図1は、本発明の一実施の形態に係る記録装置の1つであるインクジェット式プリンタの外観構成の全体を斜め前方から見た斜視図である。このインクジェット式プリンタ100は、例えばJIS規格のA4判からJIS規格のA2判といった比較的大型のサイズのいわゆるカットされた用紙及びロール状の用紙に記録できる卓上型の大型のプリンタであり、全体が幅方向に長く延びる略直方体状のハウジング101で覆われている。
このハウジング101の上面には、矩形状の窓部102が形成されている。この窓部102は、透明もしくは半透明の窓カバー103によって覆われている。窓カバー103は、その上部の回動軸を中心に図示矢印a方向に回動可能に取り付けられている。ユーザは、窓カバー103を持ち上げて窓部102を開放することにより、窓部102を通して内部機構のメンテナンス作業等を行うことができる。
ハウジング101の前面両側には、複数のインクカートリッジが抜き差しされるカートリッジ収納部104がそれぞれ形成されている。各インクカートリッジは、記録用の各色のインクを貯留している。各カートリッジ収納部104は、透明もしくは半透明のカートリッジカバー105によって覆われている。カートリッジカバー105は、その下部の回動軸を中心に図示矢印b方向に回動可能に取り付けられている。ユーザは、カートリッジカバー105を軽く押して係止部を外しカートリッジ収納部104を開放することにより、インクカートリッジの交換作業等を行うことができる。
ハウジング101の前面右側のカートリッジ収納部104の上部には、プリンタ動作を指示する操作部110が配設されている。操作部110は、パワーをオン・オフするパワー系、用紙の頭出し等を操作したりインクのフラッシング等を操作する操作系、画像処理等を行う処理系等のボタン111と、状態を表示する液晶パネル112等を備えている。ユーザは、液晶パネル112を見て確認しながらボタン111を操作することができる。
ハウジング101の前面右側のカートリッジ収納部104の下部には、廃液タンク120が抜き差しされるタンク収納部106が形成されている。この廃液タンク120は、記録ヘッド162(図5参照)のクリーニング処理時やインクカートリッジの交換時に廃棄される廃インクを貯留する。ユーザは、廃液タンク120を引き出すことにより、内部に溜まっている廃インクの廃棄作業等を行うことができる。
ハウジング101の背面には、ロール状の用紙を給紙する給紙部130が上部後方に突き出るように配設されている。給紙部130の内部には、1本のロール状の用紙がセット可能な図示しないロール紙ホルダが配設され、給紙部130の前面には、跳ね上げ式の開閉可能なロール紙カバー131が図示しないロール紙ホルダを覆うように取り付けられている。ユーザは、ロール紙カバー131を持ち上げて給紙部130を開放することにより、ロール状の用紙の取り付け・取り外し作業等を行うことができる。なお、ロール紙カバー131の上面は、カットされた用紙を手差しで給紙案内することが可能な給紙案内面に形成されている。
ハウジング101の前面中央、すなわち一対のカートリッジ収納部104の間には、記録前のカットされた用紙及び記録後のカットされた用紙またはロール状の用紙を積載する給排紙トレイ200が抜き差しされる給排紙部140が形成されている。なお、この給排紙部140は、搬送時に折り曲げることが不可能な厚手の用紙を手差しで給紙することが可能なようにも形成されている。
この給排紙部140には、給排紙トレイ200の前部が差し込まれ、給排紙トレイ200の後部が突き出るようにして固定される。給排紙トレイ200は、カセット型に形成されており、内部に記録前の給紙されるカットされた用紙が積層収納され、上部に記録後の排紙されるカットされた用紙またはロール状の用紙が積層載置されるようなっている。このような給排紙トレイ200の詳細構造について、図2〜図4を参照して以下説明する。
図2は、上記給排紙トレイ200の外観構成の全体を斜め前方から見た斜視図である。この給排紙トレイ200は、箱状に形成された給紙トレイ210と、この給紙トレイ210の上面を覆う蓋状に形成された排紙トレイ230を備えている。給排紙トレイ200は、給排紙方向に伸縮自在に形成されており、不使用のときはコンパクトに格納しておくことができ、また使用のときは種々のサイズのカットされた用紙に対応可能になっている。
