JP2005158398A - 電池及び発電方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 酸性媒体と、該酸性媒体中に配置された第1の電極と、前記酸性媒体と接する塩基性媒体と、該塩基性媒体中に配置された第2の電極と、を備え、前記酸性媒体中に、前記酸性媒体中に含まれる水素イオンを伴って前記第1の電極から電子を奪う反応を生じさせる第1の物質を含有し、かつ、前記塩基性媒体中に、前記塩基性媒体中に含まれる水酸化物イオンを伴って前記第2の電極へと電子を供与する反応を生じさせる第2の物質を含有することを特徴とする電池、及び該電池を用いた発電方法。
【選択図】 図1
Description
また、例えば、リチウムイオン二次電池は、電気エネルギー量に優れ、また、充電による再利用が可能であるが、リチウムが空気中の水分や酸素に対して非常に不安定な発火物であるため、その危険性を回避するためには電池のパッケージングや使用環境に十分な安全対策を払わねばならない。更に、電池寿命後の回収や再資源化は必須であり、電池の製造から使用・廃棄までの全体コストを引き上げてしまう。この問題は鉛系蓄電池の場合でも同様であるが、製造価格や供給電気エネルギーの観点から、自動車用バッテリー等の用途でのみ大量に使用されているのが現状である。
この電池の場合、メタノール及び過酸化水素水溶液が常温常圧下で液体であるため、携帯性や貯蔵性に優位点がある。しかし、反応に伴って地球温暖化の原因物質である二酸化炭素を排出して環境に負荷をかけてしまう本質的な問題がある。また、燃料のメタノールが可燃性であるため、その漏洩は非常に危険である。更に、反応に必要な貴金属反応触媒の使用量が多く高コストであることに加えて、負極側のメタノール燃料が固体電解質膜を通過して正極側へ達してしまい、そのため、反応効率の低下を招くメタノールクロスオーバーという問題等も残っている。
更に、非特許文献2には、水素−酸素系の燃料電池として、アノード(負極)側に強酸性、カソード(正極)側に強塩基性の高分子膜を配するバイポーラ型の構成をとるものが開示されている。また、該非特許文献2は、この燃料電池が、カソードでの律速反応である酸化反応が比較的良好に行なわれる点、電極触媒の選択性が高い点、反応で生成した水が電極に影響を及ぼし難い点、などの長所を有すると述べている。
このため、このタイプのバイポーラ型電池の起電特性は、酸性と塩基性の高分子膜の境界近辺で発生する水の中和反応に大きく依存する。ところが、水素イオンH+と水酸化物イオンOH-が実際に出会う領域は厳密に高分子膜の境界部にはならず、境界を中心とした広範囲に分散する。また、中和反応に伴い生じた水が、これら水素イオンH+と水酸化物イオンOH-の移動を困難にする。したがって、水素イオンH+と水酸化物イオンOH-の実際に中和する領域が変動するため、このタイプのバイポーラ型電池の起電力は、安定的に起電力を生じさせるのが困難であるという性質を有している。
また、このバイポーラ型電池においては、生成する水が両高分子膜の界面に蓄積して、水の層が形成される恐れがある。この水の層の存在は、両電極で生成された水素イオンH+及び水酸化物イオンOH-の中和反応を抑制してしまい、結果的に、経時による水の層の形成、増加に伴い、電気エネルギーの供給が困難となる性質を有している。
また、本発明のいくつかの形態においては、従来電池が抱える多様な問題点、例えば、可燃性・発火性の燃料の使用、二酸化炭素を排出しないこと、貯蔵が簡便であること、構造が簡単であること、などを解決し、多様なニーズに適合した新たな電池を提供することも目的の一部とする。
即ち、本発明の電池は、酸性媒体と、該酸性媒体中に配置された第1の電極と、前記酸性媒体と接する塩基性媒体と、該塩基性媒体中に配置された第2の電極と、を備え、
前記酸性媒体中に、前記酸性媒体中に含まれる水素イオンを伴って前記第1の電極から電子を奪う反応を生じさせる第1の物質を含有し、かつ、前記塩基性媒体中に、前記塩基性媒体中に含まれる水酸化物イオンを伴って前記第2の電極へと電子を供与する反応を生じさせる第2の物質を含有することを特徴とする。
