JP2006004796A - 乾電池 - Google Patents

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一則 穴澤
Hiroshi Shitaya
啓 下谷
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健太郎 岸
Tomoko Miyahara
知子 宮原
Takashi Morikawa
尚 森川
Masashi Hasegawa
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Abstract

【課題】 高くかつ安定な起電力を得ることが可能で液漏れがない新規な乾電池を提供すること。
【解決手段】 発電部が、少なくとも、第1の電極1が配置された半固体又は固体の酸性媒体2と、第2の電極3が配置された半固体又は固体の塩基性媒体4とを備え、さらに、酸性媒体及び塩基性媒体が互いに隣接又は近設されており、酸性媒体及び塩基性媒体の少なくともいずれかに反応物質が含有されている乾電池。
【選択図】 図2

Description

本発明は、乾電池に関し、特に、酸性媒体とそれに接した塩基性媒体とを利用した乾電池に関する。
電池は、物質が持つ化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する装置である。また、その化学エネルギーを使い切るまで電力を提供する一次電池、使い切った後に充電操作によって化学エネルギーを再び蓄えて再使用が可能な二次電池、更に、外部から化学エネルギーを有する物質を継続的に供給することで電気エネルギーを得る燃料電池に分類できる。現在、多種類の電池が開発されているが、各電池はそれぞれ、環境安全性、経済性、供給できる電気エネルギー量、携帯性や貯蔵性、使用環境対応性、リサイクル性等の各項目について長所と短所が異なるので、使用目的に合わせて電池が選択され、実用に供されている。いずれの電池においても共通の重要な技術要素は、どのような化学物質の反応を利用するのか、その反応をどのようにして促進するのか、また、その化学物質をどのような形態で貯蔵・供給・回収するのかという点にある。
電池では、還元反応(相手に電子を与えるか、若しくは酸素を引き抜く)を引き起こす還元剤と、酸化反応(相手から電子を引き抜くか、若しくは酸素を与える)を引き起こす酸化剤と、の2種の化学物質を使用する。その化学反応を、相対する2つの電極で別々に引き起こすことによって、発生した電子のエネルギーを外部に取り出す(電子の発生に伴って両極で生成したイオンは電池内部で中和される)。それらの反応効率は、使用する化学物質の種類と反応様式、電極材質や活性度、また、電解質を含めた反応場の環境に依存する。更に、どのような物質を選択して電池を構成するかは、前述した使用時のみならず、製造時・廃棄時も含めた電池システム全体の良否に関わるポイントである。
反応効率を向上させるものとして、例えば以下の特許文献1には、正極ケース内に充填された円筒形の正極合剤と、正極合剤の中空部にセパレータを介して充填されたゲル負極と、ゲル負極の中央部に設けられた集電子を備えるアルカリ乾電池において、反応効率の低いゲル負極の中央部を定型物(多孔性高分子、多孔性セラミックス、吸水性高分子、天然繊維、合成繊維)で置換することにより、負極における反応効率を改善することが記載されている。しかしながら、この乾電池は定型物をゲル負極の中央部に配置するという、新たな構成部材及び工程を増やしこれがコストを押し上げる要因となっている。
ところで、現状の電池では、効率よく上記反応を実現させるために、有害な物質を使用している。そのため、電池は、一般に使用済み電池として回収し、処理されている。
例えば、マンガン系や水銀系の乾電池の場合、電極に亜鉛や水銀あるいはリチウムといった非常に有害性の物質を一部含んでいる。これらの電池は、経済性や化学物質の貯蔵性に優れるが、使用後にそれらの重金属類を放置すると環境に悪影響を与えてしまうため、厳密な回収が必要になる。それらの電池のパッキングとして金属が使用されているため、消却処理も不可能である。また、充電による再利用ができないため、使用後の電池廃棄や再資源化に多くのコストがかかってしまう。
近年、すべての製品に、環境への配慮が求められている。しかし、電池は上で述べたように、厳密な回収を行うことによって、環境への影響をできるだけ低くしようとしている。しかし、すべての電池の回収、再利用は不可能である。例えば、近年電池は、様々なデバイス、製品に使用されている。例えば、携帯電話や、時計、パソコンの基板などである。このように多様な使用用途の製品の電池をすべて回収することは困難であるし、コストもかかる。また、使用者が電池が入っていると認識せずに使用している製品もあるからである。
特開2004−30970号公報
以上から、本発明は上記従来の課題を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、高くかつ安定な起電力を得ることが可能で液漏れがない新規な乾電池を提供することにある。
上記目的は下記の乾電池を提供することにより解決される。
(1)発電部が、少なくとも、第1の電極が配置された半固体又は固体の酸性媒体と、第2の電極が配置された半固体又は固体の塩基性媒体とを備え、さらに、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体が互いに隣接又は近設されており、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体の少なくともいずれかに反応物質が含有されていることを特徴とする乾電池。
(2)前記発電部の少なくとも一部が、耐酸性および耐塩基性材料からなる外装材に覆われていることを特徴とする前記(1)に記載の乾電池。
(3)前記外装材が、ポリマー樹脂、炭素構造体、アモルファスカーボン、及びグラッシーカーボンからなる群より選択される1以上の材料から構成されることを特徴とする前記(1)に記載の乾電池。
(4)前記反応物質が、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体のそれぞれに含有されてなることを特徴とする前記(1)に記載の乾電池。
