JP2005155383A - 油圧アクチュエータ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は油圧アクチュエータ制御装置に関し、目標作動量の変化に遅れることなく高い精度で実作動量を追従させることを可能にする。
【解決手段】 油圧アクチュエータ2への作動油の供給量を調整する流量調整弁4の操作量を、目標作動量の時間変化率と推定ライン油圧とに基づき油圧アクチュエータ2の逆モデルを用いて算出し、算出した操作量に従い流量調整弁4を制御する。なお、ライン油圧は、油圧アクチュエータ2の非作動時のライン油圧であるベース油圧と油圧アクチュエータ2の作動に伴う油圧低下量とから推定することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、油圧アクチュエータの作動量を制御する制御装置に関し、特に、内燃機関において吸気弁或いは排気弁の開閉タイミングを可変制御するバルブタイミング可変機構に用いて好適の油圧アクチュエータ制御装置に関する。
従来、内燃機関の出力や燃費或いは排気エミッションを向上させるための手段として、クランク軸に対するカム軸の位相角を変化させることでバルブ(吸気弁或いは排気弁)の開閉タイミングを可変制御するバルブタイミング可変機構が知られている。バルブタイミング可変機構では、クランク軸に対するカム軸の位相角を変化させるためのアクチュエータとして、油圧アクチュエータ(例えば、特許文献1、特許文献2参照)や電磁ブレーキ(例えば、特許文献3参照)が用いられている。
油圧アクチュエータを用いる場合、油圧アクチュエータの作動量は、オイルコントロールバルブ(流量調整弁)によって油圧アクチュエータへの作動油の供給量を調整することで制御することができる。従来の油圧アクチュエータを用いたバルブタイミング可変機構では、特許文献1又は2に開示されるように、クランク軸に対するカム軸の実位相角をセンサで検出し、実位相角と目標位相角との偏差をオイルコントロールバルブの操作量にフィードバックすることで、油圧アクチュエータの作動量を目標位相角に応じた作動量に制御している。
上記のようなフィードバック制御では、目標位相角が変更された場合に、実位相角が目標位相角に収束するまでの応答遅れが生じる。この応答遅れが大きいと、適切な開閉タイミングを実現できない時間が長くなり、排気エミッション等の悪化を招いてしまうことになる。この点に関し、特許文献1に記載の従来技術では、開閉タイミングの変化速度に応じてフィードバック制御の制御ゲインを変更することで、収束応答性の向上を図っている。また、特許文献2に記載の従来技術では、ライン油圧から求まる油圧アクチュエータの駆動力に応じてフィードバック制御の制御ゲインを変更することで、油圧アクチュエータの作動に伴うライン油圧の低下によって収束応答性が低下するのを防止している。
特開2000−145485号公報 特開2001−82188号公報 特開2001−241339号公報
しかしながら、上記の従来技術のように適宜フィードバック制御の制御ゲインを変更したとしても、フィードバック制御における応答遅れを完全には無くすことはできない。今日では、排気エミッション等の環境性能の向上が強く要望されており、バルブタイミング可変機構には、より高精度での開閉タイミング制御が求められている。つまり、目標位相角が変更される過渡状態において、応答遅れなく実位相角を変更できるような油圧アクチュエータの制御が求められている。
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、目標作動量の変化に遅れることなく高い精度で実作動量を追従させることを可能にした油圧アクチュエータ制御装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、油圧アクチュエータの作動量を制御する制御装置において、
前記油圧アクチュエータへの作動油の供給量を調整する流量調整弁と、
前記油圧アクチュエータの目標作動量を設定する目標作動量設定手段と、
作動油のライン油圧を推定するライン油圧推定手段と、
前記目標作動量設定手段で設定される目標作動量の時間変化率と前記ライン油圧推定手段で推定されるライン油圧とに基づき、前記油圧アクチュエータの逆モデルを用いて前記流量調整弁の操作量を算出する操作量算出手段と、