このため、本発明のバイポーラ型電池の構成では、電極における酸化・還元反応により生ずる起電力が、電池から得られる電圧の主体的な源であり、上述の非特許文献2のように、電池内部の中和反応の発生箇所が変動する性質を有する領域での起電力が主体的となるバイポーラ型の電池と比べて、安定に電力を発生させることができる。
前記酸性媒体に含有される第1の物質が水素イオンを伴って前記第1の電極から電子を奪う反応を生じ、かつ、前記塩基性媒体に含有される第2の物質が水酸化イオンを伴って前記第2の電極へと電子を供与する反応を生じさせて発電することを特徴とする。
本発明の発電方法によれば、上述の如く、電極における酸化・還元反応により生ずる起電力が、電池から得られる電圧の主体的な源となり、その結果、安定に電力を発生させることができる。
<電池>
本発明の電池は、酸性媒体と、該酸性媒体中に配置された第1の電極と、前記酸性媒体と接する塩基性媒体と、該塩基性媒体中に配置された第2の電極と、を備え、
前記酸性媒体中に、前記酸性媒体中に含まれる水素イオンを伴って前記第1の電極から電子を奪う反応を生じさせる第1の物質を含有し、かつ、前記塩基性媒体中に、前記塩基性媒体中に含まれる水酸化物イオンを伴って前記第2の電極へと電子を供与する反応を生じさせる第2の物質を含有することを特徴とする。
なお、本発明において、バイポーラ型の電池とは、酸性媒体と塩基性媒体が隣接し、この中に電気エネルギーを取り出すための物質と電極が含まれる構成を有するものである。
特に本発明におけるバイポーラ型電池は、(1)上記の酸性媒体中或いはこれに接触する電極近傍で第1の物質及び水素イオンが共存し、共に反応系物質として第1の電極から電子を奪う(酸化する)反応を引き起こす、(2)上記塩基性媒体中或いはこれに接触する電極近傍で第2の物質及び水酸化物イオンが共存し、共に反応系物質として電極に電子を与える(還元する)反応を引き起こす、以上(1)及び(2)が同時に進行して、外部回路を駆動する電気エネルギーを発生する。
このような、本発明の電池を構成する各部材について、詳細に説明する。
本発明において、酸性媒体はpH7未満である媒体を指し、水素イオンが存在する酸性反応場を形成し得ることが好ましく、また、塩基性媒体はpH7を超える媒体を指し、水酸化物イオンが存在する塩基性反応場を形成し得ることが好ましい。
これらの酸性媒体及び塩基性媒体としては、それぞれが独立に、液体状態、ゲル状態、固体状態のいずれの態様であってもよいが、両媒体が同じ態様であることが好ましい。また、酸性媒体及び塩基性媒体としては、有機化合物、無機化合物の種類に関らず用いることができる。
一方、塩基性媒体としての塩基性のイオン伝導性ゲルは、上記のような塩基性水溶液を、例えば、カルボキシメチルセルロース、架橋ポリアクリル酸やその塩類、をゲル化剤として用いて、ゲル化したものが好ましい。
なお、上記の酸や塩基は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、ゲル化剤の使用方法も同様である。
より具体的には、例えば、製品名ダウエックス(Dow社製)や、製品名ダイヤイオン(三菱化学社製)、製品名アンバーライト(Rohm and Hass社製)に代表されるポリビニルスチレン系のイオン交換樹脂や、製品名ナフィオン(DuPont社製)、製品名フレミオン(旭ガラス社製)、製品名アシプレックス(旭化成工業社製)に代表されるポリフルオロヒドロカーボンポリマー系の固体高分子電解質膜、製品名ネオセプタ(トクヤマ社製)、製品名ネオセプタBP−1(トクヤマ社製)に代表されるポリビニルスチレン系のイオン交換膜、ポリスチレン系の繊維状イオネックスイオン交換体で形成されたイオン交換濾紙製品名RX−1(東レ社製)等が挙げられる。
固体超強塩基として好適なものとしては、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム等が挙げられる。その他、固体塩基として、酸化マグネシウム等の金属酸化物及びそれらを含む複合酸化物、水酸化カルシウムのように水への溶解度の低い水酸化物、アルカリ金属やアルカリ土類金属イオン交換ゼオライト、また塩基性物質を添着した活性炭を用いることもできる。
