JP2005168510A - レトルト食品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】次の(1)〜(5)の工程による製造方法。(1)香辛料を2つの群に分ける。(第1群の香辛料)カレーパウダー、カルダモン、クローブ、フェンネル、フェヌグリーク、ガーリック、ナツメグ、オニオン、クミン、ターメリック、コリアンダー、ローレル、唐辛子、胡椒及びシナモンの1以上を含む。(第2群の香辛料)クミン、カルダモン、胡椒、コリアンダー、唐辛子、スターアニス及びクローブの1以上を含む。(2)澱粉、油脂及び前記第1群の香辛料を含む原料を加熱して小麦粉ルウを得る。(3)前記ルウに対して水を含む原料及び第2群の香辛料を添加混合し、液状ないしペースト状食品を得る。(4)前記液状ないしペースト状食品を容器に充填密封する。(5)レトルト処理を施す工程。
【選択図】なし
Description
このような調味料としては種々のものが知られているが、例えば、レトルトカレーの製造方法において、調味料を他の原料と直接混合して用いると、レトルトカレーの旨味、甘味、酸味、塩味等がばらばらに感じられ、即ち、風味にまとまりがないといった問題が生じ得る。従って、まとまった風味を提供することができる調味料が望まれている。
更に、アミノ酸やペプチド等の調味料を用いる場合には、それらが高価であることを考慮し、コスト面から少量で高い効果を得ることも望まれる。
一方、特許文献1には、薄肉をレトルト処理する前に、予めゼラチン溶液中で加熱することを特徴とする薄肉の煮崩れ防止方法が開示されている。又、特許文献2及び3には肉類をクエン酸ナトリウム水溶液に接触させて肉質を改善する方法が記載されている。しかしながら、これらの方法は、肉の特性にのみ着目されており、ゼラチン溶液やクエン酸ナトリウム水溶液中に溶け出してくる肉の旨味の有効利用については考慮されていない。
本発明は、又、レトルト食品に添加するのに好適な、旨味、甘味、塩味等がまとまった風味を有する流動性調味材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、又、レトルト食品に加えるのに好適な具材の調製方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の第1の態様は、次の(1)〜(5)の工程を採用することを特徴とするレトルト食品の製造方法を提供する。
(1)澱粉及び油脂を含む第1群の材料に加熱処理を施す工程、
(2)水、糖類及びペプチドを含む第2群の材料に加熱処理を施す工程、
(3)前記の加熱処理を施した第1群の材料と、前記の加熱処理を施した第2群の材料とを混合し、必要により加熱処理を施して液状ないしペースト状食品を得る工程、
(4)前記液状ないしペースト状食品及び必要により具材を容器に充填密封する工程、
(5)前記(4)の工程で容器に充填密封した食品にレトルト処理を施す工程。
(1)澱粉及び油脂を含む第1群の材料に加熱処理を施す工程、
(2)水、糖類及びペプチドを含む第2群の材料に加熱処理を施す工程、
(3)前記の加熱処理を施した第1群の材料と、前記の加熱処理を施した第2群の材料と、塩、アミノ酸系調味料、野菜・果実原料、乳原料及び香辛料から選ばれた1以上を含む第3群の材料とを混合し、必要により加熱処理を施して液状ないしペースト状食品を得る工程、
(4)前記液状ないしペースト状食品及び必要により具材を容器に充填密封する工程、
(5)前記(4)の工程で容器に充填密封した食品にレトルト処理を施す工程。
(1)水、糖類及びペプチドを含む第1群の材料に加熱処理を施す工程、
(2)前記の加熱処理を施した第1群の材料と、塩、アミノ酸系調味料、野菜・果実原料、乳原料及び香辛料から選ばれた1以上を含む第2群の材料とを混合し、必要により加熱処理を施して液状ないしペースト状食品を得る工程、
(3)前記の液状ないしペースト状食品及び必要により具材を容器に充填密封する工程、
(4)前記(3)の工程で容器に充填密封した食品にレトルト処理を施す工程。
本発明の第4の態様は、水、糖類及びペプチドを含む材料を、95〜105℃で20〜120分間に煮込むことを特徴とする流動性調味材の製造方法を提供する。
(1)原料肉をカルボン酸ナトリウム水溶液及び/又は動物性蛋白水溶液に浸漬して、又は予めカルボン酸ナトリウム及び/又は動物性蛋白水溶液を含ませてなる原料肉を水に浸漬して、ボイル処理を施す工程、
(2)前記(1)の工程後、原料肉と液体成分を分離する工程、
