JP2005164553A - 液体クロマトグラフィー用充填剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 支持坦体上のイオン交換基による影響を制御、低減することにより、イオン交
換液体クロマトグラフィーにおいて、測定対象物質が非特異的に吸着することを抑制し、
高い測定精度及び再現性を奏し、かつ、強度に優れる液体クロマトグラフィー用充填剤を
提供する。
【解決手段】 陽イオン交換基若しくは陰イオン交換基を有するアクリル酸エステル系重
合体又はメタクリル酸エステル系重合体からなる支持担体に、前記支持坦体のイオン交換
基とは逆極のイオン性荷電部を複数有する水溶性高分子化合物が固定化されてなる液体ク
ロマトグラフィー用充填剤であって、前記水溶性高分子化合物がイオン化した場合の電荷
の総量が、前記支持坦体がイオン化した場合の電荷の総量より小さい液体クロマトグラフ
ィー用充填剤。
【選択図】 なし

Description

本発明は、測定対象物質が非特異的に吸着することを抑制し、高い測定精度及び再現性を
奏し、かつ、強度に優れる液体クロマトグラフィー用充填剤に関する。
液体クロマトグラフィー用充填剤の強度を低下させることなく、イオン交換基を有する充
填剤の表面を親水化処理し、特にタンパク質が測定対象物質である場合の非特異吸着を抑
制する技術としては、すでに特許文献1に記載の技術が知られている。
しかしながら、昨今の高速高精度測定が要求される状況において、従来の液体クロマトグ
ラフィー用充填剤を充填したカラムでは、測定回数を増す毎に、充填剤表面に親水化の為
に固定化されたタンパク質がごく微量ずつではあるが脱離してゆき、充填剤の親水化度が
低下して、タンパク質等の測定対象物質の非特異吸着を引き起こすとともに、充填剤の支
持坦体上にあるイオン交換基による電荷の影響も強まり、測定対象物質と充填剤との静電
的相互作用がカラム使用初期に比較して強まり、ついには測定対象物質の保持時間が遅延
し、測定精度、測定再現性が低下してしまうという問題があった。
特開2001−91505号
本発明は、上記現状に鑑み、支持坦体上のイオン交換基による影響を制御、低減すること
により、イオン交換液体クロマトグラフィーにおいて、測定対象物質が非特異的に吸着す
ることを抑制し、高い測定精度及び再現性を奏し、かつ、強度に優れる液体クロマトグラ
フィー用充填剤を提供することを目的とする。
本発明は、陽イオン交換基若しくは陰イオン交換基を有するアクリル酸エステル系重合体
又はメタクリル酸エステル系重合体からなる支持担体に、上記支持坦体のイオン交換基と
は逆極のイオン性荷電部を複数有する水溶性高分子化合物が固定化されてなる液体クロマ
トグラフィー用充填剤であって、上記水溶性高分子化合物がイオン化した場合の電荷の総
量が、上記支持坦体がイオン化した場合の電荷の総量より小さい液体クロマトグラフィー
用充填剤である。
以下に本発明を詳述する。
本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤は、支持担体に水溶性高分子化合物が固定化さ
れてなるものである。
本発明で用いられる支持担体は、陽イオン交換基若しくは陰イオン交換基を有するアクリ
ル酸エステル系重合体又はメタクリル酸エステル系重合体からなる。
上記陽イオン交換基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等が挙
げられ、上記陰イオン交換基としては、例えば、3級又は4級アミノ基等が挙げられる。
上記支持担体が有するイオン交換基は、陽イオン交換基であっても、陰イオン交換基であ
ってもよいが、なかでも、本発明においては、上記支持担体が、陽イオン交換基を有する
ことが好ましい。この場合、本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤は、カチオン交換
樹脂として機能する。
上記支持担体にイオン交換基を導入する方法としては特に限定されず、公知の方法を用い
ることができ、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系重合体を調製後、その(メタ)ア
クリル酸エステルとイオン交換基を有する化合物とを置換する方法、又は、イオン交換基
を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステル等を混合し、重合開始剤の存在下に重合