本発明において、第1の物質としては、酸性媒体中で、水素イオンを伴って第1の電極から電子を奪う酸化反応を生成させる物質(酸化剤)であれば、如何なるものをも用いることができるが、水素イオン濃度が高い場合に反応が促進される物質であることが好ましい。具体的には、過酸化水素、酸素、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸等の次亜ハロゲン酸等をもちいることができる。また、これらの物質を含有する液体或いは固体、また化学変化によってこれらの物質を放出する液体或いは固体を用いて、第1の物質を供給するようにしてもよい。
酸化剤及び還元剤のどちらにも使用できる物質としては、特に過酸化水素が好ましい。この理由については後で詳細に説明する。なお、過酸化水素を含有する液体或いは固体、また、化学変化によって過酸化水素を放出する液体或いは固体を用いて、過酸化水素を供給することが、取り扱いがより簡易になる点で好ましい。
また、これらの両物質は、一次電池の場合、反応開始以前から媒体中に混合若しくは分散される。また、燃料電池の場合は、液体状の媒体中に始めから混合若しくは分散されるか、電極の近傍に設置された流路を通して、或いは、毛細管への染込みを利用して、或いは直接的に媒体へ添加される方式としてもよい。
本発明において、第1の電極は正極であり、第2の電極は負極として機能する。これら第1の電極及び第2の電極の材質としては、従来の電池における電極と同様のものを用いることができる。より具体的には、第1の電極(正極)として、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金等が挙げられる。また、表面を不動態化したチタン、ステンレス、ニッケル、アルミニウム等が挙げられる。また、グラファイトやカーボンナノチューブ等の炭素構造体、アモルファスカーボン、グラッシーカーボン等が挙げられる。ただし、耐久性の点から、白金、白金黒、酸化白金被覆白金がより好ましい。
また、第2の電極(負極)としては、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金等が挙げられる。また、表面を不動態化したチタン、ステンレス、ニッケル、アルミニウム等が挙げられる。また、グラファイトやカーボンナノチューブ等の炭素構造体、アモルファスカーボン、グラッシーカーボン等が挙げられる。ただし、耐久性の点から、白金、白金黒、酸化白金被覆白金がより好ましい。
網目状の電極として、具体的には、金属製のメッシュやパンチングメタル板、発泡金属シートに、上記の電極用材料を、無電解メッキ法、蒸着法、又はスパッタ法によって付着させてもよいし、また、セルロースや合成高分子製の紙類に、同様の方法或いはその組合せを用いて上記の電極用材質を付着させてもよい。
本発明の発電方法(発電機構)について、詳細に説明する。
本発明の発電方法は、酸性媒体と、該酸性媒体中に配置された第1の電極と、前記酸性媒体と接する塩基性媒体と、該塩基性媒体中に配置された第2の電極と、を備える電池を用いた発電方法であって、
前記酸性媒体に含有される第1の物質が水素イオンを伴って前記第1の電極から電子を奪う反応を生じさせ、かつ、前記塩基性媒体に含有される第2の物質が水酸化イオンを伴って前記第2の電極へと電子を供与する反応を生じさせて発電することを特徴とする。
この反応により、第1物質及び第2の物質が内部エネルギーの低い複数の物質に化学変化することによって、その分のエネルギーを外部に電気エネルギーとして放出して電力を得ることができる。
なお、ここでは、酸性媒体が酸性水溶液、塩基性媒体が塩基性水溶液からなり、第1の物質及び第2の物質が、いずれも過酸化水素である態様について説明するが、これは本発明の最も好ましい態様として示すものであって、本発明をこれに限定するものではない。
H2O2+2H++2e- → 2H2O (式1)
H2O2+2OH- → O2+2H2O+2e- (式2)
H2O2→H2O+1/2O2 (式3)
熱力学計算によると、この反応のエンタルピー変化(ΔH)、エントロピー変化(ΔS
)、ギブスの自由エネルギー変化(ΔG、温度T:単位はケルビン(K))は、それぞれ
、ΔH=−96.7kJ/mol、ΔS=18.9J/Kmol、ΔG=ΔH−TΔS=