(3)前記液体成分から灰汁及び/又は油分を分離したものを、澱粉を含む原料に加えて加熱処理を施して液状ないしペースト状食品を得る工程、
(4)前記液状ないしペースト状食品と、前記(2)の工程で液体成分から分離した原料肉とを容器に充填密封する工程、
(5)前記(4)の工程で容器に充填密封した食品にレトルト処理を施す工程。
本発明の第6の態様は、対象原料を、酸若しくはアルカリと、これらとpH緩衝作用をもつ緩衝物とを含むpH緩衝溶液を用いて、当該酸若しくはアルカリと接触させる接触処理することを特徴とする加工食品の調製方法を提供する。
(1)香辛料を少なくとも次の2つの群に分ける工程、
(第1群の香辛料) カレーパウダー、カルダモン、クローブ、フェンネル、フェヌグリーク、ガーリック、ナツメグ、オニオン、クミン、ターメリック、コリアンダー、ローレル、唐辛子、胡椒及びシナモンから選ばれた1以上を含む。
(第2群の香辛料) クミン、カルダモン、胡椒、コリアンダー、唐辛子、スターアニス及びクローブのうちの1以上を含む。
(2)澱粉、油脂及び前記第1群の香辛料を含む原料に加熱処理を施して小麦粉ルウを得る工程、
(3)前記ルウに対して水を含む原料及び第2群の香辛料を添加混合し、必要により加熱処理を施して液状ないしペースト状食品を得る工程、
(4)前記液状ないしペースト状食品を容器に充填密封する工程、
(5)前記(4)の工程で容器に充填密封した食品にレトルト処理を施す工程。
又、本発明によれば、このようなレトルト食品を製造するのに好適に用いることができる流動性調味材、及びレトルト食品に加えるのに好適な具材の調製方法を提供することができる。
又、水、糖類及びペプチドを含む第2群の材料は、主に流動性調味材を調製するためのものであり、ここで用いる水としては、水道水などの水はもちろんのこと、各種エキス水溶液、調味水溶液などがあげられる。又、糖類としては、ショ糖、果糖、ブドウ糖などの一種又は二種以上の混合物はもとより、これらの糖を含有する各種果物のペーストなどがあげられる。又、ペプチドとしても、各種ペプチドの単品又は混合物はもとよりこれらを含有する蛋白質加水分解物などがあげられる。このうち、ペプチドとしては酵母エキス、タンパク加水分解物及び肉エキスのうちから選ばれた1以上の材料由来のものであるのが好ましい。水、糖類及びペプチドを含む第2群の材料には、さらに、各種野菜を含有させることができ、特にたまねぎを含有させるのが好ましく、このなかでもたまねぎを20〜70質量%含有するのが好ましい。又、第2群の材料としては、pHが4.2〜5.5であるのが好ましく、又、ペプチドを0.1〜8質量%含むのが好ましい。本発明で用いる第2群の材料は、加熱により旨味、甘味、塩味等がまとまった風味、すなわち、すっきりとしているが、芯となるしっかりとした旨味がある優れた風味を提供するものである。
第3群の材料は、塩、アミノ酸系調味料、野菜・果実原料、乳原料及び香辛料から選ばれた1以上を含み、特に野菜・果実原料、乳原料、香辛料を含むのが好ましい。アミノ酸系調味料や乳原料としては、グルタミン酸ナトリウム、粉乳があげられる。野菜・果実原料としては、トマトペースト、リンゴペースト、フルーツチャツネ、野菜エキス等を用いることができ、また、これらの混合物を用いることができる。第3群の材料は、加熱により香りや風味を失いやすい材料を含むため、第1群の材料を第2群の材料から分けておくのであるが、第1群の材料と第2群の材料を予め加熱した後、ここに第3群の材料を加えてその予熱により、又はさらに加熱すると、各材料の風味がお互いに馴染んでまとまりのあるレトルト食品を得ることができる。
第2群の材料への加熱処理は、95℃以上の温度で行うのが好ましく、特に95〜105℃で行うのが好ましい。加熱処理の時間は、20〜120分、程度より好ましくは30〜100分間程度行うのがよい。
本発明では、このようにして、第1群の材料と、第2群の材料とを別々に加熱処理した後、これらを、又はこれらに第3群の材料を加えて混合して、液状ないしペースト状食品を得る。ここで、混合は、通常の混合装置を用いて行うことができる。この際、加熱してもよいが、第1群及び第2群の材料の余熱を利用してもよい。加熱する場合には、混合物の品温が80〜100℃に達するように行うのがよい。また、混合物の品温が80〜100℃に達したら、当該温度で一定時間保持してもよい。保持する場合には、5〜30分程度保持するのがよい。
次いで、本発明では、得られた液状ないしペースト状食品及び必要により具材を容器に充填密封し、レトルト処理する。
