JP2005347196A - 電池及び発電方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 優れた放電寿命を有し、安定的な発電が可能な電池及び発電方法を提供する。
【解決手段】 発電部が、少なくとも、第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の電極が配置された塩基性媒体とを備え、酸性媒体及び塩基性媒体が隣接もしくは近設され、酸性媒体及び塩基性媒体のいずれかに反応物質が含有され、第1の電極及び第2の電極のそれぞれに、発電阻害物質除去部材が接触もしくは近設されてなる電池である。
第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の電極が配置された塩基性媒体とを隣接もしくは近設させ、酸性媒体及び塩基性媒体の少なくともいずれかに含有されてなる反応物質により、酸性媒体中での酸化反応及び/または塩基性媒体中での還元反応を生じさせ、かつ、第1の電極及び第2の電極に接触もしくは近設されてなる発電阻害物質除去部材により、発電阻害物質を除去しながら発電を行う発電方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電池及び発電方法に関し、特に、酸性媒体とそれに接した塩基性媒体とを利用した電池及び発電方法に関する。
電池は、物質が持つ化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する装置である。また、その化学エネルギーを使い切るまで電力を提供する一次電池、使い切った後に充電操作によって化学エネルギーを再び蓄えて再使用が可能な二次電池、更に、外部から化学エネルギーを有する物質を継続的に供給することで電気エネルギーを得る燃料電池に分類できる。現在、多種類の電池が開発されているが、各電池はそれぞれ、環境安全性、経済性、供給できる電気エネルギー量、携帯性や貯蔵性、使用環境対応性、リサイクル性等の各項目について長所と短所が異なるので、使用目的に合わせて電池が選択され、実用に供されている。いずれの電池においても共通の重要な技術要素は、どのような化学物質の反応を利用するのか、その反応をどのようにして促進するのか、また、その化学物質をどのような形態で貯蔵・供給・回収するのかという点にある。
電池では、還元反応(相手に電子を与えるか、若しくは酸素を引き抜く)を引き起こす還元剤と、酸化反応(相手から電子を引き抜くか、若しくは酸素を与える)を引き起こす酸化剤と、の2種の化学物質を使用する。その化学反応を、相対する2つの電極で別々に引き起こすことによって、発生した電子のエネルギーを外部に取り出す(電子の発生に伴って両極で生成したイオンは電池内部で中和される)。それらの反応効率は、使用する化学物質の種類と反応様式、電極材質や活性度、また、電解質を含めた反応場の環境に依存する。更に、どのような物質を選択して電池を構成するかは、前述した使用時のみならず、製造時・廃棄時も含めた電池システム全体の良否に関わるポイントである。
特に電極は、化学物質の酸化還元反応を効率よく引き起こす場所を提供するだけではなく、取り出した電子を伝導させるという伝導体の役割も持たなければならない。従って、使用する電極が電池の性能に大きな影響を及ぼす。一般的に、電池内は電解質で満たされており、それらに冒されずに、電子を取り出し、かつ伝導させる必要がある。さらに、反応場を多く提供させるために表面積を大きくさせたり、多孔質材料を用いたりする必要がある。例えば、アルカリ性電解液を用いた電池の場合は、炭素、ニッケル、銀などが、酸性電解液の場合は炭素系の材料が電極として用いられている。また、高い温度で運転される燃料電池では、酸化雰囲気の陽極用材料は選択が容易ではなく、酸化物半導体が種々検討されている。従って、各々の電池に対して最適な電極材料、構造を選択することが、電池の性能を決定する上で重要となる。
マンガン系や水銀系の一次電池の場合、経済性や化学物質の貯蔵性に優れるが、使用後に有害性の重金属類を放置すると環境に悪影響を与えてしまうため、厳密な回収が必要になる。また、充電による再利用ができないため、使用後の電池廃棄や再資源化に多くのコストがかかってしまう。
また、例えば、リチウムイオン二次電池は、電気エネルギー量に優れ、充電による再利用が可能であるが、リチウムが空気中の水分や酸素に対して非常に不安定な発火物であるため、その危険性を回避するためには電池のパッケージングや使用環境に十分な安全対策を払わねばならない。更に、電池寿命後の回収や再資源化は必須であり、電池の製造から使用・廃棄までの全体コストを引き上げてしまう。この問題は鉛系蓄電池の場合でも同様であるが、製造価格や供給電気エネルギーの観点から、自動車用バッテリー等の用途でのみ大量に使用されているのが現状である。
一方、燃料電池としては、主に、還元剤(燃料)として水素やメタノール等を、また、酸化剤として酸素や過酸化水素等を用いる電池が知られている。例えば、メタノールを還元剤(燃料)、過酸化水素水溶液を酸化剤とした、所謂、ダイレクトメタノール電池が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この電池の場合、メタノール及び過酸化水素水溶液が常温常圧下で液体であるため、携帯性や貯蔵性に優位点がある。しかし、反応に伴って地球温暖化の原因物質である二酸化炭素を排出して環境に負荷をかけてしまう本質的な問題がある。また、燃料のメタノールが可燃性であるため、その漏洩は非常に危険である。更に、反応に必要な貴金属反応触媒の使用量が多く高コストであることに加えて、負極側のメタノール燃料が固体電解質膜を通過して正極側へ達してしまい、そのため、反応効率の低下を招くメタノールクロスオーバーという問題等も残っている。
また、水素−酸素系の燃料電池は、供給できる電気エネルギー量が多く、かつ、反応生成物が水のみであるため、環境安全性の面で非常に優れている。しかし、燃料の水素が可燃性であるため、その漏洩は非常に危険な状態を招く。さらに、水素−酸素系の燃料電池として、アノード(負極)側に強酸性、カソード(正極)側に強塩基性の高分子膜を配するバイポーラ型の構成をとるものが開示されている(例えば、非特許文献1参照)。また、この燃料電池では、カソードでの律速反応である酸化反応が比較的良好に行なわれる点、電極触媒の選択性が高い点、反応で生成した水が電極に影響を及ぼし難い点、などの長所開示されている。
ところで、このバイポーラ型電池では、強酸性高分子膜側の電極で還元反応が生じ、強塩基性の高分子膜側で酸化反応を生ずるが、これらの酸化・還元反応による起電力よりも、電池の中心部における水素イオンH+と水酸化物イオンOH-の中和による電位が起電力の大部分を占める構成となっている。これは、水素イオンH+と水酸化物イオンOH-の中和により生ずる電位が、他のイオンの場合に比べて一般的に高いためである。
このため、このタイプのバイポーラ型電池の起電特性は、酸性と塩基性の高分子膜の境界近辺で発生する水の中和反応に大きく依存する。ところが、水素イオンH+と水酸化物イオンOH-が実際に出会う領域は厳密に高分子膜の境界部にはならず、境界を中心とした広範囲に分散する。また、中和反応に伴い生じた水が、これら水素イオンH+と水酸化物イオンOH-の移動を困難にする。したがって、水素イオンH+と水酸化物イオンOH-の実際に中和する領域が変動するため、このタイプのバイポーラ型電池の起電力は、安定的に起電力を生じさせるのが困難であるという性質を有している。
また、このバイポーラ型電池においては、生成する水が両高分子膜の界面に蓄積して、水の層が形成される恐れがある。この水の層の存在は、両電極で生成された水素イオンH+及び水酸化物イオンOH-の中和反応を抑制してしまい、結果的に、経時による水の層の形成、増加に伴い、電気エネルギーの供給が困難となる性質を有している。さらに、既存の電池は、電極材料、構成によって、電池性能が左右される。このバイポーラ型電池においては、電極材料、電極構造、構成を適切に選ぶことによって、電池性能、例えば、出力や安定性を、さらに向上させることができる。
米国特許6,485,851号公報 Electrochemistry 71,No.5(2003)、p.313−317
以上から、本発明は上記従来の課題を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、バイポーラ型の電池であって、高い出力を発揮し、安定して発電することが可能で、新規な構成の電池及び発電方法を提供することを目的とする。