(5)前記酸性媒体に含有される前記反応物質としての第1の物質と、前記塩基性媒体に含有される前記反応物質としての第2の物質とが、同一の物質であることを特徴とする前記(4)に記載の乾電池。
(6)前記反応物質が、過酸化水素であることを特徴とする前記(1)に記載の乾電池。
(7)前記反応物質が、当該反応物質を含有する液体もしくは固体、又は、化学変化によって当該反応物質を生成する液体もしくは固体、の状態で供給されてなることを特徴とする前記(1)に記載の乾電池
(8)前記酸性媒体が酸性水溶液を含み、かつ、前記塩基性媒体が塩基性水溶液を含むことを特徴とする前記(1)に記載の乾電池。
(9)前記酸性水溶液が、硫酸、メタンスルホン酸、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、過ヨウ素酸、オルトリン酸、ポリリン酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロ珪酸、ヘキサフルオロリン酸、酢酸、クエン酸、蓚酸、サリチル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、及び、フマル酸からなる群より選択される酸を1以上含むことを特徴とする前記(8)に記載の乾電池。
(10)前記塩基性水溶液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、及び水酸化テトラブチルアンモニウムを含む群から選択される塩基を1以上含む、又は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、及びアルミン酸カリウムを含む群から選択されるアルカリ金属塩を1以上含むことを特徴とする前記(8)に記載の乾電池。
(11)前記酸性媒体が酸性のイオン交換部材から構成され、かつ、前記塩基性媒体が塩基性のイオン交換部材から構成されることを特徴とする前記(1)に記載の乾電池。
(12)前記イオン交換部材が、ポリビニルスチレン系のイオン交換樹脂、ポリフルオロヒドロカーボンポリマー系の高分子電解質膜、ポリビニルスチレン系のイオン交換膜、及び繊維状ポリスチレン系のイオン交換濾紙からなる群より選択されることを特徴とする前記(11)に記載の乾電池。
(13)前記酸性媒体が酸性のイオン伝導性ゲルから構成され、かつ、前記塩基性媒体が塩基性のイオン伝導性ゲルから構成されることを特徴とする前記(1)に記載の乾電池。
(14)前記酸性のイオン伝導性ゲルが、酸性水溶液を、架橋ポリアクリル酸、寒天、又はその塩類によりゲル化させたものであることを特徴とする前記(13)に記載の乾電池。
(15)前記塩基性のイオン伝導性ゲルが、塩基性水溶液をカルボキシメチルセルロース、架橋ポリアクリル酸、又はその塩類によりゲル化させたものであることを特徴とする前記(13)に記載の乾電池。
(16)前記酸性媒体が酸性水溶液と炭素系粉末を含むペーストであることを特徴とする前記(1)に記載の乾電池。
(17)前記塩基性媒体が塩基性水溶液と炭素系粉末を含むペーストであることを特徴とする前記(1)に記載の乾電池。
(18)前記第1の電極が、炭素構造体、アモルファスカーボン、及びグラッシーカーボンからなる群より選択される1以上の材料から構成されることを特徴とする前記(1)に記載の乾電池。
(19)前記第2の電極が、炭素構造体、アモルファスカーボン、及びグラッシーカーボンからなる群より選択される1以上の材料から構成されることを特徴とする前記(1)に記載の乾電池。
(20)前記第1の電極及び第2の電極が、板状、薄膜状、網目状、又は繊維状であることを特徴とする前記(1)に記載の乾電池。
(21)前記第1の電極及び前記第2の電極が、無電解メッキ法、蒸着法、又はスパッタ法により、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体のそれぞれ配置されてなることを特徴とする前記(1)に記載の乾電池。
(22)前記発電部において、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体が互いに、セパレータを介し、隣接もしくは近設されていることを特徴とする前記(1)に記載の乾電池。
本発明の乾電池及び発電方法は、電極における酸化・還元反応により生ずる起電力が、電池から得られる主体的な源であるため、高くかつ安定な起電力を得ることができる。また、固体又は半固体の媒体を用いたため、液漏れがなく、更に液体の媒体を用いる場合に比べ、反応がいちどきに進まないため電池の寿命が長いという特徴を有する。
また、乾電池の媒体材料として環境に悪影響を与える金属(例えば特定の重金属)を用いる必要がないので廃棄処理が容易である他、外装材を簡便にすることができる。更に、乾電池を構成する部材として必ずしも金属材料を用いる必要はなく、電極、セパレータ、外装材等を炭素材料や有機材料で構成することが可能であるため、一層使用後の廃棄処理が容易となるとともに軽量化も実現される。
以下、本発明の乾電池及び発電方法について詳細に説明する。
<乾電池>
本発明の乾電池は、その発電部が、第1の電極が配置された半固体又は固体の酸性媒体と、第2の電極が配置された半固体又は固体の塩基性媒体とを備えてなる。そして、酸性媒体及び塩基性媒体は隣接もしくは近設してなり、酸性媒体及び塩基性媒体の少なくともいずれかに反応物質が含有されてなる。
ここで半固体酸性媒体および半固体塩基性固体媒体とはゲル状またはペースト状の媒体をいう。
本発明の乾電池は、上述の各部材を備える構成を有するバイポーラー型の一次電池である。なお、本発明において、バイポーラー型の電池とは、酸性媒体と塩基性媒体が隣接もしくは近設し、これらの中に電気エネルギーを取り出すための物質(反応物質)と電極が含まれる構成を有するものである。
酸性媒体または塩基性媒体に含有される反応物質は、下記のような作用により正極側及び/または負極側での電極反応を生じさせ、効率のよい電気エネルギーの発生を可能とする。すなわち、かかる反応物質が、酸性媒体または塩基性媒体に存在しないと、電池としての十分な起電力が得られないことになる。
例えば、上記反応物質が、酸性媒体及び塩基性媒体のそれぞれに含有されてなる場合、酸性媒体中の反応物質である第1の物質は、その酸性媒体中に含まれる水素イオンを伴って第1の電極から電子を奪う反応を生じさせる。一方、塩基性媒体中の反応物質である第2の物質は、その塩基性媒体中に含まれる水酸化物イオンを伴って第2の電極へと電子を供与する反応を生じさせる。