本発明の第4の態様は、本発明の第1及び第2の態様で用いる第2群の材料、本発明の第3の態様で用いる第1群の材料の加熱処理法に関するものである。その詳細を次に示すが、これらは、本発明の第1〜第3の態様にも適用されるものである。ここで、第4の態様で規定する条件で煮込むことにより、特に、甘味、塩味等がまとまった風味を有する調味材を提供することができる。
第4の態様では、水原料として水自体を単独で添加することができ、又はタマネギ細断物等の原料由来の水を用いることができるが、タマネギ細断物由来の水を用いるのが好ましい。ここで、タマネギ裁断物は、例えば、5〜30mm角の大きさにカットしたもの、あるいはコロイドミルやコミトロールにより磨細したものを用いることができる。本発明においては、水原料は、処理する材料の質量をベースとして、好ましくは65〜90質量%、より好ましくは70〜85質量%の水分が材料中に含まれるように用いるのがよい。
また、糖類としては、例えば、砂糖、ブドウ糖、ハチミツ、果糖等を用いることができる他、上記タマネギ細断物を、糖類原料として用いることができ、また、これらの混合物を用いることもできる。本発明において、糖類原料は、処理する材料の質量をベースとして、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは6〜27質量%の糖類が材料中に含まれるように用いるのがよい。
また、ペプチド原料としては、例えば、酵母エキス、タンパク加水分解物、畜肉エキス等又はこれらの混合物を用いることができ、酵母エキスを用いるのが好ましい。ペプチドは、処理する原料の質量をベースとして、例えば0.1〜8質量%含ませるのが好ましく、より好ましくは1〜7質量%である。
本発明においては、前記材料に、野菜・果実原料、例えば、トマトペースト、リンゴペースト、フルーツチャツネ、野菜エキス等を用いることができ、また、これらの混合物を用いることができる。野菜・果実原料を用いる場合、処理する原料の質量をベースとして、例えば1〜35質量%含ませるのが好ましく、より好ましくは1〜30質量%である。
また、本発明においては、前記材料に酸性原料を用いることができる。酸性原料としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸等を用いることができ、クエン酸を用いるのが好ましい。本発明においては、野菜・果実原料や酸性原料を用いて製造される調味材のpHを、好ましくは4.2〜5.5に調整するのがよく、より好ましくは4.5〜5.3である。また、酸性原料を用いる場合、処理する原料の質量をベースとして、例えば0.005〜0.2質量%含ませるのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.1質量%である。
また、本発明においては、その他の任意の成分を適宜含ませることができる。
このような任意成分としては、例えば、ガーリック、ジンジャー、ピーナッツバター、醤油等を挙げることができるが、これらは、本発明の効果、即ち、食品に対してまとまった風味を提供するといった効果に悪影響を及ぼさない範囲で使用するのがよい。
次に、本発明の第5の態様について説明する。この方法は、原料肉から旨味成分を変質させることなく、効率的に取り出す方法であり、又、肉質を柔らかくすることができる。ここで用いる原料肉としては、豚肉、牛肉、鳥肉などの各種生の肉、凍結した肉、それを解凍した肉などがあげられる。この肉を予めカルボン酸ナトリウム水溶液又は動物性蛋白溶液に浸漬することによって原料肉中にカルボン酸ナトリウム又は動物性蛋白を含ませるか、又はボイル処理を施しながら、原料肉中にカルボン酸ナトリウム又は動物性蛋白を含ませる。ここで用いるカルボン酸ナトリウムとしては、クエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、酢酸、グルコン酸などのナトリウム塩の1種又は2種以上の混合物があげられるが、クエン酸ナトリウムが好ましい。この際、クエン酸ナトリウム以外の塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウムなどを併用するのが好ましい。又、動物性蛋白としては、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等があげられる。
