JP2005169450A - 重ね溶接継手および溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】板材間に隙間があっても、溶け落ちによる溶接強度の低下を招くことがない重ね溶接継手を提供する。
【解決手段】二枚の板材10A,10B同士を重ね合わせた上でレーザ溶接とアーク溶接とを併用して溶接接合してなる重ね溶接継手である。上側の板材10Bのうち溶接部の近傍の端末から非正規継手形状部として張り出し部18を予め延長形成しておき、その張り出し部18を上側の板材10B側に当て板16として折り返すことで溶接部を三枚重ね構造とする。その三枚重ね構造部の当て板16の上から溶接を施し、溶接ビード17に残る溶け落ちQが板材10A,10B同士の溶接強度に影響しないようにした。
【選択図】 図4
【解決手段】二枚の板材10A,10B同士を重ね合わせた上でレーザ溶接とアーク溶接とを併用して溶接接合してなる重ね溶接継手である。上側の板材10Bのうち溶接部の近傍の端末から非正規継手形状部として張り出し部18を予め延長形成しておき、その張り出し部18を上側の板材10B側に当て板16として折り返すことで溶接部を三枚重ね構造とする。その三枚重ね構造部の当て板16の上から溶接を施し、溶接ビード17に残る溶け落ちQが板材10A,10B同士の溶接強度に影響しないようにした。
【選択図】 図4
Description
本発明は、レーザ溶接とアーク溶接とを併用したいわゆるハイブリッド溶接にて溶接接合された重ね溶接継手とその溶接方法に関するものである。
自動車の車体部品に代表されるような薄鋼板同士の溶接接合にレーザ溶接を用いた場合、板材同士の接合面に隙間があると接合強度が低下したりあるいは接合できないと言った不具合が発生しやすい。その対策として、クランプなどの治具で板材を加圧して隙間を矯正することが行われているが、特に三次元的な造形形状を有する車体部品では、板材の剛性が高くで十分に矯正できなかったり、構造的に矯正できない部位もあり、適用できる部位が著しく限定されてしまうことになる。その上、矯正によって板材間の隙間を完全になくしてしまうと、例えば亜鉛めっき鋼板等の特定の鋼板ではブローホールが発生して溶接強度が低下してしまうことから、逆に極小の隙間を積極的に確保する必要があり、その隙間管理に多大な工数を要することとなって好ましくない。
そこで、別の対策として、例えば特許文献1に記載されているように、レーザ溶接とアーク溶接(例えばMIG溶接)を併用することで一般的なレーザ溶接に比べて板材間の隙間の許容範囲を拡大化した溶接法が提案されている。
特開2002−103069号公報(図2)
しかしながら、特許文献1に記載のようにレーザ溶接とアーク溶接とを併用したいわゆるハイブリッド溶接では、溶接用ワイヤの溶融分をもって溶接ビードの溶け落ちを埋めることができるため、板材間の隙間の許容範囲を拡大化することが可能である。その一方、溶接速度を高くすると、溶接ビードの溶け落ちの発生とともに板材間における隙間の許容範囲の拡大化効果が緩慢となるために低速にて溶接を行う必要があり、レーザ溶接の本来の特徴でもある高速溶接を実現することができず、生産性が低下することとなって好ましくない。
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、とりわけ高速溶接を行っても溶接ビードの溶け落ちが発生しないように考慮された重ね溶接継手とその溶接方法を提供しようとするものである。
請求項1に記載の発明は、二枚の板材同士を重ね合わせた上でレーザ溶接とアーク溶接とを併用して溶接接合してなる重ね溶接継手であって、上側の板材のうち溶接部の近傍の端末から予め延長形成してある張り出し部をその上側の板材側に当て板として折り返すことで溶接部を三枚重ね構造とし、その三枚重ね構造部の当て板の上から溶接を施したことを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、上記請求項1に記載の技術を溶接方法として特定したものであって、上側の板材のうち溶接部の近傍の端末から正規継手形状以外の領域として予め張り出し部を延長形成しておき、この張り出し部を上側の板材側に当て板として折り返すことで溶接部を三枚重ね構造とし、その三枚重ね構造部の当て板の上から溶接を施すことで重ね溶接継手とすることを特徴とする。