特に、本発明における乾電池は、まず、(1)上記の酸性媒体中またはこれに接触する電極近傍で第1の物質及び水素イオンが共存し、共に反応系物質として第1の電極から電子を奪う(酸化する)反応を引き起こす。また、(2)上記塩基性媒体中或いはこれに接触する電極近傍で第2の物質及び水酸化物イオンが共存し、共に反応系物質として電極に電子を与える(還元する)反応を引き起こす。このような(1)及び(2)の反応が同時に進行して、外部回路を駆動する電気エネルギーを発生する。
なお、本発明の乾電池は、バイポーラー型反応場において、酸性媒体中の水素イオンは、第1の物質による第1の電極から電子を奪う反応に加わり、また、その濃度増加は反応を促進する(化学平衡を生成系方向にずらす)作用を有する。一方、塩基性媒体を構成する水酸化物イオンは、第2の物質による第2の電極へと電子を供与する反応に加わり、また、その濃度増加は反応を促進する作用を有する。このため、水素イオン濃度或いは水酸化物イオン濃度を高くする、即ち、酸性媒体中ではpHを低くし、塩基性媒体ではpHを高くすることで反応を増強させることが可能となり、出力を高めることが可能な構成を有している点でも有効である。
また、本発明の乾電池を構成する各部材(第1の電極及び第2の電極)は、酸性、塩基性媒体に腐食されない材料、例えば、炭素および導電性を有する炭化水素を骨格とする有機物、または、白金や金からなる金属材料を用いることが好ましい。
更に、本発明の乾電池は通常の乾電池とは異なり、酸性及び塩基性媒体に重金属を含む物質を使用しないでよいことも特徴である。従って、本発明の乾電池は厳重なパッキングも不必要となるだけではなく、通常の乾電池のように厳密な回収が不必要となる。その結果、環境汚染の虞は無くなり、かつ、回収、再利用にかかるコストが削減できる。
以下、本発明の乾電池を構成する各部材について、詳細に説明する。
(酸性媒体及び塩基性媒体)
本発明において、酸性媒体は、重金属を含まず、pH7未満(好ましくは、pHが3以下)である媒体を指し、水素イオンが存在する酸性反応場を形成し得ることが好ましい。また、塩基性媒体は重金属を含まず、pH7を超える(好ましくは、pHが11以上)媒体を指し、水酸化物イオンが存在する塩基性反応場を形成し得ることが好ましい。ここでいう重金属とは比重が4または5g/cm3以上の金属を指し、主なものは、鉛・水銀・カドミウム・マンガンなどが挙げられる。
これらの酸性媒体及び塩基性媒体としては、それぞれが独立に、半固体状態(ゲル状態やペースト状態)、固体状態のいずれの態様であってもよいが、両媒体が同じ態様であることが好ましい。また、酸性媒体及び塩基性媒体としては、有機化合物、無機化合物の種類に関らず用いることができる。
なお、いずれの場合でも、後述するような材料を使用する。
酸性媒体と塩基性媒体との好ましい組み合わせは、例えば、硫酸や塩酸、リン酸等の酸性水溶液と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アンモニウム化合物等の塩基性水溶液と、の水溶液の組み合わせ;それらの水溶液をゲル化剤によってゲル化したイオン伝導性ゲルの組み合わせ;スルホン酸基やリン酸基を有する酸性のイオン交換部材と、4級アンモニウム基を有する塩基性のイオン交換部材と、のイオン交換部材(イオン交換樹脂を用いた膜、濾紙などの形態を含む)の組み合わせ;硫酸処理した活性炭等の固体酸と、塩基処理した活性炭等の固体塩基と、の固体物の組み合わせ;などが挙げられる。
より具体的には、酸性水溶液としては、硫酸、メタンスルホン酸、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、過ヨウ素酸、オルトリン酸、ポリリン酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロ珪酸、ヘキサフルオロリン酸、酢酸、クエン酸、蓚酸、サリチル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、及びフマル酸からなる群より選択される酸を1以上含む水溶液を用いることが好ましく、中でも、強酸である、硫酸、塩酸、リン酸を含むことがより好ましい。
また、塩基性水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、及び、水酸化テトラブチルアンモニウムを含む群から選択される塩基を1以上含む、又は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、及びアルミン酸カリウムを含む群から選択されるアルカリ金属塩を1以上含む水溶液を用いることができ、中でも、強塩基である、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを含むことがより好ましい。
さらに、酸性媒体としての酸性のイオン伝導性ゲルは、上記のような酸性水溶液を、架橋ポリアクリル酸、又はその塩類などのゲル化剤を用いて、ゲル化したものが好ましい。
一方、塩基性媒体としての塩基性のイオン伝導性ゲルは、上記のような塩基性水溶液を、例えば、カルボキシメチルセルロース、架橋ポリアクリル酸やその塩類、をゲル化剤として用いて、ゲル化したものが好ましい。
なお、上記の酸や塩基は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、ゲル化剤の使用方法も同様である。
ペースト状態として好適なものとしては、酸性液体または塩基性液体と粉末を混合したものが挙げられるが、特に炭素系粉末は導電性が良好な点から好ましい。炭素系粉末としては、グラファイト、活性炭、カーボンブラック等が好適であるが、特にこれらに限定されない。
