JP2005168020A - 無線マルチホップネットワークの通信経路制御方法及び通信端末 - Google Patents
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Abstract
【課題】 少ないメッセージ送信頻度で移動特性に適応して安定した通信を実現する。
【解決手段】 無線マルチホップネットワーク1は、複数の通信端末11〜14間でHELLOメッセージ及びトポロジーメッセージを含む制御メッセージを交換することで形成される。通信端末11〜14は、その移動状態などに応じて制御メッセージの送信間隔を調整し、移動が少ない程、長い送信間隔で制御メッセージを送信する。これにより、全体の制御メッセージ量を抑え、帯域の少ないネットワークでも利用することが可能になる。通信端末11〜14は、リンク情報が更新された場合、送信されるトポロジーメッセージの中にHELLOメッセージのシーケンス番号を含める。これにより、移動の際に生じる隣接通信端末の不一致をすばやく解決し、正常な経路制御を継続することが可能になる。
【選択図】 図1
【解決手段】 無線マルチホップネットワーク1は、複数の通信端末11〜14間でHELLOメッセージ及びトポロジーメッセージを含む制御メッセージを交換することで形成される。通信端末11〜14は、その移動状態などに応じて制御メッセージの送信間隔を調整し、移動が少ない程、長い送信間隔で制御メッセージを送信する。これにより、全体の制御メッセージ量を抑え、帯域の少ないネットワークでも利用することが可能になる。通信端末11〜14は、リンク情報が更新された場合、送信されるトポロジーメッセージの中にHELLOメッセージのシーケンス番号を含める。これにより、移動の際に生じる隣接通信端末の不一致をすばやく解決し、正常な経路制御を継続することが可能になる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、無線マルチホップネットワークの通信経路制御方法及び通信端末に関し、特にネットワーク上のノードとなる通信端末の移動特性などに適応した通信経路制御方法及び通信端末に関する。
従来、無線ネットワークには、通信端末同士が無線により直接通信するだけでなく、自らの無線信号が届く通信範囲内の隣接する他の通信端末を無線ネットワークのデータ中継ノードとして経由することでその通信範囲を超えてより広い範囲に存在する他の通信端末との間でも通信を可能にする無線マルチホップネットワーク(「モバイルアドホックネットワーク」等とも言う)が知られている。
この無線マルチホップネットワークは、複数の通信端末で自律的に構成されるものであり、各通信端末がルータの機能を持ちデータ中継も可能となっている。このデータ中継の通信経路を制御するルーティングプロトコルとしては、例えば、通信開始時に通信経路を検索して決定するReactive型プロトコルや、非通信時に近隣の通信端末と情報交換することで予め通信経路を決定しておくProactive型プロトコル等が採用されている。以下、Proactive型プロトコルを用いたProactive型無線マルチホップネットワークについて説明する。
従来のProactive型無線マルチホップネットワークにおける通信経路制御では、例えば、定期的な隣接発見メッセージ(「HELLOメッセージ」と呼ぶ)の送受信により隣接通信端末の存在を把握し、隣接通信端末との間のリンク情報を含むトポロジーメッセージを定期的にネットワーク全体へ広告することにより、各通信端末がネットワークトポロジーグラフをそれぞれ構築してネットワーク全体のトポロジー(どの通信端末がどの通信端末とどのように繋がっているかの情報)を把握し、そのトポロジーから最短経路を計算することにより実現されている。
こうした方式は、下記の非特許文献1で開示されている。しかしながら、この方式では頻繁なメッセージ送信が必要であるため、帯域の少ない無線ネットワークにおいてはメッセージ負荷が高すぎて利用できないという欠点があった。また、頻繁なメッセージの送信は通信端末の電力消費が激しいため、端末の電源寿命を短くするという欠点もある。さらに、メッセージの送信頻度は、通信端末の移動速度などによって決定されるが、移動速度が異なる通信端末で構成されたネットワークでは、最も速い通信端末に送信頻度を合わせる必要があり無駄な帯域を消費する。また、予測以上の速さで移動した場合には、ネットワークトポロジーの更新が追いつかず、正常な経路制御を行うことができない。
これに関し、メッセージ負荷を抑えるために変化の差分だけを送信する方式が、下記の非特許文献2で開示されている。しかしながら、この方式でも、送信頻度自体は改善されていないため、端末の電源消費を抑えることはできない。
また、メッセージ負荷を抑えるためには、メッセージ送信頻度を低くすることが考えられるが、送信頻度を低くすると、隣接端末情報及びネットワークトポロジー情報の更新に時間がかかり、通信が不安定になるという欠点があった。この欠点を克服するため、通信端末からの距離(ホップ数)に応じて送信頻度を調整するFSR(Fisheye State Routing protocol)と呼ばれる方式が、下記の非特許文献3に開示されている。しかしながら、この方式では正確なトポロジー情報が得られず、移動の激しいネットワークではやはり安定した通信を行うことは困難である。
T. Clause,他1名,"Optimized Link State Routing Protocol (OLSR)",IETF RFC3626,2003年10月 R. Ogier,他2名,"Topology Dissemination Based on Reverse-Path Forwarding (TBRPF)",IETF RFC3684,2004年2月 A. Iwata,他4名,"Scalable Routing Strategies for Ad-hoc Wireless Networks", IEEE JSAC, 1999年8月, Vol.17, No.8, p.1369-1379 Zygmunt Haas他2名, "Gossip-based ad hoc routing", IEEE INFOCOM 2002, 2002年
T. Clause,他1名,"Optimized Link State Routing Protocol (OLSR)",IETF RFC3626,2003年10月 R. Ogier,他2名,"Topology Dissemination Based on Reverse-Path Forwarding (TBRPF)",IETF RFC3684,2004年2月 A. Iwata,他4名,"Scalable Routing Strategies for Ad-hoc Wireless Networks", IEEE JSAC, 1999年8月, Vol.17, No.8, p.1369-1379 Zygmunt Haas他2名, "Gossip-based ad hoc routing", IEEE INFOCOM 2002, 2002年
