JP2005154982A - 陸上ネット - Google Patents

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義之 井川
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Abstract

【課題】 ポリエステル繊維を用いた陸上ネットにおいて、網地の強力向上を図ることにより網地を軽量化する。
【解決手段】 原糸強度が5.3cN/dt以上であるポリエステル繊維を用い、経網地であるフロント用糸1の引掛け強力と、バック用糸2を2本用いた場合の引っ張り強力の比が0.7以上1.2以下であり、フロント用糸1とバック用糸2の繊度の比が1.1以上であり、かつフロント用糸1とバック用糸2の糸長比率をヨコ糸長が20%以上35%以下となるよう編成して製網する。また、形成される形状が四角形、六角形、亀甲形のうちいずれかとなるようにする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、安全ネット、養生ネット等を主用途とした陸上ネットに関するものである。
従来、安全ネット等の陸上ネットには蛙又結節網、無結節網が用いられていた。近年、落下防止用の安全ネットが多く使用されているが、この安全ネットは人間の落下防止に耐え得る強度が要求される。さらに、小さな物品、例えばボトル等の貫通落下を防止する観点から、網目が小さいことも要求されるのが一般的であった。
しかし、網目が小さく、しかも十分な強度を有する網となると、どうしても、原糸使用量が多くなり、特に蛙又結節網では網地強力が十分ではなく、しかも重いという欠点を有していた。
また、貫通式無結節網の場合は網目が小さいと編立能率が悪くなり、しかも掛巾に限度がある。この為、無結節網は需要者のニーズに十分対処出来ない面があった。
このような事情から、現在では安全ネットや養生ネットとして、ラッセルネットが用いられるようになっている。
これらの原糸特性を改良するものとして、特許文献1に記載された技術がある。
特許文献1に記載の技術は、原糸特性を規制した安全ネットの製造法であるが、この製造方法で得られたネットは、ネットの強力を高め、ネットの軽量化を図るには、必ずしも十分なものではなかった。
また、合成繊維の中で、ポリエステル繊維は耐光性が比較的良好であるとともに、寸法安定性が良好である等、陸上ネットとしての要求特性を備えているが、原糸の比重が高いため目標の網地強力を得るには網地が重くなり、またラッセル網にした場合、網地強力が出にくいという問題があった。
更に、ナイロンと同一強力を得ようとすると、ポリエステルは目付けを多くする必要があり、また比重が大きいためネットの重量が重くなるという欠点があった。
特開平2001−207357号公報
本発明は、特にポリエステル繊維を用いた陸上ネットにおいて、所定の強力を得ようとする際に重量が重くなるという欠点を解消すべくなされたものである。
即ち、使用するポリエステル繊維の原糸特性を、陸上用タテ網ネットの特性に適するように、引張強度と切断伸度を最適化するとともに、フロント用糸とバック用糸の繊度、糸長の最適化を図るなどして網地の強力向上を図ることにより網地を軽量化し前記欠点を解消することを目的としている。
本発明の陸上ネットは、上述した目的を達成するため、原糸強度が5.3cN/dt以上であるポリエステル繊維を用い、経網地であるフロント用糸の引掛け強力と、バック用糸2本の引っ張り強力の比が0.7以上1.2以下であり、フロント用糸とバック用糸の繊度の比が1.1以上であり、かつフロント用糸とバック用糸の糸長比率をヨコ糸長が20%以上35%以下となるよう編成して製網したことを特徴とするものである。
また、本発明の陸上ネットは、前記構成に加えて、形成される形状が四角形、六角形、亀甲形のうちのいずれかであることを特徴とするものである。
本発明の陸上ネットによれば、ポリエステル繊維からなる原糸を用いた場合に、従来ネットと同等の網地強力としても、網地の重量を大幅に増加させることなく、従来の網地と同様に取り扱うことが可能となる。