図3及び図4は、給排紙トレイ200が装着された給排紙部140を示す斜視図である。カットされた用紙を積層載置する場合は、図3に示すように、ロール紙案内部240は排紙部材239aの上面に格納した状態、すなわち排紙部材239aの上面はフラットな面にする。これにより、排紙ローラ155(図5参照)を通って排紙されるカットされた用紙は、断面がL字状に形成された案内部145の側面及び底面と排紙部材239a〜239dの上面とで形成される排紙受け面上にスムーズに積層載置される。
なお、案内部145の底面には、スポンジマット145aが貼着されている。このスポンジマット145aは、1枚目のカットされた用紙を載置した後、2枚目のカットされた用紙が排紙されてきたとき、2枚目のカットされた用紙の先端が1枚目のカットされた用紙を突付いて排紙受け面から突き落としてしまうことを防止するための滑り止めの機能を有している。
一方、ロール状の用紙を積層載置する場合は、図4に示すように、排紙部材239aの上面に格納されているロール紙案内部240の第1の案内板241の他長辺側にユーザが指を掛けて後方に向かって旋回させる。すると、第2の案内板242が第1の案内板241に引っ張られて、長手方向の一端側が持ち上げられ、長手方向の他端側が排紙部材239aの上面に形成されている溝239aaに沿って後方に摺動する。そして、第1の案内板241と第2の案内板242とがなす角度が鋭角になるまで、第1の案内板241を旋回させる。
これにより、第2の案内板242は、その長手方向の一端側が案内部の側面の頂部に近接して滑り台状になる。このため、排紙ローラを通って排紙されるロール状の用紙がカールしていても、その先端が案内部側に巻き込まれてしまうことはなく、その先端は滑り台状の第2の案内板242上を滑走して排紙部材239a〜239dの上面側に導かれる。したがって、ロール状の用紙は、第2の案内板242と排紙部材239a〜239dの上面とで形成される排紙受け面上にスムーズに積層載置される。
図5は、図1のインクジェット式プリンタ100の内部構成の概略を示す断面側面図である。ハウジング101内には、給排紙部140及び記録部160と、本発明の特徴的な部分を含む搬送部150等が配設されている。給排紙部140には、カットされた用紙を給紙するためのホッパ141、給紙ローラ142、分離部材143等が配設されている。ホッパ141は、カットされた用紙が載置可能な平板状に形成されており、一端が給紙ローラ142と分離部材143の近傍に位置し、他端が装着されている給排紙トレイ200の給紙部210の底面に近接して位置するように配設されている。そして、ホッパ141は、一端側の裏面にハウジング101の底面に一端が取り付けられた圧縮バネ144の他端が取り付けられており、この圧縮バネ144の伸縮により他端側を中心に一端側が旋回するように配設されている。
給紙ローラ142は、断面の一部が切り欠かれたD字状に形成されており、間欠的に回転してホッパ141上のカットされた用紙を摩擦搬送するようになっている。分離部材143は、上面が粗面に形成されており、給紙ローラ142によりカットされた用紙が重送されたときに下層のカットされた用紙を最上層のカットされた用紙から摩擦分離するようになっている。ここで、ホッパ141上に載置されたカットされた用紙と給紙ローラ142との関係について図6を参照して説明する。
図6は、ホッパ141上に載置されたカットされた用紙と給紙ローラ142との接触状態を示す図である。図6(A)は、ホッパ141上に最大枚数のカットされた用紙Pが載置された場合であり、この場合はホッパ141が上昇したとき、最上層のカットされた用紙P1が給紙ローラ142の切り欠き部分には接触せず、少なくとも円弧開始点142a以降の円周に接触するように調節されている。
また、図6(B)は、ホッパ141上に最小枚数(1枚)のカットされた用紙P1が載置された場合であり、この場合はホッパ141が上昇したとき、そのカットされた用紙P1が給紙ローラ142の円弧開始点142aから少し回転した点142bに接触するように調節されている。この接触点142bは、接触点142bから円弧終了点142cまでの円周長さが、用紙P1の先端psからサブローラ151とその従動ローラ152aとの接触点151aまでの間隔と同一長aとなるときの点である。