また、前記の酸性のイオン交換部材及び塩基性のイオン交換部材としては、イオン交換樹脂を用いた、イオン交換膜、固体高分子電解質膜、濾紙などの形態を含む。好適なものとしては、スルホン酸基やリン酸基などの強酸性基を有する強酸性イオン交換樹脂や、4級アンモニウム基などの強塩基性基を有する強塩基性イオン交換樹脂を用いた各イオン交換部材である。より具体的には、例えば、製品名ダウエックス(Dow社製)や、製品名ダイヤイオン(三菱化学社製)、製品名アンバーライト(Rohm and Hass社製)に代表されるポリビニルスチレン系のイオン交換樹脂や、製品名ナフィオン(DuPont社製)、製品名フレミオン(旭ガラス社製)、製品名アシプレックス(旭化成工業社製)に代表されるポリフルオロヒドロカーボンポリマー系の固体高分子電解質膜、製品名ネオセプタ(トクヤマ社製)、製品名ネオセプタBP−1(トクヤマ社製)に代表されるポリビニルスチレン系のイオン交換膜、ポリスチレン系の繊維状イオネックスイオン交換体で形成されたイオン交換濾紙製品名RX−1(東レ社製)等が挙げられる。
更に、固体酸として好適なものとしては、カオリナイトやモンモリナイト等の粘度鉱物、ゼオライト、また酸性物質を添着した活性炭が挙げられる。
固体塩基として好適なものとしては、塩基性物質を添着した活性炭が挙げられる。
本発明の乾電池において、酸性媒体及び塩基性媒体は、互いに隣接もしくは近設することを必須とするが、これは、酸性媒体中で水素イオンを放出することにより生成した対陰イオンと、塩基性媒体中で水酸化物イオンを放出したことにより生成した対陽イオンと、により塩を形成させて電荷のバランスをとることを可能とするためである。そのため、例えば、上述のように、両媒体が、酸性水溶液と塩基性水溶液とからなる場合、生成した陽イオン及び/又は陰イオンを透過可能な特性を有している膜、あるいは、生成した陽イオン及び/又は陰イオンが移動可能な塩橋を用いれば、酸性媒体と塩基性媒体との間が分離される態様であってもかまわない。また、それぞれの全体が隣接している必要はなく、その一部が隣接していればよい。
(反応物質)
反応物質は、酸性媒体中に含有させる場合は、当該酸性媒体中で、水素イオンを伴って第1の電極から電子を奪う酸化反応を生成させる物質(酸化剤)であれば、如何なるものをも用いることができる。一方、塩基性媒体中に含有させる場合は、当該塩基性媒体中で、水酸化物イオンを伴って第2の電極へと電子を供与する還元反応を生成させる物質(還元剤)であれば、如何なるものをも用いることができる。
ここでは、好ましい態様として、酸性媒体に含有される反応物質としての第1の物質、及び、塩基性媒体に含有される反応物質としての第2の物質を例に、以下詳細に説明する。
第1の物質としては、水素イオン濃度が高い場合に反応が促進される物質であることが好ましい。具体的には、過酸化水素、酸素等をもちいることができる。また、これらの物質を含有する液体もしくは固体、あるいは、化学変化によってこれらの物質を放出する液体もしくは固体、の状態で第1の物質を供給するようにしてもよい。
また、第2の物質としては、水酸化物イオン濃度が高い場合に反応が促進される物質であることが好ましい。具体的には、過酸化水素、水素等を用いることができる。また、これらの物質を含有する液体もしくは固体、あるいは、化学変化によってこれらの物質を放出する液体もしくは固体、の状態で第2の物質を供給するようにしてもよい。
上記の中でも、第1の物質及び第2の物質が、同一成分からなることが好ましい。このような物質は、酸性媒体中で、水素イオンを伴って第1の電極から電子を奪う酸化反応を生成させ、塩基性媒体中では、水酸化物イオンを伴って第2の電極へと電子を供与する還元反応を生成させる性質を有する。
酸化剤及び還元剤のどちらにも使用できる物質としては、特に過酸化水素が好ましい。この理由については後で詳細に説明する。なお、過酸化水素を含有する液体もしくは固体、あるいは、化学変化によって過酸化水素を放出する液体もしくは固体を用いて、過酸化水素を供給することが、取り扱いがより簡易になる点で好ましい。
第1の物質及び第2の物質の供給手段の1つである上記「液体」は、溶液(溶媒として、水、有機溶媒等を含む)、分散液、ゲルの形態のいずれであってもよい。また、これらの使用形態は、上述した酸性媒体及び塩基性媒体の形態との好ましい組み合わせにより選択されることが望ましい。
また、第1の物質及び第2の物質は、過酸化水素の場合はそれぞれ、酸性媒体および塩基性媒体中に、水素イオン、水酸化物イオンに対してそれぞれ、mol比で2(水素イオン、水酸化物イオン):1(過酸化水素)になるように含有されるのが最も好ましい。なぜなら、後述する発電反応から、上記比率で含有された場合が、過酸化水素が過不足無く反応するからである。
本発明の乾電池によれば、電極での反応に水素イオンH+と水酸化物イオンOH-が関与する場合、酸性媒体中で第1の物質が水素イオンH+を伴って第1の電極から電子を奪う酸化反応を生じさせ、塩基性媒体中で第2の物質が水酸化物イオンOH-を伴って電極へと電子を供与する還元反応を生じさせる。このとき、酸性媒体中での酸化反応による起電力は、塩基性媒体中で酸化反応させるよりも、原理的に大きくなる。これは、水素イオンH+が反応系の物質であるため、水素イオン濃度の高い酸性媒体中では化学平衡が生成系に傾き、結果として酸化電位を高くするためである。また、塩基性媒体中での還元反応による起電力は、酸性媒体中で還元反応させるよりも、原理的に大きくなる。これは、水酸化物イオンOH-が反応系の物質であるため、水酸化物イオン濃度の高い塩基性媒体中では化学平衡が生成系に傾き、結果として酸化電位を低くするためである。
このため、本発明のバイポーラー型乾電池の構成では、電極における酸化・還元反応により生ずる起電力が、電池から得られる電圧の主体的な源であり、電池内部の中和反応の発生箇所が変動する性質を有する領域での起電力が主体的となるバイポーラー型の電池と比べて、安定に電力を発生させることができる。
(第1の電極及び第2の電極)
本発明において、第1の電極は正極であり、第2の電極は負極として機能する。これら第1の電極及び第2の電極の材質としては、炭素および、炭化水素を骨格とする有機物からなるものが好ましい。より具体的には、第1の電極(正極)として、グラファイトや活性炭、カーボンナノチューブ等の炭素構造体、アモルファスカーボン、グラッシーカーボン、それらを分散させたポリマー樹脂等が挙げられる。ただし、伝導度の点から、グラファイト、活性炭がより好ましい。
第2の電極(負極)としては、グラファイトや活性炭、カーボンナノチューブ等の炭素構造体、アモルファスカーボン、グラッシーカーボン、それらを分散させたポリマー樹脂等が挙げられる。ただし、伝導度の点から、グラファイト、活性炭がより好ましい。