−115.5kJ/molとなる。
また、理論起電力(nは反応に関る電子数、Fはファラデー定数)と理論最大効率(η)は、それぞれ、E=−ΔG/nF=1.2V、η=ΔG/ΔH×100=120%と計算される。この反応の理論的特徴は、過酸化水素分解反応でエントロピーが増加してΔSの符号が正になることである。そのため、ΔGの絶対値がΔHより大きくなり、理論最大効率が100%を超える。これとは異なり、水素−酸素系やダイレクトメタノール系等、他の燃料電池反応では、ΔSの符号は負である。
従来より知られている他の燃料電池では、原理的に、エントロピー変化量TΔSを発電
に利用できず熱として放出する。一方、本機構では、外界から熱を吸収して得たエントロピーの増加分を発電に利用することができる。そして、反応温度Tが高い場合の方が、Δ
Gの絶対値が大きくなり起電力が高くなる。
実用電池では、イオン反応式の理論起電力だけで出力電圧が決まるのではなく、過電圧等によって電圧が低下し同時に熱を発生する。例えば、単位電池をスタックして集積化する場合、或いは、電池を製品内部に組み込む場合に、この熱が大きな問題になる。しかし、上述のように、本発明の発電方法によれば、理論的にはその熱を発電に再利用することができ、全体的な熱発生が少なくなる可能性がある。また、発電に利用できるエネルギー総量に相当するΔGは水素・酸素燃料電池に比較して半分程度であるが、n=1(水素−酸素系の燃料電池の場合はn=2)であるために理論起電力は同程度となる。
(1)過酸化水素は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する反応に伴って二酸化炭素を放出せず、その代わりに酸素を放出する。また、電池内の構造要素に、発火物・可燃物や有害な重金属類等を使用しないため、製造・使用・廃棄の製品サイクル全体に渡って環境安全性に優れる。
(2)過酸化水素は、常温常圧で液体であるため貯蔵のために重い金属ボンベ等を必要としないし、水と自由に混合できるためゲル化が容易であり、貯蔵性・携帯性の優れた燃料供給方法を取ることができる。
(3)酸化剤として酸素を使用する必要が無いため、空気量の限られた閉鎖環境下、また空気中に塵やゴミ等が多く含まれる過酷環境下でも、その使用に支障がない。
(4)過酸化水素は、その工業的製造方法として有機法(アントラキノンを中間体(何度も再利用するので消費しない)として、触媒による水素の接触還元と空気酸化によって合成する方法)等がすでに確立されており、現状でも安定的に安価で供給されている。これに加え、周辺部品が少なくシンプルな構造で電池を構成しうるため、電池システム全体の重量及び体積を小さくでき、かつ低コスト化や高耐久性を図れる。
そのため、本発明の電池及び本発明の発電方法によれば、その発電機構により、安定した発電が可能となる。
このチップ型流体燃料電池は、酸性媒体として、硫酸水溶液などの液体を、塩基性媒体として水酸化ナトリウム水溶液などの液体を用いた、酸−塩基バイポーラー反応場を有する。具体的な構成に関して、図2を用いて説明する。
図2(a)は、チップ型流体燃料電池の概略上面透視図である。ここに示されるように、チップ型流体燃料電池は、スライドガラス11とカバーガラス10との間にスペーサ(図2(b)における部材12)を介し、毛管流路1(深さ50μm、幅1000μm)が形成されている。この毛管流路1は、液体の酸性媒体と、液体の塩基性媒体と、を供給するための入口2及び入口3と、排出するための出口4及び出口5とを有する。例えば、入口2から酸性水溶液aを、入口3から塩基性水溶液bを、毛管流路1に流した時、両液体の粘度やその流速が適当である場合には毛管流路1の合流部分において層流(レイノルズ流)が形成される。
このような層流を形成している毛管流路1の合流部分の底部には、2つの白金電極6及び8が設けられており、それぞれの接続端子7及び9を通じて、外部へと電力を取り出すことができる。
このペーパー型燃料電池は、酸性媒体及び塩基性媒体として固体状であるものを用い、それらを接触配置してなる、酸−塩基バイポーラー反応場を有する。具体的な構成に関して、図3(a)及び(b)に示されるペーパー型燃料電池の概略断面透視図を用いて説明する。