以上のように調節することにより、ホッパ141上に載置されるカットされた用紙Pが最大枚数以下であれば、最上層のカットされた用紙P1の先端psがサブローラ151とその従動ローラ152aとの接触点151aに届くまで、カットされた用紙P1は給紙ローラ142からレリースされないので、カットされた用紙P1をサブローラ151に確実に受け渡すことができ、給紙ミスを無くすことができる。
搬送部150には、用紙を搬送するためのサブローラ151とその従動ローラ152a、152b、152c及び紙送りローラ153とその従動ローラ154と、排紙ローラ155とその従動ローラ156、用紙を検知する検知センサ157a、157b等が配設されている。さらに、本発明の特徴的な部分である上記サブローラ151に対する従動ローラ152a、152b、152cの当接・離間と、紙送りローラ153に対する従動ローラ154の当接・離間を駆動する従動ローラ駆動装置50を備えている。
サブローラ151は、給紙トレイ210から給紙されるカットされた用紙を排紙トレイ230に排紙するために、カットされた用紙を従動ローラ152a、152b、152cとともに挟持してU字状に反転搬送させるようになっている。また、サブローラ151は、給紙部130から給紙されるロール状の用紙を排紙部230に排紙するために、ロール状の用紙を従動ローラ152cとともに挟持して搬送させるようになっている。
紙送りローラ153は、反転搬送されてきたカットされた用紙もしくは給紙されてくるロール状の用紙を従動ローラ154とともに挟持してプラテン163へ送り出すようになっている。排紙ローラ155は、プラテン163を通過してくる用紙を単独で支持し、あるいは従動ローラ156とともに挟持して排紙トレイ230上へ排紙するようになっている。検知センサ157aは、給紙されてくるカットされた用紙のスキュー取りの際の搬送量を検知するようになっている。検知センサ157bは、反転搬送されてくるカットされた用紙もしくは搬送されてくるロール状の用紙の頭出しの際の搬送量を検知するようになっている。
従動ローラ156は、排紙ローラ155上に搬送されてくる用紙の記録面に対し当接または離間するギザローラ11及びコロローラ12と、これらのローラ11、12の当接・離間を切り替える切替軸14を備えている。ギザローラ11は、周面に鋸刃状の突起が形成されており、用紙の記録面に食い込んで用紙を排紙ローラ155と挟持することにより確実に搬送するようになっている。
コロローラ12は、周面が滑らかに形成されており、用紙の記録面を押圧して用紙を排紙ローラ155と挟持することにより確実に搬送するようになっている。そして、切替軸14の周面には、ギザローラ11とコロローラ12とギザローラ11やコロローラ12が配設されていないレリース部13が円周方向に所定間隔を空けて配設され、かつこれらが軸方向に所定間隔を空けて複数組配設されている。
このような従動ローラ156によれば、切替軸14を回転させることにより、ギザローラ11とコロローラ12、ギザローラ11とレリース部13、コロローラ12とレリース部13を任意に切り替えることができる。このギザローラ11とレリース部13またはコロローラ12とレリース部13の切替は、用紙の記録面に対するギザローラ11またはコロローラ12の当接・離間を擬似的に行っていることになる。したがって、上記各切替により多くの属性の用紙に対応することができる。なお、従動ローラ156には、ギザローラ11とコロローラ12とレリース部13の3種を各1個ずつ配設するようにしたが、これに限定されるものではなく、1種以上を2個以上で任意の組み合わせで配設するようにしても良い。
記録部160には、キャリッジ161と、記録ヘッド162、プラテン163及び支持リブ164等が配設されている。キャリッジ161は、図示しないキャリッジベルトに連結されており、図示しないキャリッジモータによってキャリッジベルト165が作動すると、キャリッジベルト165の動きに連行され、図示しないガイド軸に案内されて用紙上を搬送直交方向に往復移動するようになっている。さらに、キャリッジ161は、下方の用紙に向けてインク滴を吐出可能な記録ヘッド162が搭載されている。