上述した従来のProactive型無線マルチホップネットワークにおける経路制御方式では、メッセージ量が多いため帯域の少ないネットワークでは利用が困難である。また、移動速度の異なる通信端末で構成されるネットワークでは、最も速い通信端末にメッセージ頻度を合わせる必要があり、無駄なメッセージ負荷を増やすことになる。さらに、頻繁なメッセージの送信により端末の電力消費が大きい。さらに予想以上の移動速度に対しては、正常な経路制御ができず通信が途絶えてしまう。
本発明は、上記の問題点を解消し、少ないメッセージ送信頻度で移動特性に適応して安定した通信を実現する無線マルチホップネットワークにおける経路制御方法及び通信端末を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る無線マルチホップネットワークの通信経路制御方法は、複数の通信端末間で無線により制御パケットを交換して該複数の通信端末をノードとするマルチホップネットワークを形成し、そのマルチホップネットワークのトポロジー情報を保持し、そのトポロジー情報に基づいて前記複数の通信端末間で送受信されるパケットの通信経路を制御する無線マルチホップネットワークの通信経路制御方法において、前記通信端末が、自通信端末の少なくとも移動速度を含む移動情報を検知するステップと、前記通信端末が、検知された前記移動情報に応じて、前記マルチホップネットワーク上の他通信端末との間の前記制御パケットの交換頻度を、前記自通信端末の移動状況に応じて制御負荷が少なくなるように調整するステップと、前記通信端末が、前記他通信端末からの前記制御パケットに基づいて前記自通信端末が保持する前記マルチホップネットワークのトポロジー情報を更新するステップとを有することを特徴とする。
また、本発明に係る通信端末は、複数の通信端末間で無線により制御パケットを交換して該複数の通信端末をノードとするマルチホップネットワークを形成し、そのマルチホップネットワークのトポロジー情報を保持し、そのトポロジー情報に基づいて前記複数の通信端末間で送受信されるパケットの通信経路を制御する無線マルチホップネットワークで用いる通信端末において、自通信端末の少なくとも移動速度を含む移動情報を検知する手段と、検知された前記移動情報に応じて、前記マルチホップネットワーク上の他通信端末との間の前記制御パケットの交換頻度を、前記自通信端末の移動状況に応じて制御負荷が少なくなるように調整する手段と、前記他通信端末からの前記制御パケットに基づいて前記自通信端末が保持する前記マルチホップネットワークのトポロジー情報を更新する手段とを有することを特徴とする。
本発明によれば、通信端末が移動していないときに、経路制御に必要なメッセージ(制御パケット)の送信頻度を抑え、経路制御にかかるメッセージ負荷を削減でき、通信端末の電力消費を抑えることができる。また、通信端末が移動しているときに、通信経路の収束を早くして、より安定した通信が実現できる。このようにして、少ないメッセージ送信頻度で移動特性に適応して安定した通信を実現する無線マルチホップネットワークの経路制御方法及び通信端末を提供することができる。
以下、本発明に係る無線マルチホップネットワークの通信経路制御方法及び通信端末を実施するための最良の形態について、添付図面を参照して説明する。
本実施例の無線マルチホップネットワーク(モバイルアドホックネットワーク)は、前述の非特許文献1のProactive型プロトコル(OLSRプロトコル:Optimized Link State Routing Protocol)を用いた方式を適用したものである。
一般に、無線マルチホップネットワークでは、同一メッセージのパケットを1つのノード(通信端末)から全てのノードへ行き渡るよう伝達する「フラッディング(Flooding)」と呼ばれる技術が採用されている。このフラッディングに際し、全てのノードがメッセージを転送(再送信)すれば当然ネットワーク全体に行き渡るが、それでは再送信されるメッセージ数が多くなりすぎて効率が悪い。そこで、非特許文献1の方式では、このフラッディングを効率よく行うため、隣接ノードの中から2ホップ先のノード全てをカバーすることができる隣接ノードのセットを計算し、これを「MPR(Muti-Point-Relay)」として選択し、このようにMPRとして選択された隣接ノード(MPRノード)のみがメッセージを転送する仕組みが規定されている。
本実施例の無線マルチホップネットワークは、こうしたMPRノードを用いたフラッディング技術をベースに構築されたものである。
図1は、本実施例の無線マルチホップネットワークにおけるネットワーク構成例を示す。
図1の例では、複数の通信端末11〜14がそれぞれ無線ネットワーク上のノードを構成し、これら各ノード間で無線により自律的に制御パケットを交換することで無線マルチホップネットワーク1が形成されている。通信端末11〜14は、携帯電話機等の携帯情報端末や、車両、航空機、船等の移動体に搭載される無線装置等、いずれでも適用可能である。
この無線マルチホップネットワーク1において、ノードを成す通信端末11〜14がそれぞれ自分の無線信号が届く通信範囲A11〜A14内に存在する任意の通信端末11〜14と直接通信するほか、他の通信端末11〜14を経由してパケットの転送を行うことで、パケットの送信元ノードである送信元通信端末11〜14からパケットの宛先ノードである宛先通信端末11〜14までパケットを届けるようになっている。図1の例では、送信元通信端末11から他の通信端末12、13を経由して宛先通信端末14へパケットを転送する場合を示している(図中の矢印はパケットの転送方向を示す)。各通信端末11〜14は、このような無線マルチホップネットワーク1上でパケットを送受信及び転送(フラッディング)するための端末特定情報として、それぞれ固有のノードID(Identification Data)とIP(Internet Protocol)アドレスを持っている。
図2は、通信端末11の内部構成例を示している。なお、他の通信端末12〜14についても、通信端末11と同様の構成であるため、その説明を省略する。
通信端末11には、他の通信端末12〜14との間で無線により通信を行うためのアンテナを有する無線通信装置21と、本発明による無線マルチホップネットワークの通信経路制御方法の各ステップ及び通信端末の各手段を実行するための制御中枢を担う経路制御部22と、隣接通信端末(隣接ノード)の情報を管理する隣接ノードテーブル23と、ネットワークトポロジー情報を管理するトポロジーテーブル24と、移動速度などを測定するための移動検知装置25とを備えている。
この構成において、通信端末11は、経路制御部22が無線通信装置21を介して予め設定されたパケットフォーマット構成の隣接発見メッセージ(以下、「HELLOメッセージ」)及びトポロジーメッセージなどの経路制御メッセージ(制御パケット)を送受信し、これらメッセージの情報に基づいて、隣接ノードテーブル23及びトポロジーテーブル24を更新するようになっている。