図3(a)に示されるペーパー型燃料電池は、第1の電極22及び酸性媒体20からなる酸性反応場と、第2の電極32及び塩基性媒体30からなる塩基性反応場と、が接触している状態の構成を有し、そこに、第1の物質及び第2の物質を供給して、発電を行うものである。例えば、第1の物質及び第2の物質が過酸化水素である場合、過酸化水素の水溶液Lを、図3(a)の矢印のように、滴下若しくは浸透させることで供給する。これにより、酸性反応場における酸化反応と、塩基性反応場における還元反応が生じ、起電力を発現する。また、ここで電極形状は、電池内で発生した気体の排出流路となるべく、網目状であることが好ましい。
このゲル型一次電池は、酸性媒体として、酸性水溶液をゲル化したイオン伝導性ゲルと、塩基性媒体として、塩基性水溶液をゲル化したイオン伝導性ゲルと、を接触配置してなる、酸−塩基バイポーラー反応場を有する。具体的な構成に関して、図4に示されるゲル型一次電池の概略断面透視図を用いて説明する。
図4に示されるゲル型一次電池は、第1の電極22及び酸性媒体20からなる酸性反応場と、第2の電極32及び塩基性媒体30からなる塩基性反応場と、が接触しており、酸性媒体20に第1の物質を、塩基性媒体30に第2の物質を含有させた構成を有する。例えば、第1の物質及び第2の物質が過酸化水素である場合、過酸化水素水溶液を、酸性媒体20又は塩基性媒体30、若しくはその両方に、共存させておく。これにより、酸性反応場における酸化反応と、塩基性反応場における還元反応が生じ、起電力を発現する。また電極は、媒体に対して片面から若しくは両面から接触していればよく、その形状は、電池内で発生した気体の排出流路となるべく、網目状であることが好ましい。
図2で表されるチップ型流体燃料電池において、下記条件にて発電実験を行い、電流−電圧特性を求め、電池の評価を行った。
市販の3重量%過酸化水素水溶液(日本薬局方オキシドール、健栄製薬株式会社)に、硫酸(特級96%、関東化学株式会社)及び蒸留水を混合して、試料液A(過酸化水素0.75mol/l、硫酸0.75N(1.5mol/l))を調製した。また、同過酸化水素水溶液に水酸化ナトリウム(特級97%、関東化学株式会社)及び蒸留水を混合して、試料液B(過酸化水素0.75mol/l、水酸化ナトリウム0.75N(0.75mol/l))を調製した。
上記の実施例1と同じチップ型流体燃料電池を使用して、試料液に含まれる過酸化水素濃度を変え、実施例1と同様の評価を行った。チップ型流体燃料電池の入口2及び入口3から注入した試料液A及びBの過酸化水素濃度は、いずれも0.45mol/lであった。なお、流速及び実験温度は実施例1と同一である。
かかる実験条件の燃料電池を用いて得られた、電流−電圧特性を図5に示す。本実施例の場合、開放電圧675mV、また、最大出力9mW/cm2が得られた。
上記の実施例1と同じチップ型流体燃料電池を使用して、試料液に含まれる過酸化水素濃度を変え、実施例1と同様の評価を行った。チップ型流体燃料電池の入口2及び入口3から注入した試料液A及びBの過酸化水素濃度は、いずれも0.22mol/lであった。なお、流速及び実験温度は実施例1と同一である。
かかる実験条件の燃料電池を用いて得られた、電流−電圧特性を図5に示す。本実施例の場合、開放電圧620mV、また、最大出力3mW/cm2が得られた。
上記の実施例1と同じチップ型流体燃料電池を使用して、試料液に含まれる過酸化水素濃度を変え、実施例1と同様の評価を行った。チップ型流体燃料電池の入口2及び入口3から注入した試料液A及びBの過酸化水素濃度は、いずれも0.10mol/lであった。なお、流速及び実験温度は実施例1と同一である。
かかる実験条件の燃料電池を用いて得られた、電流−電圧特性を図5に示す。本実施例の場合、開放電圧611mV、また、最大出力1mW/cm2が得られた。
上記の実施例1と同じチップ型流体燃料電池を使用して、第1の電極及び第2の電極の材質をそれぞれ次のように変え、更に、試料液に含まれる過酸化水素濃度を変えて実施例1と同様の評価を行った。電極の材質を電極6は銀に、また、電極8は白金とした。また、チップ型流体燃料電池の入口2及び入口3から注入した試料液A及びBの過酸化水素濃度は、いずれも0.45mol/lであった。なお、流速及び実験温度は実施例1と同一である。