本発明において、第1の電極及び第2の電極のいずれもが、板状、薄膜状、網目状、又は繊維状であることが好ましい。特に、本発明の実施形態の場合は、電池内で発生した気体の排出流路となるべく、網目状であることが好ましい。ここで、「網目状」とは、少なくとも、排出しようとする気体が通り抜けられる貫通路が存在する多孔質状態であることを指す。
網目状の電極として、具体的には、セルロースや合成高分子製の紙類に、無電解メッキ法、蒸着法、又はスパッタ法によって上記の電極用材質を付着させてもよいし、カーボン繊維で網目状に織り込んでもよい。
また、第1の電極及び第2の電極が、イオン交換樹脂やイオン伝導性ゲルのような形状保持性の高い両媒体に配置される場合、かかるイオン交換樹脂やイオン伝導性ゲルの表面に、所望の電極用材料を、無電解メッキ法、蒸着法、又はスパッタ法を用いて配置することも好ましい態様である。
(セパレータ)
本発明では、酸性媒体と塩基性媒体を隔てるセパレータを特に必要としないが、酸性媒体および塩基性媒体の状態によって、両媒体を隔離する必要がある場合には、セパレータを設置しても問題ない。セパレータは両媒体を隔てつつ、イオンを通過させる役割を持つ。それ故、セパレータは一般的に不織布や多孔性の膜が用いる。例えば、ビニロン繊維や、ビスコースレーヨン繊維、α−セルロース成分98%以上のリンターパルプ、マーセル化クラフトパルプ等を配合し、バインダーとしてポリビニルアルコール繊維を添加した合成繊維とセルロース繊維の混抄紙やポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンの微多孔膜、ガラス繊維等の微孔性膜などが好ましい。
(外装材)
本発明では、少なくとも発電部の一部を外装材で覆うことが好ましい。外装材で覆うことで、外部からの衝撃や腐食等から内部を保護することができる。本発明の乾電池は、通常の乾電池とは異なり有害な重金属等は含まないので、比較的簡易な外装で足りる。それにより、外装材が軽くなり、電池自体が非常に軽くなる利点がある。さらには、外装材に金属を使用しなければ、使用済み乾電池を別途回収する必要もない。
外装材の材料としては、種々のものを使用することができるが、酸、アルカリに耐性をもつ材料であることが好ましい。
具体的には、ポリマー樹脂が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエーテル等が用いることが出来る。
その他には、炭素構造体、アモルファスカーボン、及びグラッシーカーボンからなる群より選択される1以上の材料も用いることが出来る。
(本発明の乾電池の好ましい実施形態)
以下、本発明の電池の好ましい実施形態を挙げ説明するが、本発明はこれらの限定されるものではない。
(ゲル型乾電池)
ゲル型電池は、酸性媒体として酸性水溶液をゲル化したイオン伝導性ゲルと、塩基性媒体として塩基性水溶液をゲル化したイオン伝導性ゲルとを隣接配置してなり、酸−塩基バイポーラー反応場を有する。具体的な構成に関して、図2に示されるゲル型電池の概略断面図を用いて説明する。
図2に示されるゲル型電池は、第1の電極1及び酸性媒体2からなる酸性反応場と、第2の電極3及び塩基性媒体4からなる塩基性反応場とが接触しており、酸性媒体2に不図示の第1の物質を、塩基性媒体4に不図示の第2の物質を含有させた構成を有する。
例えば、第1の物質及び第2の物質が過酸化水素である場合、過酸化水素水溶液を、酸性媒体2又は塩基性媒体4、あるいはその両方に共存させておく。これにより、酸性反応場における酸化反応と、塩基性反応場における還元反応が生じ、起電力が発現する。
また電極は、媒体に対して片面から若しくは両面から接触していればよく、その形状は、電池内で発生した気体の排出流路となるべく、網目状であることが好ましい。
さらに、その外側に前記物質すべてを内包する外装材5が全体を覆うことによって、電池の形状を決定している。その際、第1の電極1及び第2の電極3の一部が外部電極と接続されている。
外装材5の形状を変えることによって、例えば、直方体の外装材や、円筒状の外装材を作製し、その形状に合わせた第1の電極1及び第2の電極3を用いれば、酸性媒体2及び塩基性媒体4の形状を自由に変えられるので、直方体の乾電池や円筒形の乾電池が作製でき、その大きさも任意にすることが可能であり、単1から単5の円筒形乾電池やボタン型乾電池、角形乾電池などの各種乾電池を作製することができる。
このようなゲル型電池は、発電に伴って、導電性ゲルに含まれる水素イオンや水酸化物イオン、また、過酸化水素水溶液が消費され(同時に塩が生成する)、それらが無くなった時点で電力の供給は止まる。また、これらの消費される物質は、外部から再供給できないため、一次電池となるが、構成が単純であることに加え、両反応場として、自己保持性の高いゲル状態を利用するため、その反応場を安定に維持することができる。そのため、携帯性・経済性に優れた様々な電池形態をとることが可能である。更に、ゲル型の場合は酸性媒体と塩基性媒体がその界面において、混ざり合うということがないため、特にセパレータを用いなくても電池を構成することが可能であり、電池の構造が簡単になるという利点を有する。
(ペースト型乾電池)
ペースト型電池は酸性媒体として、酸性水溶液と炭素系粉末とを、塩基性媒体として、塩基性水溶液と炭素系粉末とを、それぞれ混合し、セパレータを介して隣接配置させたもので、酸−塩基バイポーラー反応場を有する。具体的な構成に関して、図3に示されるペースト型電池の概略断面図を用いて説明する。
図3に示されるペースト型電池は、第1の電極11及び酸性媒体12からなる酸性反応場と、第2の電極13及び塩基性媒体14からなる塩基性反応場とが、セパレータ19を介して接触しており、酸性媒体12に不図示の第1の物質を、塩基性媒体14に不図示の第2の物質を含有させた構成を有する。また、図3中、17は外部電極1を、18は外部電極2をそれぞれ示し、20は補強材である。
例えば、第1の物質及び第2の物質が過酸化水素である場合、過酸化水素水溶液を、酸性媒体12又は塩基性媒体14、あるいはその両方に共存させておく。これにより、酸性反応場における酸化反応と、塩基性反応場における還元反応が生じ、起電力が発現する。
また電極は、媒体に対して片面から若しくは両面から接触していればよく、その形状は、電池内で発生した気体の排出流路となるべく、網目状であることが好ましい。