隣接ノードテーブル23及びトポロジーテーブル24には、隣接ノードのノードIDのほか、その隣接ノードから受信した最新のHELLOメッセージのシーケンス番号(HELLOシーケンス番号)等の情報が更新可能に書き込まれる。
HELLOメッセージの役割は、隣接ノードの発見とその隣接ノードとの間のリンク確立にあり、トポロジーメッセージの役割は、ネットワーク全体のトポロジー(リンク情報)の把握にある。本実施例では、トポロジーメッセージは、ネットワーク上の各ノードにフラッディングされるが、HELLOメッセージは、無線信号の届く1ホップ先の通信端末(隣接ノード)のみで受信され、そこから先のノードへは転送されない。
図3は、HELLOメッセージの構成(パケットフォーマット)例を示す。
図3に示すように、HELLOメッセージには、「メッセージタイプ」、「有効期間」、「メッセージサイズ」、「送信ノードID」、「TTL(Time To Live)」、「ホップカウント(Hop Count)」、「シーケンス番号」、「フラグ」、「広告間隔」、「WILLINGNESS」、「DB(データベース)シグナチャ」、及び「隣接ノード情報」の各フィールドが含まれる。
「メッセージタイプ」はメッセージの種類、「有効期間」はメッセージを管理する時間、
「メッセージサイズ」はメッセージの長さ、「送信ノードID」は送信元通信端末のノードIDを示す。「TTL」はメッセージを転送する最大ホップ数を示し、転送される毎に1つずつ減らされる。「ホップカウント」は、メッセージの送信元通信端末からのホップ数を示し、最初は0に設定され、転送される毎に1つずつ増やされる。「シーケンス番号」は、各メッセージを一意に識別するために割り当てられる識別番号(識別属性情報)であり、メッセージが作成されるたびに1つずつ増やされる。「広告間隔」は、メッセージを広告する時間間隔を示す。「WILLINGNESS」は、隣接ノードの再送信への積極度を示し、0〜7の値を持ち、この値が高いほど、MPRとして選択されやすい。「隣接ノード情報」は、リンクが確立した隣接ノードに関する情報(ノードID等)である。
「メッセージサイズ」はメッセージの長さ、「送信ノードID」は送信元通信端末のノードIDを示す。「TTL」はメッセージを転送する最大ホップ数を示し、転送される毎に1つずつ減らされる。「ホップカウント」は、メッセージの送信元通信端末からのホップ数を示し、最初は0に設定され、転送される毎に1つずつ増やされる。「シーケンス番号」は、各メッセージを一意に識別するために割り当てられる識別番号(識別属性情報)であり、メッセージが作成されるたびに1つずつ増やされる。「広告間隔」は、メッセージを広告する時間間隔を示す。「WILLINGNESS」は、隣接ノードの再送信への積極度を示し、0〜7の値を持ち、この値が高いほど、MPRとして選択されやすい。「隣接ノード情報」は、リンクが確立した隣接ノードに関する情報(ノードID等)である。
これら各フィールドのうち非特許文献1と異なるのは、「フラグ」及び「DBシグナチャ」の両フィールドが追加されていることである。
「フラグ」フィールドには、自分が移動中であるかどうかを示すフラグ(以下、「移動フラグ」と呼ぶ)、及び自分が移動前に前述したMPRに選択されていたかどうかを示すフラグ(以下、「MPR選択フラグ」又は「MPRフラグ」と呼ぶ)が入る。
「DBシグナチャ」フィールドには、自身のトポロジーテーブル24の内容からハッシュ関数などの計算式を用いて計算されたシグナチャ(数値)が入る。このDBシグナチャを互いに隣接するノード間で比較することにより、隣接ノードが持つトポロジーテーブル24の内容と自身の持つトポロジーテーブル24の内容とが互いに一致しているかどうかを判別することが可能であり、一致していない場合はDB同期要求を隣接ノードに送信してDB同期処理を行うようになっている。
図4は、トポロジーメッセージの構成例を示す。
図4に示すように、トポロジーメッセージには、HELLOメッセージには、「メッセージタイプ」、「有効期間」、「メッセージサイズ」、「送信ノードID」、「TTL」、「ホップカウント(Hop Count)」、「シーケンス番号」、「トポロジーシーケンス番号」、「フラグ」、及び「リンク情報」の各フィールドが含まれる。
「メッセージタイプ」はメッセージの種類、「有効期間」はメッセージを管理する時間、
「メッセージサイズ」はメッセージの長さ、「送信ノードID」は送信元ノードのノードIDを示す。「TTL」はメッセージを転送する最大ホップ数を示し、転送される毎に1つずつ減らされる。「ホップカウント」は、メッセージの送信元ノードからのホップ数を示し、最初は0に設定され、転送される毎に1つずつ増やされる。「シーケンス番号」は、各メッセージを一意に識別するために割り当てられる識別番号(識別属性)であり、メッセージが作成されるたびに1つずつ増やされる。
「メッセージサイズ」はメッセージの長さ、「送信ノードID」は送信元ノードのノードIDを示す。「TTL」はメッセージを転送する最大ホップ数を示し、転送される毎に1つずつ減らされる。「ホップカウント」は、メッセージの送信元ノードからのホップ数を示し、最初は0に設定され、転送される毎に1つずつ増やされる。「シーケンス番号」は、各メッセージを一意に識別するために割り当てられる識別番号(識別属性)であり、メッセージが作成されるたびに1つずつ増やされる。
非特許文献1と異なるのは、「フラグ」フィールドが追加されていることと、「リンク情報」フィールド中にHELLOシーケンス番号が追加されたことである。
「フラグ」フィールドには、トポロジーメッセージを無線マルチホップネットワーク1全体に広告するためのフラッディング方式を示すフラグが入る。このフラグには、代替フラッディングフラグが含まれる。この代替フラッディングフラグは、MPRに選択されている隣接ノードが移動することにより、MPRを使ったメッセージのフラッディングが正常に行われない場合にセットされる。代替フラッディングフラグがセットされていない場合は、通常どおりMPRに従ったフラッディングを行い、これがセットされている場合は、MPRによるフラッディングが正常に行われないと判断し、代替方式によるフラッディングを行う。代替フラッディング方式には、例えば非特許文献4に示される方式を用いる。
「リンク情報」フィールドには、リンク情報として、リンクが確立した隣接ノードのノードIDを示すリンクIDのほか、HELLOシーケンス番号が追加されている。このHELLOシーケンス番号には、隣接ノードとの間でリンクを確立した時点でその隣接ノードから受信したHELLOメッセージのシーケンス番号が入る。
経路制御部22は、HELLOメッセージ及びトポロジーメッセージ等の経路制御メッセージを無線通信装置21を介して無線により送受信し、受信したメッセージの情報を隣接ノードテーブル23及びトポロジーテーブル24に格納する。