する方法等を用いることができる。また、特公平8−7197号公報に記載のように、(
メタ)アクリル酸エステル系重合体を調製したあと、イオン交換基を有する単量体を添加
して、重合体粒子の表面付近に、イオン交換基を有する単量体を重合させる方法を用いる
こともできる。
上記支持担体としては、なかでも、1分子中にスルホン酸基を1個以上含む(メタ)アク
リル酸エステル(A)と、1分子中にビニル基を2個以上有する(メタ)アクリル酸エス
テル(B)とを構成単位とする重合体が好適に用いられる。
上記1分子中にスルホン酸基を1個以上含む(メタ)アクリル酸エステル(A)としては
、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプ
ロピル(メタ)アクリル酸、及び、これらの誘導体や塩類等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステル(A)としては、分子中にベンゼン骨格を有さない単量
体がより好ましい。ベンゼン骨格は、特に生体関連物質の分析等では、タンパク質等試料
中の物質の非特異吸着を誘発するので好ましくない。
上記(メタ)アクリル酸エステル(A)の使用量は、重合時において(メタ)アクリル酸
エステル(B)100重量部に対して下限10重量部、上限200重量部の範囲内で添加
することが好ましい。10重量部未満であると、得られる重合体のカチオン交換容量が小
さすぎて、被測定物質との充分なカチオン交換反応が行われにくくなり、200重量部を
超えると、得られる重合体の親水性が大きくなりすぎて、重合中に凝集が発生しやすくな
る。
上記(メタ)アクリル酸エステル(B)としては、イオン交換基を有さないか又は有して
いても微量である単量体であって、(メタ)アクリル酸エステル(A)よりも疎水性であ
るものが好ましい。このような、(メタ)アクリル酸エステル(B)としては、例えば、
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ
(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペン
チルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(
メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチ
ロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリ
レート、及び、これらの単量体の誘導体等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよ
く、2種以上が併用されてもよい。
上記支持担体に用いられる重合体には、必要に応じて、上記(メタ)アクリル酸エステル
(A)、(B)以外の架橋性単量体(C)、非架橋性単量体(D)が構成単位の一部とし
て混合されていてもよい。
上記架橋性単量体(C)としては、1分子中に水酸基を1個以上含む単量体であり、一般
式(1); R 1(CH2 OCOCR2 =CH2 2 で表されるものが好適に用いられる
。上記一般式(1)中R 1は、直鎖部の炭素原子数が1〜10の整数であって、水素原子
が1個以上の水酸基で置換されているアルキレン基、又は、直鎖部の炭素原子数と酸素原
子数との和が2〜10の整数であって、水素原子が1個以上の水酸基で置換されているオ
キサアルキレン基を表す。上記一般式(1)中R2 は、水素原子又はメチル基を表す。
なお、上記オキサアルキレン基は、アルキレン基の少なくとも一つのメチレン基(−CH
2 −)をエーテル基(−O−)に置換したものを意味する。
上記一般式(1)で表される架橋性単量体(C)として、例えば、1分子中に1個以上の
水酸基と2個以上のビニル基を有する単量体が挙げられ、このような単量体としては、例
えば、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリルロキシプロパン、1,10−ジ(メ
タ)アクリロキシ−4,7−ジオキサデカン−2,9−ジオール、1,10−ジ(メタ)
アクリロキシ−5−メチル−4,7−ジオキサデカン−2,9−ジオール、1,11−ジ
(メタ)アクリロキシ−4,8−ジオキサウンデカン−2,6,10−トリオール等が挙
げられる。
上記架橋性単量体(C)の使用量は、重合時において(メタ)アクリル酸エステル(B)