前記操作量算出手段で算出された操作量に従い前記流量調整弁を制御する制御手段と、
を備えることを特徴としている。
第2の発明は、第1の発明において、前記ライン油圧推定手段は、
前記油圧アクチュエータの非作動時のライン油圧であるベース油圧を推定するベース油圧推定手段と、
前記油圧アクチュエータの作動に伴う油圧低下量を推定する油圧低下量推定手段とを含み、
前記ベース油圧推定手段で推定されるベース油圧と前記油圧低下量推定手段で推定される油圧低下量とからライン油圧を推定することを特徴としている。
第3の発明は、第1の発明において、前記油圧アクチュエータを含む複数の油圧アクチュエータが共通の作動油供給管に接続されており、
前記ライン油圧推定手段は、
前記複数の油圧アクチュエータの非作動時のライン油圧であるベース油圧を推定するベース油圧推定手段と、
前記各油圧アクチュエータのそれぞれの作動状態に伴う油圧低下量を推定する油圧低下量推定手段とを含み、
前記ベース油圧推定手段で推定されるベース油圧と前記油圧低下量推定手段で推定される油圧低下量とからライン油圧を推定することを特徴としている。
第4の発明は、第1乃至第3の何れか一つの発明において、前記ライン油圧推定手段で推定されるライン油圧から前記油圧アクチュエータの作動限界を算出する作動限界算出手段をさらに備え、
前記目標作動量設定手段は、前記作動限界算出手段で算出される作動限界内で前記油圧アクチュエータの目標作動量を設定することを特徴としている。
第1の発明によれば、目標作動量が変化するときには、目標作動量の時間変化率とライン油圧の推定値とに基づき、油圧アクチュエータの逆モデルを用いて流量調整弁の操作量を算出され、算出された操作量に従い流量調整弁が制御される。このようなフィードフォワード制御を行うことで、従来のフィードバック制御に比較して目標作動量の変化に遅れることなく高い精度で実作動量を追従させることが可能になる。
また、油圧アクチュエータが作動することでライン油圧は低下し、このライン油圧の低下は油圧アクチュエータの駆動力に影響するが、第2の発明によれば、油圧アクチュエータの作動に伴う油圧低下量が推定され、この油圧低下量を考慮してライン油圧が推定されるので、より高い精度で油圧アクチュエータの作動量を制御することが可能になる。
さらに、複数の油圧アクチュエータが共通の作動油供給管に接続される場合には、一の油圧アクチュエータに供給される作動油のライン油圧は他の油圧アクチュエータの作動によっても低下するが、第3の発明によれば、各油圧アクチュエータの作動に伴う油圧低下量が推定され、この油圧低下量を考慮してライン油圧が推定されるので、より高い精度で油圧アクチュエータの作動量を制御することが可能になる。
また、油圧アクチュエータの作動速度はライン油圧に応じて有限であるので、油圧アクチュエータが追従できる目標作動量の変更量には限界がある。このため、目標作動量がこの作動限界を超える場合には、目標作動量を実現できない事態が生じてしまう。この点に関し、第3の発明によれば、ライン油圧から油圧アクチュエータの作動限界が算出され、この作動限界内で油圧アクチュエータの目標作動量が設定されるので、必ず目標作動量を実現することができ制御の安定性を保つことができる。
実施の形態1.
以下、図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1としての油圧アクチュエータ制御装置が適用されたバルブタイミング可変機構の油圧システムの概略構成を示す図である。
図1に示すように、バルブタイミング可変機構の油圧システムには、クランク軸に対するカム軸の位相角を変化させるための油圧アクチュエータ2が備えられている。油圧アクチュエータ2は、図示しない2つの油室を有しており、一方の油室(進角側油室)への作動油の供給によってクランク軸に対するカム軸の位相角を進角側に変化させるように作動し、他方の油室(遅角側油室)への作動油の供給によってクランク軸に対するカム軸の位相角を遅角側に変化させるように作動する。このとき、作動油が供給されない側の油室からは、作動油が供給される側の油室の拡大に伴い内部の作動油が押し出され、押し出された作動油はオイルタンクに回収されるようになっている。クランク軸に対するカム軸の位相角の進角量は進角側油室への作動油の供給量によって制御することができ、同様に、遅角量は遅角側油室への作動油の供給量によって制御することができる。