かかる実験条件の燃料電池を用いて得られた電流−電圧特性から、本実施例の場合、開放電圧540mV、また、最大出力6mW/cm2が得られた。
図3(a)に示されるペーパー型燃料電池において、下記条件にて発電実験を行い、電流−電圧特性を求め、電池の評価を行った。
酸性媒体20には強酸性イオン交換濾紙(東レケミカル、RX−1シリーズCP−1)の小片(縦1.5cm×横1.5cm)を、塩基性媒体30には強塩基性イオン交換濾紙(東レケミカル、RX−1シリーズAP−1)の小片(縦1.5cm×横1.5cm)を用いた。また、第1の電極22及び第2の電極32としては、酸性媒体及び塩基性媒体と同面積の白金黒メッシュ(100メッシュのニッケルメッシュ表面を白金黒化したもの)を用い、これを酸性媒体と塩基性媒体とにそれぞれ密着させた。
そして、図3(a)の矢印のように、3重量%過酸化水素水溶液(日本薬局方オキシドール、健栄製薬株式会社)Lを、滴下することで、第1の物質及び第2の物質を供給した。これにより、酸性反応場における酸化反応と、塩基性反応場における還元反応が生じ、起電力が発現した。
図4に示されるゲル型一次電池において、下記条件にて発電実験を行い、電流−電圧特性を求め、電池の評価を行った。
酸性媒体20(0.25mol/lの硫酸、0.5mol/lの過酸化水素を、10重量%の無水二酸化ケイ素でゲル化したもの)と、塩基性媒体30(0.5mol/lの水酸化ナトリウム、0.5mol/lの過酸化水素を、8重量%の架橋ポリアクリル酸ナトリウムでゲル化したもの)を用い、第1の電極22及び第2の電極32としては、2.6cm2の白金黒メッシュ(100メッシュのニッケルメッシュ表面を白金黒化したもの)をそれぞれの媒体に密着させた。
上記の実施例1と同じチップ型流体燃料電池を使用して、試料液に過酸化水素を含有させず、硫酸及び水酸化ナトリウム濃度を変えて、実施例1と同様の評価を行った。チップ型流体燃料電池の入口2及び入口3から注入した試料液A及びBの硫酸及び水酸化ナトリウム濃度は、いずれも0.45mol/lであった。なお、流速及び実験温度は実施例1と同一である。
かかる実験条件の燃料電池を用いて得られた、電流−電圧特性を図5に示す。比較例1では、液間電圧による開放電力(300mV)は測定されたものの、有意な電流は得られなかった。
2、3 入口
4、5 出口
6 電極(第2の電極)
7 接続端子
8 電極(第1の電極)
9 接続端子
10 カバーガラス
11 スライドガラス
12 スペーサ
20 酸性媒体
22 第1の電極
30 塩基性媒体
32 第2の電極
40 供給部材
a 酸性水溶液
b 塩基性水溶液
L (過酸化水素)水溶液
Claims (18)
- 酸性媒体と、該酸性媒体中に配置された第1の電極と、前記酸性媒体と接する塩基性媒体と、該塩基性媒体中に配置された第2の電極と、を備え、
前記酸性媒体中に、前記酸性媒体中に含まれる水素イオンを伴って前記第1の電極から電子を奪う反応を生じさせる第1の物質を含有し、かつ、前記塩基性媒体中に、前記塩基性媒体中に含まれる水酸化物イオンを伴って前記第2の電極へと電子を供与する反応を生じさせる第2の物質を含有することを特徴とする電池。 - 前記第1の物質及び前記第2の物質が同一の物質であることを特徴とする請求項1に記載の電池。
- 前記第1の物質及び前記第2の物質が、いずれも過酸化水素であることを特徴とする請求項2に記載の電池。
- 過酸化水素を含有する、又は、化学変化によって過酸化水素を放出する、液体或いは固体により前記過酸化水素を供給することを特徴とする請求項3に記載の電池。
- 前記酸性媒体が酸性水溶液からなり、かつ、前記塩基性媒体が塩基性水溶液からなることを特徴とする請求項1に記載の電池。
- 前記酸性水溶液と前記塩基性水溶液とがその内部で層流を形成する流路構造を備えることを特徴とする請求項5に記載の電池。