100重量部に対して、下限5重量部、上限100重量部の範囲内で添加することが好ま
しい。5重量部未満であると、試料中のタンパク質等の生体成分の非特異吸着を抑制する
効果が充分に得られにくくなり、100重量部を超えると、重合体の親水性が増大し、重
合中に凝集が発生しやすくなる。
上記非架橋性単量体(D)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチ
ルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン誘導体類;塩化ビニル等の脂肪族系単量
体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のビニルエステル類;(メ
タ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ
)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリ
ルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸
誘導体類が挙げられる。
上記非架橋性単量体(D)の使用量は、上記(メタ)アクリル酸エステル(B)と必要に
応じて架橋性単量体(C)とをあわせた100重量部に対して100重量部以下であるこ
とが好ましい。上記非架橋性単量体(D)の量が100重量部を超えると、重合体粒子内
の空隙が大きくなるため、膨潤、収縮等がおこりやすくなり、複数の溶離液を用いた場合
等に溶離液への平衡化に長時間を要するようになる。
上記支持担体に用いられる重合体の重合方法としては、公知の重合方法が用いられ、例え
ば、懸濁重合、乳化重合、分散重合等により製造され得る。更に、例えば、上記(メタ)
アクリル酸エステル(A)及び(B)を混合し、これに重合開始剤を所定量添加した後、
分散媒中に添加して昇温し重合する方法を用いることができる。また上記(メタ)アクリ
ル酸エステル(B)を用いて架橋性重合体粒子を調製した後、該重合体粒子に重合開始剤
を含浸させた後、上記(メタ)アクリル酸エステル(A)を分散場媒中に添加して重合す
る方法を用いることもできる。
更に、上記支持担体に用いられる重合体の重合方法として、多段階反応による微粒子の合
成方法が用いられてもよい。すなわち、あらかじめ重合された粒度分布の揃った重合体粒
子(E)に、上記(メタ)アクリル酸エステル(A)及び(B)、並びに、必要に応じて
単量体(C)及び/又は(D)を吸収させて重合を進めることにより、粒径がより均一化
される。
上記重合体粒子(E)とは、粒度分布の揃った重合体粒子あり、例えば、(メタ)アクリ
ル酸メチル重合体、(メタ)アクリル酸エチル重合体等が挙げられる。
上記重合体粒子(E)の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、例えば
、乳化重合、ソープフリー重合、分散重合、懸濁重合等が挙げられる。
上記重合体粒子(E)の平均粒径は、0.1〜10μmであることが好ましく、粒径のば
らつきは、変動係数(CV)(=標準偏差÷平均粒径×100)として40%以下が好ま
しい。
上記重合体粒子(E)の使用量は、(メタ)アクリル酸エステル(B)と必要に応じて架
橋性単量体(C)とをあわせた100重量部に対して下限0.5重量部、上限100重量
部の範囲内であることが好ましい。
上記重合開始剤としては特に限定されず、水溶性又は油溶性の公知のラジカル重合開始剤
が用いられ、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫
酸塩;クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキ
サイド、オクタノイルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、アセチル
パーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート
、t−ブチルパーオキシイソブチレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキ
サイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサ
イド等の有機過酸化物;2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,