この経路制御部22は、次のような各動作を行う。
1)移動している他の通信端末12〜14からHELLOメッセージを受信すると、それに合わせて自身(通信端末11)のHELLOメッセージの送信間隔を調整する。
2)他の隣接する通信端末12〜14との間で新たにリンクを確立すると、確立したリンク情報(ノードID)とその時点で他の通信端末12〜14から受信した最新のHELLOメッセージのシーケンス番号をトポロジーメッセージの「リンク情報」フィールド中のリンク情報(リンクID、HELLOシーケンス番号)に入れて広告する。
3)他の通信端末12〜14から新しいトポロジーメッセージを受信すると、そのトポロジーメッセージの「リンク情報」フィールド中のリンク情報(リンクID、HELLOシーケンス番号)に基づいて自身のもつトポロジーテーブル24の情報(ノードID、HELLOシーケンス番号)を更新する。
4)隣接ノードテーブル23の情報(ノードID、HELLOシーケンス番号)とトポロジーメッセージ中のリンク情報(リンクID、HELLOシーケンス番号)とを比較し、同じノードIDで異なるHELLOシーケンス番号をもつ場合で自身の隣接ノードテーブル23の情報がトポロジーメッセージ中のリンク情報よりも古い、即ちHELLOシーケンス番号が古いときは、自身の隣接ノードテーブル23の情報を削除する。
5)移動検知装置25から通知される自身(通信端末11)の移動速度情報などの移動情報をもとに経路制御メッセージ(HELLOメッセージ及びトポロジーメッセージ等)の送信間隔を調整する等の動作を行う。
移動検知装置25は、通信端末の移動速度情報などの移動状態を常時計測し、経路制御部22に伝える。移動検知装置25は、例えば既知のGPS(Global Positioning System)受信機、加速度センサ、速度センサ等の計測器からなり、自身の移動速度などの移動状態を計測可能なものであれば、いずれのタイプでも適用可能である。通信端末11が車両に搭載される車載器の場合、車両に装備されている車速センサからの車速信号を外部入力する構成のものであってもよい。
次に、本実施例の動作について説明する。
まず、通信端末11〜14は、起動すると、定期的にHELLOメッセージを送信する。これにより、通信端末11〜14から直接無線の届く範囲A11〜A14に存在する他の通信端末11〜14(以下、必要に応じて「隣接ノード」と呼ぶ)は、通信端末11からのHELLOメッセージを受信することで通信端末11の存在を知る。
HELLOメッセージを受信した通信端末11〜14は、そのHELLOメッセージに基づき、隣接ノードテーブル23に隣接ノード情報(ノードID等)を書き込む。こうした動作は、先に示した非特許文献1、2と同様である。ただし、これらの方式と本実施例の異なる点は、隣接ノードテーブル23にHELLOメッセージのシーケンス番号(HELLOシーケンス番号)も書き込むことである。このHELLOシーケンス番号の情報は、新たなHELLOメッセージを受け取るたびに更新される。
隣接ノードが発見されると、各通信端末11〜14は、MPRノードの選択を行い、トポロジーメッセージを作成してネットワーク全体に広告する。これも非特許文献1と同様である。非特許文献1と異なる点は、トポロジーメッセージ中の「リンク情報」フィールド内に、その隣接ノードのノードIDを示すリンクIDのほか、そのリンク情報を作成する基となったHELLOメッセージのシーケンス番号(HELLOシーケンス番号)を入れることである。
トポロジーメッセージを受信した通信端末11〜14は、トポロジーメッセージ中の「リンク情報」フィールド内のリンクID及びHELLOシーケンス番号に基づき、トポロジーテーブル24内にそれらのリンク情報(ノードID、HELLOシーケンス番号)を書き込む。ここでも、トポロジーテーブル24内にHELLOシーケンス番号を書き込む点が非特許文献1と異なる。
通信端末11〜14は、起動してから一定時間が経ち、自身が移動していない場合は、HELLOメッセージ及びトポロジーメッセージの送信間隔を設定された最大時間に達するまで少しずつ長くしてゆく。これにより、移動していない通信端末11〜14間ではメッセージの発生が抑制される。
通信端末11〜14が移動を始めると、通信検知装置25は、移動を検知し経路制御部22に通知する。経路制御部22では、検知された移動速度に応じた適切なHELLOメッセージの送信間隔を選択してその送信間隔でHELLOメッセージを送信する。このとき、HELLOメッセージ中に移動フラグを立て、自分が移動中であることを隣接ノードに明示する。また、自身が移動前に他の隣接ノードからフラッディングのMPRノードとして選択されていた場合は、HELLOメッセージ中にMPR選択フラグを立てる。
移動中の通信端末11〜14(以下、必要に応じて「移動ノード」と呼ぶ)からHELLOメッセージを受信した隣接ノードは、自身のHELLOメッセージ送信間隔を移動ノードの送信間隔と一致させ、HELLOメッセージを送信する。隣接ノードが新たに移動ノードとのリンクを確立した場合、隣接ノードは自身の隣接ノードテーブル23及びトポロジーテーブル24のリンク情報(ノードID、HELLOシーケンス番号)を更新し、これらリンク情報をトポロジーメッセージの「リンク情報」フィールドのリンク情報(リンクID、HELLOシーケンス番号)に含め広告する。
この際、移動ノードとリンク確立のためにやりとりした最新のHELLOメッセージのシーケンス番号(HELLOシーケンス番号)を含める。また、移動ノードのHELLOメッセージにMPR選択フラグがセットされていた場合、MPRを使ったメッセージのフラッディングが正常に行われない可能性があるため、トポロジーメッセージの「フラグ」フィールドに代替フラッディングフラグをセットして送信する。隣接ノードが広告したトポロジーメッセージは、フラッディングにより無線マルチホップネットワーク1全体に広告される。
トポロジーメッセージを受信した通信端末11〜14は、そのトポロジーメッセージの「フラグ」フィールドに代替フラッディングフラグがセットされているかどうかをチェックする。セットされていなかった場合は、通常どおりMPRに従ったフラッディングを行う。セットされていた場合は、MPRによるフラッディングが正常に行われないと判断し、代替方式によるフラッディングを行う。代替フラッディング方式には、例えば非特許文献4に示される方式を用いる。
このようにして、隣接ノードが広告したトポロジーメッセージは、フラッディングにより無線マルチホップネットワーク1全体に広告される。
トポロジーメッセージを受信した通信端末11〜14は、そのトポロジーメッセージのリンク情報(リンクID、HELLOシーケンス番号)と自身の持つトポロジーテーブル24内のリンク情報(ノードID、HELLOシーケンス番号)とを比較して、トポロジーメッセージのリンク情報が新しい場合はトポロジーテーブル24の情報を更新する。