油圧アクチュエータ2に供給される作動油は、エンジンにより駆動されるオイルポンプ6から圧送される。オイルポンプ6と油圧アクチュエータ2とは作動油供給管8によって接続されており、その途中にはオイルコントロールバルブ(OCV)4が設けられている。オイルコントロールバルブ4は、作動油の供給先及び作動油の回収先を進角側油室と遅角側油室とで切り換える方向切換弁であると同時に、その開度の制御によって作動油の供給量を調整できる流量調整弁でもある。オイルコントロールバルブ4はソレノイドによって電磁的に駆動されるようになっており、ソレノイドのデューティ制御によって開度を制御できるようになっている。
オイルコントロールバルブ4の操作量であるデューティ比は、制御装置10によって算出される。制御装置10は、算出した操作量に従いオイルコントロールバルブ4を制御する制御手段であると同時に、結果として、油圧アクチュエータ2の作動量を制御する制御装置になっている。制御装置10では、オイルコントロールバルブ4のデューティ比をフィードフォワード制御によって算出し、算出したデューティ比に基づいてオイルコントロールバルブ4のソレノイドをデューティ制御する。以下、制御装置10の構成と制御装置10によるフィードフォワード制御の内容について説明する。
制御装置10は、その機能により、目標位相角設定部12、デューティ比算出部14、そしてライン油圧推定部16に分けられる。このうち、目標位相角設定部12は、クランク軸に対するカム軸の目標位相角を設定する機能を有している。目標位相角はエンジンの運転状態に応じた最適なバルブタイミングを得るための位相角であり、エンジンの運転状態をパラメータとするマップから決定される。
デューティ比算出部14は、油圧アクチュエータ2の逆モデルからデューティ比を算出する機能を有している。上記の油圧システムでは、オイルコントロールバルブ4に与えたデューティ比に応じて油圧アクチュエータ2が作動し、位相角が変化する。したがって、油圧アクチュエータ2の逆モデルを用いれば、目標位相角の時間変化率を逆モデルに与えることで、それを実現するためのデューティ比を得ることができる。目標位相角の時間変化率は、目標位相角設定部12で設定される目標位相角から算出することができる。ただし、位相角の時間変化率とデューティ比との関係は作動油のライン油圧によって変化し、例えば、ライン油圧が高けれは同じデューティ比であっても位相角の時間変化率は大きくなる。つまり、油圧アクチュエータ2の逆モデルからデューティ比を算出する上では、パラメータとして目標位相角の時間変化率とともにライン油圧の値も必要となる。
制御装置10では、ライン油圧推定部16によってライン油圧が推定される。ライン油圧推定部16では、以下に説明するように計算によってライン油圧を推定する。油圧センサ等による検出値を用いず、計算によってライン油圧を推定するのは、デューティ比算出部14での計算に必要とされるライン油圧は、油圧センサ等で検出できる現時点でのライン油圧ではなく、算出されたデューティ比がオイルコントロールバルブ4に与えられ油圧アクチュエータ2が作動する時点でのライン油圧、すなわちライン油圧の将来値だからである。ライン油圧推定部16は、さらに、その機能に応じてベース油圧推定部20、油圧低下量推定部22及び推定ライン油圧算出部24に分けられる。
ベース油圧推定部20は、油圧アクチュエータ2が作動していない静止時のライン油圧(以下、ベース油圧という)を推定する機能を有している。ベース油圧は、図2に示すように、エンジン回転数と油温から静的に決定される。図2において油温1と油温2は異なる温度であり、各線中の折れ点はオイルポンプ6とオイルコントロールバルブ4との間に設けられる図示しないチェック弁の作用によるものである。ベース油圧推定部20は、図2に示すような二次元マップを有しており、この二次元マップからエンジ回転数及び油温に応じたベース油圧を出力する。なお、エンジン回転数はクランク角センサからのクランク角信号から算出し、油温は水温センサで検出される冷却水温から間接的に推定するか、或いは油温センサを設けて直接検出する。