さらに、その外側に前記物質すべてを内包する外装材15が全体を覆うことによって、電池の形状を決定している。その際、第1の電極11及び第2の電極13の一部のみが露出する構造になっている。また、外装材の表面を更に補強材で覆うこともできる。
外装材15の形状を変えることによって、例えば、直方体の外装材や、円筒状の外装材を作製し、その形状に合わせた第1の電極11及び第2の電極13を用いれば、酸性媒体12及び塩基性媒体14の形状は自由に変えられるので、直方体の乾電池や円筒形の乾電池が作製でき、その大きさも任意にすることが可能であり、単1から単5の円筒形乾電池やボタン型乾電池、角形乾電池などの各種乾電池を作製することができる。
このようなペースト型電池は、発電に伴って、ペースト内に含まれる水素イオンや水酸化物イオン、また、過酸化水素水溶液が消費され(同時に塩が生成する)、それらが無くなった時点で電力の供給は止まる。また、これらの消費される物質は、外部から再供給できないため、一次電池となるが、構成が単純であることに加え、両反応場として、自己保持性の高いペースト状態を利用するため、その反応場を安定に維持することができる。そのため、携帯性・経済性に優れた様々な電池形態をとることが可能である。
<発電方法>
本発明の乾電池は、乾電池を構成する前記酸性媒体及び前記塩基性媒体の少なくともいずれかに含有されている反応物質により、前記酸性媒体中での酸化反応及び/又は前記塩基性媒体中での還元反応を生じさせて、発電を行う。
この発電方法によれば、上述の如く、電極における酸化及び/又は還元反応により生ずる起電力が、電池から得られる電圧の主体的な源となり、その結果、安定に電力を発生させることができる。
本発明の乾電池を用い、既述の第1の物質及び第2の物質を使用した場合、本発明の発電方法における発電機構は、以下に説明する通りになると考えられる。
すなわち、酸性媒体に含有される第1の物質が水素イオンを伴って第1の電極から電子を奪う反応を生じさせ、かつ、塩基性媒体に含有される第2の物質が水酸化イオンを伴って第2の電極へと電子を供与する反応を生じさせて発電が起こると考えられる。
この反応により、第1物質及び第2の物質が内部エネルギーの低い複数の物質に化学変化することによって、その分のエネルギーを外部に電気エネルギーとして放出して電力を得ることができる。
特に、酸性媒体が酸性水溶液、塩基性媒体が塩基性水溶液を含み、第1の物質及び第2の物質がいずれも過酸化水素である場合、過酸化水素は、分解反応によって水と酸素を生成する。この化学反応を、本発明の乾電池のように、別々の電極で酸化反応と還元反応に分離して行うと、起電力が生じる。即ち、過酸化水素は、酸性反応場では酸化作用を有し、一方で、塩基性反応場では還元作用を有するため、起電力が発生する。このような、酸−塩基バイポーラー反応場を利用することで、本発明の発電方法が実現される。
より具体的に、本発明の発電方法について、図1を参照して説明する。図1に示されるように、正極(第1の電極)が配置されている酸性反応場(酸性媒体)では、過酸化水素が酸化剤として働き、下記(式1)に示されるように、過酸化水素の酸素原子が電極から電子を受け取り、水を生成する。また、負極(第2の電極)が配置されている塩基性反応場(塩基性媒体)では、過酸化水素が還元剤として働き、下記(式2)に示されるように、過酸化水素の酸素原子が電極に電子を供与して、酸素と水を生成する。これら反応により起電力が発生し発電が行われる。
22(aq)+2H++2e- → 2H2O ・・・(式1)
22(aq)+2OH- → O2+2H2O+2e- ・・・(式2)
上記式中、「(aq)」とは水和状態を示す(下記(式3)も同様)。
なお、反応場内においては、酸性媒体中に存在する水素イオンの対アニオン(図1中では、硫酸イオンSO4 2-に相当する)と、塩基性媒体中に存在する水酸化物イオンの対カチオン(図1中では、ナトリウムイオンNa+)と、が両媒体の界面で塩を形成することで、電荷のバランスを取ることができる。このとき、形成される塩は、水溶液中では通常イオン化する方が安定であるため、塩の形成による起電力への効果は、電極における酸化或いは還元反応における起電力と比べるとはるかに小さい。この結果、電極反応が主体的となる本発明のバイポーラー型乾電池は、酸性・塩基性媒体界面における中和反応を主体としたバイポーラー型電池と比べ、安定した発電を行える性質を有することとなる。
上記(式1)と(式2)の半反応式をまとめたイオン反応式(電荷のバランスが、酸性・塩基性媒体界面での水のイオン分解によって取られる場合)を下記(式3)に示す。
22(aq) → H2O+1/2O2 ・・・(式3)
熱力学計算によると、この反応のエンタルピー変化(ΔH)、エントロピー変化(ΔS)、ギブスの自由エネルギー変化(ΔG、温度T:単位はケルビン(K))は、それぞれ、ΔH=−94.7kJ/mol、ΔS=28J/Kmol、ΔG=ΔH−TΔS=−103.1kJ/molとなる。
また、理論起電力(nは反応に関る電子数、Fはファラデー定数)と理論最大効率(η)は、それぞれ、E=−ΔG/nF=1.07V、η=ΔG/ΔH×100=109%と計算される。この反応の理論的特徴は、過酸化水素分解反応でエントロピーが増加してΔSの符号が正になることである。そのため、ΔGの絶対値がΔHより大きくなり、理論最大効率が100%を超える。これとは異なり、水素−酸素系やダイレクトメタノール系等、他の燃料電池反応では、ΔSの符号は負である。
これらのことから、本発明の発電方法において、第1の物質及び第2の物質に過酸化水素を用いた場合の理論的特徴を以下に挙げる。
従来より知られている他の燃料電池では、原理的に、エントロピー変化量TΔSを発電に利用できず熱として放出する。一方、本機構では、外界から熱を吸収して得たエントロピーの増加分を発電に利用することができる。そして、反応温度Tが高い場合の方が、ΔGの絶対値が大きくなり起電力が高くなる。
実用電池では、イオン反応式の理論起電力だけで出力電圧が決まるのではなく、過電圧等によって電圧が低下し同時に熱を発生する。例えば、単位電池をスタックして集積化する場合、或いは、電池を製品内部に組み込む場合に、この熱が大きな問題になる。しかし、上述のように、本発明の発電方法によれば、理論的にはその熱を発電に再利用することができ、全体的な熱発生が少なくなる可能性がある。また、発電に利用できるエネルギー総量に相当するΔGは水素・酸素燃料電池に比較して半分程度であるが、n=1(水素−酸素系の燃料電池の場合はn=2)であるために理論起電力は同程度となる。