したがって、少なくとも請求項1に記載の発明では、正規継手形状以外の領域として予め設定した張り出し部をあて板として折り返して三枚重ね構造とし、その三枚重ね構造部の当て板の上からレーザ溶接とアーク溶接を併用して溶接を施すと、最上段の当て板には溶接ビードの溶け落ちが発生したとしても、本来の板材である二,三枚目の板材には溶接ビードの溶け落ちは発生せず、仮にそれらの二,三枚目の板材間に隙間があったとしても両者は確実に溶接接合されることになる。
請求項1に記載の発明によれば、少なくとも溶接部について三枚重ね構造としているので、最上段の当て板には溶接ビードの溶け落ちが発生したとしても、二,三枚目の板材には溶け落ちは発生しないので、それらの二,三枚目の板材間に隙間があったとしても両者は確実に溶接接合され、ブローホールの発生を伴うことなく連続溶接をもって溶接強度に優れた重ね溶接継手とすることができる。
また、請求項4に記載の発明によれば、溶け落ちのない良好な溶接ビードが得られるとともに必要な溶接強度を確保できることから、本来の高速溶接が可能となって生産性が向上する。
図1,2は本発明に係る重ね溶接継手の基本原理を示す説明図である。
図1において、1はレーザ溶接ヘッド、2は同レーザ溶接ヘッド1から照射されるレーザビーム、3はアーク溶接用トーチ、3aはアーク、4はアーク溶接用ワイヤである。また、5A,5Bは被溶接物としての上下二枚の板材であって、両者の間には所定の隙間G1が確保されているとともに、上側の板材5Bの上には当て板6が密着するように重ね合わされて、少なくとも溶接部では三枚重ね構造となっている。ただし、当て板6はあくまで当て板としての所定の板厚さえ有していれば十分であり、それ自体の強度も溶接強度も特に必要としなければ、重ね溶接継手としては何ら機能しないものである。
レーザ溶接とアーク溶接とを併用したハイブリッド溶接に際しては、レーザ溶接ヘッド1から当て板6の上にレーザビーム2を照射してレーザ溶接を施す一方、レーザ溶接による加工点のわずかに後方側を狙ってアーク溶接を施し、これらのレーザ溶接ヘッド1とアーク溶接用トーチ3を所定速度で溶接方向に移動させて連続溶接を施す。
このような溶接の過程では、板材5A,5B同士の間に隙間G1があるために溶融金属が隙間G1側に広がり、図2に示すように溶接ビード7の表面には溶け落ちQが発生する。この場合、溶接に伴う溶融金属が板材5A,5B間の隙間G1側に広がることによって一旦は上側の板材5Bの表面に溶け落ちが発生することになるものの、その板材5B側の溶け落ちが当て板6側に発生する溶け落ちによって埋められることになる。したがって、図2のように溶接ビード7に最終的に残されることになる溶け落ちQが上側の板材5Bと当て板6との溶接強度に影響することはあっても、板材5A,5B同士の溶接強度には何ら影響しないことになる。その結果、板材5A,5B同士の間に隙間G1があったとしても、板材5A,5B相互間では必要十分な溶接強度を確保できることになる。
因みに、上記の当て板6を併用せずに溶接を行った場合には、図3に示すように溶接ビード7のうち上側の板材5Bに相当する部分に溶け落ちQが発生し、この溶け落ちQの発生のために板材5A,5B同士の溶接強度が極端に低下することになる。
図4,5は本発明に係る重ね溶接継手の好ましい実施の形態を示す図である。
この重ね溶接継手は、略ハット形断面形状をなす板材10A,10B同士を長手方向でも一部アーバーラップするように重ね合わせたものであって、各板材10A,10Bの左右のフランジ部11,12同士をそれぞれ密着させた上で、先に述べたレーザ溶接とアーク溶接との併用によるハイブリッド溶接にてそれらフランジ部11,12の長手方向に連続溶接を施して接合する一方(その溶接部となる溶接ビードを符号13で示す)、板材10A,10Bの頂部平面部14,15同士についても当て板16を併用した上で同様にハイブリッド溶接にてそれら頂部平面部14,15の幅方向に沿って連続溶接を施して接合してある(その溶接部となる溶接ビードを符号17で示す)。このような形態の重ね溶接継手は例えば自動車の車体部品の溶接接合部に採用される。