油圧低下量推定部22は、油圧アクチュエータ2の作動に伴う油圧低下量を推定する機能を有している。静止状態では、ライン油圧は油温とエンジン回転数によって決まるベース油圧に保たれているが、油圧アクチュエータ2が作動した場合、作動油が流路を流れることで圧力損失が生じ、ライン油圧は一時的に低下する。このときの油圧低下量は作動油の流量に比例し、作動油の流量は油圧アクチュエータ2の作動速度、すなわち、目標位相角の時間変化率に比例する。油圧低下量推定部22は、目標位相角の時間変化率に所定の比例係数を掛けた値を油圧低下量の推定値として出力する。なお、比例係数は油温によって変化するので、油圧低下量推定部22には、油温と比例係数との関係を示すマップが設けられている。
推定ライン油圧算出部24は、ベース油圧推定部20で推定されたベース油圧と油圧低下量推定部22で推定された油圧低下量から推定ライン油圧を算出する機能を有している。推定ライン油圧は、以下の[1]式によって表される。
Figure 2005155383
上記の[1]式において、Pvはライン油圧、P0はベース油圧、qは作動油の流量、kは通路抵抗に相当する比例係数であり、kqが推定ライン油圧算出部16で算出される油圧低下量を示している。
また、上記の[1]式における作動油の流量qは、目標位相角をθとしたときに以下の[2]式によって表される。
Figure 2005155383
上記の[2]式において、Vは位相1CA当たりの流量を示している。推定ライン油圧算出部24で算出された推定ライン油圧Pvは、目標位相角θの時間変化率とともにデューティ比算出部14に入力される。
次に、デューティ比算出部14でのデューティ比の算出方法について詳細に説明する。まず、デューティ比の算出に用いられる油圧アクチュエータ2の逆モデルは、以下の[3]式乃至[6]式の物理式によって表すことができる。なお、ここで表す逆モデルは位相角を進角させる場合の逆モデルである。また、以下の[3]式乃至[6]式においては、θは目標位相角ではなく実位相角を示すものとし、Pvは推定ライン油圧ではなく実ライン油圧を示すものとする。
Figure 2005155383
上記の[3]式は位相角の時間変化率と作動油の流量との関係を示す式である。上記の[3]式においてqiは油圧アクチュエータ2の進角側油室へ流入する作動油の流量を示し、qoは遅角側油室から流出する作動油の流量を示している。
Figure 2005155383
上記の[4]式は進角側油室へ流入する作動油の流量と圧力との関係を示す式である。上記の[4]式においてuはオイルコントロールバルブ4のデューティ比を示し、Di(u)は進角側油室とオイルコントロールバルブ4との間の流量係数を示している。流量係数Di(u)はデューティ比uの関数として表される。また、Piは進角側油室内の作動油の油圧を示している。
Figure 2005155383
上記の[5]式は遅角側油室から流出する作動油の流量と圧力との関係を示す式である。上記の[5]式においてDo(u)は遅角側油室とオイルコントロールバルブ4との間の流量係数を示している。流量係数Do(u)はデューティ比uの関数として表される。また、Poは遅角側油室内の作動油の油圧を示し、Pは大気圧、すなわち作動油の放出先であるオイルタンクの圧力を示している。
Figure 2005155383
上記の[6]式は位相角の時間変化率と作動油から受ける駆動力との関係を示す図である。上記の[6]式においてFは摩擦力、Fcは速度比例摩擦係数、Aは進角側油室及び遅角側油室の受圧部の面積、そしてIは油圧アクチュエータ2の慣性モーメントを示している。ここで、Pi−Poは進角側油室と遅角側油室との圧力差を示し、A(Pi−Po)は油圧アクチュエータ2に作用する駆動力を示している。
上記の[3]式乃至[6]式を慣性モーメントIを無視してまとめたものが以下の[7]式である。
Figure 2005155383
上記の[7]式が油圧アクチュエータ2の逆モデルを表す最終的な式となる。なお、上記の[7]式においてRはデューティ比uから決まる定数、Cは速度比例抵抗に相当する定数、Bは摩擦力に相当する定数である。
デューティ比算出部14は、上記の[7]式で表される油圧アクチュエータ2の逆モデルを用い、デューティ比uを算出する。具体的には、上記の[7]式におけるθに目標位相角設定部12で設定される目標位相角θを代入し、上記の[7]式におけるPvに推定ライン油圧算出部24で算出された推定ライン油圧Pvを代入することで、目標位相角θと推定ライン油圧Pvとデューティ比uとの関係式を得る。ここでは、上記の[1]式、[2]式、及び[7]式をまとめることで、デューティ比uを目標位相角θの時間変化率と推定ライン油圧Pvをパラメータとする関数で表すものとする。