上記目的は下記の本発明により達成される。
すなわち、本発明は、発電部が、少なくとも、第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の電極が配置された塩基性媒体とを備え、
前記酸性媒体及び前記塩基性媒体が互いに隣接もしくは近設されてなり、
前記酸性媒体及び前記塩基性媒体の少なくともいずれかに反応物質が含有されてなり、
前記第1の電極が、第1の反応伝導部を具備し、第2の電極が、第2の反応伝導部を具備することを特徴とする電池である。
本発明の電池においては、下記第1〜第18の態様が少なくとも1つ適用されていることが好ましい。
(1)第1の態様は、前記第1の反応伝導部が、前記反応物質が電子を奪う反応を促進する第1の反応部と電子伝導性を有する第1の伝導部とからなり、
前記第2の反応伝導部が、前記反応物質が電子を供与する反応を促進する第2の反応部と電子伝導性を有する第2の伝導部とからなる態様である。
(2)第2の態様は、前記第1の反応部及び前記第2の反応部のそれぞれが、活性炭、白金黒、アルミニウム陽極酸化膜、及びチタン陽極酸化膜のうち1つもしくは複数の材料からなり、それぞれが前記第1の伝導部及び前記第2の伝導部のそれぞれの表面の一部または全体に載置されている態様である。
(3)第3の態様は、第1の伝導部及び前記第2の伝導部のそれぞれが、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金、表面を不動態化したチタン、表面を不動態化したステンレス、表面を不動態化したニッケル、表面を不動態化したアルミニウム、炭素構造体、アモルファスカーボン、及びグラッシーカーボンのうち1つもしくは複数の材料から構成される態様である。
(4)第4の態様は、前記第1の電極及び前記第2の電極が、板状、薄膜状、網目状、又は繊維状である態様である。
(5)第5の態様は、前記第1の電極及び前記第2の電極が、無電解メッキ法、蒸着法、又はスパッタ法により、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体のそれぞれ配置されてなる態様である。
(6)第6の態様は、前記反応物質が、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体のそれぞれに含有されてなる態様である。
(7)第7の態様は、前記酸性媒体に含有される前記反応物質としての第1の物質と、前記塩基性媒体に含有される前記反応物質としての第2の物質とが、同一の物質である態様である。
(8)第8の態様は、前記反応物質が、過酸化水素である態様である。
(9)第9の態様は、前記反応物質が、当該反応物質を含有する液体もしくは固体、あるいは、化学変化によって当該反応物質を生成する液体もしくは固体、の状態で供給されてなる態様である。
(10)第10の態様は、前記酸性媒体が酸性水溶液からなり、かつ、前記塩基性媒体が塩基性水溶液からなる態様である。
(11)第11の態様は、流路構造を有し、その内部で前記酸性水溶液と前記塩基性水溶液とが層流を形成する態様である。
(12)第12の態様は、前記酸性水溶液が、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、過ヨウ素酸、オルトリン酸、ポリリン酸、硝酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロ珪酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロ砒酸、ヘキサクロロ白金酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、蓚酸、サリチル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、及びピクリン酸からなる群より選択される酸を1以上含む態様である。
(13)第13の態様は、前記塩基性水溶液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、及び水酸化テトラブチルアンモニウムを含む群から選択される塩基を1以上含む、又は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、及びアルミン酸カリウムを含む群から選択されるアルカリ金属塩を1以上含む態様である。
(14)第14の態様は、前記酸性媒体が酸性のイオン交換部材から構成され、かつ、前記塩基性媒体が塩基性のイオン交換部材から構成される態様である。
(15)第15の態様は、前記イオン交換部材が、ポリビニルスチレン系のイオン交換樹脂、ポリフルオロヒドロカーボンポリマー系の高分子電解質膜、ポリビニルスチレン系のイオン交換膜、及び繊維状ポリスチレン系のイオン交換濾紙からなる群より選択される態様である。
(16)第16の態様は、前記酸性媒体が酸性のイオン伝導性ゲルから構成され、かつ、前記塩基性媒体が塩基性のイオン伝導性ゲルから構成される態様である。
(17)第17の態様は、前記酸性のイオン伝導性ゲルが、酸性水溶液を水ガラス、無水二酸化ケイ素、寒天、架橋ポリアクリル酸、又はその塩類によりゲル化してなる態様である。
(18)第18の態様は、前記塩基性のイオン伝導性ゲルが、塩基性水溶液をカルボキシメチルセルロース、架橋ポリアクリル酸、又はその塩類によりゲル化されてなる態様である。
また、本発明は、第1の反応伝導部を有する第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の反応伝導部を有する第2の電極が配置された塩基性媒体とを互いに隣接もしくは近設させた状態で、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体の少なくともいずれかに含有されてなる反応物質により、前記酸性媒体中での酸化反応及び/または前記塩基性媒体中での還元反応を生じさせて、発電を行うことを特徴とする発電方法である。
本発明によれば、高い出力を発揮し、安定して発電することが可能で、新規な構成の電池及び発電方法を提供することができる。
以下、本発明の電池及び発電方法について詳細に説明する。
<電池>
本発明の電池は、その発電部が、第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の電極が配置された塩基性媒体とを備えてなる。そして、酸性媒体及び塩基性媒体は互いに隣接もしくは近設してなり、酸性媒体及び塩基性媒体の少なくともいずれかに反応物質が含有されてなる。本発明の電池は、上述の各部材を備える構成を有するバイポーラー型の一次電池である。なお、本発明において、バイポーラー型の電池とは、酸性媒体と塩基性媒体とが隣接もしくは近設し、これらの中に電気エネルギーを取り出すための物質(反応物質)と電極が含まれる構成を有するものである。
酸性媒体または塩基性媒体に含有される反応物質は、下記のような作用により正極側及び/または負極側での電極反応を生じさせ、効率のよい電気エネルギーの発生を可能とする。すなわち、かかる反応物質が、酸性媒体または塩基性媒体に存在しないと、電池としての十分な起電力が得られないことになる。
例えば、上記反応物質が、酸性媒体及び塩基性媒体のそれぞれに含有されてなる場合、酸性媒体中の反応物質である第1の物質は、その酸性媒体中に含まれる水素イオンを伴って第1の電極から電子を奪う反応を生じさせる。一方、塩基性媒体中の反応物質である第2の物質は、その塩基性媒体中に含まれる水酸化物イオンを伴って第2の電極へと電子を供与する反応を生じさせる。
特に、本発明の電池は、まず、(1)上記の酸性媒体中またはこれに接触する電極近傍で第1の物質及び水素イオンが共存し、共に反応系物質として第1の電極から電子を奪う(酸化する)反応を引き起こす。また、(2)上記塩基性媒体中或いはこれに接触する電極近傍で第2の物質及び水酸化物イオンが共存し、共に反応系物質として電極に電子を与える(還元する)反応を引き起こす。このような(1)及び(2)の反応が同時に進行して、外部回路を駆動する電気エネルギーを発生する。
なお、本発明の電池は、バイポーラー型反応場において、酸性媒体中の水素イオンは、第1の物質による第1の電極から電子を奪う反応に加わり、また、その濃度増加は反応を促進する(化学平衡を生成系方向にずらす)作用を有する。一方、塩基性媒体を構成する水酸化物イオンは、第2の物質による第2の電極へと電子を供与する反応に加わり、また、その濃度増加は反応を促進する作用を有する。このため、水素イオン濃度或いは水酸化物イオン濃度を高くする、即ち、酸性媒体中ではpHを低くし、塩基性媒体ではpHを高くすることで反応を増強させることが可能となり、出力を高めることが可能な構成を有している点でも有効である。