4−ジメチルバレロニトリル)、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2−
アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等のア
ゾ化合物等が挙げられる。
上記重合開始剤の使用量は、(メタ)アルリル酸エステル(B)と必要に応じて架橋性単
量体(C)とをあわせた100重量部に対し、下限0.05重量部、上限5重量部の範囲
内であることが好ましい。0.05重量部未満であると、重合反応が不充分となったり、
重合に長時間を要することがあり、5重量部を超えると、急激な反応の進行により、凝集
物が発生することがある。
上記重合開始剤は、上記単量体(A)〜(D)に溶解して用いてもよい。
上記支持担体に用いられる重合体は、その製造時に多孔質化剤が用いられて製造されるこ
とにより、多孔質化されていてもよい。多孔質化された重合体を製造する場合は、多孔質
化剤として、単量体を溶解するが重合体を溶解しない有機溶媒を重合反応系に添加して重
合すればよい。このような多孔質化剤としては公知のものを使用することができ、例えば
、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、ドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ヘ
キサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の飽和炭化水素;イソアミルアルコール、ヘキシ
ルアルコール、オクチルアルコール等のアルコール類等が挙げられる。
上記多孔質化剤の使用量は、上記(メタ)アクリル酸エステル(B)と必要に応じて架橋
性単量体(C)とをあわせた100重量部に対して、100重量部以下であることが好ま
しい。100重量部を超えると、得られる重合体の耐圧性が低下し、膨潤、収縮し易くな
り、また、重合中に凝集が発生し易くなる。
上記支持担体の平均粒径は、下限0.5μm、上限100μmの範囲内であることが好ま
しく、粒径のばらつきは変動係数(CV)(=標準偏差÷平均粒径×100)として15
%以下であることが好ましい。このような、粒径の支持担体は、重合によって得られた重
合体粒子を、必要に応じて分級することにより得られる。分級には、乾式又は湿式等公知
の方法が用いられ得る。
本発明で用いられる水溶性高分子化合物は、支持坦体のイオン交換基と逆極のイオン性荷
電部を複数有する水溶性の高分子化合物である。即ち、上記支持担体が陽イオン交換基を
有する場合、上記支持担体自身は負電荷を有するので、上記水溶性高分子化合物が有する
イオン性荷電部は、正電荷を有することとなる。
上記水溶性高分子化合物としては、例えば、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヒアルロン
酸等のムコ多糖類;ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(
メタ)アクリル酸、ポリビニルピロリドン等の合成高分子、又は、それらの塩が挙げられ
る。上記塩としては、ナトリウム、カリウム等との塩が挙げられる。
上記水溶性高分子化合物としては、なかでも、アクリル酸エステル系重合体又はメタクリ
ル酸エステル系重合体が好適に用いられる。上記支持坦体がアクリル酸エステル系重合体
又はメタクリル酸エステル系重合体であるので、それに近い分子組成であることが好まし
い。
上記アクリル酸エステル系重合体又はメタクリル酸エステル系重合体としては、重合形態
は特に限定されず、ホモポリマー、コポリマー、ブロックポリマー、ランダムポリマー等
のいずれであってもよい。
上記水溶性高分子化合物は、4級アンモニウム基又はスルホン酸基を有することが好まし
い。4級アンモニウム基は陰イオン交換基として機能し、スルホン酸基は陽イオン交換基
として機能する。本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤の使用pH領域は、pH5〜
8と広範囲にわたるので、4級アンモニウム基又はスルホン酸基を有することにより、周
囲のpH変化によらず安定してイオン交換機能を保持することができる。また、上記水溶
性高分子化合物中の構成単位(モノマー残基)中に、その水溶性高分子化合物のイオン性
荷電部と逆極である、アニオン性又はカチオン性のものが含まれていてもよい。