さらに、通信端末11〜14は、トポロジーメッセージのリンク情報と自身の隣接ノードテーブル23内の情報とを比較し、自身の隣接ノードと同じノードIDを持つリンク情報に対して、HELLOシーケンス番号を比較する。もし自身の隣接ノードテーブル23に入っているHELLOシーケンス番号が、トポロジーメッセージのリンク情報に入っているシーケンス番号よりも古い場合は、その隣接ノードは自分の通信範囲から移動していなくなったと判断し、隣接ノードテーブル23から該隣接ノードの情報を削除する。さらに、トポロジーテーブル24内のリンク情報を更新し、更新されたリンク情報をトポロジーメッセージの「リンク情報」フィールドに入れて無線マルチホップネットワーク1上に広告する。
次に、上記動作の具体例について、図5〜図14を参照して説明する。
図5は、5つのノード(通信端末)41〜45からなる無線マルチホップネットワークにおいて、ノード41が移動する場合の他のノード42〜45との通信状態を模式的に示す図である。図6は、図5に示す無線マルチホップネットワークの各ノード41〜45のシーケンス図、図8〜図11は、隣接ノードテーブル23又はトポロジーテーブル24の例、図12〜図14は、トポロジーメッセージ中のリンク情報の例をそれぞれ示す。ここで、図5及び図6中のHello(番号)は、HELLOメッセージ及びそのシーケンス番号、図6中のトポロジーMsgは、トポロジーメッセージをそれぞれ示す。
まず、ノード45は、ノード41が移動する前に、ノード41及びノード44との間でHELLOメッセージを交換して互いに隣接関係を確立する(図6参照)。ここで、ノード41とノード45がリンクを確立した時点において、ノード45がノード41から受信したHELLOメッセージのシーケンス番号を80、ノード44から受信したHELLOメッセージのシーケンス番号を150とすると、ノード45の隣接ノードテーブル23には、図8に示すように、2つの隣接ノード情報(ノードID、HELLOシーケンス番号)、即ち(ノード41、80)及び(ノード44、150)がそれぞれ書き込まれる。同様に、ノード45のトポロジーテーブル24には、図9に示すように2つのリンク情報(ノードID、HELLOシーケンス番号)、即ち(ノード41、80)及び(ノード44、150)がそれぞれ書き込まれる。
この場合、ノード45は、図12に示す2つのリンク情報(リンクID、HELLOシーケンス番号)、即ち(ノード41、80)及び(ノード44、150)を含めたトポロジーメッセージを無線マルチホップネットワーク上に広告する。このとき、トポロジーメッセージ中のリンク情報(リンクID、HELLOシーケンス番号)に含めるHELLOシーケンス番号は、そのノードとの間にリンクが確立した時点のHELLOメッセージのシーケンス番号である。このトポロジーメッセージは、図6に示すように、フラッディングにより、ノード44、ノード43、及びノード42と順次転送されていく。
次いで、ノード45とノード41との間でHELLOメッセージが交換され、その交換毎にHELLOメッセージのシーケンス番号が1つずつ増えていき、これに合わせて隣接ノードテーブル23の隣接ノード情報(ノードID、HELLOシーケンス番号)及びトポロジーテーブル24のリンク情報(ノードID、HELLOシーケンス番号)も更新されていく。
このとき、ノード41及びノード45は移動していなかったため、互いのHELLOメッセージの送信間隔は長くなっている。即ち、HELLOメッセージの送信間隔が設定された最大時間に達するまで少しずつ長く調整される。この様子を図7に示す。図7に示すように、ノード45からノード41へのHELLOメッセージの送信間隔は、最大時間Δtmaxに達するまで、Δt1からΔt2へ、さらにΔtnへ順次長く調整されていく(ノード41からノード45についても同様である)。これにより、移動していないノード41とノード45との間では、メッセージ数が抑制される。図示していないノード45とノード44との間のメッセージ交換もこれと同様である。
上記ノード45とノード41との間のHELLOメッセージの交換は、ノード41が移動を開始してノード45の通信範囲を超えるまで行われる。このとき、ノード41からノード45に届いた最新のHELLOメッセージのシーケンス番号が100、またノード44からノード45に届いた最新のHELLOメッセージのシーケンス番号が200とすると、ノード45の隣接ノードテーブル23には、図10に示す2つの隣接ノード情報(ノードID、HELLOシーケンス番号)、即ち(ノード41、100)及び(ノード44、200)が書き込まれている。
次いで、図5に示すように、ノード41が移動を始め、ノード45の通信範囲を超えたとする(図5中の矢印参照)。このとき、移動ノードであるノード41は、自身の移動検知装置25で検出される移動速度に応じてHELLOメッセージの送信間隔を早くし、HELLOメッセージ内の「フラグ」フィールド中に移動フラグを立てて、そのHELLOメッセージを送信する。
ノード41のHELLOメッセージがノード42に届くと、ノード42は、HELLOメッセージ内の「フラグ」フィールド中の移動フラグを見て、自身のHELLOメッセージの送信間隔もノード41の送信間隔に合わせる。
次いで、ノード41とノード42の間でリンク確立が行われる。リンク確立が完了した時点で、ノード42がノード41から受信した最新のHELLOメッセージのシーケンス番号を104とし、ノード42がノード43との間でリンクが確立した時点の最新のHELLOメッセージのシーケンス番号を300とすると(図6参照)、ノード42は、図13に示す2つのリンク情報(リンクID、HELLOシーケンス番号)、即ち(ノード41、104)及び(ノード43、300)を含めたトポロジーメッセージを作成して広告する。このようにノード42を送信ノードとするトポロジーメッセージは、ノード43、ノード44と順次転送され、ノード45にも広告される(図5及び図6参照)。
ノード45は、送信ノードであるノード42からノード43、ノード44を経由して転送されてきたトポロジーメッセージを受信すると、このトポロジーメッセージ中のリンク情報(ノード41、104)と自身の隣接ノードテーブル23中の隣接ノード情報(ノード41、100)(図10)を比較する。比較した結果、自身の隣接ノード情報のほうがHELLOシーケンス番号が古いと判断すると、ノード45は、隣接ノードテーブル23の隣接ノード情報(ノード41、100)を削除する。
このとき、ノード45は、選択的に、隣接ノードテーブル23から該隣接ノード情報を削除する前に、ノード41に向けてユニキャストでHELLOメッセージ送信要求を送信し、ノード41の存在を確認することができる。ここで、ノードを成す通信端末は、自分宛のHELLOメッセージ送信要求を受信した場合、一定時間内にHELLOメッセージを送信しなければならない。このため、もしノード45がノード41から一定時間のうちにHELLOメッセージを受信しなかった場合、ノード41は自分の通信範囲から居なくなったと判断し、隣接ノードテーブル23の隣接ノード情報を削除する。その結果、ノード45の隣接ノードテーブル23には、図11に示すように、ノード41に関する隣接ノード情報(ノード41、100)が削除されて、ノード44に関する隣接ノード情報(ノード44、200)のみとなる。