また、上記のことから、本発明の乾電池及び本発明の発電方法において、第1の物質及び第2の物質に過酸化水素を用いた場合には、既述のような効果の他に、下記のような効果が得られる。
(1)過酸化水素は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する反応に伴って二酸化炭素を放出せず、その代わりに酸素を放出する。また、電池内の構造要素に、発火物・可燃物や有害な重金属類等を使用する必要がなく、さらに電極、外装材が炭素もしくは、有機物から構成可能なため、使用後、別途回収する必要が無く、焼却処理可能となる。それ故、製造・使用・廃棄の製品サイクル全体に渡って環境安全性に優れる。
(2)過酸化水素は、常温常圧で液体であるため、貯蔵のために重い金属ボンベ等を必要としないし、水と自由に混合できるためゲル化が容易であり、貯蔵性・携帯性が優れている。
(3)酸化剤として酸素を使用する必要が無いため、空気量の限られた閉鎖環境下、また空気中に塵やゴミ等が多く含まれる過酷環境下でも、その使用に支障がない。
(4)過酸化水素は、その工業的製造方法として有機法(アントラキノンを中間体(何度も再利用するので消費しない)として、触媒による水素の接触還元と空気酸化とによって合成する方法)等がすでに確立されており、現状でも安定的に安価で供給されている。これに加え、周辺部品が少なくシンプルな構造で電池を構成し得るため、電池システム全体の重量及び体積を小さくでき、かつ低コスト化や高耐久性を図れる。
上記においては、第1の物質及び第2の物質として過酸化水素を用いた発電方法について述べたが、両物質に他の物質(化合物)を用いた場合にも、電極側で酸化・還元反応を生じさせる点では実質的に同じである。
そのため、本発明の乾電池及び本発明の発電方法によれば、その発電機構により、安定した発電が可能となる。
また、本発明の乾電池及び本発明の発電方法において、電極反応で生成した生成物は、電極間ではなく電極近傍に生成される。そのため、これらを除去する必要がある場合には、電池構造を内包する外装材の外側から容易に除去することが可能となる。また、電極反応で生成した生成物が水であって、酸性媒体或いは塩基性媒体が水溶液を含む場合、若しくは、第1の物質及び第2の物質を水溶液に混合、溶解、分散させて用いる場合には、生成された水を両媒体中に拡散させることや、電池外に排出することで、容易に電極近傍から除去することができる。
以上、本発明の乾電池及び発電方法について説明したが、本発明の構成は、既述のような構成に限定されるものではない。
例えば、上記構成の乾電池と、従来の水素燃料やメタノール燃料による電池を組み合せて複合発電機として使用することも可能である。
以下に本発明の効果を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図2に示されるゲル型乾電池を下記材料を使用して作製した。すなわち、5mol/lの硫酸水溶液、及び、反応物質である第1の物質として5mol/lの過酸化水素を同量混合したものに、0.3質量%のアガロース(寒天)を加えてゲル化したものを酸性媒体2として使用した。また、5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液、及び、反応物質である第2の物質として5mol/lの過酸化水素水溶液を、2:1(体積比)で混合したものに、0.3質量%のアガロースを加えてゲル化したものを塩基性媒体4として使用した。
第1の電極1及び第2の電極3としては、4.5cm2(1.8×2.5cm)の活性炭繊維を使用し、それぞれを、酸性媒体2及び塩基性媒体4に密着させて配置した。
このようにして作製したゲル型電池を、縦、横の長さそれぞれ2cm、厚さ2mmのポリエチレン樹脂製直方体の外装材5で外装し、第1の電極1及び第2の電極3のそれぞれの先端を露出させた。
以上のようにして、ゲル型の乾電池を作製した。
作製した電池について、下記条件にて発電実験を行った。すなわち、この電池を1Ωから1MΩまでの抵抗器に接続し、そのとき流れる電流及び印加される電圧をデジタルマルチメーター(KEITHLEY製2000)を用いて測定した。
上記の実験条件の電池を用いて得られた電流−電圧特性を図4に示す。図4から、本実施例の場合、開放電圧2.4V、また、最大出力21mW/cm2(起電圧:1.3V、電流16.6mA/cm2の時)が得られた。
(実施例2)
図3に示されるペースト型電池を下記材料を使用して作製した。すなわち、5mol/lの硫酸水溶液、及び、反応物質である第1の物質として5mol/lの過酸化水素水溶液を同量混合したものを、グラファイト粉末と2:98の質量比で混合したものを酸性媒体12として作製した。また、5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液、及び、反応物質である第2の物質として5mol/lの過酸化水素水溶液を、2:1(体積比)で混合したものを、グラファイト粉末と2:98の質量比で混合したものを塩基性媒体14として作製した。
第1の電極1及び第2の電極13としては活性炭繊維を使用し、それぞれを、酸性媒体12及び塩基性媒体14内に配置した。また、酸性媒体および塩基性媒体の間にセルロース膜を配し、セパレータとした。
さらに酸性媒体、塩基性媒体の周辺にポリエチレン樹脂製直方体の外装材15で外装し、第1の電極11及び第2の電極13のそれぞれの先端のみ外装材15外部に露出させ、外部電極17、18に接続した。
以上のようにして、ペースト型の乾電池を作製した。
作製した乾電池について、実施例1と同様に測定した。
上記の実験条件の乾電池を用いて得られた電流−電圧特性を図5に示す。図5から、本実施例の場合、開放電圧1.7V、また、最大出力6mW/cm2(起電圧:916mV、電流6mA/cm2の時)が得られた。かかる結果より、本実施例の乾電池は、十分に実用可能であることが確認できた。
以上、実施例1、2の乾電池では、図4,5に示すように、良好な電圧及び電流が得られており、本発明の新規な構成の乾電池、及び該電池を用いた発電方法により、発電が行われて、電気エネルギーを供給できることが判明した。