上記水溶性高分子化合物は、重量平均分子量が500万以上であることが好ましい。重量
平均分子量が500万以上であると、水溶性高分子化合物表面のイオン性荷電部と、支持
坦体表面のイオン交換基とが、ポリイオンコンプレックスを形成し、安定的に強固に結合
することができる。
上記支持担体に水溶性高分子化合物を固定化する方法としては、以下の2つの方法が挙げ
られる。
第一の方法は、上記支持担体をカラムに充填した状態で水溶性高分子化合物を固定化する
方法であり、第二の方法は、上記支持担体をカラムに充填しない状態で水溶性高分子化合
物を固定化する方法である。
第一の方法により固定化処理を行なう場合、上記支持担体をカラムに充填し、当該カラム
へ水溶性高分子化合物の水溶液を送液する。流速、流量等は適宜選択することができる。
第二の方法により固定化処理を行なう場合、上記支持担体と水溶性高分子化合物の水溶液
とを、適当な大きさ、形状を有する容器に入れ、これらを分散させ、一定時間経過後、処
理された液体クロマトグラフィー用充填剤を回収する。得られた液体クロマトグラフィー
用充填剤を回収する方法としては特に限定されず、例えば、フィルターによる分離、遠心
沈降等を利用した分離等が挙げられる。
上記支持担体に固定化する水溶性高分子化合物の量は、上記水溶性高分子化合物がイオン
化した場合の電荷の総量が、上記支持坦体がイオン化した場合の電荷の総量より小さくな
るように調整する。本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤は、上記水溶性高分子化合
物がイオン化した場合の電荷の総量が、上記支持坦体がイオン化した場合の電荷の総量よ
り小さいことにより、充填剤全体としては支持担体のイオン交換性が機能するようにしつ
つ、支持坦体表面のイオン交換基量を必要量だけ定量的に残存させ、支持坦体上のイオン
交換基量を制御、低減することができる。
本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤は、支持坦体の表面が親水化処理されているこ
とが好ましい。上記支持坦体表面の親水性が増大することにより、特にタンパク質等の測
定対象物質が非特異的に吸着することを抑制し、測定精度を向上させることができる。
本発明において、「支持担体の表面が親水化処理される」とは、以下に示す(1)〜(4
)の方法のうち、少なくとも1つ以上の方法が支持担体に施されることを意味する。なお
、下記の(1)〜(4)の処理は適宜2つ以上組み合わせて用いてもよい。
(1)スラリー調製時における親水化処理
上記支持担体に分散媒を注入する等によりスラリーを調製し、該スラリー中に下限0.0
001重量%、上限10重量%、好ましくは下限0.001重量%、上限1重量%の範囲
内で親水基を有する化合物を溶解させ、0.5時間以上、好ましくは2時間以上攪拌する
(2)充填時における親水化処理
上記支持担体中に下限0.0001重量%、上限10重量%、好ましくは下限0.001
重量%、上限1重量%の範囲内で親水基を有する化合物を溶解させてカラム本体に充填す
る。充填後、0.5時間以上、好ましくは2時間以上放置する。
(3)充填後のカラムに親水基を有する化合物の溶液を通液させることによる親水化処理
上記支持担体を充填したカラムに、下限0.0001重量%、上限10重量%、好ましく
は下限0.001重量%、上限1重量%の範囲内で親水基を有する化合物を溶解させた溶
液を、流速が下限0.01mL/min、上限10mL/min、好ましくは下限0.1
mL/min、上限5mL/minで1分以上通液させ、通液後、0.5時間以上、好ま
しくは2時間以上放置する。
(4)充填後のカラムに親水基を有する化合物の溶液を注入させることによる親水化処理
上記支持担体を充填したカラムに下限0.01重量%、上限10重量%、好ましくは下限
0.1重量%、上限1重量%の範囲内で親水基を有する化合物の溶液を、注入量が下限1
μL、上限1000μL、好ましくは下限10μL、上限500μL、流速が下限0.0
1mL/min、上限10mL/min、好ましくは下限0.1mL/min、上限5m
L/minで注入させる。注入後、0.5時間以上、好ましくは2時間以上放置する。
上記(1)〜(4)の処理方法においては、15〜80℃で処理・放置するのが好ましい
上記親水基を有する化合物としては特に限定されないが、例えば、ヘモグロビン、アルブ