そして、ノード45は、自身が広告していたリンク情報(ノード41、80)を取り消すため、図14に示す1つのリンク情報(リンクID、HELLOシーケンス番号)、即ち(ノード44、200)を含めた新たなトポロジーメッセージを無線マルチホップネットワーク上に広告する(図6参照)。このようにノード45を送信ノードとして広告されたトポロジーメッセージにより、無線マルチホップネットワーク内の全ノードは、最新のリンク情報を取得して経路の再計算を行い、これにより通信経路を維持することができる。
次に、上記HELLOメッセージの送受信処理及びトポロジーメッセージの送受信処理の具体例について、図15〜図18を参照して説明する。
図15は、HELLOメッセージの送信処理、図16は、HELLOメッセージの受信処理、図17は、トポロジーメッセージの送信処理、図18は、トポロジーメッセージの受信処理の各フローチャートを示す。なお、これら各フローチャートで示される制御プログラムは、本実施例では、例えば前述した通信端末11〜14の経路制御部22内の図示しないメモリ(ROM等)に予め保持され、経路制御部22内の図示しないプロセッサ(CPU)により読み出されて実行される。
最初に、図15を参照して、通信端末11〜14によるHELLOメッセージの送信処理を説明する。
まず、通信端末11〜14は、予め設定された送信間隔が経過したか否かを判断し(ステップS11)、YES(経過した)の場合は、HELLOメッセージのシーケンス番号に1を加える処理を行い(ステップS12)、NOの場合は、ステップS11の処理に戻る。
次いで、自身の移動検知装置25にて検知された移動速度情報に基づいて、自身が移動しているかどうか判断し(ステップS13)、YES(移動している)と判断されると、検知された移動速度に合わせてHELLOメッセージの送信間隔を選択する(ステップS14)。この選択は、移動速度が大きい程、HELLOメッセージの送信間隔が短くなるように、例えば移動速度とHELLOメッセージの送信間隔との対応関係を予め規定した移動速度−メッセージ送信間隔の対応テーブル等を用いて行われる。
次いで、HELLOメッセージの「フラグ」フィールド中に移動フラグを立て(ステップS15)、自身が他の通信端末11〜14のMPRノードに選択されていればHELLOメッセージの「フラグ」フィールド中にMPR選択フラグ(MPRフラグ)を立てて(ステップS16)、HELLOメッセージを送信し(ステップS17)、最初のステップS11の処理に戻る。
また、ステップS13にてNO(移動していない)と判断されると、HELLOメッセージの送信間隔が予め設定された最大値Δtmaxが否かを判断し(ステップS18)YES(最大値である)の場合は、そのままステップS17に移行し、NO(最大値でない)の場合は、HELLOメッセージの送信間隔が長くなるように調整し(ステップS19)、ステップ17に移行する。
次に、図16を参照して、通信端末11〜14によるHELLOメッセージの受信処理を説明する。
まず、通信端末11〜14は、HELLOメッセージを受信したか否かを判断し(ステップS21)、YES(受信した)と判断されると、HELLOメッセージの「フラグ」フィールド中に移動フラグが立っているか否かを判断する(ステップS22)。
これによりYES(移動フラグが立っている)と判断されると、HELLOメッセージの送信間隔が自身のものより短いか否かを判断し(ステップS23)、これでYES(送信間隔が短い)と判断されると、自らのHELLOメッセージの送信間隔を、受信したHELLOメッセージの送信間隔に合わせ(ステップS24)、相手のHELLOメッセージ中のDBシグナチャと自身のDBシグナチャが一致しているか否かを判断する(ステップS25)。これにより、NO(一致していない)と判断されると、相手とのトポロジーテーブル24との同期処理を行い(ステップS26)、最初のステップS21の処理に戻る。また、上記ステップS21〜S23の各処理でNOの場合、又は上記ステップS26でYESの判断は、最初のステップS21の処理に戻る。
なお、DBシグナチャは、トポロジーテーブル24からハッシュ関数などのある計算式で計算された数値のことを指す。この情報をHELLOメッセージに入れておくことで、隣接ノードが保持するトポロジーテーブル24の情報と自分の持つ情報が一致しているかどうかを判別することができる。本実施例の無線マルチホップネットワークでは、トポロジーメッセージは長い間隔で広告するので、新たにネットワークに入ってきた無線ノードなどは、全体のリンク情報を取得するために、隣接ノードから一気にトポロジー情報を受け取るほうが効率がよいので、こうした仕組みが必要になる。
次に、図17を参照して、通信端末11〜14によるトポロジーメッセージの送信処理を説明する。
まず、通信端末11〜14は、自身のトポロジーテーブル24を参照して、リンク情報の変化、即ち新たな隣接ノードの発見や隣接ノードの消滅があったか否かを判断する(ステップS31)。
これでYES(リンク情報の変化があり)と判断された場合は、そのリンク情報からトポロジーメッセージを作成し(ステップS32)、トポロジーメッセージのシーケンス番号に1を加え(ステップS33)、リンクを確立している隣接ノードの中でHELLOメッセージの「フラグ」フィールド中にMPR選択フラグを立てているノードが存在するか否かを判断する(ステップS34)。これでYES(存在する)の場合は、トポロジーメッセージの「フラグ」フィールド中に代替フラッディングフラグを立てて(ステップS35)、トポロジーメッセージを送信する(ステップS36)。また、NO(存在しない)の場合は、そのままステップS36の処理に移行する。
一方、上記ステップ31の処理でNO(リンク情報の変化なし)と判断された場合は、予め設定された送信時間が経過したか否かを判断する(ステップS37)。これでYES(経過した)と判断されると、移動検知装置25にて検出された移動速度情報に基づいて、自身が移動しているかどうか判断する(ステップS38)。これでYES(移動している)の場合は、トポロジーメッセージの送信間隔を初期値に戻し(ステップS39)、ステップS32の処理に移行する。また、NO(移動していない)の場合は、トポロジーメッセージの送信間隔が予め設定された最大値か否かを判断する(ステップS40)。これでYES(最大値である)の場合は、そのままステップS32の処理に移行し、NO(最大値でない)の場合は、トポロジーメッセージの送信間隔を長く調整し(ステップS41)、ステップS32の処理に移行する。
次に、図18を参照して、通信端末11〜14によるトポロジーメッセージの受信処理を説明する。