記録ヘッド162は、例えば2種類のブラックインクを吐出する複数のブラックインク用記録ヘッドと、イエロー、ダークイエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタの6色のインク滴をそれぞれ吐出する複数のカラーインク用記録ヘッドとを備えている。そして、記録ヘッド162は、圧力発生室とそれに繋がるノズル開口が設けられており、圧力発生室内にインクを貯留して所定圧で加圧することにより、ノズル開口からプラテン163上の用紙に向けてコントロールされた大きさのインク滴を吐出するようになっている。プラテン163は、その上面である記録案内面163aにて、紙送りローラ153及び従動ローラ154から排紙ローラ155及び従動ローラ156に向かって搬送される用紙を支持して案内し、あるいは支持リブ164とともに支持して案内するようになっている。
ここで、多くの属性の用紙、すなわち厚さの異なる用紙に対し記録可能とするために、キャリッジ161に搭載されている記録ヘッド162のノズル形成面と、プラテン163の記録案内面163a上に搬送されてきた用紙の記録面とのギャップを調整する本発明の特徴的な部分であるギャップ調整機構170が配設されている。主ガイド軸61及び副ガイド軸62は、偏心した回転軸を中心に軸回転可能に構成されており、ギャップ調整機構170は、主ガイド軸61及び副ガイド軸62を同期回転させることにより、上記ギャップが常に一定となるように調整する。
支持リブ164は、プラテン163の記録案内面163aに形成されているスリットから突き出しまたは引っ込むリブ21と、このリブ21の突出・引込を切り替える切替軸22を備えている。リブ21は、略三角形の板状に形成されており、円弧状の一角部が記録案内面163aから突き出て用紙を支持するようになっている。切替軸22は、両端がプラテン163の側面に軸支持されている。そして、切替軸22の周面には、リブ21が軸方向に所定間隔を空けて複数個配設されている。
このような支持リブ164によれば、切替軸22を回転させることにより、プラテン163の記録案内面163aに形成されているスリットにおいて、リブ21における円弧状の一角部と平坦な部分とを任意に切り替えることができる。すなわち、プラテン163の記録案内面163aに形成されているスリットに、リブ21の円弧状の一角部を位置決めすることによりリブ21を突き出させることができ、リブ21の平坦な部分を位置決めすることによりリブ21を引っ込めることができる。したがって、上記切替により後で詳述する多くの属性の用紙に対応することができる。
図7は、本発明の特徴的な部分である上記従動ローラ駆動装置50とその周辺部の詳細構成を示す斜視図である。従動ローラ駆動装置(駆動手段)50は、揺動部材51、52、カム軸53、ギア機構54、55を備えている。揺動部材(第1の揺動部材)51は、一端に従動ローラ(第1の従動ローラ)152cが回転自在に取り付けられ、他端がカム軸53に当接され、中央の軸51aを中心に揺動するようになっている。揺動部材(第2の揺動部材)52は、一端に従動ローラ(第2の従動ローラ)154が回転自在に取り付けられ、他端がカム軸53に当接され、中央の軸52aを中心に揺動するようになっている。
カム軸53は、揺動部材51を動作させるカム53a(図8参照)と、揺動部材52を動作させるカム53b(図10参照)とが別々に設けられている。そして、カム軸53の一端には、ギア機構(第1のギア機構)54に噛み合う間欠ギア53cと、ギア機構(第2のギア機構)55に噛み合う間欠ギア53dとがそれぞれ嵌入されている。ギア機構54は、図示しないモータの駆動力の伝達をカム軸53の間欠ギア53cに断続させる遊星ギア54aを備えている。ギア機構55は、カム軸53の間欠ギア53dと噛み合うギア55aが形成された回動自在であって手動操作可能なレバー55bを備えている。このような構成において、その動作を図を参照して説明する。
図8及び図9は、従動ローラ152cのみを動作させる場合を示す図である。図8に示す状態では、従動ローラ152cはサブローラ(第1ローラ)151に当接し、従動ローラ154は、紙送りローラ(第2ローラ)153に当接している。このとき、遊星ギア54aは間欠ギア53cから離間しており、カム53aは揺動部材51の他端から離間している。なお、レバー55bは当接位置に位置しており、図示していないがカム53bは揺動部材52の他端から離間している。