なお、上記の当て板16は、一方の板材10Bにおける頂部平面部15の端部に予め非継手領域として当て板となるべき張り出し部18を延長形成しておき、これをハイブリッド溶接に先立って頂部平面部15側に折り返してその頂部平面部15に密着させたものである。
ここで、上記のようないわゆるハット形断面形状の重ね溶接継手では、左右のフランジ部11,12のみならず頂部平面部14,15において溶接接合することで構造体としての強度と剛性を確保しようとするものであるが、板材10A,10Bの個々の寸法や形状のばらつきを吸収するためにフランジ部11,12同士の間もしくは頂部平面部14,15同士の間に所定の隙間Gを確保する必要がある。しかしながら、例えば頂部平面部14,15同士の間に隙間Gを設定すると、それらの頂部平面部14,15同士の溶接接合に際してレーザ溶接やアーク溶接等のいわゆる連続溶接を採用することができず、スポット溶接等のいわゆる点溶接に頼らざるを得ず、重ね溶接継手としての強度と剛性の向上が望めないことになる。
これに対して、先に述べたような本実施の形態の重ね溶接継手によれば、頂部平面部14,15同士の溶接接合部に当て板16を併用するだけで同部位において連続溶接を施すことが可能となることから、重ね溶接継手としての強度と剛性の向上の上で著しく有利となる。
図6以下の図面は図4,5に示した重ね溶接継手の溶接手順を示しており、最初に図6,7に示すように、相互に重ね合わされることになる上下の板材10A,10Bのうち上側となる板材10Bの頂部平面部15について、溶接部となるべき部位の近傍の端縁から正規継手形状以外の領域として予め矩形状の張り出し部18を延長形成しておくものとする。続いて、この張り出し部18を根元部からその板材10Bの頂部平面部15側に折り返し、当て板16として頂部平面部15に密着するように重ね合わせる。
こうして、予め当て板16が付帯している板材10Bが得られたならば、図示しない治具を用いてその板材10Bとともう一方の板材10Aとを重ね合わせて、図8に示すように板材10A,10Bの左右のフランジ部11,12同士を密着させると、双方の板材10A,10Bの頂部平面部14,15同士の重合部では当て板16が付帯しているが故に部分的に三枚重ね構造となり、同時に頂部平面部14,15同士に間には予め設定されている所定の隙間Gが確保されることになる。
この状態で、図4,5に示したように、先に述べたレーザ溶接とアーク溶接との併用によるハイブリッド溶接にてフランジ部11,12同士の重合部にその長手方向に沿って連続溶接を施し、同時に、図9に示すように板材10A,10Bの頂部平面部14,15同士の重合部についても当て板16の上からハイブリッド溶接にてそれら頂部平面部14,15の幅方向に沿って連続溶接を施す。
その結果、頂部平面部14,15同士の重合部での溶接ビード17は図4の(B)のようになる。すなわち、頂部平面部14,15同士の間に隙間Gが確保されていることによって溶接ビード17の溶け落ちが顕著となるものの、板材10A,10Bの頂部平面部14,15同士の間に相当する部分での溶け落ちが、それよりも上方の当て板16側での溶け落ちにより補充されて埋められることになる。そのため、図4の(B)に示すように溶接ビード17に最終的に残ることになる溶け落ちQが板材10Aまたは10B側にまで及ぶことはなく、必要十分な溶接強度が得られることになる。なお、当て板16は溶接後の構造体に付帯してはいても強度部材としては何ら機能しない。
図10〜12は図4の(B)と同等部位の溶接ビード17の断面の顕微鏡写真であり、図10は上下の板材10A,10Bが共に同一板厚である場合を、図11は上下の板材10A,10Bの板厚を異ならしめるとともに当て板16に相当する薄い板材を模擬的に重ね合わせて溶接した場合をそれぞれ示している。また、図12は当て板16を併用せずに溶接した場合を示している。図10,11から明らかなように、当て板16を併用した場合には当て板16側に発生した溶け落ちQが板材10A,10B同士の接合部に及んでいないことが明確に表れている。これに対して、図12では溶け落ちQの発生によって溶接強度がきわめて乏しいものであることが観察できる。