カルボン酸ナトリウム水溶液や動物性蛋白溶液としては、カルボン酸ナトリウムの0.1〜10質量%水溶液や動物性蛋白の0.05〜1質量%水溶液を用いるのが好ましく、原料肉100質量部当たり、これらの水溶液を100〜500質量部用い、10〜70℃の温度の該水溶液に15分〜16時間予備浸漬するのがよい。
ボイル処理後、原料肉と液体成分を常法により分離し、さらに分離した液体成分から灰汁及び/又は油分を分離した液体は、肉の旨味を含んでいるので、これを、澱粉を含む原料に加えて加熱処理を施して液状ないしペースト状食品を得る。ここで、澱粉を含む原料としては、本発明の第1及び第2の態様における第1群の材料があげられる。従って、この肉の旨味を含んでいる液体を、本発明の第1及び第2の態様における第2群の材料における水として用いるのが好ましい。
本発明の第6の態様では、肉類だけではなくて、魚介類や野菜類も対象とすることができる。本発明は、魚介類、特に二枚貝、巻き貝等の貝類、肉類、特に牛肉等の畜肉類に適用すると、これらの食感、保水性(保水性が上がるとジューシーな食感が得られる)、食味の向上効果として優れた効果が得られる。第6の態様では、酸若しくはアルカリと緩衝物の作用により、接触処理時には必要な特定のpH域を達成し、かつ、接触処理乃至保存時を通じて、原料を適正なpHに平衡化することができるため、原料の品質を保持することが可能となる。
緩衝物とは、上記の酸若しくはアルカリと共存する場合にpH緩衝作用をもつ物質である。具体的には、酸類含有水に浸漬し加熱処理した貝類を用いて調製したソース類用原料混合物をpHが5.0〜7.0となるような条件で加熱処理する場合に、加熱後の保存時に、あさりからソース中に酸が溶出し、ソースのpHが5.0を下回ることがないように、当該酸類及び他の原料と混合された場合に、pH緩衝作用により、ソースのpHを5.0〜7.0の間で平衡化するための物質である。つまり、酸若しくはアルカリと共役して、電離平衡を保つ性質により、pHを安定化させる物質である。尚、緩衝物には、酸と共存する場合に、酸側でpHを安定化させる弱アルカリを含む酸や、アルカリと共存する場合に、アルカリ側でpHを安定化させる弱酸を含むアルカリが含まれる。
緩衝物は、このような作用のあるものであれば任意に使用し得るが、使用する酸の塩及び/又は使用する酸と共存する場合に酸側でpHを安定化させる弱アルカリを含む酸であるか、使用するアルカリの共役酸及び/又は使用するアルカリと共存する場合にアルカリ側でpHを安定化させる弱酸を含むアルカリであることが望ましい。
酸 緩衝物
クエン酸 クエン酸ナトリウム
乳酸 乳酸ナトリウム、乳酸カリウム
酒石酸 酒石酸ナトリウム、カリウム
リン酸 リン酸ナトリウム
リンゴ酸 リンゴ酸ナトリウム
酢酸 酢酸ナトリウム
アルカリ 緩衝物
クエン酸ナトリウム クエン酸
重曹 クエン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム
リン酸ナトリウム リン酸
より具体的には、対象原料、特に肉を、pH緩衝溶液と接触処理する間にpH緩衝能を作用させる。特に、接触処理の間に、pH緩衝溶液のpHを、酸接触処理では、例えば3.0〜4.5、好ましくは3.8〜4.2、アルカリ接触処理では、例えば6.5〜8.0、好ましくは6.8〜7.2で平衡化させるのがよい。また、酸接触処理に用いるpH緩衝溶液の酸含有量を0.1〜3.0質量%、及び緩衝物の含有量を0.1〜5.0質量%、一方、アルカリ接触処理に用いるpH緩衝溶液のアルカリ含有量を0.1〜5.0質量%、及びpH緩衝物の含有量を0.1〜5.0質量%とするのがよい。酸としては、乳酸、酒石酸、クエン酸、これに混合する緩衝物しては、乳酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アルカリとしては、重曹、これに混合する緩衝物しては、クエン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウムが各々望ましい。対象原料と水溶液の使用割合は、質量比で前者1対して後者1以上が望ましい。
例えば、接触処理をボイル処理して行えば、魚介類、肉類の軟化処理として有効な手段となり、特に肉類に適する。ボイル処理の条件としては、80〜100℃が好ましく、より好ましくは90〜100℃で、1〜300分間、より好ましくは60〜100分間がよい。
なお、ボイル処理に用いるpH緩衝溶液に、食塩、ショ糖、トレハロース等の糖類等を加えることができ、これらの含有量を1〜50質量%とするのがよく、魚介類、肉類の肉質の軟化処理をする場合に好ましい。