まず、上記の[1]式及び[2]式を上記の[7]式にまとめると、以下の[8]式が得られる。
Figure 2005155383
上記の[8]式においてC’=C+kVであり、B’=B−P0である。
さらに、DuN=R-1とすると、目標位相角θの時間変化率は次の[9]式で表される。
Figure 2005155383
B’はP0の関数であることからエンンジン回転数と油温に依存する。ここで、ある基準回転数を定め、その基準回転数におけるB’をB0とすると、基準回転数時の目標位相角θの時間変化率は次の[10]式で表される。
Figure 2005155383
さらに、αN=β-1=B0/B’とすると、上記の[10]式は次の[11]式のように表すことができる。
Figure 2005155383
したがって、デューティ比uは目標位相角θの時間変化率をパラメータとして次の[12]式で表すことができる。
Figure 2005155383
上記の[12]式においてα-1は推定ライン油圧Pvと油温の二次元マップから定まる係数であり、X0 -1は油温と目標位相角θの時間変化率の二次元マップから定まる関数であり、β-1は推定ライン油圧Pvと油温の二次元マップから定まる係数である。
上記の[12]式によれば、目標位相角θの時間変化率、推定ライン油圧Pv、及び油温を与えることで、デューティ比uを一義的に算出することができる。デューティ比算出部14は、上記の[12]式で表される関係をマップ(デューティ比算出マップ)に記憶している。デューティ比算出マップは複数の回転数について用意されており、回転数を軸とする線形補間によって全域の回転数でデューティ比uを算出することが可能になっている。制御装置10は、このようにして算出されたデューティ比uに基づいてオイルコントロールバルブ4のソレノイドをデューティ制御する。
以上のように、本実施形態の装置によれば、フィードフォワード制御により目標位相角の時間変化率に連動してデューティ比が算出されるので、目標位相角の変化に遅れることなく高い精度で実位相角を追従させることが可能になる。また、油圧アクチュエータ2が作動することでライン油圧は低下し、このライン油圧の低下は油圧アクチュエータの駆動力に影響するが、本実施形態の装置によれば、油圧アクチュエータ2の作動に伴う油圧低下量を考慮してライン油圧が推定され、この推定ライン油圧をパラメータとしてデューティ比uが算出されるので、ライン油圧の変動の影響を受けることなく高い精度で位相角制御を行うことができる。
実施の形態2.
次に、図3を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。
図3は、本発明の実施の形態2としての油圧アクチュエータ制御装置が適用されたバルブタイミング可変機構の油圧システムの概略構成を示す図である。図中、実施の形態1と同一の要素については同一の符号を付している。
図3に示す油圧システムは、複数(ここでは2つ)の油圧アクチュエータ2A,2Bを備えている。このように複数の油圧アクチュエータ2A,2Bを備えるケースとしては、例えば、吸気弁と排気弁の双方にバルブタイミング可変機構を設ける場合や、V型エンジンのようにバンク毎にバルブタイミング可変機構を設ける必要がある場合等である。2つの油圧アクチュエータ2A,2Bは一つのオイルポンプ6を共有している。すなわち、各油圧アクチュエータ2A,2Bには作動油の供給量を調整するオイルコントロールバルブ4A,4Bが設けられているが、2つのオイルコントロールバルブ4A,4Bはオイルポンプ6から延びる共通の作動油供給管8に接続されている。
各オイルコントロールバルブ4A,4Bは制御装置30によって制御される。制御装置30は、その機能により図示略の目標位相角設定部、デューティ比算出部14A,14B、そしてライン油圧推定部16に分けられる。目標位相角設定部は、油圧アクチュエータ2A,2B毎にエンジンの運転状態に応じて目標位相角を設定する。
ライン油圧推定部16は、実施の形態1と同様、その機能に応じてベース油圧推定部20、油圧低下量推定部22及び推定ライン油圧算出部24に分けられる。本実施形態では、油圧低下量推定部22における油圧低下量の算出処理に実施の形態1との相違がある。油圧低下量推定部22は、油圧アクチュエータ2A,2Bの作動に伴う油圧低下量を推定するが、本実施形態では、2つの油圧アクチュエータ2A,2Bのそれぞれの作動によってライン油圧の低下が起きる。したがって、油圧低下量は油圧アクチュエータ2A,2B毎に算出する必要がある。各油圧アクチュエータ2A,2Bの作動に伴う油圧低下量を考慮すると、油圧アクチュエータ2Aの作動による作動油の流量をqA、油圧アクチュエータ2Bの作動による作動油の流量をqBとするならば、推定ライン油圧Pvは以下の[13]式によって表される。
