子と、ポゾラン系反応粒子と、少なくとも1種類の分散剤を含有する組成物と、水とを混合して製造する。
骨材粒子は、最大粒度径を5mm以下とし、好ましくは2.5mm以下とする。また、ポゾラン系反応粒子は、粒子径を1μm以下とし、好ましくは0.5μm以下とする。
本発明の金属繊維1の付着性能を確認するための試験をおこなった。図5の右側に試験概要図を示したように、セメント質マトリックスによって幅200mm、長さ200mm、高さ25mmの板状の供試体を成形し、直径0.2mmの金属繊維1を5mm埋め込んで引き抜き試験をおこなった。試験装置は、微小荷重(最大5000N)を精度良く測定できる高精度の変位制御載荷装置で、引き抜き速度は0.05mm/minと低速で実施した。図5に、付着抵抗Pと抜出し量δの関係をプロットした試験結果を示す。
試験は、金属繊維1の端部に異形部12を設けた場合(異形部有り)と、異形部12を設けずに一般部11の形状のままにした場合(異形部なし)とでおこなった。「異形部なし」の場合は引き抜き抵抗をみかけの付着面積で除して付着強度で示すと1〜2N/mm2であるのに対して、「異形部有り」の場合は12〜17N/mm2の付着強度になった。すなわち、異形部12を設けることによって引き抜き抵抗が最大抵抗で8〜12倍に増加していることがわかる。
また、「異形部有り」の場合は、初期の抜け出しが小さいため引き抜き剛性が高いといえ、引き抜き抵抗が最大に達した後にも急激な減少が見られないという特徴を示した。この現象を分析すると次のようにいえる。「異形部なし」では抜け出し初期の段階では化学的付着(ケミカルボンド)のみが作用して、初期の付着抵抗は期待できるものの機械的付着(メカニカルボンド)が期待できないため付着抵抗の最大値が低減し、その上、引き抜き抵抗が最大に達した後に付着抵抗は急激に減少する。これに対して、「異形部有り」では、化学的付着に加えて機械的付着も確保できるため、著しく付着抵抗が増大する。
これに対して従来の普通コンクリートは最大骨材粒径が25〜30mmであり、最大骨材粒径と金属繊維との関係を最大粒径が2mmのセメント質マトリックスと同様にすると、金属繊維の長さが160〜230mm、直径が2.5〜3.0mmとなり、非常に太くて長い金属繊維となる。このように太くて長い金属繊維を実際に普通コンクリートの中に混入することは不可能である。通常、普通コンクリートに混入されている金属繊維の長さは20〜40mm、直径は1mm程度であり、本発明と同様な機械的付着の効果を得ることはできない。
また、骨材の大きさに対して短すぎる金属繊維では、骨材と骨材の間を架橋することはできないため、従来の普通コンクリートに異形部12を設けた金属繊維1を混入しても引張抵抗特性や曲げ引張特性を向上させることはできない。
金属繊維をセメント質マトリックスに容積で2%混入した繊維補強セメント系混合材料について、「異形部有り」と「異形部なし」の金属繊維を使用して引張強度試験をおこなった。
引張強度試験は、図6に示したように4cm×4cm×16cmのプリズム形状をした供試体を3点曲げ載荷試験することによっておこなった。この結果、「異形部なし」の場合の曲げ引張応力は最大で40 N/mm2程度であるのに対して、「異形部有り」の場合は75〜90 N/mm2以上の性能を示した。
また、「異形部有り」の場合は、ピーク値が向上するばかりでなく、ピーク以降に急激な曲げ応力の低下を示さず、靭性性能が高いことも判明した。
図6は、曲げ載荷荷重Fによって発生する供試体の中央部に設けた4mmの切欠きのひび割れ幅wと、曲げ応力σbとの関係を示した図である。この曲線とX軸に囲まれた面積を破壊エネルギーWfとすると、「異形部なし」の破壊エネルギーWfは30,000〜36,000 J/m2であるのに対して、「異形部有り」の破壊エネルギーWfは100,000〜120,000 J/m2となる。破壊エネルギーWfは、セメント質マトリックス自身にクラックが生じることにより発生する破壊エネルギーWcと、その後にクラック面に金属繊維が抜け出す際に生じる破壊エネルギーWpとの和として求められる。「異形部有り」の破壊エネルギーWfは、この金属繊維1が抜け出す際に生じる破壊エネルギーWpが増大したことによって増加したものである。
金属繊維をセメント質マトリックスに容積で2%混入した繊維補強セメント系混合材料について、「異形部有り」と「異形部なし」の金属繊維を使用して直接引張試験をおこなった。この試験は、図7に示したダンベル形状の供試体を両側から直接引っ張る試験で、中央の括れた部分は断面が4cm×1.5cm、長さが8cmに成形されている。
図7は引張応力σtとひずみεの関係を示した図であるが、「異形部有り」は「異形部なし」に比べて一軸引張強度及び引張ひずみ能力が著しく向上していることがわかる。