- 前記酸性水溶液が、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、過ヨウ素酸、オルトリン酸、ポリリン酸、硝酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロ珪酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロ砒酸、ヘキサクロロ白金酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、蓚酸、サリチル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、及びピクリン酸からなる群より選択される酸を1以上含むことを特徴とする請求項5に記載の電池。
- 前記塩基性水溶液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、及び水酸化テトラブチルアンモニウムを含む群から選択される塩基を1以上含む、又は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、及びアルミン酸カリウムを含む群から選択される弱酸のアルカリ金属塩を1以上含むことを特徴とする請求項5に記載の電池。
- 前記酸性媒体が酸性のイオン交換部材から構成され、かつ、前記塩基性媒体が塩基性のイオン交換部材から構成されることを特徴とする請求項1に記載の電池。
- 前記イオン交換部材が、ポリビニルスチレン系のイオン交換樹脂、ポリフルオロヒドロカーボンポリマー系の高分子電解質膜、ポリビニルスチレン系のイオン交換膜、及び繊維状ポリスチレン系のイオン交換濾紙からなる群より選択されることを特徴とする請求項9に記載の電池。
- 前記酸性媒体が酸性のイオン伝導性ゲルから構成され、かつ、前記塩基性媒体が塩基性のイオン伝導性ゲルから構成されることを特徴とする請求項1に記載の電池。
- 前記酸性のイオン伝導性ゲルが、酸性水溶液を水ガラス、無水二酸化ケイ素、架橋ポリアクリル酸、又はその塩類によりゲル化してなることを特徴とする請求項11に記載の電池。
- 前記塩基性のイオン伝導性ゲルが、塩基性水溶液をカルボキシメチルセルロース、架橋ポリアクリル酸、又はその塩類によりゲル化してなることを特徴とする請求項11に記載の電池。
- 前記第1の電極が、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金、表面を不動態化したチタン、表面を不動態化したステンレス、表面を不動態化したニッケル、表面を不動態化したアルミニウム、炭素構造体、アモルファスカーボン、及びグラッシーカーボンからなる群より選択される1以上の材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載の電池。
- 前記第2の電極が、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金、表面を不動態化したチタン、表面を不動態化したステンレス、表面を不動態化したニッケル、表面を不動態化したアルミニウム、炭素構造体、アモルファスカーボン、及びグラッシーカーボンからなる群より選択される1以上の材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載の電池。
- 前記第1の電極及び第2の電極のいずれもが、板状、薄膜状、網目状、又は繊維状であることを特徴とする請求項1に記載の電池。
- 前記第1の電極及び前記第2の電極が、無電解メッキ法、蒸着法、又はスパッタ法により、酸性媒体及び塩基性媒体にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1に記載の電池。
- 酸性媒体と、該酸性媒体中に配置された第1の電極と、前記酸性媒体と接する塩基性媒体と、該塩基性媒体中に配置された第2の電極と、を備える電池を用いた発電方法であって、
前記酸性媒体に含有される第1の物質が水素イオンを伴って前記第1の電極から電子を奪う反応を生じさせ、かつ、前記塩基性媒体に含有される第2の物質が水酸化イオンを伴って前記第2の電極へと電子を供与する反応を生じさせて発電することを特徴とする発電方法。
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