そして、図9に示す状態では、図示しないモータ駆動により遊星ギア54aが間欠ギア53cと噛み合って間欠ギア53cを回転させる。これにより、カム53aは揺動部材51の他端を押圧するので、揺動部材51の一端に軸支されている従動ローラ152cはサブローラ151から離間する。
用紙の給紙時には、用紙をサブローラ151から紙送りローラ153へ確実に受け渡すため、図8に示すように従動ローラ152cはサブローラ151に当接し、従動ローラ154は紙送りローラ153に当接している必要がある。一方、用紙の記録時には、従動ローラ152cがサブローラ151に当接していると紙送り精度に悪影響を与えるため、図9に示すように従動ローラ152cはサブローラ151から離間し、従動ローラ154は紙送りローラ153に当接している必要がある。
図10及び図11は、従動ローラ152c及び従動ローラ154を同時動作させる場合を示す図である。図10に示す状態では、従動ローラ152cはサブローラ151に当接し、従動ローラ154は、紙送りローラ153に当接している。このとき、遊星ギア54aは間欠ギア53cから離間しており、図示していないがカム53aは揺動部材51の他端から離間している。また、レバー55bは当接位置に位置しており、カム53bは揺動部材52の他端から離間している。
そして、図11に示す状態では、レバー55bを当接位置からレリース位置に手動操作することによりギア55aが間欠ギア53dと噛み合って回転させる。これにより、図示しないカム53aは揺動部材51の他端を押圧するので、揺動部材51の一端に軸支されている従動ローラ152cはサブローラ151から離間する。また、カム53bは揺動部材52の他端を押圧するので、揺動部材52の一端に軸支されている従動ローラ154は紙送りローラ153から離間する。
用紙の給紙時には、用紙をサブローラ151から紙送りローラ153へ確実に受け渡すため、図10に示すように従動ローラ152cはサブローラ151に当接し、従動ローラ154は紙送りローラ153に当接している必要がある。一方、用紙を手差しする時には、従動ローラ152cがサブローラ151に当接し、従動ローラ154が紙送りローラ153に当接していると用紙と従動ローラ152cが、154とが干渉するため、図11に示すように従動ローラ152c及び従動ローラ154はサブローラ151及び紙送りローラ153から離間している必要がある。
このような構成において、インクジェット式プリンタ100にてカットされた用紙に記録する場合の動作について図11及び図12を参照して説明する。先ず、制御部は、カットされた用紙に対応する従動ローラ156と支持リブ164の切替を自動的に行う。すなわち、従動ローラ156はギザローラ11に切り替えられ、支持リブ164のリブ21は引っ込められる。そして、給排紙部140に装着された給排紙トレイ200の給紙トレイ210内に積層収納されたカットされた用紙Pは、用紙束が給紙ローラ142の回転に機械的に同期した圧縮バネ144の復元によるホッパ141の上昇により給紙ローラ142に押付けられ、最上層のカットされた用紙Pのみが分離部材143により分離されて搬送部150へ給紙される。
そして、図11(A)に示すように、給紙されるカットされた用紙Pがサブローラ151とその従動ローラ152aとの接触点151aに到達すると、カットされた用紙Pのスキュー取りが行われる。このスキュー取り方法は、用紙厚によって異なる方法が採られる。すなわち、普通紙以下の薄手のカットされた用紙の場合は、カットされた用紙の先端を少しだけサブローラ151とその従動ローラ152aとの間に食い込ませ、その後にローラ151、152aを逆転させてカットされた用紙を撓ませることにより、カットされた用紙の先端を揃えてスキュー取りする方法が採られる。
一方、普通紙より厚手のカットされた用紙の場合は、カットされた用紙の先端をサブローラ151とその従動ローラ152aとの接触点151aに突き当て、給紙ローラ142をスリップさせることでカットされた用紙の先端を揃えてスキュー取りする方法が採られる。なお、上記食い込み量及び突き当て量は、検知センサ157aにより検知され、この検知量にしたがってスキュー取りが制御される。