まず、通信端末11〜14は、トポロジーメッセージを受信したか否かを判断し(ステップS51)、YES(受信した)の場合は、トポロジーメッセージ中に新しいリンク情報が含まれているか否かを判断する(ステップS52)。
これでYES(含まれている)の場合は、そのリンク情報に基づいて、トポロジーメッセージを更新し(ステップS53)、自隣接ノードと同じリンクIDを持つリンク情報があるか否かを判断する(ステップS54)。
これでYES(ある)の場合は、隣接ノードテーブル23のHELLOシーケンス番号より新しいか否かを判断する(ステップS55)。これでYES(新しい)の場合は、隣接ノードにHELLOメッセージをユニキャストで送る(ステップS56)。その後、その隣接ノードからHELLOメッセージを受信したか否かを判断し(ステップS57)、NO(受信していない)の場合は、一定時間が経過したか否かを判断する(ステップS59)。これによりYES(経過した)の場合は、隣接ノードテーブル23から該当する隣接ノードの情報を削除し(ステップS59)、トポロジーメッセージを送信し(ステップS60)、上記ステップS51の処理に戻る。
上記ステップS51、S52、S54、S55の各処理でNOの場合、又は上記ステップS57の処理でYESの場合は、上記ステップS51の処理に戻る。
従って、本実施例によれば、通信端末の移動状態などに応じて制御メッセージの送信間隔を調整することによって、移動の少ない通信端末はメッセージを長い間隔で送信することにより、全体の制御メッセージ量を抑え、帯域の少ないネットワークでも利用することが可能になる。また、リンク情報が更新された場合、送信されるトポロジーメッセージ中にHELLOメッセージのシーケンス番号を含めることにより、移動の際に生じる隣接ノードの不一致をすばやく解決し、正常な経路制御を継続することが可能になる。このようにして、制御負荷を抑えながら移動に適応した無線マルチホップネットワークにおける経路制御が可能となる。
上記実施例1では、通信端末(ノード)の移動速度に応じてメッセージ送信間隔の調整を行ったが、本実施例は、移動速度の検知機能が利用できない通信端末や状況(GPS電波が届かない屋内等)において、メッセージ送信間隔の調整をユーザからの指示(通信端末のボタン押下等)によって調整を行うものである。
本実施例では、通信端末を持ったユーザは、自身の移動速度(徒歩、電車、車(一般道、高速道路)等)や通信継続要求度(切らずに通信を継続したい、たまに切れても良い、移動中は通信できなくても良い)等の情報を端末に入力する。通信端末は、入力されたそれらの条件から最適なHelloメッセージの送信間隔を計算して調整する。それ以外の動作については、上記実施例1と同様である。
本実施例によれば、上記実施例1と同様の効果に加え、移動速度の検知機能が利用できない通信端末や状況であっても、メッセージ送信間隔を調整できるといった利点がある。
上記実施例1では、通信端末(ノード)の移動速度に応じてメッセージ送信間隔の調整を行ったが、本実施例は、メッセージ送信間隔の調整をネットワーク管理ノードからの指示によって調整を行うものである。
本実施例のネットワーク構成を図19に示す。
図19に示す無線マルチホップネットワークにおいて、ネットワーク管理ノード51は、ネットワーク全体の端末数や利用可能帯域の情報を保持している。このネットワーク管理ノード51は、通信端末のトポロジー情報などを収集し、通信経路の更新頻度などの情報を蓄積し、こうした情報をもとに、そのネットワークに最適なHelloメッセージの送信間隔や、トポロジーメッセージの広告間隔、移動端末のHelloメッセージの送信間隔等の制御パラメータを計算する機能を有する。また、このネットワーク管理ノード51は、計算した制御パラメータ情報を入れた制御パラメータ指示パケット61をネットワーク全体にフラッディングする。
通信端末71〜73は、制御パラメータ指示パケット61を転送し、ネットワーク管理ノード51と直接無線で通信できないノード(通信端末74)に対してもパケットを届ける。制御パラメータ指示パケットを受信した通信端末71〜74は、そこで指示されたパラメータに従いHelloメッセージの送信間隔などを調整する。それ以外の動作については、上記実施例1と同様である。本実施例でも、上記実施例1と同様の効果が得られる。
なお、上記実施例1では、非特許文献1の方式をベースとしたが、非特許文献2の方式をベースとして同様の拡張を行うことも可能である。
また、上記実施例1では、通信端末(ノード)の移動速度に応じてメッセージ送信間隔の調整を行ったが、通信端末の通信状況によって調整を行うことも可能である。例えば、通信端末が頻繁にデータパケットを送信している場合、その通信端末の隣接ノードはHELLOメッセージを受信しなくてもその通信端末の存在が確認できる。そこで、データパケットを頻繁に送信している通信端末は、HELLOメッセージの送信間隔を長くすることができる。言い換えると、通信端末は、データパケットの送信頻度が大きい程、HELLOメッセージの送信頻度が小さくなるように調整する。それ以外の動作については、上記実施例1と同様である。この場合でも、上記実施例1と同様の効果が得られる。
1 無線マルチホップネットワーク
11〜14 通信端末(ノード)
21 無線通信装置
22 経路制御部
23 隣接ノードテーブル
24 トポロジーテーブル
25 移動検知装置
11〜14 通信端末(ノード)
21 無線通信装置
22 経路制御部
23 隣接ノードテーブル
24 トポロジーテーブル
25 移動検知装置
Claims (16)
- 複数の通信端末間で無線により制御パケットを交換して該複数の通信端末をノードとするマルチホップネットワークを形成し、そのマルチホップネットワークのトポロジー情報を保持し、そのトポロジー情報に基づいて前記複数の通信端末間で送受信されるパケットの通信経路を制御する無線マルチホップネットワークの通信経路制御方法において、
前記通信端末が、自通信端末の少なくとも移動速度を含む移動情報を検知するステップと、
前記通信端末が、検知された前記移動情報に応じて、前記マルチホップネットワーク上の他通信端末との間の前記制御パケットの交換頻度を、前記自通信端末の移動状況に応じて制御負荷が少なくなるように調整するステップと、
前記通信端末が、前記他通信端末からの前記制御パケットに基づいて前記自通信端末が保持する前記マルチホップネットワークのトポロジー情報を更新するステップとを有することを特徴とする無線マルチホップネットワークの通信経路制御方法。 - 前記通信端末が、利用者からの指示情報を入力するステップと、
前記通信端末が、前記指示情報に応じて前記制御パケットの交換頻度を調節するステップとをさらに有することを特徴とする請求項1記載の無線マルチホップネットワークの通信経路制御方法。 - 前記通信端末が、前記マルチホップネットワーク上のネットワーク管理装置からの指示情報を受信するステップと、
前記通信端末が、前記指示情報に応じて前記制御パケットの交換頻度を調節するステップとをさらに有することを特徴とする請求項1記載の無線マルチホップネットワークの通信経路制御方法。 - 前記通信端末が、前記自通信端末のデータパケットの送信頻度を含む通信状況を検知するステップと、