以下、図面を参照して、本発明の陸上ネットの実施形態を詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る陸上ネットは、主として、建設工事等の作業中に、工事に必要な物品、作業品、あるいは作業者が落下することによる事故を防止するための安全ネットや養生ネットに用いられるが、他の一般に使用されるネットにも適用することができる。
本発明の実施形態に係る陸上ネットに用いるポリエステル系繊維は、繰り返し単位の90モル%以上がポリエチレンテレフタレートであるポリエステルからなる繊維である。なお、このポリエステルは、エチレンフタレートからなるものが好ましいが、第三成分を共重合して用いることも可能である。また、ポリエステルの重合時あるいは紡糸時に、紫外線吸収剤、顔料、難燃剤等を添加してもよい。さらに、難燃剤は、フロント用糸のみ、またはバック用糸のみに添加してもよい。
本発明の実施形態に係る陸上ネットに用いるポリエステル繊維の特性は、原糸強度が5.3cN/dt以上である。原糸強度は、5.3cN/dt以上あれば本発明の目的を達成することができるが、5.7cN/dt以上とすることがより好ましい。
原糸強度が5.3cN/dt未満では目的とする網地強力が得られず、網地の軽量化を図ることができない。また、フロント用糸とバック用糸は、前記範囲内であれば原糸の強度が異なるものを使用することができる。
また、経網地であるフロント用糸の引掛け強力と、バック用糸2本の引張強力の比、即ち、フロント用糸の引掛け強力/バック用糸2本の強力は、0.7以上1.2以下とする。
図1に示すように、フロント用糸1はループ状をなす部分が多いことから原糸の引掛け強力が高いことが必要であり、またバック用糸2は、物性的に直線的とみなすことが出来る程度の曲がりで使用するもので、できるかぎり引張強力が高いことが必要である。
網地の破断時の状態を注意深く観察すると、網地の破断はほぼフロント用糸1の切断時がその網の最高破断強力をなしており、網地の強力を向上するにはフロント用糸1の引掛け強力が高い方が好ましく、またフロント用糸1の引掛け強力とバック用糸2を2本とした場合の強力比が0.7以上1.2以下であることが最適であることを見出した。
もちろん、使用する原糸はフロント用糸1、バック用糸2とも適度な切断伸度を有することが必要であるが、ポリエステル繊維からなる原糸を製造するうえで、引掛け強度と切断伸度はバランスされており、両特性を同時に、極端に高くすることは不可能である。両者の比が0.7未満であると、バック用糸2は網地の破断には寄与するが、網地の破断、即ち、フロント用糸1が切断後も切断しないで残ることになり、それだけ強力的には無駄であるといえる。また両者の比が1.2を超えると、フロント用糸1とバック用糸2のバランスが悪くなり、高い網地強力は得られない。
また、ポリエステル繊維の繊度比は、フロント用糸1の繊度とバック用糸2の繊度の比が1.1以上であることが好ましい。フロント用糸1の繊度とバック用糸2の繊度の比が1.1未満であると、例えば、同じ原糸強度を持つ原糸を使用した場合、網地強力は満足するが、フロント用糸1が切断しても、バック用糸2は切断しないで残っており、フロント用糸1が切断される以上の強力部分は不要となる。
このため、バック用糸2の不要な部分は網地重量を重くしているといえる。図2を参照して、更に詳しく説明する。原糸において、フロント用糸1に相当する部分として引掛け強力を測定し、バック用糸2は2本引き揃えした原糸強力を測定し、両者を重ね合わせたグラフを図2に示す。図2から明らかなように、フロント用糸1に相当する引掛け強力が終了した後も、バック用糸2に相当する部分は残っていることになる。
したがって、フロント用糸1、即ち引掛け強力がMAX時点でバック用糸2も切断すれば、バック用糸2のそれ以上の部分は不要となり、それだけ網地は軽量化されることになる。即ち、バック用糸2はフロント用糸1よりも細い繊度を持つものが網地の軽量化には好ましいといえる。またバック用糸2として、フロント用糸1よりも強度の低い原糸を使用した場合には、高い網地強力が得られない。