また、本発明の電池において、第1の電極及び第2の電極は、それぞれ、第1の反応伝導部及び第2の反応伝導部を具備する。反応伝導部は、さらに、媒体と電極表面との間の電子の授受(電極反応)を促進する反応部と、反応部との間で電子の移動を円滑に行う電子伝導性の伝導部とから構成される。例えば、第1の電極(正極)の第1の伝導部へ伝導される電子は、第1の伝導部から第1の反応部へ移動する。そして、第1の反応部上で、反応物質による反応、すなわち、反応物質が酸性媒体中に含まれる水素イオンを伴って当該第1の反応部から電子を奪う反応がより促進される。一方、第2の電極の第2の反応部では、反応物質が塩基性媒体中に含まれる水酸化物イオンを伴って第2の反応部へと電子を供与する反応を促進する。供与された電子は、第2の伝導部を介して、円滑に正極側へ移動することになる。このような反応伝導部を具備する電極を使用することにより、高い出力維持しながら、安定して発電することが可能となる。
以下、本発明の電池の構成要素について、詳細に説明する。
(酸性媒体及び塩基性媒体)
本発明において、酸性媒体は、pH7未満(好ましくは、pHが3以下)である媒体を指し、水素イオンが存在する酸性反応場を形成し得ることが好ましい。また、塩基性媒体はpH7を超える(好ましくは、pHが11以上)媒体を指し、水酸化物イオンが存在する塩基性反応場を形成し得ることが好ましい。
これらの酸性媒体及び塩基性媒体としては、それぞれが独立に、液体状態、ゲル状態、固体状態のいずれの態様であってもよいが、両媒体が同じ態様であることが好ましい。また、酸性媒体及び塩基性媒体としては、有機化合物、無機化合物の種類に関らず用いることができる。
酸性媒体と塩基性媒体との好ましい組み合わせは、例えば、硫酸や塩酸、リン酸等の酸性水溶液と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アンモニウム化合物等の塩基性水溶液と、の水溶液の組み合わせ;それらの水溶液をゲル化剤によってゲル化したイオン伝導性ゲルの組み合わせ;スルホン酸基やリン酸基を有する酸性のイオン交換部材と、4級アンモニウム基を有する塩基性のイオン交換部材と、のイオン交換部材(イオン交換樹脂を用いた膜、濾紙などの形態を含む)の組み合わせ;硫酸処理した酸化ジルコニアや貴金属含有酸化ジルコニア等の固体超強酸及び固体酸と、酸化バリウム等の固体超強塩基及び固体塩基と、の固体物の組み合わせ;などが挙げられる。
より具体的には、酸性水溶液としては、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、過ヨウ素酸、オルトリン酸、ポリリン酸、硝酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロ珪酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロ砒酸、ヘキサクロロ白金酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、蓚酸、サリチル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、及びピクリン酸からなる群より選択される酸を1以上含む水溶液を用いることが好ましく、中でも、強酸である、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸を含むことがより好ましい。
また、塩基性水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、及び、水酸化テトラブチルアンモニウムを含む群から選択される塩基を1以上含む、又は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、及びアルミン酸カリウムを含む群から選択されるアルカリ金属塩を1以上含む水溶液を用いることができ、中でも、強塩基である、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを含むことがより好ましい。
さらに、酸性媒体としての酸性のイオン伝導性ゲルは、上記のような酸性水溶液を、水ガラス、無水二酸化ケイ素、寒天、架橋ポリアクリル酸、又はその塩類などのゲル化剤を用いて、ゲル化したものが好ましい。
一方、塩基性媒体としての塩基性のイオン伝導性ゲルは、上記のような塩基性水溶液を、例えば、カルボキシメチルセルロース、架橋ポリアクリル酸やその塩類、をゲル化剤として用いて、ゲル化したものが好ましい。
なお、上記の酸や塩基は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、ゲル化剤の使用方法も同様である。
また、前記の酸性のイオン交換部材及び塩基性のイオン交換部材としては、イオン交換樹脂を用いた、イオン交換膜、固体高分子電解質膜、濾紙などの形態を含む。好適なものとしては、スルホン酸基やリン酸基などの強酸性基を有する強酸性イオン交換樹脂や、4級アンモニウム基などの強塩基性基を有する強塩基性イオン交換樹脂を用いた各イオン交換部材である。より具体的には、例えば、製品名ダウエックス(Dow社製)や、製品名ダイヤイオン(三菱化学社製)、製品名アンバーライト(Rohm and Hass社製)に代表されるポリビニルスチレン系のイオン交換樹脂や、製品名ナフィオン(DuPont社製)、製品名フレミオン(旭ガラス社製)、製品名アシプレックス(旭化成工業社製)に代表されるポリフルオロヒドロカーボンポリマー系の固体高分子電解質膜、製品名ネオセプタ(トクヤマ社製)、製品名ネオセプタBP−1(トクヤマ社製)に代表されるポリビニルスチレン系のイオン交換膜、ポリスチレン系の繊維状イオネックスイオン交換体で形成されたイオン交換濾紙製品名RX−1(東レ社製)等が挙げられる。
更に、固体超強酸として好適なものとしては、硫酸処理した酸化ジルコニアや貴金属含有酸化ジルコニア等が挙げられる。その他、固体酸として、カオリナイトやモンモリナイト等の粘度鉱物、ゼオライト、複合酸化物、水和酸化物、また酸性物質を添着した活性炭を用いることもできる。
固体超強塩基として好適なものとしては、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム等が挙げられる。その他、固体塩基として、酸化マグネシウム等の金属酸化物及びそれらを含む複合酸化物、水酸化カルシウムのように水への溶解度の低い水酸化物、アルカリ金属やアルカリ土類金属イオン交換ゼオライト、また塩基性物質を添着した活性炭を用いることもできる。
本発明の電池において、酸性媒体及び塩基性媒体は、互いに隣接もしくは近設することを必須とするが、これは、酸性媒体中で水素イオンを放出することにより生成した対陰イオンと、塩基性媒体中で水酸化物イオンを放出したことにより生成した対陽イオンと、により塩を形成させて電荷のバランスをとることを可能とするためである。そのため、例えば、上述のように、両媒体が、酸性水溶液と塩基性水溶液とからなる場合、生成した陽イオン及び/又は陰イオンを透過可能な特性を有している膜、あるいは、生成した陽イオン及び/又は陰イオンが移動可能な塩橋を用いれば、酸性媒体と塩基性媒体との間が分離される態様であってもかまわない。また、それぞれの全体が隣接している必要はなく、その一部が隣接していればよい。
(反応物質)
反応物質は、酸性媒体中に含有させる場合は、当該酸性媒体中で、水素イオンを伴って第1の電極から電子を奪う酸化反応を生成させる物質(酸化剤)であれば、如何なるものをも用いることができる。一方、塩基性媒体中に含有させる場合は、当該塩基性媒体中で、水酸化物イオンを伴って第2の電極へと電子を供与する還元反応を生成させる物質(還元剤)であれば、如何なるものをも用いることができる。
ここでは、好ましい態様として、酸性媒体に含有される反応物質としての第1の物質、及び、塩基性媒体に含有される反応物質としての第2の物質を例に、以下詳細に説明する。
第1の物質としては、水素イオン濃度が高い場合に反応を生じさせる物質であることが好ましい。具体的には、過酸化水素、酸素、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸等の次亜ハロゲン酸等をもちいることができる。また、これらの物質を含有する液体もしくは固体、あるいは、化学変化によってこれらの物質を放出する液体もしくは固体、の状態で第1の物質を供給するようにしてもよい。