このように本実施の形態によれば、溶接ビード17に最終的に残ることになる溶け落ちQが板材10A,10B側にまで及ばないことが保証されているため、頂部平面部14,15同士の間の隙間Gの許容範囲の拡大化を維持しながら、また過剰な溶け落ちの発生を招くことなく、高速溶接を施すことが可能となる。
その上、頂部平面部14,15同士の間に所定の隙間Gが確保されているため、例えば板材10A,10Bとして亜鉛めっき鋼板製のものを採用した場合でも、上記の隙間Gが気化した亜鉛蒸気の逃げ道として機能して、溶接ビード17でのブローホールの発生を抑制することができる。
ここで、フランジ部11,12同士の重合部については、同部位での密着性さえ確保できるならば、必要に応じ上記のようなハイブリッド溶接に代えてレーザ溶接もしくはアーク溶接による連続溶接としてもよい。
1…レーザ溶接ヘッド
2…レーザビーム
3…アーク溶接用トーチ
5A,5B…板材
6…当て板
7…溶接ビード
10A,10B…板材
11,12…フランジ部
14,15…頂部平面部
16…当て板
17…溶接ビード
18…張り出し部
G,G1…隙間
Q…溶け落ち
2…レーザビーム
3…アーク溶接用トーチ
5A,5B…板材
6…当て板
7…溶接ビード
10A,10B…板材
11,12…フランジ部
14,15…頂部平面部
16…当て板
17…溶接ビード
18…張り出し部
G,G1…隙間
Q…溶け落ち
Claims (4)
- 二枚の板材同士を重ね合わせた上でレーザ溶接とアーク溶接とを併用して溶接接合してなる重ね溶接継手であって、
上側の板材のうち溶接部の近傍の端末から予め延長形成してある張り出し部をその上側の板材側に当て板として折り返すことで溶接部を三枚重ね構造とし、
その三枚重ね構造部の当て板の上から溶接を施したことを特徴とする重ね溶接継手。 - 略ハット形断面形状をなす二枚の板材同士を重ね合わせた上で、各板材のフランジ部同士および頂部平面部同士をそれぞれ溶接接合してなる重ね溶接継手であって、
上側の板材の頂部平面部のうち溶接部の近傍の端末から予め延長形成してある張り出し部をその頂部平面部側に当て板として折り返すことで頂部平面部同士の溶接部を三枚重ね構造とし、
その三枚重ね構造部の当て板の上からレーザ溶接とアーク溶接とを併用して溶接を施したことを特徴とする重ね溶接継手。 - レーザ溶接とアーク溶接との併用による溶接部近傍には、それら二枚の板材間に予め所定の隙間が確保されていることを特徴とする請求項1または2に記載の重ね溶接継手。
- 二枚の板材同士を重ね合わせた上でレーザ溶接とアーク溶接とを併用して溶接接合することで重ね溶接継手とする方法であって、
上側の板材のうち溶接部の近傍の端末から正規継手形状以外の領域として予め張り出し部を延長形成しておき、
この張り出し部を上側の板材側に当て板として折り返すことで溶接部を三枚重ね構造とし、
その三枚重ね構造部の当て板の上から溶接を施すことを特徴とする溶接方法。
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JP2003412798A JP2005169450A (ja) | 2003-12-11 | 2003-12-11 | 重ね溶接継手および溶接方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2017047665A1 (ja) * | 2015-09-14 | 2017-03-23 | 新日鐵住金株式会社 | 隅肉溶接方法及び隅肉溶接継手 |
-
2003
- 2003-12-11 JP JP2003412798A patent/JP2005169450A/ja active Pending
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