「異形部なし」の供試体aは、初期クラック(クラック幅が0.04mm未満)が入った後に、マトリックス自身がクラック間隔2〜3cmでクラック分散が生ずる。しかし、直ぐにその中の大きな幅のクラックbに対してクラックの局所化が発生して局所化したクラックbのみの幅が拡大する(図10参照)。これに対して、「異形部有り」の供試体2は、初期クラックまではセメント質マトリックスに起因するクラックであるため「異形部なし」と同じであるが、クッラクの局所化が進展することがない。すなわち、クラック3幅が0.08〜0.1mm程度になると、クラック3幅を跨る金属繊維1の架橋効果が増大する。マトリックスと金属繊維1の付着強度は異形部12によって大きく確保されているため、金属繊維1が抜け出そうとする前に他のマトリックス自身にクラック3が発生する(図8参照)。
このように「異形部有り」の金属繊維1を使用することによって、繊維一本ごとの付着強度が増大し、純引張応力場において次のような挙動が可能となる。つまり、初期クラックが発生した以降にクラックの分散が著しく発展し、引張応力と変形の関係はいわゆる「ひずみ硬化型」となる。これに対して「異形部なし」では、初期クラックの発生後はクラックが分散せずに引張応力が減少する。この結果、「異形部有り」のクラック幅は小さく、ひび割れ発生以降にも引張応力が増大するので、引っ張りによる破壊エネルギーWfは大きくなる。
繊維補強セメント系混合材料を使用してI型断面の桁を構築する場合、図11に示すようにトレミー管fを介して長手方向に繊維補強セメント系混合材料を自然流下させながら打設する。このため、流動性の高い繊維補強セメント系混合材料を打設する場合は、トレミー管fの打設口から桁の端部に向かっての一方向の流れが形成される。このため、金属繊維の形状が直線形状であれば一方向に配向されることになる。これでは、初期クッラク以降の引張強度は、金属繊維が配列する直交方向のクラックには強くなるが、平行方向のクラックに対しては低下することになり、引張強度に方向の依存性が発生することになる。
これに対して曲折部13を有する金属繊維1c(1d)は、一定の流れ方向4の中においても安定性がなく、ランダムに回転する性質を有しているため、3次元的にランダムに金属繊維1c(1d)を配向することができる(図9参照)。
11・・一般部
12・・異形部
13・・曲折部
Claims (5)
- 金属繊維を混入した繊維補強セメント系混合材料であって、
前記金属繊維の直径dは0.3mm以下であり、かつ長さLと直径dとの比(L/d)が20以上であって、前記金属繊維に他の一般部とは形状の異なる異形部を複数箇所設けたことを特徴とする、繊維補強セメント系混合材料。
- 請求項1に記載した繊維補強セメント系混合材料において、
前記金属繊維の引張強度が1500N/mm2以上であり、前記一般部の断面形状は略円形であって、前記異形部は前記一般部よりも幅が広いことを特徴とする、繊維補強セメント系混合材料。
- 金属繊維を混入した繊維補強セメント系混合材料であって、
前記金属繊維の直径dは0.3mm以下であり、かつ長さLと直径dとの比(L/d)が20以上であって、前記金属繊維に曲折部を設けたことを特徴とする、繊維補強セメント系混合材料。
- 請求項3に記載した繊維補強セメント系混合材料において、
前記金属繊維の引張強度が1500N/mm2以上であり、前記曲折部の内角は90度〜150度であることを特徴とする、繊維補強セメント系混合材料。
- 請求項1乃至4に記載した繊維補強セメント系混合材料において、
混入する前記金属繊維の体積を硬化後の全体体積の1.0%〜4.0%とし、
前記金属繊維を混入するセメント質マトリックスは、セメントと、最大粒度径が5mm以下の骨材粒子と、粒子径が1μm以下のポゾラン系反応粒子と、少なくとも1種類の分散剤を含有する組成物と、水とを混合して製造することを特徴とする、繊維補強セメント系混合材料。
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JP2007320834A (ja) * | 2006-06-05 | 2007-12-13 | Denki Kagaku Kogyo Kk | 超速硬セメント組成物、超速硬セメントコンクリート組成物、及び超速硬セメントコンクリート |
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2003
- 2003-12-09 JP JP2003410717A patent/JP2005170715A/ja active Pending
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