以上の処理により、対象原料の品質を損なわずに、酸若しくはアルカリを作用せしめることが可能となる。特に、魚介類、肉類に接触処理を施す場合に、保水して肉質を軟化し、食味を保持する効果があるので有効である。
本発明では、又予め対象原料(例えば、あさりについて)を酸若しくはアルカリと接触させておく事前処理を施してもよい。事前処理としては、例えばpH7.5〜9、好ましくは8.0〜8.6のアルカリを含む水溶液で浸漬することが挙げられる。水溶液のアルカリ含有量を0.1〜6.0質量%するのがよい。アルカリとしては、クエン酸ナトリウム、重曹、リン酸ナトリウムが望ましい。対象原料と水溶液の使用割合は、質量比で前者1対して後者1〜5が望ましい。この事前処理を施した対象原料を、酸若しくはアルカリを含むpH緩衝溶液と接触処理した後、該緩衝溶液及び/又は他の原料と混合して保存する場合に、接触処理乃至保存中の原料のpHを平衡化する。
なお、上記のpH緩衝溶液に、食塩、ショ糖、トレハロース等の糖類等を加えることができ、これらの含有量を0.5〜4.0質量%とするのがよく、魚介類、肉類の軟化処理をする場合に好ましい。
上記の加熱処理を行う場合は、例えば120〜125℃で、30〜60分間、F0 値25〜30の条件にするとよい。つまり、原料を酸を含む緩衝溶液と混合して加熱することで、比較的緩慢な条件で高い殺菌効率が得られる。
以上の処理は、魚介類、特に貝類、肉類に事前処理を施して肉質を軟化し、続いて酸に接触した状態で加熱(殺菌)処理する場合に、殺菌効率を上げると共に、肉質を硬化させず、食味を保持する効果があり、特に有効である。
上述した2群の香辛料のうち、第1群の香辛料としては、カレーパウダー、カルダモンが好ましく、第2群の香辛料としては、クミン、コリアンダー、唐辛子、スターアニス、胡椒が好ましい。
本発明の工程(2)における澱粉及び油脂を含む原料としては、本発明の第1及び第2の態様における第1群の材料が好ましい。又、本発明の工程(3)における水を含む原料としては、本発明の第1及び第2の態様における第2群の材料が好ましい。
ここで、本発明の工程(3)において、80〜100℃で加熱処理を施して液状ないしペースト状食品を得るのが好ましい。特に混合物の品温が80〜100℃に達するように行うのが好ましい。これにより、第2群の香辛料に含まれる酵素を失活させることができ、得られる液状ないしペースト状食品の風味や物性を好適に発現させることができる。又、本発明の第5の態様における工程(3)で得られた水溶液を、ここで用いる水として使用するのが好ましく、(3)の工程で得られた液状ないしペースト状食品を、本発明の第5の態様における液体成分から分離した原料肉と共に容器に充填密封し、次いでレトルト処理を施すのが好ましい。
本発明では、このようにして、具材入りカレー、ハッシュドビーフ、ハヤシ、デミグラスソース、シチュー等のレトルト食品を製造することができる。
次に実施例により本発明を説明する。
(1)小麦粉ルウの製造
小麦粉6部、豚脂1部及び牛脂4部を、攪拌羽根を備えた加熱釜Aに投入し、撹拌羽根を回転(回転数:30rpm)させながら加熱を開始して、30〜40分間で品温を130℃に達温させた。130℃に達したらカレーパウダー2部を更に投入し、このカレーパウダーの投入によって低下する品温を125℃に達温させ、125℃に達したら加熱釜Aの加熱を止めて、余熱で品温を115〜125℃に5分間保持した。その後品温を90℃以下にまで冷却して小麦粉ルウを製造した。
(2)焙煎野菜の製造
玉葱を剥皮、洗浄し、ダイサーを用いて約20mm角にカットして得られた玉葱細断物15部、油脂(豚脂・牛脂・バター)2部、肉エキス1部、蛋白加水分解物1部、リンゴペースト1部、及び水6部を、攪拌羽根を備えた加熱釜Bに投入した。撹拌羽根を回転(回転数:20rpm)させながら加熱を開始して、品温を95℃に達温させ、95〜100℃で40分間煮込んで焙煎野菜を製造した。この焙煎野菜の水分は78.5質量%であり、糖類含量は8.3質量%であり、ペプチド含量は3.5質量%であり、そのpHは5.0であった。
牛肉をダイサーを用いて約30mm×30mm×7mmにカットし、カットした牛肉をメッシュカゴに入れて1質量%のクエン酸ナトリウム水溶液(25℃)に30分間浸漬し、当該水溶液を95℃に加熱して95℃で20分間保持してボイル処理した後、当該水溶液からメッシュカゴを引上げてボイル処理済の牛肉を回収した。またその一方で、上記水溶液をストックタンクに回収して70℃に保持してストックした。1時間ストック後、この水溶液の表面には牛肉由来の油脂が浮かび、また底には牛肉由来の灰汁が溜まった。