ミン、グロブリン等のタンパク質;糖類、ノニオン系界面活性剤が好適に用いられる。
上記親水化処理の施行時は特に限定されず、支持担体へ水溶性高分子化合物を固定する前
であってもよく、支持担体へ水溶性高分子化合物を固定した後であってもよい。
本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤の測定対象物質としては特に限定されず、従来
からイオン交換クロマトグラフィーで分離されていた物質を分離することができるが、な
かでも、カテコールアミン誘導体、ヌクレオチド、ペプチド、タンパク質等の生体関連物
質の分離に好適に用いることができる。
本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤は、ステンレス製等のカラム本体に充填するこ
とにより、液体クロマトグラフィー用カラムとして利用することができる。充填方法とし
ては特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、湿式法(スラリー法)を
用いる場合は、充填剤粒子を溶離液に用いる溶媒等の分散媒に分散させ、カラム本体にパ
ッカー等を経由して圧入することにより充填することができる。
本発明の充填剤を用いた液体クロマトグラフィーによる分析において使用する溶離液とし
ては特に限定されず、公知の溶離液を用いることができ、例えば、リン酸、硝酸、塩酸、
過塩素酸等の無機酸及びその塩;酢酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸等の有機
酸及びその塩を含む各種緩衝液が挙げられる。また、溶離液には、水酸化ナトリウム、水
酸化カリウム等の塩;アセトン、アセトニトリル、ジオキサン、メタノール、エタノール
等の有機溶媒を添加してもよい。
本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤においては、上記支持担体のイオン交換能の方
が高くなるように、支持担体に水溶性高分子化合物を固定化することにより、上記支持坦
体表面のイオン交換基量を制御、低減できる。また、上記支持坦体表面のイオン交換基と
、水溶性高分子化合物表面の逆極のイオン性荷電部とがポリイオンコンプレックスを形成
するので、安定的に強固に結合し、液体クロマトグラフィー用充填剤としての性能にバラ
ツキが少なくなり、従来の充填剤を充填したカラムに比較してカラム寿命が長くなる。ま
た、上記支持坦体表面が親水化処理されることにより、特にタンパク質等が非特異的に吸
着することが抑制され、測定精度が向上する。本発明によれば、この二つの効果により、
従来のカラムに比較して、測定精度がより長く保たれたカラムを得ることができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定
されるものではない。
[実施例1]
(支持担体の調製)
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(単量体A:東京化成工業社製)2
00g、ジエチレングリコールジメタクリレート(架橋性単量体B:新中村化学社製)4
00g及びベンゾイルパーオキサイド(重合開始剤:和光純薬社製)1.5gを混合し、
2.5Lの4重量%ポリビニルアルコール(日本合成化学社製)水溶液に分散させた。こ
れを窒素雰囲気下で、攪拌しながら昇温し、80℃で8時間重合した。重合後、洗浄、分
級して、平均粒径5μmの支持担体を得た。
(固定化処理)
上記支持担体0.8gを170mMリン酸緩衝液(pH5.7)30mLに分散させ、5
分間超音波処理したあと、よく攪拌した。
次に、0.003重量%の重量平均分子量500万のアクリル酸エステル系重合体(アロ
ンフロックC−508UL;東亜合成社製)水溶液5mLを添加し、室温で5時間攪拌処
理したあと、遠心分離により上澄みを廃棄し、スラリー物を得た。
(親水化処理)
上記スラリー物を170mMリン酸緩衝液(pH5.7)30mLに分散させ、よく攪拌
した。次に、0.1重量%BSA(和光純薬社製)水溶液5mLを添加し、室温で5時間
攪拌処理したあと、全量をステンレス製空カラム(4.6φ×35mm)を接続したパッ
カー(梅谷精機社製)に注入した。パッカーに送液ポンプ(サヌキ工業社製)を接続し、
圧力200kg/cmで定圧充填した。
[実施例2]
実施例1と同じ支持担体を用いて、以下の前処理を施した。
(固定化処理)