Figure 2005155383
また、油圧アクチュエータ2Aの作動による作動油の流量qAは、油圧アクチュエータ2Aの目標位相角θAを用いて以下の[14]式によって表される。
Figure 2005155383
同様に、油圧アクチュエータ2Bの作動による作動油の流量qBは、油圧アクチュエータ2Bの目標位相角θBを用いて以下の[15]式によって表される。
Figure 2005155383
本実施形態の装置では、各オイルコントロールバルブ4A,4Bに対応してデューティ比算出部14A,14Bが設けられている。デューティ比算出部14Aは、油圧アクチュエータ2Aの逆モデルを用いて、目標位相角θAの時間変化率と、上記の[13]式乃至[15]式から定まる推定ライン油圧Pvとに基づき、オイルコントロールバルブ4Aのデューティ制御のためのデューティ比uAを算出する。同様に、デューティ比算出部14Bは、油圧アクチュエータ2Bの逆モデルを用いて、目標位相角θBの時間変化率と、上記の[13]式乃至[15]式から定まる推定ライン油圧Pvとに基づき、オイルコントロールバルブ4Bのデューティ制御のためのデューティ比uBを算出する。各油圧アクチュエータ2A,2Bの逆モデルは、実施の形態1と同様に上記の[7]式で表される(ただし、各定数R,C,Bの値は油圧アクチュエータ2A,2B毎に異なる)。
以上のように、本実施形態の装置では、各油圧アクチュエータ2A,2Bの作動に伴う油圧低下量を考慮してライン油圧が推定され、この推定ライン油圧をパラメータとして各オイルコントロールバルブ4A,4Bに与えるデューティ比が算出される。このため、例えば油圧アクチュエータ2Aの作動量を制御する場合、実施の形態1と同様に油圧アクチュエータ2A自身の作動に伴うライン油圧の変動の影響を受けることがない上、さらに、他の油圧アクチュエータ2Bの作動に伴うライン油圧の変動の影響も受けることがない。したがって、本実施形態の装置によれば、複数の油圧アクチュエータ2A,2Bが作動している状況ででも高い精度で位相角制御を行うことができる。
実施の形態3.
次に、図4を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。
本実施形態の装置は、図1の制御装置10に図4のブロック図で示す機能を組み込むことで実現される。図4は、本発明の実施の形態3にかかる目標位相角制限制御のブロック図である。
油圧アクチュエータ2の逆モデルを示す上記の[7]式からも分かるように、位相角の時間変化率、すなわち、油圧アクチュエータ2の作動速度はライン油圧に応じて有限である。オイルコントロールバルブ4のデューティ比を100%にしたときの作動速度が、油圧アクチュエータ2の最大作動速度となる。このため、目標位相角の時間変化率が油圧アクチュエータ2の最大作動速度から決まる位相角の最大時間変化率を超えてしまうと、フィードフォワード制御によっても目標位相角の変化に実位相角を追従させることができない。
そこで、本実施形態では、図4に示すように、制御装置10の一機能要素として新たに作動限界算出部18を設けている。作動限界算出部18は、ライン油圧推定部16で算出された推定ライン油圧から油圧アクチュエータ2の作動限界を算出する機能を有している。上記の[7]式に推定ライン油圧とデューティ比100%を入力することで、推定ライン油圧に応じたデューティ比100%時の位相角速度、すなわち、最大位相角速度を算出することができる。そして、この最大位相角速度で実現できる位相角の範囲が作動限界となる。算出された作動限界は目標位相角設定部12に入力され、目標位相角設定部12は、作動限界内で目標位相角が設定される。
以上のように、本実施形態の装置によれば、推定ライン油圧から油圧アクチュエータ2の作動限界が算出され、この作動限界内で油圧アクチュエータ2の目標位相角が設定されるので、目標位相角を実現できない事態が生じることはない。つまり、本実施形態の装置によれば、実位相角を目標位相角に確実に追従させることができ、制御の安定性を保つことができる。
その他.