(4)具材(野菜)の製造
人参を剥皮、洗浄し、ダイサーを用いて約15mm角にダイスカットした。
馬鈴薯を剥皮、洗浄し、ダイサーを用いて約15mm角にダイスカットした。
(5)カレーソースの製造
(I) 加熱釜A内の小麦粉ルウを、ポンプを備えたパイプを介して攪拌羽根を備えた別の加熱釜Cに送った。
(II) 次に、乳原料0.2部、砂糖2部、食塩1部、グルタミン酸ナトリウム1部、トマトペースト1部、及び水42.5部を上記加熱釜Cに投入した。
(III) 次に、加熱釜B内の焙煎野菜を、ポンプを備えたパイプを介して上記加熱釜Cに送った。
(IV) 次に、上記ストックタンクの中央に存在する水溶液10部を、ポンプを備えたパイプを介して上記加熱釜Cに送った。
(V) 次に、加熱釜Cの撹拌羽根を回転(回転数:20rpm)させながら加熱を開始して95℃に達温させ、95℃に達したら加熱釜Cの加熱を止めて、更に、クミンパウダー0.1部、コリアンダーパウダー0.1部、唐辛子パウダー0.1部及び水3部からなる混合物を投入し、撹拌羽根を回転させながら品温90〜95℃の状態を10分間保持してカレーソースを製造した。
上記加熱釜C内のカレーソースを、ポンプを備えたパイプを介して充填機に送り、この充填機から品温70℃以上に保持してレトルトパウチに160gを充填するとともに、具材として製造した人参10g、馬鈴薯25g及び牛肉5gを充填し、当該レトルトパウチを密封し、122℃で、20分間の条件でレトルト処理を施して、レトルトパウチ入りのレトルトカレーを製造した(FO値8)。
(7)レトルトカレーの品質
(I) このカレーソースは、香辛料の香り立ちが際立つとともに、香辛料の香味が良好に引き出されていた。
(II) このカレーソースは、旨味、甘味、酸味がまとまった風味、即ち、すっきりしているが、芯となるしっかりした旨味があった。また、牛肉の旨味を十分に有するものであった。
(III) このカレーソースは、乳原料やトマトペーストなどの風味が良好であった。
具材(牛肉)の製造を次に示す方法で行った以外は、実施例1と同様にして、レトルトパウチ入りのレトルトカレーを製造した。
具材(牛肉)の製造
牛肉をダイサーを用いて約30mm×30mm×7mmにカットし、カットした牛肉をメッシュカゴに入れて、クエン酸ナトリウム0.3質量%、塩化ナトリウム1.0質量%を含む水溶液(60℃)に60分間浸漬し、当該水溶液を95℃に加熱して95℃で20分間保持してボイル処理した後、当該水溶液からメッシュカゴを引上げてボイル処理済の牛肉を回収した。またその一方で、上記水溶液をストックタンクに回収して70℃に保持してストックした。1時間ストック後、この水溶液の表面には牛肉由来の油脂が浮かび、また底には牛肉由来の灰汁が溜まった。
得られたレトルトカレーの品質は、次の通りであった。
(I) このカレーソースは、香辛料の香り立ちが際立つとともに、香辛料の香味が良好に引き出されていた。
(II) このカレーソースは、旨味、甘味、酸味がまとまった風味、即ち、すっきりしているが、芯となるしっかりした旨味があった。また、牛肉の旨味を十分に有するものであった。
(III) このカレーソースは、乳原料やトマトペーストなどの風味が良好であった。
具材(牛肉)の製造を次に示す方法で行った以外は、実施例1と同様にして、レトルトパウチ入りのレトルトカレーを製造した。
具材(牛肉)の製造
牛肉をダイサーを用いて約30mm×30mm×7mmにカットし、カットした牛肉をメッシュカゴに入れて、ゼラチン0.50質量%を含む水溶液(25℃)に120分間浸漬し、当該水溶液を95℃に加熱して95℃で20分間保持してボイル処理した後、当該水溶液からメッシュカゴを引上げてボイル処理済の牛肉を回収した。またその一方で、上記水溶液をストックタンクに回収して70℃に保持してストックした。1時間ストック後、この水溶液の表面には牛肉由来の油脂が浮かび、また底には牛肉由来の灰汁が溜まった。
得られたレトルトカレーの品質は、次の通りであった。
(I) このカレーソースは、香辛料の香り立ちが際立つとともに、香辛料の香味が良好に引き出されていた。
(II) このカレーソースは、旨味、甘味、酸味がまとまった風味、即ち、すっきりしているが、芯となるしっかりした旨味があった。また、牛肉の旨味を十分に有するものであった。
(III) このカレーソースは、乳原料やトマトペーストなどの風味が良好であった。