上記支持担体0.8gを170mMリン酸緩衝液(pH5.7)30mLに分散させ、5
分間超音波処理したあと、よく攪拌した。次に、0.003重量%の重量平均分子量10
万(推定)のジアリルアミン系重合体(PAS−84;日東紡社製)水溶液5mLを添加
し、室温で5時間攪拌処理したあと、遠心分離により上澄みを廃棄し、スラリー物を得た
。その後、実施例1と同じ親水化処理を施し、同じ方法でカラムに充填した。
[実施例3]
実施例1と同じ支持担体を用いて、以下の固定化処理を施した。
(固定化処理)
上記支持担体0.8gを170mMリン酸緩衝液(pH5.7)30mLに分散させ、5
分間超音波処理したあと、よく攪拌した。
次に、0.003重量%の重量平均分子量350万のアクリル酸エステル系重合体(アロ
ンフロックC−512L;東亜合成社製)水溶液5mLを添加し、室温で5時間攪拌処理
したあと、遠心分離により上澄みを廃棄し、スラリー物を得た。
その後、実施例1と同じ親水化処理を施し、同じ方法でカラムに充填した。
[実施例4]
実施例1と同じ支持担体を用いて、以下の前処理を施した。
(固定化処理)
上記充填剤0.8gを170mMリン酸緩衝液(pH5.7)30mLに分散させ、5分
間超音波処理したあと、よく攪拌した。
次に、0.003重量%の重量平均分子量500万の両性イオンであるアクリル酸エステ
ル系重合体(アロンフロックCX−300;東亜合成社製)水溶液5mLを添加し、室温
で5時間攪拌処理したあと、遠心分離により上澄みを廃棄し、スラリー物を得た。その後
、実施例1と同じ親水化処理を施し、同じ方法でカラムに充填した。
[比較例1]
実施例1と同じ支持担体を用いたが、固定化処理は行わず、実施例1と同様の親水化処理
を施し、同じ方法でカラムに充填した。
[同時再現性評価]
健常人の血液をNaF採血し、溶血希釈液(0.1%トリトンX−100を含有するリン
酸緩衝液(pH7.0))で溶血し、150倍に希釈したものを測定試料として以下の条
件でヘモグロビンA1cの測定を300回連続で行い、同時再現性の比較を行った。同時
再現性の評価は、A1c値とA1c成分の保持時間により行い、それぞれの結果を表1、
表2に示した。
システム:送液ポンプ:LC−9A(島津製作所社製)
オートサンプラ:ASU−420(積水化学工業社製)
検出器:SPD−6AV(島津製作所社製)
溶離液:第一液:170mMリン酸緩衝液(pH5.7)
第二液:300mMリン酸緩衝液(pH8.5)
溶出法:0〜3分は第一液を、3〜3.2分は第二液を、3.2〜4分は第一液を流した

流速:1.0mL/分
検出波長:415nm
試料注入量:10μL
Figure 2005164553
Figure 2005164553
本発明は、上述の構成よりなるので、支持坦体上のイオン交換基による影響を制御、低減
することにより、イオン交換液体クロマトグラフィーにおいて、測定対象物質が非特異的
に吸着することを抑制し、高い測定精度及び再現性を奏し、かつ、強度に優れる液体クロ
マトグラフィー用充填剤を提供することができる。

Claims (5)

  1. 陽イオン交換基若しくは陰イオン交換基を有するアクリル酸エステル系重合体又はメタク
    リル酸エステル系重合体からなる支持担体に、前記支持坦体のイオン交換基とは逆極のイ
    オン性荷電部を複数有する水溶性高分子化合物が固定化されてなる液体クロマトグラフィ
    ー用充填剤であって、
    前記水溶性高分子化合物がイオン化した場合の電荷の総量が、前記支持坦体がイオン化し
    た場合の電荷の総量より小さい
    ことを特徴とする液体クロマトグラフィー用充填剤。
  2. 水溶性高分子化合物は、4級アンモニウム基又はスルホン酸基を有することを特徴とする
    請求項1記載の液体クロマトグラフィー用充填剤。
  3. 水溶性高分子化合物は、アクリル酸エステル系重合体又はメタクリル酸エステル系重合体
    であることを特徴とする請求項1又は2記載の液体クロマトグラフィー用充填剤。
  4. 水溶性高分子化合物は、重量平均分子量が500万以上であることを特徴とする請求項1
    、2又は3記載の液体クロマトグラフィー用充填剤。
  5. 支持坦体は、表面が親水化処理されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載
    の液体クロマトグラフィー用充填剤。
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