また、第2の物質としては、水素イオン濃度が高い場合に反応を生じさせる物質であることが好ましい。具体的には、過酸化水素、水素、ヒドラジン等を用いることができる。また、これらの物質を含有する液体もしくは固体、あるいは、化学変化によってこれらの物質を放出する液体もしくは固体、の状態で第2の物質を供給するようにしてもよい。
第1の物質または第2の物質としては、鉄、マンガン、クロム、バナジウムといった酸化・還元反応によって価数を変化できる金属イオンや、それらの金属錯体を用いることができ、やはりこれらを含有する液体や固体等を用いてこれらの物質を供給することもできる。
上記の中でも、第1の物質及び第2の物質が、同一成分からなることが好ましい。このような物質は、酸性媒体中で、水素イオンを伴って第1の電極から電子を奪う酸化反応を生成させ、塩基性媒体中では、水酸化物イオンを伴って第2の電極へと電子を供与する還元反応を生成させる性質を有する。この場合には、電池の構成が容易になり、従来の電池で大きな課題であった正極側と負極側の化学物質の分離膜の選択の自由度が拡がるとともに、酸性媒体と塩基性媒体が混合されない状態に保てる場合には必ずしも分離膜を必要としない。
第1の物質(酸化剤)及び第2の物質(還元剤)のどちらにも使用できる物質としては、特に過酸化水素が好ましい。この理由については後で詳細に説明する。なお、過酸化水素を含有する液体もしくは固体、あるいは、化学変化によって過酸化水素を放出する液体もしくは固体を用いて、過酸化水素を供給することが、取り扱いがより簡易になる点で好ましい。
第1の物質及び第2の物質の供給手段の1つである上記「液体」は、溶液(溶媒として、水、有機溶媒等を含む)、分散液、ゲルの形態のいずれであってもよい。また、これらの使用形態は、上述した酸性媒体及び塩基性媒体の形態との好ましい組み合わせにより選択されることが望ましい。
過酸化水素濃度は、後述するような反応式から明らかなように、反応を過不足なく進ませるために、酸性媒体中の水素イオン濃度および塩基性媒体中の水酸化物イオン濃度のそれぞれに対して、モル比(「水素イオン」または「水酸化物イオン」:「過酸化水素」)で、2:1となるように含有されることが好ましい。
また、これらの両物質は、一次電池の場合、反応開始以前から媒体中に混合若しくは分散される。また、燃料電池の場合は、液体状の媒体中に始めから混合若しくは分散されるか、電極の近傍に設置された流路を通して、或いは、毛細管への染込みを利用して、或いは直接的に媒体へ添加される方式としてもよい。
本発明の電池によれば、電極での反応に水素イオンH+と水酸化物イオンOH-が関与する場合、酸性媒体中で第1の物質が水素イオンH+を伴って第1の電極から電子を奪う酸化反応を生じさせ、塩基性媒体中で第2の物質が水酸化物イオンOH-を伴って電極へと電子を供与する還元反応を生じさせる。このとき、酸性媒体中での酸化反応による起電力は、塩基性媒体中で酸化反応させるよりも、原理的に大きくなる。これは、水素イオンH+が反応系の物質であるため、水素イオン濃度の高い酸性媒体中では化学平衡が生成系に傾き、結果として酸化電位を高くするためである。また、塩基性媒体中での還元反応による起電力は、酸性媒体中で還元反応させるよりも、原理的に大きくなる。これは、水酸化物イオンOH-が反応系の物質であるため、水酸化物イオン濃度の高い塩基性媒体中では化学平衡が生成系に傾き、結果として酸化電位を低くするためである。
このため、本発明の電池の構成では、電極における酸化・還元反応により生ずる起電力が、電池から得られる電圧の主体的な源であり、電池内部の中和反応の発生箇所が変動する性質を有する領域での起電力が主体的となるバイポーラー型の電池と比べて、安定に電力を発生させることができる。
(第1の電極及び第2の電極)
本発明において、第1の電極は正極であり、第2の電極は負極として機能する。これら第1の電極及び第2の電極の構造は、既述のように、それぞれの電極が、第1の反応伝導部および第2の反応伝導部を具備する。
第1の反応伝導部は、反応物質が電子を奪う反応を促進する第1の反応部と前記第1の反応部へ電子を伝導させる第1の伝導部とに、機能分離されていることが好ましい。第2の反応伝導部も、反応物質が電子を供与する反応を促進させる第2の反応部と前記第2の反応部から電子を伝導させる第2の伝導部とに機能分離されていることが好ましい。
第1の反応部には、反応をより促進させるために、反応部の表面積を大きくした材料、あるいは、前記反応の触媒作用を持つ材料からなり、酸、アルカリに耐性があり、かつ、電気伝導体である材料を使用することが好ましい。より具体的には、活性炭、白金黒、アルミニウム陽極酸化膜、チタン陽極酸化膜等が挙げられる。
第1の伝導部には、酸、アルカリに耐性があり、かつ、伝導体であれば、いかなる材料も用いることができる。その中でも、金属のように良導体であり、かつ、第1の反応部より電気抵抗の低い材料を使用することが好ましい。具体的には白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金等が挙げられる。また、表面を不動態化したチタン、ステンレス、ニッケル、アルミニウム等が挙げられる。また、グラファイトやカーボンナノチューブ等の炭素構造体、アモルファスカーボン、グラッシーカーボン等が挙げられる。ただし、耐久性、電気伝導度の点から、白金、白金黒、酸化白金被覆白金がより好ましい。
第2の反応部は、第1の反応部と同様な材料を使用することが可能で、より具体的には、それぞれ、活性炭、白金黒、アルミニウム陽極酸化膜、チタン陽極酸化膜等が挙げられる。
第2伝導部は、第1の伝導部と同様な材料を使用することが可能で、具体的には、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金等が挙げられる。また、表面を不動態化したチタン、ステンレス、ニッケル、アルミニウム等が挙げられる。また、グラファイトやカーボンナノチューブ等の炭素構造体、アモルファスカーボン、グラッシーカーボン等が挙げられる。ただし、耐久性および電気伝導度の点から、白金、白金黒、酸化白金被覆白金がより好ましい。
反応部の形状、特に反応部の厚み(伝導部と反応部表面の間の距離)は、電子が反応した部分から伝導部に達するまでの電気抵抗を下げるため出来るだけ薄くすることが好ましい。反応部の厚みは、具体的には、1mm以下とすることが好ましい。一方、伝導部の形状は特に制限はないが、電気抵抗が高くなることから、極端な薄膜状、あるいは、細線状のものは避けた方が好ましい。また、反応部と伝導部とは、それぞれ同一の材質としてもよく、また、異なる材質としてもよい。同一の材質とする場合は、例えば、一方を板状とし、他方を網目状とするように各々の形態を相互に異ならせることが好ましい。
反応部と伝導部とを異なる材質とする場合の好ましい組み合わせとしては、白金黒(反応部)と白金(伝導部)との組み合わせ;活性炭(反応部)と金(伝導部)との組み合わせ;活性炭(反応部)と白金黒(伝導部)との組み合わせ;チタン陽極酸化膜(反応部)と金(伝導部)との組み合わせ;が挙げられる。もしくは、反応部に比表面積が大きい材料、伝導部に良導体(金属)との組み合わせも可能である。
更に、本発明において、第1の反応部及び、第2の反応部はそれぞれ電子を奪う反応、供与する反応を行う場を多く提供するためや、前記反応を促進させるために、その一部、または全体が、それぞれ酸性媒体、塩基性媒体に接する必要がある。この形態として好ましいのは、上記に挙げた第1及び第2の反応部の材料が、それぞれ第1及び第2の伝導部表面の一部もしくは全体に付着している状態であることが好ましい。
第1及び第2の反応部、並びに、第1及び第2の伝導部からなる第1および第2の電極のいずれもが、表面積を大きくするため、および反応生成物の排出の点から、板状、薄膜状、網目状、又は繊維状であることが好ましい。特に、本発明の好ましい実施形態である「ペーパー型燃料電池」と「ゲル型一次電池」の場合は、電池内で発生した気体の排出流路となるべく、網目状であることが好ましい。
ここで、「網目状」とは、少なくとも、排出しようとする気体が通り抜けられる貫通路が存在する多孔室状態であることを指す。網目状の電極として、具体的には、金属製のメッシュやパンチングメタル板、発泡金属シートに、上記の電極用材料を、無電解メッキ法、蒸着法、又はスパッタ法によって付着させてもよいし、また、セルロースや合成高分子製の紙類に、同様の方法或いはその組合せを用いて上記の電極用材質を付着させてもよい。