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、次のように変形して実施してもよい。
上述の実施の形態2では、2つの油圧アクチュエータ2A,2Bを備える場合について説明したが、より多くの油圧アクチュエータを備える油圧システムにも本発明を適用することができる。その場合、上記の[13]式と同様な手法で油圧アクチュエータ毎に油圧低下量を算出してベース油圧から減算すればよい。また、オイルの漏れがある場合には、その漏れ量から油圧低下量を算出してベース油圧から減算すればよい。
また、上述の実施の形態3では、目標位相角の設定を油圧アクチュエータ2の作動限界内に制限する機能を図1の制御装置10に組み込んでいるが、図3の制御装置30に組み込むことも勿論可能である。
また、上述の実施の形態では、フィードフォワード制御によるデューティ比の算出のみについて説明したが、従来のフィードバック制御を組み合わせてデューティ比を算出するようにしてもよい。すなわち、上記のようにフィードフォワード制御により算出されたデューティ比を目標位相角と実位相角との偏差に応じて補正する。これによれば、より高い精度で実位相角を目標位相角に追従させることが可能になる。
さらに、上述の実施の形態では、本発明をバルブタイミング可変機構の油圧システムに適用しているが、本発明は油圧アクチュエータを用いるシステムであれば広く適用することができる。また、油圧アクチュエータへの作動油の供給量を調整する流量調整弁は、上述の実施形態のようなソレノイドにより駆動される電磁式の流量調整弁に限らず、パイロット圧によって駆動されるパイロット式の流量調整弁でもよい。
本発明の実施の形態1としての油圧アクチュエータ制御装置が適用されたバルブタイミング可変機構の油圧システムの概略構成を示す図である。 静止時のライン油圧とエンジン回転数及び油温との関係を示す図である。 本発明の実施の形態2としての油圧アクチュエータ制御装置が適用されたバルブタイミング可変機構の油圧システムの概略構成を示す図である。 本発明の実施の形態3にかかる目標位相角制限制御のブロック図である。
符号の説明
2,2A,2B 油圧アクチュエータ
4,4A,4B オイルコントロールバルブ
6 オイルポンプ
8 作動油供給管
10,30 制御装置
12 目標位相角設定部
14,14A,14B デューティ比算出部
16 ライン油圧推定部
18 作動限界算出部
20 ベース油圧推定部
22 油圧低下量推定部
24 推定ライン圧算出部

Claims (4)

  1. 油圧アクチュエータの作動量を制御する制御装置において、
    前記油圧アクチュエータへの作動油の供給量を調整する流量調整弁と、
    前記油圧アクチュエータの目標作動量を設定する目標作動量設定手段と、
    作動油のライン油圧を推定するライン油圧推定手段と、
    前記目標作動量設定手段で設定される目標作動量の時間変化率と前記ライン油圧推定手段で推定されるライン油圧とに基づき、前記油圧アクチュエータの逆モデルを用いて前記流量調整弁の操作量を算出する操作量算出手段と、
    前記操作量算出手段で算出された操作量に従い前記流量調整弁を制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とする油圧アクチュエータの制御装置。
  2. 前記ライン油圧推定手段は、
    前記油圧アクチュエータの非作動時のライン油圧であるベース油圧を推定するベース油圧推定手段と、
    前記油圧アクチュエータの作動に伴う油圧低下量を推定する油圧低下量推定手段とを含み、
    前記ベース油圧推定手段で推定されるベース油圧と前記油圧低下量推定手段で推定される油圧低下量とからライン油圧を推定することを特徴とする請求項1記載の油圧アクチュエータ制御装置。
  3. 前記油圧アクチュエータを含む複数の油圧アクチュエータが共通の作動油供給管に接続されており、
    前記ライン油圧推定手段は、
    前記複数の油圧アクチュエータの非作動時のライン油圧であるベース油圧を推定するベース油圧推定手段と、
    前記各油圧アクチュエータのそれぞれの作動に伴う油圧低下量を推定する油圧低下量推定手段とを含み、
    前記ベース油圧推定手段で推定されるベース油圧と前記油圧低下量推定手段で推定される油圧低下量とからライン油圧を推定することを特徴とする請求項1記載の油圧アクチュエータ制御装置。
  4. 前記ライン油圧推定手段で推定されるライン油圧から前記油圧アクチュエータの作動限界を算出する作動限界算出手段をさらに備え、
    前記目標作動量設定手段は、前記作動限界算出手段で算出される作動限界内で前記油圧アクチュエータの目標作動量を設定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の油圧アクチュエータ制御装置。

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Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009215955A (ja) * 2008-03-10 2009-09-24 Nissan Motor Co Ltd 油圧アクチュエータの制御装置及び制御方法

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