具材(牛肉)の製造を次に示す方法で行った以外は、実施例1と同様にして、レトルトパウチ入りのレトルトカレーを製造した。
具材(牛肉)の製造
牛肉をダイサーを用いて約30mm×30mm×7mmにカットし、カットした牛肉300部をメッシュカゴに入れて、乳酸1質量%、乳酸ナトリウム0.8質量%、ショ糖5質量%を含むpH緩衝溶液450部(25℃)に浸漬し、当該水溶液を90℃に加熱して90℃で10分間保持してボイル処理した後、当該水溶液からメッシュカゴを引上げてボイル処理済の牛肉を回収した。またその一方で、上記水溶液をストックタンクに回収して70℃に保持してストックした。1時間ストック後、この水溶液の表面には牛肉由来の油脂が浮かび、また底には牛肉由来の灰汁が溜まった。
尚、上記緩衝溶液のpHは、ボイル処理前は3.74で、処理後は4.23で、ボイル処理の間3.74〜4.23の範囲で推移した。尚、上記の処理を施したボイル牛肉は、歩留りが70.2質量%であった。
得られたレトルトカレーの品質は、次の通りであった。
(I) このカレーソースは、香辛料の香り立ちが際立つとともに、香辛料の香味が良好に引き出されていた。
(II) このカレーソースは、旨味、甘味、酸味がまとまった風味、即ち、すっきりしているが、芯となるしっかりした旨味があった。また、牛肉の旨味を十分に有するものであった。
(III) このカレーソースは、乳原料やトマトペーストなどの風味が良好であった。
(IV) 牛肉がジューシーで軟らかい食感と、酸味が感じられず自然な風味を有していた。
具材(牛肉)の製造を次に示す方法で行った以外は、実施例1と同様にして、レトルトパウチ入りのレトルトカレーを製造した。
具材(牛肉)の製造
牛肉をダイサーを用いて約30mm×30mm×7mmにカットし、カットした牛肉300部をメッシュカゴに入れて、炭酸水素Na0.2質量%、クエン酸ナトリウム1質量%、グルタミン酸ナトリウム2質量%、ショ糖5質量%を含むpH緩衝溶液450部(25℃)に浸漬し、当該水溶液を90℃に加熱して90℃で10分間保持してボイル処理した後、当該水溶液からメッシュカゴを引上げてボイル処理済の牛肉を回収した。またその一方で、上記水溶液をストックタンクに回収して70℃に保持してストックした。1時間ストック後、この水溶液の表面には牛肉由来の油脂が浮かび、また底には牛肉由来の灰汁が溜まった。
尚、上記緩衝溶液のpHは、ボイル処理前は7.79で、処理後は7.16で、ボイル処理の間7.79〜7.16の範囲で推移した。尚、上記の処理を施したボイル牛肉は、歩留りが68.9質量%であった。
得られたレトルトカレーの品質は、次の通りであった。
(I) このカレーソースは、香辛料の香り立ちが際立つとともに、香辛料の香味が良好に引き出されていた。
(II) このカレーソースは、旨味、甘味、酸味がまとまった風味、即ち、すっきりしているが、芯となるしっかりした旨味があった。また、牛肉の旨味を十分に有するものであった。
(III) このカレーソースは、乳原料やトマトペーストなどの風味が良好であった。
(IV) 牛肉がジューシーで軟らかい食感と自然な風味を有していた。
(1)小麦粉ルウの製造
小麦粉5部、豚脂3.5部及び牛脂1.5部を、攪拌羽根を備えた加熱釜Aに投入し、撹拌羽根を回転(回転数:30rpm)させながら加熱を開始して、30〜40分間で品温を130℃に達温させた。130℃に達したらカレーパウダー1.5部を更に投入し、このカレーパウダーの投入によって低下する品温を125℃に達温させ、125℃に達したら加熱釜Aの加熱を止めて、余熱で品温を115〜125℃に5分間保持した。その後品温を90℃以下にまで冷却して小麦粉ルウを製造した。
(2)焙煎野菜の製造
玉葱を剥皮、洗浄し、ダイサーを用いて約20mm角にカットして得られた玉葱細断物24部、油脂(豚脂・牛脂・バター)2部、糖類1部、酵母エキス0.2部、肉エキス1部、蛋白加水分解物0.5部、リンゴペースト0.5部、及び水12部を攪拌羽根を備えた加熱釜Bに投入した。撹拌羽根を回転(回転数:20rpm)させながら加熱を開始して品温を95℃に達温させ、95〜105℃で40分間煮込んで焙煎野菜を製造した。この焙煎野菜の水分は81.0%であり、糖類含量は11.0%であり、ペプチド含量は1.9質量%であり、そのpHは5.2であった。