前記通信端末が、前記通信状況に応じて、前記制御パケットの交換頻度を、前記データパケットの送信頻度が大きい程、小さくなるように調整するステップとをさらに有することを特徴とする請求項1記載の無線マルチホップネットワークの通信経路制御方法。 - 前記通信端末が、前記マルチホップネットワーク上の隣接通信端末との間で前記制御パケットとして隣接発見メッセージを前記交換頻度で交換するステップと、
前記通信端末が、前記隣接発見メッセージの交換により前記隣接通信端末との間でリンクが確立されたときに、該隣接通信端末の端末特定情報に加え、前記リンクが確立された時点で前記隣接通信端末から受けた前記隣接発見メッセージの識別属性情報を、前記トポロジー情報に含まれるリンク情報として保持するステップと、
前記通信端末が、前記制御パケットとして、前記隣接通信端末の端末特定情報及び前記隣接発見メッセージの識別属性情報から成るリンク情報を含むネットワークトポロジーメッセージを前記マルチホップネットワーク上に広告するステップとをさらに有することを特徴とする請求項1記載の無線マルチホップネットワークの通信経路制御方法。 - 前記通信端末が、前記他通信端末から前記リンク情報を含むネットワークトポロジーメッセージを受信したときに、該ネットワークトポロジーメッセージのリンク情報に含まれる前記隣接発見メッセージの識別属性情報と自通信端末が保持するリンク情報に含まれる前記隣接発見メッセージの識別属性情報とを前記隣接通信端末毎に比較するステップと、
前記通信端末が、前記自通信端末が保持するリンク情報に含まれる前記隣接発見メッセージの識別属性情報よりも前記トポロジーメッセージのリンク情報に含まれる前記隣接発見メッセージの識別属性情報のほうが新しい場合、前記自通信端末が保持しているリンク情報を更新するステップとをさらに有することを特徴とする請求項5に記載の無線マルチホップネットワークの通信経路制御方法。 - 前記通信端末が、前記ネットワークトポロジーメッセージを広告するときに、前記トポロジー情報に含まれるリンク情報を変化させる原因となった前記隣接通信端末の状態に応じて、該ネットワークトポロジーメッセージの広告方式を選択するステップをさらに有することを特徴とする請求項5に記載の無線マルチホップネットワークの通信経路制御方法。
- 前記通信端末が、自通信端末が保持するリンク情報よりも新しいリンク情報を持つトポロジーメッセージを受信したときに、該リンク情報に対応する隣接通信端末に対して隣接発見メッセージ送信要求を送信し、これに対する該隣接通信端末からの応答有無に応じて該隣接通信端末との接続を確認するステップをさらに有することを特徴とする請求項6に記載の無線マルチホップネットワークの通信経路制御方法。
- 複数の通信端末間で無線により制御パケットを交換して該複数の通信端末をノードとするマルチホップネットワークを形成し、そのマルチホップネットワークのトポロジー情報を保持し、そのトポロジー情報に基づいて前記複数の通信端末間で送受信されるパケットの通信経路を制御する無線マルチホップネットワークで用いる通信端末において、
自通信端末の少なくとも移動速度を含む移動情報を検知する手段と、
検知された前記移動情報に応じて、前記マルチホップネットワーク上の他通信端末との間の前記制御パケットの交換頻度を、前記自通信端末の移動状況に応じて制御負荷が少なくなるように調整する手段と、
前記他通信端末からの前記制御パケットに基づいて前記自通信端末が保持する前記マルチホップネットワークのトポロジー情報を更新する手段とを有することを特徴とする無線マルチホップネットワークで用いる通信端末。 - 利用者からの指示情報を入力する手段と、
前記指示情報に応じて前記制御パケットの交換頻度を調節する手段とをさらに有することを特徴とする請求項9記載の無線マルチホップネットワークで用いる通信端末。 - 前記マルチホップネットワーク上のネットワーク管理装置からの指示情報を受信する手段と、
前記指示情報に応じて前記制御パケットの交換頻度を調節する手段とをさらに有することを特徴とする請求項9記載の無線マルチホップネットワークで用いる通信端末。 - 前記自通信端末のデータパケットの送信頻度を含む通信状況を検知する手段と、
前記通信状況に応じて、前記制御パケットの交換頻度を、前記データパケットの送信頻度が大きい程、小さくなるように調整する手段とをさらに有することを特徴とする請求項9記載の無線マルチホップネットワークで用いる通信端末。 - 前記マルチホップネットワーク上の隣接通信端末との間で前記制御パケットとして隣接発見メッセージを前記交換頻度で交換する手段と、
前記隣接発見メッセージの交換により前記隣接通信端末との間でリンクが確立されたときに、該隣接通信端末の端末特定情報に加え、前記リンクが確立された時点で前記隣接通信端末から受けた前記隣接発見メッセージの識別属性情報を、前記トポロジー情報に含まれるリンク情報として保持する手段と、
前記制御パケットとして、前記隣接通信端末の端末特定情報及び前記隣接発見メッセージの識別属性情報から成るリンク情報を含むネットワークトポロジーメッセージを前記マルチホップネットワーク上に広告する手段とをさらに有することを特徴とする請求項9記載の無線マルチホップネットワークで用いる通信端末。 - 前記他通信端末から前記リンク情報を含むネットワークトポロジーメッセージを受信したときに、該ネットワークトポロジーメッセージのリンク情報に含まれる前記隣接発見メッセージの識別属性情報と自通信端末が保持するリンク情報に含まれる前記隣接発見メッセージの識別属性情報とを前記隣接通信端末毎に比較する手段と、
前記自通信端末が保持するリンク情報に含まれる前記隣接発見メッセージの識別属性情報よりも前記トポロジーメッセージのリンク情報に含まれる前記隣接発見メッセージの識別属性情報のほうが新しい場合、前記自通信端末が保持しているリンク情報を更新する手段とをさらに有することを特徴とする請求項13に記載の無線マルチホップネットワークで用いる通信端末。 - 前記ネットワークトポロジーメッセージを広告するときに、前記トポロジー情報に含まれるリンク情報を変化させる原因となった前記隣接通信端末の状態に応じて、該ネットワークトポロジーメッセージの広告方式を選択する手段をさらに有することを特徴とする請求項13に記載の無線マルチホップネットワークで用いる通信端末。
- 自通信端末が保持するリンク情報よりも新しいリンク情報を持つトポロジーメッセージを受信したときに、該リンク情報に対応する隣接通信端末に対して隣接発見メッセージ送信要求を送信し、これに対する該隣接通信端末からの応答有無に応じて該隣接通信端末との接続を確認する手段をさらに有することを特徴とする請求項14に記載の無線マルチホップネットワークで用いる通信端末。
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