また、第1の電極及び第2の電極が、イオン交換樹脂やイオン伝導性ゲルのような形状保持性の高い両媒体に配置される場合、かかるイオン交換樹脂やイオン伝導性ゲルの表面に、所望の電極用材料を、無電解メッキ法、蒸着法、又はスパッタ法を用いて配置することも好ましい態様である。
(本発明の電池の好ましい実施形態)
以下、本発明の電池の好ましい実施形態について、(1)チップ型流体燃料電池、(2)ゲル型一次電池、及び(3)ペーパー型燃料電池を例に取り説明するが、本発明はこれらの限定されるものではない。
(1)チップ型流体燃料電池:
このチップ型流体燃料電池は、酸性媒体として、硫酸水溶液などの液体を、塩基性媒体として水酸化ナトリウム水溶液などの液体を用いた、酸−塩基バイポーラ反応場を有する。具体的な構成に関して、図2を用いて説明する。図2(a)は、チップ型流体燃料電池の概略上面透視図である。ここに示されるように、チップ型流体燃料電池は、スライドガラス11とカバーガラス10との間にスペーサ(図2(b)における部材12)を介し、毛管流路1(例えば、深さ50μm、幅1000μm)が形成されている。この毛管流路1は、液体の酸性媒体と、液体の塩基性媒体と、を供給するための入口2及び入口3と、排出するための出口4及び出口5とを有する。例えば、入口2から酸性水溶液aを、入口3から塩基性水溶液bを、毛管流路1に流した時、両液体の粘度やその流速が適当である場合には毛管流路1の合流部分において層流(レイノルズ流)が形成される。
この層流について、図2(b)を参照して説明する。図2(b)は、図2(a)のチップ型流体燃料電池をA−A’で切断した際に、両媒体の流れの方向からみた断面図である。図2に示すように、酸性水溶液(層流a)及び塩基性水溶液(層流b)は、毛管流路1の合流部分であっても、それぞれ、層流a及び層流bを形成し、各々が互いに接しながらも、交じり合うことなく、毛管流路1内を流れることになる。そして、層流a及び層流bを形成したまま、合流部分を通過して、分岐部分で再び分離し、出口4から酸性水溶液(層流a)が、出口5から塩基性水溶液(層流b)が排出され、それぞれが独立して回収される。
このような層流を形成している毛管流路1の合流部分の底部には、2つの電極(第1の電極8および第2の電極6)が設けられており、それぞれの接続端子7及び9を通じて、外部へと電力を取り出すことができる。第1の電極8は第1の伝導部8bと第1の反応部8aとから構成され、第2の電極6は第2の伝導部6bと第2の反応部6aとから構成されている。それぞれの伝導部8b,6bとして、白金が流路底部に蒸着されており、さらにそれぞれの伝導部8b,6b上に、白金黒からなる第1の反応部8a、第2の反応部 6aが電解メッキによって設けられている。
このように、層流を形成し、2つの液体が接触しているにも関らず、混合しない状態を形成するためには、毛細管流路における粘性流体の特性を応用することで実現できる。これは、液体の粘性、流速、また、流路形状(管径或いは流路幅や深さ)に依存した定数のレイノルズ数(Re)が約2000以下の場合に起きる現象(レイノルズ流現象)である。この現象を用いると、毛細管中で、適当な粘度と移動速度とを有する2液は、層流となって、非常に混合し難くなる特性が付与される。そのため、両層流に、第1の物質と第2の物質とをそれぞれ共存させた状態で、それぞれの層流中に電極を置くと、酸性媒体中における酸化反応と、塩基性媒体中における還元反応が生じ、起電力が発現して、電池となる。
このチップ型流体燃料電池を1つの単位セルとすると、複数の単位セルを並列若しくは直列に配列することで、それぞれ電流量及び電圧の増加が達成される。このような毛細管流路の複雑な構造は、ガラス、石英、シリコン、高分子フィルム、プラスチック樹脂、セラミック、グラファイト、金属等の基板(チップ)に対して、超音波研削や半導体フォトリソグラィー、また、サンドブラストや射出形成、シリコン樹脂モールディング等の既存加工技術を適用することで容易に作製できる。したがって、単位セルの集積化及び複数のチップを重ねる積層化を行うことで、所望の性能(電流及び電圧)を有する電池システムが構築可能になる。
(2)ゲル型一次電池:
このゲル型一次電池は、酸性媒体として、酸性水溶液をゲル化したイオン伝導性ゲルと、塩基性媒体として、塩基性水溶液をゲル化したイオン伝導性ゲルと、を接触配置してなる、酸−塩基バイポーラ反応場を有する。具体的な構成に関して、図3に示されるゲル型一次電池の概略断面透視図を用いて説明する。
図3に示されるゲル型一次電池は、第1の電極53及び酸性媒体51からなる酸性反応場と、第2の電極51及び塩基性媒体52からなる塩基性反応場と、が接触しており、酸性媒体54に第1の物質を、塩基性媒体52に第2の物質を含有させた構成を有する。例えば、第1の物質及び第2の物質が過酸化水素である場合、過酸化水素水溶液を、酸性媒体51又は塩基性媒体52、若しくはその両方に、共存させておく。これにより、酸性反応場における酸化反応と、塩基性反応場における還元反応が生じ、起電力を発現する。また電極53および54は、過酸化水素と水素イオンとが電極から電子を奪う反応を促進させる第1の反応部55、過酸化水素と水酸化物イオンとが電極へ電子を供与する反応を促進させる第2の反応部56と、それぞれ電子を伝導させる第1及び第3の伝導部57,58からなる。それぞれの電極は、媒体に対して片面から若しくは両面から接触していればよく、その形状は、電池内で発生した気体の排出流路となるべく、網目状であることが好ましい。
このようなゲル型一次電池は、発電に伴って、導電性ゲルに含まれる水素イオンや水酸化物イオン、また、過酸化水素水溶液が消費され(同時に塩が生成する)、それらが無くなった時点で電力の供給は止まる。また、これらの消費される物質は、外部から再供給できないため、一次電池となるが、構成が単純であることに加え、両反応場として、自己保持性の高いゲル状態を利用するため、その反応場を安定に維持することができるため、携帯性・経済性に優れたシール状の電池形態をとることが可能である。
(3)ペーパー型燃料電池:
このペーパー型燃料電池は、酸性媒体及び塩基性媒体として固体状であるものを用い、それらを接触配置してなる、酸−塩基バイポーラー反応場を有する。具体的な構成に関して、図4(a)及び(b)に示されるペーパー型燃料電池の概略断面透視図を用いて説明する。
図4(a)に示されるペーパー型燃料電池は、第1の電極22及び酸性媒体20からなる酸性反応場と、第2の電極32及び塩基性媒体30からなる塩基性反応場と、が接触している状態の構成を有し、そこに、第1の物質及び第2の物質を供給して、発電を行うものである。第1の電極22は第1の伝導部22bと第1の反応部22aとから構成され、第2の電極32は第2の伝導部32bと第2の反応部32aとから構成されている。
例えば、第1の物質及び第2の物質が過酸化水素である場合、過酸化水素の水溶液Lを、図4(a)の矢印のように、滴下若しくは浸透させることで供給する。これにより、酸性反応場における酸化反応と、塩基性反応場における還元反応が生じ、起電力が発現する。また、ここで電極形状は、電池内で発生した気体の排出流路となるべく、網目状であることが好ましい。
また、図4(b)に示されるペーパー型燃料電池は、図4(a)の過酸化水素水溶液の供給方法を変えた態様である。このように、酸性媒体20と塩基性媒体30との界面の一部分に、過酸化水素水溶液を浸透・吸収することの可能な繊維若しくは毛管部材を含む供給部材40を設置することで、この部材40を介して、過酸化水素水溶液が、酸性媒体20及び塩基性媒体30に供給されることになる。これにより、酸性反応場における酸化反応と、塩基性反応場における還元反応が生じ、起電力が発現する。また、ここでも、電極形状は、電池内で発生した気体の排出流路となるべく、網目状であることが好ましい。
酸性媒体20及び塩基性媒体30としては、強酸性置換基(スルホン酸基やリン酸基など)を含有するマトリックスと、強塩基性置換基(4級アンモニウム基など)を含有するマトリックスと、の組み合わせ、強酸性イオン交換樹脂と強塩基性イオン交換樹脂との組み合わせ、強酸性イオン交換濾紙と強塩基性イオン交換濾紙との組み合わせ、固体超強酸と固体超強塩基との組み合わせが好ましい。
上記のような、ペーパー型燃料電池において、酸−塩基バイポーラー反応場の接触界面では、水が水素イオンと水酸化物イオンに分解して供給される。そして、この反応場に外部から過酸化水素水溶液が供給されることで、電力を継続的に発生させることができる。なお、ペーパー型燃料電池においては、過酸化水素水溶液の供給時に、滴下や浸透の手段をとるため、外部ポンプは必要ないという利点がある。また、ペーパー型燃料電池は、電池表面から反応生成物の水が大気中に蒸散する現象を利用することもできる。