本発明の乾電池を用いた発電機構(発電方法)を示す説明図である。 ゲル型電池の概略断面図である。 ペースト型電池の概略断面図である。 ゲル型電池を用いた実施例1における電流−電圧特性の結果を示す図である。 ペースト型電池を用いた実施例2における電流−電圧特性の結果を示す図である。
符号の説明
1、11 第1の電極
2、12 酸性媒体
3、13 第2の電極
4、14 塩基性媒体
5、15 外装材
17 外部電極1
18 外部電極2
19 セパレータ
20 補強材

Claims (22)

  1. 発電部が、少なくとも、第1の電極が配置された半固体又は固体の酸性媒体と、第2の電極が配置された半固体又は固体の塩基性媒体とを備え、さらに、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体が互いに隣接又は近設されており、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体の少なくともいずれかに反応物質が含有されていることを特徴とする乾電池。
  2. 前記発電部の少なくとも一部が、耐酸性および耐塩基性材料からなる外装材に覆われていることを特徴とする請求項1に記載の乾電池。
  3. 前記外装材が、ポリマー樹脂、炭素構造体、アモルファスカーボン、及びグラッシーカーボンからなる群より選択される1以上の材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載の乾電池。
  4. 前記反応物質が、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体のそれぞれに含有されてなることを特徴とする請求項1に記載の乾電池。
  5. 前記酸性媒体に含有される前記反応物質としての第1の物質と、前記塩基性媒体に含有される前記反応物質としての第2の物質とが、同一の物質であることを特徴とする請求項4に記載の乾電池。
  6. 前記反応物質が、過酸化水素であることを特徴とする請求項1に記載の乾電池。
  7. 前記反応物質が、当該反応物質を含有する液体もしくは固体、又は、化学変化によって当該反応物質を生成する液体もしくは固体、の状態で供給されてなることを特徴とする請求項1に記載の乾電池。
  8. 前記酸性媒体が酸性水溶液を含み、かつ、前記塩基性媒体が塩基性水溶液を含むことを特徴とする請求項1に記載の乾電池。
  9. 前記酸性水溶液が、硫酸、メタンスルホン酸、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、過ヨウ素酸、オルトリン酸、ポリリン酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロ珪酸、ヘキサフルオロリン酸、酢酸、クエン酸、蓚酸、サリチル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、及び、フマル酸からなる群より選択される酸を1以上含むことを特徴とする請求項8に記載の乾電池。
  10. 前記塩基性水溶液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、及び水酸化テトラブチルアンモニウムを含む群から選択される塩基を1以上含む、又は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、及びアルミン酸カリウムを含む群から選択されるアルカリ金属塩を1以上含むことを特徴とする請求項8に記載の乾電池。
  11. 前記酸性媒体が酸性のイオン交換部材から構成され、かつ、前記塩基性媒体が塩基性のイオン交換部材から構成されることを特徴とする請求項1に記載の乾電池。
  12. 前記イオン交換部材が、ポリビニルスチレン系のイオン交換樹脂、ポリフルオロヒドロカーボンポリマー系の高分子電解質膜、ポリビニルスチレン系のイオン交換膜、及び繊維状ポリスチレン系のイオン交換濾紙からなる群より選択されることを特徴とする請求項11に記載の乾電池。
  13. 前記酸性媒体が酸性のイオン伝導性ゲルから構成され、かつ、前記塩基性媒体が塩基性のイオン伝導性ゲルから構成されることを特徴とする請求項1に記載の乾電池。
  14. 前記酸性のイオン伝導性ゲルが、酸性水溶液を、架橋ポリアクリル酸、寒天、又はその塩類によりゲル化させたものであることを特徴とする請求項13に記載の乾電池。
  15. 前記塩基性のイオン伝導性ゲルが、塩基性水溶液をカルボキシメチルセルロース、架橋ポリアクリル酸、又はその塩類によりゲル化させたものであることを特徴とする請求項13に記載の乾電池。
  16. 前記酸性媒体が酸性水溶液と炭素系粉末を含むペーストであることを特徴とする請求項1に記載の乾電池。
  17. 前記塩基性媒体が塩基性水溶液と炭素系粉末を含むペーストであることを特徴とする請求項1に記載の乾電池。
  18. 前記第1の電極が、炭素構造体、アモルファスカーボン、及びグラッシーカーボンからなる群より選択される1以上の材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載の乾電池。
  19. 前記第2の電極が、炭素構造体、アモルファスカーボン、及びグラッシーカーボンからなる群より選択される1以上の材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載の乾電池。
  20. 前記第1の電極及び第2の電極が、板状、薄膜状、網目状、又は繊維状であることを特徴とする請求項1に記載の乾電池。
  21. 前記第1の電極及び前記第2の電極が、無電解メッキ法、蒸着法、又はスパッタ法により、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体のそれぞれに配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の乾電池。
  22. 前記発電部において、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体が互いに、セパレータを介し、隣接もしくは近設されていることを特徴とする請求項1に記載の乾電池。
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