また、経網地のフロント用糸1とバック用糸2の糸長比率が20%以上35%以下となるよう編網されることが好ましい。フロント用糸1とバック用糸2の糸長比率が20%未満または35%を超えた場合には、満足する網地強力が得られない。また、形態も安定したものとならないばかりか、フロント用糸1とバック用糸2の糸長比率が20%未満では、網地生産時にラッセル編機への負荷が大きくなり過ぎて好ましくない。
通常の場合、前述したようにフロント用糸1とバック用糸2で編網された後、得られた網地は熱セット仕上げ加工される。熱セット温度は目的によって自由に選択し得るが、通常の場合、120℃以上180℃以下であることが好ましい。仕上げ加工は、耐光剤付与、難燃剤付与など必要に応じて実施すればよい。
このようにして得られたネットの網目形態は四角形、六角形,亀甲形状のいずれであってもよく、網目の大きさも必要に応じて決定される。
このように、本発明の実施形態に係る陸上ネットによれば、フロント用糸1とバック用糸2のバランスがとれたラッセル網地が得られるとともに、目的とする網地強力が得られ、網地の軽量化を図ることができた。
次に、具体的な実施例に基づいて、本発明の陸上ネットを説明する。実施例における評価は、下記により実施した。
(1)繊維の引張強力、引掛け強力
JIS L1013 7.5に準じて測定した。
(2)網地強力
仮設工業会法、1本2節の強力を網地強力として測定した。
<実施例1>
フロント用糸に引張強度6.2cN/dt、バック用糸に引張強度7.0cN/dtのポリエステル糸を使用し、フロント用糸の引掛け強力とバック用糸2本の引張強力比が1.1であり、フロント用糸とバック用糸の繊度比が1.2であり、かつフロント用糸とバック用糸の糸長比率を25%として、脚間のループ数が12個で、網目が15mmである、四角形状の網地を編成し、160℃で2分間熱セットして実施例1の陸上用ネットを得た。
<比較例1>
フロント用糸に引張強力5.1cN/dtdの原糸を用いること以外は、実施例1と同様にしてネットを得た。
<比較例2>
フロント用糸とバック用糸に7.5cN/dtの原糸を使用し、フロント用糸の引掛け強力とバック用糸2本の引張強力の比が0.69であること以外は、実施例1と同様にして陸上用ネットを得た。
<比較例3>
フロント用糸とバック用糸の繊度比を1.0とした以外は、実施例1と同様にして陸上ネットを得た。
<比較例4>
フロント用糸とバック用糸の糸長比が37%であること以外は、実施例1と同様にして陸上用ネットを得た。
実施例1、比較例1、比較例2、比較例3、比較例4における測定結果を、下記表1に示す。
Figure 2005154982
表1から明らかなように、本発明の陸上ネットは、網地強力が十分あり、本発明の目的を満足するものであった。
一方、比較例1のように原糸強力が低すぎると満足する網地強力を得ることができず、引掛け強力と引っ張り強力の比が低すぎると十分な網地強力を得ることができない。
また、比較例2のように引掛け強力と引っ張り強力の比が低すぎても満足する網地強力を得ることができない。
また、比較例3のように繊度比が低い場合には、十分な網地強力を得ることができても、網地重量が大きくなる。
また、比較例4のようにヨコ糸長が一定以上となると、十分な網地強力を得ることができない。
本発明の陸上ネットを構成するフロント用糸とバック用糸の状態を示す説明図である。 本発明の陸上ネットを構成するフロント用糸とバック用糸の原糸強力の測定結果を示すグラフである。
符号の説明
1 フロント用糸
2 バック用糸

Claims (2)

  1. 原糸強度が5.3cN/dt以上であるポリエステル繊維を用い、経網地であるフロント用糸の引掛け強力と、バック用糸2本の引っ張り強力の比が0.7以上1.2以下であり、フロント用糸とバック用糸の繊度の比が1.1以上であり、かつフロント用糸とバック用糸の糸長比率をヨコ糸長が20%以上35%以下となるよう編成して製網したことを特徴とする陸上ネット。
  2. 形成される形状が四角形、六角形、亀甲形のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の陸上ネット。
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