以上、本発明の電池の実施態様について説明したが、本発明の構成はこの用途に限定されるものではなく、例えば、上記構成の電池と、従来の水素燃料やメタノール燃料による電池を組み合せて複合発電機として使用することも可能である。
<発電方法>
本発明の発電方法は、第1の反応伝導部を有する第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の反応伝導部を有する第2の電極が配置された塩基性媒体とを互いに隣接もしくは近設させた状態で、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体の少なくともいずれかに含有されてなる反応物質により、前記酸性媒体中での酸化反応及び/または前記塩基性媒体中での還元反応を生じさせて、発電を行うことを特徴とする発電方法である。
本発明の発電方法によれば、上述の如く、電極における酸化・還元反応により生ずる起電力が、電池から得られる電圧の主体的な源となり、その結果、安定に電力を発生させることができる。
本発明の発電方法は、例えば、本発明の電池を使用することで実施することができる。
本発明の電池を用い、反応物質としての第1の物質及び第2の物質を使用した場合、本発明の発電方法における発電機構は、以下に説明する通りになると考えられる。
すなわち、酸性媒体に含有される第1の物質が水素イオンを伴って第1の電極から電子を奪う反応を生じさせ、かつ、塩基性媒体に含有される第2の物質が水酸化物イオンを伴って第2の電極へと電子を供与する反応を生じさせて発電が起こると考えられる。
この反応により、第1物質及び第2の物質が内部エネルギーの低い複数の物質に化学変化することによって、その分のエネルギーを外部に電気エネルギーとして放出して電力を得ることができる。
特に、酸性媒体が酸性水溶液、塩基性媒体が塩基性水溶液からなり、第1の物質及び第2の物質が、いずれも過酸化水素である場合、過酸化水素は、分解反応によって水と酸素を生成する。この化学反応を、本発明の電池のように、別々の電極で酸化反応と還元反応に分離して行うと、起電力が生じる。即ち、過酸化水素は、酸性反応場では酸化作用を有し、一方で、塩基性反応場では還元作用を有するため、起電力が発生する。このような、酸−塩基バイポーラー反応場を利用することで、本発明の発電方法が実現される。
より具体的に、本発明の発電方法について、図1を参照して説明する。図1に示されるように、正極(第1の電極)が配置されている酸性反応場(酸性媒体)では、過酸化水素が酸化剤として働き、下記(式1)に示されるように、過酸化水素の酸素原子が電極から電子を受け取り、水を生成する。また、負極(第2の電極)が配置されている塩基性反応場(塩基性媒体)では、過酸化水素が還元剤として働き、下記(式2)に示されるように、過酸化水素の酸素原子が電極に電子を供与して、酸素と水を生成する。これら反応により、起電力が発生し、発電が行われる。
22(aq)+2H++2e- → 2H2O ・・・(式1)
22(aq)+2OH- → O2+2H2O+2e- ・・・(式2)
上記式中、「(aq)」とは水和状態を示す(下記(式3)も同様)。
なお、反応場内においては、酸性媒体中に存在する水素イオンの対アニオン(図1中では、硫酸イオンSO4 2-に相当する)と、塩基性媒体中に存在する水酸化物イオンの対カチオン(図1中では、ナトリウムイオンNa+)と、が両媒体の界面で塩を形成することで、電荷のバランスを取ることができる。このとき、形成される塩は、水溶液中では通常イオン化する方が安定であるため、塩の形成による起電力への効果は、電極における酸化或いは還元反応における起電力と比べるとはるかに小さい。この結果、電極反応が主体的となる本発明のバイポーラー型電池は、酸性・塩基性媒体界面における中和反応を主体としたバイポーラー型電池と比べ、安定した発電を行える性質を有することとなる。
上記(式1)と(式2)の半反応式をまとめたイオン反応式(電荷のバランスが、酸性・塩基性媒体界面での水のイオン分解によって取られる場合)を下記(式3)に示す。
22(aq) → H2O+1/2O2 ・・・(式3)
熱力学計算によると、この反応のエンタルピー変化(ΔH)、エントロピー変化(ΔS)、ギブスの自由エネルギー変化(ΔG、温度T:単位はケルビン(K))は、それぞれ、ΔH=−94.7kJ/mol、ΔS=28J/Kmol、ΔG=ΔH−TΔS=−103.1kJ/molとなる。
また、理論起電力(nは反応に関る電子数、Fはファラデー定数)と理論最大効率(η)は、それぞれ、E=−ΔG/nF=1.07V、η=ΔG/ΔH×100=109%と計算される。この反応の理論的特徴は、過酸化水素分解反応でエントロピーが増加してΔSの符号が正になることである。そのため、ΔGの絶対値がΔHより大きくなり、理論最大効率が100%を超える。これとは異なり、水素−酸素系やダイレクトメタノール系等、他の燃料電池反応では、ΔSの符号は負である。
これらのことから、本発明の発電方法において、第1の物質及び第2の物質に過酸化水素を用いた場合の理論的特徴を以下に挙げる。
従来より知られている他の燃料電池では、原理的に、エントロピー変化量TΔSを発電に利用できず熱として放出する。一方、本機構では、外界から熱を吸収して得たエントロピーの増加分を発電に利用することができる。そして、反応温度Tが高い場合の方が、ΔGの絶対値が大きくなり起電力が高くなる。
実用電池では、イオン反応式の理論起電力だけで出力電圧が決まるのではなく、過電圧等によって電圧が低下し同時に熱を発生する。例えば、単位電池をスタックして集積化する場合、或いは、電池を製品内部に組み込む場合に、この熱が大きな問題になる。しかし、上述のように、本発明の発電方法によれば、理論的にはその熱を発電に再利用することができ、全体的な熱発生が少なくなる可能性がある。また、発電に利用できるエネルギー総量に相当するΔGは水素・酸素燃料電池に比較して半分程度であるが、n=1(水素−酸素系の燃料電池の場合はn=2)であるために理論起電力は同程度となる。
反応物質として過酸化水素を使用した場合は、図5に示されるように、出力の向上が確認される。
図5の結果は、以下のようにして得られたものである。すなわち、まず、図2で表されるチップ型流体燃料電池において、過酸化水素の含有量を、「0」、「0.10mol/l」、「0.22mol/l」、「0.45mol/l」、「0.75mol/l」と変化させて、発電実験を行い、電流−電圧特性を求め、電池の評価を行ったものである。
なお、当該実験において、酸性水溶液aは、市販の3重量%過酸化水素水溶液(日本薬局方オキシドール、健栄製薬株式会社)を使用し、硫酸(特級96%、関東化学株式会社)及び蒸留水を混合して、水素イオンの濃度が上記過酸化水素含有量それぞれに対してモル比で1:1になるように調製したものである。また、塩基性水溶液bは、同過酸化水素水溶液に水酸化ナトリウム(特級97%、関東化学株式会社)及び蒸留水を混合して、水酸化物イオンの濃度が上記過酸化水素含有量それぞれに対してモル比で1:1になるように調製したものである。
そして、チップ型流体燃料電池の入口2から酸性水溶液aを、入口3から塩基性水溶液bをそれぞれ外部ポンプにより注入した。試料液の流速は、いずれも、流路中央部分で24μl/sec(レイノルズ数Re:約670)、実験温度は室温であった。酸性水溶液aと接触する流路底面の第1の電極(第1の反応伝導部)としては白金薄膜上に形成された白金黒薄膜(面積:0.026cm2)を使用し、塩基性水溶液bと接触する流路底面の第2の電極(第2の反応伝導部)としては、白金薄膜上に形成された白金黒薄膜(面積:0.026cm2)を使用した。
図5より、過酸化水素の濃度の上昇と共に、開放電圧、最大出力、電流密度それぞれが上昇している。
上記のことから、本発明の電池及び本発明の発電方法において、第1の物質及び第2の物質に過酸化水素を用いた場合には、既述のような効果の他に、下記のような効果が得られる。
(1)過酸化水素は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する反応に伴って二酸化炭素を放出せず、その代わりに酸素を放出する。また、電池内の構造要素に、発火物や有害な重金属類等を使用しないため、容易な外装で電池を構成できる。それ故、製造・使用・廃棄の製品サイクル全体に渡って環境安全性に優れる。
(2)過酸化水素は、常温常圧で液体であるため、貯蔵のために重い金属ボンベ等を必要としないし、水と自由に混合できるためゲル化が容易であり、貯蔵性・携帯性が優れている。