牛肉を、ダイサーを用いて約30mm×30mm×7mmにカットし、カットした牛肉をメッシュカゴに入れて1質量%のクエン酸ナトリウム水溶液(25℃)に30分間浸漬し、当該水溶液を95℃に加熱して20分間保持してボイル処理した後、当該水溶液からメッシュカゴを引上げてボイル処理済の牛肉を回収した。またその一方で、上記水溶液をストックタンクに回収して70℃に保持してストックした。1時間ストック後、この水溶液の表面には牛肉由来の油脂が浮かび、また底には牛肉由来の灰汁が溜まった。
(4)具材(野菜)の製造
人参を剥皮、洗浄し、ダイサーを用いて約15角にダイスカットした。
馬鈴薯を剥皮、洗浄し、ダイサーを用いて約15角にダイスカットした。
(I) 加熱釜A内の小麦粉ルウを、ポンプを備えたパイプを介して攪拌羽根を備えた別の加熱釜Cに送った。
(II) 次に、乳原料0.5部、食塩1部、グルタミン酸ナトリウム0.5部、トマトペースト1部、チャツネ1部、及び水34.1部を上記加熱釜Cに投入した。
(III) 次に、加熱釜B内の焙煎野菜を、ポンプを備えたパイプを介して上記加熱釜Cに送った。
(IV) 次に、上記ストックタンクの中央に存在する水溶液7部をポンプを備えたパイプを介して上記加熱釜Cに送った。
(V) 次に、加熱釜Cの撹拌羽根を回転(回転数:20rpm)させながら加熱を開始して95℃に達温させ、95℃に達したら加熱釜Cの加熱を止めて、更にクミンパウダー0.1部、及びカルダモンパウダー0.1部、及び水2部からなる混合物を投入し、撹拌羽根を回転させながら品温90〜95℃の状態を10分間保持してカレーソースを製造した。
上記加熱釜C内のカレーソースを、ポンプを備えたパイプを介して充填機に送り、この充填機から品温70℃以上の品温を保持してレトルトパウチに160gを充填するとともに、具材として製造した人参13g、馬鈴薯30g及び牛肉7gを充填し、当該レトルトパウチを密封し、122℃で、23分間の条件でレトルト処理を施して、レトルトパウチ入りのレトルトカレーを製造した(FO値8)。
得られたレトルトカレーの品質は、次の通りであった。
(I) このカレーソースは、香辛料の香り立ちが際立つとともに、香辛料の香味が良好に引き出されていた。
(II) このカレーソースは、旨味、甘味、酸味がまとまった風味、即ち、すっきりしているが、芯となるしっかりした旨味があった。また、牛肉の旨味を十分に有するものであった。
(III) このカレーソースは、乳原料やトマトペーストなどの風味が良好であった。
Claims (6)
- 次の(1)〜(5)の工程を採用することを特徴とするレトルト食品の製造方法。
(1)香辛料を少なくとも次の2つの群に分ける工程、
(第1群の香辛料) カレーパウダー、カルダモン、クローブ、フェンネル、フェヌグリーク、ガーリック、ナツメグ、オニオン、クミン、ターメリック、コリアンダー、ローレル、唐辛子、胡椒及びシナモンから選ばれた1以上を含む。
(第2群の香辛料) クミン、カルダモン、胡椒、コリアンダー、唐辛子、スターアニス及びクローブのうちの1以上を含む。
(2)澱粉、油脂及び前記第1群の香辛料を含む原料に加熱処理を施して小麦粉ルウを得る工程、
(3)前記ルウに対して水を含む原料及び第2群の香辛料を添加混合し、必要により加熱処理を施して液状ないしペースト状食品を得る工程、
(4)前記液状ないしペースト状食品を容器に充填密封する工程、
(5)前記(4)の工程で容器に充填密封した食品にレトルト処理を施す工程。 - 前記(2)の工程において、澱粉、油脂及び第1群の香辛料を含む原料に110℃以上の温度で加熱処理を施す請求項1に記載のレトルト食品の製造方法。
- 前記(3)の工程において、前記ルウに対して水を含む原料及び第2群の香辛料を添加混合し、80〜100℃で加熱処理を施して液状ないしペースト状食品を得る請求項1に記載のレトルト食品の製造方法。
- 前記(5)の工程において、レトルト処理の条件が120〜125℃で、F0値4〜30である請求項1に記載のレトルト食品の製造方法。
- 次の(6)〜(8)の工程を経て得られた水溶液を、(3)の工程で用いる水を含む原料として使用する請求項1に記載のレトルト食品の製造方法。
(6)原料肉を水に加えてボイル処理を施す工程、
(7)前記(6)の工程後、原料肉と液体成分を分離する工程、
(8)前記液体成分から灰汁及び/又は油分を分離して水溶液を得る。 - (3)の工程で得られた液状ないしペースト状食品を、(7)の工程で液体成分から分離した原料肉と共に容器に充填密封し、次いでレトルト処理を施す請求項5に記載のレトルト食品の製造方法。
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