このように、用紙厚によってスキュー取り方法を異ならせるのは、薄手のカットされた用紙は腰が無いために、給紙ローラ142はカットされた用紙上でスリップせずにカットされた用紙を送り出してしまうおそれがあるからであり、厚手のカットされた用紙は薄手のカットされた用紙を貼り合わせた構造であるため、ローラ151、152aを逆転させたときに剥離してしまうおそれがあるためである。
スキュー取りが完了したカットされた用紙Pは、図示しない紙送りモータにより駆動されているサブローラ151とその従動ローラ152a、152b、152cに挟持されてU字経路で反転、すなわち給紙方向とは逆方向に搬送される。そして、図12(B)に示すように、カットされた用紙Pの先端が検知センサ157bの検知位置DPに到達すると、カットされた用紙Pの記録開始位置決めである頭出しが行われる。
すなわち、カットされた用紙Pの先端が、検知位置DPから紙送りローラ153とその従動ローラ154の間を通って図12(A)に示す頭出し位置HPに到達するまで、検知センサ157bにより搬送量が検知され、この検知量にしたがって頭出しが制御される。なお、従来の頭出しはサブローラ151より上流側に配設されている検知センサ157aにより行っていたが、この頭出しはサブローラ151より下流側に配設されている検知センサ157bにより行うので、検知量が少なくて済み、特に用紙厚による頭出し誤差を無くして頭出し精度を高めることができる。
その後、頭出しが完了したカットされた用紙Pは、図示しない紙送りモータにより駆動されている紙送りローラ153とその従動ローラ154に挟持されて記録部160へ搬送されることになる。したがって、サブローラ151とその従動ローラ152a、152b、152cによるカットされた用紙Pの挟持は搬送精度を悪化させる原因になるので、図12(B)に示すように、各従動ローラ152a、152b、152cはサブローラ151からレリースする。
搬送されるカットされた用紙Pは、図示しない吸引ポンプによりプラテン163上に吸着されて平坦にされ、図示しないキャリッジモータとタイミングベルトにより走査されるキャリッジ161に搭載された記録ヘッド162により記録される。このとき、インクジェット式プリンタ100の制御部は、例えばイエロー、ライトイエロー、マゼンタ、ライトマゼンタ、シアン、ライトシアン、ブラックの計7色のインクカートリッジから記録ヘッド162へ各色インクを供給し、各色インクの吐出タイミング及びキャリッジ161や紙送りローラ153の駆動を制御して、高精度なインクドット制御、ハーフトーン処理等を実行する。そして、記録が完了したカットされた用紙Pは、図示しない紙送りモータにより駆動されている排紙ローラ155とギザローラ11とに挟持されて給排紙部140へ排紙され、給排紙トレイ200の排紙トレイ230上へ積層載置される。
以上のように、本実施形態のインクジェット式プリンタ100によれば、従動ローラ152cのみをサブローラ151に対して自動で当接・離間させ、また従動ローラ152c、154をサブローラ151及び紙送りローラ153に対して手動で当接・離間させる従動ローラ駆動装置50を備えているので、従動ローラ152c、154をそれぞれ任意の状態におくことができ、種々の用紙に対応可能となる。
11 ギザローラ、12 コロローラ、13 レリース部、14 切替軸、21 リブ、22 切替軸、50 従動ローラ駆動装置、51、52 揺動部材、53 カム軸、53a、53b カム、53c、53d 間欠ギア、54、55 ギア機構、54a、遊星ギア、55b レバー、100 インクジェット式プリンタ、101 ハウジング、104 カートリッジ収納部、105 カートリッジカバー、110 操作部、111 ボタン、112 液晶パネル、130 給紙部、140 給排紙部、141 ホッパ、142 給紙ローラ、143 分離部材、150 搬送部、151 サブローラ、152a、152b、152c 従動ローラ、153 紙送りローラ、154 従動ローラ、155 排紙ローラ、156 従動ローラ、160 記録部、161 キャリッジ、162 記録ヘッド、163 プラテン、163a 記録案内面、164 支持リブ、200 給排紙トレイ、210 給紙トレイ、230 排紙トレイ