(3)酸化剤として酸素を使用する必要が無いため、空気量の限られた閉鎖環境下、また空気中に塵やゴミ等が多く含まれる過酷環境下でも、その使用に支障がない。
(4)過酸化水素は、その工業的製造方法として有機法(アントラキノンを中間体(何度も再利用するので消費しない)として、触媒による水素の接触還元と空気酸化とによって合成する方法)等がすでに確立されており、現状でも安定的に安価で供給されている。これに加え、周辺部品が少なくシンプルな構造で電池を構成し得るため、電池システム全体の重量及び体積を小さくでき、かつ低コスト化や高耐久性を図れる。
(5)さらに、従来の燃料電池とは異なり、可燃性・発火性の燃料を使用しないため、安全性にも優れる。
上記においては、第1の物質及び第2の物質として過酸化水素を用いた発電方法について述べたが、両物質に他の物質(化合物)を用いた場合にも、電極側で酸化・還元反応を生じさせる点では実質的に同じである。
そのため、本発明の電池電池及び本発明の発電方法によれば、その発電機構により、安定した発電が可能となる。
また、本発明の電池及び本発明の発電方法において、電極反応で生成した生成物は、電極間ではなく電極近傍に生成されるため、これらを除去する必要がある場合には、電池構造を内包する筐体の外側から容易に除去することが可能となる。また、電極反応で生成した生成物が水であって、酸性媒体或いは塩基性媒体が水溶液である場合、若しくは、第1の物質及び第2の物質を水溶液に混合、溶解、分散させて用いる場合には、生成された水を両媒体中に拡散させることや、電池外に排出することで、容易に電極近傍から除去することができる。
さらに、上記水等を除去するには、第1の電極及び第2の電極のそれぞれに、発電阻害物質を除去する発電阻害物質除去部材が接触もしくは近設されることが好ましい。
既述のように、バイポーラ型電池では、電極上で発生する発電反応を阻害するような物質(発電阻害物質)が生成する。このような発電阻害物質により発電が阻害されると、安定的に起電力を生じさせるのが困難となり、電気エネルギーの供給が困難となってしまう。そこで、本発明では、発電阻害物質が生成しやすい第1の電極及び第2の電極のそれぞれに発電阻害物質除去部材を設けることで、これを除去していることが可能である。かかる部材を設けることで、安定した起電力の発生に寄与し電気エネルギーの供給をスムーズなものとすることできるので、優れた放電寿命を有する電池とすることができる。
発電に伴って生成する発電阻害物質としては、反応物質の種類や酸性媒体及び塩基性媒体の種類等にもよるが、例えば、発電により生成する水が挙げられる。この場合、発電反応に伴い生じた水は、電極近傍で経時により水の層を形成し、水素イオンH+及び水酸化物イオンOH-、並びに、反応物質の移動を困難にする。その結果、電極表面上での水素イオンH+及び水酸化物イオンOH-、並びに、反応物質の関わる反応が起きにくくなり、安定的に起電力を生じさせること及び、電気エネルギーの供給が困難となる。そこで、本発明では、発電阻害物質除去部材を設けて、かかる問題を解消している。
既述のように、電極近傍で生成する発電阻害物質を効率よく除去する観点から、発電阻害物質除去部材は、第1の電極及び第2の電極のそれぞれに接触もしくは近設して設けられる。発電阻害物質除去部材が上記電極に近設してなる場合、当該発電阻害物質除去部材は、電極との最短距離が1mm以内にあることが好ましい。また、発電阻害物質除去部材が設けられる領域としては、電極表面の全体でも、その一部(例えば、電極が酸性媒体及び塩基性媒体と接触する領域)であってもよい。さらに、電極が網目状又は繊維状の場合、反応阻害物質除去部材は、電極の内側(酸性媒体等と接触する側)にあっても外側(酸性媒体等と接触しない側)にあってもよい。
本発明において、発電阻害物質除去部材は、電極の近傍もしくは表面での反応に伴って発生する発電阻害物質を除去する作用をもつ物質であれば、如何なるものを用いることができる。例えば、主たる生成物が両電極上とも水である場合は、発電阻害物質除去部材は吸水性を持つ物質であればよく、高吸水性ポリマーもしくはその塩が最も好ましい。なぜなら、電極表面上で発生した水を自身が化学変化を伴わずに当該水をポリマー鎖内に取り込むからである。
ここで、「高吸水性ポリマー」とは、水分を自身の重さの100倍以上取り込むことができ、多少の力を加えても取り込んだ水を外に出さないポリマーをいう。
高吸水性ポリマーおよびその塩のうち、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ヒアルロン酸およびそれらの塩などが、好ましい例として挙げられる。中でもポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースおよびその塩が、吸水性の高さや加工のしやすさの点から、より好ましい。
発電阻害物質除去部材の形態としては、シート状等種々の形態を採用することが可能で、電極に塗布あるいは、圧着、また、発電阻害物質除去部材そのもののゲル化し電極に付着、あるいは発電阻害物質除去部材に電極材料を蒸着やメッキ、あるいは酸性媒体、塩基性媒体中に分散などの手段により、電極に接触もしくは近設させることができる。また、シート状とする場合の厚みは、発電阻害物質除去部材の材質にもよるが、0.1〜0.5mmとすることが好ましい。
以下に本発明の効果を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図3に示されるゲル型一次電池を下記材料を使用して作製した。すなわち、酸性媒体51として、5mol/lの硫酸、5mol/lの過酸化水素を、10質量%の無水二酸化ケイ素でゲル化したものを使用した。塩基性媒体52として、5mol/lの水酸化ナトリウム、5mol/lの過酸化水素を、8質量%の架橋ポリアクリル酸ナトリウムでゲル化したものを使用した。第1の反応部55及び第2の反応部56として、2.3cm2の活性炭繊維からなる布(クラレケミカル株式会社製、クラクティブクロス)をそれぞれの媒体に密着させた。その反対側に第1の伝導部57及び第2の伝導部58として3cm2の白金黒メッシュ(100メッシュのニッケルメッシュ表面をめっき処理により白金黒化したもの:白金黒被覆厚:約100μm)をそれぞれ第1の反応部55及び第2の反応部56に密着させ配置してゲル型一次電池を作製した。
作製したゲル型一次電池を1Ωから1MΩまでの抵抗器に接続し、そのとき流れる電流及び印加される電圧をデジタルマルチメーター(KEITHLEY製2000)を用いて測定した。電流−電圧特性の結果を図6に示す。図6から、本実施例の場合、開放電圧833mV、また、最大出力14mW/cm2(起電圧:504mV、電流28mA/cm2の時)が得られた。
また、ゲル型一次電池を最大出力が得られた時の抵抗器(100Ω)に接続し、放電させた。そのとき抵抗器に印加されている電流値、電圧値をデジタルマルチメーター(KEITHLEY製2000)を用いて時間に対して測定した。その結果、1時間以上放電し続けたことを確認した。それ故、長い時間、安定して発電することが可能であることが確認できた。
(比較例1)
上記の実施例1と同じゲル型一次電池を使用して、試料液に過酸化水素を含有させずに、酸性媒体1および硫酸及び塩基性媒体2を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
かかる実験条件で得られた、電流−電圧特性を図6に示す。比較例1では、酸性、塩基性媒体間に生じる電圧による開放電力(100mV)は測定されたものの、有意な電流は得られなかった。
(比較例2)
上記の実施例1と同じ酸性、塩基性媒体を使用して、単一電極構造のゲル型一次電池を作製した。第1の電極3及び第2の電極の4として、2.3cm2の活性炭繊維からなる布(クラレケミカル株式会社製、クラクティブクロス)をそれぞれの媒体に密着させた。この一次電池を1Ωから1MΩまでの抵抗器に接続し、そのとき流れる電流および印加される電圧をデジタルマルチメーター(KEITHLEY製2000)を用いて測定した。
かかる実験条件で得られた、電流−電圧特性を図6に示す。図6から、本実施例の場合、開放電圧851mV、また、最大出力1.2mW/cm2(起電圧:446mV、電流2.8mA/cm2の時)が得られた。本比較例では、伝導部がなかったため、実施例1に比較して電極の電気抵抗が大きくなり、結果として、反応部で生成した電子、あるいは反応部へ流れる電子の伝導が悪くなり、最大出力、および電池から流れうる電流量が小さくなった。
(比較例3)
上記の実施例1と同じ酸性、塩基性媒体を使用して、単一電極構造のゲル型一次電池を作製した。第1の電極3及び第2の電極の4として、白金黒メッシュ(100メッシュのニッケルメッシュ表面を白金黒化したもの)をそれぞれの媒体に密着させた。この一次電池を1Ωから1MΩまでの抵抗器に接続し、そのとき流れる電流および印加される電圧をデジタルマルチメーター(KEITHLEY製2000)を用いて測定した。
かかる実験条件で得られた、電流−電圧特性を図6に示す。図6から、本実施例の場合、開放電圧757mV、また、最大出力7.6mW/cm2(起電圧:458mV、電流17mA/cm2の時)が得られた。
本比較例では、反応部がなかったため、電極上でに電子の授受を伴う反応の促進性が低下し、酸性媒体、塩基性媒体中の反応物質である過酸化水素が、実施例1に比較して、十分反応できず、結果として、最大出力、流れる電流量が、比較例2と同じく小さくなった。
以上、本実施例によれば、図6に示すように、良好な電圧及び電流が得られており、また、本発明の新規な構成の電池、及び該電池を用いた発電方法により、発電が行なわれて、電気エネルギーを供給できることが判明した。加えて、実施例1のように反応部および伝導部から構成される電極を用いることによって、電池の出力を向上させることが可能となり、安定した発電が可能となった。
本発明の電池を用いた発電機構(発電方法)を示す説明図である。 (a)は、本発明の電池の1実施態様であるチップ型流体燃料電池の概略上面透視図であり、(b)は、(a)のチップ型流体燃料電池をA−A’で切断した際に、両媒体の流れの方向からみた断面図である。 本発明の電池の1実施態様であるゲル型電池の概略断面図である。 本発明の電池の1実施態様であるペーパー型燃料電池の概略断面透視図である。 過酸化水素の濃度変化と放電特性との関係の結果を示す図である。 実施例及び比較例における電流−電圧特性の結果を示す図である。
符号の説明
1・・・毛管流路
2,3・・・入口
4,5・・・出口
6・・・第2の電極
6a・・第2の反応部
6b・・第2の伝導部
8・・・第1の電極
8a・・第1の反応部
8b・・第1の伝導部
10・・・カバーガラス
11・・・スライドガラス

Claims (20)

  1. 発電部が、少なくとも、第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の電極が配置された塩基性媒体とを備え、
    前記酸性媒体及び前記塩基性媒体が互いに隣接もしくは近設されてなり、
    前記酸性媒体及び前記塩基性媒体の少なくともいずれかに反応物質が含有されてなり、
    前記第1の電極が、第1の反応伝導部を具備し、第2の電極が、第2の反応伝導部を具備することを特徴とする電池。
  2. 前記第1の反応伝導部が、前記反応物質が電子を奪う反応を促進する第1の反応部と電子伝導性を有する第1の伝導部とからなり、
    前記第2の反応伝導部が、前記反応物質が電子を供与する反応を促進する第2の反応部と電子伝導性を有する第2の伝導部とからなることを特徴とする請求項1に記載の電池。
  3. 前記第1の反応部及び前記第2の反応部のそれぞれが、活性炭、白金黒、アルミニウム陽極酸化膜、及びチタン陽極酸化膜のうち1つもしくは複数の材料からなり、それぞれが前記第1の伝導部及び前記第2の伝導部のそれぞれの表面の一部または全体に載置されていることを特徴とする請求項2に記載の電池。
  4. 前記第1の伝導部及び前記第2の伝導部のそれぞれが、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金、表面を不動態化したチタン、表面を不動態化したステンレス、表面を不動態化したニッケル、表面を不動態化したアルミニウム、炭素構造体、アモルファスカーボン、及びグラッシーカーボンのうち1つもしくは複数の材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載の電池。
  5. 前記第1の電極及び前記第2の電極が、板状、薄膜状、網目状、又は繊維状であることを特徴とする請求項1に記載の電池。
  6. 前記第1の電極及び前記第2の電極が、無電解メッキ法、蒸着法、又はスパッタ法により、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体のそれぞれ配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の電池。
  7. 前記反応物質が、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体のそれぞれに含有されてなることを特徴とする請求項1に記載の電池。
  8. 前記酸性媒体に含有される前記反応物質としての第1の物質と、前記塩基性媒体に含有される前記反応物質としての第2の物質とが、同一の物質であることを特徴とする請求項7に記載の電池。
  9. 前記反応物質が、過酸化水素であることを特徴とする請求項1に記載の電池。
  10. 前記反応物質が、当該反応物質を含有する液体もしくは固体、あるいは、化学変化によって当該反応物質を生成する液体もしくは固体、の状態で供給されてなることを特徴とする請求項1に記載の電池。
  11. 前記酸性媒体が酸性水溶液からなり、かつ、前記塩基性媒体が塩基性水溶液からなることを特徴とする請求項1に記載の電池。
  12. 流路構造を有し、その内部で前記酸性水溶液と前記塩基性水溶液とが層流を形成することを特徴とする請求項11に記載の電池。
  13. 前記酸性水溶液が、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、過ヨウ素酸、オルトリン酸、ポリリン酸、硝酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロ珪酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロ砒酸、ヘキサクロロ白金酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、蓚酸、サリチル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、及びピクリン酸からなる群より選択される酸を1以上含むことを特徴とする請求項11に記載の電池。
  14. 前記塩基性水溶液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、及び水酸化テトラブチルアンモニウムを含む群から選択される塩基を1以上含む、又は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、及びアルミン酸カリウムを含む群から選択されるアルカリ金属塩を1以上含むことを特徴とする請求項11に記載の電池。
  15. 前記酸性媒体が酸性のイオン交換部材から構成され、かつ、前記塩基性媒体が塩基性のイオン交換部材から構成されることを特徴とする請求項1に記載の電池。
  16. 前記イオン交換部材が、ポリビニルスチレン系のイオン交換樹脂、ポリフルオロヒドロカーボンポリマー系の高分子電解質膜、ポリビニルスチレン系のイオン交換膜、及び繊維状ポリスチレン系のイオン交換濾紙からなる群より選択されることを特徴とする請求項15に記載の電池。
  17. 前記酸性媒体が酸性のイオン伝導性ゲルから構成され、かつ、前記塩基性媒体が塩基性のイオン伝導性ゲルから構成されることを特徴とする請求項1に記載の電池。
  18. 前記酸性のイオン伝導性ゲルが、酸性水溶液を水ガラス、無水二酸化ケイ素、寒天、架橋ポリアクリル酸、又はその塩類によりゲル化してなることを特徴とする請求項17に記載の電池。
  19. 前記塩基性のイオン伝導性ゲルが、塩基性水溶液をカルボキシメチルセルロース、架橋ポリアクリル酸、又はその塩類によりゲル化されてなることを特徴とする請求項17に記載の電池。
  20. 第1の反応伝導部を有する第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の反応伝導部を有する第2の電極が配置された塩基性媒体とを互いに隣接もしくは近設させた状態で、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体の少なくともいずれかに含有されてなる反応物質により、前記酸性媒体中での酸化反応及び/または前記塩基性媒体中での還元反応を生じさせて、発電を行うことを特徴とする発電方法。
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